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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B25B
審判 全部申し立て 2項進歩性  B25B
管理番号 1350621
異議申立番号 異議2018-700222  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-13 
確定日 2019-02-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6196261号発明「工具用ソケット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6196261号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-4]について訂正することを認める。 特許第6196261号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6196261号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成27年5月21日に出願され、平成29年8月25日にその特許権の設定登録がされ、平成29年9月13日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 3月13日 :特許異議申立人「山▲崎▼ 浩」(以下単に 「特許異議申立人」という。)による請求項 1ないし4に係る特許に対する特許異議の申 立て
平成30年 5月14日付け:取消理由通知書
平成30年 7月13日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年 8月29日 :特許異議申立人による意見書の提出
平成30年10月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成30年11月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
平成30年12月13日 :特許権者と当審合議体の面接
平成31年 1月 9日 :上記面接についての特許異議申立人による質
問書の提出及び当該質問への当審合議体から
の回答
平成31年 1月16日 :特許異議申立人による意見書の提出

なお、平成30年7月13日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなされる。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成30年11月30日の訂正請求による訂正事項(以下「本件訂正」という。)は以下のア及びイのとおりである(なお、下線部は訂正箇所を示すため当審で付したものである。以下同じ。)。
ア 訂正事項1
本件訂正前の請求項1に係る発明の「前記筒軸方向から見てC字形状を有しかつ前記移動部材の前記一端側への移動を規制するために前記筒状部材内に設けられた規制部材」を「前記筒軸方向から見てC字形状を有しかつ前記移動部材の前記一端側への移動を規制して前記移動部材の抜け落ちを防止するために前記筒状部材内に設けられた規制部材」へ訂正する。

イ 訂正事項2
本件訂正前の請求項1に係る発明の「前記インナーソケット部から前記筒状部材の前記他端側に向かって延びかつ前記筒軸方向に移動可能に前記収容部に挿入される軸部」を「前記インナーソケット部から前記筒状部材の前記他端側に向かって延びかつ前記筒軸方向に移動可能に前記収容部に挿入される軸部(ただし、前記規制部材を収容する溝部を備えるもの、および、その外径が前記規制部材の内径よりも小さいものを除く)」へ訂正する。

訂正前の請求項1ないし4は、請求項2、3及び4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項[1-4]について請求されている。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「規制部材」を「移動部材の抜け落ちを防止(する)」ものに減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無
願書に添付した明細書の段落0044の記載「これにより、突出部36が規制部材22を乗り越えて筒状部材16の一端側に移動することを防止することができる。その結果、インナーソケット部32(移動部材18)の抜け落ちを防止することができる。」からみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものである。また、訂正事項1は、請求項1に係る発明の属する発明のカテゴリを変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明における「軸部」を「軸部(ただし、前記規制部材を収容する溝部を備えるもの、および、その外径が前記規制部材の内径よりも小さいものを除く)」に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)新規事項の有無
明細書等には、移動部材18の軸部34が、規制部材22を収容する溝部を備える事項は全く記載されておらず、示唆もない。
また、明細書等の段落0041の記載「次に、図4(b),(c)に示すように、突出部36の第2面36bおよび第3面36cによって規制部材22の径を広げつつ、移動部材18を筒状部材16内に押し込む。その後、図2に示すように、移動部材18をさらに筒状部材16内に押し込むことによって、規制部材22が突出部36を乗り越えて、規制部材22の径が小さくなる。これにより、規制部材22によって移動部材18の抜け落ちが防止され、移動部材18の筒状部材16への挿入が完了する。」並びに図面の図4(b)及び(c)からみて、規制部材22はその自然長よりも拡径された状態で突出部36を乗り越えた後、規制部材22の内径が軸部34の外径に隙間なく接触すると認められる。よって、軸部34の外径が規制部材22の内径より小さくないことは、明らかである。
したがって、訂正事項2は、明細書等に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記(ア)のとおり、特許請求の範囲を減縮するものである。また、訂正事項2は、請求項1に係る発明の属する発明のカテゴリを変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)小括
上記のとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-4]について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下「本件発明1ないし4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
一端および他端を有する筒状部材と、
前記筒状部材の筒軸方向に移動できるように、前記筒状部材の一端部に挿入された移動部材と、
前記筒状部材内において前記移動部材よりも前記他端側に設けられかつ前記移動部材を前記一端側に向かって付勢する弾性部材と、
前記筒軸方向から見てC字形状を有しかつ前記移動部材の前記一端側への移動を規制して前記移動部材の抜け落ちを防止するために前記筒状部材内に設けられた規制部材とを備え、
前記筒状部材は、該筒状部材の一端部に設けられかつ前記移動部材が挿入された中空状のアウターソケット部と、該アウターソケット部よりも前記他端側において前記弾性部材および前記規制部材を収容する中空状の収容部とを有し、
前記移動部材は、前記アウターソケット部内において前記筒軸方向に移動可能に設けられる中空状のインナーソケット部と、前記インナーソケット部から前記筒状部材の前記他端側に向かって延びかつ前記筒軸方向に移動可能に前記収容部に挿入される軸部(ただし、前記規制部材を収容する溝部を備えるもの、および、その外径が前記規制部材の内径よりも小さいものを除く)と、前記収容部内において前記軸部の外周面から該軸部の径方向に突出する突出部とを有し、
前記収容部の内周面は、前記突出部を前記筒軸方向に移動可能に支持する支持部と、前記突出部よりも前記一端側において前記支持部に対して凹みかつ前記規制部材の前記筒軸方向の移動を規制するように該規制部材を収容する溝部とを有し、
前記規制部材は、外径が前記支持部の直径よりも大きくかつ前記溝部の底部の直径よりも小さく、前記突出部の前記一端側への移動を規制するように前記支持部よりも前記収容部の中心軸側に突出し、
前記溝部は、前記筒軸方向に並んで位置しかつ前記筒軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有する、工具用ソケット。

