• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02F
管理番号 1351077
審判番号 不服2017-2926  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-28 
確定日 2019-04-22 
事件の表示 特願2011-245425「アレイ基板及び液晶ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日出願公開,特開2012-103697〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成23年11月9日(パリ条約による優先権主張2010年11月9日,中国)の出願であって,平成27年6月5日付けで拒絶理由が通知され,同年9月4日に手続補正がされ,平成28年2月23日付けで拒絶理由が通知され,同年5月30日に意見書が提出され,同年10月25日付け(同年同月31日送達)で拒絶査定がされ,これに対して平成29年2月28日に審判請求がされると同時に手続補正がされ,その後,平成30年6月15日付けで,平成29年2月28日にされた手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され,平成30年9月27日に手続補正がされたものである。

2 本願発明
本願発明は,平成30年9月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されている事項により特定されるとおりのものであり,そのうち請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。

「【請求項1】
サブストレートと,
前記サブストレートに形成され横縦方向に交差することで複数の画素ユニットを囲んで画成するデータラインとゲートラインとを備えるアレイ基板であって,
各画素ユニットは,画素電極と薄膜トランジスタースイッチ素子とを備え,前記薄膜トランジスタースイッチ素子は,前記サブストレート上にゲート電極,前記ゲート電極上にゲート絶縁層,前記ゲート絶縁層上に活性層,並びに,前記活性層上にソース電極及びドレイン電極を備え,
前記ゲート絶縁層は,不透明絶縁層及び前記不透明絶縁層の下に提供される透明絶縁層を含み,前記不透明絶縁層は,前記不透明絶縁層上に提供される活性層に接触し,前記不透明絶縁層の端部における前記不透明絶縁層の上面の一部は,前記活性層によって露出されて段差を形成し,前記不透明絶縁層の面積は,前記不透明絶縁層上に形成される前記データライン又は前記活性層の面積より大きいことを特徴とするアレイ基板。」

3 刊行物に記載された発明
(1)引用例1: 韓国公開特許第10-2008-0037242号公報
当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に外国において頒布された韓国公開特許第10-2008-0037242号公報(以下「引用例1」という。)には,図とともに以下の記載がある(日本語訳は当審で作成)。




(日本語訳;下線は当審で付加。以下同様。)
「【19】本発明は液晶表示装置に関することで,特に活性層電流特性の非線形的変化に起因した液晶表示装置の表示品質低下を防止することができる薄膜トランジスタ基板及びその製造方法に関する。
・・・(中略)・・・
【22】図1は従来の薄膜トランジスタアレイ基板を示す平面図で,図2は図1に図示された薄膜トランジスタアレイ基板をI-I’線に沿って切り取って示す断面及び,ここに対応するカラーフィルターアレイ基板とバックライトユニットを示す図面である。
・・・(中略)・・・
【30】このような従来の液晶表示装置の活性層(14)はゲート電極(8)によって遮られることができなかったバックライトユニット(70)からの入射光によって活性化されて非正常的な電流を発生させる。その結果表示画面に波柄のノイズを発生させて液晶表示装置の表示品質が阻害する問題が発生する。

【31】ノイズ発生に対して具体的に説明すると,活性層(14)はアモルファスシリコンで成り立っている。このようなアモルファスシリコンは印加される電圧,入射される光の波長,温度,周波数に従ってその誘電率が非線形的に変わる特性がある。これによって従来薄膜トランジスタアレイ基板(30)の活性層(14)はバックライトユニット(70)を通じて入射された光の中でゲート電極(8)を通じて遮られることができなくて活性層(14)に直接調査される光(90)の波長によって非線形的に活性化されて電流特性が非線形的になるので液晶表示装置のディスプレイパネルに波柄のノイズを発生させる。
・・・(中略)・・・
【39】よって,本発明の目的は活性層電流特性の非線形的変化に起因した液晶表示装置の表示品質低下を防止することができる薄膜トランジスター基板及びその製造方法を提供することである。」

