• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1350513
審判番号 不服2018-7349  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-30 
確定日 2019-04-04 
事件の表示 特願2014-30498号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月27日出願公開、特開2015-154811号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成26年2月20日に出願された特願2014-30498号であって、平成29年10月16日付けで拒絶理由が通知され、同年12月4日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月8日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年5月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
(1)本願の請求項に係る発明は、平成29年12月4日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
可変表示に関する情報を、保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と、
前記決定手段の決定結果にもとづいて可変表示を実行する可変表示実行手段と、
前記決定手段による決定前に、前記有利状態に制御されるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果にもとづいて、当該判定対象となった可変表示が開始される以前に特定演出を実行するか否かを決定する特定演出決定手段と、
前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、前記特定演出を実行可能な特定演出実行手段とを備え、
前記特定演出実行手段は、
前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、新たに保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行し、
前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定され、新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行する
ことを特徴とする遊技機。」(以下「本願発明」という。)

(2)また、本願発明を項分け記載すると次のとおりである。
「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 可変表示に関する情報を、保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
C 前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と、
D 前記決定手段の決定結果にもとづいて可変表示を実行する可変表示実行手段と、
E 前記決定手段による決定前に、前記有利状態に制御されるか否かを判定する判定手段と、
F 前記判定手段の判定結果にもとづいて、当該判定対象となった可変表示が開始される以前に特定演出を実行するか否かを決定する特定演出決定手段と、
G 前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、前記特定演出を実行可能な特定演出実行手段とを備え、
H0 前記特定演出実行手段は、
H1 前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、新たに保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行し、
H2 前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定され、新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行する
I ことを特徴とする遊技機。」

3 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開2005-441号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パチンコ遊技機やコイン遊技機などで代表される遊技機およびその制御方法に関する。詳しくは、始動入賞領域へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立により各々が識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行なう変動表示装置と、遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する事前決定手段とを備え、該事前決定手段が表示結果を特定表示結果とすることを決定したときに前記変動表示装置に前記特定表示結果を表示した後に遊技者に有利な特定遊技状態を発生させる遊技機およびその制御方法に関する。」

イ 「【0007】
【課題を解決するための手段の具体例およびその効果】
(1)始動入賞領域(始動入賞口14)へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立(変動開始信号を含むコマンドデータの受信)により各々が識別可能な複数種類の識別情報(たとえば、数字図柄『1』?『9』、および、英字図柄『A』?『C』等)の変動表示を行なう変動表示装置(変動表示装置9)と、遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する事前決定手段(事前決定手段190、SA03?SA05)とを備え、該事前決定手段が表示結果を特定表示結果(たとえば、『777』等のゾロ目)とすることを決定したときに前記変動表示装置に前記特定表示結果を表示した後に遊技者に有利な特定遊技状態(たとえば、大当り)を発生させる遊技機(パチンコ遊技機1、コイン遊技機等)であって、
前記始動入賞領域へ入賞した始動入賞球を検出する始動入賞球検出手段(始動口スイッチ17)と、
前記遊技機の遊技状態を制御するとともに、前記変動表示装置を制御するための制御情報(コマンドデータ)を出力する遊技制御手段(遊技制御基板31,遊技制御手段191)と、
該遊技制御手段から出力されてきた制御情報に基づいて、前記変動表示装置を表示制御する表示制御手段(表示制御基板80,表示制御手段164)と、
前記変動表示装置の表示結果を前記特定表示結果とするか否かの決定に用いる数値データを更新する数値データ更新手段(ランダムカウンタR1)とを備え、
前記遊技制御手段は、
前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに、前記数値データ更新手段の数値データを抽出する数値データ抽出手段(数値データ抽出手段186、SB04)と、
該数値データ抽出手段が抽出した数値データを用いて、前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに該始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を前記特定表示結果とするか否かを判定する始動入賞時判定手段(始動入賞時判定手段185、SC01,SC05,SC06)と、
前記始動入賞球検出手段により検出された始動入賞球数のうち未だ前記変動開始条件が成立せず前記変動表示装置の変動表示に用いられていない始動入賞球の球数を保留記憶する保留記憶手段(保留記憶手段184、SB06)と、
前記始動入賞時判定手段の判定結果を特定可能な始動入賞時判定結果特定情報(始動入賞時判定結果特定情報183、SC03、SC04、SC08、SC09により設定された各コマンド)と、前記保留記憶手段に保留記憶されている始動入賞球数を特定するための保留数表示特定情報(保留数表示特定情報182、保留記憶数コマンド)とを、前記表示制御手段に送信する特定情報送信手段(特定情報送信手段(出力ポート)57A)とを含み、
前記表示制御手段は、
前記特定情報送信手段が送信した前記始動入賞時判定結果特定情報および前記保留数表示特定情報を受信する特定情報受信手段(特定情報受信手段(入力ポート)57B)と、
該特定情報受信手段が受信した前記始動入賞時判定結果特定情報に基づいて前記変動表示装置の表示結果が前記特定表示結果となる旨の予告を実行するか否かの決定を行なう予告決定手段(予告決定手段177、SH08?SH13)と、
前記特定情報受信手段が受信した前記保留数表示特定情報にもとづいて前記保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の制御を行なう保留表示制御手段(保留表示制御手段180、SE09?SE17)と、
前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたときに、前記保留表示制御手段により表示される保留表示の保留表示態様を複数種類(4種類)の予告保留表示態様(『?』,『リ』,『S』,『当』)から選択する予告保留表示態様選択手段(予告保留表示態様選択手段181、SI10?SI17)と、
前記複数種類の予告保留表示態様を前記変動表示装置に表示させる予告演出画像を生成するための複数種類の予告演出画像データ(『?』,『リ』,『S』,『当』に対応する16×16ドットの画像データ)を含む各種画像データ(16×16ドットの画像データ)を記憶している画像情報記憶手段(画像情報記憶手段(キャラクタROM)179)と、
前記変動表示装置に各種画像を表示させるためのタイミングを特定するタイミングデータ(図5のタイミングデータ、図23の各プロセスタイマ1、2、…のタイマデータ)と、前記始動入賞時判定結果特定情報の受信から所定時間経過後に前記変動表示装置に前記予告演出画像を表示させるための制御データ(図19の昇格フラグのデータや図23の予告フラグ,態様フラグのデータ)とを記憶している制御データ記憶手段(制御データ記憶手段(RAM)178)と、
該制御データ記憶手段に記憶されている前記タイミングデータに基づいて計時し、前記変動表示装置に前記各種画像を表示させるための契機となるトリガ信号を出力する計時手段(計時手段175、各プロセスタイマ1、2、…)と、
前記制御データ記憶手段に記憶されている前記タイミングデータと前記画像情報記憶手段に記憶されている前記各種画像データとに基づいて、前記変動表示装置に表示する画像を生成する画像生成手段(画像生成手段176、CPU198とVDP195)とを備え、
前記画像生成手段は、前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたことを条件として、前記変動表示装置で前記制御データ記憶手段に記憶されている前記制御データに基づく前記予告演出画像の表示を行なうために、前記予告保留表示態様選択手段により選択された予告保留表示態様に対応する前記予告演出画像データを前記計時手段からの前記トリガ信号に従って前記画像情報記憶手段から読み出して、予告演出画像を生成する予告演出画像生成手段(図5の予告演出画像生成手段、CPU198とVDP195)を含むことを特徴とする、遊技機。」

