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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F01N 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 F01N 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 F01N 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F01N 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 F01N 審判 全部申し立て 2項進歩性 F01N |
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管理番号 | 1350631 |
異議申立番号 | 異議2018-700492 |
総通号数 | 233 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-05-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-06-18 |
確定日 | 2019-02-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6251583号発明「排気熱回収器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6251583号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 特許第6251583号の請求項2ないし5に係る特許を維持する。 特許第6251583号の請求項1、6及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6251583号の請求項1ないし7に係る特許(以下、「請求項1に係る特許」ないし「請求項7に係る特許」という。)についての出願(以下、「本件出願」という。)は、平成26年1月30日に出願され、平成29年12月1日にその特許権の設定登録がされ、同年12月20日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年6月18日に特許異議申立人 特許業務法人藤央特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、平成30年9月10日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年11月12日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、申立人は、同年12月27日に意見書を提出した。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「請求項1に記載の排気熱回収器において、前記排気抑制部は、前記熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており、内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成されていることを特徴とする排気熱回収器。」と記載されているのを、「排気が流れる排気管と、前記排気管に設けられ、前記排気の熱を回収する熱回収材と、前記熱回収材の外側を囲むように形成されており、液体状の熱媒体が流れる熱媒体流路と、前記熱回収材に設けられている複数の排気通路と、前記排気管に設けられており、前記複数の排気通路のうち前記熱媒体流路に隣接する前記排気通路への排気の流れを抑制する排気抑制部と、を有し、前記各排気通路は、お互いが独立して貫通している排気熱回収器において、前記排気抑制部は、前記熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており、内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成されていることを特徴とする排気熱回収器。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3ないし請求項5も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1ないし7〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1、3及び4について 訂正事項1、3及び4は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1、6及び7を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前請求項2が訂正前請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 さらに前記目的に加え、この訂正は、訂正前請求項1に記載されていた「熱媒体」を「液体状の熱媒体」と減縮するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮をも目的とするものである。 上記のとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとしたことについては、実質的に内容の変更を伴うものではなく、「熱媒体」を「液体状の熱媒体」と訂正したことは、特許請求の範囲を減縮するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 訂正後請求項3ないし5についても、「熱媒体」を「液体状の熱媒体」と訂正し、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 訂正事項2のうち、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとしたことについては、何ら実質的に内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。