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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C22C
管理番号 1350524
審判番号 不服2018-6566  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-14 
確定日 2019-04-23 
事件の表示 特願2013-163524「Ni基合金、ガスタービン燃焼器用Ni基合金、ガスタービン燃焼器用部材、ライナー用部材、トランジッションピース用部材、ライナー、トランジッションピース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 30908、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年 8月 6日の出願であって、平成28年 7月14日付けで手続補正がされ、平成29年 7月14日付けで拒絶理由通知がされ、同年 9月22日付けで手続補正がされると同時に意見書が提出され、平成30年 2月 5日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年 5月14日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要
原査定(平成30年 2月 5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
請求項1、3?8に係る発明は、以下の引用文献1、2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、また、請求項2?8に係る発明は、以下の引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明をできたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2007/119832号
2.特開2009-185352号公報
3.特開2013-49902号公報


第3 本願発明
本願請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」という。)は、平成30年 5月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
Cr;20.0質量%以上26.0質量%以下、Co;4.7質量%以上9.4質量%以下、Mo;5.0質量%以上16.0質量%以下、W;0.5質量%以上4.0質量%以下、Al;0.3質量%以上1.5質量%以下、Ti;0.1質量%以上1.0質量%以下、C;0.001質量%以上0.15質量%以下を含み、かつFeの含有量が5質量%以下とされており、
測定視野面積S_(0)で観察を行って視野内に存在する最大サイズの窒化チタンの面積Aに対してD=A^(1/2)で定義される面積等径Dを算出し、この作業を測定視野数n=30以上として繰り返し実施してn個の面積等径Dのデータを取得し、これらの面積等径Dのデータを小さい順に並び替えてD_(1)、D_(2)、・・・、D_(n)とし、下記の式で定義される基準化変数y_(j)を求め、
【数1】


(但し、上式において、jは、面積等径Dのデータを小さい順に並び替えたときの順位数)
X軸を面積等径Dとし、Y軸を基準化変数y_(j)として、XY軸座標上にプロットし、回帰直線y_(j)=a×D+b(a,bは定数)を求め、予測対象断面積Sを100mm^(2)として、y_(j)を下記の式から求め、
【数2】


得られたy_(j)の値を前記回帰直線に代入することによって窒化チタンの推定最大サイズを算出した場合において、この窒化チタンの推定最大サイズが面積等径で12μm以上25μm以下とされていることを特徴とするNi基合金。
【請求項2】
原料としてスクラップを用いたことを特徴とする請求項1に記載のNi基合金。
【請求項3】
ガスタービン燃焼器に用いられるガスタービン燃焼器用Ni基合金であって、
請求項1または請求項2に記載のNi基合金からなることを特徴とするガスタービン燃焼器用Ni基合金。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器用Ni基合金からなるガスタービン燃焼器用部材。
【請求項5】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器用Ni基合金からなるガスタービン燃焼器のライナー用部材。
【請求項6】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器用Ni基合金からなるガスタービン燃焼器のトランジッションピース用部材。
【請求項7】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器用Ni基合金からなるガスタービン燃焼器のライナー。
【請求項8】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器用Ni基合金からなるガスタービン燃焼器のトランジッションピース。」


第4 引用文献、引用発明
以下、1において、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載を摘記するとともに、引用文献1から認定できる引用発明について述べる。
また、2において、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2の記載を摘記する。
また、3において、当審での職権調査により発見された特開2013-147689号公報(以下、引用文献3という)の記載を摘記する。
以下において、下線は当審で付与した。「・・・」により記載の省略を意味する。