ウ 「【0065】
図11から図12は、特別図柄表示部9において保留予告が実行されるときの保留記憶表示10の表示態様を説明するための図である。かかる表示態様は、図9を用いて前述した態様フラグ『0』から態様フラグ『3』のそれぞれに対応しており、セットされている態様フラグにより、以下説明する表示態様により保留予告が実行される。なお、前述したように、特別図柄表示部9では、左中右の特別図柄の表示と保留記憶表示10の表示態様が表示される。また、保留記憶表示10a,10b,10c,10dが点灯しているとき(塗りつぶし状態時)は、保留記憶が4つ記憶されていることを報知しており、特別図柄の可変表示が消化される毎に、保留記憶表示10dから順に消灯(白抜き状態時)させる表示処理がなされる。
【0066】
図11は、可変表示毎に保留記憶表示の表示態様を変化させる保留予告を説明するための図である。
【0067】
図11(a)は、左中右図柄の3つの特別図柄が上から下へ可変表示されている最中に、打玉が始動入賞口14に入賞し、予告を行なう判定がなされて、態様フラグ『0』が選択されセットされたときの表示画面を示している。本実施形態においては、可変表示中であっても保留記憶表示の表示態様を予告の表示態様で表示することができる。すなわち、保留記憶表示10dの表示態様を『?』マークの付加された表示態様により表示することにより保留予告を行なうことができる。
【0068】
図11(b)は、予告を行なう判定がなされたときの可変表示が終了し、保留記憶表示10を『1』減算させたときの表示画面を示している。本実施形態においては、保留記憶数が減少するときに、予告のターゲットとなる可変表示の保留記憶表示の表示態様を変化させることができる。すなわち、図11(a)の保留記憶表示10dを保留記憶表示10cの表示位置にスライドさせるときに、『?』マークの付加されていた表示態様を『リ』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なうことができる。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『0』から『1』に変更する処理がなされたことによる。
【0069】
図11(c)は、図11(b)の可変表示が終了し、停止図柄が確定した停止表示画面を示している。かかる時点においては、保留記憶数が減少しておらず、保留記憶表示の表示位置のスライドも行なわれていないため、保留記憶10cの表示態様は『リ』マークの付加された表示態様により表示されている。
【0070】
図11(d)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図11(b)および図11(c)の保留記憶表示10cを保留記憶表示10bの表示位置にスライドさせるときに、『リ』マークの付加されていた表示態様を『S』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なっている。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『1』から『2』に変更する処理がなされたことによる。
【0071】
図11(e)は、図11(d)の可変表示が終了し、停止図柄が確定した停止表示画面を示している。かかる時点においては、保留記憶数が減少しておらず、保留記憶表示の表示位置のスライドも行なわれていないため、保留記憶10bの表示態様は『S』マークの付加された表示態様により表示されている。
【0072】
図11(f)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図11(d)および図11(e)の保留記憶表示10bを保留記憶表示10aの表示位置にスライドさせるときに、『S』マークの付加されていた表示態様を『当』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なっている。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『2』から『3』に変更する処理がなされたことによる。
【0073】
図11(g)は、図11(f)の可変表示が終了し、停止図柄が確定した停止表示画面を示している。かかる時点においては、保留記憶数が減少しておらず、保留記憶表示の表示位置のスライドも行なわれていないため、保留記憶10aの表示態様は『当』マークの付加された表示態様により表示されている。
【0074】
図11(h)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図11(f)および図11(g)の保留記憶表示10aの表示位置にスライドさせたときの可変表示画面を表している。
【0075】
図11(i)は、予告のターゲットとなる可変表示における特別図柄の表示結果が『7』のゾロ目となり、大当りが発生した表示画面を示している。すなわち、図11(f)および図11(g)の保留記憶表示10aでは、態様フラグとして『3』がセットされたことに対応した『当』の表示態様で保留予告が行なわれ、かかる保留予告に対応する可変表示により大当りを発生させている。これは、図9の保留予告決定用テーブルにおいて態様フラグとして『3』がセットされるときは、判定結果コマンドが非確変大当りコマンドまたは確変大当りコマンドのときだけであることによる。
【0076】
以上のように、可変表示毎に昇格させる判定がなされ、態様フラグが大当りとなる期待度・信頼度の比較的低い『0』から、大当りとなる期待度・信頼度が高くなる『1』、『2』へと段階的に変更し、予告のターゲットとなる可変表示が開始される直前には大当りとなる期待度・信頼度が最も高い『3』に変更されている。そして、態様フラグが変更される毎に、態様フラグに対応する表示態様により保留記憶表示を行ない、『?』から『リ』、『S』、『当』に表示態様を変更し保留予告を行なっている。ここで、段階的に変更するとは、たとえば、大当りとなる信頼度が20パーセントの表示態様から、大当りとなる信頼度が40パーセントの表示態様に変更され、さらには、大当りとなる信頼度が80パーセントの表示態様に変更されるように、段階的に信頼度を変化させることをいう。なお、保留予告の表示態様が変更するパターンとしては、以上のように段階的に変化するものに限らず、態様フラグが『0』から『2』または『3』に変更され、保留予告の表示態様が『?』から『S』または『当』に変化するようにし、大当りとなる信頼度が20パーセントの表示態様から一気に大当りとなる信頼度が80パーセントあるいはそれ以上となる表示態様に変更されるように、無段階的に信頼度を変化させるようなものであってもよい。
【0077】
なお、本実施形態においては、予告のターゲットとなる可変表示が終了し停止図柄が確定するまで、予告を行なうか否かの判定を行なっていない。具体的には、図11(f)の可変表示中に打玉の入賞があり、保留記憶数が増えた旨を保留記憶表示10bを点灯表示するが、かかる保留記憶表示10bに対して予告を行なうか否かの判定が行なわれないため、保留予告が行なわれることがない。すなわち、図11(a)のように保留記憶表示により保留予告が行なわれてから、かかる予告のターゲットとなる保留記憶の可変表示が終了し停止図柄が確定するまで、他の保留記憶表示により保留予告が行われることがない。これにより、保留予告が行なわれているときに、予告を行なうか否かの処理を行なう必要がなく、処理負担を軽減させることができる。
【0078】
図12は、保留記憶表示の表示態様を変化させる保留予告を説明するための図である。
【0079】
図12(a)は、左中右図柄の3つの特別図柄が上から下へ可変表示されている最中に、打玉が始動入賞口14に入賞し、予告を行なう判定がなされて、態様フラグ『2』が選択されセットされたときの表示画面を示している。本実施形態においては、可変表示中であっても保留記憶表示の表示態様を予告の表示態様で表示することができるため、保留記憶表示10dの表示態様を『S』マークの付加された表示態様により表示することにより保留予告を行なうことができる。
【0080】
図12(b)は、予告を行なう判定がなされたときの可変表示が終了し、保留記憶表示10を『1』減算させたときの表示画面を示している。本実施形態においては、保留記憶数が減少するときに、予告のターゲットとなる可変表示の保留記憶表示の表示態様を変化させることができるため、図12(a)の保留記憶表示10dを保留記憶表示10cの表示位置にスライドさせるときに、『S』マークの付加されていた表示態様を『当』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なうことができる。しかし、昇格させる判定がなされなかったため、態様フラグを『2』から『3』に変更する処理がなされず、態様フラグとして『2』が再セットされ、再度『S』マークの付加された表示態様により保留予告が行なわれている。
【0081】
図12(c)は、図12(b)の可変表示が終了し、停止図柄が確定した停止表示画面を示している。かかる時点においては、保留記憶数が減少しておらず、保留記憶表示の表示位置のスライドも行なわれていないため、保留記憶10cの表示態様は『S』マークの付加された表示態様により表示されている。
【0082】
図12(d)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図12(b)および図12(c)の保留記憶表示10cを保留記憶表示10bの表示位置にスライドさせるときに、『S』マークの付加されていた表示態様を『当』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なっている。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『2』から『3』に変更する処理がなされたことによる。
【0083】
図12(e)は、図12(d)の可変表示が終了し、停止図柄が確定した停止表示画面を示している。かかる時点においては、保留記憶数が減少しておらず、保留記憶表示の表示位置のスライドも行なわれていないため、保留記憶10bの表示態様は『当』マークの付加された表示態様により表示されている。
【0084】
図12(f)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図12(d)および図12(e)の保留記憶表示10bを保留記憶表示10aの表示位置にスライドさせるときに、『当』マークの付加されていた表示態様が他の表示態様に変更されることなく、保留予告が行なわれている。これは、『当』マークの付加されている表示態様による保留予告は、大当りとなる可能性・信頼度が最も高く、これ以上遊技者に期待を抱かせるような表示態様が本実施形態においては存在しないため、態様フラグが『3』のときは昇格判定を行なわないように処理していることによる。
【0085】
図12(g)は、図12(f)の可変表示が終了し、停止図柄が確定した停止表示画面を示している。かかる時点においては、保留記憶数が減少しておらず、保留記憶表示の表示位置のスライドも行なわれていないため、保留記憶10aの表示態様は『当』マークの付加された表示態様により表示されている。
【0086】
図12(h)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図12(f)および図12(g)の保留記憶表示10aの表示位置にスライドさせたときの可変表示画面を表している。
【0087】
図12(i)は、図11(i)と同様であり、予告のターゲットとなる可変表示における特別図柄の表示結果が『7』のゾロ目となり、大当りが発生した表示画面を示している。
【0088】
以上のように、可変表示毎に昇格判定がなされ、昇格させる旨の判定がなされなかった場合には、再度前回の態様フラグがセットされ、昇格させる旨の判定がなされた場合には、態様フラグが大当りとなる期待度・信頼度が最高ではない『2』から、大当りとなる期待度・信頼度が最高となる『3』に変更されている。そして、態様フラグが変更される毎に、態様フラグに対応する表示態様により保留記憶表示を行ない、『S』から『当』に表示態様を変更し保留予告を行なっている。
【0089】
なお、本実施形態においては、態様フラグに対応する表示態様として、それぞれが大当りとなる期待度・信頼度を遊技者に予測させることができるような『?』,『リ』,『S』および『当』を採用している。たとえば、『?』は、大当りになるか、リーチになるか等全く何もわからないといった印象を遊技者に与え、余り期待感を抱かせないことができる。『リ』は、リーチになるかもわからないといった印象を遊技者に与え、リーチ演出を楽しみつつ、大当りへの期待感をわずかながら抱かせることができる。『S』は、大当りとなる確率の高いときに行なわれるスーパーリーチになるかもわからないといった印象を遊技者に与え、大当りへの期待感をより一層高めることができる。『当』は、大当りとなる可能性・信頼度が最も高く遊技者を喜ばせることができるとともに、予告演出が行なわれている間、遊技者に確率変動状態に移行される大当りとなるか否かといった期待感を抱かせることができる。このように、態様フラグに対応する表示態様および表示態様数は、遊技者に異なる期待感を抱かせるような表示態様および表示態様数であればよく、以上説明した表示態様および表示態様数に限るものではない。たとえば、大当りとなる可能性・信頼度が高い保留記憶表示の表示態様として態様フラグ『3』に対応する『当』が設定されているが、100パーセント大当りとなる保留記憶表示の表示態様として、確変大当りコマンドを受信したときにのみ選択されるものとして態様フラグ『4』に対応する『確』を設け、確変大当りを予告できるような構成にしてもよい。」