また、特許明細書の段落【0019】には、「熱媒体流路7は、熱回収材5の外周の外側(排気管3の外周の外側)に設けられている。熱媒体流路7には、熱回収材5で回収された熱を回収する熱媒体(水もしくは油等の液体状の熱媒体)が流れるようになっている。」と「熱媒体」が「水もしくは油等の液体状の熱媒体」であることが記載されていることから、「熱媒体」を「液体状の熱媒体」と訂正することは特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 訂正後請求項3ないし5についても、訂正前請求項1に記載されていた「熱媒体」を「液体状の熱媒体」と訂正するものであり、特許明細書の段落【0019】の記載に基づく訂正であるから、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項2ないし5に係る発明(以下、「本件訂正発明2」ないし「本件訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項2】 排気が流れる排気管と、 前記排気管に設けられ、前記排気の熱を回収する熱回収材と、 前記熱回収材の外側を囲むように形成されており、液体状の熱媒体が流れる熱媒体流路と、前記熱回収材に設けられている複数の排気通路と、 前記排気管に設けられており、前記複数の排気通路のうち前記熱媒体流路に隣接する前記排気通路への排気の流れを抑制する排気抑制部と、 を有し、前記各排気通路は、お互いが独立して貫通している排気熱回収器において、 前記排気抑制部は、前記熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており、内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項3】 請求項2に記載の排気熱回収器において、 前記熱回収材は、筒状の熱回収材支持体の内部で、前記熱回収材支持体の中間部に設けられており、前記縮径部は、前記熱回収材支持体内に入り込んでいることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の排気熱回収器において、 前記縮径部は、前記熱回収材側で内径が小さくなっているテーパ状に形成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項5】 請求項2または請求項3に記載の排気熱回収器において、 前記縮径部は、内径と外径とが一定であって前記熱回収材の外径よりも小さい筒状に形成されていることを特徴とする排気熱回収器。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし7に係る特許に対して、当審が平成30年9月10日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。なお、以下、訂正前の請求項1ないし7に係る発明を「本件発明1」ないし「本件発明7」といい、訂正前の請求項1ないし7に係る特許を「本件発明1に係る特許」ないし「本件発明7に係る特許」という。 (1)取消理由1 本件発明1及び7は、甲第1号証(特開2013-228189号公報)に記載された発明であるから、本件発明1及び7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。 また、本件発明1及び7は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1及び7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2 本件発明1及び6は、甲第6号証(国際公開第2012/133405号)及び甲第2号証(国際公開第2007/148764号)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明1及び6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)取消理由3 本件発明1ないし7は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 また、本件出願の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1ないし7を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 よって、本件発明1ないし7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 したがって、本件発明1ないし7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)取消理由4 本件発明7は明確でない。 よって、本件発明7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。 したがって、本件発明7に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 当審の判断 (1)取消理由1、2及び4について 取消理由1、2及び4の対象となった、本件発明1、6及び7は、本件訂正請求により削除された。 (2)取消理由3について 本件出願の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題として、「本発明は、熱媒体を用いて排気から熱を回収する排気熱回収器において、熱回収効率の低下を防ぐことができるものを提供することを目的とする。」