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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1351052
審判番号 不服2018-4623  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-05 
確定日 2019-04-24 
事件の表示 特願2016- 78854「非汎用装置のための汎用連結性」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日出願公開、特開2016-181262〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成22年6月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年(平成21年)7月1日(以下,「優先日」という。) 米国,2010年(平成22年)6月29日 米国)に出願した特願2010-149074号の一部を平成28年4月11日に新たな特許出願(特許法第36条の2第1項の規定による外国語出願)としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 6月13日 :翻訳文の提出
平成29年 3月27日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月 3日 :意見書の提出
平成29年12月 7日付け:拒絶査定(原査定)
平成30年 4月 5日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 平成30年4月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年4月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?11は,本件補正前の,平成28年6月13日提出の翻訳文の特許請求の範囲の請求項1?11に対応しているものと認められるところ,本件補正により,特許請求の範囲の請求項7の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。)
「 【請求項7】
複数のデータ収集デバイスであって,各データ収集デバイスがプロセッサを有し,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続され,各データ収集デバイスに関しては,前記データ収集デバイスはデータを収集するように構成され,前記データ収集デバイスの前記プロセッサは収集されたデータを処理するように構成され,対応する前記第1の通信チャネルは前記処理されたデータを前記対応するデータターミナルに伝達するように構成される,複数のデータ収集デバイスと,
第1のデータ収集デバイスと第1のデータ収集デバイスの対応するデータターミナルとの間の前記第1の通信チャネルを介した通信を崩壊させることなく,前記複数のデータ収集デバイスの中の第1のデータ収集デバイスと無線の第2の通信チャネルを介して通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続される中央連結ポイントと,
を有し,
前記第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して前記対応するデータターミナルと通信している間,前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して前記第1のデータ収集デバイスをリモートで処理し,
前記リモートで処理することは,前記第1のデータ収集デバイスの状態をモニタすること,前記第1のデータ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供すること,前記第1のデータ収集デバイスの特徴を使用可能とすること,のうちの少なくとも1つを含み,
前記第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して前記対応するデータターミナルと通信している間,前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して使用統計を解釈し,及び/又は,第1のデータ収集デバイスに関する未許可の使用統計を追跡することを特徴とするシステム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,平成28年6月13日提出の翻訳文の特許請求の範囲の請求項7の記載は次のとおりである。
「 【請求項7】
複数のデータ収集デバイスであって,各データ収集デバイスがプロセッサを有し,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続されることを特徴とする,複数のデータ収集デバイスと,
無線の第2の通信チャネルを介して,第1のデータ収集デバイスと,第1の通信チャネルを介して対応する第1のデータ収集デバイスのデータターミナルとの間の通信を崩壊させることなく,複数のデータ収集デバイスからの第1のデータ収集デバイスと通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続される中央連結ポイントと,
を有し,
第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルと通信している間,前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して第1のデータ収集デバイスをリモートで処理し,
前記中央連結ポイントが,使用統計を解釈し,及び/又は,第1のデータ収集デバイスに関する未許可の使用統計を追跡することを特徴とするシステム。」

2 補正の適否
(1)本件補正は,次の補正事項を含むものである。
補正事項1:本件補正前の請求項7の「第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続されることを特徴とする,複数のデータ収集デバイス」との記載を「第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続され,各データ収集デバイスに関しては,前記データ収集デバイスはデータを収集するように構成され,前記データ収集デバイスの前記プロセッサは収集されたデータを処理するように構成され,対応する前記第1の通信チャネルは前記処理されたデータを前記対応するデータターミナルに伝達するように構成される,複数のデータ収集デバイス」とする補正。

補正事項2:本件補正前の請求項7の「無線の第2の通信チャネルを介して,第1のデータ収集デバイスと,第1の通信チャネルを介して対応する第1のデータ収集デバイスのデータターミナルとの間の通信を崩壊させることなく,複数のデータ収集デバイスからの第1のデータ収集デバイスと通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続される中央連結ポイント」との記載を「第1のデータ収集デバイスと第1のデータ収集デバイスの対応するデータターミナルとの間の前記第1の通信チャネルを介した通信を崩壊させることなく,前記複数のデータ収集デバイスの中の第1のデータ収集デバイスと無線の第2の通信チャネルを介して通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続される中央連結ポイント」とする補正。

補正事項3:本件補正前の請求項7の「第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルと通信している間,前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して第1のデータ収集デバイスをリモートで処理し」との記載を「前記第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して前記対応するデータターミナルと通信している間,前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して前記第1のデータ収集デバイスをリモートで処理し」とする補正。

補正事項4:本件補正前の請求項7の「・・・リモートで処理し」の後に「前記リモートで処理することは,前記第1のデータ収集デバイスの状態をモニタすること,前記第1のデータ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供すること,前記第1のデータ収集デバイスの特徴を使用可能とすること,のうちの少なくとも1つを含み,」との記載を追加する補正。

