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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1350448 |
審判番号 | 不服2017-17471 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-27 |
確定日 | 2019-05-07 |
事件の表示 | 特願2015- 19094「タッチ入力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月17日出願公開、特開2016- 35736、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年2月3日の出願(パリ条約による優先権主張2014年8月1日、大韓民国、2014年9月19日、大韓民国、2014年10月24日、大韓民国、2014年12月22日、大韓民国)であって、平成28年1月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年5月2日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成28年6月20日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、平成28年9月23日に意見書が提出され、平成28年12月28日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、平成29年4月7日に意見書が提出されたが、平成29年7月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年8月20日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、平成30年12月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年7月24日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献A-Cに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2011-100364号公報 B.国際公開第2014/080924号 C.国際公開第2011/013588号 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願請求項1-13に係る発明は、以下の引用文献1-2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2011-100364号公報(拒絶査定時の引用文献A) 2.国際公開第2011/013588号(拒絶査定時の引用文献C) 第4 本願発明 本願請求項1-13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明13」という。)は、平成30年12月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-2は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 タッチ表面に対するタッチの圧力検出が可能なタッチ入力装置であって、 ディスプレイモジュールと、 バッテリー実装空間を前記ディスプレイモジュールから分離する基板と、 を含み、 前記ディスプレイモジュールと前記基板との間として前記ディスプレイモジュールの表示領域と垂直方向に重なる位置に配置され、前記タッチ表面に対する前記タッチによって基準電位層との距離が変わり得る位置に配置された電極をさらに含み、 前記基準電位層と前記電極との間にスペーサ層が位置し、 前記電極と前記基準電位層との間の前記距離によって変わる、前記電極から検出される静電容量に基づいてタッチ圧力の大きさを検出することができ、 前記ディスプレイモジュールは、前記タッチによって撓み、前記ディスプレイモジュールの撓みによって前記電極から検出される前記静電容量が変わり、 前記静電容量は、前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含み、 前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する、 タッチ入力装置。 【請求項2】 タッチ表面に対するタッチの圧力検出が可能なタッチ入力装置であって、 ディスプレイモジュールと、 ノイズを遮蔽するように構成された基板と、 を含み、 前記ディスプレイモジュールと前記基板との間として前記ディスプレイモジュールの表示領域と垂直方向に重なる位置に配置され、前記タッチ表面に対する前記タッチによって基準電位層との距離が変わり得る位置に配置された電極をさらに含み、 前記基準電位層と前記電極との間にスペーサ層が位置し、 前記電極と前記基準電位層との間の前記距離によって変わる、前記電極から検出される静電容量に基づいてタッチ圧力の大きさを検出することができ、 前記ディスプレイモジュールは、前記タッチによって撓み、前記ディスプレイモジュールの撓みによって前記電極から検出される前記静電容量が変わり、 前記静電容量は、前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含み、 前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する、 タッチ入力装置。」 