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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1350517
審判番号 不服2018-11863  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-05 
確定日 2019-04-04 
事件の表示 特願2014- 85441「トナーカートリッジ、画像形成ユニット及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月19日出願公開、特開2015-206822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年4月17日の出願であって、平成29年12月4日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月15日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年5月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月1日付けで、同年5月10日にされた手続補正についての補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ、これに対して同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成30年9月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の請求項1の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示すために当審で付加した。)。
「【請求項1】
トナーを収容可能なトナー収容筐体と、前記トナー収容筐体の内部で前記トナー収容筐体に回転自在に支持され、前記トナー収容筐体に収容されたトナーを搬送可能なオーガスクリューと、を備え、
前記トナー収容筐体は、
前記オーガスクリューのトナー搬送方向下流端を回転自在に支持する第1支持部と、
前記オーガスクリューのトナー搬送方向上流端を回転自在に支持する第2支持部と、
トナー搬送方向下流側、かつ前記第1支持部の下方側に設けられ、前記オーガスクリューにより搬送されるトナーが排出される排出口と、
前記排出口の上方に設けられ、前記オーガスクリューの回転軸と直交する面に対して、トナー搬送方向上流側に所定角度傾斜した傾斜面と、
を有するトナーカートリッジであって、
前記傾斜面は、前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分と遠い部分とを有し、
前記傾斜面の前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分は、前記オーガスクリュー付近から前記排出口まで傾斜を維持しつつ伸びていて、
前記周辺部は、前記近い部分と前記遠い部分とを結ぶ斜面又は該斜面を基準としてトナー搬送方向下流方向に凹んだ面を有することを特徴とするトナーカートリッジ。」
(2) 本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の、平成30年2月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
トナーを収容可能なトナー収容筐体と、前記トナー収容筐体の内部で前記トナー収容筐体に回転自在に支持され、前記トナー収容筐体に収容されたトナーを搬送可能なオーガスクリューと、を備え、
前記トナー収容筐体は、
前記オーガスクリューのトナー搬送方向下流端を回転自在に支持する第1支持部と、前記オーガスクリューのトナー搬送方向上流端を回転自在に支持する第2支持部と、トナー搬送方向下流側、かつ前記第1支持部の下方側に設けられ、前記オーガスクリューにより搬送されるトナーが排出される排出口と、
前記排出口の上方に設けられ、前記オーガスクリューの回転軸と直交する面に対して、トナー搬送方向上流側に所定角度傾斜した傾斜面と、を有するトナーカートリッジであって、
前記傾斜面は、前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分と遠い部分とを有することを特徴とするトナーカートリッジ。」

2 補正の適否
請求項1に係る本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明に対して、「前記傾斜面の前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分は、前記オーガスクリュー付近から前記排出口まで傾斜を維持しつつ伸びていて、前記周辺部は、前記近い部分と前記遠い部分とを結ぶ斜面又は該斜面を基準としてトナー搬送方向下流方向に凹んだ面を有する」との事項(以下、「本件補正事項1」という。)を追加するものであると認められる。
これに対して、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「周辺部」との記載はない。そして、本件補正後の請求項1に係る発明において、「周辺部」とはどのような部分であるのかが特定されていないところ、そのような特定のない「周辺部」が、「傾斜面」の「前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分と遠い部分」とを結ぶ「斜面又は該斜面を基準としてトナー搬送方向下流方向に凹んだ面を有する」ことは、当初明細書等に記載も示唆もされていない。
してみると、本件補正事項1は、当初明細書等に記載されておらず、また、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項の範囲内であるとはいえず、請求項1に係る本件補正は当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 原査定の概要

平成30年6月1日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の概要は次のとおりである(引用文献については、下記の引用文献等一覧を参照。)。

1 平成30年2月13日にされた手続補正後の請求項1-3,9-11に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 平成30年2月13日にされた手続補正後の請求項4に係る発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 平成30年2月13日にされた手続補正後の請求項5-8に係る発明は、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-218356号公報
2.特開平10-149022号公報
3.特開平10-339991号公報
4.特開2002-62735号公報


第4 本願発明について

平成30年9月5日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし11に係る発明は、平成30年2月13日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1(2)のとおりのものであって、再掲すると、以下のとおりのものである。