補正事項5:本件補正前の請求項7の「前記中央連結ポイントが,使用統計を解釈し」との記載を「前記第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して前記対応するデータターミナルと通信している間,前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して使用統計を解釈し」とする補正。

上記補正事項について検討する。

補正事項1は,「複数のデータ収集デバイス」の「各データ収集デバイス」に関して,「前記データ収集デバイスはデータを収集するように構成され,前記データ収集デバイスの前記プロセッサは収集されたデータを処理するように構成され,対応する前記第1の通信チャネルは前記処理されたデータを前記対応するデータターミナルに伝達するように構成される」ことを限定的に減縮するものである。

補正事項2及び補正事項3は,「無線の第2の通信チャネルを介して」及び「第1の通信チャネルを介して」との語の位置をそれぞれ「通信する」及び「通信」との語の直前の位置に変更するとともに,「複数のデータ収集デバイスからの」との記載を「複数のデータ収集デバイスの中の」との記載に変更し,また,「前記」の語を適宜追加することで,記載内容の日本語の係り等を整理したものであり,実質的な内容の変更を伴う補正ではない。

補正事項4は,補正前の請求項7に記載される「リモートで処理」することを,「前記リモートで処理することは,前記第1のデータ収集デバイスの状態をモニタすること,前記第1のデータ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供すること,前記第1のデータ収集デバイスの特徴を使用可能とすること,のうちの少なくとも1つを含」むことに限定的に減縮するものである。

補正事項5は,補正前の請求項7に記載される「中央連結ポイント」が,「使用統計を解釈」する態様を,「前記第1のデータ収集デバイスが,前記第1の通信チャネルを介して前記対応するデータターミナルと通信している間」に,「前記無線の第2の通信チャネルを介して」解釈する態様に限定的に減縮するものである。

以上で検討したとおり,請求項7に係る上記補正事項1,4,5は,本件補正前の請求項7に記載した発明を特定するために必要な事項である「データ収集デバイス」,「リモートで処理」すること,及び「中央連結ポイントが,使用統計を解釈」することについて,上記のとおり限定的に減縮するものであって,本件補正前の請求項7に記載された発明と本件補正後の請求項7に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項7に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本件補正発明
本件補正発明は,上記1(1)に記載したとおりのものである。

(3)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,米国特許第7093760号明細書(2006年8月22日公開。以下「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付したものである。以下,同様。)

