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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1350559
審判番号 不服2018-11262  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-05-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-08-20 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2014-151284「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月 8日出願公開、特開2016- 24451、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年7月25日の出願であって、平成29年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成30年1月23日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月15日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年6月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。その後、当審より平成31年1月22日付けで拒絶理由が通知され、同年2月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。


第2 原査定の理由の概要

平成30年6月28日付け拒絶査定(以下、「原査定」という。)の理由の概要は次のとおりである(引用文献については、下記の引用文献等一覧を参照。)。

1 平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項1,4に係る発明は、引用文献1に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2 平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項1,4に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項2,3,5,6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項7-9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された発明、並びに、引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2009-58827号公報
2.特開2006-330457号公報
3.特開2011-59454号公報


第3 当審拒絶理由の概要

平成31年1月22日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項1-9の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項1-9の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


第4 本願発明

本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成31年2月18日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-8は以下のとおりの発明である。

【請求項1】
「所定の回転方向に回転可能でトナー画像を担持する像担持体を有し、
前記像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記像担持体上に前記静電潜像に応じたトナー画像を形成する現像手段と、
前記像担持体上の残留トナーを清掃する清掃手段とが、前記像担持体の周囲で前記回転方向へ並ぶように配置され、
トナーの帯電極性とは逆極性に帯電する滑剤が、前記像担持体へ供給されるように構成された画像形成装置であって、
前記清掃手段と、前記清掃手段よりも前記回転方向下流側の前記現像手段との間において、
前記像担持体の軸方向に延存し前記像担持体に対して離接可能で、該像担持体へ接触することにより該像担持体を摩擦帯電させ、前記トナー画像を形成するための画像形成動作の実行中は前記像担持体から離間される摩擦帯電部材と、
前記像担持体の軸方向に延存し、該像担持体の軸方向の表面電位分布を計測する表面電位計測手段とが、この順に前記回転方向に沿って設けられ、
前記像担持体の表面における前記滑剤の付着部分と非付着部分とは摩擦帯電特性が異なり、
前記像担持体を摩擦帯電させてから前記表面電位分布を計測することにより、該像担持体上の軸方向における前記滑剤の分布を検出する検出手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。」
【請求項2】
「前記検出手段は、
前記像担持体上における表面電位と滑剤の量との関係を示すテーブル情報を有し、
前記表面電位分布の計測結果と前記テーブル情報に基づいて、前記滑剤の分布を検出する請求項1に記載の画像形成装置。」
【請求項3】
「前記検出手段による検出結果に基づいて、前記滑剤の分布を均一化する均一化手段をさらに備えた請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。」
【請求項4】
「前記均一化手段は、
前記検出手段による検出結果に基づいて前記滑剤の分布のバラつき度合を検知し、
前記バラつき度合が所定基準を上回ったときに、前記滑剤の分布を均一化するための均一化動作を行う請求項3に記載の画像形成装置。」
【請求項5】
「前記均一化手段は、前記検出された滑剤の分布における最小値に基づいて、前記バラつき度合を検知する請求項4に記載の画像形成装置。」
【請求項6】
「前記トナーが、前記滑剤と研磨剤とを表面添加したトナーであって、
前記均一化手段は、
前記均一化動作として、前記滑剤の分布が均一化されるように前記像担持体へトナーパッチを供給する動作を行う請求項4または請求項5に記載の画像形成装置。」
【請求項7】
「前記均一化動作は、
前記像担持体上の軸方向における前記滑剤が多い箇所ほど、前記トナーパッチを多く供給する動作である請求項6に記載の画像形成装置。」
【請求項8】
「前記現像手段での現像量を適正化するための画像安定化動作が定期的に実行され、
前記検出の動作および前記均一化動作が、前記画像安定化動作が実行される際に行われる請求項4から請求項6の何れかに記載の画像形成装置。」