1 引用文献1(国際公開第2007/119832号)について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、引用文献1では段落が[(半角数字)]で記載されているが、以下においては、【(全角数字)】での記載に統一する。
「【0002】
一般に、ガスタービンにおける燃焼器は、圧縮機の後方外周よりに位置し、圧縮機吐出空気に燃料を噴霧し、燃焼させてタービン駆動用の高温高圧ガスを生成し、かつ燃焼ガスをタービン入口のノズル(静翼)に案内する役割を担っている。燃焼機の中でも特にライナー(内筒)およびトランジッションピース(尾筒)は1500?2000℃の燃焼ガスに曝されるために、これら部分は700?900℃に加熱され、この温度で形状を維持しなければならない。これに加えて、ライナーおよびトランジッションピースは頻繁な、起動、停止および出力制御に伴う加熱、冷却の激しい熱サイクルを受ける。
【0003】
そのため、ガスタービン燃焼器のライナーおよびトランジッションピースを製造するための材料として、高温引張強度、クリープ破断強度、低サイクル疲労強度、熱疲労強度などの高温強度に優れ、さらに高温耐酸化性、高温耐硫化性などの高温耐食性にも優れることが必要とされる。さらに、燃焼器のライナーおよびトランジッションピースは、各種のNi基耐熱合金板を熱間および冷間加工した後、ろう付け、溶接することにより作製するところから、冷間加工性、溶接性、ろう付け性も併せ持つ材料であることが必要であるとされている。
【0004】
これら燃焼器のライナーおよびトランジッションピースの材料として従来からNi基耐熱合金が使用されている。このNi基耐熱合金として具体的なものは、質量%で(以下、%は質量%を示す)、22%Cr-1.5%Co-18.5%Fe-9%Mo-0.6%W-0.1%C-残部NiからなるNi基耐熱合金および22%Cr-8%Co-9%Mo-3%W-1%Al-0.3%Ti-0.07%C-残部NiからなるNi基耐熱合金に代表される固溶強化型あるいは弱析出型合金、または20%Cr-20%Co-5.9%Mo-0.5%Al-2.1%Ti-0.06%C-残部NiからなるNi基耐熱合金などの析出強化型合金が使用されていた。」


「【0036】
つぎに、この発明のNi基耐熱合金を実施例により具体的に説明する
通常の高周波真空溶解炉を用い、それぞれ表1?3に示される成分組成をもった本発明Ni基耐熱合金1?26、比較Ni基耐熱合金1?18および従来Ni基耐熱合金からなるNi基合金溶湯を溶製し鋳造して直径:100mm、高さ:150mmのインゴットを作製した。このインゴットを熱間鍛造して厚さ:50mm、幅:120mm、長さ:200mmの寸法を有する熱間鍛造体を作製した。
【0037】
【表1】


【0038】
【表2】

【0039】
【表3】



「実施例
【0042】
実施例1
先に用意した本発明Ni基耐熱合金1?26、比較Ni基耐熱合金1?18および従来Ni基耐熱合金からなる厚さ:5mmの溶体化処理板Aを用いて下記の加工試験を行い、加工性についての評価を行った。
A.曲げ加工試験
本発明Ni基耐熱合金1?26、比較Ni基耐熱合金1?18および従来Ni基耐熱合金からなる溶体化処理板Aから厚さ:5mm、幅:20mm、長さ:100mmの寸法を有する試験片を採取した。これらの試験片をR=10mmの180°曲げ加工試験を実施し、曲げ加工部分における割れの有無、および表面粗さを測定した。その結果を表4?6に示す。
【0043】
B.穴拡げ加工試験
本発明Ni基耐熱合金1?26、比較Ni基耐熱合金1?18および従来Ni基耐熱合金からなる溶体化処理板Aから厚さ:5mm、外径:140mm、内径:20mmを有するリング状試験片を採取した。これらのリング状試験片の内径:20mmの穴を穴拡げ率35%広げることにより穴拡げ加工試験を実施し、穴拡げ加工された穴における割れの有無、および穴近傍の表面粗さを測定した。その結果を表4?6に示す。
・・・
【0046】
【表6】