A 「Referring now to FIG. 1 , transaction system 10 includes point-of-sale (POS) terminal 12 , bar code reader 14 , and in-store server 16 .
POS terminal 12 executes transaction software 20 , which processes items for purchase. Transaction software 20 obtains item identification information from bar code reader 14 over path 30 , determines prices of the items for purchase from in-store server 16 over network path 36 , tallies the prices of all items, and processes payment for the items. Path 30 may include a serial communication path, such as a universal serial bus (USB) connection.
Bar code reader 14 executes control software 22 , which identifies bar code data on purchased items, decodes the bar code data, and provides the item identification information to transaction software 20 . Control software 20(当審注:「20」は,「22」の誤記と認められる。) may be stored as firmware.
Bar code reader 14 includes a plurality of communication ports. One communication 40(当審注:「communication 40」は,図1の記載からみて,「communication port 40」の誤記と認められる。) couples to network communication circuitry 50 , which may include a USB wireless network adapter. Alternatively, network communication circuitry 50 may include a USB network adapter for establishing a wired network connection to maintenance computer 18 using a network cable.
Bar code reader 14 collects performance data 24 during its operation. Performance data 24 is useful for determining the operating status of bar code reader 14 . In a first embodiment, bar code reader 14 transfers performance data 24 to in-store server 16 over network paths 32 and 34 . Network path 32 is preferably wireless. Network path 34 is preferably wired as a network cable. Wireless access point 52 acts as a bridge between network paths 32 and 34 . Network paths 34 and 36 may include a network switch to facilitate cable connections between POS terminal 12 , in-store server 16 , and wireless access point 52 or bar code reader 14 .
Although a combination wired and wireless connection path between bar code reader 14 and in-store server 16 is illustrated, the present invention also envisions a totally wired or totally wireless connection 32 between in-store server 16 and bar code reader 14 ( FIG. 2 ).
In the first embodiment, an in-store computer connected to the in-store network acts as a maintenance computer 18 . For purposes of illustration, FIG. 1 shows in-store server 16 as maintenance computer 18 . However, it is envisioned that a different in-store computer connected to the in-store network may act as maintenance computer 18 .
In-store server 16 executes maintenance software 26 . Maintenance software 26 analyzes performance data 24 and provides status information and recommendations to a technician.
In-store server 16 may include a web server and maintenance software 26 may include web application 44 and web pages 42 for allowing a technician to initiate uploading of performance data 24 from bar code reader 14 over network connections 32 and 34 .
In-store server 16 or bar code reader 14 may automatically execute maintenance software 26 at predetermined times, such as during checkout to obtain the latest checkout performance data 24 .
Maintenance software 26 may include web application 44 for analyzing performance data 24 and providing operating status information to help a technician. The technician accesses web application 44 through a home page within web pages 42 . Web application 44 may display the operating status information in web pages 42 . Under technician control, in-store server 16 displays web pages 42 .
The technician may also access the maintenance software web application 44 to download control software update 28 to bar code reader 14 over in-store network paths 32 and 34 . In this way, a technician may obtain performance data 24 and upgrade bar code reader 14 with control software update 28 without having to operate POS terminal 12 .
Alternatively, maintenance software 26 may automatically deliver control software update 28 . For example, in-store server 16 may automatically look for a new control software update 28 , download the new control software update 28 if it exists, and deliver it to bar code reader 14 .」(第1欄63行?第3欄5行)
(当審仮訳:ここで図1を参照すると,取引システム10は,販売時点(POS)端末12,バーコードリーダー14,及び店舗内サーバ16を備えている。
POS端末12は,購入のためのアイテムを処理する取引ソフトウェア20を実行する。取引ソフトウェア20は,経路30を介してバーコードリーダー14からアイテム識別情報を取得し,ネットワーク経路36を介して店舗内サーバ16から購入のためのアイテムの価格を決定し,全てのアイテムの価格を計算し,そして,そのアイテムのための支払を処理する。経路30はユニバーサルシリアルバス(USB)接続のようなシリアル通信パスを含むことができる。
バーコードリーダー14は,購入されたアイテム上のバーコードデータを識別し,そのバーコードデータを復号し,そして,取引ソフトウェア20へアイテム識別情報を提供する,制御ソフトウェア22を実行する。制御ソフトウェア20(当審注:「20」は「22」の誤記と認められる。)は,ファームウェアとして格納することができる。
バーコードリーダー14は,複数の通信ポートを備えている。一つの通信40(当審注:「通信40」は,図1の記載からみて,「通信ポート40」の誤記と認められる。)は,USB無線ネットワークアダプタを含むことができるネットワーク通信回路50に結合する。あるいは,ネットワーク通信回路50は,メンテナンスコンピュータ18とネットワークケーブルを用いた有線ネットワーク接続を確立するためのUSBネットワークアダプタを含むことができる。
バーコードリーダー14は,その動作中に,性能データ24を収集する。性能データ24は,バーコードリーダー14の動作状態を決定するために有用である。第1実施例では,バーコードリーダー14は,ネットワーク経路32と34を介して店舗内サーバ16へ性能データ24を送信する。ネットワーク経路32は,無線であることが好ましい。ネットワーク経路34は,ネットワークケーブルとして有線であることが好ましい。無線アクセスポイント52は,ネットワーク経路32と34間のブリッジとして働く。ネットワーク経路34と36は,POS端末12,店舗内サーバ16,無線アクセスポイント52またはバーコードリーダー14との間のケーブル接続を容易にするためにネットワークスイッチを含むことができる。
バーコードリーダー14と店舗内サーバ16の間の有線及び無線接続経路の組み合わせが図示されているが,本発明は,店舗内サーバ16とバーコードリーダー14との間の完全な有線接続または完全な無線接続も想定している(図2)。
第1実施例では,店舗内ネットワークに接続された店舗内コンピュータは,メンテナンスコンピュータ18として働く。図解のために,図1は,メンテナンスコンピュータ18としての店舗内サーバ16を示す。しかしながら,店舗内ネットワークに接続された他の店舗内コンピュータが,メンテナンスコンピュータ18として働くことができることが想定される。
店舗内サーバ16は,メンテナンスソフトウェア26を実行する。メンテナンスソフトウェア26は,性能データ24を解析し,そして,状態情報と推奨を技術者へ提供する。
店舗内サーバ16は,ウェブサーバを含むことができ,また,メンテナンスソフトウェア26は,ネットワーク接続32と34を介してバーコードリーダー14から性能データ24のアップロードの開始を技術者ができるようにするための,ウェブアプリケーション44とウェブページ42を含むことができる。
店舗内サーバ16またはバーコードリーダー14は,最新のチェックアウト性能データ24を取得するためにチェックアウトの間など,所定の時点で,メンテナンスソフトウェア26を自動的に実行することができる。
メンテナンスソフトウェア26は,技術者を支援するために,性能データ24を解析し,そして,動作状態情報を提供するウェブアプリケーション44を含むことができる。技術者は,ウェブページ42内のホームページを通して,ウェブアプリケーション44にアクセスする。ウェブアプリケーション44は,ウェブページ42に動作状態情報を表示してもよい。技術者による制御下で,店舗内サーバ16は,ウェブページ42を表示する。
技術者は,また,店舗内ネットワーク経路32と34を介してバーコードリーダー14へ制御ソフトウェアアップデート28をダウンロードするために,メンテナンスソフトウェアウェブアプリケーション44にアクセスしてもよい。これにより,技術者は,POS端末12を操作すること無く,性能データ24と,制御ソフトウェアアップデート28によりアップグレードしたバーコードリーダー14を得ることができる。
あるいは,メンテナンスソフトウェア26は,制御ソフトウェアアップデート28を自動的に配信できる。例えば,店舗内サーバ16は,自動的に新しい制御ソフトウェアアップデート28を探すことができ,もしそれがあれば,その新しい制御ソフトウェアアップデート28をダウンロードすることができ,そして,それをバーコードリーター14へ配信することができる。)