「トナーを収容可能なトナー収容筐体と、前記トナー収容筐体の内部で前記トナー収容筐体に回転自在に支持され、前記トナー収容筐体に収容されたトナーを搬送可能なオーガスクリューと、を備え、
前記トナー収容筐体は、
前記オーガスクリューのトナー搬送方向下流端を回転自在に支持する第1支持部と、前記オーガスクリューのトナー搬送方向上流端を回転自在に支持する第2支持部と、トナー搬送方向下流側、かつ前記第1支持部の下方側に設けられ、前記オーガスクリューにより搬送されるトナーが排出される排出口と、
前記排出口の上方に設けられ、前記オーガスクリューの回転軸と直交する面に対して、トナー搬送方向上流側に所定角度傾斜した傾斜面と、を有するトナーカートリッジであって、
前記傾斜面は、前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分と遠い部分とを有することを特徴とするトナーカートリッジ。」


第5 引用文献

1 引用文献1
(1) 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
ア 「【請求項1】
底壁を有し、現像剤を収容する容器本体と、
前記底壁に連なって前記容器本体から突設され、現像剤排出口が備えられた筒状部と、
前記容器本体から前記筒状部に亘って架設され、前記容器本体内の現像剤を搬送する機能を有する回転部材と、を備え、
前記回転部材は、
前記底壁の延びる方向に延在し、前記容器本体内に位置する第1部分と、前記筒状部内に位置する第2部分とを備える回転軸と、
前記回転軸の前記第2部分の周面上に配置され、前記回転軸と一体回転すると共に、前記筒状部側から前記容器本体側へ向かう第1搬送方向に前記現像剤を搬送する第1搬送部材と、
前記回転軸の前記第1部分の周面上であって前記第1搬送部材よりも径方向外側に配置され、前記第2部分の周面上には配置されず、前記回転軸と一体回転すると共に、前記容器本体側から前記筒状部側へ向かう第2搬送方向に前記現像剤を搬送する第2搬送部材と、
前記回転軸と平行な方向に前記第1部分及び第2部分に亘って延び、搬送される現像剤を径方向外側へ分散させる分散部材と、を含み、
前記分散部材は、前記筒状部において、当該筒状部の内周壁に近い部分の現像剤を流動させる、現像剤収容容器。」
イ 「【請求項2】
請求項1に記載の現像剤収容容器において、
前記第2搬送部材は、前記第1搬送部材を備えた前記回転軸を挿通可能な中空部を備えたスパイラル状の搬送部材であり、
前記分散部材は、前記回転軸の径方向で見て前記第2搬送部材とほぼ同じ周回軌道上に存在する、現像剤収容容器。」
ウ 「【請求項11】
請求項1?10のいずれか1項に記載の現像剤収容容器において、
前記筒状部は、断面円形状の内壁面を有し、
前記容器本体の前記底壁は、前記第2搬送部材の径方向における最突出部分の回転軌跡に対応した半円形状の内壁面を有し、該半円形状の内壁面は前記筒状部の円形状の内壁面に連接されており、
前記容器本体は、前記底壁の一端縁から上方に延びる第1側壁と、前記底壁の他端縁から上方に延び前記第1側壁と対向する第2側壁と、前記第1側壁及び第2側壁の一端縁同士を繋ぐ第3側壁と、前記第3側壁と対向し第1側壁及び第2側壁の他端縁同士を繋ぐ第4側壁とを含み、
前記筒状部は、前記第3側壁から突設され、
前記回転軸は第1端部と、該第1端部と反対側の第2端部とを有し、前記第1端部は前記第4側壁において軸支され、前記第2端部は、前記筒状部の突出先端面において軸支されている、現像剤収容容器。」
エ 「【請求項12】
周面に現像剤像を担持する像担持体と、
前記像担持体の周面に現像剤を供給する現像ローラーを含む現像装置と、
前記現像装置に組み付けられ、前記現像装置に現像剤を補給する、請求項1に記載の現像剤収容容器と、
を備える画像形成装置。」
オ 「【0004】
