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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
管理番号 1350643
異議申立番号 異議2018-700019  
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-11 
確定日 2019-03-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6161332号発明「硬化性組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6161332号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6161332号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6161332号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-42223号、以下「本願」という。)は、平成25年3月4日に出願人東京応化工業株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされたものであり、平成29年6月23日に特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、平成29年7月12日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成30年1月10日付けで特許異議申立人中水麻衣(以下「申立人」という。)により「特許第6161332号の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。

3.以降の手続の経緯
以降の手続の経緯は、以下のとおりである。

平成30年 4月16日付け 取消理由通知
平成30年 6月22日 意見書(特許権者)・訂正請求書
平成30年 6月27日付け 通知書(申立人あて)
平成30年 7月18日付け 意見書(申立人)
(平成30年 7月19日受理)
平成30年 8月23日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成30年10月29日 意見書(特許権者)・訂正請求書
平成30年11月 1日付け 通知書(申立人あて)
平成30年11月26日 意見書(申立人)
(平成30年11月27日受理)
(なお、平成30年10月29日付けで訂正請求がされたことにより、平成30年6月22日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)

第2 平成30年10月29日付けの訂正請求について
上記平成30年10月29日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の適否につき検討する。

1.訂正内容
本件訂正は、本件特許に係る明細書及び特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし3について訂正するものであって、具体的な訂正事項は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「式(1)中、Xは単結合、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-CH_(2)-、-C(CH_(3))_(2)-、-CBr_(2)-、-C(CBr_(3))_(2)-、-C(CF_(3))_(2)-、及び-R^(19)-O-CO-からなる群より選択される2価の基であり、」と記載されているのを、「式(1)中、Xは単結合であり、」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「硬化性組成物であって、」と記載されているのを、「硬化性組成物であって、前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であり、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、多孔質シリカ、及び」と記載されているのを、「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、及び」に訂正する。

(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0099】に「以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。」と記載されているのを、「以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以降、実施例2、4、5はそれぞれ参考例2、4、5に読み替えるものとする。」に訂正する。

2.検討
なお、以下の検討において、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし3を「旧請求項1」ないし「旧請求項3」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし3を「新請求項1」ないし「新請求項3」という。

(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。

ア.訂正事項1ないし3について
上記訂正事項1ないし3に係る訂正は、いずれも旧請求項1に係るものであり、訂正事項1に係る訂正では「式(1)」に係る連結基「X」の種別の並列的選択肢の一部(単結合以外の他の連結基)を削除することにより、訂正事項2に係る訂正では「式(1)で表される化合物」に対する「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の含有量の範囲に係る事項を明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき直列的に付加することにより、また、訂正事項3に係る訂正では、旧請求項1に記載された「(B)シリカ又はシロキサン化合物」に係る並列的選択肢の一部(多孔質シリカ)を削除することにより、いずれも請求項1の硬化性組成物を実質的に限定しているものであって、旧請求項1又は同項を引用する旧請求項2及び3に係る特許請求の範囲を減縮して新請求項1又は同項を引用する新請求項2及び3としているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
してみると、上記訂正事項1ないし3に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定の目的要件に適合するものである。

イ.訂正事項4について
上記訂正事項4に係る訂正は、旧請求項1に記載された事項を具備しない実施例5及び訂正事項1又は3に係る訂正により新請求項1に記載された事項を具備しないものとなった実施例2及び4につき、いずれも「参考例」としたものであるから、元々不整合であった又は他の訂正により不整合となった明細書の発明の詳細な説明の記載を単に正したものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、訂正事項4に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定の目的要件に適合するものである。

ウ.小括
以上のとおり、上記訂正事項1ないし4に係る各訂正は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定のいずれかの目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、訂正事項1ないし3に係る訂正により、新請求項1及び同項を引用する新請求項2並びに3の特許請求の範囲が旧請求項1及び同項を引用する旧請求項2並びに3の特許請求の範囲に対して実質的に減縮されていることが明らかであり、訂正事項4に係る訂正は、訂正前に対応関係が不明瞭であった明細書の記載又は訂正事項1ないし3に係る請求項に係る訂正により対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものであるから、上記訂正事項1ないし4による訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件について
なお、本件の特許異議の申立ては、旧請求項1ないし3に係る全ての発明についての特許につき、申立てがされているから、訂正の適否の検討において独立特許要件につき検討すべき請求項が存するものではない。

3.訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正を認める。

第3 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第8号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1ないし9が存するとしているものと認められる。

取消理由1:本件発明1ないし3は、いずれも甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件発明1ないし3は、いずれも甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由3:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由4:本件発明1ないし3は、いずれも甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由5:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由6:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由7:本件特許の請求項1ないし3の記載では、各項に係る発明が明確でないから、本件特許の請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由8:本件発明1ないし3は、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に照らしてその解決課題が解決できるものではなく、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし3の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由9:本件特許に係る請求項1ないし3に関して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が不備であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2006-16480号公報
甲第2号証:特表2002-508012号公報
甲第3号証:特開2005-316415号公報
甲第4号証:特開2003-147268号公報
甲第5号証:特開2012-255159号公報
甲第6号証:「Gasil^(○R) HP270」なる商品名のシリカ製品に係るカタログ、PQ Corporationのホームページ(URL:https://www.pqcorp.com/docs/default-source/typical-properties/pq-corporation/silicas/gasil/gasilhp270.pdf?sfvrsn=694ac7eb_4)から平成30年1月5日にプリントアウトされたと思われるもの(決定注:上記「^(○R)」は丸で囲まれたRを意味する。)
甲第7号証:特開2003-261817号公報
甲第8号証:特開2004-204228号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲8」と略していう。)

第4 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要
当審が上記平成30年8月23日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

「第6 当審の判断
当審は、
申立人が主張する下記(再掲)取消理由5及び6により、依然として、本件発明1ないし3についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。以下、詳述する。

取消理由5:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由6:本件発明1ないし3は、いずれも甲第3号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
・・(中略)・・
(4)取消理由5及び6についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲3に記載された発明に当業者の技術常識を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし3についての特許は、いずれにしても特許法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、取消理由5及び6はいずれも理由がある。

第7 むすび
以上のとおりであるから、上記結論のとおり、本件訂正については認め、本件の請求項1ないし3の発明についての特許を取り消す決定を行うことを予告する。」

第5 訂正後の本件特許に係る請求項に記載された事項
訂正後の本件特許に係る請求項1ないし3には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含み、
前記(A)エポキシ化合物が、下記式(1):
【化1】


(式(1)中、Xは単結合であり、R^(19)は炭素数1?8のアルキレン基であり、R^(1)?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
で表される化合物である、硬化性組成物であって、
前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であり、
前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、及び下記式(2):
(RSiO_(3/2))_(p)・・・(2)
(式(2)中、Rは、水酸基、及び水素原子からなる群より選択される基であり、pは6以上の偶数である。)
で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上である、
硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性組成物を硬化した、硬化物。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化性組成物中の前記(C)酸発生剤から酸を発生させる工程を含む、硬化物の製造方法。」
(以下、訂正後の上記請求項1ないし3に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)

第6 当審の判断
当審は、
訂正後の請求項1ないし3に係る発明についての特許につき、当審が通知した上記取消理由5及び6並びに申立人が主張する上記取消理由1ないし9はいずれも理由がなく、本件発明1ないし3についての特許はいずれも取り消すことができないもの、
と判断する。
なお、以下、詳述するにあたり、事案に鑑み、まず、申立人が主張する上記取消理由7ないし9につきそれぞれ検討を行い、さらに、申立人が主張する取消理由1ないし6並びに当審が通知した上記取消理由5及び6(申立人が主張する取消理由5及び6と同一である。)につき併せて、順次それぞれ検討する。

I.取消理由7について
申立人が主張する取消理由7は、申立書第31頁(化学式下)第10行ないし第32頁第5行の記載からみて、本件特許に係る請求項1ないし3には、「多孔質シリカ」を使用する場合における、硬化層の屈折率に影響する細孔の量につき記載(規定)されていないから、同請求項1ないし3の記載では、同各項に係る発明が明確でないというものと認められる。
しかるに、上記訂正後の請求項1ないし3では、多孔質シリカを使用する場合につき削除されているから、上記申立人の主張する理由は、根拠を欠き理由がない。
また、申立人は、平成30年11月26日付け意見書(第13頁下段)において、請求項1の式(1)の説明部における「R^(19)は炭素数1?8のアルキレン基であり、」との記載につき、「R^(19)」が式(1)に存しない点をもって、請求項1に係る発明が明確でないと新たに主張しているが、当該記載が存するからといって、式(1)で表される化合物の構造が不明確になるものではないことが明らかであるから、請求項1に係る発明を不明確にするものではなく、当該主張は採用できない。
したがって、上記取消理由7は、理由がない。