B 「Advantageously, a technician may perform status checks and software updates for all bar code readers 14 from a single location.」(第4欄5?7行)
(当審仮訳:有利なことに,技術者は,単一の位置から全てのバーコードリーダ14に対して状態チェックおよびソフトウェアアップデートを実行することができる。)

C 「図1



D 「図2



(イ)ここで,上記引用文献1に記載されている事項について検討する。

a 上記Aの「ここで図1を参照すると,取引システム10は,販売時点(POS)端末12,バーコードリーダー14,及び店舗内サーバ16を備えている。」との記載,及び上記Cで引用した図1の記載から,
引用文献1には,“販売時点(POS)端末12,バーコードリーダー14,及び店舗内サーバ16を備えている取引システム10”が記載されていると認められる。

b 上記Aの「POS端末12は,購入のためのアイテムを処理する取引ソフトウェア20を実行する。取引ソフトウェア20は,経路30を介してバーコードリーダー14からアイテム識別情報を取得し」との記載から,
引用文献1には,“POS端末12は,購入のためのアイテムを処理する取引ソフトウェア20を実行するものであり,取引ソフトウェア20は,経路30を介してバーコードリーダー14からアイテム識別情報を取得”することが記載されていると認められる。

c 上記Aの「経路30はユニバーサルシリアルバス(USB)接続のようなシリアル通信パスを含むことができる。」との記載から,
引用文献1には,“経路30はユニバーサルシリアルバス(USB)接続のようなシリアル通信パスを含むことができ”ることが記載されていると認められる。

d 上記Aの「バーコードリーダー14は,購入されたアイテム上のバーコードデータを識別し,そのバーコードデータを復号し,そして,取引ソフトウェア20へアイテム識別情報を提供する,制御ソフトウェア22を実行する。」との記載から,
引用文献1には,“バーコードリーダー14は,購入されたアイテム上のバーコードデータを識別し,そのバーコードデータを復号し,そして,取引ソフトウェア20へアイテム識別情報を提供する制御ソフトウェア22を実行するものであ”ることが記載されていると認められる。

e 上記Aの「バーコードリーダー14は,複数の通信ポートを備えている。一つの通信ポート40は,USB無線ネットワークアダプタを含むことができるネットワーク通信回路50に結合する。」との記載から,
引用文献1には,“バーコードリーダー14は,複数の通信ポートを備えていて,一つの通信ポート40は,USB無線ネットワークアダプタを含むことができるネットワーク通信回路50に結合”することが記載されていると認められる。

f 上記Aの「バーコードリーダー14は,その動作中に,性能データ24を収集する。性能データ24は,バーコードリーダー14の動作状態を決定するために有用である。第1実施例では,バーコードリーダー14は,ネットワーク経路32と34を介して店舗内サーバ16へ性能データ24を送信する。」との記載から,
引用文献1には,“バーコードリーダー14は,その動作中に,バーコードリーダー14の動作状態を決定するために有用である性能データ24を収集し,ネットワーク経路32と34を介して店舗内サーバ16へ性能データ24を送信”することが記載されていると認められる。

g 上記Aの「ネットワーク経路32は,無線であることが好ましい。」との記載,同じく上記Aの「本発明は,店舗内サーバ16とバーコードリーダー14との間の・・・完全な無線接続も想定している(図2)。」との記載,及び上記Dで引用した図2の記載から,
引用文献1には,“ネットワーク経路32は,無線であることが好ましいものであり,さらに,店舗内サーバ16とバーコードリーダー14との間の完全な無線接続も想定されてい”ることが記載されていると認められる。

h 上記Aの「図解のために,図1は,メンテナンスコンピュータ18としての店舗内サーバ16を示す。・・・店舗内サーバ16は,メンテナンスソフトウェア26を実行する。」との記載から,
引用文献1には,“メンテナンスコンピュータ18としての店舗内サーバ16は,メンテナンスソフトウェア26を実行”することが記載されていると認められる。

i 上記Aの「メンテナンスソフトウェア26は,性能データ24を解析し,そして,状態情報と推奨を技術者へ提供する。」との記載から,
引用文献1には,“メンテナンスソフトウェア26は,性能データ24を解析して,状態情報と推奨を技術者へ提供”することが記載されていると認められる。