エ 「【0184】
次に、以上説明した実施の形態の変形例や特徴点を以下に列挙する。
(1) 前述した実施形態においては、予告演出としての保留記憶表示の表示態様は、所定の条件としての保留記憶数が減少することとなる可変表示変動が開始される毎に、大当りとなる可能性・信頼度が高くなり発展していく昇格パターンについて説明したが、これに限らず、所定の条件が成立する毎に、大当りとなる可能性等が低くなり退行していく降格パターンであってもよい。この場合には、図19のSG04の処理内容を『前回の態様フラグに『-1』した態様フラグセット』する処理にし、図22のSJ01の処理内容を『前回の態様フラグが『0』であったか?』を判別させる処理にすればよい。また、前回の態様フラグに対して一律に『+1』あるいは『-1』するものに限らず、『+2』,『+3』,『-2』または『-3』させるような処理を行ってもよく、この場合には、これら態様フラグを増減させる値を処理がなされる毎にランダムに選択するようにしてもよい。さらに、図22を用いて説明した昇格判定処理の内容を、図21を用いて説明した保留予告選択処理と同内容にし、所定の条件としての保留記憶数が減少することとなる可変表示変動が開始される毎に、予告決定用ランダムカウンタR7から再度カウンタ値を抽出し、判定結果コマンド毎に対応させて設けられているテーブルの振分率にもとづいて、保留記憶表示の表示態様を再度決定するようにしてもよい。すなわち、予告を実行することが決定されて、保留予告としての表示態様を選択し、選択された表示態様で保留記憶表示を行ない、所定の条件が成立する毎に再度保留予告としての表示態様をランダムに選択できるように構成してもよい。この場合には、図19のSG02からSG06の処理に変えて、図21の保留予告選択処理をおこなうようにすればよい。これにより、昇格パターンと降格パターンを融合させ、大当りとなる可能性・信頼度の高い、または低い表示態様をランダムに出現させることができるため、保留記憶表示の表示態様が変化パターンを先読みすることが不可能となり、遊技者に意外性を抱かせることができ遊技の興趣を向上させることができる。たとえば、態様フラグ『0』がセットされているときであっても、次の変動時保留表示処理が実行されたときに、大当りとなる可能性・信頼度が最も高い態様フラグ『3』を再選択することができる。また、これとは逆に、大当りとなる可能性・信頼度が最も高い態様フラグ『3』がセットされているときであっても、次の変動時保留表示処理が実行されたときに、信頼度・期待度が最も低い態様フラグ『0』を再選択することができる。なお、このような場合においても、保留予告決定用テーブルにおいて、非確変大当りコマンドまたは確変大当りコマンドが送信されてきたときのみ、保留記憶表示として表示される表示態様を設け、100パーセント大当りとなる表示態様により保留記憶表示が行なわれたときには、昇格または降格させないようにしてもよい。
【0185】
また、前述した実施の形態においては、変動表示が終了して次回の変動表示の開始時すなわち保留記憶が『1』減算される瞬間たとえば予告演出画像が『S』から『当』に昇格するようにしたが、本発明はこれに限らず、たとえば、変動表示の開始タイミングに拘らず『S』等のある予告演出画像を所定時間表示させた後次の新たな予告演出画像(たとえば『当』)を表示させる昇格制御を行なうようにしてもよい。
【0186】
(2) 前述した実施形態においては、予告演出を行なっている保留記憶表示の表示態様を変化させる起因となる所定の条件として、可変表示が開始されることに関連し保留記憶数の数が減少したときについて説明したが、これに限らず、始動入賞口14に打玉が入賞したことに関連させて保留記憶数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶表示の表示態様を変化させてもよい。これにより、表示態様を変化させる起因となる所定の条件が成立したか否かを、遊技者は容易に認識させることができる。また、保留記憶表示により予告演出が開始されてからたとえば5秒経過する毎に、保留記憶表示の表示態様を変化させるようにしてもよい。すなわち、所定の条件として、所定の時間が経過することとして保留記憶表示の表示態様を変化させるようにしてもよい。この場合、所定の時間は、常に一定間隔で変化されるように、または、時間が長くなったり短くなったりと段階的に変化するように、時間間隔が予め定まっているものであってもよい。これにより、データを記憶させるための容量を必要最小限で実現することができる。」