II.取消理由8について
申立人が主張する取消理由8は、申立書第32頁第7行ないし第34頁第21行の記載からみて、本件特許に係る請求項1ないし3には、「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量及びその比並びに「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ」(又は「多孔質シリカ」)を使用する場合のその細孔量が記載されていないのに対して、明細書の発明の詳細な説明においては、調製例で製造された細孔量不明の「中空シリカ」(又は「多孔質シリカ」)を限られた使用量比の場合について記載されているのみであり、当該明細書の記載に照らして、本件特許に係る請求項1ないし3に係る発明が、所定の課題を解決できると当業者が認識できるように記載したものではなく、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないというものと認められる。
しかるに、上記訂正後の請求項1ないし3では、「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量比につき「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であり」と規定されているから、当該使用量比に係る上記申立人が主張する理由は、根拠を欠き理由がない。
また、細孔量の点については、空気などの屈折率が、シリカに比して低く、エポキシ樹脂に比して更に低いことが当業者の技術常識であるから、当該細孔にエポキシ樹脂が侵入することがない「中空シリカ」を使用する場合(「多孔質シリカ」を使用する場合については訂正により削除されている。)、ちゅう密なシリカを使用する場合に比して、硬化物の低屈折率化が図れるであろうことも当該技術常識に照らして当業者が認識することができ、さらに、「中空シリカ」を使用する場合であっても、細孔量が少ないものに比して、細孔量が多いものを使用した場合に、使用量が同一であれば、硬化物の低屈折率化により寄与するであろうことも、当業者に自明であって、細孔量に係る上記申立人の主張は、当を得ないものであり理由がない。
したがって、上記取消理由8は、理由がない。

III.取消理由9について
申立人が主張する取消理由9は、申立書第34頁第23行ないし第37頁第12行の記載からみて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件特許に係る請求項1ないし3に係る「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量及びその比並びに「(B)シリカ又はシロキサン化合物」のうち中空シリカ及び多孔質シリカの細孔の量が規定されていない発明につき、所定の課題を解決し得る効果を奏するか否かにつき当業者が認識できるように記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし3に係る発明を当業者が実施できるように明確かつ十分に記載したものでないというものと認められる。
しかるに、上記訂正後の請求項1ないし3では、「(A)エポキシ化合物」及び「(B)シリカ又はシロキサン化合物」の使用量比につき「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であり」と規定されており、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当該使用量比又は中空シリカを使用した場合に、所定の課題に則した効果を奏するものと看取できる実施例(及び比較例)につき記載されているから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、請求項1ないし3に記載された事項で特定される発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものというべきものである。
したがって、上記取消理由9は、理由がない。

IV.取消理由1ないし6について
取消理由1ないし6は、いずれも特許法第29条に係る取消理由であるから、併せて検討する。

1.各甲号証に記載された事項及び各甲号証に記載された発明
以下、上記取消理由1ないし6につき検討するにあたり、それらの取消理由はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし甲8に記載された事項を確認・摘示するとともに、各取消理由における主たる引用例である甲1ないし甲4に記載された発明の認定を行う。
なお、各甲号証の記載の摘示における下線は、元々記載されているものを除き、当審が付したものである。

(1)甲1

ア.甲1に記載された事項
上記甲1には、【0048】、【0056】ないし【0058】、【0064】及び【0065】に記載された事項に加えて、以下の事項が記載されている。

(ア-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性化合物と、表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子とを含有することを特徴とする硬化性組成物。
・・(中略)・・
【請求項5】
多孔質シリカ微粒子の表面を修飾する有機基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ環又はオキセタン環を含む有機基である請求項1?4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
透明基材の表面に、請求項1?5のいずれかに記載の硬化性組成物が硬化してなる被膜が形成されていることを特徴とする被膜付き基材。
・・(中略)・・
【請求項8】
被膜が1.20?1.45の屈折率及び0.01?1μmの膜厚を有し、反射防止機能を有する被膜である請求項6又は7に記載の被膜付き基材。」

(ア-2)
「【0001】
本発明は、反射防止膜の材料として好適な硬化性組成物に関するものである。また、本発明は、この硬化性組成物の硬化被膜、特に反射防止膜を表面に有する透明基材に関するものである。
・・(中略)・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の硬化性組成物は、形成される被膜の硬度や基材に対する密着性が必ずしも十分でないことがあった。また、塗料として構成したときに、多孔質シリカ微粒子の沈殿が生じ易く、基材に塗布し難いことがあった。そこで、本発明の目的は、硬度と密着性に優れる被膜を形成することができ、しかも沈殿が生じ難い安定な塗料を構成しうる硬化性組成物を提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、こうして得られる硬化性組成物を用いて、硬度と密着性に優れる硬化被膜を表面に有する透明基材を提供することにある。」

(ア-3)
「【0027】
カチオン重合性化合物と表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子との量比は適宜調整されるが、通常、前者が10?90重量%、後者が10?90重量%の範囲で用いられる。硬化被膜として反射防止膜を構成する場合は、被膜の屈折率が好ましくは1.20?1.45、より好ましくは1.25?1.41となるように、両者の量比を調整するのがよい。表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子の量があまり少ないと、屈折率が小さくならず、反射防止膜としての効果が得られ難くなり、またその量があまり多いと、被膜の強度が低下する場合がある。」

イ.甲1に記載された発明
甲1には、上記ア.で示した記載事項(特に【請求項1】、【請求項8】の各下線部)からみて、
「カチオン重合性化合物と、表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子とを含有する、1.20?1.45の屈折率を有し反射防止機能を有する被膜を形成することができる硬化性組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。

(2)甲2

ア.甲2に記載された事項
上記甲2には、第8頁第11行?第10頁中段(表)に記載されたとおりの事項、特に「実施例1(比較例)」及び「実施例2(比較例)」につき記載されている。

イ.甲2に記載された発明
甲2には、上記ア.で示した記載事項(特に「実施例2(比較例)」)からみて、
「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂86.5%、『UVR6990』なる商品名のカチオン性光重合開始剤3.0%、『フルオラドFC430』なる商品名の流れ添加剤0.5%及びシリカ10%を含有する光硬化性塗料組成物。」
に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものといえる。

(3)甲3

ア.甲3に記載された事項
上記甲3には、【0011】、【0013】、【0143】、【0145】、【0146】、【0152】、【0158】、【0159】及び【0171】に記載された事項が記載されているとともに以下の事項も記載されている。

(ア-1)
「【0146】
塗工液3
オキセタン化合物:・・(中略)・・ 4質量部
エポキシ化合物:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
0.5質量部
フッ素含有硬化性化合物(商品名E-7432、ダイキン工業(株)製)
4.5質量部
表面処理多孔質コロイダルシリカ(1-2): 15.0質量部
開始剤:トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩
0.05質量部
フッ素系添加剤:・・(中略)・・ 0.3質量部
溶剤:メチルイソブチルケトン 80.0質量部
【0147】
塗工液4
オキセタン化合物:・・(中略)・・ 3質量部
エポキシ化合物:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
0.5質量部
フッ素含有硬化性化合物:・・(中略)・・ 3.5質量部
オキセタニルメタクリレート・・(中略)・・ 1質量部
防汚性添加剤:・・(中略)・・ 0.5質量部
表面処理多孔質コロイダルシリカ(1-2): 15.0質量部
開始剤:トリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩
0.03質量部
開始剤:イルガキュア907・・(中略)・・ 0.02質量部」

(ア-2)
「【0157】
反射防止積層体の調製
〔実施例1〕
上記3.で調製した基材/ハードコート層の積層体に、前記工程で調製した低屈折率層形成用塗工液1をバーコーティングし、乾燥させることより溶剤を除去した後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン(株)製、光源Hバルブ)を用いて、照射線量200mJ/cm^(2)で紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて、基材/ハードコート層/低屈折率層の反射防止積層体を得た。膜厚は、反射率の極小値が波長550nm付近になるように調製した。
・・(中略)・・
【0159】
〔実施例3〕
前記工程で調製した低屈折率層形成用塗工液3を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、反射防止積層体を調製した。
【0160】
〔実施例4〕
前記工程で調製した低屈折率層形成用塗工液4を使用した以外は、全て実施例1と同様にして、反射防止積層体を調製した。」

イ.甲3に記載された発明
甲3には、上記ア.で示した記載事項(特に【0146】、【0147】及び【0157】ないし【0160】の特に下線部)からみて、
「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、表面処理多孔質コロイダルシリカ及び開始剤としてのトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩を含有する低屈折率層形成用塗工液。」
に係る発明(以下「甲3発明1」という。)、
「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化塗膜。」
に係る発明(以下「甲3発明2」という。)及び
「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化塗膜の製造方法。」
に係る発明(以下「甲3発明3」という。)がそれぞれ記載されているものといえる。

(4)甲4

ア.甲4に記載された事項
上記甲4には、【0044】、【0045】、【0051】及び【0052】に記載された事項に加えて、下記の事項も記載されている。

(ア-1)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に、分子内にシリル基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物80?100重量%とエポキシ化合物0?20重量%からなるカチオン重合性単量体5?90重量部、シリカ微粒子10?80重量部、及びシリコーンオイル0?15重量部を含有し、エポキシ化合物とシリコーンオイルの少なくともいずれか一方は必須に存在する組成物からの硬化被膜が形成されていることを特徴とする透明基材。
【請求項2】
シリカ微粒子が多孔質シリカ微粒子である請求項1に記載の透明基材。
【請求項3】
硬化被膜が、1.20?1.45の屈折率及び0.01?1μmの膜厚を有し、反射防止機能を有する被膜である請求項1又は2に記載の透明基材。
・・(後略)」