j 上記Aの「メンテナンスソフトウェア26は,・・・ウェブアプリケーション44・・・を含むことができる」との記載から,“メンテナンスソフトウェアウェブアプリケーション44”は,“メンテナンスソフトウェア26に含まれる”ことが読み取れ,これと,上記Aの「技術者は,また,店舗内ネットワーク経路32と34を介してバーコードリーダー14へ制御ソフトウェアアップデート28をダウンロードするために,メンテナンスソフトウェアウェブアプリケーション44にアクセスしてもよい。」との記載から,
引用文献1には,“技術者は,メンテナンスソフトウェア26に含まれるメンテナンスソフトウェアウェブアプリケーション44にアクセスして,店舗内ネットワーク経路32と34を介してバーコードリーダー14へ制御ソフトウェアアップデート28をダウンロード”することが記載されていると認められる。

k 上記Bの「技術者は,単一の位置から全てのバーコードリーダ14に対して状態チェックおよびソフトウェアアップデートを実行することができる。」との記載から,
引用文献1には,“技術者は,単一の位置から全てのバーコードリーダ14に対して状態チェックおよびソフトウェアアップデートを実行することができる”ことが記載されていると認められる。

(ウ)上記(イ)の検討から,引用文献1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「販売時点(POS)端末12,バーコードリーダー14,及び店舗内サーバ16を備えている取引システム10であって,
POS端末12は,購入のためのアイテムを処理する取引ソフトウェア20を実行するものであり,
取引ソフトウェア20は,経路30を介してバーコードリーダー14からアイテム識別情報を取得し,
経路30はユニバーサルシリアルバス(USB)接続のようなシリアル通信パスを含むことができ,
バーコードリーダー14は,購入されたアイテム上のバーコードデータを識別し,そのバーコードデータを復号し,そして,取引ソフトウェア20へアイテム識別情報を提供する制御ソフトウェア22を実行するものであり,
バーコードリーダー14は,複数の通信ポートを備えていて,一つの通信ポート40は,USB無線ネットワークアダプタを含むことができるネットワーク通信回路50に結合し,
バーコードリーダー14は,その動作中に,バーコードリーダー14の動作状態を決定するために有用である性能データ24を収集し,ネットワーク経路32と34を介して店舗内サーバ16へ性能データ24を送信し,
ここで,ネットワーク経路32は,無線であることが好ましいものであり,さらに,店舗内サーバ16とバーコードリーダー14との間の完全な無線接続も想定されており,
メンテナンスコンピュータ18としての店舗内サーバ16は,メンテナンスソフトウェア26を実行し,
メンテナンスソフトウェア26は,性能データ24を解析して,状態情報と推奨を技術者へ提供し,
技術者は,メンテナンスソフトウェア26に含まれるメンテナンスソフトウェアウェブアプリケーション44にアクセスして,店舗内ネットワーク経路32と34を介してバーコードリーダー14へ制御ソフトウェアアップデート28をダウンロードし,
技術者は,単一の位置から全てのバーコードリーダ14に対して状態チェックおよびソフトウェアアップデートを実行することができる,
取引システム10。」

イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2007-142684号公報(平成19年6月7日公開。以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

E 「【0013】
本発明のさらなる目的は,IEEE802.11に代表される無線LANとBluetooth通信のように互換性のない2つの通信機能を好適に搭載するとともに,混信を招くことなく2つの通信機能を同時に使用することができる,優れた無線通信装置を提供することにある。」

(イ)引用文献2に記載されている技術的事項
「2つの通信機能を搭載し,2つの通信機能を同時に使用することができる無線通信装置」

ウ 引用文献5
(ア)原査定の拒絶査定で周知技術を示す文献として引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特表2009-505509号公報(平成21年2月5日公表。以下「引用文献5」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

F 「【0010】
移動局は,広域ネットワークおよび無線ローカル エリア ネットワークと同時通信ができる。移動局は,通信セッション中の無線ローカル エリア ネットワークからの制御情報を処理するように構成された第1の制御ユニットと,通信セッション中の広域ネットワークからの制御情報を処理する第2の制御ユニットと,シグナリングおよびパケット処理を行うように構成された処理デバイスと,位置特定情報(position location information)を与えるように構成されたGPSデバイスとをもち得る。第2の制御ユニットは,広域ネットワークから制御および音声信号を受信するように構成され得る。第1の制御ユニットは,無線ローカル エリア ネットワークから制御,データ,および音声信号を受信するように構成され得る。」

(イ)引用文献5に記載されている技術的事項
「広域ネットワークおよび無線ローカル エリア ネットワークと同時通信ができる移動局」

エ 引用文献6
(ア)原査定の拒絶査定で周知技術を示す文献として引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特開2006-229331号公報(平成18年8月31日公開。以下「引用文献6」という。)には,図面とともに,次の記載がある。

G 「【0009】
そこで,この発明は,以上のような事情を考慮してなされたものであり,電話網を介した通話およびデータ通信と,パソコン等の情報機器とのデータ通信とが同時間帯に並行して行えるようにし,あるいは両方のデータ通信が競合してもデータの不整合が起こらないようにした情報通信装置を提供することを課題する。」