なお、本願発明3-13は、本願発明1または2を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1及び引用発明 当審拒絶理由に引用した引用文献1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。 (1) 段落【0038】-【0041】 「【0038】 制御ユニットCは、例えば、回路基板とこれに搭載される演算処理回路、メモリ等を含む各種電子部品で構成される。制御ユニットCは、筐体1(フレーム4)の内部に収容され、さらに詳しくは、金属シールド9とフレームの底部4cの間の空間内に配置されている。制御ユニットCは、タッチパネル2による操作位置の検出制御、表示パネル7の表示制御、後述する感圧センサ3による押圧力の検出制御など、センサ装置100の動作全体を制御する。 【0039】 次に、感圧センサ3の構成について説明する。 【0040】 図1に示すように、感圧センサ3は、表示カバー5とフレーム4との間に設けられる。図2に示すように、感圧センサ3は環状に形成された第1の電極10と、同じく環状に形成された第2の電極11とを有する。第1及び第2の電極10及び11には図示しない配線が接続され、この配線により、制御ユニットCに電気的に接続される。タッチパネル2は、この環状の第1及び第2の電極10及び11の、環の内部側に配置される。 【0041】 第1及び第2の電極10及び11としては、例えば銅、銀、ニッケル、アルミニウム、金等の金属材料や、ZnO、ITO等の透明な導電性酸化物材料が用いられる。また、これらの導電性材料の表面に、例えばポリイミド等の絶縁材料が積層されたものが、第1及び第2の電極10及び11として用いられてもよい。」 (2) 段落【0064】 「【0064】 <第2の実施形態> 本発明の第2の実施形態に係るセンサ装置について説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明したセンサ装置100における構成及び作用と同様な部分については、同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略化する。」 (3) 段落【0106】-【0114】 「【0106】 <第7の実施形態> 図19は、本発明の第7の実施形態に係るセンサ装置を示す模式的な断面図である。図20は、図19に示すセンサ装置の模式的な分解斜視図である。 【0107】 本実施形態のセンサ装置700では、図19及び図20に示すように、タッチパネル2の下面2bに表示パネル7の上面7a(第1の面)が接着され、表示パネル7の下面7b(第2の面)に感圧センサ703が設けられる。表示カバー5は、環状に形成された粘着剤712によりフレーム4に固定される。 【0108】 図20に示すように、第1及び第2の電極10及び11は、表示パネル7の下面7b及び金属シールド9にそれぞれ設けられる。第1及び第2の電極10及び11の間には、スペーサ714が設けられる。本実施形態では、スペーサ714として矩形状の「ポロン」が用いられているがこれに限られない。スペーサ714として、例えば第1及び第2の電極10及び11の形状と同様な環状のものが用いられてもよい。なお図20では、スペーサ714は省略されている。 【0109】 本実施形態のセンサ装置700では、表示カバー5の操作領域5aが押圧された際に、表示カバー5が撓むように変形し、これと一体となってタッチパネル2及び表示パネル7が撓むように変形する。これにより操作領域5aに加えられた押圧力が、表示カバー5の撓み量に応じた第1及び第2の電極10及び11間の静電容量の変化に基づいて検出される。 【0110】 図21は、本実施形態に係る第1及び第2の電極10及び11の形状等の、他の例を示した図である。図21では、表示パネル7の下面7bに設けられた第1及び第2の電極10及び11が示されている。スペーサ714(図示せず)は、第1及び第2の電極10及び11の形状等に合わせて適宜設けられる。 【0111】 図21(A)に示すように、第1及び第2の電極10及び11が、表示カバー5の四隅に対応する位置と、操作領域5aの中央に対応する位置とに複数設けられてもよい。複数の第1及び第2の電極10及び11は、配線724によりそれぞれ電気的に接続されている。これにより操作領域5aの押圧位置にかかわらず、高い精度で押圧力を検出することができる。 【0112】 図21(B)に示すように、第1及び第2の電極10及び11が、操作領域5aの中央に対応する位置に所定の面積で設けられてもよい。例えば第1及び第2の電極10及び11の面積を大きくすることで、操作領域5aの押圧位置にかかわらず、高い精度で押圧力を検出することができる。 【0113】 本実施形態では、表示パネル7により、操作領域5aに画像が表示される。図19及び図20に示すように、操作領域5aは、表示パネル7から見て上面7a側に位置する。従って、表示パネル7の下面7bに設けられた感圧センサ703により、表示パネル7の画像の表示が遮られることがない。これにより感圧センサ703(第1及び第2の電極10及び11)の形状や数、又は表示パネル7に対する感圧センサ703の位置等の自由度が大きくなる。