第5 原査定の理由について

1 引用文献
(1) 原査定の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審で付した。)。
ア 「【0012】
カラー複写機では、各感光体8Y、8M、8C、8Kに対する帯電後に書き込み走査に応じた静電潜像が形成され、静電潜像が現像装置によって可視像処理されると各感光体8Y、8M、8C、8Kから色画像が1次転写装置20を介して順次転写されて重畳画像が形成され、重畳画像が記録媒体Pに対して2次転写装置3により一括転写される。2次転写装置3によって重畳画像を一括転写された記録媒体Pは排紙トレー24に至る搬送路中に設けられている定着装置6によって定着処理されて排紙トレー24に排出される。なお、7はトナー補給ユニットである。
前述の本実施形態に係る画像形成装置においては、4色のトナー画像を形成する像担持体ユニットは、基本的に同一構成であり、図2に像担持体ユニットの具体的な概略構成を示す。この画像形成装置は、像担持体としてのドラム状の感光体8を有し、画像形成動作の開始に伴って、感光体8は、矢印B方向に回転駆動される。このとき、感光体8の表面に対向配置された帯電ローラ35が、図示していない駆動装置により、または感光体8の表面の移動に従動して矢印C方向に回転する。帯電ローラ35は芯金と、そのまわりに固定された弾性体より成り、かかる帯電ローラ35が上述のように回転するとき、その芯金に所定極性の帯電電圧が印加され、これによって感光体8の表面が所定の極性に帯電される。帯電された感光体8の表面には、露光装置の1例であるレーザ書き込みユニット(図示せず)から出射する光変調されたレーザビームLBが照射され、これによって感光体8の表面に静電潜像が形成される。」
イ 「【0013】
この静電潜像は現像器33によりトナー像として可視像化される。ここでの現像器33は、粉体状の現像剤を収容した現像ケース43と、現像剤を担持して搬送する現像ローラ30を有し、回転駆動される現像ローラ30の周面に担持された現像剤のトナーが感光体8に形成された静電潜像に静電的に移行し、前記静電潜像がトナー像として可視像化される。感光体8には、矢印A方向に駆動される中間転写ベルト10が接触配置され、先に感光体8上に形成されたトナー像が転写される。トナー像転写後の感光体8の表面に付着する転写残トナーは、感光体8の表面に圧接したクリーニングブレード37によって掻き取り除去される。掻き取り除かれた転写残トナーは廃トナー搬送スクリュー38によって搬送され、図示しない廃トナータンクへ蓄積される。」
ウ 「【0014】
クリーニングブレード37によって清浄にされた感光体8表面の幅方向に延設されて回転自在、接離自在に取り付けられた塗布ブラシローラ39が配置されている。この塗布ブラシローラ39には、加圧スプリング40によって塗布ブラシローラ39に対して押圧された固形の潤滑剤からなる潤滑剤41が感光体8の対向位置に接離自在に取り付けられている。潤滑剤41が回転する塗布ブラシローラ39に摺接しているときは、塗布ブラシローラ39が潤滑剤41を削り取り、削り取った潤滑剤を塗布ブラシローラ39に保持した状態で回転し、塗布ブラシローラ39が感光体8と接触しているときに、この感光体8に潤滑剤を塗布する。感光体ドラム8上に塗布された潤滑剤は、潤滑剤均し手段36の1例である潤滑剤塗布ブレードによって周方向に延ばされ平坦に均されて、感光体ドラム8に馴染むようになっている。」
エ 「【0031】
[実施例8]
さて、潤滑剤塗布量を制御するにあたり、そのレベル、即ち、感光体8上に塗布された潤滑剤の量を把握することが有効である。方法としては、図28に示すように、感光体表面8aにLEDランプ等の発光部材65によって光を感光体表面8aに照射し、その反射光を受光センサ65で受光することで、感光体表面8aの曇り量を把握することで感光体表面8aに塗布された潤滑剤41の塗布量を知ることができる。このようにして検出された塗布量によって塗布ブラシローラ39、潤滑剤41、潤滑剤塗布ローラ62等の挙動を変える制御をおこなうことを可能としている。また、表面電位センサ67によって得た帯電後の感光体8の電位の状態を測定することによっても潤滑剤の塗布量を把握することができる。この測定された塗布量によって同様に塗布ブラシローラ39、潤滑剤41、潤滑剤塗布ローラ62等の挙動を変える制御を行うことができる。」
オ 図2

