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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G09F
管理番号 1350492
審判番号 不服2018-9361  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-06 
確定日 2019-04-25 
事件の表示 特願2016- 97561「表示装置製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月24日出願公開、特開2017-207528、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
特許出願: 平成28年5月16日
拒絶査定: 平成30年6月15日(送達日:同年同月22日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成30年7月6日
手続補正: 平成30年7月6日 (以下、本件補正という。)


第2 原査定の概要
原査定(平成30年6月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項1
・引用文献等1-2、4-5

・請求項2
・引用文献等1-5

引用文献等一覧
1.特開2005-150076号公報
2.特開2007-220563号公報
3.特開2011-14483号公報
4.特開平6-160206号公報
5.特開2012-78692号公報


第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、本件補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
表示素子を用いて画像を表示する表示装置を製造する表示装置製造方法であって、
ガラス基板の第1の主面上に有機樹脂膜を形成するステップと、
前記有機樹脂膜上に表示素子を含む層を形成するステップと、
前記表示素子を含む層を形成した後に、前記有機樹脂膜を含む前記ガラス基板の第1の主面側を耐エッチング性部材で覆いつつ第2の主面側をエッチングすることによって、湾曲自在になる厚みまで前記ガラス基板を薄型化するステップと、
を含み、
前記湾曲自在になる厚みが、50?200μmである表示装置製造方法。
【請求項2】
前記ガラス基板を薄型化するステップにおいて、前記ガラス基板に対してエッチング液を噴射することによってエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の表示装置製造方法。」


第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。)

「【0001】
本発明は超薄型ガラス基板を有する有機電界発光表示装置及びその製造方法に関する。」

「【0047】
この有機電界発光部2に備わるOLEDは、多様な形態のものが適用されうるが、すなわち、単純マトリクスタイプの受動駆動型(Passive Matrix:PM)OLEDでも、薄膜トランジスタ層を備えた能動駆動型(Active Matrix:AM)OLEDでも何れも適用されうる。」

「【0053】
図4に、AM OLEDの一例を示す図面である。図1で、有機電界発光部2の各画素は、図4に示されたようなTFT構造及び自発光素子であるOLEDを有する。」

「【0068】
前記のような有機電界発光表示装置のガラス基板1は、エッチングによってその厚さtを0.05ないし0.5mmに形成する。以下では、本発明の望ましい一実施例による有機電界発光表示装置の製造方法を説明する。
【0069】
まず、図5Aに示されたように、透明な素材のガラス10を準備する。このガラス10は、その厚さTが相対的に厚く形成されて十分な構造的強度を有して有機電界発光表示部の画像形成時にパターンの歪曲を防止でき、工程中に破損や欠陥が発生しない程度の厚さに形成されうる。本発明の望ましい一実施例によれば、前記ガラス10の厚さTは、0.7mm以上となりうる。
【0070】
次いで、図5Bに示されたように、このガラス10に複数個の有機電界発光部2を形成する。この有機電界発光部2は、前述した図1ないし図4で説明したものと同じでありうる。
【0071】
この有機電界発光部2は、図5Cに示されたように、密封部3によって密封される。前記密封部3は、前述したように薄膜形態の密封部で備わりうる。
【0072】
前記のように密封部3を形成した後には、図5Dに示されたように、前記複数個の有機電界発光部2を覆うように密封ガラス50で密封する。この時、前記密封ガラス50は、前記複数個の有機電界発光部2のエッジにシーリング材51を塗布した後、このシーリン
グ材51に密封ガラス50を接合させる方式で密封する。したがって、前記ガラス10と密封ガラス50とは、そのエッジ領域でだけシーリング材51によって接合または密封されている。
【0073】
このようにガラス10を密封した後には、図5Eに示されたように、これを所定のエッチング液53が含まれている水槽52に沈積する。この時、前記エッチング液としてはフッ酸または塩酸などが利用されうる。
【0074】
ここで、前記エッチングによって前記ガラス10は、その厚さtが0.05mmないし0.5mmになる。
【0075】
前記のようにガラス10のエッチングが完了すれば、図5Fに示されたように、単一の有機電界発光部2に対応するように密封ガラス50とガラス10を同時に切断する。この時、密封ガラス50は、各有機電界発光部2を密封した密封部3とは接合されていないため、各有機電界発光表示装置は、密封ガラスとの分離工程なしも簡単に得られる。この時、各有機電界発光表示装置は、その厚さtが0.05mmないし0.5mmのガラス基板1を備える。」