(ア-2)
「【0022】
シリカ微粒子が、全成分100重量部に対して10重量部に満たないと、基材との密着性が低下する可能性があり、一方、その量が80重量部を越えると、膜としての強度が低下するため、好ましくない。多孔質シリカ微粒子を用いる場合も同様で、全成分100重量部に対して10重量部に満たないと、基材との密着性が低下するほか、被膜の屈折率が小さくならず、多孔質シリカを添加する効果が発現されにくいので、好ましくない。多孔質シリカ微粒子を添加することで反射防止膜を形成する場合には、被膜の屈折率が、好ましくは1.20?1.45、より好ましくは1.25?1.41になるように、多孔質シリカ微粒子の添加量を選択するのが好ましい。」

イ.甲4に記載された発明
甲4には、上記ア.で示した記載事項(特に【請求項1】、【請求項3】、【0044】及び【0052】の特に下線部)からみて、
「分子内にシリル基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物80?100重量%とエポキシ化合物0?20重量%からなるカチオン重合性単量体5?90重量部、シリカ微粒子10?80重量部、及びシリコーンオイル0?15重量部を含有し、エポキシ化合物とシリコーンオイルの少なくともいずれか一方は必須に存在する、1.20?1.45の屈折率を有し、透明基材に反射防止機能を有する硬化被膜を形成するための組成物。」
に係る発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものといえる。

(5)他の甲号証の記載事項

ア.甲5の記載事項
甲5には、「ERL-4221」、「CYRACURE UVR 6110」及び「CYRACURE UVR 6105」なる各商品名のものがいずれも「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」なる化学名のものであることが記載されている(【0092】)。

イ.甲6の記載事項
甲6には、「Gasil^(○R) HP270」なる商品名のシリカ製品が、超高細孔容積を有し粒径が調節されていることにより、つや消し性能を発揮することが記載されている。

ウ.甲7の記載事項
甲7には、「UVR6990」なる商品名の光カチオン重合開始剤が、化学名トリフェニルスルフォニウムヘキサフロロフォスフォネート塩であることが記載されている(【0028】)。

エ.甲8の記載事項
甲8には、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキシドとスルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤とを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されており、当該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物は従来のエポキシ樹脂を用いて硬化させて得られた硬化物の場合と比較すると、透明性、耐熱性、耐アルカリ性、吸水率、吸水膨張率、寸法精度などの点で非常に良い性能を示し、その硬化物はコーティング、インキ、接着剤、シーラント、封止材、光学的立体造形用などの用途を含むさまざまな方面で有用な物性を示すことが開示されている(【0007】?【0008】)。

2.各取消理由に係る検討
以下、上記取消理由1ないし6につき、順次検討する。

2-1.取消理由1について

(1)本件発明1について

ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「カチオン重合性化合物」は、エポキシ化合物を一般に含むことが当業者に自明であるから、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」との間で、「カチオン重合性化合物」の点で共通し、また、甲1発明における「表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通する。
さらに、甲1発明における「硬化性組成物」は、本件発明1における「硬化性組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「カチオン重合性化合物と、シリカとを含有する硬化性組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点a1:本件発明1では「(A)エポキシ化合物」として「式(1)(式及びその説明は省略)で表される化合物」を使用するのに対して、甲1発明では「カチオン重合性化合物」である点
相違点a2:本件発明1では「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であ」るのに対して、甲1発明では「カチオン重合性化合物」と「表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子」との質量比につき特定されていない点
相違点a3:本件発明1では「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ、及び下記式(2)(式及びその説明は省略)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上」を使用するのに対して、甲1発明では「表面が有機基で修飾された多孔質シリカ微粒子」を使用する点
相違点a4:本件発明1では「(C)酸発生剤」を含むのに対して、甲1発明では「(C)酸発生剤」を含むことが特定されていない点

イ.検討
上記相違点a1につき検討すると、甲1には、カチオン重合性化合物として、他のエポキシ化合物を使用することについては具体的に例示・記載されているものの、本件発明1における「式(1)」で表されるエポキシ化合物を使用することについては記載されておらず、また、甲1発明における「カチオン重合性化合物」として、上記「式(1)」で表されるエポキシ化合物を使用すべき技術常識等が存するものとは認められないから、上記相違点a1については、実質的な相違点であるものと認められる。
してみると、上記相違点a2ないしa4につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえないから、同一の理由により、本件発明2及び3についても、甲1に記載された発明であるとはいえない。

(3)取消理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲1に記載された発明であるとはいえないから、取消理由1は理由がない。

2-2.取消理由2について

(1)本件発明1について

ア.対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」は、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」との間で、「エポキシ化合物」の点で共通し、また、甲2発明における「シリカ」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通する。
さらに、甲2発明における「光硬化性塗料組成物」は、硬化して塗膜なる硬化物を与えるものである点で本件発明1における「硬化性組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、
「エポキシ化合物と、シリカとを含有する硬化性組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点b1:本件発明1では「(A)エポキシ化合物」として「式(1)(式及びその説明は省略)で表される化合物」を使用するのに対して、甲2発明では「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」である点
相違点b2:本件発明1では「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であ」るのに対して、甲2発明では「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂86.5%」に対して「シリカ10%」を含有する点
相違点b3:本件発明1では「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ、及び下記式(2)(式及びその説明は省略)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上」を使用するのに対して、甲2発明では「シリカ」を使用する点
相違点b4:本件発明1では「(C)酸発生剤」を含むのに対して、甲2発明では「『UVR6990』なる商品名のカチオン性光重合開始剤」を含む点

イ.検討
上記相違点b1につき検討すると、甲2発明における「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」は、甲5の記載に照らすと、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」であり、本件発明1における「式(1)」で表されるエポキシ化合物に該当しないことが明らかであり、また、甲2の記載につき更に検討しても、本件発明1における「式(1)」で表されるエポキシ化合物を使用することについては記載されていない。
さらに、甲2発明における「『UVR6110』なる商品名の脂環式エポキシ樹脂」につき、上記「式(1)」で表されるエポキシ化合物を代替使用すべき技術常識等が存するものとは認められないから、上記相違点b1については、実質的な相違点であるものと認められる。
してみると、上記相違点b2ないしb4につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるということはできない。

ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえないから、同一の理由により、本件発明2及び3についても、甲2に記載された発明であるとはいえない。

(3)取消理由2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲2に記載された発明であるとはいえないから、取消理由2は理由がない。

2-3.取消理由3、5及び6について
いずれも甲3に記載された発明を主たる引用例とする取消理由3、5及び6につき併せて検討する。

(1)本件発明1について

ア.対比
本件発明1と甲3発明1とを対比すると、甲3発明1における「表面処理多孔質コロイダルシリカ」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通し、また、甲3発明1における「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」は、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」の「下記式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」との間で、「エポキシ化合物」である点で共通する。
そして、甲3発明1における「開始剤としてのトリアリルスルフォニウムヘキサフルオロフォスフィン塩」は、「スルフォニウム」カチオンと「ヘキサフルオロフォスフィン」アニオンとからなる塩化合物であり、本件特許明細書に記載された「一般式(c1)」に該当するものであるから、本件発明1における「酸発生剤」に相当する。
さらに、甲3発明1の「低屈折率層形成用塗工液」は、複数の成分を含み、当該塗工液により塗膜を生成した後、紫外線照射して塗膜を硬化させていることが明らかであるから、本件発明1の「硬化性組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲3発明1とは、
「(A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含む、硬化性組成物であって、
前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、シリカである、
硬化性組成物。」の点で一致し、以下の3点で相違する。

相違点c1:「エポキシ化合物」につき、本件発明1では、「式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」であるのに対して、甲3発明1では「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」である点
相違点c2:「シリカ」につき、本件発明1では、「中空シリカ」であるのに対して、甲3発明1では、「表面処理多孔質コロイダルシリカ」である点
相違点c3:本件発明1では、「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であ」るのに対して、甲3発明1では、当該含有量比につき特定されていない点

