• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1350923
審判番号 不服2018-1505  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2019-04-18 
事件の表示 特願2016-129593「ゲームシステム、ゲームの制御方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-185385〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月30日に出願した特願2013-203195号(以下「原出願」という。)の一部を平成27年9月29日に新たな特許出願とした特願2015-191863号の一部を平成28年6月30日に新たな特許出願としたものであって、同年9月30日付けで手続補正がなされ、平成29年1月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月16日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年6月1日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年8月4日付けで意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年10月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年2月2日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、その後、当審において、同年8月7日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年10月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成30年10月16日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「複数のユーザがそれぞれ使用する複数の通信端末と、前記複数の通信端末と通信可能なサーバと、を備えるゲームシステムであって、
ゲーム内における対戦処理に参加する第1の通信端末は、第1の信号を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、
前記複数のユーザに関する情報を記憶し、
前記第1の信号を受信すると、第2の信号を、前記対戦処理に参加しない複数の第2の通信端末へ送信し、
1以上の前記第2の通信端末それぞれは、前記第2の信号を受信すると、前記第2の通信端末のユーザが前記第2の信号に応答することを前記第2の通信端末に入力する第1のユーザ操作に応じて応答信号を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、前記サーバへ前記応答信号を送信した第2の通信端末の数が所定数に達した場合、前記第1の通信端末のユーザに関する情報のうち、前記対戦処理の進行処理に用いられるパラメータを向上させ、前記応答信号を送信した前記1以上の第2の通信端末それぞれのユーザに対してゲーム内で用いられるゲーム媒体を付与し、
前記第1の通信端末は、前記パラメータに関する情報と、前記応答信号を送信した前記1以上の第2の通信端末それぞれのユーザに関する情報と、を表示し、
前記1以上の第2の通信端末それぞれは、前記ゲーム媒体に関する情報を表示する、ゲームシステム。」(以下「本願発明」という。)


第3 引用刊行物等
1.引用刊行物等の記載
(1)引用例1
当審の拒絶の理由に引用し、本願の原出願の出願日前である平成17年4月14日に頒布された刊行物である特開2005-95601号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0006】
そこで、複数の端末と当該端末のサーバとの間でインターネット等のネットワークを介した伝送を行う技術において、端末に伝送される情報量そのものを小さくする(例えばグラフィックの質を落とす)のではなく、効率的に伝送を行うことで、サーバにかかる負荷をできるだけ小さく抑えることのできるデータ伝送技術が求められている。」
イ.「【0026】
このシステムにおいて、ユーザ端末UT1は、代表端末としてゲームサーバ1との間で情報の伝送を行う。具体的には、ゲームサーバ1は、各ユーザ端末UT1?UT6においてゲームを進行させるために必要なデータ(以下、配信ゲームデータ)を代表端末に送信する。配信ゲームデータは、例えばゲーム内におけるユーザグループの位置データや背景データ、天候データ、グラフィックデータ等である。代表端末であるユーザ端末UT1では、配信ゲームデータを受信して当該代表端末におけるゲーム進行を行うとともに、受信した配信ゲームデータを、ユーザグループ内の他のユーザ端末UT2?UT6に送信する。このように、ユーザグループの代表端末であるユーザ端末UT1はゲームサーバ1から配信ゲームデータを受信するが、ユーザグループの他のユーザ端末であるユーザ端末UT2?UT6は、代表端末から配信ゲームデータを受信する。
【0027】
配信ゲームデータは、上述のように、ゲームサーバ1から代表端末へと送信されるデータであり、例えば各ユーザ端末UT1?UT6に表示されるゲームの動画や静止画等のグラフィックデータ、ゲーム内での天候を表す天候データ、及びゲーム内での島の位置や海図等のマップデータである。このように、本発明では、ゲームサーバから代表端末で受信したデータ(本実施形態では配信ゲームデータ)を使用したネットワークゲームを、ユーザグループ内の他のユーザ端末が代表端末と協働して進行させるようになっている。ここで、配信ゲームデータは、少なくともその一部は各ユーザ端末において共通して必要となるデータである。後述するように、本実施形態では、同じユーザグループに属する各ユーザ端末に対応するゲーム内のキャラクタは、同じ船に乗って航海しているので、この船に関するグラフィック及び船の近傍のマップデータ等が各ユーザ端末で共通して必要とされる。また、個々のユーザ端末に接続されたディスプレイに、ゲームサーバから得られた3次元グラフィックデータに基づいて、個々のキャラクタの視点からみた2次元画像が表示される場合は、各ディスプレイに表示される画像自体は互いに異なるものとなる。しかし、この場合でも、ディスプレイに表示される各キャラクタの視点からみた2次元画像を生成するために必要となる船や船の近傍の3次元グラフィックデータは、各ユーザ端末において共通である。
以上のように、本実施形態では、その少なくとも一部が各ユーザ端末で共通して必要となるデータ、例えばグラフィックデータ等の配信ゲームデータをゲームサーバからユーザグループの代表端末に送り、個々のユーザ端末が代表端末から配信ゲームデータを受信するようになっている。従って、配信ゲームデータをゲームサーバからユーザグループの個々の端末に個別に送信するという従来技術に比較して、サーバからユーザグループに伝送するデータ量を少なくすることができ、サーバにかかる負荷を減少させることができる。
【0028】
また、代表端末は、ユーザグループデータをゲームサーバ1に送信する。ユーザグループデータは、ユーザグループに関する情報を表すデータであり、個々のユーザ端末自体に関連する端末データと、ユーザグループにおける共有データであるグループ共有データとを含む。…」
ウ.「【0032】
図1のシステムにおいては、ゲームサーバ1からは、ネットワークNを通じて代表端末に配信ゲームデータが送信される。ユーザ端末UT1?UT6は、それぞれピアツーピア接続されており、上述のように受信した配信ゲームデータがユーザグループ内で伝送される。この実施形態では、配信ゲームデータは代表端末に送信されて代表端末のデータ記録部(後述する図4のデータ記録部32)に記録され、他のユーザ端末がピアツーピア接続を介してこの配信ゲームデータを取得するようにした。

