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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C09K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C09K |
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管理番号 | 1350623 |
異議申立番号 | 異議2018-700596 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-07-20 |
確定日 | 2019-02-21 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6266147号発明「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸混合物様の組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6266147号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6266147号の請求項1ないし3、7ないし10に係る特許を維持する。 特許第6266147号の請求項4ないし6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6266147号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成22年12月15日(パリ条約による優先権主張 2010年12月14日及び2009年12月16日、いずれも(US)アメリカ合衆国)を出願日とする特願2015-249771号の一部を、平成29年2月16日に新たな特許出願としたものであり、平成30年1月5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日にその特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許について、平成30年7月20日に特許異議申立人成田隆臣により特許異議の申立てがされ、当審において平成30年11月1日付けで取消理由が通知され、これに対し、平成31年1月22日付けで訂正請求書及び意見書が提出されたものである。 第2 平成31年1月22日付けの訂正請求について 1 訂正請求の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1?3のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 2 訂正の可否に対する判断 (1)訂正事項1?3について 訂正事項1?3は、いずれも、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 また、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」ともいう。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)一群の請求項などについて 訂正事項1は、訂正前の請求項4に係るものであるところ、訂正事項1に連動して訂正される訂正前の請求項はない。 訂正事項2は、訂正前の請求項5に係るものであるところ、訂正前の請求項6は、訂正前の請求項5を引用するものであるから、訂正事項2に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項5?6は一群の請求項である。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項6に係るものであるところ、訂正事項3に連動して訂正される訂正前の請求項はない。 したがって、本件訂正請求は、請求項ごと及び一群の請求項ごとに請求されたものと認められる。 (5)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1?10(全請求項)について特許異議申立がされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項及び第4項の規定並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、平成31年1月22日付けの訂正請求書による訂正を認める。 第3 本件訂正発明 本件特許の請求項1?10に係る発明は、平成31年1月22日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された、以下のとおりのもの(以下、それぞれ、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」・・・「本件訂正発明10」といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ともいう。)と認める。 「【請求項1】 約10重量%乃至約40重量%の水及び約60重量%乃至約90重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)から実質的に構成される、共沸混合物様の組成物。 【請求項2】 約15重量%乃至約35重量%の水及び約65重量%乃至約85重量%のZ-HFO-1336mzzmから実質的に構成される、請求項1に記載の共沸混合物様の組成物。 【請求項3】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの共発泡剤を含む発泡剤。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの潤滑剤を含む組成物。 【請求項8】 請求項7に記載の組成物を含む冷却システム。 【請求項9】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び噴射剤を含む噴霧可能な組成物。 【請求項10】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの共溶媒を含む溶媒組成物。」 