【請求項2】
前記規制部材は、金属材料からなる、請求項1に記載の工具用ソケット。

【請求項3】
前記突出部は、前記一端側に面しかつ前記軸部から該軸部の径方向に延びる第1面と、前記他端側に面しかつ前記軸部から前記径方向に延びる第2面とを有し、
前記第2面は、前記径方向における外側ほど前記一端側に位置するように傾斜している、請求項1または2に記載の工具用ソケット。

【請求項4】
前記移動部材の中心軸を通る該移動部材の縦断面において、該中心軸に対する前記第1面の傾斜角度は、該中心軸に対する前記第2面の傾斜角度よりも大きい、請求項3に記載の工具用ソケット。

4 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、3及び4に係る特許に対して、当審が平成30年5月14日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1に係る発明は、甲第1号証:登録実用新案第3154620号公報(以下単に「甲第1号証」という。)に記載された発明である。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当するので、取り消されるべきものである。
請求項2、3及び4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証:特開2010-131726号公報(以下単に「甲第2号証」という。)に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、請求項2、3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

5 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号及び同法同条第2項について
ア 本件発明1
本件発明1は、上記「3 訂正後の本件発明」において示したとおりのものである。

イ 甲第1号証の記載事項及び認定事項
取消理由通知において引用した甲第1号証には以下の事項(ア)ないし(ソ)が記載されている。
(ア)段落0023
「本実施形態の工具用ソケット100は、アウターソケット10と、アウターソケット10と係合するインナーソケット20と、アウターソケット10内にインナーソケット20よりも奥方に配置されるコイルバネ30と、電動工具110との接続のためのチャック部材60とを備える。」

(イ)段落0024
「インナーソケット20は、アウターソケット10内でアウターソケット10に対して回転軸方向に前後移動可能であり、かつアウターソケット10と相対回転不能に係合している。」

(ウ)段落0024
「コイルバネ30は、インナーソケット20の端面21がアウターソケット10の端面11より奥方の後方位置(図4参照)から端面21が端面11より突出する前方位置(図3参照)に向かう方向へインナーソケット20を付勢する。」

(エ)段落0036
「本実施形態のロック機構240を構成する円状バネ241は、円状バネ41と同様に内周部241a、外周部241b、及び開口部241cを備えている。但し、本実施形態の円状バネ241は、開口部241cの幅を縮小する方向に付勢する点で、第1の実施形態の円状バネ41と異なる。」

(オ)段落0037
「本実施形態のインナーソケット200は、インナー側前方規制部224が、円状バネ241と当接することにより、前方位置よりもさらに前方への移動が規制される。」

(カ)段落0022
「作業対象物がインナーソケット20のソケット孔26又はアウターソケット10のソケット孔16に嵌め込まれることにより、作業者は、作業対象物を締付け、又は緩めることができる。」

(キ)段落0036
「実施形態のインナーソケット220は、…(中略)…前方位置から後方位置に向けてアウターソケット210の内周面から離れるようにテーパー部227が形成される。また、インナーソケット220は、インナー側前方規制部24の代わりにインナー側前方規制部224を備える。」

