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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1350449
審判番号 不服2018-4779  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-09 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2013-248106「シリコンウェーハの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月 8日出願公開,特開2015-106647,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年11月29日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 6月16日付け 拒絶理由通知
平成29年 8月17日 意見書提出・手続補正
平成30年 1月 5日付け 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成30年 4月 9日 審判請求・手続補正
平成31年 1月25日付け 拒絶理由通知(以下,この通知に係る拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
平成31年 3月15日 意見書提出・手続補正

第2 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は,平成31年3月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-本願発明5は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
シリコンウェーハを準備する工程と,
前記シリコンウェーハの表面を洗浄する工程と,
を含むシリコンウェーハの製造方法であって,
前記洗浄工程は,
フッ化水素酸による洗浄と,
フッ化水素酸による洗浄の次工程の湿式処理として塩酸含有水溶液による洗浄と,を含み,
前記フッ化水素酸による洗浄を,フッ化水素酸を含む液槽に前記シリコンウェーハを浸漬することにより行い,
前記塩酸含有水溶液による洗浄を,前記塩酸含有水溶液を含む液槽に前記フッ化水素酸による洗浄後のシリコンウェーハを浸漬することにより行い,
前記塩酸含有水溶液は,塩酸を質量基準で0.01ppm以上1ppm以下含む,シリコンウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記塩酸含有水溶液は,酸成分として塩酸のみを含む水溶液である請求項1に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記塩酸含有水溶液による洗浄時間は,5分以下である請求項1または2に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記フッ化水素酸による洗浄の前にSC-1洗浄および水洗からなる群から選択される一種以上の洗浄を行う請求項1?3のいずれか1項に記載のシリコンウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記塩酸含有水溶液による洗浄の後に,水洗およびオゾン水による洗浄からなる群から選択される一種以上の洗浄を行う請求項1?4のいずれか1項に記載のシリコンウェーハの製造方法。」