第4 判断 1 取消理由通知書に記載した取消理由について (1) 取消理由の概要 本件訂正前の請求項4?6に係る特許に対して平成30年11月1日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、「本件取消理由」という。)の概要は、本件出願の請求項4?6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、これらの発明に係る特許は、取り消すべきものである、というものであり、刊行物として、特開平5-179043号公報(以下、「甲1」という。異議申立人が提出した甲第1号証。)を引用するものである。 (2) 判断 本件取消理由は、本件訂正前の請求項4?6に係る特許に対するものであるところ、上記「第2 平成31年1月22日付けの訂正請求について」に説示したとおり、本件訂正は、請求項4?6を削除することを目的とするものであり、かつ、本件訂正は認められるものである。 そうすると、本件取消理由は、その対象となる請求項が存在しないものである。 2 取消理由通知書に記載しなかった異議申立理由について (1) 取消理由通知書に記載しなかった異議申立理由の概要 取消理由通知書に記載しなかった異議申立理由の概要は、本件特許の請求項1?10に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものであるというものであり、刊行物として、甲1、特開平6-228023号公報(以下、「甲2」という。異議申立人が提出した甲第2号証。)、国際公開2009/085857号(以下、「甲3」という。異議申立人が提出した甲第3号証。)、特表2009-518460号公報(以下、「甲4」という。異議申立人が提出した甲第4号証。)、国際公開2008/134061号(以下、「甲5」という。異議申立人が提出した甲第5号証。)、を引用するものである。 (2) 判断 ア 請求項4?6について 上記「第2 平成31年1月22日付けの訂正請求について」に説示したとおり、本件訂正は、請求項4?6を削除することを目的とするものであり、かつ、この訂正は認められるものである。 そうすると、上記異議申立理由のうち請求項4?6を対象とするものは、その対象となる請求項が存在しないものであるから、却下すべきものである。 イ 請求項1?3、7?10について (ア) 証拠の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤。 【請求項2】 発泡剤としてシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法。」 「【0010】即ち、本発明は、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなるプラスチック発泡体製造用発泡剤を提供するものである。 【0011】また、本発明は、発泡剤としてシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(cis-CF_(3)CH=CHCF_(3);以下、単にHFC-1336と記載するが、この名称は、この命名法において本来含まれ得る他の異性体を含まないものとする。)を用いることを特徴とするプラスチック発泡体の製造方法を提供するものである。 【0012】本発明で用いられるHFC-1336は、公知の化合物であり、その製造方法も文献に記載されている(例えば、J.Chem.Soc.,1952,2054参照)。」 「【0016】本発明発泡剤には、必要に応じ、安定化剤を配合することが出来る。この様な安定化剤としては、下記の様なものが例示される。」 「【0032】本発明の発泡剤を使用して発泡体を製造する場合にも、公知の方法と同様にして行なえば良い。例えば、ポリウレタン発泡体を製造する場合には、常法に従って、ポリオールなどの活性水素含有基を2以上有する活性水素化合物とポリイソシアネート化合物とを触媒と発泡剤の存在下に反応させればよい。より具体的には、公知の1段階法、プレポリマー法、ブロック発泡法、二重ベルトコンベア法などによって、所望のプラスチック発泡体を製造することができる。 【0033】なお、本発明によるプラスチック発泡体の製造方法においては、公知の整泡剤、触媒などの添加剤を用いることもできる。整泡剤としては、シリコーン系整泡剤、含フッ素系整泡剤などが挙げられ、これらは発泡原料に対して0.1?2%程度用いられる。また触媒としては、トリエチレンジアミンなどの3級アミン触媒、有機スズ化合物などの金属化合物系触媒などが挙げられ、これらは発泡原料に対して0.1?5%程度用いられる。 【0034】本発明の発泡剤には、その他、必要に応じて水、充填剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる。」 「【0040】(5)本発明発泡剤を用いて得られるプラスチック発泡体は、独立気泡からなっているため、断熱性、寸法安定性、圧縮強度、外観、均一性などに優れている。」 「【0045】・・・ ポリオールB:トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオール」 「【0047】 【実施例2】 *発泡体の製造 (1)ポリオールBを用いた発泡体の製造 ポリオールB 100g、シリコーン系整泡剤2g、水2g、触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン2gおよび本発明による発泡剤としてのHFC-1336 16gを混合し、激しく攪拌した。この攪拌混合物と粗製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート148gとを混合して発泡させ、硬質ポリウレタン発泡体を得た。」 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、HCFCの代替物として、発泡、洗浄、熱媒体として用いられる有用な化合物である1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンの製造方法、及びその反応中間体として得られ、工業薬品として医農薬中間体等に使用可能な1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2,3-ジクロロ-2-ブテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-クロロ-2-ブテン及び1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンからなる1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン類の製造方法に関するものである。」