(段落【0004】)と記載されている。 そして、本件訂正発明2ないし5は「排気管に設けられ、前記排気の熱を回収する熱回収材と、前記熱回収材の外側を囲むように形成されており、液体状の熱媒体が流れる熱媒体流路と、前記熱回収材に設けられている複数の排気通路と、前記排気管に設けられており、前記複数の排気通路のうち前記熱媒体流路に隣接する前記排気通路への排気の流れを抑制する排気抑制部」を発明特定事項として含むものである。 そして、段落【0040】には「排気熱回収器1によれば、排気抑制部9が設けられているので、熱回収材5の外周部に位置している排気通路11では排気が流れず、もしくは、流れたとしても僅かに流れる程度になっている。つまり、排気が熱媒体流路7から離れたところを流れ熱媒体流路7の近傍では排気が流れないようになっている。これにより、熱媒体流路7内で熱媒体が排気の熱によって局部的に沸騰することが無くなり、熱回収効率の低下を防ぐことができる。」と記載されている。 ここで、排気抑制部9によって、排気が熱媒体流路7から離れたところを流れ熱媒体流路7の近傍では排気が流れないようになると、排気からの熱が熱媒体に伝わり難くなる(熱伝達率が低下する)のは技術常識といえる。 しかしながら、(液体状の)熱媒体が沸騰すると、気泡が熱媒体の円滑な流れを妨げ、熱を回収する効率が低くなるので、熱媒体の沸騰を防止することで、熱回収効率の低下を防止するとの見方も、当業者にとって知られている(一例として、乙第1号証(特開2012-247132号公報の段落【0006】を参照。)。 そうすると、本件出願に係る発明において、熱回収効率の低下防止が、単に、熱交換部分の熱伝達率だけに着目したものではなく、総合的な熱回収効率を意図していることは、当業者であれば、理解し得ることである。 このような理解を前提にすれば、排気抑制部9によって、排気が熱媒体流路7から離れたところを流れ熱媒体流路7の近傍では排気が流れないようになると、排気からの熱が熱媒体に伝わり難くなる(熱伝達率が低下する)からといって、熱回収効率の低下を防ぐことができないとは直ちにいうことはできない。 したがって、本件訂正発明2ないし5は、「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えているとはいうことができない。 よって、本件訂正発明2ないし5は、発明の詳細な説明に記載したものではない、ということはできない。 また、熱伝達率の低下分を補って、総合的な熱回収効率を向上させるような「排気抑制部」とすることは、当業者の過度の試行錯誤を伴うことなく実施できると考えられるので、本件出願の発明の詳細な説明は、本件訂正発明2ないし5を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないということはできない。 (3)申立人の意見について 申立人は、平成30年12月27日の意見書において、概略以下の点を主張している。 ア 本件明細書には、本件発明における熱回収効率が、一時点における熱回収効率を問題にしているのではなく、車両の走行期間内での総合的な熱回収効率を指すものであるとの主張を裏付ける証拠は何ら示されておらず、車両の走行期間内において熱媒体が排気の熱によって局所的に沸騰する期間がどの程度あるのかも立証されていない。仮に、局所的な沸騰を防止することができたとしても、総合的に熱回収効率の低下が抑制されると一概に言えるものではない。(3 意見の内容 3.1(1)) イ 本件明細書には本件発明の課題が”膜沸騰”を回避するものであることは記載されていない。排気抑制部9を設けた結果、仮に膜沸騰を回避したり遅延することができたとしても、総合的にみて、上記副作用よりも膜沸騰を抑制することによる熱回収効率低下防止の効果が大きくなるような排気抑制部9は本件明細書には具体的に記載されておらず、裏付けとなるデータもない。(3 意見の内容 3.1(2)及び(3)) ウ 気泡により、ポンプの性能が低下することで熱回収効率が低下するのは、ポンプの問題であり、熱交換器そのものの熱回収効率とは、全く関係がない。(3 意見の内容 3.1(4)) エ 排気抑制部は少なからず、排気からの熱を熱媒体に伝わり難くする(熱伝達率を低下させる)ので、この副作用を補って余りあるほどの熱伝達促進効果がないと、総合的に熱回収効率の低下を防ぐとこができるということはできない。熱回収効率の低下防止は、単に局所的な沸騰の発生を抑制すれば達成できるというものではなく、本件明細書はこの疑問に対して何ら記載も示唆もされていない。(3 意見の内容 3.2) しかしながら、上記のとおり、(液体状の)熱媒体が沸騰すると、気泡が熱媒体の円滑な流れを妨げ、熱を回収する効率が低くなるので、熱媒体の沸騰を防止することで、熱回収効率の低下を防止するとの見方も、当業者にとって知られていることから、本件出願に係る発明において、熱回収効率の低下防止が、単に、熱交換部分の熱伝達率だけに着目したものではなく、総合的な熱回収効率を意図していることは、特段の証拠やデータを要することなく、当業者であれば、理解し得ることである。 したがって、申立人の主張は採用できない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。 本件発明2ないし5は、甲第1号証、甲第4号証(特開2010-60196号公報)及び甲第5号証(特開2008-57820号公報)に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2ないし5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明2ないし5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 本件発明1ないし7 本件発明1ないし7は、以下のとおりである。 