【0047】
表1?6に示される結果から、本発明Ni基耐熱合金1?26からなる溶体化処理板は、いずれも比較Ni基耐熱合金1?18および従来Ni基耐熱合金からなる溶体化処理板に比べて加工時に割れが発生することが無く、さらに表面粗さが小さく、加工性が優れていることが分かる。
【0048】
実施例2
C.低サイクル疲労試験
先に用意した本発明Ni基耐熱合金1?26、比較Ni基耐熱合金1?18および従来Ni基耐熱合金からなる厚さ:20mmを有する溶体化処理板Bを温度:850℃で24時間保持したのち空冷し、さらに温度:760℃で16時間保持したのち空冷の条件の時効処理を施した。こうして得られた厚さ:20mmを有する時効処理板Bから平行部径:8mm、平行部長さ:110mmの寸法を有する丸棒試験片を採取した。これらの試験片を温度:700℃に加熱し、引張/圧縮の付与歪範囲:1.2%を図1に示されるように繰り返し付与することにより低サイクル疲労試験を行い、測定荷重が初期荷重の75%(25%減)となるサイクル数を測定した。その結果を表7?9に示す。
【0049】
D.クリープ疲労試験1
先に用意した厚さ:20mmを有する時効処理板Bから平行部径:8mm、平行部長さ:110mmの寸法を有する丸棒試験片を採取した。これらの試験片を温度:700℃に加熱したのち、図2に示されるように、引張歪付与時にのみ最大歪負荷状態での保持時間Tが10分間保持される引張/圧縮の付与歪範囲:1.2%を繰り返し付与することによりクリープ疲労試験を行い、測定荷重が初期荷重の75%(25%減)となるサイクル数を測定した。その結果を表7?9に示す。
【0050】
E.クリープ疲労試験2
先に用意した厚さ:20mmを有する時効処理板Bから平行部径:8mm、平行部長さ:110mmの寸法を有する丸棒試験片を採取した。これらの試験片を温度:700℃に加熱し、図2に示されるように、引張歪付与時にのみ最大歪負荷状態での保持時間Tが60分間保持される引張/圧縮の歪:1.2%を繰り返し付与することによりクリープ疲労試験を行い測定荷重が初期荷重の75%(25%減)となるサイクル数を測定した。その結果を表7?9に示す。
【0051】
F.クリープラプチャー試験
先に用意した厚さ:5mmを有する時効処理板Aから平行部径:4mm、平行部長さ:26mmの寸法を有する丸棒試験片を採取した。これらの試験片を温度:750℃に加熱し、応力:353MPaでクリープラプチャー試験を実施し、破断時間および破断伸びを測定した。その結果を表7?9に示す。
【0052】
G.高温引張試験
先に用意した厚さ:5mmを有する時効処理板Aから平行部径:4mm、平行部長さ:26mmの寸法を有する丸棒試験片を採取した。これらの試験片を温度:700℃および900℃で高温引張試験を実施し、0.2%耐力、引張強さおよび破断伸びを測定した。これらの測定結果を表10?12に示す。
・・・
【0055】
【表9】

・・・
【0058】
【表12】


【0059】
表1?3および表7?12に示された結果から、溶体化処理のち時効処理した本発明Ni基合金1?26は、低サイクル疲労試験、クリープ疲労試験、クリープラプチャー試験、高温引張試験においていずれも優れた値を示すことが分かる。」

(2)引用発明について
引用文献1の段落【0004】の「22%Cr-8%Co-9%Mo-3%W-1%Al-0.3%Ti-0.07%C-残部NiからなるNi基耐熱合金に代表される固溶強化型あるいは弱析出型合金」なる記載と、表3の「従来」の欄に示された成分組成を有する合金に着目し、本願発明1を特定する請求項1の記載に則して整理すると、引用文献1には、以下の引用発明が記載されていると認められる。

[引用発明]
Cr;21.8質量%、Co;7.9質量%、Mo;8.9質量%、W;3.0質量%、Al;1.0質量%、Ti;0.3質量%、C;0.07質量%を含み、残部がNiと不可避不純物からなり、Feを含まないものとされている、Ni基合金。