段落【0012】及び【0013】の記載に鑑みて、図2より、「感光体8」が「回転駆動される」方向である「矢印B方向」は時計回りの方向であること、「帯電ローラ35」が回転する方向である「矢印C方向」は反時計回りの方向であること、及び、「中間転写ベルト10」が駆動される方向である「矢印A方向」は「中間転写ベルト10」と「感光体8」とが接触する位置において「感光体8」が「回転駆動される」方向と同じ方向であることが、看て取れる。
(2) 以上より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「像担持体としてのドラム状の感光体8を有し、画像形成動作の開始に伴って、感光体8は時計回りの方向に回転駆動され、
感光体8の表面に対向配置された、芯金とそのまわりに固定された弾性体より成る帯電ローラ35は、駆動装置により、または感光体8の表面の移動に従動して反時計回りの方向に回転するとき、その芯金に所定極性の帯電電圧が印加され、これによって感光体8の表面が所定の極性に帯電され、
帯電された感光体8の表面には、露光装置であるレーザ書き込みユニットから出射する光変調されたレーザビームLBが照射され、これによって感光体8の表面に静電潜像が形成され、
この静電潜像は現像器33によりトナー像として可視像化され、
感光体8には、接触する位置において感光体8が回転駆動される方向と同じ方向に駆動される中間転写ベルト10が接触配置され、先に感光体8上に形成されたトナー像が転写され、
トナー像転写後の感光体8の表面に付着する転写残トナーは、感光体8の表面に圧接したクリーニングブレード37によって掻き取り除去され、
クリーニングブレード37によって清浄にされた感光体8表面の幅方向に延設されて回転自在、接離自在に取り付けられた塗布ブラシローラ39が配置され、塗布ブラシローラ39が感光体8と接触しているときに、この感光体8に潤滑剤を塗布し、感光体ドラム8上に塗布された潤滑剤は、潤滑剤均し手段36である潤滑剤塗布ブレードによって周方向に延ばされ平坦に均されて、感光体ドラム8に馴染むようになっており、
表面電位センサ67によって得た帯電後の感光体8の電位の状態を測定することによって潤滑剤の塗布量を把握することができる、画像形成装置。」