特に、図21(A)及び図21(B)に示すように、表示カバー5の操作領域5aの中央に対応する位置に感圧センサ703を設けることができる。 【0114】 また感圧センサ703が、表示パネル7の下面2bに設けられるので、表示カバー5、タッチパネル2及び表示パネル7の構造を、感圧センサ703が設置される位置にかかわらず、良好な光学特性が得られるように適宜設定することができる。」 (4) 段落【0133】 「【0133】 このような電子機器1000としては、例えば、デジタルカメラ及びデジタルビデオカメラ等の撮像装置、携帯電話及び携帯型オーディオビジュアル機器等の端末装置、携帯ゲーム機器、PDA(Personal Digital Assistance)、オンスクリーンキーボード、電子辞書、ディスプレイ装置、オーディオ/ビジュアル機器、プロジェクタ、ゲーム機器、ロボット機器、その他の電化製品等が挙げられる。」 よって、上記各記載事項を関連図面(特に図19-図21)に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、特に<第7の実施形態>に関連して、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているといえる。 「制御ユニットCは、例えば、回路基板とこれに搭載される演算処理回路、メモリ等を含む各種電子部品で構成され、金属シールド9とフレームの底部4cの間の空間内に配置され、制御ユニットCは、タッチパネル2による操作位置の検出制御、表示パネル7の表示制御、感圧センサ3による押圧力の検出制御など、センサ装置700の動作全体を制御し、 第1及び第2の電極10及び11としては、導電性材料の表面に、例えばポリイミド等の絶縁材料が積層されたものが、用いられてもよく、 タッチパネル2の下面2bに表示パネル7の上面7a(第1の面)が接着され、表示パネル7の下面7b(第2の面)に感圧センサ703が設けられ、表示カバー5は、環状に形成された粘着剤712によりフレーム4に固定され、 第1及び第2の電極10及び11は、表示パネル7の下面7b及び金属シールド9にそれぞれ設けられ、第1及び第2の電極10及び11の間には、スペーサ714が設けられ、 表示カバー5の操作領域5aが押圧された際に、表示カバー5が撓むように変形し、これと一体となってタッチパネル2及び表示パネル7が撓むように変形し、これにより操作領域5aに加えられた押圧力が、表示カバー5の撓み量に応じた第1及び第2の電極10及び11間の静電容量の変化に基づいて検出され、 スペーサ714は、第1及び第2の電極10及び11の形状等に合わせて適宜設けられ、 第1及び第2の電極10及び11は、表示カバー5の四隅に対応する位置と、操作領域5aの中央に対応する位置とに複数設けられてもよく、操作領域5aの中央に対応する位置に所定の面積で設けられてもよく、 表示パネル7により、操作領域5aに画像が表示され、操作領域5aは、表示パネル7から見て上面7a側に位置し、従って、表示パネル7の下面7bに設けられた感圧センサ703により、表示パネル7の画像の表示が遮られることがなく、これにより感圧センサ703(第1及び第2の電極10及び11)の形状や数、又は表示パネル7に対する感圧センサ703の位置等の自由度が大きくなり、特に、表示カバー5の操作領域5aの中央に対応する位置に感圧センサ703を設けることができる、 センサ装置700。」 2 引用文献2 当審拒絶理由に引用した引用文献2には、図面(特に図3-図4、図10)とともに、以下の記載がある。 (1) 段落[0037] 「図3に示すように、操作パネル20は、透光性で硬質の合成樹脂材料で形成された基板21を有している。本明細書の透光性とは、ケース2の内部に設けられている液晶表示装置などの表示装置41で表示される画像を、透過して目視できることを意味している。」 (2) 段落[0039] 「透光性の基板21の下面には、接着剤層25を介して検知フィルム26が接合されている。検知フィルム26には、両面に電極層27と28とが設けられている。検知フィルム26は透光性の合成樹脂フィルムで形成され、電極層27,28はITOなどの透光性の導電性材料でパターン形成されている。検知フィルム26と電極層27,28とで位置検知装置が構成されている。図8に示すように、電極層27は、複数の帯状電極または線状電極が平行に形成され、他方の電極28も、複数の帯状電極または線状電極が平行に形成されている。電極層27と電極層28は、検知フィルム26を挟んで互いに直交する向きに形成され、一方がX電極層で他方がY電極層として機能している。 (3) 段落[0041] 「図3に示すように、位置検知装置を構成する電極層28の内側には下層フィルム31が接着剤層を介して接合されている。この下層フィルム31の裏蓋体に向く背面には、全面的にシールド電極層32が形成されている。下層フィルム31は透光性のフィルムであり、シールド電極層32はITOなどの透光性の導電性材料で形成されている。前記位置検知装置と表示装置41との間に前記シールド電極層32が介在しているため、表示装置41に流れる電流が位置検知装置の検知動作に悪影響を与えるのが防止されている。」 (4) 段落[0044]-[0047] 「図4に示すように、それぞれの対向電極層33は、前記弾性部材10の支持部12を挟んで前記シールド電極層32に対向している。6箇所に設けられた対向電極層33とシールド電極層32とで押圧検知装置が構成されている。