「【40】前記目的を果たすために,本発明による薄膜トランジスタ基板は基板上に形成されたゲートライン及び前記ゲートラインから延長されて形成されたゲート電極を含むゲートパターンと;前記ゲートラインとゲート絶縁膜を間に置いて交差して画素領域を定義するデータラインと;前記ゲート絶縁膜上に形成されて光を遮断する遮断パターンと;前記遮断パターン上に直接形成されて前記遮断パターンと等しいパターンに形成されて活性層及びオーミック接触層を含む半導体パターンと;前記データラインと接続されて前記半導体パターン上に形成されたソース電極と;前記半導体パターン上に形成されて,前記ソース電極と前記活性層が露出したチャンネル部を間に置いて向い合うように形成されたドレイン電極と;前記ドレイン電極と接続されて前記画素領域に形成された画素電極を含む。

【41】前記遮断パターン及び半導体パターンは前記データライン下部に重なるように形成される。
・・・(中略)・・・
【44】前記遮断パターンはブラック系列の樹脂に形成される。

【45】前記目的外に本発明の他の目的及び利点は添付図面を参照した本発明の望ましい実施例に対する説明を通じて明白に現われるようになるはずである。

【46】以下,本発明の望ましい実施例を図4ないし図11を参照して詳細に説明する事にする。以下では遮断パターン(100)と重なる部分を暗く表示した。

【47】図4は本発明による薄膜トランジスタアレイ基板を示す平面図で,図5は図4に図示された薄膜トランジスタアレイ基板をII-II’線に沿って切り取って示す断面及び,ここに対応するカラーフィルターアレイ基板とバックライトユニットを示す図面である。

【48】図4及び図5を参照すると,本発明による薄膜トランジスタアレイ基板(130)は下部基板(142)上にゲート絶縁膜(144)を間に置いて交差するように形成されたゲートライン(102)及びデータライン(104)と,その交差部ごとに形成された薄膜トランジスタ(106)と,その交差構造に用意されたセル領域に形成された画素電極(118)を具備する。そして,薄膜トランジスタアレイ基板(130)は画素電極(118)と前段ゲートライン(102)の重畳部に形成されたストレージキャパシター(120)と薄膜トランジスタ(106)の活性層(114)と等しいパターンで活性層(114)下部に直接形成された遮断パターン(100)を具備する。

【49】薄膜トランジスター(106)はゲートライン(102)に接続されたゲート電極(108)と,データライン(104)に接続されたソース電極(110)と,画素電極(116)に接続されたドレイン電極(112)と,ソース電極(110)とドレイン電極(112)の間にチャンネルを形成することと合わせてゲート絶縁膜(144)を間に置いてゲート電極(108)に前面重なる半導体パターン(147)を具備する。

【50】半導体パターン(147)はソース電極(110)及びドレイン電極(112)と重なるように形成されてソース電極(110)とドレイン電極(112)の間のチャンネル部を形成する活性層(114)と,活性層(114)の上でソース電極(110)及びドレイン電極(112)とオーミック接触のためのオーミック接触層(148)で構成される。

【51】このような薄膜トランジスタ(106)はゲートライン(102)に供給されるゲート信号に応答してデータライン(104)に供給される画素電圧信号が画素電極(118)に充電されて維持されるようにする。

【52】遮断パターン(100)は半導体パターン(147)とゲート絶縁膜(144)の間に形成されて,半導体パターン(147)の活性層(114)と等しいパターンに形成されてゲート電極(108)を通じて遮られることができずに活性層(114)に向けて入射される光(190)を遮断する。これによって活性層(114)がバックライトユニット(170)を通じて入射される光(190)によって非線形的に変わる現象を改善することができる。
・・・(中略)・・・
【56】このような,本発明による薄膜トランジスタアレイ基板(130)は遮断パターン(100)を具備して活性層(114)の誘電率が非線形的に変わる現象を防止することで液晶表示装置のディスプレイパネルに波柄のノイズが発生する現象を改善することができる。」