イ.検討

(ア)相違点c1について
上記相違点c1につき検討すると、甲3には、上記「エポキシ化合物」として、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を含む種々のエポキシ化合物が使用できることは記載されている(【0031】等)ものの、本件発明1における「式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」に該当する化合物、すなわち、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用することは記載されていないから、甲3発明1における「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」なる「エポキシ化合物」に代えてビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用することは、甲3発明1において当業者が適宜なし得ることではない。
してみると、上記相違点c1は、実質的な相違点であり、また、甲3発明1において当業者が当業者が適宜なし得ることともいえない。
また、甲3発明1につき他の文献に係る技術を組み合わせることにつき検討すると、甲3には、甲3発明1に係る硬化性組成物である「実施例3」及び「実施例4」につき、反射防止膜とした場合の反射率が低く、ヘイズ値が低い、すなわち透明性が高いことが開示されている(【0171】)から、甲3発明1につき他の文献に係る技術を組み合わせて「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」に代えてビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用するべき動機となる事項が存するものとも認められない。
なお、上記1.(5)エ.で示したとおり、甲8には、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキシドとスルホニウム塩などの光カチオン重合開始剤とを含有する硬化性エポキシ樹脂組成物が開示されており、当該硬化性エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物は従来のエポキシ樹脂を用いて硬化させて得られた硬化物の場合と比較すると、透明性、耐熱性、耐アルカリ性、吸水率、吸水膨張率、寸法精度などの点で非常に良い性能を示し、その硬化物はコーティング、インキ、接着剤、シーラント、封止材、光学的立体造形用などの用途を含むさまざまな方面で有用な物性を示すことが開示されてはいるが、甲8の記載(特に【0030】)を更に検討すると、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキシドを使用した「実施例1」の場合と「(ε-カプロラクトン変性)3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を使用した「比較例1」又は「比較例2」との対比において、上記「実施例1」の場合、「比較例1」又は「比較例2」の場合に比して、粘度、硬化性などの点で優れるものの、耐熱性の点で明らかに劣ることが看取できるから、甲8には、甲8に記載された技術を甲3発明1に組み合わせるべき動機となる事項が存するものとはいえない。
してみると、上記相違点c1は、甲3発明1において、甲8に記載された事項などの他の文献に係る技術を組み合わせることにより、当業者が適宜なし得ることであるということもできない。
したがって、上記相違点c1は、実質的な相違点であり、また、甲3発明1において、当業者が適宜なし得ることであるということもできない。

ウ.小括
以上のとおり、上記相違点c1は、実質的な相違点であり、また、甲3発明1において、当業者が適宜なし得ることであるということもできないのであるから、他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

(2)本件発明2及び3について

ア.対比・検討
本件発明2又は本件発明3と甲3発明2又は甲3発明3とをそれぞれ対比すると、本件発明2は「請求項1に記載の硬化性組成物を硬化した、硬化物」であるのに対して、甲3発明2は「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化被膜」である点並びに本件発明3は「請求項1に記載の硬化性組成物中の前記(C)酸発生剤から酸を発生させる工程を含む、硬化物の製造方法」であるのに対して、甲3発明3は「甲3発明1の塗工液により塗膜を生成し、紫外線照射により硬化させてなる硬化塗膜の製造方法」である点でそれぞれ相違するが、上記(1)で説示したとおり、「請求項1に記載の硬化性組成物」、すなわち本件発明1は、「塗工液」に係る甲3発明1との間で上記相違点c1の点で相違し、また、当該相違点c1につき当業者が適宜なし得るでもないことにより、甲3発明1、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできないのであるから、本件発明2又は3についても、甲3発明2又は甲3発明3、すなわち甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

イ.小括
したがって、本件発明2及び本件発明3についても、甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。

(3)取消理由3、5及び6についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲3に記載された発明であるということはできず、また、甲3に記載された発明に基づいて、又は甲3に記載された発明に他の技術を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。
よって、取消理由3、5及び6はいずれも理由がない。

2-4.取消理由4について

(1)本件発明1について

ア.対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「エポキシ化合物」は、本件発明1における「(A)エポキシ化合物」との間で、「エポキシ化合物」の点で共通し、また、甲4発明における「シリカ微粒子」は、本件発明1の「(B)シリカ又はシロキサン化合物」における「中空シリカ」との間で、「シリカ」である点で共通する。
さらに、甲4発明における「透明基材に反射防止機能を有する硬化被膜を形成するための組成物」は、硬化して反射防止機能を有する被膜なる硬化物を与えるものである点で本件発明1における「硬化性組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲4発明とは、
「エポキシ化合物と、シリカとを含有する硬化性組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違する。

相違点d1:本件発明1では「(A)エポキシ化合物」として「式(1)(式及びその説明は省略)で表される化合物」を使用するのに対して、甲4発明では「エポキシ化合物」である点
相違点d2:本件発明1では「前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であ」るのに対して、甲4発明では「分子内にシリル基を有するオキセタン化合物又はその加水分解縮合物80?100重量%とエポキシ化合物0?20重量%からなるカチオン重合性単量体5?90重量部」と「シリカ微粒子10?80重量部」である点
相違点d3:本件発明1では「(B)シリカ又はシロキサン化合物」として「中空シリカ、及び下記式(2)(式及びその説明は省略)で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上」を使用するのに対して、甲4発明では「シリカ微粒子」を使用する点
相違点d4:本件発明1では「(C)酸発生剤」を含むのに対して、甲4発明では「(C)酸発生剤」の含否につき特定されていない点

イ.検討
上記相違点d1につき検討すると、甲4には、上記「エポキシ化合物」として、「3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート」を含む種々のエポキシ化合物が使用できることは記載されている(【0014】等)ものの、本件発明1における「式(1):(式及びその説明は省略)で表される化合物」に該当する化合物、すなわち、ビシクロヘキシル-3,3’-ジエポキサイド化合物を使用することは記載されていないから、上記相違点d1は、実質的な相違点である。
したがって、上記相違点d2ないしd4につき検討するまでもなく、本件発明1が、甲4発明、すなわち甲4に記載された発明であるということはできない。

ウ.小括
よって、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、いずれも本件発明1を引用するものであるところ、上記(1)で説示したとおり、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえないから、同一の理由により、本件発明2及び3についても、甲4に記載された発明であるとはいえない。

(3)取消理由4についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし3は、いずれも甲4に記載された発明であるとはいえないから、取消理由4は理由がない。

3.取消理由1ないし6に係る検討のまとめ
よって、申立人が主張する取消理由1ないし6並びに当審が通知した取消理由5及び6は、いずれも理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正については適法であるから認めるとともに、訂正後の本件の請求項1ないし3の発明についての特許は、当審が通知した取消理由並びに申立人が主張する取消理由及び証拠方法によっては取り消すことができない。
また、ほかに訂正後の本件の請求項1ないし3の発明についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、上記結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
硬化性組成物
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ化合物を含有する硬化性組成物と、当該硬化性組成物を用いて得られる硬化物と、当該硬化物の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
透明材料を介して物を見る場合、反射光が強くなってしまうため透明材料の表面で反射像を生じ、反射した光のために、内容物や表示体が判然としない問題が生ずる。このような問題を解消するため、軽量、安全、取り扱いやすさ等のフィルムの長所を生かしつつ、フィルムの表面に機能性の薄膜を設けることにより光の反射を抑制した光学物品が、近年提案されている。
【0003】
具体的には、透明なフィルム基材上に、アルコキシシラン化合物を用いて形成された高屈折率層と、無機微粒子とシロキサン化合物とを含有する低屈折率層とがこの順で積層された光学物品が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-85579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される光学物品は反射防止性能が十分ではない。反射防止性能を改良するために、フィルム基材上に形成される層のさらなる低屈折率化が求められる。これらの問題を解消するためには、透明性に優れ、反射率及び屈折率が低い材料からなる層を形成可能な材料を用いて、フィルム上に機能層を形成する必要がある。
【0006】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、透明性に優れ、反射率及び屈折率が低い硬化物を与える硬化性組成物と、当該硬化性組成物を用いて得られる硬化物と、当該硬化物の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、硬化性組成物に、特定の構造の脂環式のエポキシ化合物と、シリカ又はシロキサン化合物と、酸発生剤とを配合することにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の第一の態様は、(A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含み、
(A)エポキシ化合物が、下記式(1):
【化1】

(式(1)中、Xは単結合、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-CH_(2)-、-C(CH_(3))_(2)-、-CBr_(2)-、-C(CBr_(3))_(2)-、-C(CF_(3))_(2)-、及び-R^(19)-O-CO-からなる群より選択される2価の基であり、R^(19)は炭素数1?8のアルキレン基であり、R^(1)?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
で表される化合物である、硬化性組成物である。
【0009】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物である。
【0010】
本発明の第三の態様は、第一の態様に係る硬化性組成物中の(C)酸発生剤から酸を発生させる工程を含む、硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性に優れ、反射率及び屈折率が低い硬化物を与える硬化性組成物と、当該硬化性組成物を用いて得られる硬化物と、当該硬化物の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、特定の構造の(A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含む。また、硬化性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、(A)?(B)の成分の他の成分を含んでいてもよい。以下、硬化性組成物に含まれる成分について説明する。
【0013】
〔(A)エポキシ化合物〕
硬化性組成物は、(A)エポキシ化合物として、下記式(1)で表されるエポキシ化合物を含む。硬化性組成物は、下記式(1)で表されるエポキシ化合物を含むため、透明性に優れ、反射率及び屈折率が低い硬化物を与える。
【0014】
【化2】