「【請求項1】 排気が流れる排気管と、 前記排気管に設けられ、前記排気の熱を回収する熱回収材と、 前記熱回収材の外側を囲むように形成されており、熱媒体が流れる熱媒体流路と、 前記熱回収材に設けられている複数の排気通路と、 前記排気管に設けられており、前記複数の排気通路のうち前記熱媒体流路に隣接する前記排気通路への排気の流れを抑制する排気抑制部と、 を有し、前記各排気通路は、お互いが独立して貫通していることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項2】 請求項1に記載の排気熱回収器において、 前記排気抑制部は、前記熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており、内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項3】 請求項2に記載の排気熱回収器において、 前記熱回収材は、筒状の熱回収材支持体の内部で、前記熱回収材支持体の中間部に設けられており、前記縮径部は、前記熱回収材支持体内に入り込んでいることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の排気熱回収器において、 前記縮径部は、前記熱回収材側で内径が小さくなっているテーパ状に形成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項5】 請求項2または請求項3に記載の排気熱回収器において、 前記縮径部は、内径と外径とが一定であって前記熱回収材の外径よりも小さい筒状に形成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項6】 請求項1に記載の排気熱回収器において、 前記排気抑制部は、前記排気の流れ方向上流側で、前記熱回収材に隣接しているリング状の部材で構成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項7】 請求項1に記載の排気熱回収器において、 複数の排気通路が前記熱回収材の中央部側にのみ設けられていることで、前記排気抑制部が構成されていることを特徴とする排気熱回収器。」 3 甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項等 (1)甲第1号証 甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、「熱交換部材」に関して、図面(特に、図6及び9を参照)とともに以下の記載がある。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。) ア 「【0001】 本発明は、第一の流体と第二の流体との熱交換を行うことができる、ハニカム構造体を用いた熱交換部材に関する。 【背景技術】 【0002】 高温の流体から低温の流体へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。例えば、エンジンなどの燃焼排ガスなどの高温気体からの熱を回収する熱回収技術がある。気体/液体熱交換器としては、自動車のラジエター、空調室外機などのフィン付チューブ型熱交換器が一般的である。しかしながら、例えば自動車の排ガスのような気体から熱を回収するには、一般的な金属製熱交換器では耐熱性に乏しく、高温での使用が困難である。そこで、耐熱性、耐熱衝撃、耐腐食などを有する耐熱金属やセラミックス材料などが適している。しかし耐熱金属は、価格が高い上に加工が難しい、密度が高く重い、熱伝導が低いなどの課題がある。 【0003】 そこで、セラミックス材料を用いた熱回収技術が開発されている。例えば、セラミックス体を用いた熱交換部材により熱交換を行う技術がある。この場合、筒状セラミックス体の内部に第一の流体(例えば、排ガス)を流通させ、外部に第二の流体(例えば、冷却水)を流通させることにより、熱交換を行う。」 イ 「【0007】 本発明の課題は、高温流体と低温流体とを熱交換させる場合において、高温流体の流量が大きいとき、低温流体の温度が上昇しすぎないように、熱交換効率を低下させる熱交換部材を提供することにある。」 ウ 「【0009】 本発明者らは、熱交換部材を構成するハニカム構造体が、2つの異なる開口率のセル構造を有するように構成したり、伝熱低減部を設けたりすることにより、低温流体の温度が上昇しすぎないように熱交換効率を低下させるという上記課題を解決しうることを見出した。また、ハニカム構造体の端面に凸部または凹部を設けたり、ハニカム構造体を被覆部材で被覆し被覆部材内に攪拌板を備えたり、被覆部材に小径部、または大径部を備えたりすることにより、熱交換部材の下流の部品の熱衝撃による破損を低減させるという上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の熱交換部材が提供される。」 エ 「【0056】 図6に本発明の熱交換部材10を含む熱交換器30の斜視図を示す。図6に示すように、熱交換器30は、熱交換部材10と、熱交換部材10を内部に含むケーシング21とによって形成されている。ハニカム構造体1のセル3が第一の流体が流通する第一流体流通部5となる。熱交換器30は、ハニカム構造体1のセル3内を、第二の流体よりも高温の第一の流体が流通するように構成されている。また、ケーシング21に第二の流体の入口22及び出口23が形成されており、第二の流体は、熱交換部材10の金属管12の外周面12h上を流通する。 【0057】 つまり、ケーシング21の内側面24と金属管12の外周面12hとによって第二流体流通部6が形成されている。第二流体流通部6は、ケーシング21と金属管12の外周面12hとによって形成された第二の流体の流通部であり、第一流体流通部5とハニカム構造体1の隔壁4や外周壁7、金属管12によって隔たれて熱交換可能とされており、第一流体流通部5を流通する第一の流体の熱を隔壁4、外周壁7、金属管12を介して受け取り、流通する第二の流体である被加熱体へ熱を伝達する。