「【57】このような構成を有する薄膜トランジスタ基板の製造方法を図6aないし図9bを参照して詳細にすると次のとおりである。
・・・(中略)・・・
【63】ゲート絶縁膜(144)形成工程及び第2マスク工程を詳細にすると,ゲートパターンが形成された下部基板(142)上にPECVDなどの蒸着方法でゲート絶縁膜(144),光遮断層,非晶質シリコン層,不純物(n+またはp+)がドーピングされた非晶質シリコン層が順次に形成される。そして非晶質シリコン層上部にソース/ドレーン金属層が蒸着される。ここでゲート絶縁膜(144)ではSiOx,SiNxなどのような無機絶縁物質が利用されて,光遮断層では樹脂系列のブラックマトリクス物質が利用されて,ソース/ドレーン金属ではモリブデン(Mo),チタン,タンタル,モリブデン合金(Moalloy)などが利用される。

【64】この後,ハーフトーンマスクまたは回折露光マスクを利用した第2マスク工程で遮断パターン(100)及びチャンネル部を具備する半導体パターン(147)及びソース/ドレーンパターンが形成される。

【65】ハーフトーンマスクを利用した場合を例として第2マスク工程を詳細にすると,ハーフトーンマスクを利用したフォトリソグラフィ工程で厚さが違うフォトレジストパターンが形成される。このフォトレジストパターンは相対的に薄い厚さの第1フォトレジストパターン,相対的に厚い厚さの第2フォトレジストパターンを具備する。第1フォトレジストパターンはハーフトーンマスクのハーフトーン透過部と対応された領域に形成されて,第2ポトレジトスパターンはハーフトーンマスクのハーフトーン透過部と対応された領域に形成されて,以外の部分は開口部になる。

【66】第1及び第2フォトレジストパターンをマスクで第1エッチング工程を進行すると不純物がドーピングされた非晶質シリコン層から光遮断層まで除去されて遮断パターン(100),半導体パターン(147)及びソース/ドレーンパターンが形成される。第1エッチング工程では半導体パターン(147)は活性層(114)の露出したチャンネル部が形成されない状態であり,ソース電極(110)及びドレイン電極(112)が分離しない状態である。

【67】この後,アッシング工程を進行して第1フォトレジストパターンは除去されて,第2フォトレジストパターンの厚さは薄くなる。アッシング工程を通じて第1フォトレジストパターンが除去されることによってゲート電極(108)と重なった部分ソース/ドレーンパターンすなわち,ソース電極(110)及びドレイン電極(112)の連結部が露出する。続いて第2エッチング工程を通じて露出したソース電極(110)及びドレイン電極(112)の連結部からその下部のオーミック接触層(148)まで除去することで半導体パターン(147)のチャンネル部が形成されて,ソース電極(110)及びドレイン電極(112)がチャンネル部を間に置いて分離する。この後残存するフォトレジストパターンをストリップ工程で除去すると図7a及び図7bに図示されたところのような状態になる。
・・・(中略)・・・
【74】(省略)」

イ ここで,図4及び図5は以下のものである。
図4


図5

上記各図を前記段落【66】?【74】(特に【66】,【67】)の記載とともに参照すると,半導体パターン(147)自体のパターンは,活性層(114)と同等のパターンに形成されていることがわかる。
また,上記各図を前記段落【40】の記載とともに参照すると,ゲートライン(102)に接続されたゲート電極(108)上にゲート絶縁膜(144)が形成され,ゲート絶縁膜(144)上に遮断パターン(100)が形成され,遮断パターン(100)上に直接半導体パターン(147)が形成されていることがわかる。