上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「有機電界発光部2の各画素が、TFT構造及び自発光素子であるOLEDを有する、能動駆動型(Active Matrix:AM)OLED(【0047】、【0053】参照。)を含む有機電界発光表示装置の製造方法(【0068】参照。)であって、
透明な素材のガラス10を準備する(【0069】参照。)工程と、
ガラス10に複数個の有機電界発光部2を形成する(【0070】参照。)工程と、
前記複数個の有機電界発光部2を覆うように密封ガラス50で密封(【0072】参照。)し、所定のエッチング液53が含まれている水槽52に沈積(【0073】参照。)し、前記エッチングによって前記ガラス10は、その厚さtが0.05mmになる(【0074】参照。)工程と、
を含む有機電界発光表示装置の製造方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
この発明は、可撓性基体を用いた有機電子デバイスの製造方法に関し、例えば、有機EL発光デバイスや有機半導体デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可撓性基体を用いた有機電子デバイスは、・・・しかし、可撓性基体として多く用いられる高分子材料の場合、構成材料が有機物であるため、わずかながらも透湿性を有する場合がほとんどである。有機EL発光デバイスを始めとする有機電子デバイスは微量の水分でも劣化を起こし特性を失われてしまう場合が多い。このように、有機電子デバイスの基体に高分子を使おうとした場合、基体の通過する水分を遮断することが実用化への大きな課題となっている。
【0003】
そこで、極薄いガラス基板と高分子フィルムを複合化した基体を用いる方法がこの課題を解決する有効な方法として知られている(例えば、特許文献1を参照)。ガラス基板そのものは、透湿性は全く無いが、可撓性に欠け、少しの曲げ応力でも破壊してしまう。しかし、・・・」

「【0022】
本実施例による有機電子デバイスの製造方法を図1に模式的に示す。図1(a)は基体11を示す断面図である。本実施例では厚みが0.5mmの無アルカリガラスを用いた。図1(b)はこのガラス表面上に高分子膜12をキャスティング成膜した様子を示す断面図である。・・・」

「【0025】
次に、、高分子膜12が形成された基体11を、フッ酸等のエッチング液に浸漬してガラスエッチングを行い、図1(c)に示すように厚みを0.15mmまで薄くした。このように高分子膜は強酸に曝されるので耐酸性を有し、ガラスとは強く密着していることを要求される。」

「【0027】
さらに、図1(d)に示すように、基体の上に有機電子デバイスの一例である有機ELデバイスの発光部となる有機EL層13を作製した。基体の表面上に、スパッタ、蒸着またはCVD等の方法でITOやIZO等から成る透明導電膜で陽極を形成し、次に銅フタロシアニンや芳香族アミンからなるホール注入層を形成し、同じく芳香族アミンであるα-NPDやTPD誘導体等からなるホール輸送層を形成し、次に発光層としてAlq3,BAlq3,Bebq2等の8-ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体等からなるホスト材料に、ペリレン,キナクリドン,クマリン,ルブレン,DCJTB等の蛍光発光色素をドーパントとして含有する層を共蒸着によって形成し、さらにAlq3やBebq2等からなる電子輸送層を形成し、さらに、LiF薄膜上にAlを積層した陰極をそれぞれ真空蒸着によって形成して有機EL層13となる。」

「【0030】
また、基体11として厚みが0.4mmのホウケイ酸ガラスを用いて、同様な工程によりガラス厚を0.05mmまで薄くして有機EL発光デバイスを作製したところ、前述と同様の効果が得られた。」


上記記載より、引用文献2には次の技術事項(以下、「引用発明2の技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「高分子材料の基体の通過する水分を遮断する(【0002】参照。)ために、透湿性は全く無い極薄いガラス基板と高分子フィルムを複合化した基体を用いる(【0003】参照。)、可撓性基体を用いた有機EL発光デバイスの製造方法(【0001】参照。)であって、
厚みが0.5mmの無アルカリガラス表面上に高分子膜12をキャスティング成膜(【0022】参照。)する工程と、
高分子膜12が形成された基体11を、フッ酸等のエッチング液に浸漬してガラスエッチングを行い、ガラス厚を0.05mmまで薄く(【0025】、【0030】参照。)する工程と、
基体の上に有機ELデバイスの発光部となる有機EL層13を作製(【0027】参照。)する工程と、
を含む有機EL発光デバイスの製造方法。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、電気光学装置、電気光学装置の製造方法、電子機器に関する。」

「【0118】
次に、エッチング工程S3では、図7(c)に示すように、素子基板20をエッチングして、素子基板20を所定の厚さ、例えば5μm?20μmまで薄くする。エッチング液として、例えば、フッ酸(フッ化水素酸)を希釈した水溶液を用いる。エッチング液は、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の水溶液であってもよく、それらの混合物であってもよい。エッチング方法は、保護テープ貼り付け工程S2で側面に保護テープ44が貼り付けられた素子基板20および封止基板30をエッチング液が循環した槽内に浸漬してもよいし、エッチング液をシャワー照射してもよい。」

4.引用文献4について
技術常識を示す文献として、原査定において新たに引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、温度により呈色変化するコレステリック液晶からなる特異な機能をもつ複層体に関する。」

「【0012】複層体の形状は、特に限定されるものではなく一部が透明で内部を直視できればよい。また積層基板4は、ガラス、樹脂、金属、セラミックス等特に限定されることなく利用できる。薄板基板2は、湾曲できればよく、例えば超薄板ガラス(0.05mmから0.3mm程度)、ポリカーボネート薄板、ポリメチルメタクリレート薄板、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等がある。・・・」