(ク)段落0037
「円状バネ241の外周部241bの一部は、アウターソケット210の内周面の円周状アウター側溝部212に保持される。」

(ケ)段落0040
「本実施形態では、…(中略)…テーパー部227が形成されている。これにより、インナーソケット220がアウターソケット210内に挿入される際に、円状バネ241が拡げられ易くなるため、インナーソケット220をアウターソケット内に挿入する製造工程を容易にする。」

(コ)段落0039
「インナーソケット220が前方位置から後方位置に移動する際に、アウターソケット210に保持される円状バネ241がインナーソケット220とともに移動することがない。」

(サ)段落0035
「本実施形態の工具用ソケット200は、アウターソケット10の代わりにアウターソケット210を備え、インナーソケット20の代わりにインナーソケット220を備え、ロック機構40の代わりにロック機構240を備える。これらの点以外は、第1の実施形態の工具用ソケット100と同じ構成を備える。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。」

(シ)段落0027
「前方位置よりもさらに前方へのインナーソケット20の移動を規制するため、インナー側前方規制部24がインナーソケット20に備えられるとともに、規制部材50がアウターソケット10に固定される。…(中略)…規制部材50は、アウターソケット10に備えられる貫通孔17に貫通される。なお、本実施形態においては、均等な間隔で2つの規制部材50が貫通されている。また、固定リング51は、貫通孔17に貫通された規制部材50を外側から覆うように、アウターソケット10に形成される嵌合溝18に嵌合される。これにより、規制部材50がアウターソケット10に対して固定される。」

(ス)段落0006及び0007
「本考案は、上述の各々の技術課題を解決することにより、使用時の摩耗による劣化を抑制できるとともに作業時間を短縮できる工具用ソケットの実現に大きく貢献するものである。
考案者は、作業者の立場でインナーソケットの回転軸方向の移動の固定とその解除とを容易にできるようにすることが、上述の劣化の抑制に加えて作業時間の短縮にもつながると考えた。インナーソケットの回転軸方向のロック機構の実現に向けて鋭意研究が重ねられた結果、考案者は、作業性を格段に向上する適度なロック状態を実現するインナーソケットのロック機構の構成を見出すことに成功した。本考案は、そのような観点で創出された。」

(セ)段落0010
「前述のロック機構は、前述のアウターソケットの内周面の円周状アウター側溝部に一部が保持される外周部と前述のインナーソケットの外周面の円周状インナー側溝部と係合する内周部とを有するとともに、開口部が形成され、かつその開口部の幅を縮小する方向に付勢する円状バネが前述の円周状インナー側溝部と係合することにより、前述のインナーソケットが前述の前方位置で固定され、かつ前述の円状バネと前述の円周状インナー側溝部との係合が解かれることにより、前述のインナーソケットが前述の前方位置から解放される機構である。」

(ソ)段落0011
「この工具用ソケットによれば、インナーソケットを上述の前方位置で固定するロック機構を備えるため、作業対象物がインナーソケットのソケット孔に嵌合する場合には、作業者は、インナーソケットが前方位置に固定された状態で作業することができる。これにより、インナーソケットとアウターソケットとの間に生じる不要な摩耗を抑制することができる。すなわち、インナーソケットの外周部及びアウターソケットの内周部の磨耗による劣化が抑えられる。また、作業対象物がインナーソケットのソケット孔に嵌合する場合には、インナーソケットがアウターソケットに対して前方位置から後方位置に向かう方向へ移動することを要しない。これにより、その移動に伴う作業時間が不要となるため、全体としての作業時間が大幅に短縮される。さらに、この工具用ソケットによれば、インナーソケットと円状バネとの係合が解かれることによって、インナーソケットが前方位置から後方位置に移動する際に、アウターソケットに保持される円状バネがインナーソケットとともに移動することがないため、円状バネ、インナーソケット、及びアウターソケットの摩耗も抑制される。従って、インナーソケットの外周部とアウターソケットの内周部との劣化をさらに抑制することができる。加えて、この工具用ソケットによれば、インナーソケットが前方位置に固定された状態で作業することができるため、インナーソケットが作業対象物に対して空回転することを防止できる。これにより、作業対象物とインナーソケット孔の側面との間に生じる不要な摩耗を抑制することができる。換言すれば、作業対象物及びインナーソケット孔の側面の摩耗による劣化が大幅に抑えられる。」

甲第1号証の記載事項(ア)ないし(ソ)並びに同図面の図9及び10から、次の(タ)ないし(ノ)がいえる。
(タ)図9及び10に接した当業者にとって、記載事項(ア)ないし(ウ)を参酌すると、アウターソケット210が前方位置側の開口端及び後方位置側の開口端を有することは、自明である。