(イ)引用文献6に記載されている技術的事項
「電話網を介した通話およびデータ通信と,パソコン等の情報機器とのデータ通信とが同時間帯に並行して行える情報通信装置」

(4)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「バーコードリーダー14」は,購入されたアイテム上のバーコードデータを識別し,そのバーコードデータを復号し,POS端末12で実行される取引ソフトウェア20へアイテム識別情報を提供するものであり,「バーコードデータ」という“データ”を“収集”する“デバイス”であるから本件補正発明の「データ収集デバイス」に対応するものであり,また,引用発明の「バーコードリーダー14」は,「データを収集するように構成され」ている点で,本件補正発明の「データ収集デバイス」と一致する。

(イ)引用発明の「バーコードリーダー14」は,制御ソフトウェア22を実行するものであるから,当該制御ソフトウェア22を実行するための「プロセッサ」を有していることは自明のことであり,また,引用発明の「バーコードリーダー14」は,購入されたアイテム上のバーコードデータを「識別」し,「復号」するという“処理”を実行するから,本件補正発明の「データ収集デバイス」とは,「データ収集デバイスのプロセッサは収集されたデータを処理するように構成され」ている点で一致する。

(ウ)引用発明の「POS端末12」は,取引ソフトウェア20を実行するものであり,当該取引ソフトウェア20は,「経路30」を介してバーコードリーダー14からアイテム識別情報を取得しているところ,上記(イ)での検討から,「アイテム識別情報」は,バーコードリーダー14のプロセッサによって“処理されたデータ”であるといえ,すると,引用発明の「POS端末12」は,バーコードリーダー14のプロセッサによって“処理されたデータ”を取得する「端末」,すなわち,“ターミナル”であるといえるから,本件補正発明の「(データ収集デバイスに)対応するデータターミナル」に相当し,また,引用発明の「経路30」が本件補正発明の「第1の通信チャネル」に相当する。
そうすると,引用発明と本件補正発明とは,「データ収集デバイスが」「第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続され」,「対応する前記第1の通信チャネルは前記処理されたデータを前記対応するデータターミナルに伝達するように構成される」点で一致している。

(エ)引用発明では,「技術者は,単一の位置から全てのバーコードリーダ14に対して状態チェックおよびソフトウェアアップデートを実行することができる」ことから,引用発明の取引システム10は,「複数のバーコードリーダー14」を含むものである。

(オ)上記(ア)?(エ)の検討から,引用発明の「複数のバーコードリーダー14」と本件補正発明の「複数のデータ収集デバイス」とは,「複数のデータ収集デバイスであって,各データ収集デバイスがプロセッサを有し,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続され,各データ収集デバイスに関しては,前記データ収集デバイスはデータを収集するように構成され,前記データ収集デバイスの前記プロセッサは収集されたデータを処理するように構成され,対応する前記第1の通信チャネルは前記処理されたデータを前記対応するデータターミナルに伝達するように構成される,複数のデータ収集デバイス」である点で一致する。

(カ)引用発明の「店舗内サーバ16」は,「メンテナンスソフトウェア26」を実行するものであり,バーコードリーダー14は,その動作中に,バーコードリーダー14の動作状態を決定するために有用である「性能データ24」を収集し,ネットワーク経路32と34を介して店舗内サーバ16へ「性能データ24」を送信し,「メンテナンスソフトウェア26」は,「性能データ24」を解析して,「状態情報」を技術者へ提供しているところ,当該「状態情報」は,バーコードリーダー14の「状態」を表すものであるから,引用発明の「店舗内サーバ16」は,「バーコードリーダー14(データ収集デバイス)」の「状態」を“モニタ”する処理を実行しているといえる。
また,引用発明では,「技術者は,メンテナンスソフトウェア26に含まれるメンテナンスソフトウェアウェブアプリケーション44にアクセスして,店舗内ネットワーク経路32と34を介してバーコードリーダー14へ制御ソフトウェアアップデート28をダウンロードし」ているから,引用発明の「店舗内サーバ16」は,「バーコードリーダー14(データ収集デバイス)」に対して,「制御ソフトウェアアップデート28(ソフトウエア・アップデート)」を「ダウンロードする(提供する)」処理を実行しているといえる。
そうすると,引用発明の「店舗内サーバ16」は,本件補正発明の「中央連結ポイント」に対応し,両者は,「データ収集デバイスの状態をモニタする」処理,及び「データ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供する」処理を実行するものである点で共通する。

(キ)引用発明の「バーコードリーダー14」は,「ネットワーク経路32と34」を介して「店舗内サーバ16」へ性能データ24を送信しているところ,「ネットワーク経路32」は,「無線」であることが好ましいものであり,さらに,「店舗内サーバ16」と「バーコードリーダー14」との間の「完全な無線接続」も想定されていることから,引用発明の「店舗内サーバ16とバーコードリーダー14との間の完全な無線接続」が本件補正発明の「中央連結ポイント」と「データ収集デバイス」とを接続する「無線の第2の通信チャネル」に相当する。
そうすると,引用発明の「店舗内サーバ16」と本件補正発明の「中央連結ポイント」とは,後記する点で相違するものの,「前記複数のデータ収集デバイスの中の第1のデータ収集デバイスと無線の第2の通信チャネルを介して通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続される中央連結ポイント」である点で共通する。