トナーコンテナにおいて重要な点は、コンテナ本体内にトナーを可及的に残存させることなく、トナーをトナー排出口から排出できるようにすることである。しかしながら、トナーコンテナの形状は、トナー排出性だけが考慮されて決定されるのではなく、画像形成装置における様々な設計思想に基づき決定される。このため、コンテナの形状によっては、トナーがトナー排出口の近傍で押し固められてしまい、トナーの吐出が阻害されるという問題があった。」
カ 「【0042】
トナーコンテナ50は、現像装置33に補給するトナー(現像剤)を貯留する。トナーコンテナ50は、トナーの主な貯留箇所となるコンテナ本体51(容器本体)と、コンテナ本体51の一側面(図1では後面)の下部から突設された筒状部52と、コンテナ本体51の他の側面を覆う蓋部材53と、コンテナ内部に収容されトナーを搬送する回転部材54とを含む。トナーコンテナ50内に貯留されたトナーは、回転部材54が回転駆動されることによって、筒状部52の先端下面に設けられたトナー排出口521から現像装置33内に供給される。このトナーコンテナ50については、図6以下を参照して後記で詳述する。」
(2) 引用発明1の認定
ア 引用文献1の段落【0042】に記載される「トナー排出口521」は引用文献1の請求項1に記載される「現像剤排出口」に対応すると認められるところ、上記(1)カより、引用文献1には「現像剤排出口」が「筒状部」の「先端下面に設けられ」ることが記載されていると認められる。
イ したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「底壁を有し、現像剤を収容する容器本体と、
前記底壁に連なって前記容器本体から突設され、現像剤排出口が備えられた筒状部と、
前記容器本体から前記筒状部に亘って架設され、前記容器本体内の現像剤を搬送する機能を有する回転部材と、を備え、
前記回転部材は、
前記底壁の延びる方向に延在し、前記容器本体内に位置する第1部分と、前記筒状部内に位置する第2部分とを備える回転軸と、
前記回転軸の前記第2部分の周面上に配置され、前記回転軸と一体回転すると共に、前記筒状部側から前記容器本体側へ向かう第1搬送方向に前記現像剤を搬送する第1搬送部材と、
前記回転軸の前記第1部分の周面上であって前記第1搬送部材よりも径方向外側に配置され、前記第2部分の周面上には配置されず、前記回転軸と一体回転すると共に、前記容器本体側から前記筒状部側へ向かう第2搬送方向に前記現像剤を搬送する第2搬送部材と、
前記回転軸と平行な方向に前記第1部分及び第2部分に亘って延び、搬送される現像剤を径方向外側へ分散させる分散部材と、を含み、
前記第2搬送部材は、前記第1搬送部材を備えた前記回転軸を挿通可能な中空部を備えたスパイラル状の搬送部材であり、
前記分散部材は、前記回転軸の径方向で見て前記第2搬送部材とほぼ同じ周回軌道上に存在し、前記筒状部において、当該筒状部の内周壁に近い部分の現像剤を流動させ、
前記筒状部は、断面円形状の内壁面を有し、
前記容器本体の前記底壁は、前記第2搬送部材の径方向における最突出部分の回転軌跡に対応した半円形状の内壁面を有し、該半円形状の内壁面は前記筒状部の円形状の内壁面に連接されており、
前記容器本体は、前記底壁の一端縁から上方に延びる第1側壁と、前記底壁の他端縁から上方に延び前記第1側壁と対向する第2側壁と、前記第1側壁及び第2側壁の一端縁同士を繋ぐ第3側壁と、前記第3側壁と対向し第1側壁及び第2側壁の他端縁同士を繋ぐ第4側壁とを含み、
前記筒状部は、前記第3側壁から突設され、
前記回転軸は第1端部と、該第1端部と反対側の第2端部とを有し、前記第1端部は前記第4側壁において軸支され、前記第2端部は、前記筒状部の突出先端面において軸支され、
前記現像剤排出口は、前記筒状部の先端下面に設けられる、現像剤収容容器であって、
現像装置に組み付けられ、前記現像剤排出口から前記現像装置に現像剤を補給する、現像剤収容容器。」