(段落【0001】) 甲3には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語なので、訳は、当審による。 「1. (a)シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとギ酸メチルとの共沸混合物と; (b)2個またはそれ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物と を含む発泡体形成組成物。 (中略) 13. (a)シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンとジメトキシメタンとの共沸様混合物と; (b)2個またはそれ以上の活性水素を有する活性水素含有化合物と を含む発泡体形成組成物。」(27頁3行-29頁17行) 「 炭化水素もまた発泡剤として提案されてきた。しかしながら、これらの化合物は可燃性であり、多くは光化学的に反応性であり、その結果として地表面オゾン(すなわち、スモッグ)の生成の一因となる。かかる化合物は典型的には、揮発性有機化合物(VOC)と言われ、環境規制の対象である。 オゾン層破壊係数(ODP)を実質的に持たない、かつ、地球温暖化係数(GWP)を持たないかまたは非常に低いGWPを有する発泡剤を使用することによって低い可燃性、良好な断熱性および高い寸法安定性を提供する発泡体の製造が必要とされている。シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-FC-1336mzzまたはZ-CF_(3)CH=CHCF_(3))は、優れた候補の1つである。 発明の概要 本出願には、それらのそれぞれがシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸もしくは共沸様混合物を含む、8つの異なるタイプの発泡体形成組成物が含まれる。」(2頁17行?3頁4行) 「 発泡剤組成物(発泡体膨張剤または発泡体膨張組成物としても知られる)は、純粋な単一成分または共沸もしくは共沸様混合物を多くの場合に望む。例えば、発泡剤組成物が純粋な単一成分または共沸もしくは共沸様混合物ではないとき、その組成は発泡体形成プロセスにおけるその適用中に変化するかもしれない。組成のかかる変化は、加工に悪影響を及ぼすかまたは適用の点で不十分な性能の原因となり得る。従って、Z-FC-1336mzzを含有する共沸もしくは共沸様混合物を発泡剤として使用することによってポリウレタン/ポリイソシアヌレート発泡体を製造することが必要とされている。」(4頁16?25行) 「 実施例1 Z-FC-1336mzzおよびギ酸メチル共沸様混合物から製造されるポリウレタンフォーム 発泡剤Z-FC-1336mzzおよびギ酸メチルをプレミックスして90重量%のZ-FC-1336mzzと10重量%のギ酸メチルとを含有する共沸様混合物を形成した。 (中略) 実施例2 Z-FC-1336mzzおよびHFC-365mfc共沸様混合物から製造されるポリウレタンフォーム 発泡剤Z-FC-1336mzzおよびHFC-365mfcをプレミックスして80重量%のZ-FC-1336mzzと20重量%のHFC-365mfcとを含有する共沸様混合物を形成した。 ポリオール、界面活性剤、触媒、水および発泡剤(20重量%のHFC-365mfcおよび80重量%のZ-FC-1336mzz)を手動によりプレミックスし、次にポリイソシアネートと混合した。生じた混合物を8インチ×8インチ×2.5インチ紙箱に注ぎ込み、ポリウレタンフォームを形成した。発泡体の調合物および特性を下の表3および4に示す。 (中略) 実施例8 Z-FC-1336mzzおよびHFC-245fa共沸様混合物から製造されるポリウレタンフォーム 発泡剤Z-FC-1336mzzおよびHFC-245faをプレミックスして20重量%のZ-FC-1336mzzと80重量%のHFC-245faとを含有する共沸様混合物を形成した。 ポリオール、界面活性剤、触媒、水および発泡剤(80重量%のHFC-245faおよび20重量%のZ-FC-1336mzz)を手動によりプレミックスし、次にポリイソシアネートと混合した。生じた混合物を8インチ×8インチ×2.5インチ紙箱に注ぎ込み、ポリウレタンフォームを形成した。発泡体の調合物および特性を下の表15および16に示す。 」(17頁18行-25頁14行) 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 冷媒または伝熱流体組成物であって: (i)式E-R^(1)CH=CHR^(2)またはZ-R^(1)CH=CHR^(2)のフルオロオレフィンであって、式中、R^(1)およびR^(2)が、独立して、C_(1)?C_(6)のパーフルオロアルキル基であり、および式中、化合物中の炭素の総数が少なくとも5個であるフルオロオレフィン; (ii)式シクロ-[CX=CY(CZW)_(n)-]の環状フルオロオレフィンであって、式中、X、Y、Z、およびWが、独立して、HまたはFであり、およびnが2?5の整数である環状フルオロオレフィン;および (iii)2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン(CHF_(2)CF=CH_(2)); (中略) およびCF_(2)=CFOCF_(3)(PMVE)からなる群から選択されるフルオロオレフィン; からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする冷媒または伝熱流体組成物。 