2 引用文献2(特開2009-185352号公報)について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0039】
N:0.001?0.15mass%
Ni基合金においてNは、従来、不純物として真空溶解時の抑制対象元素として考えられてきた。これに対し、本発明においてこのNは、母相に固溶して常温や高温での強度を上昇させる効果があり、むしろ積極的に添加すべき有用な元素であると考えられる。しかも、Ti、Nb、TaおよびZrとはMN型の窒化物を形成し、焼鈍中の結晶粒の成長を抑制し、結晶粒を微細にすることから、常温での強度の向上をもたらす。さらには、高温での使用中において、結晶粒内に極微細なMN型窒化物を析出し、それが核となってM_(6)C型炭化物を均一微細に析出させてクリープ特性を向上させる効果がある。こうした効果は、0.001mass%以上の添加で発現する。しかし、Nを0.15mass%を超えて添加すると、母相の硬化や窒化物の粗大化などにより、常温での加工性の劣化を招く。従って、本発明においてこのNは、0.001?0.15mass%の範囲内で添加する。好ましくは0.005?0.15mass%、さらに好ましくは0.010?0.10mass%である。
【0040】
Ti:0.02?0.60mass%、Nb:0.02?0.60mass%、Ta:0.02?0.60mass%およびZr:0.02?0.60mass%のうちから選ばれる1種または2種以上
Ti、Nb、TaおよびZrは、焼鈍後においても残存するMN型の窒化物を形成し、焼鈍中の結晶粒の成長を抑制、結晶粒が微細になることで常温での強度を改善する。また、高温での使用中において結晶粒内に極微細なMN型窒化物を析出させ、それを核としてM_(6)C型炭化物を均一微細に析出させることから、クリープ特性を向上させる効果がある。さらに、Ni基合金材料を製造する過程において、M_(6)C型の炭化物中に固溶して粗大なM_(6)C型炭化物が析出するのを抑制し、加工性およびクリープ特性を改善する。しかも、連なって析出する列状のM6C型炭化物の生成も抑制する。その効果は、それぞれ0.02mass%以上添加することで発現する。しかし、これらの元素を、0.60mass%を超えて過剰に添加すると、却って合金中に析出する炭化物の粗大化を招き、熱間加工性やクリープ特性の劣化を招く。従って、本発明において上記元素は、0.02?0.60mass%の範囲で添加する。好ましくは、0.05?0.20mass%の範囲である。
【0041】
(Ti+Nb+Ta+Zr):0.02?0.60mass%
上記の効果は、いずれの元素についても同じ作用があり、1種以上の添加でも同様の効果が得られる。また、過剰添加の特性低下も同様である。したがって、これらの元素の合計添加量もまた0.02?0.60mass%の範囲とする必要がある。好ましくは0.05?0.20mass%である。
【0042】
本発明のNi基合金において、上記成分以外の元素は、Niおよび不可避的不純物である。ただし、本発明の効果を阻害しない限り、その他の元素を不純物の範囲を超えて添加しても、本発明になんら影響を及ぼすものではない。
【0043】
次に、本発明に係るNi基合金材料中に析出する炭化物、窒化物またはこれらが複合化して得られる炭・窒化物について説明する。
本発明のNi基合金材料は、連続鋳造したスラブを熱間圧延したのち熱処理し、あるいはさらに冷間圧延したのち熱処理して、M_(6)C型炭化物やM_(23)C_(6)型炭化物、さらにはMN型の窒化物、あるいはこれらが複合してなるものを可能な限り母相に固溶させ、高温での使用中に炭化物および窒化物を結晶粒界や結晶粒内に均一に微細析出させたものである。
【0044】
しかし、Ni基合金材料中の炭化物や窒化物あるいは上記炭・窒化物は、高温での使用中に析出する炭化物および窒化物の他に、Ni基耐熱合金を製造する過程(主に連続鋳造の凝固時)で列状に連なって析出する列状の炭化物、また粗大なMN型の窒化物、あるいはこれらが複合した炭・窒化物もある。これらの炭化物や窒化物等は、その後の圧延過程で分断され、仕上焼鈍によって溶解、あるいはその大きさや量が減少するものであれば、常温での加工性に悪影響を及ぼすことはない。しかし、上記炭化物や窒化物等が溶解しきれずに粗大なまま残存し、その粒径が10μm以上であった場合には、常温での加工中に炭化物または窒化物、あるいは炭・窒化物と母相との界面から割れが発生し、加工性を劣化させることがある。従って、Ni基合金中に析出したこれらの粒径は10μm以下とすることが好ましい。より好ましくは5μm以下である。なお、炭化物および窒化物等の粒径制御は、CやNおよびTi、Nb、TaおよびZrの含有量の制御や、上述した仕上焼鈍の温度や時間を調整すること等によって行うことができる。
【0045】
また、高温での使用中に結晶粒内に均一微細に析出するM_(6)C型の炭化物の量は、Nの添加量を変化させることによっても制御することができる。この点、N無添加の場合、図3の写真から明らかなとおり、結晶粒内に析出するM6C型の炭化物は非常に少ない。一方、Nを添加した場合には、結晶粒内に析出する炭化物量が増加していることがわかる。この結晶内に析出した微細な炭化物は、クリープ試験中に転位の移動を妨げるため、クリープ変形がしづらくなり、クリープ特性が向上する要因となっている。しかし、この炭化物もあまり過剰に析出しすぎると、材料の延性を悪化させ、却ってクリープ特性が悪化する。従って、高温で使用中に析出する結晶粒内の炭化物の面積率は、0.5?20%程度とすることが望ましい。より好ましくは1?15%である。」