(ク)上記(カ)の検討から,引用発明の「店舗内サーバ16」は,「データ収集デバイスの状態をモニタする」処理,及び「データ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供する」処理を実行するものであり,これらの処理は,バーコードリーダー14との間の「完全な無線接続(無線の第2の通信チャネル)」を介して,“リモート”で実行される処理であるから,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,「前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して前記第1のデータ収集デバイスをリモートで処理し,
前記リモートで処理することは,前記第1のデータ収集デバイスの状態をモニタすること,前記第1のデータ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供すること,のうちの少なくとも1つを含」んでいる点で共通する。

イ 以上のことから,本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
[一致点]
「複数のデータ収集デバイスであって,各データ収集デバイスがプロセッサを有し,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに接続され,各データ収集デバイスに関しては,前記データ収集デバイスはデータを収集するように構成され,前記データ収集デバイスの前記プロセッサは収集されたデータを処理するように構成され,対応する前記第1の通信チャネルは前記処理されたデータを前記対応するデータターミナルに伝達するように構成される,複数のデータ収集デバイスと,
前記複数のデータ収集デバイスの中の第1のデータ収集デバイスと無線の第2の通信チャネルを介して通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続される中央連結ポイントと,
を有し,
前記中央連結ポイントが,前記無線の第2の通信チャネルを介して前記第1のデータ収集デバイスをリモートで処理し,
前記リモートで処理することは,前記第1のデータ収集デバイスの状態をモニタすること,前記第1のデータ収集デバイスに対してソフトウエア・アップデートを提供すること,のうちの少なくとも1つを含む,
システム。」

[相違点1]
本件補正発明では,中央連結ポイントが,「第1のデータ収集デバイスと第1のデータ収集デバイスの対応するデータターミナルとの間の前記第1の通信チャネルを介した通信を崩壊させることなく」,複数のデータ収集デバイスの中の第1のデータ収集デバイスと無線の第2の通信チャネルを介して通信するのに対して,
引用発明は,店舗内サーバ16がバーコードリーダー14と通信する際に,バーコードリーダー14とPOS端末12との通信を崩壊させることなく通信することは特定されていない点。

[相違点2]
本件補正発明では,「第1のデータ収集デバイスが,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルと通信している間」,中央連結ポイントが,無線の第2の通信チャネルを介して前記第1のデータ収集デバイスをリモートで処理しているのに対して,
引用発明は,店舗内サーバ16がバーコードリーダー14をリモートで処理しているものの,当該処理が,バーコードリーダー14がPOS端末12と通信している間に行われることは特定されていない点。

[相違点3]
本件補正発明では,「第1のデータ収集デバイスが,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルと通信している間,中央連結ポイントが,無線の第2の通信チャネルを介して使用統計を解釈し,及び/又は,第1のデータ収集デバイスに関する未許可の使用統計を追跡する」のに対して,
引用発明は,そのような特定はなされていない点。