(式(1)中、Xは単結合、-O-、-O-CO-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-CH_(2)-、-C(CH_(3))_(2)-、-CBr_(2)-、-C(CBr_(3))_(2)-、-C(CF_(3))_(2)-、及び-R^(19)-O-CO-からなる群より選択される2価の基であり、R^(19)は炭素数1?8のアルキレン基であり、R^(1)?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
【0015】
式(1)中、R^(19)は、炭素数1?8のアルキレン基であり、メチレン基又はエチレン基であるのが好ましい。
【0016】
R^(1)?R^(18)が有機基である場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。ハロゲン原子の例としては、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0017】
有機基としては、炭化水素基と、炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基と、ハロゲン化炭化水素基と、炭素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基と、炭素原子、水素原子、酸素原子、及びハロゲン原子からなる基とが好ましい。有機基が炭化水素基である場合、炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも、脂肪族炭化水素基でも、芳香族骨格と脂肪族骨格とを含む基でもよい。有機基の炭素数は1?20が好ましく、1?10がより好ましく、1?5が特に好ましい。
【0018】
炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の鎖状アルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-n-プロペニル基(アリル基)、1-n-ブテニル基、2-n-ブテニル基、及び3-n-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル基等のシクロアルキル基;フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等のアラルキル基が挙げられる。
【0019】
ハロゲン化炭化水素基の具体例は、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、及びパーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、及びパーフルオロデシル基等のハロゲン化鎖状アルキル基;2-クロロシクロヘキシル基、3-クロロシクロヘキシル基、4-クロロシクロヘキシル基、2,4-ジクロロシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、3-ブロモシクロヘキシル基、及び4-ブロモシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、2,6-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2-ブロモフェニル基、3-ブロモフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基等のハロゲン化アリール基;2-クロロフェニルメチル基、3-クロロフェニルメチル基、4-クロロフェニルメチル基、2-ブロモフェニルメチル基、3-ブロモフェニルメチル基、4-ブロモフェニルメチル基、2-フルオロフェニルメチル基、3-フルオロフェニルメチル基、4-フルオロフェニルメチル基等のハロゲン化アラルキル基である。
【0020】
炭素原子、水素原子、及び酸素原子からなる基の具体例は、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、及び4-ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ鎖状アルキル基;2-ヒドロキシシクロヘキシル基、3-ヒドロキシシクロヘキシル基、及び4-ヒドロキシシクロヘキシル基等のハロゲン化シクロアルキル基;2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、及び3,5-ジヒドロキシフェニル基等のヒドロキシアリール基;2-ヒドロキシフェニルメチル基、3-ヒドロキシフェニルメチル基、及び4-ヒドロキシフェニルメチル基等のヒドロキシアラルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-ノナデシルオキシ基、及びn-イコシルオキシ基等の鎖状アルコキシ基;ビニルオキシ基、1-プロペニルオキシ基、2-n-プロペニルオキシ基(アリルオキシ基)、1-n-ブテニルオキシ基、2-n-ブテニルオキシ基、及び3-n-ブテニルオキシ基等の鎖状アルケニルオキシ基;フェノキシ基、o-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、p-トリルオキシ基、α-ナフチルオキシ基、β-ナフチルオキシ基、ビフェニル-4-イルオキシ基、ビフェニル-3-イルオキシ基、ビフェニル-2-イルオキシ基、アントリルオキシ基、及びフェナントリルオキシ基等のアリールオキシ基;ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、α-ナフチルメチルオキシ基、β-ナフチルメチルオキシ基、α-ナフチルエチルオキシ基、及びβ-ナフチルエチルオキシ基等のアラルキルオキシ基;メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロピルオキシメチル基、2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-n-プロピルオキシエチル基、3-メトキシ-n-プロピル基、3-エトキシ-n-プロピル基、3-n-プロピルオキシ-n-プロピル基、4-メトキシ-n-ブチル基、4-エトキシ-n-ブチル基、及び4-n-プロピルオキシ-n-プチル基等のアルコキシアルキル基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、n-プロピルオキシメトキシ基、2-メトキシエトキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-n-プロピルオキシエトキシ基、3-メトキシ-n-プロピルオキシ基、3-エトキシ-n-プロピルオキシ基、3-n-プロピルオキシ-n-プロピルオキシ基、4-メトキシ-n-ブチルオキシ基、4-エトキシ-n-ブチルオキシ基、及び4-n-プロピルオキシ-n-ブチルオキシ基等のアルコキシアルコキシ基;2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、及び4-メトキシフェニル基等のアルコキシアリール基;2-メトキシフェノキシ基、3-メトキシフェノキシ基、及び4-メトキシフェノキシ基等のアルコキシアリールオキシ基;ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、及びデカノイル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基、α-ナフトイル基、及びβ-ナフトイル基等の芳香族アシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、n-ブチルオキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、n-ヘキシルカルボニル基、n-ヘプチルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、及びn-デシルオキシカルボニル基等の鎖状アルキルオキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、α-ナフトキシカルボニル基、及びβ-ナフトキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基;ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、及びデカノイルオキシ基等の脂肪族アシルオキシ基;ベンゾイルオキシ基、α-ナフトイルオキシ基、及びβ-ナフトイルオキシ基等の芳香族アシルオキシ基である。
【0021】
R^(1)?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1?5のアルキル基、及び炭素数1?5のアルコキシ基からなる群より選択される基が好ましく、特に硬化性組成物を用いて得られる硬化物の硬度の観点からR^(1)?R^(18)が全て水素原子であるのがより好ましい。
【0022】
式(1)で表されるエポキシ化合物のうち、好適な化合物の具体例としては以下の化合物1及び2が挙げられる。
【化3】

【0023】
硬化性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、式(1)で表されるエポキシ化合物とともに、式(1)で表されるエポキシ化合物以外のエポキシ化合物を含んでいてもよい。式(1)で表されるエポキシ化合物ともに使用できるエポキシ化合物の例は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂等のノボラックエポキシ樹脂;トリシクロデセンオキサイド基を有するエポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の環式脂肪族エポキシ樹脂;ナフタレン型フェノール樹脂のエポキシ化物等の芳香族エポキシ樹脂;ダイマー酸グリシジルエステル、及びトリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、及びテトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂;フロログリシノールトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシビフェニルトリグリシジルエーテル、トリヒドロキシフェニルメタントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノール等の3官能型エポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルエタンテトラグリシジルエーテル、テトラグリシジルベンゾフェノン、ビスレゾルシノールテトラグリシジルエーテル、及びテトラグリシドキシビフェニル等の4官能型エポキシ樹脂;3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセニルカルボキシレート、リモネンジエポキシド、ε-カプロラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセニルカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エポキシ化3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス3-シクロヘキセニルメチルエステル、エポキシ化3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス3-シクロヘキセニルメチルエステルのε-カプロラクトン付加物、エポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス-3-シクロヘキセニルメチルエステル、及びエポキシ化ブタンテトラカルボン酸テトラキス-3-シクロヘキセニルメチルエステルのε-カプロラクトン付加物等の脂環式エポキシ樹脂である。
【0024】
硬化性組成物が式(1)で表されるエポキシ化合物の他のエポキシ化合物を含む場合、硬化性組成物中のエポキシ化合物中の総質量に対する式(1)で表されるエポキシ化合物の量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0025】
〔(B)シリカ又はシロキサン化合物〕
シリカ又はシロキサン化合物は、特に限定されず種々使用することができる。本出願の明細書及び特許請求の範囲では、Si-O-Si結合を有するシロキサン化合物であってシリカ(二酸化ケイ素)以外の化合物を「シロキサン化合物」と称する。
【0026】
シリカ又はシロキサン化合物の中では、内部に空間を有するものが好ましい。内部に空間を有するシリカ又はシロキサン化合物を用いることで、透過率に優れ、反射率が低く、硬度の高い硬化物を与える硬化性組成物を得やすい。内部に空間を有するシリカ又はシロキサン化合物の好適な例としては、中空シリカ、多孔質シリカ、及びかご型シルセスキオキサン等が挙げられる。
【0027】
中空シリカは、市販されているものを用いても、合成したものを用いてもよい。中空シリカは、例えば以下に説明するような方法で合成することができる。
【0028】
まず、無機酸化物の存在下に、ケイ酸塩水溶液中のケイ酸ナトリウムのようなケイ酸塩を反応させて無機酸化物とシリカとからなる核粒子を調製する。無機酸化物としては、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、TiO_(2)、ZrO_(2)、SnO_(2)、Ce_(2)O_(3)、P_(2)O_(5)、Sb_(2)O_(3)、MoO_(3)、ZnO_(2)、WO_(3)等が挙げられる。核粒子の分散液中で、水ガラスのようなケイ酸塩水溶液や、メチルシリケートやエチルシリケートのような加水分解性基を有するケイ素化合物を縮合させて、シリカ被覆層により被覆された核粒子を調製する。シリカ被覆層により被覆された核粒子を酸により処理し、核粒子中の無機酸化物成分を除去することにより、1又は複数の空洞を内部に有する中空シリカ粒子が得られる。表面にシリカ被覆層を備える中空のシリカ粒子を、さらにケイ酸塩水溶液や加水分解性基を有するケイ素化合物で、所望する回数処理することで、多層構造のシリカ被覆層を表面に備える中空シリカ粒子を調製することもできる。
【0029】
多孔質シリカは、市販されているものを用いても、合成したものを用いてもよい。多孔質シリカは、例えば、メチルシリケートやエチルシリケートのような加水分解性基を有するケイ素化合物を、アンモニアのような塩基の存在下に加水分解重縮合させる方法や、ポリビニルアルコールやセルロースのような高分子の存在下に加水分解重縮合させる方法により合成することができる。
【0030】
かご型シルセスキオキサンは、下記式(2)で表される化合物であって、中空構造のかご型の分子構造を有する。例えば、オクタヘドラル構造を有するかご型シルセスキオキサンは下記式(3)で表される。
(RSiO_(3/2))_(p)・・・(2)
〔式(2)中、Rは、水酸基、水素原子、及び有機基からなる群より選択される基であり、pは6以上の偶数である。〕
【0031】
かご型シルセスキオキサンがRとして水酸基(シラノール基)を有する場合、かご型シルセスキオキサンは、その一部又は全部が、シラノール基の脱水縮合により生成する、例えば2?5量体、好ましくは2?3量体であるオリゴマーであってもよい。
【0032】
【化4】