ウ 以上から,引用例1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「薄膜トランジスタアレイ基板(130)であって,
下部基板(142)上にゲート絶縁膜(144)を間に置いて交差するように形成されたゲートライン(102)及びデータライン(104)と,その交差部ごとに形成された薄膜トランジスタ(106)と,その交差構造に用意されたセル領域に形成された画素電極(118)を具備し,
薄膜トランジスタアレイ基板(130)は,さらに,画素電極(118)と前段ゲートライン(102)の重畳部に形成されたストレージキャパシター(120)と,薄膜トランジスタ(106)の活性層(114)と等しいパターンで活性層(114)下部に直接形成された遮断パターン(100)を具備し,
薄膜トランジスター(106)はゲートライン(102)に接続されたゲート電極(108)と,データライン(104)に接続されたソース電極(110)と,画素電極(118)に接続されたドレイン電極(112)と,ソース電極(110)とドレイン電極(112)の間にチャンネルを形成することと合わせてゲート絶縁膜(144)を間に置いてゲート電極(108)に前面重なる半導体パターン(147)を具備し,
ゲートライン(102)に接続されたゲート電極(108)上にゲート絶縁膜(144)が形成され,ゲート絶縁膜(144)上に遮断パターン(100)が形成され,遮断パターン(100)上に直接半導体パターン(147)が形成されており,
半導体パターン(147)は,ソース電極(110)及びドレイン電極(112)と重なるように形成されてソース電極(110)とドレイン電極(112)の間のチャンネル部を形成する活性層(114)と,活性層(114)の上でソース電極(110)及びドレイン電極(112)とオーミック接触のためのオーミック接触層(148)で構成され,そのパターンは,活性層(114)と同等のパターンであり,
遮断パターン(100)及び半導体パターン(147)はデータライン(104)下部に重なるように形成され,遮断パターン(100)は,ブラック系列の樹脂に形成され,
遮断パターン(100)は,半導体パターン(147)とゲート絶縁膜(144)の間に形成されて,半導体パターン(147)の活性層(114)と等しいパターンに形成されて,ゲート電極(108)を通じて遮られることができずに活性層(114)に向けて入射される光(190)を遮断し,これによって活性層(114)がバックライトユニット(170)を通じて入射される光(190)によって非線形的に変わる現象を改善することができるものである,
薄膜トランジスタアレイ基板(130)。」

4 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「下部基板(142)」は,本願発明の「サブストレート」に相当する。

イ 引用発明の「その交差部ごとに形成された薄膜トランジスタ(106)と,その交差構造に用意されたセル領域に形成された画素電極(118)」は,併せて本願発明の「画素電極と薄膜トランジスタースイッチ素子とを備え」る「各画素ユニット」に相当するから,引用発明の「下部基板(142)上にゲート絶縁膜(144)を間に置いて交差するように形成されたゲートライン(102)及びデータライン(104)と,その交差部ごとに形成された薄膜トランジスタ(106)と,その交差構造に用意されたセル領域に形成された画素電極(118)を具備」することは,本願発明の「前記サブストレートに形成され横縦方向に交差することで複数の画素ユニットを囲んで画成するデータラインとゲートラインとを備える」ことに相当する。

ウ 引用発明の「薄膜トランジスタアレイ基板(130)」は,本願発明の「アレイ基板」に相当する。

エ 引用発明の「活性層(114)」,「ソース電極(110)」,「ドレイン電極(112)」,「ゲート電極(108)」,「ゲート絶縁膜(144)」及び「遮断パターン(100)」は,それぞれ本願発明の「活性層」,「ソース電極」,「ドレイン電極」,「ゲート電極」,「透明絶縁層」及び「不透明絶縁層」に相当する。すなわち,引用発明の「ゲート絶縁膜(144)」及び「遮断パターン(100)」を合わせたものが,本願発明の「ゲート絶縁層」に相当する。

オ 引用発明の「薄膜トランジスター(106)はゲートライン(102)に接続されたゲート電極(108)と,データライン(104)に接続されたソース電極(110)と,画素電極(118)に接続されたドレイン電極(112)と,ソース電極(110)とドレイン電極(112)の間にチャンネルを形成することと合わせてゲート絶縁膜(144)を間に置いてゲート電極(108)に前面重なる半導体パターン(147)を具備」するところ,「半導体パターン(147)は,ソース電極(110)及びドレイン電極(112)と重なるように形成されてソース電極(110)とドレイン電極(112)の間のチャンネル部を形成する活性層(114)と,活性層(114)の上でソース電極(110)及びドレイン電極(112)とオーミック接触のためのオーミック接触層(148)で構成され」,また,「ゲートライン(102)に接続されたゲート電極(108)上にゲート絶縁膜(144)が形成され,ゲート絶縁膜(144)上に遮断パターン(100)が形成され,遮断パターン(100)上に直接半導体パターン(147)が形成されて」るから,上記エも考慮すると,引用発明の当該構成は,本願発明の「前記薄膜トランジスタースイッチ素子は,前記サブストレート上にゲート電極,前記ゲート電極上にゲート絶縁層,前記ゲート絶縁層上に活性層,並びに,前記活性層上にソース電極及びドレイン電極を備え」ることに相当する。