(チ)記載事項(イ)及び(エ)に接した当業者にとって、円状バネ241がアウターソケット210の回転軸方向(以下単に「軸方向」とする。)から見てC字形状を有することは、自明である。

(ツ)記載事項(ア)及び(ク)に接した当業者にとって、アウターソケット210が、ソケット孔16よりも他端側において、コイルバネ30及び円状バネ241を収容する内周面を有することは、自明である。

(テ)記載事項(カ)及び(キ)に接した当業者にとって、インナーソケット220が、ソケット孔26から軸方向に沿ってインナー側前方規制部224まで延びる軸部を有することは、自明である。

(ト)記載事項(キ)及び(コ)に接した当業者にとって、アウターソケット210内をインナーソケット220が摺動すること、つまり、アウターソケット210の内周面が、インナーソケット220に形成された、インナー側前方規制部224及びテーパー部227を軸方向に移動可能に支持する支持部を有することは、自明である。

(ナ)記載事項(ク)に接した当業者にとって、円周状アウター側溝部212がアウターソケット210の内周面に対して凹んでいること、及び、円周状アウター側溝部212が円状バネ241の軸方向の移動を規制することは、自明である。

(ニ)記載事項(エ)、(ク)及び(コ)に接した当業者にとって、縮みバネである円状バネ241の外径が支持部よりも大きく且つ円周状アウター側溝部212の直径よりも小さいことは、自明である。

(ヌ)記載事項(オ)及び図9に接した当業者にとって、円状バネ241がアウターソケット210の内周面から軸方向側に突出し、インナーソケット220のインナー側前方規制部224に当接することで、インナーソケット220のさらに前方への移動を規制することは、自明である。

(ネ)溝部の形状としては断面コ字形状のものが最も加工し易く且つ一般的である、という本件特許の出願時の技術常識を参酌すれば、円周状アウター側溝部212が断面コ字形状である、つまり、軸方向に並んで位置し且つ軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有することは、当業者にとって自明である。

(ノ)記載事項(キ)及び(シ)並びに図9及び10に接した当業者にとって、規制部材50がアウターソケット210に挿入され、固定リング51により固定されることにより、インナーソケット220が前方位置よりもさらに前方へ移動しようとした場合に、規制部材50がインナー側前方規制部224に当接することにより、インナーソケット220の抜け落ちを防止することは、当業者にとって自明である。

ウ 甲第1号証に記載されている発明
以上の記載事項(ア)ないし(ソ)及び認定事項(タ)ないし(ノ)によれば、甲第1号証には、使用時の摩耗による劣化を抑制し、作業時間を短縮するという課題を解決する目的で、インナーソケットの回転軸方向の移動の固定と解除が簡単にできるようにした、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「前方位置側の開口端及び後方位置の開口端を有するアウターソケット210と、
軸方向に移動できるように、アウターソケット210の前方位置側から挿入されたインナーソケット220と、
アウターソケット210内にインナーソケット220よりも奥方に配置され且つインナーソケット220を一端側に付勢するコイルバネ30と、
軸方向から見てC字形状を有し且つインナーソケット220を前方位置で固定し、かつ前方位置から解除するためにアウターソケット210内に設けられた円状バネ241とを備え、
アウターソケット210は、前方位置側に設けられたソケット孔16と、該ソケット孔16よりも後方位置側においてコイルバネ30及び円状バネ241を収容する内周面とを有し、
インナーソケット220は、アウターソケット210内において軸方向に移動可能である中空状のソケット孔26と、該ソケット孔26から軸方向に沿ってインナー側前方規制部224まで延びる軸部と、当該軸部の外周面から径方向に突出するインナー側前方規制部224及びテーパー部227とを有し、
アウターソケット210の内周面は、インナーソケット220に形成された、インナー側前方規制部224及びテーパー部227を軸方向に移動可能に支持する支持部と、内周面に対して凹み且つ円状バネ241の軸方向の移動を規制する円周状アウター側溝部212とを有し、
円状バネ241は、支持部よりも大きく且つ円周状アウター側溝部212の直径よりも小さく、円周状アウター側溝部212に一部が保持される外周部と、アウターソケット210の内周面から中心軸側に突出し、インナーソケット220の外周面の円周状インナー側溝部222と係合する内周部とを有し、
円状バネ241が縮径して、円状バネ241と円周状インナー側溝部222が係合することにより、インナーソケット220を前方位置で固定し、さらに前方への移動を規制し、かつ円状バネ241が拡径して、円状バネ241と円周状インナー側溝部222との係合が解かれることにより、インナーソケット220が前方位置から解放される機構であって、
円周状アウター側溝部212は、軸方向に並んで位置し且つ軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有し、
規制部材50がアウターソケット210に挿入され、固定リング51により固定されることにより、インナーソケット220が前方位置よりもさらに前方へ移動しようとした場合に、規制部材50がインナー側前方規制部224に当接することにより、インナーソケット220の抜け落ちを防止する、工具用ソケット200。」