「【0054】
(2)炭化物または窒化物、あるいは炭・窒化物の粒径測定
炭化物および窒化物の粒径は、冷延-仕上焼鈍後の合金材料の断面を、カーリング試薬にてエッチングしたものをSEMにて観察し、二次電子像を3箇所以上撮影して個々の炭化物、窒化物、あるいは窒・炭化物の粒径を求め、種類によらずにその中の最も大きな粒径を最大粒径とした。」


3 当審での職権調査により発見された引用文献3(特開2013-147689号公報)について
(1)引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0004】
鋼材の非金属介在物評価方法としては、例えば、非特許文献1に極値統計処理によるものが提案されている。
・・・
【0012】
【非特許文献1】村上敬宜:金属疲労 微小欠陥と介在物の影響(1993)、〔養賢堂〕」

「【0050】
なお、「極値統計処理」による介在物の予測√AREA_(max)の評価は、例えば次に示すような手順で行えばよい。
【0051】
〈1〉棒鋼の長手方向に平行である断面を研磨した後、その研磨面を被検面積として、検査基準面積S_(0)(mm^(2))を決める。
〈2〉上記S_(0)中で最大の√AREAを有する介在物を選び、その√AREA_(max)(μm)を測定する。
〈3〉上述した測定を、重複しない場所でn回繰り返して行う。
〈4〉測定した√AREA_(max)を小さい順に並べ直し、それを√AREA_(max,j)(j=1?n)とする。
〈5〉それぞれのjについて下記の基準化変数yjを計算する。
y_(j)=-ln[-ln{j/(n+1)}]。
〈6〉極値統計用紙の座標横軸に√AREA_(max)、縦軸に基準化変数yをとって、j=1?nについてプロットし、最小二乗法により近似直線を求める。
〈7〉評価したい面積をS(mm^(2))、T=(S+S_(0))/S_(0)として下記の式からyの値を求め、上記の近似曲線を用いて、前記yの値における√AREA_(max)を求めれば、これがその評価面積における介在物の予測√AREA_(max)である。
y=-ln[-ln{(T-1)/T}]。
【0052】
上記の方法で、鋼材の長手方向縦断面100mm^(2)中の最大酸化物について、√AREA_(max)の測定を30箇所において行い、極値統計処理を行った際、30000mm^(2)中に予測される酸化物の最大径である予測√AREA_(max)が50μmを上回ると、粗大な酸化物によって転動疲労寿命が低下する。なお、酸化物の好ましい予測√AREA_(max)は40μm以下である。また、酸化物の予測最大径√AREA_(max)は小さければ小さい方が好ましい。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 両発明は「Ni基合金」であるところ、Cr、Co、Mo、W、Al、Ti、C、Feの含有量に関し、引用発明は、本願発明1に特定される範囲に包含されている。
すなわち、両発明は、Cr;21.8質量%、Co;7.9質量%、Mo;8.9質量%、W;3.0質量%、Al;1.0質量%、Ti;0.3質量%、C;0.07質量%を含み、Feを含まない、Ni基合金である点で一致する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
Cr;21.8質量%、Co;7.9質量%、Mo;8.9質量%、W;3.0質量%、Al;1.0質量%、Ti;0.3質量%、C;0.07質量%を含み、Feを含まない、Ni基合金。

