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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1350624
異議申立番号 異議2018-700008  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-05 
確定日 2019-02-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6155601号発明「包装材料及び包装容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6155601号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6155601号の請求項1?5に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
特許第6155601号(以下「本件特許」という。)の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成24年11月9日に特許出願され、平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ(平成29年7月5日特許掲載公報発行)、その後、その特許について、平成30年1月5日に特許異議申立人水野幸彦(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成30年3月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年5月28日に特許権者より意見書が提出され、平成30年6月13日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成30年8月8日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)がされ、平成30年10月12日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1?3からなるものである。それぞれの訂正事項について、訂正箇所に下線を付して示すと次のとおりである。

ア.訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「製袋して容器とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて基材層と遮光印刷層とシーラント層とを含む包装材料であって、・・・」とあるのを、
「製袋して容器とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて基材層と遮光印刷層とシーラント層とを含む包装材料であって、
前記基材層は、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、前記基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層と、を含み、・・・」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2?5についても、同様に訂正する。

イ.訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「・・・前記遮光印刷層は、容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とがこの順序で積層されて構成されている・・・」とあるのを、
「・・・前記遮光印刷層は、容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とが、前記基材層の容器内方側となる面にこの順序で積層されて構成されている・・・」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2?5についても、同様に訂正する。

ウ.訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2及び3に、「包袋材料。」とあるのを、「包装材料。」に訂正する。

(2)一群の請求項
本件訂正前の請求項1及び同請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?5は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1?3による訂正は当該一群の請求項1?5に対してなされたものである。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「基材層」について、「熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、前記基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層と、を含」むと限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0021】の「基材層20は、図1に示すように、基材22と、基材22の容器内方側となる面に積層された、絵柄を含む絵柄層21と、を含んでいる。」との記載、及び、同段落【0022】の「このような基材22としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ナイロン(Ny)などの熱可塑性樹脂フィルムの一軸ないし二軸延伸フィルムを好適に用いることができる。」との記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、請求項1を引用する請求項2?5についての訂正も同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

イ.訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1における「遮光印刷層」について、2層の白ベタ層と無彩色層とが「前記基材層の容器内方側となる面に」この順序で積層されて構成されていると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0021】の「基材層20は、図1に示すように、基材22と、基材22の容器内方側となる面に積層された、絵柄を含む絵柄層21と、を含んでいる。」との記載、及び、同段落【0103】の「基材として、厚み12μmからなるポリエチレンテレフタレート(PET)製の基材上に、絵柄層、白ベタ層及び無彩色層を、ベタ印刷によって、順に形成した。」との記載からみて、新規事項を追加するものではなく、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、請求項1を引用する請求項2?5についての訂正も同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

ウ.訂正事項3
本件特許の願書に最初に添付した明細書の段落【0001】には「本発明は、・・・包装材料に関する。」とあり、請求項1にも「包装材料」と記載されている一方、当該明細書には「包袋材料」について記載されていない。
そのため、請求項2及び3で「包袋材料」と記載しているのは誤記であり、これを「包装材料」とする訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項括弧書き及び第6項の規定に適合する。

(4)小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求が認められたことにより、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件発明1?5」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
製袋して容器とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて基材層と遮光印刷層とシーラント層とを含む包装材料であって、
前記基材層は、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、前記基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層と、を含み、
前記遮光印刷層は、容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とが、前記基材層の容器内方側となる面にこの順序で積層されて構成されている
ことを特徴とする包装材料。
【請求項2】
前記遮光印刷層と前記シーラント層との間に、少なくとも1層のバリア層を含むことを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記バリア層が無機酸化物の蒸着膜を含むことを特徴とする請求項2に記載の包装材料。
【請求項4】
前記シーラント層が、単層もしくは多層で有り、前記シーラント層の厚みが40μm以上200μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の包装材料を用いて作製されたことを特徴とする包装容器。

(2)取消理由の概要
当審において、本件発明の特許に対して、平成30年6月13日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

理由1 本件発明1、4、5は、本件特許の出願前に頒布された下記刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、本件発明1、4、5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
理由2 本件発明1?5は、本件特許の出願前に頒布された下記刊行物1に記載された発明、及び本件特許の出願前に頒布された刊行物2?7の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明1?5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

[刊行物一覧]
刊行物1:特開平8-53165号公報
刊行物2:特開平7-286263号公報
刊行物3:特開平9-66578号公報
刊行物4:特開平11-240580号公報
刊行物5:特開2005-239231号公報
刊行物6:特開平10-249989号公報
刊行物7:特開2010-131992号公報
刊行物1?7は、各々、特許異議申立書に添付された甲第1?7号証である。

(3)取消理由についての判断
ア.刊行物1に記載された発明及び刊行物2?7に記載された事項
(ア)刊行物1について
刊行物1には、図面と共に以下の記載がある。
a.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、飲食料品、液体洗剤等の各種液体製品を褪色等の光劣化させずに保存することができる液体用包装容器に関する。」

b.「【0004】また、アルミ層等の金属層を有さずに光遮断性を有する液体用包装容器として、実開平5-5445号公報に、紙/着色層/紙の光遮断性積層構造を有する液体用紙容器が提案されているが、・・・」

c.「【0008】尚、本発明の液体用包装容器により、包装保存することができる液体(内容物)としては、スープ、ジュース等の各種飲食料品;洗濯用若しくは台所用等の各種液体洗剤;柔軟仕上げ剤等の各種液体製品が挙げられる。
【0009】
【作用】本発明の液体用包装容器は、グレーインキ層を設けた着色層が内容物の光劣化を起こす波長の光を吸収するので、内容物にこのような波長の光が到達せず、保存中に内容物の光劣化を防止する。」