5.引用文献5について
技術常識を示す文献として、原査定において新たに引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は表示装置に係り、特にフレキシブル液晶表示装置、あるいは、フレキシブルなカラーフィルタ基板を有する有機EL表示装置および電気泳動方式表示装置、バリア基板を有する3次元ディスプレイに関する。」

「【0022】
ガラスで形成されたTFT基板100は当初は0.4mm程度の厚さであるが、TFTを形成した後、研磨によってガラス基板を薄くし。0.05mm程度にする。ガラス基板がこの程度の厚さになるとフレキシブルになる。しかし、このままでは、TFT基板100の強度が十分ではないので、接着材135を介してガラス基板に樹脂板130を貼り付ける。樹脂板130はフレキシブルなので、TFT基板100全体としては、フレキシブルな基板となっている。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「有機電界発光部2の各画素が、TFT構造及び自発光素子であるOLEDを有する、能動駆動型(Active Matrix:AM)OLEDを含む有機電界発光表示装置の製造方法」は、本願発明1の「表示素子を用いて画像を表示する表示装置を製造する表示装置製造方法」に相当する。
次に、引用発明の「ガラス10」及び「有機電界発光部2」は、それぞれ本願発明1の「ガラス基板」及び「表示素子を含む層」に相当するから、引用発明の「透明な素材のガラス10を準備する工程と、ガラス10に複数個の有機電界発光部2を形成する工程」と、本願発明1の「ガラス基板の第1の主面上に有機樹脂膜を形成するステップと、前記有機樹脂膜上に表示素子を含む層を形成するステップ」とは、共に「基板上に表示素子を含む層を形成するステップ」である点で共通するといえる。
また、引用発明の「密封ガラス50」は、本願発明1の「耐エッチング性部材」に相当し、引用発明におけるエッチング後のガラス10の厚さ「0.05mm」は50μmに相当するから、引用発明における「前記複数個の有機電界発光部2を覆うように密封ガラス50で密封し、所定のエッチング液53が含まれている水槽52に沈積し、前記エッチングによって前記ガラス10は、その厚さtが0.05mmになる工程」と、本願発明1における「前記表示素子を含む層を形成した後に、前記有機樹脂膜を含む前記ガラス基板の第1の主面側を耐エッチング性部材で覆いつつ第2の主面側をエッチングすることによって、湾曲自在になる厚みまで前記ガラス基板を薄型化するステップ」及び「前記湾曲自在になる厚みが、50?200μmである」こととは、共に「前記表示素子を含む層を形成した後に、前記ガラス基板の第1の主面側を耐エッチング性部材で覆いつつ第2の主面側をエッチングすることによって、湾曲自在になる厚みまで前記ガラス基板を薄型化するステップ」及び「前記湾曲自在になる厚みが、50μmである」ことで共通するといえる。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「表示素子を用いて画像を表示する表示装置を製造する表示装置製造方法であって、
基板上に表示素子を含む層を形成するステップと、
前記表示素子を含む層を形成した後に、前記ガラス基板の第1の主面側を耐エッチング性部材で覆いつつ第2の主面側をエッチングすることによって、湾曲自在になる厚みまで前記ガラス基板を薄型化するステップと、
を含み、
前記湾曲自在になる厚みが、50μmである表示装置製造方法。」

(相違点)
本願発明1は、「ガラス基板の第1の主面上に有機樹脂膜を形成するステップ」を備え、「前記有機樹脂膜上に」表示素子を含む層を形成し、またガラス基板の「前記有機樹脂膜を含む」面側を耐エッチング性部材で覆いつつエッチングするとされているのに対し、引用発明においてはガラス10に有機樹脂膜は形成されない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、上記引用発明2の技術事項は、「可撓性基体を用いた有機EL発光デバイスの製造方法」において、「厚みが0.5mmの無アルカリガラス表面上に高分子膜12をキャスティング成膜する工程」を含むものである。
しかしながら、引用発明2の技術事項は、「高分子材料の基体の通過する水分を遮断するために、透湿性は全く無い極薄いガラス基板と高分子フィルムを複合化した基体を用いる」ことを前提とするものであるから、「ガラス10」のみを基板として用いる引用発明に対して、該技術事項の上記成膜する工程を採用する動機を見いだすことはできない。
また、引用文献3-5に、上記相違点に係る本願発明1の構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、上記相違点に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1ないし5に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 原査定について
本願発明1-2は「ガラス基板の第1の主面上に有機樹脂膜を形成するステップ」を備え、「前記有機樹脂膜上に」表示素子を含む層を形成し、またガラス基板の「前記有機樹脂膜を含む」面側を耐エッチング性部材で覆いつつエッチングするという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2016-97561(P2016-97561)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G09F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小野 博之  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 須原 宏光
中塚 直樹
発明の名称 表示装置製造方法  
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