【0034】
また、本実施形態では、ユーザは最初にゲームを開始するときは、既存のユーザグループに加入するか、あるいは、当該ユーザ端末が「所属するユーザ端末数が1台であるユーザグループ」となってゲームに参加する。従って、ユーザグループは、新規ユーザ端末の加入や離脱によりその規模が変動することになる。
最初にユーザグループが形成されるときには、代表端末となったユーザ端末で端末データとグループ共有データとを含むユーザグループデータを生成して代表端末のデータ記録部に記録するとともに、ゲームサーバ1にユーザグループデータを送信し、更にゲームサーバ1から配信ゲームデータを受信する。代表端末となったユーザ端末においては、ゲームサーバ1から受信した配信ゲームデータに基づいてゲームを進行させる。代表端末ではないユーザ端末では、代表端末を通じて得られる配信ゲームデータ及びユーザグループデータ等に基づいてゲームが進行される。ゲームサーバ1から受信した配信ゲームデータ及びグループ化された端末を特定するためのユーザグループデータは、ピアツーピア接続によってユーザ端末間で伝送される。」
エ.「【0038】
図2において、ゲーム管理部112は、ゲームサーバ1に接続されるユーザ端末におけるゲーム進行を管理する。例えば、ゲーム管理部112は、ゲームにおける戦闘やアイテム発見等のイベントを発生させたり、ゲームにおける通常画面やイベント画面等のグラフィック表示等の処理を行う。接続管理部113は、代表端末との接続状態を監視し、代表端末からの切断要求を受けて、切断処理や、代表端末の代表権を他の端末に写す代表権移譲処理、あるいは代表端末が異常切断されたときの対応処理を行う。」
オ.「【0051】
次に、本発明のデータ転送技術を適用したオンラインゲームシステムの運用形態の一例を説明する。
<ユーザグループ>
この実施形態では、原則的には、複数のユーザ端末によってユーザグループを構成する。ゲーム内では、各ユーザは、自己のユーザ端末を通じてゲーム内におけるキャラクタを操作する。このゲーム内では、ユーザグループは、当該ユーザグループに所属する各ユーザ端末のユーザが操作するキャラクタを構成要素とする、一つのグループとして表現される。通常、このような一つのグループを「パーティ」と呼ぶ。
【0052】
ゲーム内においては、各ユーザは、ゲーム内における自己のキャラクタを操作し、ゲーム内において一定の目的を達成するために、パーティを構成する他のキャラクタと共同作業を行う。また、ゲーム内で、ユーザグループを「ユーザが操作するキャラクタが同乗する乗り物」とし、ユーザグループ内のキャラクタは、「乗り物の乗員」として表現する。この実施形態では、ユーザグループを一つの船とし、各ユーザが操作するキャラクタを船の乗員として表現する。」
カ.「【0066】
従来のオンラインゲームでは、切断状態にあるユーザのキャラクタやパーティに対しては、その体力値や装備品等のステータスに変化が生じることはない。つまり、ゲーム内のキャラクタに関しては、最後に切断した時点でのステータスが維持されることが保証されていた。しかし、本実施形態においては、パーティ内でオンライン状態にあるキャラクタのみならず、オフライン状態にあるキャラクタに対しても、ステータスに変動が生じる場合がある。さらには、全員が切断状態にある場合でも、そのユーザグループ(ゲーム内の船)やユーザが操作するキャラクタのステータスに変動が生じる場合がある。これにより、上述の従来のオンラインゲームに比較して、よりスリリングなゲーム展開を提供することができる。また、自分がゲームを終了してオフライン状態となっても、ユーザグループ内でオンライン状態のユーザは、ゲーム内の船を操縦して移動したり、戦闘を行ったりすることができる。従って、自分がオフライン状態にあっても、他のユーザによってゲームが進められる場合もある。これにより、オンライン接続できる時間が短くても、他のユーザに、自分の代わりに長時間接続してゲーム進行してもらうことができる。これにより、長時間接続ができないユーザでも、長時間接続しなければ完遂できないようなイベントを達成することが可能となっている。」