カ 引用発明においては,「ゲート電極(108)上にゲート絶縁膜(144)が形成され,ゲート絶縁膜(144)上に遮断パターン(100)が形成され,遮断パターン(100)上に直接半導体パターン(147)が形成され」るから,上記エ,オも考慮すると,引用発明の当該構成は,本願発明の「前記ゲート絶縁層は,不透明絶縁層及び前記不透明絶縁層の下に提供される透明絶縁層を含み,前記不透明絶縁層は,前記不透明絶縁層上に提供される活性層に接触」することに相当する。

(2)よって,両者は以下の点で一致する。
「サブストレートと,
前記サブストレートに形成され横縦方向に交差することで複数の画素ユニットを囲んで画成するデータラインとゲートラインとを備えるアレイ基板であって,
各画素ユニットは,画素電極と薄膜トランジスタースイッチ素子とを備え,前記薄膜トランジスタースイッチ素子は,前記サブストレート上にゲート電極,前記ゲート電極上にゲート絶縁層,前記ゲート絶縁層上に活性層,並びに,前記活性層上にソース電極及びドレイン電極を備え,
前記ゲート絶縁層は,不透明絶縁層及び前記不透明絶縁層の下に提供される透明絶縁層を含み,前記不透明絶縁層は,前記不透明絶縁層上に提供される活性層に接触する,アレイ基板。」

(3)一方,両者は以下の点で相違する。
《相違点》
本願発明は,「前記不透明絶縁層の端部における前記不透明絶縁層の上面の一部は,前記活性層によって露出されて段差を形成し,前記不透明絶縁層の面積は,前記不透明絶縁層上に形成される前記データライン又は前記活性層の面積より大きい」との構成を備えるのに対して,引用発明においては,「遮断パターン(100)」は,「薄膜トランジスタ(106)の活性層(114)と等しいパターンで活性層(114)下部に直接形成された」ものであり,上記本願発明に係る構成は備えない点。

5 判断
(1)上記相違点について検討する。
下記(2)の周知例2ないし4にも示されているように,薄膜能動素子を用いた,いわゆるアクティブマトリクス型の液晶表示装置において,画素間からの光もれによるコントラスト低下の防止や,薄膜能動素子の誤動作の防止を目的として,遮光膜(ブラックマトリクス)を設けることは,周知の技術である。
そして,周知例2(例えばFIG.4)及び周知例3(例えば図1?図3)にも示されているように,遮光膜(ブラックマトリクス)のパターン幅を,活性層やデータライン等の幅よりも広くすることは,前記間隙からの光もれを防ぐ上で当然になされることである。
一方,引用発明は,「活性層(114)に向けて入射される光(190)を遮断」する「遮断パターン(100)」を備えるものの,当該「遮断パターン(100)」は画素間からの光もれを意図したものではなく,また,前記3(1)イに摘記した図4に示されている平面図からは,活性層やデータラインと画素電極の間に間隙の存在が確認できるから,当該間隙からの光もれが避けられないことは明らかである。
それゆえ,前記周知技術を勘案して,引用発明において,画素間からの光もれによるコントラスト低下をも防ぐことを企図して,前記データラインと画素電極の間に間隙等を覆うように,「遮断パターン(100)」を活性層やデータラインよりもやや幅広く形成することは,当業者が適宜になし得たことである。
そして,上記のとおり,引用発明において,前記データラインと画素電極の間に間隙等を覆うように,「遮断パターン(100)」を活性層やデータラインよりもやや幅広く形成することにより,相違点に係る「前記不透明絶縁層上に形成される前記データライン又は前記活性層の面積より大きい」との構成を備え,またその結果,相違点に係る「前記不透明絶縁層の端部における前記不透明絶縁層の上面の一部は,前記活性層によって露出されて段差を形成し」た構成を備えることは明らかである。