d.「【0012】本実施例の液体用包装容器であるスタンディングパウチは、図2?図4に示すように、樹脂シート層21と、該樹脂シート層21の外面に設けられた着色層22と、該着色層22の外面に設けられた表面被覆層23とを具備するシート状物20により、該表面被覆層23を表面に配して形成されてなり、上記着色層22がグレーインキ層22cを有する。
【0013】本実施例のスタンディングパウチについて更に詳述すると、図2及び図3に示すように、本実施例のスタンディングパウチは、2つの側面部1,1と下部に空間3を有する底面部2とからなり且つ起立可能で上方に行くに従って横断面の断面積が小さくなる立体形状を形成するように構成されている。
【0014】そして、上記スタンディングパウチは、それぞれ表面に印刷等を施すことができるシート状物(スタンディングパウチを構成するフィルム)20からなる、2つの上記側面部1,1と、それらの下端に2つ折にして挟まれた上記底面部2とからなっており、2つの上記側面部1,1がそれらの側縁で互いにシールされ,2つの上記側面部1,1と上記底面部2とが、それらの側縁及び下端縁でそれぞれシールされている。・・・」

e.「【0018】而して、本実施例のスタンディングパウチは、図4に示すように、容器の内面を形成する樹脂シート層21と、該樹脂シート層21の外面全面に設けられた着色層22と、該着色層22の外面全面に設けられた表面被覆層23とを具備するシート状物(本実施例においてはフィルムである)20により、該表面被覆層23を表面に配し且つ該樹脂シート層21が容器の内面(内容物Cと当接する面)となるように形成されている。また、上記着色層22は、その全面にグレーインキ層22cを有しており、色インキ層22a、白インキ層22b及び上記グレーインキ層22cの3層により形成されている。
【0019】上記樹脂シート層21を形成する材料としては、下記する樹脂等を挙げることができ、上記樹脂シート層21は、下記する樹脂の単独若しくは混合物からなる、1層若しくは2層以上の積層体により形成することができる。LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、CPP(無延伸ポリプロピレン)等。
【0020】また、上記樹脂シート層21の膜厚は、50?150μmとするのが好ましい。
【0021】本発明において、上記色インキ層22aを形成する色インキとしては、グラビアインキ、オフセットインキ等が挙げられ、該色インキの色は特に制限されないが、白等とすることができる。また、上記白インキ層22bを形成する白インキ層としては、白色のグラビアインキ、オフセットインキ等が挙げられる。
【0022】また、上記グレーインキ層22cを形成する、グレーインキとしては、グレーのグラビアインキ、オフセットインキ等が挙げられる。また、上記グレーインキ層22cの色相は、5B?5Pであり、彩度は、0であり、明度は、6?7である。」

f.「【0024】また、上記表面被覆層23を形成する材料としては、下記する材料等を好ましく挙げることができ、上記表面被覆層23は、下記する材料の単独若しくは混合物からなる、1層若しくは2層以上の積層体により形成することができる。ポリエチレンテレフタレート(PET)、延伸ナイロン(ONY)、延伸ポリプロピレン(OPP)等。」

g.「【0030】尚、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、例えば、上記着色層は、ブラックインキ、シルバーインキを塗布して構成してもよく、また上記樹脂シート層、上記着色層及び上記表面被覆層の他に、バリアー層、耐ピンホール層、引き裂き誘導層等を設けることもできる。・・・」

h.「【0032】次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
〔実施例1〕OPP20μm/LDDPE130μmにより樹脂シート層21を作成した後、該樹脂シート層21上に、グレーグラビアインキ3μm、白グラビアインキ3μm、白色のグラビアインキ3μmを順次塗布し、グレーインキ層22c、白インキ層22b及び色インキ層22aからなる着色層22を形成した。次いで、該着色層22上に、ONY15μmを被覆して、表面被覆層23を形成し、図4に示す構成のシート状物20を得た。得られたシート状物20を用いて、図1?3に示す本発明の液体用包装容器としてのスタンディングパウチを作成した。この際の上記シート状物20における着色層22のインキ構成は、白/白/グレー(グレー濃度2%)であり、該シート状物の200?800nmにおける光線透過率は13.1%であった。尚、上記グレーインキ層の色相、彩度及び明度は、それぞれ上述した範囲内であった。
【0033】また、比較対称として、上記グレーインキ層22cを有しない以外は上記シート状物20と同じ構成のフィルム状物(インキ構成;白/白)を作成し、該フィルム状物における200?800nmの光線透過率を測定したところ、27.5%であり、従来のフィルム状物に比して、本発明の液体用包装容器に用いられる上記フィルム状物20が良好な遮光性を有していることが判った。
【0034】また、グレー濃度を2%から3%に上げたフィルム状物20を作成し、このフィルム状物20の200?800nmにおける光線透過率を測定したところ、13.1%から11.1%に向上した。即ち、グレー濃度を調節することで遮光性をより向上させ得ることも判った。」

i.「【図4】



上記e及びiの記載より、引用発明1は、「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器」の外方となる側から「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器」の内方となる側に向けて「表面被覆層23」と「着色層22」と「樹脂シート層21」を備えるものと理解できる。
また、上記h及びiの記載より、引用発明1は、「着色層22」が、「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器」の内方となる側から「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器」の外方となる側に向けて「グレーインキ層22c」と「白インキ層22b」と「色インキ層22a」とが、「樹脂シート層21」の「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器」の外方となる面にこの順序で、順次塗布により積層されて構成されるものと理解できる。