オ 図11及び12は、次のものである。
【図11】

【図12】


(2)引用発明
ア 上記「(1)」「エ」には、変形例として、「始動入賞口14に打玉が入賞したことに関連させて保留記憶数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶表示の表示態様を変化させ」、また、「保留記憶表示により予告演出が開始されてからたとえば5秒経過する毎に、保留記憶表示の表示態様を変化させる」構成が記載されているところ、上記「(1)」「エ」の「始動入賞口14」、「打玉」、「保留記憶数」及び「保留記憶表示」は、上記「(1)」「イ」の「始動入賞領域」、「遊技球」「保留記憶されている始動入賞球数の数」及び「保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示」にそれぞれ相当するから、上記構成は、「始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させ、また、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる」構成といえる。

イ 上記アを踏まえると、上記(1)によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、本願発明の項分け記載AないしIに対応させて以下のとおり、aないしiに項分けして記載した。
「a、c、d 始動入賞領域へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立により各々が識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行なう変動表示装置と、遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する事前決定手段とを備え、該事前決定手段が表示結果を特定表示結果とすることを決定したときに前記変動表示装置に前記特定表示結果を表示した後に遊技者に有利な特定遊技状態を発生させる遊技機であって、
b1 前記始動入賞領域へ入賞した始動入賞球を検出する始動入賞球検出手段と、
e1 前記遊技機の遊技状態を制御するとともに、前記変動表示装置を制御するための制御情報を出力する遊技制御手段と、
f1 該遊技制御手段から出力されてきた制御情報に基づいて、前記変動表示装置を表示制御する表示制御手段と、
e2 前記変動表示装置の表示結果を前記特定表示結果とするか否かの決定に用いる数値データを更新する数値データ更新手段とを備え、
e3 前記遊技制御手段は、
e4 前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに、前記数値データ更新手段の数値データを抽出する数値データ抽出手段と、
e5 該数値データ抽出手段が抽出した数値データを用いて、前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに該始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を前記特定表示結果とするか否かを判定する始動入賞時判定手段と、
b2 前記始動入賞球検出手段により検出された始動入賞球数のうち未だ前記変動開始条件が成立せず前記変動表示装置の変動表示に用いられていない始動入賞球の球数を保留記憶する保留記憶手段と、
b3 前記始動入賞時判定手段の判定結果を特定可能な始動入賞時判定結果特定情報と、前記保留記憶手段に保留記憶されている始動入賞球数を特定するための保留数表示特定情報とを、前記表示制御手段に送信する特定情報送信手段とを含み、
f2 前記表示制御手段は、
f3 前記特定情報送信手段が送信した前記始動入賞時判定結果特定情報および前記保留数表示特定情報を受信する特定情報受信手段と、
f4 該特定情報受信手段が受信した前記始動入賞時判定結果特定情報に基づいて前記変動表示装置の表示結果が前記特定表示結果となる旨の予告を実行するか否かの決定を行なう予告決定手段と、
b4 前記特定情報受信手段が受信した前記保留数表示特定情報にもとづいて前記保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の制御を行なう保留表示制御手段と、
g1 前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたときに、前記保留表示制御手段により表示される保留表示の保留表示態様を複数種類(4種類)の予告保留表示態様(『?』,『リ』,『S』,『当』)から選択する予告保留表示態様選択手段と、
g2 前記複数種類の予告保留表示態様を前記変動表示装置に表示させる予告演出画像を生成するための複数種類の予告演出画像データ(『?』,『リ』,『S』,『当』に対応する16×16ドットの画像データ)を含む各種画像データを記憶している画像情報記憶手段と、
g3 前記変動表示装置に各種画像を表示させるためのタイミングを特定するタイミングデータと、前記始動入賞時判定結果特定情報の受信から所定時間経過後に前記変動表示装置に前記予告演出画像を表示させるための制御データとを記憶している制御データ記憶手段と、
g4 該制御データ記憶手段に記憶されている前記タイミングデータに基づいて計時し、前記変動表示装置に前記各種画像を表示させるための契機となるトリガ信号を出力する計時手段と、
g5 前記制御データ記憶手段に記憶されている前記タイミングデータと前記画像情報記憶手段に記憶されている前記各種画像データとに基づいて、前記変動表示装置に表示する画像を生成する画像生成手段とを備え、
g6 前記画像生成手段は、前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたことを条件として、前記変動表示装置で前記制御データ記憶手段に記憶されている前記制御データに基づく前記予告演出画像の表示を行なうために、前記予告保留表示態様選択手段により選択された予告保留表示態様に対応する前記予告演出画像データを前記計時手段からの前記トリガ信号に従って前記画像情報記憶手段から読み出して、予告演出画像を生成する予告演出画像生成手段を含み、
h 始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させ、また、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる、
i 遊技機。」