【請求項2】 (i)少なくとも1種のフルオロオレフィン化合物;および(ii)少なくとも1種の可燃性冷媒を含む組成物であって;前記フルオロオレフィンが: (a)式E-R^(1)CH=CHR^(2)またはZ-R^(1)CH=CHR^(2)のフルオロオレフィンであって、式中、R^(1)およびR^(2)が、独立して、C_(1)?C_(6)のパーフルオロアルキル基であるフルオロオレフィン; (b)式シクロ-[CX=CY(CZW)_(n)-]の環状フルオロオレフィンであって、式中、X、Y、Z、およびWが、独立して、HまたはFであり、およびnが2?5の整数である環状フルオロオレフィン;および (c)1,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン(CF_(3)CF=CHF); (中略) および1,1,1,2,2,3,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロ-3-ヘプテン(CF_(3)CF_(2)CF=CHCF_(2)C_(2)F_(5))からなる群から選択されるフルオロオレフィン; からなる群から選択されることを特徴とする組成物。 (中略) 【請求項8】 鉱物油、パラフィン、ナフテン、合成パラフィン、アルキルベンゼン、ポリ-α-オレフィン、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリオールエステルおよびこれらの混合物からなる群から選択される潤滑剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。 (中略) 【請求項18】 冷凍、空調、またはヒートポンプ装置において加熱または冷却をもたらす方法であって、冷媒または伝熱流体組成物を(a)遠心コンプレッサ;(b)多段遠心コンプレッサ、または(c)シングルスラブ/シングルパス熱交換器を有する前記装置に供給する工程を含み;ここで、前記冷媒または伝熱流体組成物が: (i)式E-R^(1)CH=CHR^(2)またはZ-R^(1)CH=CHR^(2)のフルオロオレフィンであって、式中、R^(1)およびR^(2)が、独立して、C_(1)?C_(6)のパーフルオロアルキル基であるフルオロオレフィン; (ii)式シクロ-[CX=CY(CZW)_(n)-]の環状フルオロオレフィンであって、式中、X、Y、Z、およびWが、独立して、HまたはFであり、およびnが2?5の整数である環状フルオロオレフィン;または (iii)1,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン(CF_(3)CF=CHF); (中略) ;CF_(2)=CFOCF_(3)(PMVE)およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるフルオロオレフィン; からなる群から選択される少なくとも1種のフルオロオレフィンを含むことを特徴とする方法。 (中略) 【請求項32】 元の冷媒または伝熱流体組成物を、第2の冷媒または伝熱流体組成物で置き換える方法であって、請求項1または2に記載の組成物を第2の冷媒または伝熱流体組成物として提供する工程を含むことを特徴とする方法。 【請求項33】 前記元の冷媒または伝熱流体組成物が: (i)1,1,1,2-テトラフルオロエタン(R134a)であって、トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR134a; (ii)1,1-ジフルオロエタン(R152a)であって、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(E-HFC-1234ze)、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFC-1225ye)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234yf)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243zf)、およびトリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル(PMVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR152a; (iii) (中略) (iv) (中略) (v) (中略) (vi) (中略) (vii) (中略) (viii)フルオロトリクロロメタン(R11)であって、1,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロシクロペンテン(FC-C1418y);1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-ペンテン(FC-141-10myy); 1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン(HFC-1429myz);1,1,1,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン(HFC-1429mzy);3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HFC-1447fz),;1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(F11E);1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-ブテン(HFC-1429mzt);および1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン(F12E)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR11; (ix)2,2,-ジクロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(R123)であって、1,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロシクロペンテン(FC-C1418y);1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-ペンテン(FC-141-10myy);1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン(HFC-1429myz);1,1,1,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン(HFC-1429mzy);3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(HFC-1447fz),;1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(F11E);1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-ブテン(HFC-1429mzt);および1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン(F12E)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR123; (x)1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(R245fa)であって、2,3,3-トリフルオロプロペン(HFC-1243yf);1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(F11E);1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ze);1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(HFC-1327my);1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(HFC-1234ye);およびペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル(PEVE)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む第2の冷媒または伝熱流体組成物によって置換されるR245fa; (xi) (中略) (中略) (xx) (中略) R500; からなる群から選択されることを特徴とする請求項30に記載の方法。」(特許請求の範囲) 「【0001】 本発明は、冷凍、空調またはヒートポンプシステムにおける使用のための組成物に関し、本組成物は少なくとも1種のフルオロオレフィンを含む。本発明の組成物は、冷凍または熱をもたらすプロセスにおいて、伝熱流体として有用であると共に、多くの他の使用において有用である。」 「【0014】 冷媒は、サイクルにおいて伝熱流体として機能する化合物または化合物の混合物であり、ここで、流体は、液体からガス逆への相変化を経る。 【0015】 本発明は、式E-R^(1)CH=CHR^(2)またはZ-R^(1)CH=CHR^(2)(式I)を有するフルオロオレフィンを提供し、式中、R^(1)およびR^(2)は、独立して、C_(1)?C_(6)のパーフルオロアルキル基である。R^(1)およびR^(2)基の例としては、特に限定されないが、CF_(3)、C_(2)F_(5)、CF_(2)CF_(2)CF_(3)、CF(CF_(3))_(2)、CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(3)、CF(CF_(3))CF_(2)CF_(3)、CF_(2)CF(CF_(3))_(2)、C(CF_(3))_(3)、CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(3)、CF_(2)CF_(2)CF(CF_(3))_(2)、C(CF_(3))2C_(2)F_(5)、CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(2)CF_(3)、CF(CF_(3))CF_(2)CF_(2)C_(2)F_(5)、およびC(CF_(3))_(2)CF_(2)C_(2)F_(5)が挙げられる。一実施形態において、式Iのフルオロオレフィンは、少なくとも約3個の炭素原子を分子中に有する。他の実施形態において、式Iのフルオロオレフィンは、少なくとも約4個の炭素原子を分子中に有する。さらに他の実施形態において、式Iのフルオロオレフィンは、分子中に少なくとも約5炭素原子を有する。例示的な、非限定的な式Iの化合物が表1に表されている。 【0016】 【表1】 」 「【0043】 1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンは、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタン(CF_(3)CHICH_(2)CF_(3))から、相間移動触媒をKOHとの反応により、約60℃で調製され得る。1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタンの合成は、パーフルオロヨウ化メチル(CF_(3)I)および3,3,3-トリフルオロプロペン(CF_(3)CH=CH_(2))の、約200℃で、自己圧力下に約8時間の反応により実施され得る。」 「【0106】 本発明の組成物は、少なくとも1種の潤滑剤をさらに含み得る。本発明の滑剤は、冷凍または空調装置での使用に好ましいものを含む。これらのうち、滑剤は、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷凍装置において簡便に用いられるものである。このような滑剤およびこれらの特性は、本願明細書において参照により援用される(非特許文献2)において検討されている。本発明の滑剤は、圧縮冷凍潤滑の分野において、普通「鉱物油」として公知であるものを含み得る。鉱物油は、パラフィン(すなわち、直鎖および分岐-炭素-鎖、飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状パラフィン)および芳香族化合物(すなわち、交互の二重結合によって特徴付けられる1つまたは複数の環を含有する不飽和、環状炭化水素)を含む。本発明の滑剤は、圧縮冷凍潤滑の分野において、普通「合成油」として公知であるものをさらに含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖および分岐アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィンおよびナフテン、およびポリ(αオレフィン)を含む。