したがって、刊行物1には、以下の引用発明1及び2が記載されている。
・引用発明1
「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器の外方となる側から前記容器の内方となる側に向けて、表面被覆層23と着色層22と樹脂シート層21とを備えるシート状物20であって、
表面被覆層23は、延伸ナイロン(ONY)により形成され、
着色層22は、前記容器内方となる側から前記容器外方となる側に向けて塗布してなるグレーインキ層22cと白インキ層22bと色インキ層22aとが、樹脂シート層21の前記容器外方となる面にこの順序で、順次塗布により積層されて構成されており、
バリアー層を設けており、
樹脂シート層21が、OPP20μm/LDDPE130μmにより形成されたシート状物20。」

・引用発明2
「上記引用発明1のシート状物を用いて作成した液体用包装容器。」

(イ)刊行物2について
刊行物2には、以下の記載がある。
a.「【請求項2】少なくとも遮光層とバリアー層とを有する包装材であって、前記遮光層は樹脂フィルム上に白インキ層、黄インキ層および赤インキ層が積層されたものであり、前記バリアー層は樹脂フィルム上に無機蒸着膜が形成されたものであることを特徴とする包装材。
【請求項3】前記無機蒸着膜がケイ素酸化物(SiOx)蒸着膜である請求項2記載の包装材。」

b.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は包装材に関し、さらに詳しくは優れた遮光性を備えるとともに廃棄性に優れた包装材に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば油を用いた軽スナック等の食品を包装するための包装材においては、紫外、可視、近赤外の波長域の光線による油の酸化劣化により内容物の品質が低下するのを防止するために、バリアー層が設けられている。」

c.「【0010】
【作用】樹脂フィルム上に白インキ層、黄インキ層および赤インキ層が積層されて形成されている遮光性フィルムは、光、特に紫外線を有効に遮断する作用乃至効果を奏する。そして、この遮光性フィルムを用いた遮光層と、樹脂フィルム上に無機蒸着膜を形成したバリアー層により優れたバリアー性が発現され、かつ、このバリアー層はアルミニウム(Al)蒸着膜を含まないため、包装材の廃棄性を損なうことがない。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の包装材の一例を示す概略断面図である。図1において、この包装材1は遮光層2と、バリアー層5と、ヒートシール層8とを有する。」

(ウ)刊行物3について
刊行物3には、以下の記載がある。
a.「【請求項3】少なくとも基材フィルム層とバリア-層とヒ-トシ-ル層とからなる包装用材料において、白インキ層と金赤インキ層との二層からなる遮光層を含むことを特徴とする包装用材料。」

b.「【0006】次に、本発明にかかる包装用材料おいて、各層を構成する素材について説明すると、まず、基材フィルム層を構成する素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアクリルニトリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、その他等の樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができる。而して、本発明においては、これらの樹脂のフィルムないしシ-トは、未延伸のもの、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸されたもの等のいずれのものでも使用することができる。・・・」

c.「【0015】
【実施例】・・・次に、厚さ50nmの酸化珪素(SiOx)の蒸着膜を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルムをバリア-層を形成する樹脂フィルムとして使用し、まず、上記の遮光層を形成した延伸ポリプロピレンフィルムの遮光層面にポリエチレンイミン系のアンカ-コ-ティング剤を塗布しながら、オゾン処理を伴う低密度ポリエチレンを押し出し、上記の酸化珪素の蒸着膜を有するポリエチレンテレフタレ-トフィルムの蒸着面と対向させてラミネ-トした。次に、上記のポリエチレンテレフタレ-トフィルム面に低密度ポリエチレンを押し出し、厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルムとラミネ-トさせて、ヒ-トシ-ル層を有する下記の構成からなる包装用材料を製造した。厚さ20μmの延伸ポリプロピレンフィルム/遮光層/低密度ポリエチレン層/ポリエチレンテレフタレ-トフィルム・酸化珪素の蒸着膜/低密度ポリエチレン層/厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフィルム・・・」

(エ)刊行物4について
刊行物4には、以下の記載がある。
a.「【0015】また、シート状物20には、上記の着色層、表面被覆層の他にも、バリアー層、耐ピンホール層、引き裂き誘導層等を形成することができる。」

(オ)刊行物5について
刊行物5には、以下の記載がある。
a.「【0003】
一例を挙げると、図示はしないが、通常シーラント層上にアルミ箔のラミネート、或いは真空蒸着によりアルミの薄膜を形成し、さらに、絵柄層の発色を容易にするための白色インキ層を印刷により形成し、この上にポリエチレン等の樹脂フィルムを積層した包装材が知られている。・・・」

b.「【0009】
本発明は、一乃至二層の樹脂フィルムを積層してなる包装材の内側を形成するシーラント層(11)上に、隠蔽インキ層(12)と第1白インキ層(14)と第2白インキ層(15)を重ね刷りし、この層上に絵柄層(16)を形成し、この絵柄層上に包装材の外側を形成する透明樹脂フィルム(17)を設けた高隠蔽性を有する軟包装材において、前記隠蔽インキ層を形成する印刷インキが、白色インキ89?95%、黄色インキ3?7%、墨色インキ2?4%の配合比による隠蔽インキ層(12)を設けたことを特徴とする高隠蔽性を有する軟包装材である。・・・」