4 対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明は、「始動入賞領域へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立により各々が識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行なう変動表示装置と、遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する事前決定手段とを備え、該事前決定手段が表示結果を特定表示結果とすることを決定したときに前記変動表示装置に前記特定表示結果を表示した後に遊技者に有利な特定遊技状態を発生させる遊技機であ」(上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」)るから、可変表示(変動表示)を行い、遊技者にとって有利な有利状態(有利な特定遊技状態)に制御可能な遊技機であるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」の構成は、本願発明の「可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であ」(上記「2」「(2)」「A」)る点に相当する。

b 引用発明は、「前記始動入賞領域へ入賞した始動入賞球を検出する始動入賞球検出手段」(上記「3」「(2)」「イ」「b1」)を備え、「前記始動入賞球検出手段により検出された始動入賞球数のうち未だ前記変動開始条件が成立せず前記変動表示装置の変動表示に用いられていない始動入賞球の球数を保留記憶する保留記憶手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「b2」)、「前記始動入賞時判定手段の判定結果を特定可能な始動入賞時判定結果特定情報と、前記保留記憶手段に保留記憶されている始動入賞球数を特定するための保留数表示特定情報とを、前記表示制御手段に送信する特定情報送信手段とを含み」(上記「3」「(2)」「イ」「b3」)、「前記特定情報受信手段が受信した前記保留数表示特定情報にもとづいて前記保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の制御を行なう保留表示制御手段」(上記「3」「(2)」「イ」「b4」)を備えるところ、「前記始動入賞球検出手段により検出された始動入賞球数のうち未だ前記変動開始条件が成立せず前記変動表示装置の変動表示に用いられていない始動入賞球の球数」(上記「3」「(2)」「イ」「b2」)は、「始動入賞領域へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立により各々が識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行なう」(上記「3」「(2)」「イ」「a、c、d」)ことに照らして、変動表示に関する情報であるといえるから、可変表示(変動表示)に関する情報を、保留記憶として記憶する保留記憶手段を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「b1」ないし同「b4」の構成は、本願発明の「可変表示に関する情報を、保留記憶として記憶する保留記憶手段」(上記「2」「(2)」「B」)に相当する。

c 引用発明は、「始動入賞領域へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立により各々が識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行なう変動表示装置と、遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する事前決定手段とを備え、該事前決定手段が表示結果を特定表示結果とすることを決定したときに前記変動表示装置に前記特定表示結果を表示した後に遊技者に有利な特定遊技状態を発生させる遊技機であ」(上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」)るから、有利状態(有利な特定遊技状態)に制御するか否かを決定する決定手段(事前決定手段)を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」の構成は、本願発明の「前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段」(上記「2」「(2)」「C」)に相当する。

d 引用発明は、「始動入賞領域へ遊技球が入賞した後予め定められた変動開始条件の成立により各々が識別可能な複数種類の識別情報の変動表示を行なう変動表示装置と、遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する事前決定手段とを備え、該事前決定手段が表示結果を特定表示結果とすることを決定したときに前記変動表示装置に前記特定表示結果を表示した後に遊技者に有利な特定遊技状態を発生させる遊技機であ」(上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」)るから、決定手段(事前決定手段)の決定結果にもとづいて可変表示(変動表示)を実行する可変表示実行手段(変動表示装置)を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」の構成は、本願発明の「前記決定手段の決定結果にもとづいて可変表示を実行する可変表示実行手段」(上記「2」「(2)」「D」)に相当する。

e 引用発明は、「前記遊技機の遊技状態を制御するとともに、前記変動表示装置を制御するための制御情報を出力する遊技制御手段」(上記「3」「(2)」「イ」「e1」)を備え、「前記変動表示装置の表示結果を前記特定表示結果とするか否かの決定に用いる数値データを更新する数値データ更新手段とを備え」(上記「3」「(2)」「イ」「e2」)、「前記遊技制御手段は」(上記「3」「(2)」「イ」「e3」)、「前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに、前記数値データ更新手段の数値データを抽出する数値データ抽出手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「e4」)、「該数値データ抽出手段が抽出した数値データを用いて、前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに該始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を前記特定表示結果とするか否かを判定する始動入賞時判定手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「e5」)を備えるから、有利状態に制御される(始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を特定表示結果とする)か否かを判定する判定手段(始動入賞時判定手段)を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「e1」ないし同「e5」の構成は、本願発明の「前記決定手段による決定前に、前記有利状態に制御されるか否かを判定する判定手段」(上記「2」「(2)」「E」)と、「前記有利状態に制御されるか否かを判定する判定手段」の点で一致する。

f 引用発明は、「該遊技制御手段から出力されてきた制御情報に基づいて、前記変動表示装置を表示制御する表示制御手段」(上記「3」「(2)」「イ」「f1」)を備え、「前記表示制御手段は」(上記「3」「(2)」「イ」「f2」)、「前記特定情報送信手段が送信した前記始動入賞時判定結果特定情報および前記保留数表示特定情報を受信する特定情報受信手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「f3」)、「該特定情報受信手段が受信した前記始動入賞時判定結果特定情報に基づいて前記変動表示装置の表示結果が前記特定表示結果となる旨の予告を実行するか否かの決定を行なう予告決定手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「f4」)を備えるから、判定手段(始動入賞時判定手段)の判定結果(始動入賞時判定結果)にもとづいて、当該判定対象となった可変表示が開始される以前に特定演出を実行する(変動表示装置の表示結果が特定表示結果となる旨の予告を実行する)か否かを決定する特定演出決定手段(予告決定手段)を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「f1」ないし同「f4」の構成は、本願発明の「前記判定手段の判定結果にもとづいて、当該判定対象となった可変表示が開始される以前に特定演出を実行するか否かを決定する特定演出決定手段」(上記「2」「(2)」「F」)に相当する。

