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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1351082
審判番号 不服2017-10695  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-18 
確定日 2019-04-25 
事件の表示 特願2013-130608「画像形成装置、及び画像形成装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月 8日出願公開、特開2015- 5905〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯及び査定の概要
1 経緯
本件出願は、平成25年6月21日の出願としたものであって、その手続の経緯は、以下のとおりである。

平成28年 6月20日:手続補正
平成28年 8月 9日:手続補正
平成28年 8月12日:手続補正
平成28年11月 9日:拒絶理由の通知
平成29年 1月16日:手続補正
平成29年 4月11日:拒絶査定
平成29年 4月18日:拒絶査定の謄本の送達
平成29年 7月18日:拒絶査定不服審判の請求
平成29年 7月18日:手続補正
平成30年 4月26日:拒絶理由の通知(当審)
平成30年 7月 2日:手続補正
平成30年10月31日:拒絶理由の通知(当審、最後)
平成31年 1月15日:手続補正

2 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(最後)は、概略、次のとおりである。

[当審拒絶理由]
この出願の請求項1?4、6?13、15?19に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2009-302831号公報
引用文献2:特開平4-97169号公報

第2 補正却下の決定
平成31年1月15日付けの手続補正について次のとおり決定する。

[補正却下の決定の結論]
平成31年1月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成31年1月15日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正であり、そのうち、請求項1の補正は次のとおりである。

(補正前の請求項1)
「第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置であって、
人感センサと、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行する、及び、前記操作部によって受け付けられたユーザの操作から経過した時間に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、さらに、前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する、ことを特徴とする画像形成装置。」

を、次のとおり補正後の請求項1に補正するものである(下線は補正箇所である。)。

(補正後の請求項1)
「第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置であって、
人感センサと、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
前記人感センサが人を検知することにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行し、前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されることなく前記人感センサが人を検知しなくなることにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行し、及び、前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記人感センサが人を検知しなくなっても前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、前記操作部の操作から所定時間経過後に前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する制御手段と、を備える、ことを特徴とする画像形成装置。」

2 補正の適合性
(1)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更、補正の目的
本件補正のうち、請求項1についての補正は、以下のとおりである。
ア 補正前の請求項1における「前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行する」を、「前記人感センサが人を検知することにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行し」とし、「前記人感センサの検知結果に基づいて」を「前記人感センサが人を検知することにより」と限定する。
イ 補正前の請求項1における「前記操作部によって受け付けられたユーザの操作から経過した時間に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、さらに、前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」を、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されることなく前記人感センサが人を検知しなくなることにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行し、及び、前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記人感センサが人を検知しなくなっても前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、前記操作部の操作から所定時間経過後に前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する制御手段」と限定する。

上記ア?イは、願書に最初添付した明細書の段落【0018】、【0042】?【0046】、図7に記載されており、請求項1についての補正は、願書に最初添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでなく、特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。

(2)独立特許要件
上記のとおり本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的としているので、本件補正後における発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを、以下に検討する。

(3)補正発明
補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、次のとおりのものである。

(補正発明)
「(A)第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置であって、
(B)人感センサと、
(C)ユーザの操作を受け付ける操作部と、
(D-1)前記人感センサが人を検知することにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行し、
(D-2)前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されることなく前記人感センサが人を検知しなくなることにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行し、及び、
(D-3)前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記人感センサが人を検知しなくなっても前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、前記操作部の操作から所定時間経過後に前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する
(D)制御手段と、
(A)を備える、ことを特徴とする画像形成装置。」

((A)?(D)は、当審で付与した。以下各構成要件を「構成要件A」?「構成要件D」という。)