c.「【0012】
図に基づき発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は、本発明に係る高隠蔽性を有する軟包装材を示す断面説明図である。本発明の積層体状の軟包装材(10)は、図に示すように、シーラント層(11)、隠蔽インキ層(12)、第1白インキ層(14)、第2白インキ層(15)、絵柄層(16)、透明樹脂フィルム(17)により構成されている。
【0013】
本発明の軟包装材は、一乃至二層の樹脂フィルムを積層して包装材の内側を形成するシーラント層(11)上に、隠蔽インキ層(12)と第1白インキ層(14)と第2白インキ層(15)を重ね刷りし、この層上に絵柄層(16)を形成し、この絵柄層上に包装材の外側を形成する透明樹脂フィルム(17)を設けた高隠蔽性を有する軟包装材であり、前記隠蔽インキ層を形成する印刷インキが、白色インキ89?95%、黄色インキ3?7%、墨色インキ2?4%の配合比による隠蔽インキ層を設けたことを特徴とする高隠蔽性を有する軟包装材である。」

d.「【0015】
本発明の軟包装材は、遮光性、隠蔽性を印刷インキで保持するため配合が白色インキ(NEWファイン631白、東洋インキ製造製)89?95%、黄色インキ(NEWファイン235黄、東洋インキ製造製)3?7%、墨色インキ(NEWファイン92墨、東洋インキ製造製)2?4%の配合比により黄みをおびたグレーを印刷したものである。この理想的な配合比は、白色インキ92%、黄色インキ5%、墨色インキ3%である。墨色インキの配合比が多くなると隠蔽性は上がるが、軟包装材全体が黒ずんでしまい、墨色インキの配合比が下がると遮光性が低下する。また、第1、第2白インキを重ねて印刷することで隠蔽インキ層が表面から不可視状態となり、白濃度のある印刷物となる。」

e.「【0024】
さらに、シーラント層(11)と透明樹脂フィルム(17)との間に形成される絵柄層(16)、第1白インキ層(14)、第2白インキ層(15)、隠蔽インキ層(12)の形成方法は通常用いられる印刷方法である、グラビア印刷、オフセット印刷等が使用することができるが、膜厚等を調整することができ、ベタ印刷に効果がでるグラビア印刷方法を採用することが好ましい。」

f.「【図1】



上記d及びeの記載より、刊行物5には、「遮光性を高めるべくインクを対象物に塗布するにあたり、ベタ印刷を用いる」ということ(以下「刊行物5記載事項1という」)が記載されているといえる。
また、上記b、c及びfの記載より、刊行物5には、「包装材の外側を形成する透明樹脂フィルム(17)と、透明樹脂フィルム(17)の包装材内側となる面に形成された絵柄層(16)」(以下「刊行物5記載事項2という」)が記載されているといえる。

(カ)刊行物6について
刊行物6には、以下の記載がある。
a.「【0007】本発明にかかる透明バリアフィルムAは、図1に示すように、ポリプロピレン系樹脂とヒ-トシ-ル性樹脂とを使用し、これらを共押し出ししてポリプロピレン系樹脂層1とヒ-シ-ル性樹脂層2とからなるポリプロピレン系樹脂をベ-スとした共押し出し多層シ-ラントフィルム3を製造し、その共押し出し多層シ-ラントフィルム3の一方の面に、無機酸化物の薄膜からなるバリア層4を設けた構成からなるものである。上記において、図示しないが、無機酸化物の薄膜からなるバリア層は、共押し出し多層シ-ラントフィルムのいずれかの一方の面、あるいはその両面に設けることができるが、通常、共押し出し多層シ-ラントフィルムを構成するポリプロピレン系樹脂層の面に設けることが望ましい。すなわち、本発明において、共押し出し多層シ-ラントフィルムを構成するポリプロピレン系樹脂層面に無機酸化物の薄膜からなるバリア層を設けることにより、例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム/無機酸化物の薄膜からなるバリア層/接着剤層/無延伸ポリプロピレン樹脂層からなる積層材、あるいは、2軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム/無機酸化物の薄膜からなるバリア層/接着剤層/直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層からなる積層材等の従来の積層材と比べて、例えば、接着剤層等の層構成の層数を減らすことができるという利点があり、そのコスト等を削減することができるという効果を有するものである。而して、上記の例示は、本発明にかかる透明バリアフィルムの一例を例示したものであり、これに限定されるものではなく、例えば、無機酸化物の薄膜からなるバリア層は、無機酸化物の薄膜の一層のみならず2層以上を積層して構成してもよく、また、無機酸化物の薄膜は、1種のみならず2種以上の無機酸化物から構成してもよいものである。」

b.「【0018】次にまた、本発明において、基材フィルム層を構成する基材フィルムとしては、例えば、包装用容器を構成する場合、基本素材となることから、機械的、物理的、化学的、その他等において優れた性質を有し、特に、強度を有して強靱であり、かつ耐熱性を有する樹脂のフィルムないしシ-トを使用することができ、具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカ-ボネ-ト系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタ-ル系樹脂、フッ素系樹脂、その他等の強靱な樹脂のフィルムないしシ-ト、その他等を使用することができる。而して、上記の樹脂のフィルムないしシ-トとしては、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルム等のいずれのものでも使用することができる。・・・なお、本発明においては、上記のような基材フィルムには、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄を通常の印刷法で表刷り印刷あるいは裏刷り印刷等が施されていてもよい。」