〔式(3)中、R^(19)?R^(26)はそれぞれ独立に、水酸基、水素原子、及び有機基からなる群より選択される基である。〕
【0033】
かご型シルセスキオキサンに含まれるケイ素原子数は、6、8、10、又は12が好ましい。ケイ素原子数が12より多いかご型シルセスキオキサンは、合成が困難であり入手が容易でない。ケイ素原子数が8であるかご型シルセスキオキサンについて、様々な置換基を有するものが合成されており、その合成方法は、Chem.Rev.,Vol.96,2205-2236(1996)に開示されており、工業的に入手することも可能である。
【0034】
かご型シルセスキオキサンが有機基を有する場合、有機基は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、炭化水素基であっても、炭素原子とハロゲン原子とからなる基であっても、炭素原子及び水素原子とともにハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ケイ素原子のようなヘテロ原子を含むような基であってもよい。有機基としては炭化水素基が好ましく、フェニル基、炭素数1?20のアルキル基がより好ましい。
【0035】
以上説明したかご型シルセスキオキサンの中では、透過率、屈折率、及び硬度等に優れる硬化物を与える硬化性組成物を得やすいことから、R^(19)?R^(26)が全て水酸基である式(3)で表されるかご型シルセスキオキサンが好ましい。また、R^(19)?R^(26)が全て水酸基である式(3)で表されるかご型シルセスキオキサンは、その一部又は全部が、シラノール基の脱水縮合により生成する、例えば2?5量体、好ましくは2?3量体であるオリゴマーであってもよい。
【0036】
硬化性組成物中のシリカ又はシロキサン化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、硬化性組成物中のシリカ又はシロキサン化合物の含有量は、式(1)で表されるエポキシ化合物100質量部に対して、10?100質量部が好ましく、10?50質量部がより好ましく、20?50質量部が特に好ましい。
【0037】
〔(C)酸発生剤〕
酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤、又は加熱により酸を発生する熱酸発生剤が好適に使用される。
【0038】
光酸発生剤としては、以下に説明する、第一?第五の態様の酸発生剤が好ましい。以下、光酸発生剤のうち好適なものについて、第一から第五の態様として説明する。
【0039】
光酸発生剤における第一の態様としては、下記一般式(c1)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化5】

【0041】
上記一般式(c1)中、X^(1c)は、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R^(1c)は、X^(1c)に結合している有機基であり、炭素数6?30のアリール基、炭素数4?30の複素環基、炭素数1?30のアルキル基、炭素数2?30のアルケニル基、又は炭素数2?30のアルキニル基を表し、R^(1c)は、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R^(1c)の個数はg+h(g-1)+1であり、R^(1c)はそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR^(1c)が互いに直接、又は-O-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-NH-、-NR^(2c)-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1?3のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、X^(1c)を含む環構造を形成してもよい。R^(2c)は炭素数1?5のアルキル基又は炭素数6?10のアリール基である。
【0042】
X^(2c)は下記一般式(c2)で表される構造である。
【化6】

【0043】
上記一般式(c2)中、X^(4c)は炭素数1?8のアルキレン基、炭素数6?20のアリーレン基、又は炭素数8?20の複素環化合物の2価の基を表し、X^(4c)は炭素数1?8のアルキル、炭素数1?8のアルコキシ、炭素数6?10のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X^(5c)は-O-、-S-、-SO-、-SO_(2)-、-NH-、-NR^(2c)-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素数1?3のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。h+1個のX^(4c)及びh個のX^(5c)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R^(2c)は前述の定義と同じである。
【0044】
X^(3c-)はオニウムの対イオンであり、下記式(c17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(c18)で表されるボレートアニオンが挙げられる。
【0045】
【化7】

【0046】
上記式(c17)中、R^(3c)は水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。jはその個数を示し、1?5の整数である。j個のR^(3c)はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0047】
【化8】

【0048】
上記式(c18)中、R^(4c)?R^(7c)は、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0049】
上記一般式(c1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、又は4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
【0050】
上記一般式(c1)で表される化合物中のオニウムイオンのうち、好ましいオニウムイオンとしては下記一般式(c19)で表されるスルホニウムイオンが挙げられる。
【0051】
【化9】

【0052】
上記式(c19)中、R^(8c)はそれぞれ独立に水素原子、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルオキシカルボニル、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアリール、アリールカルボニル、からなる群より選ばれる基を表す。X^(2c)は、上記一般式(c1)中のX^(2c)と同じ意味を表す。
【0053】
上記式(c19)で表されるスルホニウムイオンの具体例としては、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウムが挙げられる。
【0054】
上記一般式(c17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R^(3c)はフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素数は1?8、さらに好ましい炭素数は1?4である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記一般式(c1)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0055】
特に好ましいR^(3c)は、炭素数が1?4、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF_(3)、CF_(3)CF_(2)、(CF_(3))_(2)CF、CF_(3)CF_(2)CF_(2)、CF_(3)CF_(2)CF_(2)CF_(2)、(CF_(3))_(2)CFCF_(2)、CF_(3)CF_(2)(CF_(3))CF、(CF_(3))_(3)Cが挙げられる。R^(3c)の個数jは、1?5の整数であり、好ましくは2?4、特に好ましくは2又は3である。
【0056】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CF_(3)CF_(2))_(2)PF_(4)]^(-)、[(CF_(3)CF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CF)_(2)PF_(4)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CF)_(3)PF_(3)]^(-)、[(CF_(3)CF_(2)CF_(2))_(2)PF_(4)]^(-)、[(CF_(3)CF_(2)CF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CFCF_(2))_(2)PF_(4)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CFCF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)、[(CF_(3)CF_(2)CF_(2)CF_(2))_(2)PF_(4)]^(-)、又は[(CF_(3)CF_(2)CF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)が挙げられ、これらのうち、[(CF_(3)CF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)、[(CF_(3)CF_(2)CF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CF)_(3)PF_(3)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CF)_(2)PF_(4)]^(-)、[((CF_(3))_(2)CFCF_(2))_(3)PF_(3)]^(-)、又は[((CF_(3))_(2)CFCF_(2))_(2)PF_(4)]^(-)が特に好ましい。
【0057】
上記一般式(c18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C_(6)F_(5))_(4)]^(-))、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(C_(6)H_(4)CF_(3))_(4)]^(-))、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C_(6)F_(5))_(2)BF_(2)]^(-))、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C_(6)F_(5))BF_(3)]^(-))、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C_(6)H_(3)F_(2))_(4)]^(-))等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C_(6)F_(5))_(4)]^(-))が特に好ましい。
【0058】
光酸発生剤における第二の態様としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-エチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-プロピル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジエトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジプロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-エトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-プロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリス(1,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記一般式(c3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0059】
【化10】

【0060】
上記一般式(c3)中、R^(9c)、R^(10c)、R^(11c)は、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0061】
また、光酸発生剤における第三の態様としては、α-(p-トルエンスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,4-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,6-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(2-クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)-1-シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記一般式(c4)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化11】

【0063】
上記一般式(c4)中、R^(12c)は、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R^(13c)は、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族性化合物基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0064】
上記一般式(c4)中、芳香族性化合物基とは、芳香族化合物に特有な物理的・化学的性質を示す化合物の基を示し、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R^(13c)は、炭素数1?6のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R^(12c)が芳香族性化合物基であり、R^(13c)が炭素数1?4のアルキル基である化合物が好ましい。
【0065】
上記一般式(c4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R^(12c)がフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R^(13c)がメチル基の化合物、具体的にはα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メチルフェニル)アセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)-2,3-ジヒドロキシチオフェン-3-イリデン〕(o-トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記一般式(c4)で表される光酸発生剤としては、具体的には下記式で表される光酸発生剤が挙げられる。
【0066】
【化12】

【0067】
また、光酸発生剤における第四の態様としては、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩が挙げられる。この「ナフタレン環を有する」とは、ナフタレンに由来する構造を有することを意味し、少なくとも2つの環の構造と、それらの芳香族性が維持されていることを意味する。このナフタレン環は炭素数1?6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、水酸基、炭素数1?6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基等の置換基を有していてもよい。ナフタレン環に由来する構造は、1価基(遊離原子価が1つ)であっても、2価基(遊離原子価が2つ)以上であってもよいが、1価基であることが望ましい(ただし、このとき、上記置換基と結合する部分を除いて遊離原子価を数えるものとする)。ナフタレン環の数は1?3が好ましい。
【0068】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のカチオン部としては、下記一般式(c5)で表される構造が好ましい。
【化13】