エ 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「前方位置側の開口端及び後方位置の開口端を有するアウターソケット210」は本件発明1の「一端および他端を有する筒状部材」に相当する。
以下同様に、引用発明の「軸方向に移動できるように、アウターソケット210の前方位置側から挿入されたインナーソケット220」は本件発明1の「前記筒状部材の筒軸方向に移動できるように、前記筒状部材の一端部に挿入された移動部材」に、
引用発明の「アウターソケット210内にインナーソケット220よりも奥方に配置され且つインナーソケット220を一端側に付勢するコイルバネ30」は本件発明1の「前記筒状部材内において前記移動部材よりも前記他端側に設けられかつ前記移動部材を前記一端側に向かって付勢する弾性部材」に、
引用発明の「アウターソケット210の前方位置側に設けられたソケット孔16」は本件発明1の「筒状部材の一端部に設けられかつ前記移動部材が挿入された中空状のアウターソケット部」に、
引用発明の「ソケット孔16よりも後方位置側においてコイルバネ30及び円状バネ241を収容する内周面」は本件発明1の「アウターソケット部よりも前記他端側において前記弾性部材および前記規制部材を収容する中空状の収容部」に、
引用発明の「アウターソケット210内において軸方向に移動可能である中空状のソケット孔26」は本件発明1の「アウターソケット部内において前記筒軸方向に移動可能に設けられる中空状のインナーソケット部」に、
引用発明の「軸部の外周面から径方向に突出するインナー側前方規制部224及びテーパー部227」は本件発明1の「収容部内において前記軸部の外周面から該軸部の径方向に突出する突出部」に、
引用発明の「インナーソケット220に形成された、インナー側前方規制部224及びテーパー部227を軸方向に移動可能に支持する支持部」は本件発明1の「突出部を前記筒軸方向に移動可能に支持する支持部」に、
引用発明の「内周面に対して凹み且つ円状バネ241の軸方向の移動を規制する円周状アウター側溝部212」は本件発明1の「突出部よりも前記一端側において前記支持部に対して凹みかつ前記規制部材の前記筒軸方向の移動を規制するように該規制部材を収容する溝部」に、
引用発明の「円周状アウター側溝部212は、軸方向に並んで位置し且つ軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有する(事項)」は本件発明1の「溝部は、前記筒軸方向に並んで位置しかつ前記筒軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有する(事項)」に、
引用発明の「工具用ソケット200」は本件発明1の「工具用ソケット」に、それぞれ相当する。

また、引用発明の「軸方向から見てC字形状を有し且つインナーソケット220を前方位置で固定し、かつ前方位置から解除するためにアウターソケット210内に設けられ」「外径が支持部よりも大きく且つ円周状アウター側溝部212の直径よりも小さ(い)」「円状バネ241」は、本件発明1の「前記筒軸方向から見てC字形状を有しかつ前記移動部材の前記一端側への移動を規制して前記移動部材の抜け落ちを防止するために前記筒状部材内に設けられ」「外径が前記支持部の直径よりも大きくかつ前記溝部の底部の直径よりも小さ(い)」「規制部材」と、「筒軸方向(軸方向)から見てC字形状を有しかつ移動部材(インナーソケット220)の一端側(前方位置側)への移動を規制するために筒状部材(アウターソケット210)内に設けられた規制部材(円状バネ241)であって、外径が支持部(支持部)よりも大きくかつ溝部の底部(円周状アウター側溝部212)の直径よりも小さい規制部材(円状バネ241)」である点を限度として一致する。

また、引用発明の「ソケット孔26から軸方向に沿ってインナー側前方規制部224まで延びる軸部」は、本件発明1の「インナーソケット部から前記筒状部材の前記他端側に向かって延びかつ前記筒軸方向に移動可能に前記収容部に挿入される軸部(ただし、前記規制部材を収容する溝部を備えるもの、および、その外径が前記規制部材の内径よりも小さいものを除く)」と、「インナーソケット部(ソケット孔26)から筒状部材(アウターソケット部210)の他端側(後方位置の開口端)に向かって延びかつ筒軸方向(軸方向)に移動可能に収容部(内周面)に挿入される軸部(軸部)」である点を限度として一致する。