(キ)刊行物7の記載事項
刊行物7には、以下の記載がある。
a.「【0008】
本発明者らは、上記問題に鑑み、鋭意研究を行った結果、ポリエステル系樹脂層(A層)及び特定のポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けることにより、上記課題が解決されたバリア性多層延伸フィルムが得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づき、完成されたものである。すなわち、本発明は、以下のバリア性多層延伸フィルムに係る。
【0009】
項1.ポリエステル系樹脂層(A層)及びポリアミド系樹脂層(B層)の少なくとも2層を有する多層積層体を二軸延伸することにより得られる二軸延伸多層フィルムの少なくとも片面に蒸着層(C層)を設けてなるバリア性多層延伸フィルムであって、
(A)層が、結晶性ポリエステルを含有し、
(B)層が、脂肪族ポリアミドを70?99重量%、芳香族ポリアミドを1?30重量%含有し、
(C)層が無機物を含有する
ことを特徴とする、バリア性多層延伸フィルム。」

イ.理由1(特許法第29条第1項第3号)について
(ア)本件発明1について
本件発明1と引用発明1とを対比すると、以下のとおりとなる。

引用発明1の「飲食料品、液体洗剤等の液体用包装容器」であるスタンディングパウチ等は、容器の一種であるから、本件発明1の「容器」に相当する。
また、その機能から見て、引用発明1の「樹脂シート層21」、「着色層22」、「表面被覆層23」は、それぞれ、本件発明1の「シーラント層」、「遮光印刷層」、「基材層」に、相当する。
さらに、引用発明1の「表面被覆層23と着色層22と樹脂シート層21とを備えるシート状物20」は、上記ア.(ア)d.の「【0014】そして、上記スタンディングパウチは、それぞれ表面に印刷等を施すことができるシート状物(スタンディングパウチを構成するフィルム)20からなる、2つの上記側面部1,1と、それらの下端に2つ折にして挟まれた上記底面部2とからなっており、2つの上記側面部1,1がそれらの側縁で互いにシールされ,2つの上記側面部1,1と上記底面部2とが、それらの側縁及び下端縁でそれぞれシールされている。・・・」との記載からすると、本件発明1の「製袋して容器」とする「包装材料」に相当する。

そして、上記ア.(ア)b.の「【0004】・・・紙/着色層/紙の光遮断性積層構造を有する・・・」(従来技術に関する記載)、上記ア.(ア)c.の「【0009】・・・グレーインキ層を設けた着色層が内容物の光劣化を起こす波長の光を吸収するので、内容物にこのような波長の光が到達せず、保存中に内容物の光劣化を防止する。」、及び、上記ア.(ア)h.の「【0034】また、グレー濃度を2%から3%に上げたフィルム状物20を作成し、このフィルム状物20の200?800nmにおける光線透過率を測定したところ、13.1%から11.1%に向上した。即ち、グレー濃度を調節することで遮光性をより向上させ得ることも判った。」といった記載からすれば、引用発明1の「グレーインキ層22c」が遮光性を有するものであることは明らかである。また、上記ア.(ア)e.に「【0022】・・・上記グレーインキ層22cの色相は、5B?5Pであり、彩度は、0であり、明度は、6?7である。」と記載されているように、引用発明1の「グレーインキ層22c」は「無彩色」であり、このようなグレーインキは、白色系顔料を含むインキと黒色系原料を含むインキとを混合することで得ることが一般的である。
また、上記ア.(ア)h.の「【0033】また、比較対称として、上記グレーインキ層22cを有しない以外は上記シート状物20と同じ構成のフィルム状物(インキ構成;白/白)を作成し、該フィルム状物における200?800nmの光線透過率を測定したところ、27.5%であり、従来のフィルム状物に比して、本発明の液体用包装容器に用いられる上記フィルム状物20が良好な遮光性を有していることが判った。」という記載からは、グレーインキ層22cを有しない「白/白」のインキ構成のフィルム状物も遮光性を有するということが理解できる。そうすると、引用発明1の「色インキ層22a」及び「白インキ層22b」も遮光性を有するものであると推認される。
さらに、引用発明1の「グレーインキ層22cと白インキ層22bと色インキ層22a」は「順次塗布により積層」されているものであり、それらが遮光性を高めるために設けられていることからすれば、隙間なく塗布されることが当然の設計的事項である。このことは、遮光性を高めるべくインクを対象物に塗布するにあたり、ベタ印刷を用いることが、例えば、上記ア.(オ)に示した刊行物5記載事項1のほか、国際公開第2003/086895号(【背景技術】)、特開2003-144110号公報(【0003】)にも開示されているように従来周知の技術であることからも理解できる。しかも、本件発明1の「ベタ印刷」について、本件特許明細書の段落【0094】には、「・・・ベタ印刷では、インキを隙間なく塗布することができる・・・」と記載されている。
そうすると、引用発明1の「グレーインキ層22c」、「白インキ層22b及び色インキ層22a」は、それぞれ、本件発明1の「白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層」、「2層の白ベタ層」に相当すると解するのが妥当である。

よって、本件発明1と引用発明1は、以下の構成において一致する。
「製袋して容器とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて基材層と遮光印刷層とシーラント層とを含む包装材料であって、
前記遮光印刷層は、ベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とが、積層されて構成されている、
包装材料。」

そして、本件発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
・相違点1
基材層に関して、本件発明1は「熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、前記基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層と、を含」むものであるのに対し、甲1発明は「延伸ナイロン(ONY)により形成され」るものであり、絵柄層を有していない点。
・相違点2
遮光印刷層を積層する工程について、本件発明1は、「容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とが、前記基材層の容器内方側となる面にこの順序で積層されて」いるのに対して、引用発明1は、「前記容器内方となる側から前記容器外方となる側に向けて塗布してなるグレーインキ層22cと白インキ層22bと色インキ層22aとが、樹脂シート層21の前記容器外方となる面にこの順序で、順次塗布により積層されて」いる点。