(2)各周知例
周知例2:米国特許第5742365号明細書
当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に外国において頒布された米国特許第5742365号明細書(以下「周知例2」という。)には,図とともに,以下の記載がある(なお,日本語訳は当審において作成した。)。
「Further, in the thin film transistor--liquid crystal display (TFT-LCD) formed as described above, a black matrix layer is formed so as to shield the thin film transistor as well as the spaces between the pixel electrodes and the data lines and the gate lines.」(1欄40?44行)
(日本語訳:また,上記のように形成された液晶ディスプレイ(TFT-LCD)では,ブラックマトリクス層が,画素電極とデータ線及びゲート線の間のスペースを遮蔽するだけでなく,薄膜トランジスタの遮蔽もするように形成される。)
「As shown in FIG. 4, in the liquid crystal display device according to the present invention, a gate electrode 2 is formed on a lower glass substrate 1. In order to shield a thin film transistor as well as the space between each signal line (not shown) and a pixel electrode, and to insulate gate electrode 2, a black resin 19 is formed on lower glass substrate 1 centered around gate electrode 2. A gate insulating film 3 is formed on the entire surface of the substrate, including black resin 19. A semiconductor layer 4 is formed on gate insulating film 3 on the upper side of gate electrode 2.」(5欄7?17行)
(日本語訳:図4に示すように,本発明の液晶ディスプレイは,下部ガラス基板1上にゲート電極2が形成されている。各信号線(図示せず)と画素電極との間のスペースを遮蔽するだけでなく,薄膜トランジスタの遮蔽もし,またゲート電極2を絶縁するために,黒色樹脂19が,ゲート電極2を中心とする下部ガラス基板1上に形成される。ゲート絶縁膜3が,黒色樹脂19を含む基板全面上に形成される。半導体層4が,ゲート電極2の上側にあるゲート絶縁膜3上に形成される。)