オ 一致点及び相違点
以上から、本件発明1と引用発明との一致点並びに相違点1及び2は、次のとおりである。
【一致点】
「一端および他端を有する筒状部材と、
前記筒状部材の筒軸方向に移動できるように、前記筒状部材の一端部に挿入された移動部材と、
前記筒状部材内において前記移動部材よりも前記他端側に設けられかつ前記移動部材を前記一端側に向かって付勢する弾性部材と、
前記筒軸方向から見てC字形状を有しかつ前記移動部材の前記一端側への移動を規制するために前記筒状部材内に設けられた規制部材とを備え、
前記筒状部材は、該筒状部材の一端部に設けられかつ前記移動部材が挿入された中空状のアウターソケット部と、該アウターソケット部よりも前記他端側において前記弾性部材および前記規制部材を収容する中空状の収容部とを有し、
前記移動部材は、前記アウターソケット部内において前記筒軸方向に移動可能に設けられる中空状のインナーソケット部と、前記インナーソケット部から前記筒状部材の前記他端側に向かって延びかつ前記筒軸方向に移動可能に前記収容部に挿入される軸部と、前記収容部内において前記軸部の外周面から該軸部の径方向に突出する突出部とを有し、
前記収容部の内周面は、前記突出部を前記筒軸方向に移動可能に支持する支持部と、前記突出部よりも前記一端側において前記支持部に対して凹みかつ前記規制部材の前記筒軸方向の移動を規制するように該規制部材を収容する溝部とを有し、
前記規制部材は、外径が前記支持部の直径よりも大きくかつ前記溝部の底部の直径よりも小さく、前記突出部の前記一端側への移動を規制するように前記支持部よりも前記収容部の中心軸側に突出し、
前記溝部は、前記筒軸方向に並んで位置しかつ前記筒軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有する、工具用ソケット。」

【相違点1】
本件発明1は、規制部材が、移動部材の抜け落ちを防止するために、筒状部材内に設けられているのに対し、引用発明は、円状バネ241が、インナーソケット220を前方位置で固定し、さらに前方への移動を規制し、かつ前方位置から解除するために、アウターソケット210内に設けられているものである点。

【相違点2】
本件発明1は、軸部が、規制部材を収容する溝部を備えず、および、軸部の外径が規制部材の内径と隙間なく接触するのに対し、引用発明は、インナーソケット220の軸部が、円状バネ241の内周部と係合する、円周状インナー側溝部222を備えるものであって、インナーソケット220の軸部の外径が円状バネ241の内径と隙間なく接触するか否かは不明である点。

カ 検討
上記のとおり、本件発明1と引用発明との間には相違点1及び2が存在するから、本件発明1は引用発明ではなく、本件発明1は特許法第29条第1項第3号に該当しないことは明らかである。
引き続き、上記相違点1及び2について各々検討するが、事案に鑑み相違点2から検討する。
(ア)相違点2について
上記のとおり、引用発明は、使用時の摩耗による劣化を抑制し、作業時間を短縮するという課題を解決する目的で、円状バネ241が縮径して、円状バネ241と円周状インナー側溝部222が係合することにより、インナーソケット220を前方位置で固定し、さらに前方への移動を規制し、かつ円状バネ241が拡径して、円状バネ241と円周状インナー側溝部222との係合が解かれることにより、インナーソケット220が前方位置から解放される機構を設けることにより、インナーソケットの回転軸方向の移動の固定と解除が簡単にできるようにしたものである。
よって、引用発明において、上記の機構を実現する上で必須の構成の一つである、円周状インナー側溝部222を省略することは、引用発明の機能を喪失させ、その目的に反し、課題の解決を不可能とするものであるので、当業者が容易に想到し得たものではなく、阻害要因があると認められる。