したがって、本件発明1と引用発明1は、少なくとも上記相違点1で相違するから、本件発明1は引用発明1であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号には該当しない。

(イ)本件発明4について
本件発明4は、直接あるいは間接的に本件発明1を引用するものであって、本件発明1に特定事項を付加し、技術的に限定されたものである。
上記(ア)に示したように、本件発明1は引用発明1であるとはいえないから、本件発明1の事項を全て包含し、さらに技術的に限定されたものである本件発明4も、引用発明1であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号には該当しない。

(ウ)本件発明5について
引用発明1は、液体用包装容器を形成するシート状物20に関するものであり、引用発明2は、引用発明1のシート状物を用いて作成した液体用包装容器である。
また、本件発明5は、本件発明1、4である包装材料を用いて作製された包装容器である。
よって、上記(ア)及び(イ)の本件発明1、4と引用発明1との対比を踏まえると、本件発明5と引用発明2は、上記相違点1及び2において実質的に相違する。
したがって、本件発明5は、引用発明2であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号には該当しない。

(エ)小括
以上のとおり、本件発明1、4、5は特許法第29条第1項第3号には該当しない。

ウ.理由2(特許法第29条第2項)について
(ア)本件発明1について
上記イ.(ア)に示したように、本件発明1と引用発明1は、上記相違点1及び2において相違する。

そこで、上記相違点1について検討する。
熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを基材層とすることは、上記ア.(ウ)b.に示した刊行物3の記載事項や、上記ア.(カ)b.に示した刊行物6の記載事項に例示されるとおり、従来周知の技術である。
そして、基材の材料は、作成後の容器に求められる性能により選択されるものであるから、引用発明1において、表面被覆層23の延伸ナイロン(ONY)に換えて、周知技術のように、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを素材として用いるようにすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。そして、引用発明1が想定している、スープ、ジュース等の各種飲食料品、洗濯用若しくは台所用等の各種液体洗剤、柔軟仕上げ剤等の各種液体製品などの液体用途において、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを用いることを阻害する要因もみあたらない。

また、引用発明1は、上記ア.(ア)c.に示したように、スープ、ジュース等の各種飲食料品、洗濯用若しくは台所用等の各種液体洗剤、柔軟仕上げ剤等の各種液体製品などの液体用の包装容器を構成するものであるから、その性質上、無彩色ではなく絵柄を表示可能に構成したいという技術課題を当然有しているものといえる。
そして、基材層によって保護される内方に印刷された絵柄層を設けることは、上記ア.(オ)に示した刊行物5記載事項2や、上記ア.(カ)b.(特に「裏刷り印刷」との記載を参照されたい。)に示した刊行物6の記載事項に例示されるとおり、従来周知の技術である。
よって、引用発明1において、周知技術のように、表面被覆層23の内側に絵柄層を設け、相違点1に係る構成を想到することは、当業者が適宜容易になし得た設計的事項である。

続いて、上記相違点2について検討する。
本件発明1と引用発明1とは、インキを塗布して積層する工程の順序が逆となっているが、本件発明1と引用発明1のいずれも、積層した後の物としての包装材料としては、容器外方となる側から、容器内方となる側に向けて「2層の白ベタ層」と「無彩色層」とがこの順序で存在していることでは変わりがないものである。そして、積層する工程の順序が逆であることにより各層の形態や性状が変わるとも本件特許明細書において記載されておらず、それらが本件発明1と引用発明1とで異なるともいえない。
よって、本件発明1と引用発明1とは、インキを塗布して積層する工程の順序が逆とはいえ、積層した後の物としての包装材料としては何ら変わるところがないから、上記相違点2は実質的なものではない。

したがって、本件発明1は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(イ)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるところ、本件発明2、3と、引用発明1とを対比すると、引用発明1の「バリアー層」は、本件発明2、3の「バリア層」に相当する。
そうすると、本件発明2、3と引用発明1とを対比すると、上記相違点1及び2に加えて、以下の点で相違し、その余の点においては一致する。

・相違点3
本件発明2、3が「遮光印刷層とシーラント層との間に、少なくとも1層のバリア層を含む」もの、及び「バリア層が無機酸化物の蒸着膜を含む」ものであるのに対し、引用発明1は「バリアー層」を有するものの、その配置、その材質、構造が不明である点。

上記相違点1及び2については、上記(ア)で検討したとおりである。

上記相違点3について検討する。
刊行物2?4、6、7にはバリア層に関する技術が記載されており、特に、刊行物2には、遮光層2と、無機蒸着膜を形成したバリアー層5と、ヒートシール層8とが、この順番で配置される点が記載されており、刊行物3には、遮光層、酸化珪素の蒸着膜、低密度ポリエチレン層とが、この順番で配置される点が記載され、刊行物2の「遮光層2」、刊行物3の「遮光層」は、本件発明2、3の「遮光印刷層」に相当する。以下同様に「無機蒸着膜を形成したバリアー層5」、「酸化珪素の蒸着膜」は「バリア層が無機酸化物の蒸着膜を含むこと」に、「ヒートシール層8」、「低密度ポリエチレン層」は「シーラント層」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1も刊行物2、3の記載事項も、共に、容器を形成する包装体に係るものである点で共通するから、引用発明1の「バリアー層」について、刊行物2、3の記載事項を参酌し、本件発明2、3のように、遮光印刷層とシーラント層との間にバリア層を設けたり、バリア層に無機酸化物の蒸着膜を含むようにすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