キ.「【0076】
<ユーザグループ同士の接続>
ユーザ端末をユーザグループに接続する代表端末は、通常時は、ゲームサーバ1と自己の属するユーザグループとの間の接続を行う。一方、この実施形態では、ユーザグループA、ユーザグループBという二つのユーザグループを相互に接続して相互に通信を行うことができる。
図8(A)、(B)に、ユーザグループ同士で通信を行う場合の代表端末と各ユーザグループとの関係の概略を示す。図8(A)に、ユーザグループAとユーザグループBとがそれぞれゲームサーバ1に接続されている状態を示す。これら二つのユーザグループを接続する場合、一方の代表端末のみがゲームサーバ1と通信を行う。図8(B)に示される例では、ユーザグループBの代表端末は、ゲームサーバ1との接続を解除し、ユーザグループBを代表して、ユーザグループAの代表端末と相互に通信を行う。
従って、この例の場合、図8(B)に示されるように、ゲームサーバ1にはユーザグループAの代表端末が接続され、ユーザグループAの代表端末がユーザグループAの他のユーザ端末とピアツーピア接続を行う。更に、ユーザグループAの代表端末は、ユーザグループBの代表端末とも接続を行う。ユーザグループBの代表端末は、ユーザグループAの代表端末と通信を行うとともに、ユーザグループB内の他のユーザ端末とピアツーピア接続を行う。
【0077】
このような構成により、ユーザグループA,B間でデータの送受信を行うことができ、かつ、ユーザグループAの代表端末のみがゲームサーバ1と接続し、ユーザグループBの代表端末はゲームサーバ1とは直接的には接続されず、ユーザグループAの代表端末を通じてゲームサーバ1から必要なデータを送受信することになる。従って、ゲームサーバ1では、ユーザグループA,B同士を接続するまでは、配信ゲームデータをユーザグループA,Bそれぞれの代表端末に送信する必要があったのに対し、ユーザグループA,B同士を接続した後は、ユーザグループAの代表端末にのみ配信ゲームデータを送信すればよいので、ゲームサーバ1にかかる負担を小さくすることができる。この状態は、図8(B)に示されるように、ゲームサーバ1に対して、ユーザグループA、Bを含んだ新たなユーザグループCが接続されているとして扱うこともできる。ただし、実際には、上述したように、ゲームサーバ1から送信された配信ゲームデータはユーザグループAの代表端末からすべてのユーザ端末に直接伝送されるわけではなく、ユーザグループAの代表端末以外のユーザ端末及びユーザグループBの代表端末にのみ送信される。従って、ユーザグループBの代表端末以外のユーザ端末に関しては、ユーザグループBの代表端末から配信ゲームデータを受信することになる。」
ク.上記キ及び図8(A)より、ユーザグループA、ユーザグループBのそれぞれの代表端末がサーバに接続されていることが看取できる。また、ユーザグループAの代表端末がユーザグループAの他のユーザ端末とピアツーピア接続を行い、ユーザグループBの代表端末は、ユーザグループB内の他のユーザ端末とピアツーピア接続を行うことは明らかである。