(相違点)
「窒化チタンの推定最大サイズ」に関し、本願発明1は、
「測定視野面積S_(0)で観察を行って視野内に存在する最大サイズの窒化チタンの面積Aに対してD=A^(1/2)で定義される面積等径Dを算出し、この作業を測定視野数n=30以上として繰り返し実施してn個の面積等径Dのデータを取得し、これらの面積等径Dのデータを小さい順に並び替えてD_(1)、D_(2)、・・・、D_(n)とし、下記の式で定義される基準化変数y_(j)を求め、
【数1】


(但し、上式において、jは、面積等径Dのデータを小さい順に並び替えたときの順位数)
X軸を面積等径Dとし、Y軸を基準化変数y_(j)として、XY軸座標上にプロットし、回帰直線y_(j)=a×D+b(a,bは定数)を求め、予測対象断面積Sを100mm^(2)として、y_(j)を下記の式から求め、
【数2】


得られたy_(j)の値を前記回帰直線に代入することによって窒化チタンの推定最大サイズを算出した場合において、この窒化チタンの推定最大サイズが面積等径で12μm以上25μm以下とされている」
のに対し、引用発明は、「窒化チタンの推定最大サイズ」についての特定がない点
なお、以下において、本願発明1において特定されている「窒化チタンの推定最大サイズ」を算出する方法を、「本願算出方法」ということがある。

(2)相違点についての判断
ア 引用文献2には、Ni基合金に対し、窒素を0.001?0.15mass%の範囲内で添加するとともに、Ti、Nb、Ta及びZrのうちから選ばれる1種又は2種以上を合計で0.02?0.60mass%の範囲内で添加することで、MN型の窒化物が析出し、焼鈍中の結晶粒の成長を抑制し、結晶粒を微細にすることから、常温での強度の向上をもたらし、また、高温での使用中において、結晶粒内に極微細なMN型窒化物が析出し、それが核となってM_(6)C型炭化物を均一微細に析出させてクリープ特性を向上させる効果があること(段落【0039】?【0041】)が記載されている。
また、Ni基合金材料中の炭化物や窒化物あるいは上記炭・窒化物の粒径が10μm以上であった場合には、常温での加工中に炭化物または窒化物、あるいは炭・窒化物と母相との界面から割れが発生し、加工性を劣化させることがあるから、Ni基合金中に析出したこれらの粒径は10μm以下とすることが好ましいことも記載されている(段落【0044】)。
すなわち、引用文献2には、Ni基合金に対し、窒素と、Ti、Nb、Ta及びZrのうちから選ばれる1種又は2種以上を、それぞれ所定の量添加することで、炭化物や窒化物あるいは上記炭・窒化物を析出させるとともに、その粒径を10μm以下とすることによって、加工性を劣化させることなく、常温での強度や、クリープ特性を向上させ得ることが記載されているといえる。

イ また、引用文献3には、「極値統計処理」によって、鋼材中に存在する介在物の最大径を予測するための手順が記載されており、この手順は、「本願算出方法」に相当するものである。

ウ 引用文献2や引用文献3には上記のような開示があるが、次のエ及びオに示すとおり、相違点に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たということはできない。

エ 引用発明に対し、引用文献2に記載の技術を適用する動機付けがないことについて
(ア)引用発明は、引用文献1の段落【0036】の記載によれば、「従来Ni基耐熱合金」であって、【表9】や【表12】によれば、引用文献1における発明例(表では「本発明」と記載されている)のNi基合金に比較して、低サイクル疲労試験、クリープ疲労試験、クリープラプチャー試験、高温引張試験等の各種特性において、劣るものとなっている。
また、引用文献1における発明例のNi基合金は、本願発明1とは組成が大きく異なるものとなっている。例えばTiに関しては、いずれの発明例も1.0質量%を超えており、本願発明1に特定される「Ti;0.1質量%以上1.0質量%以下」との範囲から外れる。また、Cr、Co、Alについても、多くの発明例が、本願発明1に特定される「Cr;20.0質量%以上26.0質量%以下」、「Co;4.7質量%以上9.4質量%以下」、「Al;0.3質量%以上1.5質量%以下」という範囲から外れる。