したがって、本件発明2、3は、引用発明1、刊行物2?4、6及び7記載事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(ウ)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1の「シーラント層」について、単層もしくは多層を有するものであり、その厚みを40μm以上200μm以下の範囲のものとすることを特定するものである。
一方、引用発明1の「樹脂シート層21」は、「OPP20μm/LDDPE130μmにより形成された」という点からして、多層であり、当該多層の厚みは150μmであるから、本件発明4の上記特定事項を備えるものである。
そうすると、本件発明4を引用発明1を対比すると、上記相違点1?3で相違し、その余の点においては一致する。
そして、上記相違点1及び2については上記(ア)で、上記相違点3については上記(イ)で、それぞれ検討したとおりである。

したがって、本件発明4は、引用発明1、刊行物2?4、6及び7の記載事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(エ)本件発明5について
引用発明1は、液体用包装容器を形成するシート状物20に関するものであり、引用発明2は、引用発明1のシート状物を用いて作成した液体用包装容器である。
また、本件発明5は、本件発明1?4のいずれかである包装材料を用いて作製された包装容器である。
そうすると、本件発明5を引用発明2を対比すると、上記相違点1?3で相違し、その余の点においては一致する。
そして、上記相違点1及び2については上記(ア)で、上記相違点3については上記(イ)で、それぞれ検討したとおりである。

したがって、本件発明5は、引用発明2、刊行物2?4、6及び7の記載事項、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(オ)小括
以上のとおり、本件発明1?5は、引用発明1、2、刊行物2?7の記載事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

エ.意見書における特許権者の主張について
(ア)特許権者は、平成30年8月8日付け意見書において、「・・・このように、刊行物1には、着色層22を構成する色インキ層22a、白インキ層22b及びグレーインキ層22cのうちグレーインキ層22cが光遮断性を有する旨の記載はあるが、しかしながら、色インキ層22a及び白インキ層22bが光遮断性を有する旨の記載はなく、そのような旨を示唆する記載もない。・・・」(同意見書 第7ページ第19行?第22行)と主張している。
しかし、上記イ.(ア)に示したように、上記ア.(ア)h.の「【0033】また、比較対称として、上記グレーインキ層22cを有しない以外は上記シート状物20と同じ構成のフィルム状物(インキ構成;白/白)を作成し、該フィルム状物における200?800nmの光線透過率を測定したところ、27.5%であり、従来のフィルム状物に比して、本発明の液体用包装容器に用いられる上記フィルム状物20が良好な遮光性を有していることが判った。」という記載から、グレーインキ層22cを有しない「白/白」のインキ構成のフィルム状物も遮光性を有するということが理解できる。そうすると、引用発明1の「色インキ層22a」及び「白インキ層22b」も遮光性を有するものであると推認される。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。

(イ)特許権者は、同意見書において、「・・・上記特徴(a)及び(b)のとおり、本件訂正発明1は、基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層を備え、この絵柄層に2層の白ベタ層と無彩色層とが積層されていることを特徴としている。本件訂正発明1によれば、このような特徴に基づいて、絵柄層の背景として観察される遮光印刷層の白味を増大させ、絵柄層の背景に明るさが醸し出されると共に需要者に清潔感を感じさせることができる。・・・このように、引用発明1において、色インキ層22a、白インキ層22b及び上記グレーインキ層22cの3層により形成された着色層22の外面全面には表面被覆層23が設けられている。また、刊行物1には、着色層22と表面被覆層23との間に絵柄層を設ける旨の記載も示唆もない。このように、刊行物1は、本件訂正発明1の特徴(a)及び(b)を開示するものはなく、この点でも本件訂正発明1は、引用発明1と同一のものではないと考える。」(同意見書 第8ページ第6行?第26行)と主張している。
しかし、上記ウ.(ア)に示したように、引用発明1は、上記ア.(ア)c.に示したように、スープ、ジュース等の各種飲食料品、洗濯用若しくは台所用等の各種液体洗剤、柔軟仕上げ剤等の各種液体製品などの液体用の包装容器を構成するものであるから、その性質上、絵柄を表示可能に構成したいという技術課題を当然有するものといえる。
そして、基材層によって保護される内方に印刷される絵柄層を設けることは、上記ア.(オ)に示した刊行物5記載事項2や、上記ア.(カ)b.(特に「裏刷り印刷」との記載を参照されたい。)に示した刊行物6の記載事項に例示されるとおり、従来周知の技術であるから、引用発明1において、当該周知技術のように、表面被覆層23の内側に絵柄層を設けることは、当業者が適宜容易になし得た設計事項である。
また、上記ア.(オ)a.に示したとおり、白色インキ層が存在することによって絵柄層の発色を容易にするということは、従来周知の効果にすぎない。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。