上記ア乃至クの記載から、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ゲームサーバから代表端末で受信したデータを使用したネットワークゲームを、複数のユーザ端末によって構成するユーザグループ内の他のユーザ端末が代表端末と協働して進行させるものであって、
ユーザ端末はユーザグループに接続する代表端末を通じてゲームサーバから、配信ゲームデータが送信され、
代表端末は、ユーザグループに関する情報を表すデータであって、個々のユーザ端末自体に関連する端末データと、ユーザグループにおける共有データであるグループ共有データとを含むユーザグループデータをゲームサーバに送信し、
ユーザグループA、ユーザグループBのそれぞれの代表端末がサーバに接続され、
ユーザグループAの代表端末は、ユーザグループAの他のユーザ端末とピアツーピア接続を行い、
ユーザグループBの代表端末は、ユーザグループB内の他のユーザ端末とピアツーピア接続を行い、
ゲームサーバに接続されるユーザ端末におけるゲーム進行を管理するゲーム管理部は、ゲームにおける戦闘やアイテム発見等のイベントを発生させるものである、オンラインゲームシステム。」

(2)引用例2
当審の拒絶の理由に引用し、本願の原出願の出願日前である2012年7月11日に公衆に利用可能となった「エールで体力回復! PS Vita「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」の魅力、ライブドアニュース、その他、2012.07.11掲載」(以下「引用例2」という。)には、次の事項が示されている。
ア.「エールで体力回復! PS Vita「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」の魅力」(1頁見出し)
イ.「インターネットを利用したシステムはもうひとつあります。それが、救援システムです。
ペルソナ4はRPGですから、ダンジョンがあります。そのダンジョンにいるときに、画面の隅にある「SOS」ボタンを押すと救援信号を出すことができます。救援信号を出すと、同じ時にP4Gを遊んでいる人達の画面には「助けて!」といったメッセージと「エールを送る」ボタンが表示されます。ここで、「エールを送る」をタッチすると、送られた側は次の戦闘時に声援を受けたことになり、HPとSPが回復するのです。この声援は多ければ多いほど回復する量が多くなります。

エールをもらったら、後で誰からもらったかを確認することができます。」
ウ.上記ア及びイより、「P4G」は、「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」の略称であることは明らかである。

上記ア乃至ウの記載から、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が示されているものと認められる。
「PS Vita「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」のインターネットを利用した救援システムであって、ダンジョンにいるときに、画面の隅にある「SOS」ボタンを押すと救援信号を出すことができ、救援信号を出すと、同じ時にP4Gを遊んでいる人達の画面には「助けて!」といったメッセージと「エールを送る」ボタンが表示され、ここで、「エールを送る」をタッチすると、送られた側は次の戦闘時に声援を受けたことになり、HPとSPが回復し、後で誰からもらったかを確認することができる、救援システム。」