【0069】
上記一般式(c5)中、R^(14c)、R^(15c)、R^(16c)のうち少なくとも1つは下記一般式(c6)で表される基を表し、残りは炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、水酸基、又は炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表す。あるいは、R^(14c)、R^(15c)、R^(16c)のうちの1つが下記一般式(c6)で表される基であり、残りの2つはそれぞれ独立に炭素数1?6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。
【0070】
【化14】

【0071】
上記一般式(c6)中、R^(17c)、R^(18c)は、それぞれ独立に水酸基、炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基、又は炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R^(19c)は、単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。l及びmは、それぞれ独立に0?2の整数を表し、l+mは3以下である。ただし、R^(17c)が複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。また、R^(18c)が複数存在する場合、それらは互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
上記R^(14c)、R^(15c)、R^(16c)のうち上記式(c6)で表される基の数は、化合物の安定性の点から好ましくは1つであり、残りは炭素数1?6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、これらの末端が結合して環状になっていてもよい。この場合、上記2つのアルキレン基は、硫黄原子を含めて3?9員環を構成する。環を構成する原子(硫黄原子を含む)の数は、好ましくは5?6である。
【0073】
また、上記アルキレン基が有していてもよい置換基としては、酸素原子(この場合、アルキレン基を構成する炭素原子とともにカルボニル基を形成する)、水酸基等が挙げられる。
【0074】
また、フェニル基が有していてもよい置換基としては、水酸基、炭素数1?6の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基、炭素数1?6の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられる。
【0075】
これらのカチオン部として好適なものとしては、下記式(c7)、(c8)で表されるもの等を挙げることができ、特に下記式(c8)で表される構造が好ましい。
【化15】

【0076】
このようなカチオン部としては、ヨードニウム塩であってもスルホニウム塩であってもよいが、酸発生効率等の点からスルホニウム塩が望ましい。
【0077】
従って、カチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩のアニオン部として好適なものとしては、スルホニウム塩を形成可能なアニオンが望ましい。
【0078】
このような酸発生剤のアニオン部としては、水素原子の一部又は全部がフッ素化されたフルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンである。
【0079】
フルオロアルキルスルホン酸イオンにおけるアルキル基は、炭素数1?20の直鎖状でも分岐状でも環状でもよく、発生する酸の嵩高さとその拡散距離から、炭素数1?10であることが好ましい。特に、分岐状や環状のものは拡散距離が短いため好ましい。また、安価に合成可能なことから、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等を好ましいものとして挙げることができる。
【0080】
アリールスルホン酸イオンにおけるアリール基は、炭素数6?20のアリール基であって、アルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもされていなくてもよいフェニル基、ナフチル基が挙げられる。特に、安価に合成可能なことから、炭素数6?10のアリール基が好ましい。好ましいものの具体例として、フェニル基、トルエンスルホニル基、エチルフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等を挙げることができる。
【0081】
上記フルオロアルキルスルホン酸イオン又はアリールスルホン酸イオンにおいて、水素原子の一部又は全部がフッ素化されている場合のフッ素化率は、好ましくは10?100%、より好ましくは50?100%であり、特に水素原子を全てフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。このようなものとしては、具体的には、トリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネート、パーフルオロオクタンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0082】
これらの中でも、好ましいアニオン部として、下記一般式(c9)で表されるものが挙げられる。
【化16】
R^(20c)SO_(3)^(-) (c9)
【0083】
上記式(c9)において、R^(20c)は、下記式(c10)、(c11)で表される基や、下記式(c12)で表される基である。
【化17】

【0084】
上記式(c10)中、xは1?4の整数を表す。また、上記式(c11)中、R^(21c)は、水素原子、水酸基、炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1?6の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1?3の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0085】
また、アニオン部としては、下記式(c13)、(c14)で表される窒素を含有するものを用いることもできる。
【0086】
【化18】

【0087】
上記式(c13)、(c14)中、X^(c)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素数は2?6であり、好ましくは3?5、最も好ましくは炭素数3である。また、Y^(c)、Z^(c)は、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素数は1?10であり、好ましくは1?7、より好ましくは1?3である。
【0088】
X^(c)のアルキレン基の炭素数、又はY^(c)、Z^(c)のアルキル基の炭素数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0089】
また、X^(c)のアルキレン基又はY^(c)、Z^(c)のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70?100%、より好ましくは90?100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0090】
このようなカチオン部にナフタレン環を有するオニウム塩として好ましいものとしては、下記式(c15)、(c16)で表される化合物が挙げられる。
【0091】
【化19】

【0092】
また、光酸発生剤における第五の態様としては、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N-メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-フェニルスルホニルオキシマレイミド、N-メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N-ヒドロキシフタルイミド、N-ヒドロキシナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α-メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0093】
熱酸発生剤の好適な例としては、有機スルホン酸のオキシムエステル化合物、2,4,4,6-テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2-ニトロベンジルトシレート、その他の有機スルホン酸のアルキルエステル等が挙げられる。また、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩等も熱酸発生剤として適宜使用することが可能である。これらの中では、加熱されない状態での安定性に優れることから、有機スルホン酸のオキシムエステル化合物が好ましい。
【0094】
硬化性組成物中の酸発生剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成部中の酸発生剤の含有量は、硬化性組成物中のエポキシ化合物の総量100質量に対して、0.1?50質量部が好ましく、0.5?30質量部がより好ましく、1?20質量部が特に好ましい。
【0095】
〔その他の成分〕
硬化性組成物には、必要に応じて各種の添加剤を加えてもよい。具体的には、溶剤、増感剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、密着増強剤、及び界面活性剤等が例示される。これらの添加剤の使用量は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、添加剤の種類に応じて適宜決定される。
【0096】
≪硬化性組成物の製造方法≫
硬化性組成物の製造方法は特に限定されない。硬化性組成物は、以上説明した、(A)エポキシ化合物、(B)シリカ又はシロキサン化合物、及び(C)酸発生剤と、必要に応じてその他の成分とを、公知の混合装置により均一に混合することにより製造できる。
【0097】
≪硬化物の製造方法≫
以上説明した硬化性組成物は周知の方法に従って、硬化させることができる。具体的には、種々の基板表面や各種部品中の硬化物の形成箇所に、硬化性組成物を塗布又は充填した後に、硬化性組成物を硬化させればよい。硬化性組成物を硬化させる際には、酸発生剤より酸を発生させる。酸を発生させる方法は、酸発生剤の種類に応じて、硬化性組成物への紫外線又は電子線等の活性エネルギー線のような光の照射と、硬化性組成物の加熱とから選択される。光の照射により、硬化性組成物を硬化させる際の光源としては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯等が用いられる。
【0098】
また、酸発生剤が光酸発生剤である場合、所望するパターンのマスクを介して硬化性組成物を露光することによって、硬化物のパターンを形成することもできる。硬化物のパターンを形成する場合には、露光後に、適当な有機溶剤を用いて非露光部を除去することで、パターンを現像することができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以降、実施例2、4、5はそれぞれ参考例2、4、5に読み替えるものとする。
【0100】
[調製例1]
(中空シリカの調製)
平均粒子径5nm、SiO_(2)濃度20質量%のシリカゾル100gと、純水1900gとの混合物を80℃に加熱し反応母液を得た。反応母液のpHは10.5であった。反応母液の温度を80℃に保持しながら、SiO_(2)として濃度0.76質量%のケイ酸ナトリウム水溶液9000gと、Al_(2)O_(3)として濃度1.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液9000gとを、反応母液に同時に添加した。反応母液のpHは、ケイ酸ナトリウム水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液の添加直後に12.5まで上昇したが、その後、殆ど変化しなかった。ケイ酸ナトリウム水溶液及びアルミン酸ナトリウム水溶液の添加後、反応母液を室温まで冷却し、限外ろ過膜で洗浄して固形分濃度20質量%のSiO_(2)・Al_(2)O_(3)核粒子分散液を調製した。
【0101】
得られた核粒子分散液500gに純水1700gを加えた後、希釈された核粒子分散液を98℃に加温した。同温度を保持しながら、ケイ酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO_(2)濃度3.5質量%)3000gを核粒子分散液に添加して、核粒子の表面に第1シリカ被覆層が形成された被覆粒子の分散液を得た。
【0102】
次いで、限外ろ過膜を用いて洗浄された後に固形分濃度13質量%に調製された被覆粒子の分散液500gに純水1125gを加えた。希釈された被覆粒子の分散液のpHを、濃度35.5質量%の塩酸水溶液を用いて1.0に調製して、被覆粒子からアルミニウム成分を除いた。次いで、脱アルミニウム処理された被覆粒子を含む分散液に、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加えて、限外濾過膜を用いて水に溶解したアルミニウム塩を分離して、第1シリカ被覆層を備える中空シリカ微粒子を形成した。
【0103】
得られた第1シリカ被覆層を備える中空シリカ微粒子を含む分散液1500gと、純水500gと、エタノール1750gと、濃度28質量%のアンモニア水626gとの混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO_(2)濃度28質量%)104gを混合液に添加した。混合液を撹拌して、第1シリカ被覆層の表面をエチルシリケートの加水分解重縮合物で被覆して第2シリカ被覆層を形成することで、第1シリカ被覆層と第2シリカ被覆層とを備える中空シリカの分散液を得た。得られた中空シリカの分散液中の分散媒を、限外ろ過膜を用いてエタノールに置換して、固形分濃度20質量%の中空シリカ微粒子の分散液を得た。得られた中空シリカの分散液を真空乾燥して中空シリカの粉末を得た。中空シリカ粉末の平均粒子径は53nmであった。
【0104】
[調製例2]
(多孔質シリカの調製)
テトラメトキシシラン100gとメタノール530gとを混合して混合液を得た。混合液に室温で23.5gのアンモニア水を添加した後、混合液を24時間撹拌した。その後、混合液を24時間還流してアンモニアを除去してさらに濃縮し、平均粒子径が10nmの多孔質シリカを含むシリカゾル(固形分20質量%)を得た。得られたシリカゾルを真空乾燥して多孔質シリカの粉末を得た。
【0105】
実施例1?5、比較例3、及び比較例4ではエポキシ化合物として以下の化合物1、化合物2、及び化合物3を用いた。
【化20】