(イ)相違点1について
次に相違点1について検討する。
特許権者が平成30年11月30日付けの意見書(以下単に「意見書1」という。)で「甲第1号証の『円状バネ』は、その請求項1に記載されるように、『前記開口部の幅を拡大する方向に付勢する円状バネが前記円周状アウター側溝部と係合することにより、前記インナーソケットが前記前方位置で固定され、かつ前記円状バネと前記円周状アウター側溝部との係合が解かれることにより、前記インナーソケットが前記前方位置から解放されるロック機構』の一部の構成部材である。すなわち、甲第1号証の考案において、『円状バネ』は、『円周状アウター側溝部』に係合したり、係合が解かれたりすることにより、インナーソケットを所定位置でロックしたり、そのロックを解除したりするために用いられる部材である。」(意見書1の第5ページ第3ないし11行を参照。)と主張するとおり、引用発明の円状バネ241は、インナーソケット220を前方位置で固定し、さらに前方への移動を規制し、かつ前方位置から解除するためのものであり、円状バネ241単独では、インナーソケット220の抜け落ちを防止することができない。
ここで、甲第2号証には、内装ソケット4がソケット本体から脱落することを防止する目的で、Cリング3をソケット本体1の小径部13と内装ソケット4の大径部41との間に収容する技術的事項が記載されてはいるものの(段落0027を参照。)、引用発明において、円状バネ241単独で、インナーソケット220の抜け落ちを防止しようとすれば、円周状インナー側溝部222を省略せざるを得ないが、当該省略には阻害要因が存在することは上記「(ア)相違点2について」で説示したとおりであるから、引用発明に対して甲第2号証に記載された技術的事項を適用する動機付けは存在しない。

キ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は平成31年1月16日付けの意見書(以下単に「意見書2」という。)において、「甲第1号証の明細書段落0037における『インナー側前方規制部224が、円状バネ241と当接することにより、前方位置よりもさらに前方への移動が規制される。』という意味は、インナーソケット220の脱落防止と同義である。」(意見書2の第3ページ第29ないし32行を参照。)及び「したがって、『インナーソケット220は規制部材50と固定リング51がなければ容易に抜け落ちる』とする被申立人の主張は技術的に誤っているというほかない。」(意見書第3ページ第36及び37行を参照。)と主張しているので、これについても検討する。
引用発明において、円状バネ241は、インナーソケット220を前方位置で固定し、さらに前方への移動を規制し、かつ前方位置から解除するためのものである。つまり、円状バネ241はインナーソケット220が前方位置からさらに前方へ移動することを規制していることから、円状バネ241がインナーソケット220の抜け落ちを防止する効果が絶無である、とまでいうことはできない。
ここで、まず、甲第1号証においては、図9ないし図11が必ずしも正確には記載されていないので、この点について検討する。
甲第1号証の図11(C)の状態から同図11(d)の状態へ変化する間には、インナーソケット220のテーパー部227が円状バネ241を拡径し、円状バネ241がテーパー部227を乗り越える必要がある。
そうすると、アウターソケット210の円周状アウター側溝部212には、円状バネ241が外径方向に拡径できるだけの余裕が必要であるから、上記図11(C)においては、円状バネ241の外周部とアウターソケット210の円周状アウター側溝部212の底部との間には、所定の隙間が存在していなければならない。
その前提に立つと、甲第1号証の図9ないし11の如く、エ具用ソケット200を水平方向にて使用する場合を想定すると、甲第1号証の図11(d)において、円状バネ241の内周部の上側はインナーソケット220のインナー側溝部222に落ち込み、また、円状バネ241の外周部の下側は、アウターソケット210の円周状アウター側溝部212の溝部212に落ち込むことになり、円状バネ241の少なくとも上側は、インナーソケット220のテーパー部227の抜け落ちを防止することはできないこととなる。
このことは、甲第1号証の図9においても同様であり、アウターソケット210の円周状アウター側溝部212は、インナーソケット220のテーパー部227による、円状バネ241の拡径を許容する大きさには描かれていない。
特許異議申立人が意見書2の(2)(i)において主張しているように、甲第1号証の図9ないし11は、技術的思想の理解に資するための参考図程度のものであり、甲第1号証の明細書全般から技術的に正確に引用発明を理解すると上記のとおりとなる。
そうすると、引用発明は、インナーソケット220の外周面に円周状インナー側溝部222を有する以上、仮に甲第1号証の図9の状態において、規制部材50及び固定リング51が存在しない場合は、作業時の振動で円状バネ241の内周部と円周状インナー側溝部222の係合が解除されることにより、インナーソケット220が容易に脱落するおそれのあるものであって、引用発明において、インナーソケット220の抜け落ち防止は、円状バネ241単独ではできず、規制部材50及び固定リング51を設けることにより行われていると認められる。
このことは、甲第1号証に記載されている工具用ソケットが、従来例とされている図13のものも含め、全て規制部材及び固定リングを備えていることからも間接的に裏付けられている。
これに対して、本件発明1は、インナーソケット部の軸部に、規制部材を収容する溝部を備えないものであるから、規制部材のみによって、作業時にインナーソケット部の抜け落ちを防止する効果を奏することができるのである。
よって、引用発明は、本件発明1とは異なり、円状バネ241単独では、作業時にインナーソケット220の抜け落ちを防止する効果を奏することはできず、規制部材50及び固定リング51が存在しない場合は、インナーソケット220が容易に脱落するおそれのあるものであるから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