2 対比・判断
(1) 本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア) 引用発明1の「感光体8」は、「時計回りの方向に回転駆動され」るとともに、その「表面に静電潜像が形成され、この静電潜像は現像器33によりトナー像として可視像化され」るのであるから、本願発明1の「所定の回転方向に回転可能でトナー画像を担持する像担持体」に相当する。
(イ) 引用発明1の「露光装置であるレーザ書き込みユニット」は、そこから「出射する光変調されたレーザビームLBが照射され、これによって感光体8の表面に静電潜像が形成され」るのであるから、本願発明1の「像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段」に相当する。
(ウ) 引用発明1においては「静電潜像は現像器33によりトナー像として可視像化され」るのであるから、引用発明1の「現像器33」は本願発明1の「像担持体上に前記静電潜像に応じたトナー画像を形成する現像手段」に相当する。
(エ) 引用発明1の「クリーニングブレード37」は、「トナー像転写後の感光体8の表面に付着する転写残トナー」を「掻き取り除去」するものであるから、本願発明1の「像担持体上の残留トナーを清掃する清掃手段」に相当する。
(オ) 引用発明1においては、「露光装置であるレーザ書き込みユニット」により「感光体8の表面」に形成された「静電潜像」が、「現像器33によりトナー像として可視像化され」、「トナー像転写後の感光体8の表面に付着する転写残トナーは、感光体8の表面に圧接したクリーニングブレード37によって掻き取り除去され」るのであるから、引用発明1の「露光装置であるレーザ書き込みユニット」、「現像器33」及び「クリーニングブレード37」は、本願発明1と同様に「像担持体の周囲で前記回転方向へ並ぶように配置され」ていると認められる。
(カ) 本願発明1の「トナーの帯電極性とは逆極性に帯電する滑剤が、前記像担持体へ供給される」と、引用発明1の「塗布ブラシローラ39が感光体8と接触しているときに、この感光体8に潤滑剤を塗布し」とは、「滑剤が、前記像担持体へ供給される」という点で共通する。
(キ) 本願発明1の「像担持体を摩擦帯電させてから前記表面電位分布を計測することにより、該像担持体上の軸方向における前記滑剤の分布を検出する」ことと、引用発明1の「表面電位センサ67によって得た帯電後の感光体8の電位の状態を測定することによって潤滑剤の塗布量を把握する」こととは、「像担持体」を帯電させてから「表面電位」を「計測することにより、該像担持体上」の「滑剤」の量を把握することができるという点で共通する。
(ク) 以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「所定の回転方向に回転可能でトナー画像を担持する像担持体を有し、
前記像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
前記像担持体上に前記静電潜像に応じたトナー画像を形成する現像手段と、
前記像担持体上の残留トナーを清掃する清掃手段とが、前記像担持体の周囲で前記回転方向へ並ぶように配置され、
滑剤が、前記像担持体へ供給されるように構成された画像形成装置であって、
像担持体を帯電させてから表面電位を計測することにより、該像担持体上の滑剤の量を把握することができる、画像形成装置。」
【相違点1】
「滑剤」が、本願発明1では「トナーの帯電極性とは逆極性に帯電する」ものであるのに対して、引用発明1では「トナーの帯電極性とは逆極性に帯電する」ものであるか否か不明な点。
【相違点2】
本願発明1は、「清掃手段と、前記清掃手段よりも前記回転方向下流側の前記現像手段との間において、前記像担持体の軸方向に延存し前記像担持体に対して離接可能で、該像担持体へ接触することにより該像担持体を摩擦帯電させ、前記トナー画像を形成するための画像形成動作の実行中は前記像担持体から離間される摩擦帯電部材と、前記像担持体の軸方向に延存し、該像担持体の軸方向の表面電位分布を計測する表面電位計測手段とが、この順に前記回転方向に沿って設けられ、前記像担持体の表面における前記滑剤の付着部分と非付着部分とは摩擦帯電特性が異なり、前記像担持体を摩擦帯電させてから前記表面電位分布を計測することにより、該像担持体上の軸方向における前記滑剤の分布を検出する検出手段を備え」るものであるのに対して、引用発明1は、「摩擦帯電部材」を備えておらず、「像担持体を摩擦帯電させてから前記表面電位分布を計測することにより、該像担持体上の軸方向における前記滑剤の分布を検出する」ものであるとはいえない点。
イ まず、「摩擦帯電部材」に関する上記相違点2について検討する。
引用発明1の「帯電ローラ35」は、「駆動装置により、または感光体8の表面の移動に従動して回転するとき、その芯金に所定極性の帯電電圧が印加され」ることにより「感光体8の表面」を帯電させるものであるから、本願発明1の「摩擦帯電部材」に相当するものとはいえない。また、引用発明1の「塗布ブラシローラ39」は、「感光体8」を摩擦帯電させるものであるか否か不明であるとともに、これが「感光体8」を摩擦帯電させると解すべき特段の事情も見出せないことから、本願発明1の「摩擦帯電部材」に相当すると認めることはできない。
そして、本願の発明の詳細な説明の段落【0067】の「摩擦帯電部材14と表面電位計15の間に帯電部材13が配置されると、摩擦帯電部材14との接触後に感光体ドラム11が帯電部材13によって帯電してしまい、これがノイズとなって摩擦電荷の正確な測定が難しくなる」との記載に鑑みると、引用発明1の「帯電ローラ35」による「帯電後の感光体8の電位の状態を測定すること」と比べて、本願発明1の「摩擦帯電させてから前記表面電位分布を計測すること」は、「滑剤の量の分布」のより正確な測定を可能にするという優れた効果を奏すると認められるところ、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、引用発明1から、当業者が適宜なし得た設計的事項であるとはいえない。
また、相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は、引用文献2及び3に記載も示唆もされておらず、また、周知技術であるともいえない。
してみると、引用発明1において、当該発明特定事項を備えるものとすることは、当業者であっても容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ したがって、本願発明1は、引用文献1に記載されているとはいえない。また、本願発明1は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本願発明2-8について
本願発明3(原査定時の請求項4に係る発明に対応。)は、本願発明1を引用するものであって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えているから、引用文献1に記載されているとはいえない。また、本願発明3は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本願発明2,4,5(原査定時の請求項3,5,6に係る発明に対応。)は、本願発明1を引用するものであって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えているから、引用発明1及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本願発明6-8(原査定時の請求項7-9に係る発明に対応。)は、本願発明1を引用するものであって、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えているから、引用発明1及び引用文献3に記載された発明、並びに、引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおり、本件補正により、原査定の理由は解消した。


第6 当審拒絶理由について

1 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について、当審では、平成31年1月22日付けで下記の拒絶理由を通知した。この項における請求項1-9は、平成30年4月13日になされた手続補正後のものである。