(ウ)特許権者は、同意見書において、「<相違点1>「本件訂正発明1では、遮光印刷層が、容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とがこの順序で積層されて構成されているのに対し、引用発明1では、色インキ層22a、白インキ層22b及び上記グレーインキ層22cがベタ印刷である旨の記載が無い点。」(同意見書 第9ページ第4行?第9行)及び「・・・相違点1について、上述のように、刊行物1には、色インキ層22a及び白インキ層22bが遮光性を高めるものである旨の記載も示唆もない。従って、当業者が刊行物1に記載の色インキ層22a及び白インキ層22bをベタ印刷とする動機は存在しないと考える。このことから、引用発明1を基に当業者が相違点1の構成に相当することは容易ではないと考える。・・・」(同意見書 第9ページ第15行?第19行)とも主張している。
しかし、引用発明1の「色インキ層22a」及び「白インキ層22b」が遮光性を有するものであるということは、上記(ア)で述べたとおりである。
また、引用発明1の「グレーインキ層22cと白インキ層22bと色インキ層22a」は「順次塗布により積層」されているものであり、それらが遮光性を高めるために設けられていることからすれば、隙間なく塗布されることが当然の設計的事項である。このことは、遮光性を高めるべくインクを対象物に塗布するにあたり、ベタ印刷を用いることが、例えば、上記ア.(オ)に示した刊行物5記載事項1のほか、国際公開第2003/086895号(【背景技術】)、特開2003-144110号公報(【0003】)にも開示されているように従来周知の技術であることからも理解できる。しかも、本件発明1の「ベタ印刷」について、本件特許明細書の段落【0094】には、「・・・ベタ印刷では、インキを隙間なく塗布することができる・・・」と記載されている。そうすると、引用発明1の「グレーインキ層22c」、「白インキ層22b及び色インキ層22a」は、それぞれ、本件発明1の「白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層」、「2層の白ベタ層」に相当すると解するのが妥当である。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。

(エ)特許権者は、同意見書において、「<相違点2> 「本件訂正発明1では、基材層が、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層とを含み、この絵柄層に2層の白ベタ層と無彩色層とが積層されているが、引用発明1では、絵柄層が設けられていない点。」」(同意見書 第9ページ第10行?第14行)及び「・・・相違点2について、刊行物1の段落【0032】には、・・・すなわち、引用発明1においては、グレーインキ層22c、白インキ層22b及び色インキ層22aからなる着色層22が、シーラント層を構成する樹脂シート層21上に印刷されており、この点で本件訂正発明1と引用発明1は相違している。」(同意見書 第9ページ第20行?第10ページ第3行)と主張している。
しかし、本件発明1と引用発明1とは、インキを塗布して積層する工程の順序が逆となっているが、本件発明1と引用発明1のいずれも、積層した後の物としての包装材料としては、容器外方となる側から、容器内方となる側に向けて「2層の白ベタ層」と「無彩色層」とがこの順序で存在していることでは変わりがないものである。そして、積層する工程の順序が逆であることにより各層の形態や性状が変わるとも本件特許明細書において記載されておらず、それらが本件発明1と引用発明1とで異なるともいえない。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。

(オ)特許権者は、同意見書において、「なお、仮に引用発明1の樹脂シート層21ではなく表面被覆層23上に絵柄層を印刷した後、表面被覆層23を着色層22が印刷された樹脂シート層21と貼り合わせる場合、表面被覆層23上の絵柄層と樹脂シート層21上の着色層22との間に接着層が介在されることになる。この場合、着色層22は、絵柄層上に積層されたものではないので、本件訂正発明1の上述の特徴(b)は満たされない。また、「容器外方側から包装材料を視たとき、絵柄層の背景として観察される遮光印刷層の白味が増し、絵柄層の背景に明るさが醸し出されると共に需要者に清潔感を感じさせることができる。」という本件訂正発明1の効果も奏されてない。従って、本件訂正発明1は、引用発明1を基に当業者が容易に想到できたものではないと考える。」(同意見書 第10ページ第4行?第13行)と主張している。
しかし、本件の特許請求の範囲の請求項1には、「前記基材層は、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、前記基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層と、を含み、」と記載され、かつ、「前記遮光印刷層は、容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とが、前記基材層の容器内方側となる面にこの順序で積層されて構成されている」と記載されているところ、基材層に接着層が設けられることは何ら排除されておらず、「基材層の容器内方側となる面」が「絵柄層」であると限定して解釈することもできない。
そのため、本件発明1は、基材層の容器内方側となる面が接着層からなり、その接着層に白ベタ層及び無彩色層が積層されることも含み得るものとなっている。
よって、特許権者の上記主張は本件の特許請求の範囲の請求項1の記載に基づくものではなく、採用できない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?5に係る特許は、取消理由通知に記載した理由2によって、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製袋して容器とするときの容器外方となる側から容器内方となる側に向けて基材層と遮光印刷層とシーラント層とを含む包装材料であって、
前記基材層は、熱可塑性樹脂を含む一軸ないし二軸延伸フィルムを有する基材と、前記基材の容器内方側となる面に印刷された、絵柄を含む絵柄層と、を含み、
前記遮光印刷層は、容器外方となる側から容器内方となる側に向けてベタ印刷してなる2層の白ベタ層と白及び黒を混合してベタ印刷してなる無彩色層とが、前記基材層の容器内方側となる面にこの順序で積層されて構成されている
ことを特徴とする包装材料。
【請求項2】
前記遮光印刷層と前記シーラント層との間に、少なくとも1層のバリア層を含むことを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記バリア層が無機酸化物の蒸着膜を含むことを特徴とする請求項2に記載の包装材料。
【請求項4】
前記シーラント層が、単層もしくは多層で有り、前記シーラント層の厚みが40μm以上200μm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の包装材料を用いて作製されたことを特徴とする包装容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-12-28 
出願番号 特願2012-247765(P2012-247765)
審決分類 P 1 651・ 113- ZAA (B65D)
P 1 651・ 121- ZAA (B65D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 秋山 誠西 秀隆  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 井上 茂夫
竹下 晋司
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6155601号(P6155601)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 包装材料及び包装容器  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  
代理人 伊藤 大幸  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 永井 浩之  
代理人 永井 浩之  
代理人 伊藤 大幸  

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