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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J |
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管理番号 | 1350505 |
審判番号 | 不服2018-1236 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-01-30 |
確定日 | 2019-04-04 |
事件の表示 | 特願2014- 67757「非接触給電用アンテナシステム、及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-192521〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成26年3月28日の出願であって、平成29年7月27日付けの拒絶理由の通知に対して、同年29年9月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年10月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2.平成30年1月30日付け手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年1月30日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本願発明と本件補正発明 本件補正は、平成29年9月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「【請求項1】 電磁誘導により送電用アンテナ装置から該送電用アンテナ装置に対向する受電用アンテナ装置に非接触で電力を供給する非接触給電用アンテナシステムであって、 前記送電用アンテナ装置に設けられ、一の磁性シートの内面側に貼付され、導線が周回して構成される送電用スパイラルコイルと、 前記受電用アンテナ装置に設けられ、前記一の磁性シートと対向する他の磁性シートの外面側に貼付され、導線が周回して構成される受電用スパイラルコイルと、を備え、 前記送電用スパイラルコイルと前記受電用スパイラルコイルの少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが非平面形状に構成され、かつ、前記一方のスパイラルコイルから他方のスパイラルコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のスパイラルコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置となるように構成される非接触給電用アンテナシステム。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「【請求項1】 電磁誘導により送電用アンテナ装置から該送電用アンテナ装置に対向する受電用アンテナ装置に非接触で電力を供給する非接触給電用アンテナシステムであって、 前記送電用アンテナ装置に設けられ、一の可撓性を有するシート状の磁性シートの内面側に貼付され、導線が周回してシート状に構成される送電用スパイラルコイルと、 前記受電用アンテナ装置に設けられ、前記一の可撓性を有するシート状の磁性シートと対向する他の可撓性を有するシート状の磁性シートの外面側に貼付され、導線が周回してシート状に構成される受電用スパイラルコイルと、を備え、 前記送電用スパイラルコイルと前記受電用スパイラルコイルの少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが可撓性を有して非平面形状に構成され、かつ、前記一方のスパイラルコイルから他方のスパイラルコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のスパイラルコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置となるように、前記少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが非平面形状に変形されて構成される非接触給電用アンテナシステム。」 という発明(以下、「本件補正発明」という。)に補正することを含むものである。(下線部は、補正箇所である。) 2.補正の適否 本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項である「一の磁性シート」及び「他の磁性シート」が、いずれも「可撓性を有するシート状の」シートであるとし、また、「送電用スパイラルコイル」及び「受電用スパイラルコイル」が、いずれも「シート状に」構成されるとし、さらに、少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが「可撓性を有して」、「非平面形状に変形されて」構成されるとする限定を付加するものである。そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か)を検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1.の(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献、引用発明 (ア)引用文献1 原査定の拒絶の理由において引用された、特開2011-72115号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付加した。以下、同じ。) a.「【技術分野】 【0001】 本発明は、非接触充電システムに関するものである。」 b.「【0046】 以下に、本発明の一実施形態に係る非接触充電システムについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る非接触充電システムの外観構成の一例を模式的に示した斜視図である。 【0047】 図1に示されるように、非接触充電システムは、充電機器1及び被充電機器2を備える。充電機器1は、被充電機器2のセットを受け付ける受付部APを備える。受付部APは、凹形状の窪みを形成している。