ここで,FIG.4は以下のものである。

上記FIG.4からは,黒色樹脂19が,半導体層4よりも幅広く形成されていることが見て取れる。

周知例3:特開平9-80468号公報
当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された特開平9-80468号公報(以下「周知例3」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0014】(実施形態1)図1は,この発明の液晶表示装置の実施形態1の画素部を示す平面説明図であり,共通電極基板側に形成されたブラックマスクを平面的に重ねて示している。同図中11は,一方の透明基板としてのガラス基板(図示省略する)上にITOで形成された略矩形状の画素電極であり,この画素電極11はガラス基板上に互いに所定間隔を隔てて縦横方向に列をなすように多数配置されている。 ・・・(中略)・・・ なお,ゲートバスライン13およびドレインバスライン15は,それぞれが形成される間隙部12または間隙部14の幅方向の中央に位置するように設定されている。すなわち,ゲートバスライン13またはドレインバスライン15は,両側に位置する画素電極11までの距離が等しくなるように配置されている。
【0015】これらゲートバスライン13とドレインバスライン15とが平面的に見て交差する部分の近傍には,各画素電極11のスイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)16が形成されている。 ・・・(中略)・・・
【0016】このようなTFT基板に液晶(図示省略する)を介して対向するように配置される,他方の透明基板としての共通電極基板(図示省略する)側には,図1に一点鎖線で示すようなブラックマスク20が形成されている。このブラックマスク20は,ゲートバスライン13に対応するゲートバスライン対応部20Aと,ドレインバスライン15に対応するドレインバスライン対応部20Bと,薄膜トランジスタ16に対応するTFT対応部20Cと,から構成されている。本実施形態におけるブラックマスク20のゲートバスライン対応部20Aの幅寸法は,例えば10μmに設定し,ゲートバスライン13およびこのゲートバスライン13の幅方向の両端縁から画素電極11までの距離の中間までの部分を覆い得る寸法とした。また,ブラックマスク20のドレインバスライン対応部20Bの幅寸法も,10μmに設定し,ドレインバスライン15およびこのドレインバスライン15の幅方向の両端縁から画素電極11までの距離の中間までの部分を覆い得る寸法とした。さらに,ブラックマスク20のTFT対応部20Cは,TFT基板と共通電極基板とが最大の合わせずれを起こした場合に,半導体層17のチャネル領域を覆うことができるように縦横方向に最大合わせずれ量(本実施形態では8.5μm)を見込んだ大きさの,略矩形状に設定されている。このように,本実施形態においては,ゲートバスライン対応部20Aおよびドレインバスライン対応部20Bが,ゲートバスライン13およびこのゲートバスライン13の幅方向の両端縁から画素電極11の端縁までの距離の中間までを覆い得る設計となっている。また,ドレインバスライン対応部20Bにおいても同様の設計となっている。
【0017】(実施形態2)図2は,この発明に係る液晶表示装置の実施形態2の画素部を示す平面説明図であり,共通電極基板側に形成されたブラックマスクを平面的に重ねて示している。なお,本実施形態におけるTFT基板側の構成は,上記した実施形態1と同一であるため同一の符号を付してその説明を省略する。本実施形態のブラックマスク20も共通電極基板側に形成されるものであるが,ゲートバスライン対応部20Aとドレインバスライン対応部20Bの幅寸法のみが上記実施形態1と異なる。本実施形態においては,ブラックマスク20のゲートバスライン対応部20Aおよびドレインバスライン対応部20Bの幅寸法を間隙部12,14の幅寸法と同一,すなわち12μmに設定している。ブラックマスク20のTFT対応部20Cの大きさおよび形状は,上記実施形態1と同一とした。なお,他の構成は上記実施形態1と同様である。このように,本実施形態においては,ゲートバスライン対応部20Aおよびドレインバスライン対応部20Bの幅寸法は,それぞれが形成される間隙部12および間隙部14の幅寸法と同一に設計されている。」
「【0030】以上,この発明の各実施形態について説明したが,この発明はこれらに限定されるものではなく,構成の要旨に付随する各種の設計変更が可能である。例えば,上記実施形態1?3は反射型のLCDに本発明を適用して説明したが,透過型のLCDに適用することも勿論可能である。(・・・後略・・・)」
ここで,ブラックマスク20の各バスライン対応部20A,20Bの幅寸法を,各バスライン13,15の幅寸法の両端縁から画素電極11までの距離の中間とする(実施形態1)か,あるいは間隙部12,14の幅寸法と同一とする(実施形態2)ことにより,ブラックマスク20の各バスライン対応部20A,20Bの幅寸法が,各バスライン13,15の幅寸法よりも大きくなることは明らかである。

周知例4:特開2003-114320号公報
当審において通知した拒絶理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された特開2003-114320号公報(以下「周知例4」という。)には,図とともに,以下の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】近年、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳等の電子機器において、情報を表示する手段として液晶表示装置が広く使用されている。最近では、一方の基板側にカラーフィルタを配置してフルカラー表示を可能とした液晶表示装置が主流になっている。図29は、従来のカラーフィルタが備えられたアクティブマトリックス方式のカラー液晶表示装置の要部を示す分解斜視図である。図29の反射型カラー液晶表示装置は、アクティブ素子としてTFD素子(Thin Film diode)を用いたもので、TFD素子が形成された透明基板910、いわゆる素子基板を有すると共に、アクティブ素子基板910に対向する位置にカラーフィルタ920が形成された透明基板(対向基板)900、いわゆるカラーフィルタ基板が配置されている。
【0003】カラーフィルタ基板900の下側にはカラーフィルタ920が設けられている。このカラーフィルタ920は、基板900上にモザイク配列等の配列で並べられたR(赤)の色層905、G(緑)の色層906、B(青)の色層907と、隣接する色層間に設けられたブラックマトリックス(遮光膜)901が設けられている。ブラックマトリックス901は、コントラストの向上、色材の混合防止などの機能と、アクティブ素子に光が入射して光リーク電流が生じるのを防止する機能を有しているものである。(・・・後略・・・)」

(3)よって,本願発明は,周知技術を勘案して,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6 むすび
以上のとおりであるから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-11-20 
結審通知日 2018-11-26 
審決日 2018-12-10 
出願番号 特願2011-245425(P2011-245425)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福村 拓小林 俊久  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 近藤 幸浩
森 竜介
発明の名称 アレイ基板及び液晶ディスプレイ  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