第一の流体と第二の流体とは、完全に分離されており、これらの流体は混じり合わないように構成されている。 【0058】 熱交換器30は、第二の流体よりも高温である第一の流体を流通させ、第一の流体から第二の流体へ熱交換するようにすることが好ましい。第一の流体として気体を流通させ、第二の流体として液体を流通させると、第一の流体と第二の流体の熱交換を効率よく行うことができる。つまり、本発明の熱交換器30は、気体/液体熱交換器として適用することができる。 【0059】 以上のような構成の本発明の熱交換器30に流通させる第一の流体である加熱体としては、熱を有する媒体であれば、気体、液体等、特に限定されない。例えば、気体であれば自動車の排ガス等が挙げられる。また、加熱体から熱を奪う(熱交換する)第二の流体である被加熱体は、加熱体よりも低い温度であれば、媒体としては、気体、液体等、特に限定されない。」 オ 「【0068】 図9に、伝熱低減部40が、ハニカム構造体1と被覆部材11との間に、ハニカム構造体1の外周部分の全表面積に対して10%以上の範囲に備えられた断熱材42で形成された実施形態を示す。このような断熱材42によって形成された伝熱低減部40を有することにより、ハニカム構造体1と被覆部材11(金属管12)との間の伝熱を低減させる効果が得られる。また、第一の流体の流量に対して熱交換効率を変化させる効果が得られ、伝熱低減部40(断熱材42)を備えることにより流量が多いときの熱回収効率を低減することができる。」 上記記載事項及び図面の図示内容からみて、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「第一の流体として自動車の排ガスが流れる金属管12と、 前記金属管12に設けられ、前記排ガスの熱を回収するハニカム構造体1と、 前記ハニカム構造体1の外側を囲むケーシング21内に形成され、前記第一の流体と熱交換する第二の流体が流通する第二流体流通部6と、 前記ハニカム構造体1に設けられた、前記第一の流体の流路となる複数のセル3と、 前記金属管12に設けられたハニカム構造体1が有する筒形状の外周壁7と、 前記ハニカム構造体1と前記金属管12との間に、ハニカム構造体1の外周部分の全表面積に対して10%以上の範囲に備えられた断熱材42で形成された伝熱低減部40とを有し、 複数のセル3は、隔壁4により区画形成されており、それぞれが一方の端部から他方の端部に貫通している、 熱交換器30。」 (2)甲第4号証 甲第4号証(以下、「甲4」という。)には、「ガス冷却装置」に関して、図面(特に、図1を参照)とともに以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 一方の流体通路と他方の流体通路とを形成する冷却器本体を有し、前記一方の流体通路を通る高温のガスと前記他方の流体通路を通る低温の冷却用流体との間で熱交換させるガス冷却装置であって、 前記冷却器本体に装着され前記一方の流体通路の入口側に連通するガス導入空間を形成する導入タンク部材と、 前記高温のガスが導入される入口側通路を形成し、前記導入タンク部材に対して前記ガス導入空間から前記一方の流体通路に向かうガス導入方向とは異なる挿入方向に挿入された入口側パイプ部材と、を備え、 前記入口側パイプ部材が、前記ガス導入空間内で前記挿入方向から前記ガス導入方向へと前記入口側通路の下流側部分を湾曲させる湾曲部を有するとともに、前記ガス導入空間内で開口していることを特徴とするガス冷却装置。」 イ 「【0002】 自動車等の車両に搭載される内燃機関においては、排気浄化性能に対する要求の高度化に伴って、NOx低減に効果的なEGR(排気再循環)装置を装着した内燃機関が普及してきており、空気量に対し燃料が希薄な燃焼が可能なディーゼルエンジン等の内燃機関では、EGR量が多くなるため再循環される排気の温度を下げるEGRクーラが多用されている。」 ウ 「【0004】 この種のガス冷却装置としては、例えば90度曲げ状態となるEGRクーラのガス導入側のベント構造ボンネットにおいて、ガスの流速が大きくなる曲率半径の大径側(曲げ外側)に邪魔板を設けて、曲率半径の内外でのガス流速のばらつきを抑えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。」 エ 「【0006】 しかしながら、上述のような従来のガス冷却装置にあっては、ベント構造ボンネット部分でのガス流速の均一化を図った特許文献1に記載のようなものでは、邪魔板によってEGRガスの流通が制限されてしまうことから、冷却効率が低下してしまうという問題があった。」 オ 「【0009】 本発明は、上述のような従来技術の未解決の課題に鑑みてなされたものであり、ガス冷却効率に優れ、放射音等の騒音・振動をコストアップを招くことなく十分に低減することのできるガス冷却装置を提供することを目的とする。」 カ 「【0016】 図1および図2に示すように、本実施形態のガス冷却装置は、外殻である略角筒状のケース11と、ケース11内に互いに平行に収納された公知の複数のフィン状の熱交換用チューブ12(詳細図示せず)とを有する冷却器タンク10(冷却器本体)を備えている。 【0017】 複数の熱交換用チューブ12は、熱伝導率の高い一定肉厚の金属からなり、例えばそれぞれ両端部で支持板18a、18bを介して管路方向の同一位置で管路方向と直交する方向に所定の間隔を隔てて支持されている。そして、複数の熱交換用チューブ12によってそれらの内部に高温のガスが通過する複数のガス冷却通路13(一方の流体通路)が互いに平行に形成されている。これら複数のガス冷却通路13は、高温のガスが通過する高温ガス通路19の一部として、高温ガス通路19の途中で複数の分岐通路状をなしている。