(3)引用例3
当審の拒絶の理由に引用し、本願の原出願の出願日前である平成20年4月3日に頒布された刊行物である特開2008-73264号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】
プレイヤに操作される複数のプレイヤ端末と、該複数のプレイヤ端末においてそれぞれ遊戯されるビデオゲームの進行の少なくとも一部を通信ネットワークを介して制御するビデオゲーム制御サーバとを備えたビデオゲーム制御システムであって、
前記プレイヤ端末は、
プレイヤによるマップ取得指定操作に応じて送信したゲームマップ取得要求にもとづき前記ビデオゲーム制御サーバから提供されたゲームマップを表示するゲームマップ表示手段と、
所定のイベントの実行中にプレイヤによる支援要請指定操作を受け付けたことに応じて、前記プレイヤ端末の現在位置を測定する位置測定手段と、
該位置測定手段によって測定された現在位置を示す現在位置情報と、プレイヤを一意に識別するためのプレイヤ識別情報と、前記支援要請指定操作を受け付けたことを示す支援要請指定受付情報とを含む支援要請受付情報を、前記ビデオゲーム制御サーバに送信する支援要請受付情報送信手段とを含み、
前記ビデオゲーム制御サーバは、
前記プレイヤ端末からの前記ゲームマップ取得要求にもとづいてゲームマップを提供するゲームマップ提供手段と、
前記プレイヤ端末からの前記支援要請受付情報を受信したときに、前記プレイヤ端末の現在位置から所定の範囲内に位置する他のプレイヤ端末に対して、支援要請のための支援要請情報を送信する支援要請情報送信手段と、
前記支援要請情報が示す支援要請に応じた前記他のプレイヤ端末から、支援内容を示す支援内容情報を受信したことに応じて、受信した支援内容情報が示す支援内容の実行を指示するための支援要請応答指示実行情報を、前記プレイヤ端末に送信する支援要請応答実行情報送信手段とを含み、
前記プレイヤ端末は、受信した前記支援要請応答指示実行情報にもとづいて、実行中のイベントにおいて前記他のプレイヤ端末からの支援を実行する
ことを特徴とするビデオゲーム制御システム。

【請求項3】
前記支援実行情報送信手段は、攻撃、防御、回復等の支援内容を示す支援内容情報を受信し、所定のモンスタとの戦闘が行われるモンスタイベント内で実行させるための支援要請応答指示実行情報を前記プレイヤ端末に送信する
請求項2記載のビデオゲーム制御システム。」
イ.「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来の技術においては、互いに知り合いでないプレイヤ同士が協力してゲームを進行可能としたり、プレイヤの位置情報によってゲームの内容を変化させたりすることについて開示されているが、協力を要請可能なプレイヤが制限されていたり、位置情報が単に予め用意された複数パターンのキャラクタやアイテム、シナリオの中から特定のものを選択させるために利用されるだけであり、ゲーム内容を多用化させるには限界があった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解消すべく、互いに知り合いであるか否かに関わらず実際に地理的に近くに存在するプレイヤ同士であれば協力を要請する対象となるプレイヤを極力制限することなく、実際の地図情報とリンクしたイベントを達成させることを可能にすることで、知り合いでないプレイヤとの交流を可能とし、位置情報を利用するゲームにおけるゲーム内容をさらに多様化することで、遊戯の興趣を向上させることを目的とする。」
ウ.「【0062】
上記のようにして、プレイヤ端末21において実行されているイベントがモンスタ出現イベントであるときに、そのイベントにおいてモンスタと戦闘を行っているプレイヤキャラクタの支援要請を他のプレイヤ端末に対して行い、他のプレイヤ端末からの支援を受けることが可能となる。なお、上記の実施形態では特に言及していないが、有効な支援を行ったプレイヤに対して、支援を受けたプレイヤあるいはサーバ10側からアイテムなどの特典が与えられるようにすれば、支援要請に応じるプレイヤをより増加させることが期待できるようになる。また、被支援プレイヤの現在位置を探して実際に移動するという今までに無い趣向を加えることが可能となるし、わざわざ移動して支援を行った場合は支援が成功した際の達成感もより大きくなり、プレイヤの満足度が高まる。」