(4)引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、「情報処理装置、制御方法、及びプログラム」(発明の名称)に関し、次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置としてのMFPのコントローラを中心とした構成を示すブロック図である。
【0011】
図1において、MFPは、MFPコントローラ100、スキャナ部103、プリンタエンジン111、プリンタ部(不図示)、操作部114を備えており、原稿読取機能・印刷機能・通信機能等の複数の機能を有する画像処理装置である。尚、図1に示す構成は、本発明の接続手段、記憶手段、取得手段、特定手段、制御手段、第1の電源手段、第2の電源手段を実現するための一例である。
【0012】
MFPは、消費電力を削減する複数の省電力状態(スリープ1状態、スリープ2状態)を有し、周辺機器である複数のUSBデバイス(例えば認証デバイス124、キーボード125、USBメモリ126等)を電気的に接続することが可能に構成されている。また、MFPは、ユーザ認証を受けたユーザにより利用可能に構成されている。
【0013】
MFPコントローラ100は、ホストI/F部102、スキャナI/F部104、CPU105、ROM106、ROMコントローラ107、RAM108、RAMコントローラ109を備えている。更に、MFPコントローラ100は、エンジンI/F部110、ハードディスクドライブ(HDD)113、省電力制御部120、コントローラ電源部121、USBコントローラ部122、複数のUSB・I/F134、135、136を備えている。
【0014】
MFPコントローラ100は、ネットワークを介してホストコンピュータ101と通信可能に構成されている。MFPコントローラ100は、次の主要な処理を含む各種の処理を行う。ホストコンピュータ101から受信した印刷データ(印刷コードデータ)をビットマップデータに展開してプリンタエンジン111に出力する処理、スキャナ部103により原稿から読み取ったスキャン画像データをプリンタエンジン111に出力する処理を行う。
【0015】
また、MFPコントローラ100は、消費電力を削減する省電力状態として、「スリープ1状態」(第1の省電力状態)或いは「スリープ2状態」(第2の省電力状態)の何れかに移行することが可能に構成されている。MFPコントローラ100が「スリープ1状態」或いは「「スリープ2状態」」に移行する条件は、後述のスリープ移行管理テーブル(図5)に基づいて決められている。
【0016】
ここで、「スリープ1状態」(第1の省電力状態)では、CPU105及び省電力制御部120の制御により、コントローラ電源部121からの電源供給を停止(OFF)すると共に、USBコントローラ電源部123からの電源供給を停止(OFF)する。これにより、USBデバイスに対する電源供給もOFFされる。「スリープ1状態」(第1の省電力状態)は、消費電力の削減の程度が大きい省電力状態である。
【0017】
また、「スリープ2状態」(第2の省電力状態)では、CPU105及び省電力制御部120の制御により、コントローラ電源部121からの電源供給を停止(OFF)すると共に、USBコントローラ電源部123から電源供給を行う(ON)。これにより、USBデバイスに対する電源供給はONされる(電源供給が継続される)。また、USBデバイスとUSBコントローラ部122との間の通信が維持される。「スリープ2状態」(第2の省電力状態)は、「スリープ1状態」(第1の省電力状態)と比較して消費電力の削減の程度が小さい省電力状態である。」

「【0027】
省電力制御部120は、CPU105の制御に基づき、後述の図2のフローチャートに示す各場合において、コントローラ電源部121、USBコントローラ電源部123のON/OFFを切り替える制御を行う。MFPコントローラ100は、CPU105及び省電力制御部120による省電力制御により、通常状態(通常電力状態)から省電力状態(「スリープ1状態」、「スリープ2状態」)への移行が可能である。
【0028】
但し、省電力制御部120の指示によりコントローラ電源部121が省電力状態に設定されている場合においても、ホストI/F部102と操作部114だけは通電されている。これにより、MFPコントローラ100は、コントローラ電源部121が省電力状態に設定されている場合もホストコンピュータ101から送信されるデータの受信の監視を行うことが可能となる。また、MFPコントローラ100は、操作部114からのユーザによる各種入力(各種キー、スリープ復帰スイッチ、ログオフキー等による入力)の検知を行うことが可能となる。」

「【0041】
次に、MFPコントローラ100の省電力制御について図2のフローチャートに基づき説明する。
【0042】
図2は、MFPコントローラ100における省電力制御に関わる処理を示すフローチャートである。
【0043】
図2において、MFPコントローラ100のCPU105が、ユーザによりMFPの電源ボタンがON操作(電源投入)されたことを検知すると(ステップS200)、MFPコントローラ100が起動する(ステップS201)。MFPコントローラ100が起動した後の通常状態では、コントローラ電源部121がONであり、且つ、USBコントローラ電源部123もONである。これに伴い、USBデバイスに対する電源供給も維持される。
【0044】
次に、CPU105は、ユーザにより何も操作がされない状態で、予め設定した時間が経過したか否かを判断する(ステップS204)。ステップS201の状態からユーザにより操作部114からの一切の操作が行われず且つネットワーク経由でホストコンピュータ101から印刷データも受信されないまま、予め設定した時間が経過した場合、ステップS204の条件が成立する。
【0045】
ここで、予め設定した時間とは、図5に示すスリープ移行管理テーブルに設定されているスリープ状態(Sleep:消費電力を削減する省電力状態)へ移行するまでの時間(以下移行時間と略記)のことである。スリープ移行管理テーブルに基づき、MFPに接続されたUSBデバイスの種類に応じた、スリープ状態への移行の可否、スリープ状態への移行時間の関係が決定される。スリープ移行管理テーブルにおけるUSBデバイスの種類、スリープ状態への移行の可否、スリープ状態への移行時間は、MFPの仕様に合わせてユーザにより任意に設定することが可能である。」