【0106】
実施例1?5及び比較例4ではシリカ又はシロキサン化合物として以下のA?Cを用いた。
A:調製例1で得られた中空シリカ粉末
B:調製例2で得られた多孔質シリカ粉末
C:前述の式(3)で表される構造であり、R^(19)?R^(26)が全て水酸基であるかご型シルセスキオキサン(一部2量体及び3量体を含む。)
D:シリカゲル粉末
【0107】
実施例1?5、比較例3、及び比較例4では酸発生剤として、光酸発生剤である下記式の化合物を用いた。
【化21】

【0108】
[実施例1?5、及び比較例4]
酸発生剤0.1gと表1に記載のエポキシ化合物10gとを均一に混合した。得られた混合物と、表1に記載のシリカ又はシロキサン化合物5gとを室温で30分間撹拌して、実施例1?5、及び比較例4の硬化性組成物を得た。
【0109】
[比較例1]
メチルトリメトキシシラン60g、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン41.2g、2-プロパノール300g、及び2-プロパノール分散型中空シリカゾル(屈折率1.30、固形分20.5質量%)188gを反応容器に入れ、反応容器の内容物を均一に混合した。反応液の内容物を撹拌しながら、反応容器の内温が40℃を超えないように1Nギ酸水溶液34.84gを反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器の内容物を1時間撹拌した。その後、70℃に設定されたオイルバスを用いて反応容器を加熱しながら、反応容器の内容物を2時間撹拌した。反応容器の内容物を室温まで冷却して、ポリマー溶液B1を得た。得られたポリマー溶液B1、メタノール356g、アルミニウムトリスアセチルアセトネート5g、2-プロパノール1890g、メチルイソブチルケトン720g、及び含フッ素シロキサン系表面改質剤10gを混合して、シロキサン系低屈折率樹脂組成物の溶液である比較例1の硬化性組成物を得た。
【0110】
[比較例2]
メチルトリメトキシシラン60g、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン41.2g、2-プロパノール300g、及び2-プロパノール分散型中空シリカゾル(屈折率1.30、固形分20.5質量%)212gを反応容器に入れ、反応溶液の内容物を均一に混合した。反応液の内容物を撹拌しながら、反応容器の内温が40℃を超えないように1Nギ酸水溶液34.84gを反応容器内に滴下した。滴下終了後、反応容器の内容物を1時間撹拌した。その後、70℃に設定されたオイルバスを用いて反応容器を加熱しながら、反応容器の内容物を2時間撹拌した。反応容器の内容物を室温まで冷却して、ポリマー溶液B2を得た。得られたポリマー溶液B2、メタノール356g、アルミニウムトリスアセチルアセトネート5g、2-プロパノール1890g、メチルイソブチルケトン720g、及び含フッ素シロキサン系表面改質剤10gを混合して、シロキサン系低屈折率樹脂組成物の溶液である比較例2の硬化性組成物を得た。
【0111】
[比較例3]
シリカ又はシロキサン化合物を用いないことの他は、実施例1と同様にして硬化性組成物を得た。
【0112】
以下の方法に従って、実施例及び比較例で得た硬化性組成物を用いて形成した硬化膜の、透過率、反射率、屈折率、及び鉛筆硬度を評価した。これらの評価結果を表1に記す。
【0113】
<透過率及び反射率>
各実施例及び比較例の硬化性組成物をガラス基板上にスピンコートした。次いで、ガラス基板上の硬化性組成物の塗布膜をホットプレート上で80℃120秒加熱乾燥させた後、ブロードバンド光で塗布膜を露光して硬化膜を形成させた。
分光測定器(MCPD-3000、大塚電子株式会社製)を用いて、測定波長範囲350?800nmで、得られた硬化膜の透過率と、反射率との測定を行った。
透過率について、96%以上を◎と判定し、95%以上96%未満を○と判定し、95%未満を×と判定した
反射率について、0.5%未満を○と判定し、0.5%以上を×と判定した。
【0114】
<屈折率>
各実施例及び比較例の硬化性組成物を6インチシリコンウエハ上にスピンコートして塗布膜を形成し、透過率及び反射率の測定と同様にして塗布膜を硬化させて硬化膜を形成した。
MOSS多層膜分光エリプソ(J.A.WOOLLAM.社製)を用いて、得られた硬化膜の、23℃での633nmの屈折率を測定した。
屈折率1.32以下を◎と判定し、1.32超1.35以下を○と判定し、1.35超を×と判定した。
【0115】
<鉛筆硬度>
透過率及び反射率の測定と同様にして形成された硬化膜について、鉛筆を用いて、荷重1kg±50g、5回の硬度試験を行い、荷重印加後の傷の有無を観察した。5回の試験で硬化膜に傷が付かなかった鉛筆硬度のうち、最も固い鉛筆硬度を試験結果とした。
鉛筆硬度9H以上を◎と判定し、5H以上9H未満を○と判定し、5H未満を×と判定した。
【0116】
【表1】

【0117】
実施例1?5によれば、式(1)で表されるエポキシ化合物と、シリカ又はシロキサン化合物と、酸発生剤とを含む硬化性組成物を用いて形成された硬化膜は、透明性に優れ、反射率及び屈折率が低いことが分かる。また、実施例1?4によれば、シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、多孔質シリカ、及びかご型シルセスキオキサン化合物のような内部に空間を有するものである場合、硬化膜は、透過率及び屈折率が特に優れ、硬度も優れることが分かる。
【0118】
他方、比較例1及び2の硬化性組成物のような、従来、光学物品用の透明膜の形成に使用されているシロキサン系低屈折率樹脂組成物を用いる場合、透明性、反射率、屈折率、及び硬度の全ての評価結果が良好な膜を形成できなかった。また、比較例3によれば、式(1)で表されるエポキシ化合物を含んでいても、シリカ又はシロキサン化合物を含まない硬化性組成物を用いて形成された硬化膜は、反射率及び屈折率の評価結果が劣ることがわかる。さらに、比較例4によれば、シリカ又はシロキサン化合物と、式(1)で表されるエポキシ化合物以外のエポキシ化合物とを組み合わせて含む硬化性組成物を用いて形成された硬化膜は、透過率及び硬度の評価結果が劣ることがわかる。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ化合物と、(B)シリカ又はシロキサン化合物と、(C)酸発生剤とを含み、
前記(A)エポキシ化合物が、下記式(1):
【化1】

(式(1)中、Xは単結合であり、R^(19)は炭素数1?8のアルキレン基であり、R^(1)?R^(18)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、及び有機基からなる群より選択される基である。)
で表される化合物である、硬化性組成物であって、
前記(B)シリカ又はシロキサン化合物の含有量が、前記式(1)で表される化合物100質量部に対して、10?100質量部であり、
前記(B)シリカ又はシロキサン化合物が、中空シリカ、及び下記式(2):
(RSiO_(3/2))_(p)・・・(2)
(式(2)中、Rは、水酸基、及び水素原子からなる群より選択される基であり、pは6以上の偶数である。)
で表されるかご型シルセスキオキサン化合物からなる群より選択される1種以上である、硬化性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の硬化性組成物を硬化した、硬化物。
【請求項3】
請求項1に記載の硬化性組成物中の前記(C)酸発生剤から酸を発生させる工程を含む、硬化物の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-02-18 
出願番号 特願2013-42223(P2013-42223)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
P 1 651・ 113- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 のぞみ大久保 智之  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 橋本 栄和
井上 猛
登録日 2017-06-23 
登録番号 特許第6161332号(P6161332)
権利者 東京応化工業株式会社
発明の名称 硬化性組成物  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  

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