本発明の代表的な通常の滑剤は、市販されているBVM100N(BVAオイル(BVA Oils)から購入したパラフィン系鉱物油)、スニソ(Suniso)(登録商標)3GSおよびスニソ(Suniso)(登録商標)5GS(クロンプトン社(Crompton Co.)から購入したナフテン系鉱物油)、サンテックス(Sontex)(登録商標)372LT(ペンゾイル(Pennzoil)から購入したナフテン系鉱物油)、カルメット(Calumet)(登録商標)RO-30(カルメットルーブリカンツ(Calumet Lubricants)から購入したナフテン系鉱物油)、ゼロール(Zerol)(登録商標)75、ゼロール(Zerol)(登録商標)150およびゼロール(Zerol)(登録商標)500(シュリーブケミカルズ(Shrieve Chemicals)から購入した直鎖アルキルベンゼン)およびHAB22(新日本石油(Nippon Oil)から購入した分岐アルキルベンゼン)である。」 甲5には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語なので、訳は、当審による。 「本開示は、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸(azeotropic)もしくは共沸様(azeotrope-like)組成物に関する。」(3頁15?16行) 「14. 共沸もしくは共沸様組成物を発泡剤として使用する工程を含む熱可塑性または熱硬化性発泡体の製造方法であって、ここで上記共沸もしくは共沸様組成物が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、ギ酸メチル、ペンタン、2-メチルブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ジメトキシメタンおよびシクロペンタンからなる群から選択される成分とから本質的になる方法。 15. 共沸もしくは共沸様組成物を凝縮させる工程と、その後該共沸もしくは共沸様組成物を冷却しようとするべき本体の近くで蒸発させる工程とを含む冷凍を生じさせる方法であって、ここで上記共沸もしくは共沸様組成物が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、ギ酸メチル、ペンタン、2-メチルブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ジメトキシメタンおよびシクロペンタンからなる群から選択される成分とから本質的になる方法。 16. 共沸もしくは共沸様組成物を溶媒として使用する方法であって、ここで上記共沸もしくは共沸様組成物が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、ギ酸メチル、ペンタン、2-メチルブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ジメトキシメタンおよびシクロペンタンからなる群から選択される成分とから本質的になる方法。 17. 共沸もしくは共沸様組成物を噴射剤として使用する工程を含むエアゾール製品の製造方 法であって、ここで上記共沸もしくは共沸様組成物が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、ギ酸メチル、ペンタン、2-メチルブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ジメトキシメタンおよびシクロペンタンからなる群から選択される成分とから本質的になる方法。 18. 共沸もしくは共沸様組成物を熱媒として使用する工程を含む方法であって、ここで該共沸もしくは共沸様組成物が、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、ギ酸メチル、ペンタン、2-メチルブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、ジメトキシメタンおよびシクロペンタンからなる群から選択される成分とから本質的になる方法。」(29頁34?30頁30行) (イ) 本件訂正発明1について 甲1の実施例2には、「ポリオールBを用いた発泡体の製造」について、ポリオールB 100g、シリコーン系整泡剤2g、水2g、触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン2gおよび本発明による発泡剤としてのHFC-1336 16gを混合し、激しく攪拌して、攪拌混合物を得たこと、該攪拌混合物と粗製ポリメチレンポリフェニルイソシアネート148gとを混合して発泡させ、硬質ポリウレタン発泡体を得たことが記載されている。 また、段落【0045】には、前記ポリオールBが、トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオールであることが記載されている。 したがって、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオール 100g、シリコーン系整泡剤2g、水2g、触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン2gおよび発泡剤としてのHFC-1336 16gを混合し、激しく攪拌して得た、攪拌混合物。」 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「HFC-1336」は、甲1の段落【0011】の記載を参照すると、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンであるから、本件訂正発明1の「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)」(以下、「Z-HFO」ともいう。)に相当する。 