2 引用文献2
(1) 引用文献2には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
ア 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来においては、下搬送路から上搬送路に現像剤を押し上げるところで問題が発生していた。すなわち、下スクリュ部により長手方向に搬送されてきた現像剤は、最端部で現像容器の垂直壁に衝突するため、下スクリュ部によって次々に搬送されてくる現像剤によって、現像剤同士に圧力がかかり、唯一の逃げ道となる仕切り壁の開口部に移動して上搬送路に供給される。」
イ 「【0030】以後、現像剤は順次同様に循環的に攪拌搬送されて現像用マグネットローラ2に供給される。図4は現像剤を上方へ案内する案内手段としての傾斜面部15を示す断面図である。」
ウ 「【0031】傾斜面部15は現像容器1の内底部に一体に形成され、仕切板11の第2の開口部13に対向され、回転シャフト16bの端部は傾斜面部15に穿設された挿通口15aに挿通されている。回転シャフト16bの端部はゴムシール付きボールベアリング18を介して現像容器1Aに回転自在に支持されている。傾斜面部15には挿通口15aとこの挿通口15aに挿通される回転シャフト16bとの間の隙間をシールするためのシール手段としてのシール部材19が取り付けられている。」
エ 「【0037】上記した構成により、下スクリュ部3によって搬送されてきた現像剤はその搬送力によって、傾斜面部15に沿って移動していく。従来のように現像剤が現像容器の垂直壁に対して直角につきあたる場合と異なり、後続の現像剤に押されても圧縮される量が低減され、傾斜面部15に沿って上方に移動させられていく。」


引用文献2の図4より、「第2の開口部13」が「傾斜面部15」の上方にあること、及び、「傾斜面部15」が「第2の開口部13」からみて「回転シャフト」よりも近い部分と遠い部分とを有することが、看て取れる(当審注:段落【0030】及び【0031】の記載を考慮すると、図4における「12」との記載は誤記であって、正しくは「13」であると認められる。)。
(2)ア 上記(1)エの「現像剤が・・・傾斜面部15に沿って上方に移動させられていく。」、及び、上記(1)オの「第2の開口部13が傾斜面部15の上方にあること」より、引用文献2には「現像剤」を「傾斜面部15に沿って」「第2の開口部13」に移動させることが記載されていると認められる。
イ 以上のことから、引用文献2には次の技術が記載されていると認められる。
「下スクリュ部3によって搬送されてきた現像剤をその搬送力によって、第2の開口部13からみて回転シャフト16bよりも近い部分と遠い部分とを有する傾斜面部15に沿って、第2の開口部13に移動させること。」