なお、ここでは、説明の便宜上、各熱交換用チューブ12がそれぞれ扁平な筒状に形成されたものとして説明するが、各熱交換用チューブ12は複数の凹凸を有する板状体を貼り合せて互いに略直交する一方の流体通路と他方の流体通路とを形成するように構成された公知の他形状のものであってもよい。 【0018】 冷却器タンク10のケース11、熱交換用チューブ12および支持板18a、18bは、全体として、複数の熱交換用チューブ12の周りに冷却水(冷却用流体)が通る冷却水通路14(他方の流体通路)を形成している。冷却水通路14は、例えば複数の熱交換用チューブ12の両面側に隣接する複数の略平坦な一定厚さの通路部分14aと、これら複数の通路部分14a同士を相互に連通するよう接続する両側方の集合通路14b、14cとを含んで構成されており、一方の集合通路14bにはケース11の外周に設置された冷却水導入口部11cを通して外部からの冷却水が導入され、他方の集合通路14cからケース11の外周に設置された冷却水排出口部11dを通して外部に冷却水が排出されるようになっている。 【0019】 すなわち、冷却器タンク10は、一方の流体通路であるガス冷却通路13に高温のEGRガスを通し、他方の流体通路である冷却水通路14にEGRガスに対して相対的に低温となる冷却水を通すことで、ガス冷却通路13を通る高温のガスと冷却水通路14を通る低温の冷却水との間で熱交換をさせるようになっている。 【0020】 図1に示すように、冷却器タンク10の一端側には、ケース11の一部を構成するU字形断面の矩形環状のカバー部11aおよびその内周部にろう付け等により固定されたサブヘッダー部11bを介して、略箱形のサブタンク15(導入タンク部材)が装着されている。サブヘッダー部11bは、その一端側(図1中の右端側)でカバー部11a内に挿入され、複数のガス冷却通路13の上流で高温ガス通路19の一部となるケース11の入口側開口11eを形成する一方、他端側(図1中の左端側)ではサブタンク15の略矩形の開口端部15jを保持している。」 キ 図1から、サブヘッダー部11bは、サブタンク15の開口端部15jを保持している側から、カバー部11a内に挿入されている側にかけて、テーパ状に形成されていることが看取できる。 上記記載事項及び認定事項並びに図面の図示内容からみて、甲4には次の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「一方の流体通路であるガス冷却通路13に高温のEGRガスを通し、他方の流体通路である冷却水通路14にEGRガスに対して相対的に低温となる冷却水を通すことで、ガス冷却通路13を通る高温のガスと冷却水通路14を通る低温の冷却水との間で熱交換をさせる冷却器タンク10の一端側に、ケース11の一部を構成するU字形断面の矩形環状のカバー部11aおよびその内周部にろう付け等により固定されたサブヘッダー部11bを介して、略箱形のサブタンク15が装着され、前記サブヘッダー部11bは、その一端側でカバー部11a内に挿入され、複数のガス冷却通路13の上流で高温ガス通路19の一部となるケース11の入口側開口11eを形成する一方、他端側ではサブタンク15の略矩形の開口端部15jを保持しており、前記サブヘッダー部11bは、前記サブタンク15の前記開口端部15jを保持している側から、前記カバー部11a内に挿入されている側にかけて、テーパ状に形成されていること。」 (3)甲第5号証 甲第5号証(以下、「甲5」という。)には、「熱交換装置」に関して、図面(特に、図1ないし3を参照)とともに以下の記載がある。 ア 「【請求項1】 内部を高温流体が流通する第1筐体(100)と、 内部を低温流体が流通する第2筐体(200)と、 前記第1筐体(100)内に配置され、内部に封入された蒸発および凝縮可能な作動流体と前記高温流体との間で熱交換を行い、前記作動流体を蒸発させる蒸発部(1)と、 前記第2筐体(200)内に配置され、前記蒸発部(1)で蒸発した前記作動流体と前記低温流体との間で熱交換を行い、前記作動流体を凝縮させる凝縮部(2)と、 前記蒸発部(1)で蒸発した前記作動流体を前記凝縮部(2)に導く蒸発側連通部(5a)と、 前記凝縮部(2)で凝縮した前記作動流体を前記蒸発部(1)に導く凝縮側連通部(5b)とを備え、 前記蒸発部(1)は、前記作動流体の流れ方向が非水平になるように配置されたヒートパイプ(3a)と、このヒートパイプ(3a)と前記高温流体との伝熱面積を増大させるアウターフィン(4a)とを備え、 前記作動流体が前記蒸発部(1)と前記凝縮部(2)とを循環するように構成された熱交換装置であって、 前記凝縮側連通部(5b)へ前記高温流体が流通するのを阻止するように構成されていることを特徴とする熱交換装置。 【請求項2】 前記凝縮側連通部(5b)へ前記高温流体が流通するのを阻止する凝縮側遮蔽板(8a、8b、101、102)を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱交換装置。 【請求項3】 前記凝縮側遮蔽板(101、102)は、前記第1筐体(100)に一体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換装置。 【請求項4】 前記凝縮側遮蔽板(8a、8b)は、前記蒸発部(1)に一体に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の熱交換装置。 【請求項5】 前記凝縮側遮蔽板(8a、101)は、前記凝縮側連通部(5b)よりも高温流体流れ上流側に配置されていることを特徴とする請求項2ないし4のいづれか1つに記載の熱交換装置。」 イ 「【請求項7】 前記凝縮側連通部(5b)よりも高温流体流れ上流側に配置された前記凝縮側遮蔽板(101)は、前記第1筐体(100)内の通路面積を高温流体流れ上流側から前記蒸発部(1)に向かって連続的に減少させるように構成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の熱交換装置。」 