g 引用発明の「前記表示制御手段は、」(上記「3」「(2)」「イ」「f2」)、「前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたときに、前記保留表示制御手段により表示される保留表示の保留表示態様を複数種類(4種類)の予告保留表示態様(『?』,『リ』,『S』,『当』)から選択する予告保留表示態様選択手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「g1」)、「前記複数種類の予告保留表示態様を前記変動表示装置に表示させる予告演出画像を生成するための複数種類の予告演出画像データ(『?』,『リ』,『S』,『当』に対応する16×16ドットの画像データ)を含む各種画像データを記憶している画像情報記憶手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「g2」)、「前記変動表示装置に各種画像を表示させるためのタイミングを特定するタイミングデータと、前記始動入賞時判定結果特定情報の受信から所定時間経過後に前記変動表示装置に前記予告演出画像を表示させるための制御データとを記憶している制御データ記憶手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「g3」)、「該制御データ記憶手段に記憶されている前記タイミングデータに基づいて計時し、前記変動表示装置に前記各種画像を表示させるための契機となるトリガ信号を出力する計時手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「g4」)、「前記制御データ記憶手段に記憶されている前記タイミングデータと前記画像情報記憶手段に記憶されている前記各種画像データとに基づいて、前記変動表示装置に表示する画像を生成する画像生成手段とを備え」(上記「3」「(2)」「イ」「g5」)、「前記画像生成手段は、前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたことを条件として、前記変動表示装置で前記制御データ記憶手段に記憶されている前記制御データに基づく前記予告演出画像の表示を行なうために、前記予告保留表示態様選択手段により選択された予告保留表示態様に対応する前記予告演出画像データを前記計時手段からの前記トリガ信号に従って前記画像情報記憶手段から読み出して、予告演出画像を生成する予告演出画像生成手段」(上記「3」「(2)」「イ」「g6」)を備えるから、特定演出決定手段(予告決定手段)によって特定演出(予告)を実行すると決定された場合に、前記特定演出(予告)を実行可能な特定演出実行手段(表示制御手段)を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「f2」及び上記「3」「(2)」「イ」「g1」ないし同「g6」の構成は、本願発明の「前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、前記特定演出を実行可能な特定演出実行手段」(上記「2」「(2)」「G」)に相当する。

h 引用発明の「前記画像生成手段は、前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたことを条件として、前記変動表示装置で前記制御データ記憶手段に記憶されている前記制御データに基づく前記予告演出画像の表示を行なうために、前記予告保留表示態様選択手段により選択された予告保留表示態様に対応する前記予告演出画像データを前記計時手段からの前記トリガ信号に従って前記画像情報記憶手段から読み出して、予告演出画像を生成する予告演出画像生成手段を含み」(上記「3」「(2)」「イ」「g6」)、「前記表示制御手段は、」(上記「3」「(2)」「イ」「f2」)、「始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させ、また、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる」(上記「3」「(2)」「イ」「h」)構成を備えるから、特定演出実行手段(表示制御手段)は、保留記憶が記憶されたこと(始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したとき)にもとづいて特定演出を実行し(予告演出を行なっている保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させ)、所定期間が経過(5秒経過)したことにもとづいて特定演出を実行する(保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる)構成を備えるといえる。
そうすると、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「g6」、上記「3」「(2)」「イ」「f2」及び上記「3」「(2)」「イ」「h」の、「前記表示制御手段は、」「前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたことを条件として、」「始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させ」る構成は、本願発明の「前記特定演出実行手段は、前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、新たに保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行」する(上記「2」「(2)」「H0」及び同「H1」)構成と、「前記特定演出実行手段は、前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行」する点で一致するとともに、引用発明の上記「3」「(2)」「イ」「g6」、上記「3」「(2)」「イ」「f2」及び上記「3」「(2)」「イ」「h」の、「前記表示制御手段は、」「前記予告決定手段により予告を実行する旨の決定がなされたことを条件として、」「また、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる」構成は、本願発明の「前記特定演出実行手段は」、「前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定され、新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行する」(上記「2」「(2)」「H0」及び同「H2」)構成と、「前記特定演出実行手段は」、「前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定され、所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行する」点で一致する。

i 引用発明の「遊技機」(上記「3」「(2)」「イ」「i」)は、本願発明の「ことを特徴とする遊技機」(上記「2」「(2)」「I」)に相当する。

(2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明は、
「A 可変表示を行い、遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 可変表示に関する情報を、保留記憶として記憶する保留記憶手段と、
C 前記有利状態に制御するか否かを決定する決定手段と、
D 前記決定手段の決定結果にもとづいて可変表示を実行する可変表示実行手段と、
E´ 前記有利状態に制御されるか否かを判定する判定手段と、
F 前記判定手段の判定結果にもとづいて、当該判定対象となった可変表示が開始される以前に特定演出を実行するか否かを決定する特定演出決定手段と、
G 前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、前記特定演出を実行可能な特定演出実行手段とを備え、
H0 前記特定演出実行手段は、
H1´ 前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定された場合に、保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行し、
H2´ 前記特定演出決定手段によって前記特定演出を実行すると決定され、所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行する
I 遊技機。」
である点で一致し、下記の点で相違する。

ア 相違点1
本願発明の「判定手段」は、「決定手段による決定前に、」前記有利状態に制御されるか否かを判定するのに対して、引用発明の「始動入賞時判定手段」は、「事前決定手段による決定前に」判定するとは特定されない点(以下「相違点1」という)。

イ 相違点2
本願発明の「特定演出実行手段」は「新たに」保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行し、「新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、」所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行するのに対して、引用発明の「表示制御手段」が「予告演出」を実行する条件が上記場合とは特定されない点(以下「相違点2」という)。