ク 判断
したがって、本件発明1は、引用発明ではない。
また、本件発明1は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ケ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して更に「前記規制部材は、金属材料からなる」という発明特定事項を付加したものである。
よって、上記アないしクに示した理由と同様の理由により、本件発明2は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

コ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に対して更に「前記突出部は、前記一端側に面しかつ前記軸部から該軸部の径方向に延びる第1面と、前記他端側に面しかつ前記軸部から前記径方向に延びる第2面とを有し、
前記第2面は、前記径方向における外側ほど前記一端側に位置するように傾斜している」という発明特定事項を付加したものである。
よって、上記アないしクに示した理由と同様の理由により、本件発明3は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

サ 本件発明4について
本件発明4は、本件発明3に対して更に「前記移動部材の中心軸を通る該移動部材の縦断面において、該中心軸に対する前記第1面の傾斜角度は、該中心軸に対する前記第2面の傾斜角度よりも大きい」という発明特定事項を付加したものである。
よって、上記アないしクに示した理由と同様の理由により、本件発明4は、引用発明及び甲第2号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端および他端を有する筒状部材と、
前記筒状部材の筒軸方向に移動できるように、前記筒状部材の一端部に挿入された移動部材と、
前記筒状部材内において前記移動部材よりも前記他端側に設けられかつ前記移動部材を前記一端側に向かって付勢する弾性部材と、
前記筒軸方向から見てC字形状を有しかつ前記移動部材の前記一端側への移動を規制して前記移動部材の抜け落ちを防止するために前記筒状部材内に設けられた規制部材とを備え、
前記筒状部材は、該筒状部材の一端部に設けられかつ前記移動部材が挿入された中空状のアウターソケット部と、該アウターソケット部よりも前記他端側において前記弾性部材および前記規制部材を収容する中空状の収容部とを有し、
前記移動部材は、前記アウターソケット部内において前記筒軸方向に移動可能に設けられる中空状のインナーソケット部と、前記インナーソケット部から前記筒状部材の前記他端側に向かって延びかつ前記筒軸方向に移動可能に前記収容部に挿入される軸部(ただし、前記規制部材を収容する溝部を備えるもの、および、その外径が前記規制部材の内径より小さいものを除く)と、前記収容部内において前記軸部の外周面から該軸部の径方向に突出する突出部とを有し、
前記収容部の内周面は、前記突出部を前記筒軸方向に移動可能に支持する支持部と、前記突出部よりも前記一端側において前記支持部に対して凹みかつ前記規制部材の前記筒軸方向の移動を規制するように該規制部材を収容する溝部とを有し、
前記規制部材は、外径が前記支持部の直径よりも大きくかつ前記溝部の底部の直径よりも小さく、前記突出部の前記一端側への移動を規制するように前記支持部よりも前記収容部の中心軸側に突出し、
前記溝部は、前記筒軸方向に並んで位置しかつ前記筒軸方向と交差する方向に延びる一対の側面を有する、工具用ソケット。
【請求項2】
前記規制部材は、金属材料からなる、請求項1に記載の工具用ソケット。
【請求項3】
前記突出部は、前記一端側に面しかつ前記軸部から該軸部の径方向に延びる第1面と、前記他端側に面しかつ前記軸部から前記径方向に延びる第2面とを有し、
前記第2面は、前記径方向における外側ほど前記一端側に位置するように傾斜している、請求項1または2に記載の工具用ソケット。
【請求項4】
前記移動部材の中心軸を通る該移動部材の縦断面において、該中心軸に対する前記第1面の傾斜角度は、該中心軸に対する前記第2面の傾斜角度よりも大きい、請求項3に記載の工具用ソケット。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-06 
出願番号 特願2015-103637(P2015-103637)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B25B)
P 1 651・ 113- YAA (B25B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮部 菜苗小川 真  
特許庁審判長 栗田 雅弘
特許庁審判官 平岩 正一
篠原 将之
登録日 2017-08-25 
登録番号 特許第6196261号(P6196261)
権利者 株式会社プロス
発明の名称 工具用ソケット  
代理人 特許業務法人ブライタス  
代理人 特許業務法人ブライタス  
代理人 北上 日出登  

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