上記ア乃至ウの記載から、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「プレイヤに操作される複数のプレイヤ端末と、該複数のプレイヤ端末においてそれぞれ遊戯されるビデオゲームの進行の少なくとも一部を通信ネットワークを介して制御するビデオゲーム制御サーバとを備えたビデオゲーム制御システムであって、
前記プレイヤ端末は、
プレイヤによるマップ取得指定操作に応じて送信したゲームマップ取得要求にもとづき前記ビデオゲーム制御サーバから提供されたゲームマップを表示するゲームマップ表示手段と、
所定のイベントの実行中にプレイヤによる支援要請指定操作を受け付けたことに応じて、前記プレイヤ端末の現在位置を測定する位置測定手段と、
該位置測定手段によって測定された現在位置を示す現在位置情報と、プレイヤを一意に識別するためのプレイヤ識別情報と、前記支援要請指定操作を受け付けたことを示す支援要請指定受付情報とを含む支援要請受付情報を、前記ビデオゲーム制御サーバに送信する支援要請受付情報送信手段とを含み、
前記ビデオゲーム制御サーバは、
前記プレイヤ端末からの前記ゲームマップ取得要求にもとづいてゲームマップを提供するゲームマップ提供手段と、
前記プレイヤ端末からの前記支援要請受付情報を受信したときに、前記プレイヤ端末の現在位置から所定の範囲内に位置する他のプレイヤ端末に対して、支援要請のための支援要請情報を送信する支援要請情報送信手段と、
前記支援要請情報が示す支援要請に応じた前記他のプレイヤ端末から、支援内容を示す支援内容情報を受信したことに応じて、受信した支援内容情報が示す支援内容の実行を指示するための支援要請応答指示実行情報を、前記プレイヤ端末に送信する支援要請応答実行情報送信手段とを含み、
前記プレイヤ端末は、受信した前記支援要請応答指示実行情報にもとづいて、実行中のイベントにおいて前記他のプレイヤ端末からの支援を実行し、
前記支援実行情報送信手段は、攻撃、防御、回復等の支援内容を示す支援内容情報を受信し、所定のモンスタとの戦闘が行われるモンスタイベント内で実行させるための支援要請応答指示実行情報を前記プレイヤ端末に送信し、
有効な支援を行ったプレイヤに対して、支援を受けたプレイヤあるいはサーバ側からアイテムなどの特典が与えられる、ビデオゲーム制御システム。」


第4 対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
1.後者の「複数のユーザ端末」、「ゲームサーバ」、「オンラインゲームシステム」及び「ゲーム」は、それぞれ、前者の「複数のユーザがそれぞれ使用する複数の通信端末」、「サーバ」、「ゲームシステム」及び「ゲーム」に相当する。
2.後者の「ユーザ端末」は、ユーザグループに接続する代表端末を通じてゲームサーバから、配信ゲームデータが送信されるものであるが、代表端末を介するもののサーバと通信可能であることから、後者の「オンラインゲームシステム」は、「複数のユーザがそれぞれ使用する複数の通信端末と、前記複数の通信端末と通信可能なサーバと、を備えるゲームシステム」といえる。
3.後者の「ゲームサーバ」には、「代表端末が、ユーザグループに関する情報を表すデータであって、個々のユーザ端末自体に関連する端末データと、ユーザグループにおける共有データであるグループ共有データとを含むユーザグループデータをゲームサーバに送信」するものであるから、後者の「ゲームサーバ」は、「複数のユーザに関する情報を記憶し」ていることは明らかである。
4.後者の「ユーザグループ」の「代表端末」は、ユーザグループ内の他のユーザ端末と協働してネットワークゲームを進行させ、サーバに接続されるものであるから、後者の「ユーザグループAの代表端末」は、前者の「ゲーム内における対戦処理に参加する第1の通信端末」に相当し、「信号をサーバへ送信」するものといえる。
5.後者の「オンラインゲームシステム」は、「ユーザグループA、ユーザグループBのそれぞれの代表端末がサーバに接続され、ユーザグループAの代表端末は、ユーザグループAの他のユーザ端末とピアツーピア接続を行い、ユーザグループBの代表端末は、ユーザグループB内の他のユーザ端末とピアツーピア接続を行」うもの(以下「通信ネットワーク」という。)であって、「ユーザ端末はユーザグループに接続する代表端末を通じてゲームサーバから、配信ゲームデータが送信され、代表端末は、ユーザグループに関する情報を表すデータであって、個々のユーザ端末自体に関連する端末データと、ユーザグループにおける共有データであるグループ共有データとを含むユーザグループデータをゲームサーバに送信」するものである。そして、後者の「オンラインゲームシステム」は、前述の通信ネットワークを備えるものであるから、ユーザグループAのユーザ端末からサーバを介してグループBのユーザ端末へ信号を送信し、グループBのユーザ端末は、サーバへ応答信号を送信し得るものであることは明らかである。
そうすると、後者の「ユーザグループBの代表端末」及び「ユーザグループB内の他のユーザ端末」は、前者の「複数の第2の通信端末」に相当する。
6.上記4.及び5.より、後者の「オンラインゲームシステム」は、「第1の通信端末は、第1の信号を前記サーバへ送信し、前記サーバは、前記第1の信号を受信すると、第2の信号を、第2の通信端末へ送信し、1以上の前記第2の通信端末それぞれは、前記第2の信号を受信すると、前記第2の通信端末のユーザが前記第2の信号に応答することを前記第2の通信端末に入力する第1のユーザ操作に応じて応答信号を前記サーバへ送信」する「ゲームシステム」といえる。