この押圧検知装置では、図10に示す押圧検知部46の回路によって、対向電極層33とシールド電極層32とにより形成されるコンデンサを含む微分回路が構成されている。押圧検知部46からそれぞれの対向電極層33に、パルス状などの電圧が短い時間で且つ一定周期で繰り返して印加される。同じ電極層33から前記微分回路における電流の立ち上がりの遅延状態が検知される。前記操作パネル20が押されて、対向電極層33とシールド電極層32との対向距離が変化し静電容量が変化すると、前記電流の立ち上がり時刻が変化する。押圧検知部46において、この変化を検知することで、操作パネル20が押圧されたか否かが判断される。 なお、対向電極層33に対する通電時刻は、前記位置検知装置を構成する電極層27,28に通電される時刻と重複しないように割り振られる。また、複数の対向電極層33に対して順番に電圧が印加される。 この携帯機器1は、ケース2の内部に設けられた表示装置41で表示される画像が、操作パネル20において加飾層24で覆われていない透過領域20Bにおいて外部から目視できる。この表示内容に応じて、操作パネル20の表面の操作面20Cに指が触れると、電極層27,28が対向する位置検知装置および図10に示す位置検知部45によって、指が触れている位置が検知されて操作判定部47にその情報が与えられる。この操作において操作パネル20が押されると、対向電極層33とシールド電極層32との対向距離の変化が、押圧検知部46で検知され、その情報が操作判定部47に与えられる。操作判定部47では、押圧検知部46において操作パネル20が押されたと検知されたときに、指が触れている箇所での操作が実行されたと判断し、表示装置41によって表示されている画像と指が触れている位置との関係で決められている操作信号が生成される。 押圧検知装置は、対向電極層33が6箇所設けられている。押圧検知部46では、それぞれの対向電極層33から得られる検知信号の総和が所定値を超えたときに、操作パネル20が押されたものと判断する。また、複数箇所の対向電極層33のそれぞれから得られる検知信号を互いに比較することによって、操作パネル20のどの位置が押されたかを推定することも可能である。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と、引用発明とを対比すると以下のことがいえる。 ア 引用発明の「タッチパネル2」と「感圧センサ703」が設けられた「センサ装置700」は、本願発明1の「タッチ表面に対するタッチの圧力検出が可能なタッチ入力装置」に相当する。 イ 引用発明の「表示パネル7」は、本願発明1の「ディスプレイモジュール」に相当する。 ウ 引用発明の「金属シールド9」は、「例えば、回路基板とこれに搭載される演算処理回路、メモリ等を含む各種電子部品で構成され」る「制御ユニットC」を、「金属シールド9とフレームの底部4cの間の空間内に配置」するものであって、「金属シールド9」は、「表示パネル7」と「制御ユニットC」の間に配置されるから、本願発明1の「バッテリー実装空間を前記ディスプレイモジュールから分離する基板」と、「電子部品の実装空間を前記ディスプレイモジュールから分離する基板」である点で共通するといえる。 エ 引用発明の「第1の電極10」は、本願発明1の「電極」に相当する。 引用発明の「第2の電極11」は、本願発明1の「基準電位層」と、「電位層」である点で共通するといえる。 よって、引用発明の「第1の電極10」は、「表示パネル7の下面7b」に設けられ、「表示カバー5の操作領域5aが押圧された際に、表示カバー5が撓むように変形し、これと一体となってタッチパネル2及び表示パネル7が撓むように変形し、これにより操作領域5aに加えられた押圧力が、表示カバー5の撓み量に応じた第1及び第2の電極10及び11間の静電容量の変化に基づいて検出され」、「第1及び第2の電極10及び11は、表示カバー5の四隅に対応する位置と、操作領域5aの中央に対応する位置とに複数設けられてもよく、操作領域5aの中央に対応する位置に所定の面積で設けられてもよ」いものであるから、該「第1の電極10」は、本願発明1の「前記ディスプレイモジュールと前記基板との間として前記ディスプレイモジュールの表示領域と垂直方向に重なる位置に配置され、前記タッチ表面に対する前記タッチによって基準電位層との距離が変わり得る位置に配置された電極」と、「前記ディスプレイモジュールと前記基板との間として前記ディスプレイモジュールの表示領域と垂直方向に重なる位置に配置され、前記タッチ表面に対する前記タッチによって電位層との距離が変わり得る位置に配置された電極」である点で共通するといえる。 オ 引用発明の「第1及び第2の電極10及び11は、表示パネル7の下面7b及び金属シールド9にそれぞれ設けられ、第1及び第2の電極10及び11の間には、スペーサ714が設けられ」ることは、本願発明1の「前記基準電位層と前記電極との間にスペーサ層が位置」することと、「前記電位層と前記電極との間にスペーサ層が位置」する点で共通するといえる。 カ 引用発明の「表示カバー5の操作領域5aが押圧された際に、表示カバー5が撓むように変形し、これと一体となってタッチパネル2及び表示パネル7が撓むように変形し、これにより操作領域5aに加えられた押圧力が、表示カバー5の撓み量に応じた第1及び第2の電極10及び11間の静電容量の変化に基づいて検出され」ることは、本願発明1の「前記電極と前記基準電位層との間の前記距離によって変わる、前記電極から検出される静電容量に基づいてタッチ圧力の大きさを検出することができ」ることと、「前記電極と前記電位層との間の前記距離によって変わる、前記電極から検出される静電容量に基づいてタッチ圧力の大きさを検出することができ」る点で共通するといえる。 