「【0066】
ユーザがキーボード125の任意のキーを押下した場合は、キー押下に対応した情報がUSB・I/F135を介してUSBコントローラ部122に伝わり、USBコントローラ部122から省電力制御部120に対する割り込み信号が発生する。これに伴い、省電力制御部120は、コントローラ電源部121に対して電源ONの指示を出力する。これにより、コントローラ電源部121が復帰し、MFPコントローラ100はステップS203の「スリープ2状態」からステップS201の通常状態に復帰する。
【0067】
キーボードと同様の制御が行われるUSBデバイスとして人感センサがある。人感センサは次の目的で使用される。ユーザがMFPを使用していない場合は、MFPコントローラ100をなるべく早く通常状態からスリープ状態に移行させる。その一方で、ユーザがMFPを使用するために近づいてきた場合は、MFPコントローラ100を直ちにスリープ状態から通常状態に復帰させる。そこで、図5のスリープ移行管理テーブルに示すように、MFPコントローラ100に人感センサが接続されている場合は、キーボード125に比べて短い時間(1分)でMFPコントローラ100を「スリープ2状態」に移行させるように設定されている。
【0068】
次に、ステップS204の条件が成立し、且つ、ステップS205、ステップS206、ステップS207の条件のいずれも成立しない場合は、MFPコントローラ100はステップS201の通常状態を維持する。
【0069】
例えばMFPコントローラ100のUSBコントローラ部122にUSB・I/F134を介して認証デバイス124(認証用カードリーダ)が接続されている場合は、ユーザは全ての操作に先立ってユーザ認証を受けようとする。しかし、USBコントローラ部122内のUSBコントローラ電源部123がOFFされていてはユーザ認証を行うことができない。そこで、MFPコントローラ100に認証デバイス124が接続されている場合は、図5のスリープ移行管理テーブルに示すようにスリープ状態への移行を許可しない設定となっている。
【0070】
次に、ステップS202の「スリープ1状態」からステップS201の通常状態への復帰であるが、次の場合にステップS208の条件が成立する。即ち、操作部114のスリープ復帰スイッチがONされた場合、またはネットワーク経由で印刷データを受信した場合に、ステップS208の条件が成立する。これにより、MFPコントローラ100は「スリープ1状態」から通常状態に復帰する。
【0071】
次に、ステップS203の「スリープ2状態」からステップS201の通常状態への復帰であるが、次の場合にステップS209の条件が成立する。即ち、操作部114のスリープ復帰スイッチがONされた場合、またはネットワーク経由で印刷データを受信した場合、またはUSBコントローラ部122から省電力制御部120への割り込みが発生した場合に、ステップS209の条件が成立する。これにより、MFPコントローラ100は「スリープ2状態」から通常状態に復帰する。
【0072】
ここで、USBコントローラ部122から省電力制御部120への割り込み(復帰信号ON)は、ユーザにより例えばキーボード125の任意のキーが押下された場合等に発生する。これにより、MFPコントローラ100がスリープ状態(電源OFF状態)であるステップS203の「スリープ2状態」であっても、ユーザがキーボード125の任意のキーを押下する。これにより、コントローラ電源部121を復帰させることが可能である。
【0073】
同様に、MFPコントローラ100のUSBコントローラ部122にUSB・I/Fを介して人感センサが接続されている場合も、人感センサが人の接近を感知するとUSBコントローラ部122から省電力制御部120への割り込みが発生する。これにより、コントローラ電源部121を復帰させることが可能である。」

「【図2】



「【図5】



(イ)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、USBデバイスを接続したMFPが記載されており、USBデバイスとして人感センサが記載されている(段落【0067】)。このUSBデバイスとして人感センサが接続されたMFPを引用文献1に記載された発明として認定する。

詳細は、以下のとおりである。

(あ)通常状態、スリープ2状態を有するMFP
段落【0011】、【0043】、【0012】、【0017】によると、MFP(原稿読取機能・印刷機能・通信機能等の複数の機能を有する画像処理装置)は、通常状態と消費電力を削減するスリープ2状態を有する。

(い)人感センサ
段落【0067】によると、MFPはUSBデバイスとして人感センサを備えている。

(う)操作部
段落【0011】によると、MFPは操作部を備えている。

(え)通常状態
段落【0043】によると、ユーザがMFPの電源ボタンをON操作すると、通常状態になる。

(お)スリープ2状態への移行
段落【0044】、【0045】、【0067】によると、通常状態で、ユーザにより操作部が一切の操作が行われず、予め設定した時間が経過した場合、スリープ2状態に移行する。