(5)判断
以下,相違点について検討する。
ア 相違点1,相違点2及び相違点3について
事案に鑑み,相違点1?3について,まとめて検討する。
最初に,上記相違点1に係る「通信を崩壊させることなく」の記載の意味について検討すると,本願明細書の段落【0005】に,
「本発明の一態様によれば,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルに各々接続する少なくとも一つのデータ収集デバイスと,少なくとも一つのデータ収集デバイスと第1の通信チャネルを介した対応するデータターミナルとの間の通信を崩壊させることなく,少なくとも1つのデータ収集デバイスと通信するために,無線の第2の通信チャネルを介して各々のデータ収集デバイスに接続した中央連結ポイントと,を包含するシステムが提供される。(原文では,“According to an aspect of the present invention, a system is provided, including at least one data collection device, each connected to a corresponding data terminal via a primary communication channel; and a central connectivity point connected to each data collection device via a wireless secondary communication channel so as to communicate with the at least one data collection device without disrupting communication between the at least data collection device and the corresponding data terminal via the primary communication channel.”)」と記載され,
段落【0038】に,
「第2の通信チャネル150によって,データ収集デバイス320a,320bおよび320cが,第1の通信チャネル340を介して対応するターミナルデバイス330a,330bまたは330cとのいかなる同時の通信に著しい影響を与えることのない中央連結ポイント110と連絡することができる。」
と記載され,
段落【0042】に,
「しかし,第2の通信チャネル350を使用して,通常の動作中,中央連結ポイント310は,バックグラウンドで各々のデータ収集デバイス320a,320bおよび320cに,ソフトウェア・アップデートをダウンロードすることができる。アップグレードがリスタートを必要とする場合,唯一の混乱は起こるだろう。(原文では,“However, using the secondary communication channel 350 , the central connectivity point 310 may download software updates to each of the data collection devices 320 a, 320 b, and 320 c in the background, during normal operation. The only disruption would occur if the upgrade requires a restart.”)」
と記載され,
段落【0044】に,
「これは,データ収集デバイス320aの動作を中断させることなく,シームレスなバックグラウンドでのデータのダウンロードを促進する。(原文は,“This facilitates seamless background downloading of data without disrupting operations of the data collection device 320 a.”)」
と記載されていることからすると,「通信を崩壊させることなく」とは,「通信を中断させることなく,同時に通信する」という意味であると解されるので,以下,このような解釈に基づいて検討する。
上記相違点1?3は,要するに,
「第1のデータ収集デバイスが,第1の通信チャネルを介して対応するデータターミナルと通信している間」に,
中央連結ポイントが,
データ収集デバイスと「第1のデータ収集デバイスと第1のデータ収集デバイスの対応するデータターミナルとの間の前記第1の通信チャネルを介した通信を崩壊させることなく」,すなわち,「中断させることなく,同時に」,「第1のデータ収集デバイスと無線の第2の通信チャネルを介して」「第1のデータ収集デバイス」のリモートの処理のための通信を行い(相違点1,2),
さらに第2の通信チャネルを介したリモートの処理は第1のデータ収集デバイスの「使用統計の解釈」を行う(相違点3)
のに対して,引用発明では,そのようなことは特定されていない点であるということができる。
ここで,複数の通信チャネルを介して通信することが可能な通信装置において,当該複数の通信チャネルを用いて同時に通信を行うことは,例えば上記「(3)引用文献の記載事項」で認定した引用文献2,引用文献5,及び引用文献6に記載されている技術的事項からみて,本願の優先日前に当該技術分野における周知技術であったと認められる。
また,引用発明のバーコードリーダー14は,経路30を介してPOS端末12にアイテム購入処理のための「アイテム識別情報」を送信し,また,経路32を介して店舗内サーバ16に,バーコードリーダー14の動作状態を決定するための「性能データ24」を送信するものであるところ,ここで送信される「アイテム識別情報」と「性能データ24」は,それぞれ,「アイテム購入処理」,「バーコードリーダー14の動作状態を決定する」処理という独立した異なる処理のためのデータであることから,それぞれのデータを送信する処理が,他方の通信を崩壊させることなく,独立して同時に実行されることは想定されていると解される。
加えて,所定の管理対象の状態をリモートで処理する際に,どのような情報を用いて処理するかは,管理する対象や管理する内容などに応じて当業者が適宜決定すべきものであり,例えば,管理対象の使用時間や使用回数のような「使用統計」の情報を用いることも,当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であるといえる。
してみれば,POS端末12との間の経路30(第1の通信チャネル)を介した通信と,店舗内サーバ16との間の経路32(第2の通信チャネル)を介した通信という2つの通信チャネルを介した通信が可能であり,それぞれの通信チャネルを介して独立した異なる処理のためのデータを送信するバーコードリーダー14を用いる引用発明に上記周知技術を適用して,
バーコードリーダー14(第1のデータ収集デバイス)が,経路30(第1の通信チャネル)を介してPOS端末12(対応するデータターミナル)と通信している間に,
店舗内サーバ16が,バーコードリーダー14とPOS端末12との間の第1の通信チャネルを介した通信を崩壊させることなく,すなわち,バーコードリーダー14とPOS端末12との間の通信を中断させることなく,同時に,バーコードリーダー14との経路32(第2の通信チャネル)を介した通信を実行するようにし(相違点1),
店舗内サーバ16が,経路32(第2の通信チャネル)を介した通信を利用して,リモートの処理を行い(相違点2),
さらに,前記リモートの処理として,店舗内サーバ16が,バーコードリーダー14を管理するための使用統計を解釈する(相違点3)ように構成すること,
すなわち,上記相違点1?3に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

イ そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。

ウ したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年4月5日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成28年6月13日に提出された翻訳文の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項7に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1?11に係る発明は,本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?7に記載された発明及び周知技術に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。

引用文献1:米国特許第7093760号明細書
引用文献2:特開2007-142684号公報
引用文献3:坂梨孝一,今泉賢一,企業を熱くする最新テクノロジ「ZigBee」乾電池で数年動く近距離無線技術 センサーネットで普及の兆し,日経コミュニケーション,日本,日経BP社,2007年 4月15日,第484号,pp.62-67
引用文献4:特表2006-520137号公報
引用文献5:特表2009-505509号公報
引用文献6:特開2006-229331号公報
引用文献7:特表2009-531922号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1,2,5,6及びその記載事項は,前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,「データ収集デバイス」,「リモートで処理」すること,及び「中央連結ポイントが使用統計を解釈」することについての限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記第2の[理由]2(4),(5)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-28 
結審通知日 2018-11-29 
審決日 2018-12-12 
出願番号 特願2016-78854(P2016-78854)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂庭 剛史  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 須田 勝巳
山崎 慎一
発明の名称 非汎用装置のための汎用連結性  
代理人 中西 基晴  
代理人 小野 新次郎  
代理人 宮前 徹  
代理人 上田 忠  
代理人 山本 修  

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