第3 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平11-204478号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下同じ。)
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は,表面にシリコン酸化膜が形成された半導体基板の洗浄方法およびその洗浄装置に関するものである。」
「【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,このシリコン酸化物(膜)を除去した後,半導体基板の表面に付着したフッ化水素酸やフッ化アンモニウムを洗浄するために,薬液を含まない純水で洗浄すると,以下に示すような反応により再度,シリコン酸化物(膜)が形成されてしまうという問題点があった。
【0010】まず,半導体基板表面に付着したシリコン酸化物(膜)をフッ化水素酸で処理することによって,半導体基板表面およびその付近に,SiF_(6)^(2-)イオンが発生する。このSiF_(6)^(2-)イオンは,フッ素を含む物質でシリコン酸化膜をエッチングしたときに発生する。次に薬液を含まない純水を供給して水洗処理を開始するが,この時pH値の急激な上昇が起こり,SiF_(6)^(2-)イオンの加水分解反応が次式(1)に示すように起こる。
SiF_(6)^(2-)+6H_(2)O⇔Si(OH)_(6)^(2-)+6HF (1)
この反応により発生したSi(OH)_(6)^(2-)イオンは,互いに脱水縮合反応を起こし,SiO_(2)から成るコロイダルシリカを溶液中に発生させ,半導体表面上に付着する。このコロイダルシリカは,コロイド状のシリコン酸化物で,これがシリコンである半導体基板表面に付着してシリコン酸化物(膜)となり,半導体装置の特性を劣化させるという問題点があった。
【0011】また,特に,裏面に3000Å程度のシリコン酸化膜が形成されている半導体基板を使って半導体装置を形成する場合,図9に示したように,カセット105に入れて複数枚を一度に処理することによって,半導体基板102の裏面から,表面よりも多くのコロイダルシリカが発生し,隣接する半導体基板の表面に多くのシリコン酸化物(膜)が形成されるという問題点があった。
【0012】本発明は,上記した点に鑑みてなされたものであり,半導体基板の表面に形成されたシリコン酸化物(膜)を除去するときに,薬液を含まない純水で洗浄しても再度シリコン酸化物(膜)が形成されることなく,半導体装置の特性が向上する半導体基板の洗浄方法およびその洗浄装置を提供することを目的とする。」
「【0019】
【発明の実施の形態】実施の形態1.図1?図3はこの発明の実施の形態1を示す半導体基板の洗浄装置を示す断面図である。図1?図3において,1は処理槽,2は半導体基板,3および31は供給ライン,4は供給弁,5はカセット,6はバルブ,7はポンプである。
【0020】図1に示した洗浄装置は,半導体基板2の表面に付着したシリコン酸化物(膜)をフッ化水素酸などで除去した後に,半導体基板2を処理槽1に浸すことによってこれらの薬液を洗浄するための装置である。処理槽1には,供給ライン3が接続されており,供給弁4の開閉によって純水が供給される。さらにこの供給ライン3には供給ライン31が接続されて,塩酸などの無機酸が供給されるが,この供給ライン31の途中に設けられているバルブ6は開いている度合いを調節することによって無機酸の添加量を制御できる。また,供給ライン31が供給ライン3に接続されるのは,供給弁4よりも処理槽1に近い部分でも離れた部分でもかまわない。
【0021】処理槽1は,図1に示したように半導体基板2を1枚ずつまたは複数枚一度に入れて処理を行なうものだけでなく,図2に示したように,複数枚の半導体基板2をカセット5に入れて処理するためのものもある。また,図3に示したように,無機酸の供給量制御手段としてバルブ6の代わりに,1ショットで一定量の無機酸を供給するポンプ7を配置し,ショット数の変化によって,無機酸の量を調節してもよい。
【0022】この半導体基板の洗浄装置によれば,塩酸などの無機酸が純水の中に含まれる量を調節することができるだけでなく,洗浄処理の途中で変更することもでき,制御性よく洗浄できるため,この後に形成される膜質が良好になり,信頼性および特性の向上した半導体装置を得ることができる。」
「【0025】ここまでの処理によって表面にシリコン酸化物(膜)が形成された半導体基板2を,フッ化水素酸を含んだ純水に浸す。この時の洗浄装置も図4に示したものであり,処理槽11には一定の濃度のフッ化水素酸を含んだ純水または,フッ化アンモニウムとフッ化水素酸を含んだ純水が準備されている。次に図1に示すように塩酸を含んだ純水が入った処理槽1に半導体基板2を浸してから,供給弁4を閉じて純水だけを供給する。これによってオーバーフローさせて,洗浄層1内に薬液を含まない状態にして半導体基板2の表面を洗浄する。
【0026】例えば,半導体基板の表面に300Å程度のシリコン酸化物(膜)が形成されている場合は,まず,図4に示した洗浄装置によってフッ化水素酸を0.5wt%程度含んだ純水に15分浸す。フッ化水素酸を含んだ純水は,オーバーフローしたものを循環させて複数回使用してもよく,また,フッ化水素酸が低濃度の場合は未使用のものを供給し,使用済みのものはオーバーフローさせて廃棄してもよい。次に,図1に示した洗浄装置の処理槽1に半導体基板2を移動する。この時,処理槽1内の純水は塩酸を0.1wt%程度含んでおり,pH値は1.5程度であるが,pH値は7以下であればよい。さらに供給弁4は開いて純水が供給されるとともに,バルブ6で処理槽1内の塩酸濃度が0.1wt%程度に保たれるように塩酸が供給されて,オーバーフローしながら3分間の洗浄を行なったところで,バルブ6は閉じて,薬液を含まない純水だけを12分間供給し続ける。この後,乾燥を行なう。」
「【0036】
【発明の効果】本発明は,以上説明したように構成されているので,以下のような効果を奏する。本発明は,半導体基板表面のフッ化水素酸やフッ化アンモニウムなどの薬液を洗浄する際に,無機酸を含んだ純水によってpH値の急激な低下を抑えてオーバーフローし,半導体基板表面に発生しているSiF_(6)^(2-)イオンをイオンの状態で処理槽内から排除した後,薬液を含まない純水によって洗浄する。これによって,SiF_(6)^(2-)イオンの加水分解反応の進行を防止してコロイダルシリカの形成を防ぐことができ,シリコン酸化物(膜)が除去されるとともに,半導体基板の表面に薬液が残らず,信頼性および半導体特性の向上した半導体装置を得ることができる。
【0037】さらに,供給される純水中に含まれる無機酸の濃度を段階的に減じているため,処理槽内の無機酸の濃度変化が緩やかになり,コロイダルシリカの発生を効率よく抑制し,半導体装置の信頼性および特性が向上する。」