(イ)そして、引用文献1に接した当業者において、各種特性に劣る「従来Ni基耐熱合金」である引用発明に対し、各種特性に優れる発明例への変更ではなく、他の変更を施す動機付けは存在しない。

(ウ)そうすると、上記アで述べたとおり、引用文献2に、Ni基合金に対し、窒素と、Ti、Nb、Ta及びZrのうちから選ばれる1種又は2種以上を、それぞれ所定の量添加することで、炭化物や窒化物あるいは上記炭・窒化物を析出させるとともに、その粒径を10μm以下とすることによって、加工性を劣化させることなく、常温での強度や、クリープ特性を向上させ得ることが記載されていたとしても、各種特性に劣る「従来Ni基耐熱合金」である引用発明に対し、引用文献2に記載された技術を適用することの動機付けはないから、そのような組み合わせを当業者が容易になし得たとはいえない。

オ 引用発明に対し、引用文献2に記載の技術を適用し得たとしても、相違点に係る本願発明1の発明特定事項を想到し得るとはいえないことについて
(ア)引用文献2には、「本願算出方法」で算出される「窒化チタンの推定最大サイズ」が「面積等径で12μm以上25μm以下」とすることは、何ら記載も示唆もされていない。

(イ)そして、引用文献2の記載に従い、あるNi基合金に対し、窒素と、Ti、Nb、Ta及びZrのうちから選ばれる1種又は2種以上を、それぞれ所定の量添加することで、炭化物や窒化物あるいは上記炭・窒化物を析出させるとともに、その全ての炭化物、窒化物、及び炭・窒化物の粒径を10μm以下とすることが現実に実現できたとするならば、当該Ni基合金における、「本願算出方法」で算出される「窒化チタンの推定最大サイズ」の「面積等径」も、10μm以下となる蓋然性が高い。すなわち、「本願算出方法」で算出される「窒化チタンの推定最大サイズ」が「面積等径で12μm以上25μm以下」とはならない蓋然性が高い。

(ウ)そうすると、仮に、引用発明に対し引用文献2に記載の技術を適用して、引用発明のNi基合金における全ての炭化物、窒化物、及び炭・窒化物の粒径を10μm以下とすることが現実に実現できたとしても、結果として、相違点に係る本願発明1の発明特定事項を想到し得たことにはならない。

カ 上記エ及びオに示すとおり、引用発明において、相違点に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たということはできない。
よって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された事項に基づき、さらに「本願算出方法」に相当する方法を開示する引用文献3に記載された事項を考慮したとしても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2?8について
本願発明2、3は本願発明1を引用しているから、本願発明1と同じ理由で、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本願発明4?8はいずれも本願発明3を引用しているから、本願発明3と同じ理由で、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 原査定について
1 特許法第29条第2項について
前記第5で検討したとおり、本願発明1?8は、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定を維持することはできない。


2 原査定の欄外で指摘された特許法第36条第6項第2号違反について
原査定の欄外においては、本願請求項1の「Ni基合金」が、実際に、窒化チタンの最大粒径等がどのような値であるかを明確に理解することができないから、本願請求項1に係る発明及びこれを引用する本願請求項2?8に係る発明を明確に把握することができないことが指摘された。
しかしながら、本願発明1は、前記第3に述べたとおりのものである。
すなわち、所定の組成を有するNi基合金であって、「測定視野数n=30以上」として「窒化チタン」を観察し、この観察結果による窒化チタンの分布状態から、「本願算出方法」によって、「窒化チタンの推定最大サイズ」を算出し、算出された推定最大サイズが「12μm以上25μm以下」であるものを、発明として特定するものである。
したがって、ある具体的なNi基合金が、本願発明1の範囲に入るか否かを当業者は明確に認識することができる。
よって、本願請求項1に係る発明、及びこれを引用する本願請求項2?8に係る発明について、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2013-163524(P2013-163524)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C22C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
▲辻▼ 弘輔
発明の名称 Ni基合金、ガスタービン燃焼器用Ni基合金、ガスタービン燃焼器用部材、ライナー用部材、トランジッションピース用部材、ライナー、トランジッションピース  
代理人 松沼 泰史  
代理人 松沼 泰史  
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