第6 対比・判断

1 本願発明と引用発明1とを対比する。
(1) 引用発明1の「現像剤」は、本願発明の「トナー」に相当する。
(2) 引用発明1において、「現像剤」が「容器本体」及び「筒状部」の内部に収容され得ることは明らかであるから、引用発明1の「容器本体」及び「筒状部」は、本願発明の「トナー収容筐体」に相当する。
(3) 引用発明1の「回転部材」は「前記容器本体から前記筒状部に亘って架設され、前記容器本体内の現像剤を搬送する機能を有する」ものであって、当該「回転部材」の「第2搬送部材」は「スパイラル状」であるから、引用発明1の「回転部材」は、本願発明の「前記トナー収容筐体の内部で前記トナー収容筐体に回転自在に支持され、前記トナー収容筐体に収容されたトナーを搬送可能なオーガスクリュー」に相当する。
(4) 本願発明において「排出口」があるのは「トナー搬送方向下流側」であるとされているところ、引用発明1において「現像剤排出口が備えられた筒状部」は「容器本体」に対して、本願発明でいうところの「トナー搬送方向下流側」にあるといえる。そして、引用発明1において、「回転部材」の「回転軸」の「第2端部」は「筒状部の突出先端面において軸支され」ているから、引用発明1の「筒状部の突出先端面」は、本願発明の「前記オーガスクリューのトナー搬送方向下流端を回転自在に支持する第1支持部」に相当する構成を有することは明らかである。
(5) 本願発明において「排出口」があるのは「トナー搬送方向下流側」であるとされているところ、引用発明1において「容器本体」は「現像剤排出口が備えられた筒状部」に対して、本願発明でいうところの「トナー搬送方向上流側」にあるといえる。そして、引用発明1において、「回転部材」の「回転軸」の「第1端部」は「容器本体」の「第4側壁において軸支され」ているから、引用発明1の「容器本体」の「第4側壁」は、本願発明の「前記オーガスクリューのトナー搬送方向上流端を回転自在に支持する第2支持部」に相当する構成を有することは明らかである。
(6) 引用発明1において、「現像剤排出口は、前記筒状部の先端下面に設けられ」ており、当該「筒状部の先端下面」は、「筒状部の突出先端面」における「回転部材」の「回転軸」の「第2端部」を軸支する部分よりも下方側にあることは明らかであるから、引用発明1の「現像剤排出口」は、本願発明の「トナー搬送方向下流側、かつ前記第1支持部の下方側に設けられ、前記オーガスクリューにより搬送されるトナーが排出される排出口」に相当する。
(7) 引用発明1の「現像剤収容容器」は、「現像装置に組み付けられ、前記現像装置に現像剤を補給する」ものであるから、本願発明の「トナーカートリッジ」に相当する。
(8) 以上のことから、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「トナーを収容可能なトナー収容筐体と、前記トナー収容筐体の内部で前記トナー収容筐体に回転自在に支持され、前記トナー収容筐体に収容されたトナーを搬送可能なオーガスクリューと、を備え、
前記トナー収容筐体は、
前記オーガスクリューのトナー搬送方向下流端を回転自在に支持する第1支持部と、前記オーガスクリューのトナー搬送方向上流端を回転自在に支持する第2支持部と、トナー搬送方向下流側、かつ前記第1支持部の下方側に設けられ、前記オーガスクリューにより搬送されるトナーが排出される排出口と、を有するトナーカートリッジ。」
【相違点】
本願発明では、「トナー収容筐体」が「前記排出口の上方に設けられ、前記オーガスクリューの回転軸と直交する面に対して、トナー搬送方向上流側に所定角度傾斜した傾斜面」を有し、「前記傾斜面は前記排出口からみて前記オーガスクリューよりも近い部分と遠い部分とを有する」ものであるのに対して、引用発明1はそのような「傾斜面」を有していない点。

2 上記相違点について検討する。
上記第5の2(2)イのとおり、引用文献2には「下スクリュ部3によって搬送されてきた現像剤をその搬送力によって、第2の開口部13からみて回転シャフト16bよりも近い部分と遠い部分とを有する傾斜面部15に沿って、第2の開口部13に移動させる」という技術が記載されており、これにより「従来のように現像剤が現像容器の垂直壁に対して直角につきあたる場合と異なり、後続の現像剤に押されても圧縮される量が低減され、傾斜面部15に沿って上方に移動させられていく。」(段落【0037】)という効果を奏するところ、当該技術を自らの知識とし通常の創作能力を発揮できる当業者であれば、「開口部」が下方にある場合であっても「傾斜面部」を設けてこれに沿って「現像剤」を移動させることにより「圧縮される量が低減され」ることを認識することができるといえる。
そして、引用発明1は「コンテナの形状によっては、トナーがトナー排出口の近傍で押し固められてしまい、トナーの吐出が阻害されるという問題」(段落【0004】)を解決するという課題を有し、引用文献2に記載された技術は「下スクリュ部により長手方向に搬送されてきた現像剤は、最端部で現像容器の垂直壁に衝突するため、下スクリュ部によって次々に搬送されてくる現像剤によって、現像剤同士に圧力がかか」(段落【0008】)るという問題を解決するという課題を有しており、両者は現像剤が圧縮されることを防ぐという点で共通するから、引用発明1において、引用文献2に記載された技術を適用して、「筒状部の突出先端面」の、「現像剤排出口」からみて「回転部材」よりも近い部分及び遠い部分をともに傾斜させ、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項となすことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

3 したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第7 むすび

以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-04 
結審通知日 2019-02-05 
審決日 2019-02-18 
出願番号 特願2014-85441(P2014-85441)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 561- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 後藤 昌夫
尾崎 淳史
発明の名称 トナーカートリッジ、画像形成ユニット及び画像形成装置  
代理人 永井 道雄  

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