(3)判断
ア 上記相違点1について検討する。
引用発明の「事前決定手段」は、「遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する」(上記「3」「(2)」「イ」「a,c,d」)ものであり、また、「始動入賞時判定手段」は、「前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに、前記数値データ更新手段の数値データを抽出する数値データ抽出手段」(上記「3」「(2)」「イ」「e4」)を備え、「該数値データ抽出手段が抽出した数値データを用いて、前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに該始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を前記特定表示結果とするか否かを判定する」(上記「3」「(2)」「イ」「e5」)ものであるから、「事前決定手段」と「始動入賞時判定手段」は、いずれも「遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したとき」以後に決定ないし判定するものであるところ、「事前決定手段」が「遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する」ことと、「始動入賞時判定手段」が「該数値データ抽出手段が抽出した数値データを用いて、前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに該始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を前記特定表示結果とするか否かを判定する」こととは、「遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したとき」以後どちらが先に決定/判定されるかまでは特定されない。
そして、「事前決定手段」の決定以降に関しては、「前記遊技機の遊技状態を制御するとともに、前記変動表示装置を制御するための制御情報を出力する遊技制御手段と」(上記「3」「(2)」「イ」「e1」)、「該遊技制御手段から出力されてきた制御情報に基づいて、前記変動表示装置を表示制御する表示制御手段(上記「3」「(2)」「イ」「f1」)を備え、「変動表示の表示結果」(変動表示を停止)を得るものであるから、「変動表示の表示結果」(変動表示を停止)となるまでに決定すればよいものであるといえる。
これに対して、「始動入賞時判定手段」に関しては、「該特定情報受信手段が受信した前記始動入賞時判定結果特定情報に基づいて前記変動表示装置の表示結果が前記特定表示結果となる旨の予告を実行するか否かの決定を行なう予告決定手段」(上記「3」「(2)」「イ」「f4」)を備え、特に「変動表示装置の表示結果が前記特定表示結果となる」場合に、「変動表示の表示結果」(変動表示を停止)となる前に「前記変動表示装置の表示結果が前記特定表示結果となる旨の予告を実行する」ものである。
そうすると、「事前決定手段」の決定より先に「始動入賞時判定手段」による判定を実行する構成とすることは当業者が容易に想到し得ることであるから、引用発明において、「事前決定手段」が「遊技球が前記始動入賞領域へ入賞したときに前記変動表示装置の表示結果をその導出表示以前に決定する」前に、「始動入賞時判定手段」が「該数値データ抽出手段が抽出した数値データを用いて、前記始動入賞球検出手段が前記始動入賞球を検出したときに該始動入賞球の検出に起因する変動表示の表示結果を前記特定表示結果とするか否かを判定する」構成となして、上記相違点1にかかる本願発明の構成となすことは、当業者が容易になし得たことである。

イ 上記相違点2について検討する。
引用発明の「保留記憶手段」は、「前記始動入賞球検出手段により検出された始動入賞球数のうち未だ前記変動開始条件が成立せず前記変動表示装置の変動表示に用いられていない始動入賞球の球数を保留記憶する」(上記「3」「(2)」「イ」「b2」)ものであるから、引用発明の「始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したとき」(上記「3」「(2)」「イ」「h」)とは、「始動入賞球検出手段により検出された始動入賞球数のうち未だ前記変動開始条件が成立せず前記変動表示装置の変動表示に用いられていない始動入賞球の球数」が増加すること、つまり、「新たに」保留記憶が記憶されたことを意味すると認められる。
そうすると、引用発明は、本願発明の「特定演出実行手段」は「新たに保留記憶が記憶されたことにもとづいて前記特定演出を実行」(H1)との構成を備える。
また、引用発明の「保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる」(上記「3」「(2)」「イ」「h」)構成は、本願発明の「所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行」(H2)することに相当するものであるところ、当該「5秒経過する毎」の前に、「新たに保留記憶が記憶され」るか、「新たに保留記憶が記憶され」ないかは特定されていない。
しかしながら、「新たに保留記憶が記憶され」る場合の構成として「始動入賞領域に遊技球が入賞したことに関連させて保留記憶されている始動入賞球数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させ」(上記「3」「(2)」「イ」「h」)ると特定されることに照らして、「また、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる」(上記「3」「(2)」「イ」「h」)との特定は、「新たに保留記憶が記憶され」ない場合に関する特定であってよいと認められる。
そうすると、引用発明は、本願発明の「特定演出実行手段」は「新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過したことにもとづいて前記特定演出を実行する」(H2)との構成を備えるものであってよいと認められる。
したがって、引用発明において、「新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎に、保留記憶手段に記憶されている始動入賞球数を特定可能な保留表示の表示態様を変化させる」構成となして、上記相違点2にかかる本願発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである(下線は当審が付した。)。

(4)請求人の審判請求書での主張について(下線は当審が付した。)
ア 請求人は審判請求書の「3.本願発明が特許されるべき理由」「(2)本願発明の要点」において
「本願発明による遊技機は、請求項1に記載されているように、以下の構成要素を含むことを特徴としている。・・・(途中省略)・・・
(g)特定演出実行手段が、特定演出決定手段によって特定演出を実行すると決定された場合に、新たに保留記憶が記憶されたことにもとづいて特定演出を実行すること
(h)特定演出実行手段が、特定演出決定手段によって特定演出を実行すると決定され、新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過したことにもとづいて特定演出を実行すること」
と記載した上で、同書「3.本願発明が特許されるべき理由」「(4)本願発明と引用文献に記載された発明との比較」「(4-1)請求項1に関して」において概略
「本願発明と引用文献に記載された発明とを比較すると、引用文献1に記載された発明を用いたとしても、少なくとも、上記の(g),(h)の構成要素が大きく異なる。
本願発明では、上記の(g)の構成要素を備えることによって、特定演出を実行すると決定された場合に、新たに保留記憶が記憶されたことにもとづいて特定演出を実行する。そして、そのような構成の下、上記の(h)の構成要素を備えることによって、特定演出を実行すると決定され、新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過したことにもとづいて特定演出を実行するように構成されている。そのような構成を備えることによって、本願発明では、新たに保留記憶が記憶されなかった場合であっても所定期間が経過したことにもとづいて特定演出を実行するので、特定演出が実行されずに遊技に対する興趣が低下してしまうことを抑制することができ、当初明細書の段落[0009]に記載されたような効果を奏するものとなっている。
これに対して、引用文献1では、例えば、段落[0186]の記載を見れば分かるように、保留記憶表示の表示態様を変化させる契機が始動入賞の発生や所定時間の経過であるものが記載されており、引用文献1の記載にもとづいて新たに保留記憶が記憶されたことや所定期間が経過したことにもとづいて特定演出を実行する本願発明の構成に想到することは困難であるものと思料する。・・・(途中省略)・・・
ご指摘のように、引用文献1の段落[0187]には、さまざまなタイミングで保留記憶表示の表示態様を変化させてもよいことが記載されている。しかしながら、引用文献1では、例えば、段落[0186]に「保留記憶数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、『予告演出を行っている』保留記憶表示の表示態様を変化させてもよい」と記載されていることからも分かるように、既に予告演出を実行している保留記憶表示の表示態様を変化させるものである。従って、引用文献1において、段落[0187]の記載を適用したとしても、既に『予告演出を行っている』保留記憶表示の表示態様を様々なタイミングで変化させるものにしかならない。そうすると、引用文献1の段落[0187]の記載を適用したとしても、『特定演出』を実行するタイミングを「新たに保留記憶が記憶された』タイミングや、『新たに保留記憶が記憶されなかった場合に、所定期間が経過した』タイミングとするように構成することはできず、引用文献1の記載から本願発明の特徴的構成である上記の(g),(h)の構成を導き出すことはできないものと思料する。」
と主張する。