したがって、両者は、
「複数のユーザがそれぞれ使用する複数の通信端末と、前記複数の通信端末と通信可能なサーバと、を備えるゲームシステムであって、
ゲーム内における第1の通信端末は、第1の信号を前記サーバへ送信し、
前記サーバは、
前記複数のユーザに関する情報を記憶し、
前記第1の信号を受信すると、第2の信号を、第2の通信端末へ送信し、
1以上の前記第2の通信端末それぞれは、前記第2の信号を受信すると、前記第2の通信端末のユーザが前記第2の信号に応答することを前記第2の通信端末に入力する第1のユーザ操作に応じて応答信号を前記サーバへ送信する、ゲームシステム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明の第1の通信端末が、ゲーム内における「対戦処理に参加する」通信端末であるのに対し、引用発明1のユーザグループAの代表端末が対戦処理に参加しているのか否か定かでない点。

[相違点2]
本願発明の第2の通信端末が、「対戦処理に参加しない複数の」通信端末であって、「サーバは、前記サーバへ前記応答信号を送信した第2の通信端末の数が所定数に達した場合、第1の通信端末のユーザに関する情報のうち、前記対戦処理の進行処理に用いられるパラメータを向上させ」るものであるのに対し、引用発明1のユーザグループBの代表端末及びユーザグループB内の他のユーザ端末が、そのようなものではない点。

[相違点3]
本願発明が、「応答信号を送信した1以上の第2の通信端末それぞれのユーザに対してゲーム内で用いられるゲーム媒体を付与」するものであるのに対し、引用発明1はユーザグループBの代表端末及びユーザグループB内の他のユーザ端末に対してそのようなことをするものではない点。

[相違点4]
本願発明が、「第1の通信端末は、パラメータに関する情報と、応答信号を送信した1以上の第2の通信端末それぞれのユーザに関する情報と、を表示し、1以上の第2の通信端末それぞれは、ゲーム媒体に関する情報を表示する」ものであるのに対し、引用発明1のユーザグループAの代表端末並びにユーザグループBの代表端末及びユーザグループB内の他のユーザ端末がそのようなものであるのか否か定かでない点。


第5 判断
上記各相違点について検討する。
1.[相違点1]について
引用発明1のゲームにおけるイベントには戦闘が例示されており、また、引用発明1のオンラインゲームシステムは、ユーザグループのユーザ端末が協働してネットワークゲームを進行させるものであって、ユーザグループAのユーザ端末が協働して戦闘処理に参加しているといえるから、上記相違点1に係る本願発明の第1の通信端末が、ゲーム内における「対戦処理に参加する」通信端末である点は、実質的な相違点ではない。