(2)引用発明
前記(1)より,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「シリコン酸化物(膜)が形成された半導体基板2を,フッ化水素酸を含んだ純水に浸し,次に塩酸を含んだ純水が入った処理槽1に半導体基板2を浸してから,供給弁4を閉じて純水だけを供給する半導体基板2の洗浄方法であって,
半導体基板は,シリコンであり,
フッ化水素酸を含んだ純水は処理槽11に準備されており,
塩酸を含んだ純水は,塩酸を0.1wt%程度含んでいる
半導体基板2の洗浄方法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006-270115号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体ウエハ,液晶表示用ガラス基板,プラズマ表示パネル等の基板に処理液を供給して基板の表面に洗浄等の所定の処理を行う基板処理装置及び基板処理方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが,従来の基板処理装置では,フッ酸(HF)をウエハの表面へ供給してウエハの表面のエッチング処理が終了すると,すぐにウエハを回転させた状態で純水をウエハの表面へ供給してウエハの表面の純水洗浄を行っているので,純水洗浄処理後のウエハの表面には,エッチング処理された後の生成物であるフルオロケイ酸が付着してしまうという問題がある。」
「【0035】
なお,この段階での薬液処理では,硫酸過水洗浄,オゾン水洗浄,RCA(Radio Corporation of America)洗浄が考えられる。硫酸過水洗浄の場合,開閉弁制御部151により開閉弁138Aを「開」にして,硫酸過水供給源238から配管138及び配管131を介して処理液供給ノズル130からウエハWの表面へ硫酸過水を供給して,ウエハWの表面の薬液洗浄を行う。オゾン水洗浄の場合,開閉弁制御部151により開閉弁136Aを「開」にして,オゾン水供給源236から配管136及び配管131を介して,処理液供給ノズル130からウエハWの表面へオゾン水を供給して,ウエハWの表面の薬液洗浄を行う。RCA洗浄の場合,図1には示していないが,アンモニア水・過酸化水素水・水を所定の割合にしたSC-1処理液による洗浄や塩酸・過酸化水素水・水を所定の割合にしたSC-2処理液により,ウエハWの表面の洗浄を行う。ステップS11のウエハWの薬液処理が終了すると,開閉弁制御部150は,それぞれの開閉弁を「閉」にする。
【0036】
次に,ウエハWの回転を継続させた状態で,開閉弁制御部151により開閉弁132Aを「開」にして,純水供給源232から配管132及び配管131を介して,処理液供給ノズル130からウエハWの表面へ純水を供給して,ウエハWの表面の純水処理を行う(ステップS12)。これにより,ウエハWの表面の純水洗浄が行われる。」

第4 対比及び判断
1 本願発明1と引用発明について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「半導体基板2」は,シリコンであるから,「シリコンウェーハ」といえる。
イ 引用発明の「半導体基板2の洗浄方法」は,「シリコンウェーハを準備する工程と,前記シリコンウェーハの表面を洗浄する工程と,を含むシリコンウェーハの製造方法」を有しているといえる。
ウ 引用発明の「半導体基板2を,フッ化水素酸を含んだ純水に浸」す工程は,本願発明1の「フッ化水素酸による洗浄」に相当し,フッ化水素酸を含んだ純水は処理槽11に準備されているから,「前記フッ化水素酸による洗浄を,フッ化水素酸を含む液槽に前記シリコンウェーハを浸漬することにより行」っているといえる。
エ 引用発明の「次に塩酸を含んだ純水が入った処理槽1に半導体基板2を浸」す工程は,本願発明1の「フッ化水素酸による洗浄の次工程の湿式処理として塩酸含有水溶液による洗浄」に相当し,「前記塩酸含有水溶液による洗浄を,前記塩酸含有水溶液を含む液槽に前記フッ化水素酸による洗浄後のシリコンウェーハを浸漬することにより行」っているといえる。
オ すると,本願発明1と引用発明とは,下記カの点で一致し,下記キの点で相違する。
カ 一致点
「シリコンウェーハを準備する工程と,
前記シリコンウェーハの表面を洗浄する工程と,
を含むシリコンウェーハの製造方法であって,
前記洗浄工程は,
フッ化水素酸による洗浄と,
フッ化水素酸による洗浄の次工程の湿式処理として塩酸含有水溶液による洗浄と,を含み,
前記フッ化水素酸による洗浄を,フッ化水素酸を含む液槽に前記シリコンウェーハを浸漬することにより行い,
前記塩酸含有水溶液による洗浄を,前記塩酸含有水溶液を含む液槽に前記フッ化水素酸による洗浄後のシリコンウェーハを浸漬することにより行う,
シリコンウェーハの製造方法。」

キ 相違点
本願発明1の「前記塩酸含有水溶液は」,「塩酸を質量基準で0.01ppm以上1ppm以下含む」ものであるのに対し,引用発明は,塩酸を0.1wt%程度含んでいる点。