イ これに対して、引用文献には下記の記載がある。
(ア)「図11(a)は、左中右図柄の3つの特別図柄が上から下へ可変表示されている最中に、打玉が始動入賞口14に入賞し、予告を行なう判定がなされて、態様フラグ『0』が選択されセットされたときの表示画面を示している。本実施形態においては、可変表示中であっても保留記憶表示の表示態様を予告の表示態様で表示することができる。すなわち、保留記憶表示10dの表示態様を『?』マークの付加された表示態様により表示することにより保留予告を行なうことができる。」(上記「3」「(1)」「ウ」【0067】及び同「オ」図11(a))
したがって、引用文献には、まだ予告演出(保留予告/保留記憶表示の表示態様を予告の表示態様で表示すること)を行なっていない当該入賞に対して、態様フラグ『0』がセットされたとき初めて保留記憶表示の表示態様を『?』マークの付加された表示態様により表示する予告演出を行う本実施形態が記載されている。

(イ)「図11(b)は、予告を行なう判定がなされたときの可変表示が終了し、・・・保留記憶表示10dを保留記憶表示10cの表示位置にスライドさせるときに、『?』マークの付加されていた表示態様を『リ』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なうことができる。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『0』から『1』に変更する処理がなされたことによる。・・・
図11(d)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図11(b)および図11(c)の保留記憶表示10cを保留記憶表示10bの表示位置にスライドさせるときに、『リ』マークの付加されていた表示態様を『S』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なっている。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『1』から『2』に変更する処理がなされたことによる。・・・
図11(f)は、保留記憶表示10をさらに『1』減算させたときの表示画面を示している。図11(d)および図11(e)の保留記憶表示10bを保留記憶表示10aの表示位置にスライドさせるときに、『S』マークの付加されていた表示態様を『当』マークの付加された表示態様に変化させ、保留予告を行なっている。これは、昇格させる判定がなされて、態様フラグを『2』から『3』に変更する処理がなされたことによる。・・・
図11(i)は、予告のターゲットとなる可変表示における特別図柄の表示結果が『7』のゾロ目となり、大当りが発生した表示画面を示している。すなわち、図11(f)および図11(g)の保留記憶表示10aでは、態様フラグとして『3』がセットされたことに対応した『当』の表示態様で保留予告が行なわれ、かかる保留予告に対応する可変表示により大当りを発生させている。これは、図9の保留予告決定用テーブルにおいて態様フラグとして『3』がセットされるときは、判定結果コマンドが非確変大当りコマンドまたは確変大当りコマンドのときだけであることによる。・・・
以上のように、可変表示毎に昇格させる判定がなされ、態様フラグが大当りとなる期待度・信頼度の比較的低い『0』から、大当りとなる期待度・信頼度が高くなる『1』、『2』へと段階的に変更し、予告のターゲットとなる可変表示が開始される直前には大当りとなる期待度・信頼度が最も高い『3』に変更されている。そして、態様フラグが変更される毎に、態様フラグに対応する表示態様により保留記憶表示を行ない、『?』から『リ』、『S』、『当』に表示態様を変更し保留予告を行なっている。」(上記「3」「(1)」「ウ」【0068】?【0076】及び同「オ」図11(b)?(i))
したがって、引用文献には、上記(ア)で予告演出が行われた後、既に予告演出を行なっている当該入賞に対して、態様フラグを「1」ないし「3」に変更する処理がなされたときに、予告演出の表示態様を「リ」マーク、「S」マーク、または、「当」マークの付加された表示態様に「昇格」させる本実施形態が記載されている。

(ウ)「(2) 前述した実施形態においては、予告演出を行なっている保留記憶表示の表示態様を変化させる起因となる所定の条件として、可変表示が開始されることに関連し保留記憶数の数が減少したときについて説明したが、これに限らず、始動入賞口14に打玉が入賞したことに関連させて保留記憶数の数が増加したときに所定の条件が成立したとして、予告演出を行なっている保留記憶表示の表示態様を変化させてもよい。これにより、表示態様を変化させる起因となる所定の条件が成立したか否かを、遊技者は容易に認識させることができる。また、保留記憶表示により予告演出が開始されてからたとえば5秒経過する毎に、保留記憶表示の表示態様を変化させるようにしてもよい。すなわち、所定の条件として、所定の時間が経過することとして保留記憶表示の表示態様を変化させるようにしてもよい。」(上記「3」「(1)」「ウ」【0186】)

ウ 上記「イ」「(ア)」及び「(イ)」によれば、引用文献には、まだ予告演出(保留予告)を行なっていない当該入賞に対して、態様フラグ「0」がセットされたとき初めて「?」マークの付加された表示態様により予告演出を行い、当該「?」マークの付加された表示態様により予告演出が行われた後、既に予告演出を行なっている当該入賞に対して、態様フラグを「1」ないし「3」に変更する処理がなされたときに、予告演出を「リ」マークないし「当」マークの付加された表示態様に「昇格」させる本実施形態が記載されている。

エ 請求人は引用発明では、「既に予告演出を行っている」保留記憶表示の表示態様を変化させるものにしかならないと主張しているが、引用文献の段落【0089】にあるように、「『?』は、大当りになるか、リーチになるか等全く何もわからないといった印象を遊技者に与え、余り期待感を抱かせない」もの、すなわち本願発明の実施の形態で示される「チャンスかも」に当たる「示唆演出」に相当し、引用発明では「予告演出」として記載されているが(引用発明の構成g2)、当該「?」の後の、「昇格」による「リ」マーク以降の「S」マーク、「当」マークといった変化の演出が、本願発明における特定演出に相当する。
そして、引用発明のこれらの変化の演出は本願発明の特定演出の実行タイミングと同様の「始動入賞口に打玉が入賞したことに関連させて保留記憶数の数が増加したとき」と「保留記憶表示により予告演出が開始されてから5秒経過する毎」(引用発明の構成h、上記「イ」「(ウ)」)のタイミングで行われている。
したがって、特定演出を実行するタイミングに関して、本願発明と引用発明の間に差異は見い出せないから、請求人の主張を採用することはできない。

(5)小括
上記(1)ないし(4)での検討によれば、引用発明において、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことと認められる。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-01-29 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-18 
出願番号 特願2014-30498(P2014-30498)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄最首 祐樹  
特許庁審判長 奥 直也
特許庁審判官 松川 直樹
倉持 俊輔
発明の名称 遊技機  
代理人 岩壁 冬樹  
代理人 眞野 修二  
代理人 塩川 誠人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