(1) 請求項1について
請求項1に係る発明は、「前記像担持体を摩擦帯電させてから前記表面電位分布を計測することにより、該像担持体上の軸方向における前記滑剤の分布を検出」している。
これに対して、発明の詳細な説明の段落【0041】-【0042】には「計測された表面電位分布は、感光体ドラム11上の軸方向における滑剤の分布と密接な相関関係がある。すなわち、感光体ドラム11の表面における滑剤の付着部分と非付着部分では、摩擦帯電特性が違うため、摩擦帯電により感光体ドラム11上に残留する摩擦帯電量(摩擦電位)は異なる状態になる。そのため上記の相関関係が得られることになり、検出手段Xは、この原理を利用して、感光体ドラム11上の軸方向における滑剤の分布を検出する。」と記載されており、「滑剤の分布を検出する」ために、「像担持体」の「表面における滑剤の付着部分と非付着部分では、摩擦帯電特性が違う」ことを利用することが記載されていると認められる。
そして、請求項1に係る発明においては、「像担持体」の「表面における滑剤の付着部分と非付着部分では、摩擦帯電特性が違う」という点が規定されておらず、「像担持体」の「表面における滑剤の付着部分と非付着部分で」「摩擦帯電特性」が同じである場合も含まれるところ、このような場合には「像担持体を摩擦帯電させて」も「表面電位分布」が滑剤の分布によらず均一になり、「滑剤の分布」を検出できないことは明らかである。してみると、請求項1に係る発明は、「像担持体の軸方向における滑剤の分布を、簡易な方法で検出する」(段落【0010】)という発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。
したがって、この出願は、請求項1の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2) 請求項2-9について
上記(1)の点について、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2-9においても同様である。
したがって、この出願は、請求項2-9の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 上記1の拒絶理由についての判断
本願発明1-8は、本件補正により「前記像担持体の表面における前記滑剤の付着部分と非付着部分とは摩擦帯電特性が異な」るとの発明特定事項を有することとなったから、当該発明は「像担持体の軸方向における滑剤の分布を、簡易な方法で検出する」(段落【0010】)という発明の課題を解決できるものであると認められる。
してみると、本件補正により、上記1の拒絶理由は解消した。

3 特許法第36条第6項第2号(明確性)について、当審では、平成31年1月22日付けで下記の拒絶理由を通知した。この項における請求項2-9は、平成30年4月13日になされた手続補正後のものである。

(1) 請求項2について
ア 請求項2に係る発明は「前記摩擦帯電部材は、摩擦帯電系列において前記滑剤から離れている材質によって構成された」との発明特定事項を有しているが、同請求項に係る発明においては「滑剤」が摩擦帯電することが規定されていないため、当該発明特定事項により「摩擦帯電系列」における「摩擦帯電部材」と「滑剤」との関係を規定することの技術的意味が不明確である。
イ また、請求項2における「摩擦帯電系列において前記滑剤から離れている」とはどの程度離れていることを意味するのかが曖昧であり、同請求項に係る発明の範囲が不明確である。
ウ 上記ア及びイより、この出願は、請求項2の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2) 請求項3-9について
上記(1)の点について、請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3-9においても同様である。
したがって、この出願は、請求項3-9の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4 上記3の拒絶理由についての判断
本件補正により、平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項2は削除された。
してみると、本件補正により、上記3の拒絶理由は解消した。

5 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について、当審では、平成31年1月22日付けで下記の拒絶理由を通知した。この項における請求項6は、平成30年4月13日になされた手続補正後のものである。

請求項6に係る発明は「前記均一化手段は、前記検出された滑剤の分布における最小値または平均値に基づいて、前記バラつき度合を検知する」との発明特定事項を有しており、これには「検出された滑剤の分布における」「平均値」のみに基づいて「バラつき度合を検知する」ことも含まれる。
これに対して、発明の詳細な説明の段落【0049】には「各表面電位センサーの検出値(検出された滑剤の分布)における最小値が、他の何れの表面電位センサーの検出値からも所定電圧(例えば、画像濃度変化が視認可能となる10V)以上離れている場合に、所定基準を上回ったと判定されるようにしてもよい。また、他の例としては、各表面電位センサーの検出値における平均値が、各表面電位センサーの検出値の最小値或いは最大値から所定電圧以上離れている場合に、所定基準を上回ったと判定されるようにしてもよい。」と記載されており、「最小値」、又は、「平均値」と「最小値」との差に基づいて「バラつき度合を検知する」ことについては説明されている。
しかしながら、発明の詳細な説明には、「平均値」のみに基づいて「バラつき度合を検知する」ことについて説明されておらず、どのようにすれば「平均値」のみに基づいて「バラつき度合を検知する」ことができるのかが理解できない。
したがって、この出願は、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

6 上記5の拒絶理由についての判断
本件補正により、平成30年4月13日になされた手続補正後の請求項6における「最小値または平均値に基づいて」との記載は、これに対応する本件補正後の請求項5において「最小値に基づいて」となった。
してみると、本件補正により、上記5の拒絶理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由、及び、当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-15 
出願番号 特願2014-151284(P2014-151284)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 536- WY (G03G)
P 1 8・ 113- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平田 佳規  
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 森次 顕
後藤 昌夫
発明の名称 画像形成装置  
代理人 山田 茂樹  

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