(2)相違点についての判断
ここで,相違点について検討する。
本願明細書には,「本発明の目的は,HF洗浄を含み,かつフッ素イオンの残留の少ないシリコンウェーハを得ることのできるシリコンウェーハの製造方法を提供すること」(段落【0006】),「本発明者は・・・中略・・・,HF洗浄後の次工程の湿式処理として塩酸含有水溶液による洗浄(すすぎ洗い)を行うことにより,HF洗浄後のシリコンウェーハ表面に残留したフッ素イオンを高度に除去することが可能であることを新たに見出した」(段落【0007】),「洗浄に用いる塩酸含有水溶液は,塩酸HClの濃度が,質量基準で0.001ppm以上であることが好ましく,シリコンウェーハ表面からフッ素イオンをより効率的に除去する観点からは,0.01ppm以上であることが好ましい。塩酸濃度が高いほど,フッ素イオンの除去効率の点からは好ましいが,塩酸濃度が高いほど,塩素イオンCl^(-)が,ウェーハ表面に付着していた金属イオンや水溶液中に含まれていた金属イオンと塩を形成することにより,ウェーハ表面のパーティクル発生頻度が高まる」(段落【0021】),塩酸濃度0.01ppmの塩酸含有水溶液の実施例2及び塩酸濃度1ppmの塩酸含有水溶液の実施例3は,洗浄後のシリコンウェーハ表面に存在するフッ素イオン濃度が4.9E+10[atoms/cm2]及び2.0E+10[atoms/cm2]であること(【表1】)が,記載されていることから,本願発明1は,フッ化水素酸で洗浄した際のシリコンウェーハの表面に残留するフッ素イオンを高度に除去するために,塩酸含有水溶液の塩酸濃度を質量基準で0.001ppm以上1ppm以下に限定したものと認められる。
これに対して,引用文献1には,発明が解決しようとする課題として,「このシリコン酸化物(膜)を除去した後,半導体基板の表面に付着したフッ化水素酸やフッ化アンモニウムを洗浄するために,薬液を含まない純水で洗浄すると,以下に示すような反応により再度,シリコン酸化物(膜)が形成されてしまうという問題点があった。」(第3の1(1)【0009】)こと,塩酸を含んだ純水は「pH値は7以下であればよい。」(第3の1(1)【0026】)こと,発明の効果として,「SiF_(6)^(2-)イオンの加水分解反応の進行を防止してコロイダルシリカの形成を防ぐことができ,シリコン酸化物(膜)が除去されるとともに,半導体基板の表面に薬液が残らず,信頼性および半導体特性の向上した半導体装置を得ることができる。」(第3の1(1)【0036】)ことは記載されているものの,フッ化水素酸で洗浄した際のシリコンウェーハの表面へのフッ素イオンの残留については,何ら記載されていない。
そうすると,引用発明においては,フッ化水素酸で洗浄したシリコンウェーハにおける残留フッ素イオン量と,塩酸を含んだ純水中の塩酸の含有量との関係を認識することはないから,引用発明において,塩酸を含んだ純水を「塩酸を質量基準で0.01ppm以上1ppm以下含む」ものとする動機付けがない。
また,引用文献2には,相違点に係る構成は記載されておらず,また,相違点に係る構成が周知の構成であるともいえない。
そして,本願発明1は,相違点に係る構成を備えることによって,「HF洗浄の次工程の湿式処理として塩酸含有水溶液による洗浄を行うことで,HF処理後にシリコンウェーハ表面に残留したフッ素イオンを高度に除去できる」(本願段落【0040】)という格別の効果を奏すると認められ,該効果は,出願時の技術水準から当業者が予測できたものとはいえない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-5について
本願発明2-5は,本願発明1と同一の構成を含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,平成29年8月17日付け手続補正により補正された請求項1-5に係る発明について,上記引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成31年3月15日付け手続補正により補正された請求項1-5に係る発明は,上記のとおり,引用文献1-2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
特許法第17条の2第3項について
当審では,平成30年4月9日付けでした手続補正は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないとの拒絶の理由を通知しているが,平成31年3月15日付け手続補正において,請求項1において,「(但し,前記・・・(略)・・・を除く)」を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-5は,当業者が引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-16 
出願番号 特願2013-248106(P2013-248106)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 55- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高橋 宣博戸次 一夫  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 小田 浩
河合 俊英
発明の名称 シリコンウェーハの製造方法  
代理人 特許業務法人特許事務所サイクス  

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