ウ 「【0002】 従来、車両の内燃機関(以下、エンジンという)の排気ガスの排気熱を回収して、この排気熱をエンジンの暖機促進等に利用する熱交換装置が知られている。」 エ 「【0007】 このような構成では、凝縮側連通部(5b)において高温流体により作動流体が加熱されて蒸発することを防止ないしは低減することができるため、ドライアウトを防止して熱交換性能を向上させることができる。 【0008】 この場合、凝縮側連通部(5b)へ高温流体が流通するのを阻止する凝縮側遮蔽板(8a、8b、101、102)を備えることでき、また、その凝縮側遮蔽板(101、102)は、第1筐体(100)に一体に設けてもよいし、蒸発部(1)に一体に設けてもよい。 【0009】 また、凝縮側遮蔽板(8a、101)は、凝縮側連通部(5b)よりも高温流体流れ上流側に配置することができる。 【0010】 このようにすれば、凝縮側連通部(5b)のうち高温流体流れ上流側の面に高温流体が流通するのを阻止することができる。 【0011】 また、凝縮側遮蔽板(8a、8b、101、102)は、凝縮側連通部(5b)よりも高温流体流れ上流側および、凝縮側連通部(5b)よりも高温流体流れ下流側に配置することができる。 【0012】 このようにすれば、凝縮側連通部(5b)のうち高温流体流れ上流側の面に高温流体が流通するのを阻止することができるとともに、凝縮側連通部(5b)のうち高温流体流れ下流側の面に高温流体が流通するのも阻止することができるため、ドライアウトを確実に防止することができる。」 オ 「【0049】 また、第1筐体100は、蒸発側連通部5a近傍の排気ガスの流れをスムーズにするとともに、蒸発側連通部5aの外周面と第1筐体100の内周面との間の隙間を介して排気ガスが流通するのを阻止する、蒸発側遮蔽板111、112を備えている。より詳細には、蒸発側連通部5aよりも排気ガス流れ上流側に配置された第1蒸発側遮蔽板111は、排気ガス流れ方向に対して直交して配置されて、蒸発側連通部5aにおける排気ガス流れ上流側の面を覆う覆い板部1111と、排気ガス流れ方向に対して傾斜して配置されて、第1筐体100内の通路面積を排気ガス流れ上流側から蒸発部1に向かって連続的に減少させる斜板部1112とを備えている。蒸発側連通部5aよりも排気ガス流れ下流側に配置された第2蒸発側遮蔽板112は、排気ガス流れ方向に対して直交して配置されて、蒸発側連通部5aにおける排気ガス流れ下流側の面を覆う覆い板部1121と、排気ガス流れ方向に対して傾斜して配置されて、第1筐体100内の通路面積を蒸発部1から排気ガス流れ下流側に向かって連続的に増加させる斜板部1122とを備えている。 【0050】 上記構成になる本実施形態の熱交換装置は、排気ガスが蒸発部1を流通することにより、蒸発側ヒートパイプ3a内の液相の作動流体が排気ガスから吸熱して蒸発し、気相の作動流体が蒸発側連通部5aを介して凝縮部2へ流入する。凝縮側ヒートパイプ3b内を流通する気相の作動流体は、エンジン冷却水に放熱して凝縮し、この凝縮した作動流体は凝縮側連通部5bを介して蒸発部1へ流入する。 【0051】 ここで、第1凝縮側遮蔽板101により、凝縮側連通部5bにおける排気ガス流れ上流側の面に排気ガスが流通するのが阻止され、また、第2凝縮側遮蔽板102により、凝縮側連通部5bにおける排気ガス流れ下流側の面に排気ガスが流通するのが阻止される。したがって、凝縮側連通部5bにおいて排気ガスにより作動流体が加熱されて蒸発することが防止され、凝縮側連通部5bのうち凝縮部2から遠い部位にも液相の作動流体が確実に供給されるため、ドライアウトを防止して熱交換性能を向上させることができる。 【0052】 また、第1凝縮側遮蔽板101および第1蒸発側遮蔽板111の各斜板部1012、1112により、排気ガスが蒸発部1にスムーズに流入するとともに、第2凝縮側遮蔽板102および第2蒸発側遮蔽板112の各斜板部1022、1122により、排気ガスが蒸発部1からスムーズに流出して良好なガス流れが得られるため、排気ガスと作動流体との熱交換が良好に行われる。」 上記記載事項及び図面の図示内容からみて甲5には、次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。 「内部を高温流体が流通する第1筐体(100)と、 前記第1筐体(100)内に配置され、内部に封入された蒸発および凝縮可能な作動流体と前記高温流体との間で熱交換を行い、前記作動流体を蒸発させる蒸発部(1)と、 前記作動流体を凝縮させる凝縮部(2)と、 前記蒸発部(1)で蒸発した前記作動流体を前記凝縮部(2)に導く蒸発側連通部(5a)と、 前記凝縮部(2)で凝縮した前記作動流体を前記蒸発部(1)に導く凝縮側連通部(5b)とを備え、 前記作動流体が前記蒸発部(1)と前記凝縮部(2)とを循環するように構成された熱交換装置であって、 前記凝縮側連通部(5b)へ前記高温流体が流通するのを阻止する凝縮側遮蔽板(101)を備え、前記凝縮側遮蔽板(101)は、前記凝縮側連通部(5b)よりも高温流体流れ上流側に排気ガス流れ方向に対して傾斜して配置されて、第1筐体(100)内の通路面積を排気ガス流れ上流側から蒸発部(1)に向かって連続的に減少させる斜板部(1012)と 蒸発側遮蔽板(111)を備え、前記蒸発側遮蔽板(111)は、前記蒸発側連通部(5a)よりも高温流体流れ上流側に排気ガス流れ方向に対して傾斜して配置されて、第1筐体(100)内の通路面積を排気ガス流れ上流側から蒸発部(1)に向かって連続的に減少させる斜板部(1112)と、 を備えている熱交換装置。」 4 対比・判断 (1)本件発明2について 本件発明2と甲1発明とを対比する。 本件発明2のうち、請求項1を引用する部分については、「本件発明1は、甲第1号証に記載された発明である」(上記第4 1 (1)取消理由1 を参照。)