キ 引用発明の「表示カバー5の操作領域5aが押圧された際に、表示カバー5が撓むように変形し、これと一体となってタッチパネル2及び表示パネル7が撓むように変形し、これにより操作領域5aに加えられた押圧力が、表示カバー5の撓み量に応じた第1及び第2の電極10及び11間の静電容量の変化に基づいて検出され」ることは、本願発明1の「前記ディスプレイモジュールは、前記タッチによって撓み、前記ディスプレイモジュールの撓みによって前記電極から検出される前記静電容量が変わ」ることに相当する。 ク 引用発明の「表示カバー5の操作領域5aが押圧された際に、表示カバー5が撓むように変形し、これと一体となってタッチパネル2及び表示パネル7が撓むように変形し、これにより操作領域5aに加えられた押圧力が、表示カバー5の撓み量に応じた第1及び第2の電極10及び11間の静電容量の変化に基づいて検出され」ることは、本願発明1の「前記静電容量は、前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」むことと、「前記静電容量は、前記電位層に対する前記電極の静電容量を含」む点で共通するといえる。 よって、本願発明1と引用発明との一致点・相違点は次のとおりであるといえる。 <一致点> 「タッチ表面に対するタッチの圧力検出が可能なタッチ入力装置であって、 ディスプレイモジュールと、 電子部品の実装空間を前記ディスプレイモジュールから分離する基板と、 を含み、 前記ディスプレイモジュールと前記基板との間として前記ディスプレイモジュールの表示領域と垂直方向に重なる位置に配置され、前記タッチ表面に対する前記タッチによって電位層との距離が変わり得る位置に配置された電極をさらに含み、 前記電位層と前記電極との間にスペーサ層が位置し、 前記電極と前記電位層との間の前記距離によって変わる、前記電極から検出される静電容量に基づいてタッチ圧力の大きさを検出することができ、 前記ディスプレイモジュールは、前記タッチによって撓み、前記ディスプレイモジュールの撓みによって前記電極から検出される前記静電容量が変わり、 前記静電容量は、前記電位層に対する前記電極の静電容量を含む、 タッチ入力装置。」 [相違点1] 「基板」の機能について、本願発明1では、「バッテリー実装空間」を前記ディスプレイモジュールから分離する基板であるのに対して、引用発明の「金属シールド9」は、「例えば、回路基板とこれに搭載される演算処理回路、メモリ等を含む各種電子部品で構成され」る「制御ユニットC」を実装するものであって、「バッテリー」実装空間を分離することは特定されていない点。 [相違点2] 「電位層」が、本願発明1では、「基準」電位層であるのに対して、引用発明では、「電極11」が「基準」電位層であることは特定されていない点。 [相違点3] 「静電容量」の検出について、本願発明1では、「前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」む静電容量を検出するのに対して、引用発明では、「第1及び第2の電極10及び11間の静電容量」を検出するものであって、「基準電位層」に対する「自己静電容量」を検出することは特定されていない点。 [相違点4] 本願発明1では、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」のに対して、引用発明では、「第2の電極11」が、「(基準)電位層」に対応するものであって、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」ことは特定されていない点。 (2) 当審の判断 事案の鑑みて、「基準電位層」の構成に関連する、上記[相違点2]-[相違点4]について先にまとめて検討する。 上記「(1)対比 エ」記載のように、本願発明1の「(基準)電位層」に対応する引用発明の構成要素は、「第2の電極11」である。 ここで、一般に、「シールド」部材が、通常接地されて「基準」電位を有することは、文献を挙げるまでもない技術常識である。 よって、引用発明の「金属シールド9」も、明記はないものの、接地されて「基準」電位を有することは自明であるといい得る。 さらに、引用文献2には、「基板21」の背面に全面的に形成された「シールド電極層32」を、表示部からの干渉を防ぐための「シールド」として利用すると同時に、「シールド電極層32」と「対向電極33」とでコンデンサを形成して、対向する電極間の距離に応じた静電容量の変化を検出することで、シールド用の電極を押圧力の検出用の電極にも兼用することが記載されていると認められる(上記2(1)-(4)を参照。)。 したがって、「シールド」である点で共通する引用発明に存在する「金属シールド9」に着目して、これが「前記基準電位層として機能する」ように構成するとともに、上記引用文献2に開示された技術的事項を適用することによって、「第2の電極11」に替えて、「金属シールド9」が、ディスプレイモジュールと基板との間に配置された「第1の電極10」とコンデンサを形成して、「前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」む静電容量を検出することで、「金属シールド9」を押圧力の検出にも兼用するように構成することについては、当業者が容易になし得ることであるといい得る。 