2.[相違点2]について
引用発明2の「同じ時にP4Gを遊んでいる人達」の「PS Vita」は、本願発明の「複数の第2の通信端末」に相当し、「救援信号を出すと、同じ時にP4Gを遊んでいる人達の画面には「助けて!」といったメッセージと「エールを送る」ボタンが表示され」るものであるから、引用発明2の「同じ時にP4Gを遊んでいる人達」の「PS Vita」には、「信号」が、「複数の第2の通信端末へ送信」されているといえる。
そして、引用発明2の「同じ時にP4Gを遊んでいる人達」は、ダンジョンにいるプレーヤを救援するのであって、送られた側は次の戦闘時に声援を受けたことになり、HPとSPが回復するので、引用発明2の「同じ時にP4Gを遊んでいる人達」は、ダンジョンにいるプレイヤであっても「戦闘」を行うプレイヤとは異なるプレイヤであるといえるから、「対戦処理に参加しない複数の第2の通信端末のユーザ」といえる。
引用発明2において、「「エールを送る」ボタンをタッチする」ことは、「救援信号を出すと、同じ時にP4Gを遊んでいる人達の画面には「助けて!」といったメッセージと「エールを送る」ボタンが表示され」た上で行う行為であるから、引用発明2の「「エールを送る」ボタンをタッチする」ことは、「信号を受信すると、第2の通信端末のユーザが信号に応答することを第2の通信端末に入力する第1のユーザ操作に応じて応答信号を送信」することといえる。
引用発明2は、同じ時にP4Gを遊んでいる人達が「エールを送る」をタッチすると、「送られた側は次の戦闘時に声援を受けたことになり、HPとSPが回復」するものであって、引用発明2の「HPとSP」は、本願発明の「対戦処理の進行処理に用いられるパラメータ」に相当するから、引用発明2の「送られた側は次の戦闘時に声援を受けたことになり、HPとSPが回復」することは、本願発明の「第1の通信端末のユーザに関する情報のうち、前記対戦処理の進行処理に用いられるパラメータを向上させ」ることに相当する。
そして、本願発明において、「サーバへ応答信号を送信した第2の通信端末の数」に関しては、「所定数」としか特定されておらず、通信端末が1台の場合も包含されるのであるから、引用発明2には、「応答信号を送信した第2の通信端末の数が所定数に達した場合」が包含されるといえる。
そして、引用発明1も引用発明2も、ゲームという共通の技術分野に属し、引用発明1はユーザグループで協働してゲームを進行させるものであり、引用発明2は、声援で他のプレイヤを救援するものであって、複数のプレイヤ(端末)が協力してゲームを進行させようとする課題が内在していることは明らかであるから、引用発明1に、引用発明2を適用し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得るものである。

3.[相違点3]について
引用発明3の「他のプレイヤ端末からの支援内容情報」及び「アイテムなどの特典」は、本願発明の「応答信号」及び「ゲーム内で用いられるゲーム媒体」に相当するから、引用発明3の「有効な支援を行ったプレイヤに対して、支援を受けたプレイヤあるいはサーバ側からアイテムなどの特典が与え」ることは、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項に相当する。
そして、引用発明1も引用発明3も、ゲームという共通の技術分野に属し、複数のプレイヤ(端末)が協力してゲームを進行させようとすることを課題としている点で共通しているものであるから、引用発明1に、引用発明3を適用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得るものである。

4.[相違点4]について
一般に、ゲームの分野において、アイテムなどの特典、及びHP、SP等のパラメータを扱うゲームにおいて、これらアイテムなどの特典、及びHP、SP等のパラメータを含めたユーザに関する情報及びゲーム媒体に関する情報をユーザの端末に表示することは、通常行われていることである。また、通信接続された端末(ユーザ)同士に、相手方の情報を表示することも、通常行われていることである。
そうすると、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、ゲームの分野においては、通常行われている事項であって、ゲームの内容が定かでない引用発明1においても、採用されている事項ともいえる。
そうすると、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項は、実質的な相違点ではないか、少なくとも、当業者が適宜なし得る事項である。

そして、上記のとおり、異なるユーザグループのユーザ端末がサーバを介して接続された引用発明1に、他のプレイヤに対して支援を行うことが示された引用発明2及び引用発明3を適用することにより、「対戦において直接の協力関係にない他のユーザとの繋がりを構築できる」という本願発明の発明特定事項によって奏される効果は、当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1、引用発明2及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-18 
結審通知日 2019-02-19 
審決日 2019-03-05 
出願番号 特願2016-129593(P2016-129593)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 前地 純一郎  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
発明の名称 ゲームシステム、ゲームの制御方法、及びプログラム  
代理人 杉村 憲司  
代理人 岡野 大和  
代理人 内海 一成  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