甲1発明の「攪拌混合物」は、本件訂正発明1の「組成物」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「水及びシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)を含む組成物」 <相違点1> 「組成物」について、本件訂正発明1は、「水及びシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)から実質的に構成される」と特定されているのに対し、甲1発明は、「水」と「HFC-1336」の他にも、「トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオール」、「シリコーン系整泡剤」、及び、「触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン」を含み、かつ、これら3つの成分の合計(104g)が、「水」と「HFC-1336」の合計(18g)の5倍以上であるから、水及びHFC-1336から実質的に構成されるものであるとはいえない点。 <相違点2> 「水」、及び、「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)」の含有量について、本件訂正発明1は、それぞれ、「約10重量%乃至約40重量%」、「約60重量%乃至約90重量%」と特定されているのに対し、甲1発明は、そのような特定を備えていない点。 <相違点3> 「組成物」について、本件訂正発明1は、「共沸混合物様の」と特定されているのに対し、甲1発明は、水とHFC-1336を含んでいるものの、これらが共沸混合物様の組成物を構成しているか否かが不明である点。 相違点1?3についてまとめて検討する。 甲1発明の「混合物」は、5つの構成成分(トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオール、シリコーン系整泡剤、水、N,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、Z-HFO)を「混合し、激しく攪拌して得た」ものであり、水とN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミンは、混和性であるから、甲1発明の「混合物」において、「水2g」と「N,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン2g」は混和した状態で存在していると認められる。したがって、甲1発明の「混合物」に、水とHFC-1336から実質的に構成される組成物が含まれているということはありえない。 そして、本件訂正発明1の「共沸混合物様の」は、約10重量%乃至約40重量%の水及び約60重量%乃至約90重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)から実質的に構成される組成物が備える物性であるから、そもそも、甲1発明の「混合物」のように5つの構成成分からなる混合物に対して想定することができないものであり、かつ、上述のとおり、甲1発明の「混合物」は、水とHFC-1336から実質的に構成される組成物を含むといえるものでもない。 また、甲1には、水について、充填剤などと同列に必要に応じて発泡剤(Z-HFO)配合することができることが記載されているだけであって、甲1発明において、充填剤など(水以外のもの)は配合せずに、水だけを配合するとともに、トリレンジアミンにプロピレンオキシドを反応させた水酸基価430のポリエーテルポリオール、シリコーン系整泡剤、及び、触媒としてのN,N,N´,N´-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミンをいずれも配合しないことにより、水とZ-HFOから実質的に構成される組成物とすることや、当該組成物について、水とZ-HFOが、それぞれ、「約10重量%乃至約40重量%」及び「約60重量%乃至約90重量%」となるように混合した場合を想定することや、そのような組成物が「共沸混合物様の」という物性を備えていることについての記載もない。 また、甲2?5のいずれにも、甲1発明の攪拌混合物において、Z-HFOと水からなる組成物や、水とZ-HFOが、それぞれ、「約10重量%乃至約40重量%」及び「約60重量%乃至約90重量%」となるように混合した組成物が「共沸混合物様の」という物性を備えていることに関する記載はない。 したがって、甲1発明の攪拌混合物において、「水及びシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)から実質的に構成される」と特定し、「水」、及び、「シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)」の含有量を、それぞれ、「約10重量%乃至約40重量%」、「約60重量%乃至約90重量%」と特定するとともに、「共沸混合物様の」と特定することを当業者が容易に着想することができたとは認められない。 効果について検討する。 本件訂正発明1は、相違点1?3に係る特定を備えることにより、本件訂正発明1の「共沸混合物様の組成物」を提供することができるという効果を奏するものであって、当該効果は、甲1?5に記載された事項から予測することができたものであるとはいえない。 申立人は、「甲第1号証の実施例2に記載された混合物の成分は「ポリオール」、「整泡剤」、 「触媒」及び「水」と「本発明による発泡剤としてのHFC-1336」であり、上記混合物においては、「水」と「HFC-1336(Z-HFO-1336mzzm)」が発泡剤であるといえる。 そして、甲第1号証には、「本発明の発泡剤には、その他、必要に応じて水、充填剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる」(甲1【0034】段落)とされているから、「水及びHFC-1336(Z-HFO-1336mzzm)」から実質的に構成される組成物とすることは、当業者が容易に行うことである。 また、「共沸混合物様」というのは、単に組成物の性質を示しているだけに過ぎないものである。」(特許異議申立書17頁3-12行)と主張する。 しかしながら、上述のとおり、甲1には、水及びZ-HFOから実質的に構成される組成物が記載されていないし、甲1発明の攪拌混合物を、水及びZ-HFOから実質的に構成される組成物とすることが記載されているともいえない。加えて、水及びZ-HFOから実質的に構成される組成物であっても、その組成について、水とZ-HFOが、それぞれ、「約10重量%乃至約40重量%」及び「約60重量%乃至約90重量%」を満足しない場合には、「共沸混合物様の」という物性を備えていないと認められる。 したがって、申立人の主張は、採用することができない。 