から、本件発明2と甲1発明との相違点は、次のとおりである。 [相違点] 本件発明2においては「前記排気抑制部は、前記熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており、内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成されている」のに対して、甲1発明においては、かかる事項を備えていない点。 上記相違点について検討する。 甲4記載事項及び甲5記載事項は上記のとおりである。 甲4記載事項及び甲5記載事項は、EGRガス(排気ガス)と冷却水(作動流体)とが熱交換を行う熱交換部の上流側において、EGRガス(排気ガス)通路面積を連続的に減少させる部材を設ける、ということができるとしても、熱交換部の構成が、本件発明2とは異なり、熱回収材の外側を囲むように熱媒体が流れる熱媒体流路が形成されたものではない。 そうすると、甲4記載事項及び甲5記載事項は、「排気が流れる排気管と、前記排気管に設けられ、前記排気の熱を回収する熱回収材と、熱回収材の外側を囲むように形成されており、熱媒体が流れる熱媒体流路と、前記熱回収材に設けられている複数の排気通路と、前記排気管に設けられており、前記複数の排気通路のうち前記熱媒体流路に隣接する前記排気通路への排気の流れを抑制する」ことが前提である「排気抑制部」を、「熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており、内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成」することまで、開示ないし示唆するものではない。 したがって、甲1発明に、甲4記載事項及び甲5記載事項を参酌しても、上記相違点に係る本件発明2の構成とすることはできない。 よって、本件発明2は、甲1発明、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3ないし5について 本件出願の特許請求の範囲における請求項3ないし5は、請求項2の記載を他の記載に置き換えることなく直接的又は間接的に引用して記載されたものであるから、本件発明3ないし5は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものである。 したがって、本件発明3ないし5は、本件発明2と同様の理由により、甲1発明、甲4記載事項及び甲5記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、当該特許異議申立理由は採用できない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項2ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 排気が流れる排気管と, 前記排気管に設けられ,前記排気の熱を回収する熱回収材と, 前記熱回収材の外側を囲むように形成されており,液体状の熱媒体が流れる熱媒体流路と,前記熱回収材に設けられている複数の排気通路と, 前記排気管に設けられており,前記複数の排気通路のうち前記熱媒体流路に隣接する前記排気通路への排気の流れを抑制する排気抑制部と, を有し,前記各排気通路は,お互いが独立して貫通している排気熱回収器において, 前記排気抑制部は,前記熱回収材よりも前記排気の流れ方向上流側に設けられており,内径が前記熱回収材の外径よりも小さい筒状の縮径部で構成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項3】 請求項2に記載の排気熱回収器において, 前記熱回収材は、筒状の熱回収材支持体の内部で,前記熱回収材支持体の中間部に設けられており,前記縮径部は,前記熱回収材支持体内に入り込んでいることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の排気熱回収器において, 前記縮径部は,前記熱回収材側で内径が小さくなっているテーパ状に形成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項5】 請求項2または請求項3に記載の排気熱回収器において, 前記縮径部は,内径と外径とが一定であって前記熱回収材の外径よりも小さい筒状に形成されていることを特徴とする排気熱回収器。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-02-06 |
出願番号 | 特願2014-15112(P2014-15112) |
審決分類 |
P
1
651・
857-
YAA
(F01N)
P 1 651・ 113- YAA (F01N) P 1 651・ 851- YAA (F01N) P 1 651・ 537- YAA (F01N) P 1 651・ 121- YAA (F01N) P 1 651・ 536- YAA (F01N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 首藤 崇聡 |
特許庁審判長 |
金澤 俊郎 |
特許庁審判官 |
鈴木 充 粟倉 裕二 |
登録日 | 2017-12-01 |
登録番号 | 特許第6251583号(P6251583) |
権利者 | カルソニックカンセイ株式会社 |
発明の名称 | 排気熱回収器 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 岩▲崎▼ 幸邦 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 高松 俊雄 |
代理人 | 高松 俊雄 |
代理人 | 岩▲崎▼ 幸邦 |
代理人 | 豊岡 静男 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 豊岡 静男 |
代理人 | 三好 秀和 |