受付部APは、その窪みの底面である凹曲面(50/m?250/mの範囲内のいずれかの曲率の凹曲面)を、被充電機器2と面全体で当接する一次側当接面40として備える。 【0048】 一方の被充電機器2は、一次側当接面40と面全体で当接する凸曲面からなる二次側当接面41を備える。この二次側当接面41は、被充電機器2が充電機器1の受付部APに挿入されてセットされたときに、一次側当接面40と面全体で当接する。 【0049】 図2は、本発明の一実施形態に係る非接触充電システムの構成の一例を模式的に示した側面図である。ここに、“LE1”は、送電用コイルL1からの磁束と鎖交する異物3と、送電用コイルL1との間の距離が、その距離未満であるときに、異物3が送電用コイルL1による相互誘導により発熱しやすい距離を表す。 【0050】 図2に示されるように、充電機器1の内部では、一次側当接面40の最奥部(底)Bと正対する位置に、通電されたときに磁束を発生させて、被充電機器2を充電するための充電用高周波電力を送電する送電用コイルL1が配置されている。その一方で、被充電機器2の内部では、二次側当接面41の最奥部Bと正対する位置に、送電用コイルから送電される充電用高周波電力を受電する受電用コイルL2が配置されている。」 c.「【0088】 図9に示される非接触充電システムでは、送電用コイルL1及び受電用コイルL2は平面コイルで構成されている。 【0089】 この構成によれば、送電用コイルL1が平面コイルから構成されているため、送電用コイルL1を曲面状に変形させて、一次側当接面40に貼り付けることができる。さらに、受電用コイルL2が平面コイルから構成されているため、受電用コイルL2を曲面状に変形させて、二次側当接面41に貼り付けることができる。 【0090】 これにより、送電用コイルL1が一次側当接面40に沿うように配置される一方で、受電用コイルL2が二次側当接面41に沿うように配置される。 【0091】 その結果、一次側当接面L1と二次側当接面L2とが当接した状態では、送電用コイルL1の平面と受電用コイルL2の平面とが互いに近接した状態となる。これにより、送電用コイルL1と受電用コイルL2との間の磁気結合を強くすることができるので、送電用コイルL1から受電用コイルL2に対する充電用高周波電力の送電効率を向上させることができる。」 d.「【0133】 さらに、充電機器1では、送電用コイルL1及び一次側認証用コイルL3における磁束密度を高めるために磁性シートS1が設けられている。この磁性シートS1は、送電用コイルL1及び一次側認証用コイルL3からの送電効率を向上させるために設けられている。 【0134】 その一方で、被充電機器2では、受電用コイルL2及び二次側認証用コイルL4における磁束密度を高めるために磁性シートS2が設けられている。この磁性シートS2は、受電用コイルL2及び二次側認証用コイルL4における受電効率を向上させるために設けられている。」 e.「図9 」 ・上記c.の図9に示される実施形態は、上記b.に記載される実施形態において、送電用コイルL1及び受電用コイルL2を平面コイルとして、一次側当接面40及び二次側当接面41に貼り付けたものと認められる。 ・上記b.の段落【0047】には、充電機器1及び被充電機器2を備えた非接触充電システムにおいて、前記充電機器1は、前記被充電機器2のセットを受け付ける受付部APを備え、該受付部APは凹形状の窪みを有し、該窪みの底面である凹曲面(50/m?250/mの範囲内のいずれかの曲率の凹曲面)が被充電機器2と面全体で当接する一次側当接面40であることが記載されている。 ・上記b.の段落【0048】には、前記被充電機器2は、一次側当接面40と面全体で当接する凸曲面からなる二次側当接面41を備えることが記載されている。 ・上記b.の段落【0050】には、送電用コイルL1は、通電されたときに磁束を発生させて、被充電機器2を充電するための充電用高周波電力を送電するためのものであることが、さらに、上記c.の段落【0089】には、送電用コイルL1は、平面コイルから構成され曲面状に変形させて、一次側当接面40に貼り付けられることが記載されている。 したがって、引用文献1には、前記一次側当接面40には、通電されたときに磁束を発生させて被充電機器2を充電するための充電用高周波電力を送電する平面コイルから構成された送電用コイルL1が、曲面状に変形されて貼り付けられること、が記載されているといえる。 ・上記b.の段落【0050】には、受電用コイルL2は、送電用コイルから送電される充電用高周波電力を受電するためのものであることが、さらに、上記c.の段落【0089】には、受電用コイルL2は、が平面コイルから構成され曲面状に変形させて、二次側当接面41に貼り付けられることが記載されている。 したがって、引用文献1には、前記二次側当接面41には、送電用コイルL1から送電される充電用高周波電力を受電する平面コイルから構成された受電用コイルL2が、曲面状に変形されて貼り付けられること、が記載されているといえる。 したがって、図9に示される実施形態に着目し、上記引用文献1の記載及び図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「充電機器1及び被充電機器2を備えた非接触充電システムにおいて、 前記充電機器1は、前記被充電機器2のセットを受け付ける受付部APを備え、該受付部APは凹形状の窪みを有し、該窪みの底面である凹曲面(50/m?250/mの範囲内のいずれかの曲率の凹曲面)が被充電機器2と面全体で当接する一次側当接面40であって、 前記被充電機器2は、一次側当接面40と面全体で当接する凸曲面からなる二次側当接面41を備え、 前記一次側当接面40には、通電されたときに磁束を発生させて被充電機器2を充電するための充電用高周波電力を送電する平面コイルから構成された送電用コイルL1が、曲面状に変形されて貼り付けられ、 前記二次側当接面41には、送電用コイルL1から送電される充電用高周波電力を受電する平面コイルから構成された受電用コイルL2が、曲面状に変形されて貼り付けられる、 非接触充電システム。」 (イ)引用文献2 原査定の拒絶の理由において引用された、特開2009-4511号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「【0022】 この非接触型給電装置1は、給電コイル4を内蔵した充電器2と受電コイル5を内蔵した被充電機器3とで構成され、対向する両コイル4,5間で電磁誘導による電力搬送が可能にされたことで、被充電機器3に充電できるようにされた装置である。