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないので、異議申立理由によって、請求項1に係る本件特許を取り消すことはできない。 ウ 請求項2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明1を引用し、さらに、「約15重量%乃至約35重量%の水及び約65重量%乃至約85重量%のZ-HFO-1336mzzmから実質的に構成される」と特定されているものであるところ、上記「イ」に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものであるから、本件訂正発明2も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 したがって、異議申立理由によって、請求項2に係る本件特許を取り消すことはできない。 エ 請求項3について 本件訂正発明3は、本件訂正発明1を引用するとともに、「請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの共発泡剤を含む発泡剤」と特定されているものであるところ、上記「イ」に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものであるから、本件訂正発明3も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 したがって、異議申立理由によって、請求項3に係る本件特許を取り消すことはできない。 エ 請求項7?10について 本件訂正発明7は、本件訂正発明1を引用するとともに、「請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの潤滑剤を含む組成物」と特定するものであり、本件訂正発明8は、本件訂正発明7を引用するとともに、「請求項7に記載の組成物を含む冷却システム」と特定するものであり、本件訂正発明9は、本件訂正発明1を引用するとともに、「請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び噴射剤を含む噴霧可能な組成物」と特定するものであり、本件訂正発明10は、本件訂正発明1を引用するとともに、「請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの共溶媒を含む溶媒組成物」と特定するものであるから、いずれも、直接又は間接的に本件訂正発明1を引用する発明であるところ、上記「イ」に説示したとおり、本件訂正発明1は、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものであるから、本件訂正発明7?10も、本件訂正発明1と同様の理由により、甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 したがって、異議申立理由によって、請求項7?10に係る本件特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、異議申立理由のうち、請求項4?6に係る特許に対するものは、その対象となる請求項が存在しないものであるから、却下すべきものである。 また、異議申立理由のうち、請求項1?3、7?10に係る特許に対するものによっては、本件請求項1?3、7?10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?3、7?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 約10重量%乃至約40重量%の水及び約60重量%乃至約90重量%のシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzzm)から実質的に構成される、共沸混合物様の組成物。 【請求項2】 約15重量%乃至約35重量%の水及び約65重量%乃至約85重量%のZ-HFO-1336mzzmから実質的に構成される、請求項1に記載の共沸混合物様の組成物。 【請求項3】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの共発泡剤を含む発泡剤。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの潤滑剤を含む組成物。 【請求項8】 請求項7に記載の組成物を含む冷却システム。 【請求項9】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び噴射剤を含む噴霧可能な組成物。 【請求項10】 請求項1に記載の共沸混合物様の組成物及び少なくとも1つの共溶媒を含む溶媒組成物。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-02-13 |
出願番号 | 特願2017-26948(P2017-26948) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C09K)
P 1 651・ 113- YAA (C09K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 井上 恵理 |
特許庁審判長 |
川端 修 |
特許庁審判官 |
日比野 隆治 蔵野 雅昭 |
登録日 | 2018-01-05 |
登録番号 | 特許第6266147号(P6266147) |
権利者 | ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド |
発明の名称 | シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの共沸混合物様の組成物 |
代理人 | 鈴木 雄太 |
代理人 | 松田 豊治 |
代理人 | 中西 基晴 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 中西 基晴 |
代理人 | 山本 修 |
代理人 | 鈴木 雄太 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 松田 豊治 |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 宮前 徹 |
代理人 | 小野 新次郎 |