しかしながら、上記[相違点2]-[相違点4]の構成に対応する、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」とともに、ディスプレイモジュールと基板との間に配置された「第1の電極10」とコンデンサを形成して、「前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」む静電容量を検出することで、ディスプレイモジュール、あるいはディスプレイモジュール内部の基準電位層を、押圧力の検出にも兼用するという構成は、上記引用文献1-2に記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえない。 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2について 「本願発明2」は、要するに、「本願発明1」の「バッテリー実装空間を前記ディスプレイモジュールから分離する基板」に替えて、「ノイズを遮蔽するように構成された基板」を備える点で、「本願発明1」とは異なる発明である。 したがって、「本願発明2」を、上記「引用発明」と対比した場合、引用発明の「金属シールド9」が、本願発明2における「ノイズを遮蔽するように構成された基板」に相当するため、「本願発明1」における上記「相違点1」の相違はないものであって、上記[相違点2]-[相違点4]のみで両者は相違するものである。 そして、上記[相違点2]-[相違点4]に係る、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」とともに、ディスプレイモジュールと基板との間に配置された「第1の電極10」とコンデンサを形成して、「前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」む静電容量を検出することで、ディスプレイモジュール、あるいはディスプレイモジュール内部の基準電位層を、押圧力の検出にも兼用する構成は、上記のとおり、引用文献1-2には記載されておらず、本願出願前において周知技術であるともいえないから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明3-13について 本願発明3-13は、本願発明1または2を減縮した発明であり、同様に、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」とともに、ディスプレイモジュールと基板との間に配置された「第1の電極10」とコンデンサを形成して、「前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」む静電容量を検出することで、ディスプレイモジュール、あるいはディスプレイモジュール内部の基準電位層を、押圧力の検出にも兼用する構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 原査定についての判断 平成30年12月20日付けの補正により補正された請求項1-13は、請求項1-2において、補正前には「前記基板又は前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」とあったものが、補正により「前記基板」が削除されて、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」と補正されることで、「前記ディスプレイモジュールが前記基準電位層として機能する、あるいは前記ディスプレイモジュール内部に前記基準電位層が位置する」とともに、ディスプレイモジュールと基板との間に配置された「第1の電極10」とコンデンサを形成して、「前記基準電位層に対する前記電極の自己静電容量を含」む静電容量を検出することで、ディスプレイモジュール、あるいはディスプレイモジュール内部の基準電位層を、押圧力の検出にも兼用するという技術事項を有するものとなり、当該技術的事項は、原査定における引用文献A(引用文献1)、引用文献B、引用文献C(引用文献3)には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1-4は、原査定における引用文献A-C及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-04-15 |
出願番号 | 特願2015-19094(P2015-19094) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 大輔、円子 英紀、萩島 豪 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
山田 正文 稲葉 和生 |
発明の名称 | タッチ入力装置 |
代理人 | 今藤 敏和 |
代理人 | 川嵜 洋祐 |
代理人 | 坪倉 道明 |
代理人 | 岩瀬 吉和 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 重森 一輝 |
代理人 | 安藤 健司 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 市川 英彦 |
代理人 | 青木 孝博 |
代理人 | 市川 祐輔 |
代理人 | 五味渕 琢也 |
代理人 | 飯野 陽一 |
代理人 | 城山 康文 |