すなわち、充電器2の上面の充電用載置部12に被充電機器3を載置すると、給電コイル4と受電コイル5とが対向されて、被充電機器3が充電されるようになっている。」 b.「【図1】 」 ・図1によれば、給電コイル4から受電コイル5への投影の内縁部及び外縁部が該受電コイル5の内縁部及び外縁部と略重複するように配置されているとが、読み取れる。 上記引用文献2の記載及び図面、並びにこの分野の技術常識を考慮すると、引用文献2には以下の技術事項(以下、「引用文献2に記載の技術事項」という。)が開示されていると認められる。 「非接触給電装置において、一方のコイルから他方のコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置とすること。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「充電機器1」、「被充電機器2」は、非接触で充電用高周波電力を送受電するものであるから、各々、本件補正発明の「送電用アンテナ装置」、「受電用アンテナ装置」に相当する。 そして、引用発明の「非接触充電システム」は、充電機器1の送電用コイルL1によって磁束を発生させ、被充電機器2の受電用コイルL2で充電用高周波電力を受電するものであるから、電磁誘導により非接触で充電機器1から被充電機器2に電力を供給しているといえる。 したがって、引用発明の「充電機器1及び被充電機器2を備えた非接触充電システム」は、本件補正発明の「電磁誘導により送電用アンテナ装置から該送電用アンテナ装置に対向する受電用アンテナ装置に非接触で電力を供給する非接触給電用アンテナシステム」に相当する。 b.引用発明の「送電用コイルL1」は、充電機器1の一次側当接面40に設けられ、また、コイルであるから導線が周回したものであって、さらに、平面コイルであって変形可能なものであるから、薄い平面状のもの、すなわち、シート状ものと認められる。 したがって、引用発明の「送電用コイルL1」は、本件補正発明の「前記送電用アンテナ装置に設けられ、導線が周回してシート状に構成される送電用スパイラルコイル」に相当する。 但し、送電用スパイラルコイルが、本件補正発明では、「一の可撓性を有するシート状の磁性シートの内面側に貼付され」るのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点で相違する。 c.引用発明の「受電用コイルL2」は、被充電機器2の二次側当接面41に設けられ、また、コイルであるから導線が周回したものであって、さらに、平面コイルであって変形可能なものであるから、薄い平面状のもの、すなわち、シート状ものと認められる。 したがって、引用発明の「受電用コイルL2」は、本件補正発明の「前記受電用アンテナ装置に設けられ、導線が周回してシート状に構成される受電用スパイラルコイル」に相当する。 但し、受電用スパイラルコイルが、本件補正発明では、「前記一の可撓性を有するシート状の磁性シートと対向する他の可撓性を有するシート状の磁性シートの外面側に貼付され」るのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点で相違する。 d.引用発明の「送電用コイルL1」及び「受電用コイルL2」は、曲面状に変形されて前記一次側当接面40及び二次側当接面41に貼り付けられるものであるから、いずれも可撓性を有し、非平面状に変形させられているものと認められる。 したがって、引用発明の「前記一次側当接面40には、通電されたときに磁束を発生させて被充電機器2を充電するための充電用高周波電力を送電する平面コイルから構成された送電用コイルL1が、曲面状に変形されて貼り付けられ、前記二次側当接面41には、送電用コイルL1から送電される充電用高周波電力を受電する平面コイルから構成された受電用コイルL2が曲面状に変形されて貼り付けられる」ことは、本件補正発明の「前記送電用スパイラルコイルと前記受電用スパイラルコイルの少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが可撓性を有して非平面形状に構成され、かつ、前記少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが非平面形状に変形されて構成される」ことに相当する。 但し、本件補正発明では、「前記一方のスパイラルコイルから他方のスパイラルコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のスパイラルコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置となるように」構成されるのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点で相違する。 したがって、本件補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、以下の点で一致し、また、相違している。 (一致点) 「電磁誘導により送電用アンテナ装置から該送電用アンテナ装置に対向する受電用アンテナ装置に非接触で電力を供給する非接触給電用アンテナシステムであって、 前記送電用アンテナ装置に設けられ、導線が周回してシート状に構成される送電用スパイラルコイルと、 前記受電用アンテナ装置に設けられ、導線が周回してシート状に構成される受電用スパイラルコイルと、を備え、 前記送電用スパイラルコイルと前記受電用スパイラルコイルの少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが可撓性を有して非平面形状に構成され、かつ、前記少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが非平面形状に変形されて構成される非接触給電用アンテナシステム。」 (相違点1) 「送電用スパイラルコイル」が、本件補正発明では、「一の可撓性を有するシート状の磁性シートの内面側に貼付され」るのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点。 (相違点2) 「受電用スパイラルコイル」が、本件補正発明では、「前記一の可撓性を有するシート状の磁性シートと対向する他の可撓性を有するシート状の磁性シートの外面側に貼付され」るのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点。 (相違点3) 本件補正発明では、「前記一方のスパイラルコイルから他方のスパイラルコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のスパイラルコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置となるように」構成されるのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点 (4)判断 上記各相違点について検討する。 (相違点1)及び(相違点2)について 送電用コイルと受電用コイルの互いに対向する面の背面にそれぞれ磁性のシートを貼付して送電効率を向上させることは周知の技術(必要であれば、特開2013-140880号公報(特に、段落【0049】、【0064】-【0066】、図4参照。以下、「周知例1」という。)、国際公開第2013/172349号(特に、段落【0027】、【0037】-【0038】、【0066】、【0067】、図5A参照。以下、「周知例2」という。)等参照。)であって、また、一般的に、周知例1(特に、段落【0042】参照)、周知例2(特に、段落【0030】参照)にも記載されるように磁性シートは樹脂に磁性粉末を分散されたものであり可撓性を有することは明らかである。 また、対向する磁性シートにおいて、一方の磁性シートの対向面を内面側、他方の磁性シートの対向面を外面側と称することは任意である。 そして、引用文献1の段落【0133】、【0134】には、磁性シートを用いれば送電効率が向上できることが記載されている。 したがって、引用発明において送電効率を高めるために、送電用コイルL1及び受電用コイルL2に該周知の技術を適用して、本件補正発明の相違点1及び相違点2の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点3)について 例えば、引用文献2にも記載されるように、非接触給電装置において、一方のコイルから他方のコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置とすることは常套手段である。 したがって、引用発明の非接触給電装置の送電用コイルL1及び受電用コイルL2の配置に該常套手段を適用して、本件補正発明の相違点3の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項並びに周知の技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項並びに周知の技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)結語 以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成30年1月30日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成29年9月29日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項1に係る発明(本願発明)は再掲すると次のとおりのものである。 「【請求項1】 電磁誘導により送電用アンテナ装置から該送電用アンテナ装置に対向する受電用アンテナ装置に非接触で電力を供給する非接触給電用アンテナシステムであって、 前記送電用アンテナ装置に設けられ、一の磁性シートの内面側に貼付され、導線が周回して構成される送電用スパイラルコイルと、 前記受電用アンテナ装置に設けられ、前記一の磁性シートと対向する他の磁性シートの外面側に貼付され、導線が周回して構成される受電用スパイラルコイルと、を備え、 前記送電用スパイラルコイルと前記受電用スパイラルコイルの少なくとも何れか一方のスパイラルコイルが非平面形状に構成され、かつ、前記一方のスパイラルコイルから他方のスパイラルコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のスパイラルコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置となるように構成される非接触給電用アンテナシステム。」 2.引用文献、引用発明 引用発明等は、上記第2の2.の「(2)引用文献、引用発明」の項で記載したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明を対比するに、本願発明は上記本件補正発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2の2.の「(3)対比」の項の相違点3のみで相違する。 そして、上記第2の2.の「(4)判断」の「相違点3について」で検討したように、非接触給電装置において、一方のコイルから他方のコイルへの投影の内縁部及び外縁部が該他方のコイルの内縁部及び外縁部と略重複する配置とすることは、引用文献2にも記載されるように常套手段であって、引用発明の非接触給電装置の送電用コイルL1及び受電用コイルL2の配置に該常套手段を適用して、本願発明の相違点3の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-01-30 |
結審通知日 | 2019-02-05 |
審決日 | 2019-02-18 |
出願番号 | 特願2014-67757(P2014-67757) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H02J)
P 1 8・ 121- Z (H02J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 慎太郎 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
鈴木 圭一郎 山澤 宏 |
発明の名称 | 非接触給電用アンテナシステム、及び電子機器 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 河野 貴明 |