(か)通常状態への復帰
段落【0073】によると、人感センサが人の接近を感知すると、省電力制御部への割り込みを発生させ、MFPをスリープ状態から通常状態に復帰する。

(き)CPU及び省電力制御部
段落【0017】、【0027】によると、上記(え)?(か)の制御は、CPU及び省電力制御部により行われる。

(く)以上によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
(a)通常状態と消費電力を削減するスリープ2状態を有するMFP(原稿読取機能・印刷機能・通信機能等の複数の機能を有する画像処理装置)であって、
(b)人感センサと、
(c)操作部と、
(d-1)ユーザがMFPの電源ボタンをON操作すると、通常状態になり、
(d-2)通常状態で、ユーザにより操作部が一切の操作が行われず、予め設定した時間が経過した場合、スリープ2状態に移行し、
(d-3)人感センサがユーザが近づいてきたことを検知すると、スリープ2状態から通常状態に復帰する、
(d)CPU及び省電力制御部と、
(a)を備える、MFP。

((a)?(d)は、引用発明の構成を区別するために当審で付与した。以下各構成を「構成a」?「構成d」という。)

イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に引用された引用文献2には、「オートパワーダウン機能を備える画像形成装置」(発明の名称)に関し、次に掲げる事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

「一方、操作者検知センサS1が操作者を検知しなくなった場合にはタイマT1をスタートさせ、このタイマT1がタイムアップする間、操作者が複写機本体に近づくことがなければ(S1がオンしなければ)パワーダウンモードを設定して定着ヒータの制御温度を低下させる(n5→n6→n7→n8→n9)。」(4頁左上欄5?11行)

(イ)引用文献2に記載された技術
上記(ア)における「定着ヒータの制御温度を低下させる」ことは、「省電力状態になる」ことであるから、上記(ア)によると、引用文献2には、「検知センサが操作者を検知しなくなると、所定時間操作者が近づくことがなければ、パワーダウンモードを設定して省電力状態になる」技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されていると認められる。

(5)対比
ア 構成要件Aと構成aとを対比する。
構成aの「通常状態」、「消費電力を削減するスリープ2状態」、「MFP(原稿読取機能・印刷機能・通信機能等の複数の機能を有する画像処理装置)」は、それぞれ、構成要件Aの「第1電力状態」、「前記第1電力状態より省電力の第2電力状態」、「画像形成装置」に相当する。
したがって、構成要件Aと構成aとは、「第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置」として一致する。

イ 構成要件Bと構成bとは、「人感センサ」として一致する。

ウ 構成要件Cと構成cとは、「ユーザの操作を受け付ける操作部」として一致する。

エ 構成要件D-1と構成d-3とを対比する。
構成d-3の「人感センサがユーザが近づいてきたことを検知すると、スリープ2状態から通常状態に復帰する」は、「前記人感センサが人を検知することにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行」するといえるから、構成要件D-1と一致する。

オ 構成要件D-2について
引用発明は、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されることなく前記人感センサが人を検知しなくなることにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行」するものではなく、補正発明と相違する。

カ 構成要件D-3と構成d-2とを対比する。
構成d-2は、「通常状態で、ユーザにより操作部が一切の操作が行われず、予め設定した時間が経過した場合、スリープ2状態に移行」するから、ユーザにより操作部が操作されると、スリープ2状態に移行しないことは明らかである。
したがって、構成要件D-3と構成d-2とは、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、前記操作部の操作から所定時間経過後に前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」として共通する。
しかしながら、補正発明は、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記人感センサが人を検知しなくなっても前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行」しないのに対し、引用発明は、当該「前記人感センサが人を検知しなくなっても 」と特定されていない点で相違する(下線は強調のため当審が付与した。以下同様。)。

キ 構成要件Dと構成dとを対比する。
構成dの「CPU及び省電力制御部」は、構成要件Dの「制御手段」に相当するから、構成要件Dと構成dとは、「制御手段」として一致する。

ク 以上によると、補正発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置であって、
人感センサと、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
前記人感センサが人を検知することにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行し、
前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、前記操作部の操作から所定時間経過後に前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する制御手段と、を備える、ことを特徴とする画像形成装置。

(相違点1)
「制御手段」が、補正発明においては、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されることなく前記人感センサが人を検知しなくなることにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行」するのに対し、引用発明においては、当該移行するものでない点

(相違点2)
「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、」が、補正発明においては、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記人感センサが人を検知しなくなっても前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行せず、」であるのに対し、引用発明は、当該「前記人感センサが人を検知しなくなっても 」と特定されていない点

(6)判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記(4)イ(イ)のとおり、「検知センサが操作者を検知しなくなると、所定時間操作者が近づくことがなければパワーダウンモードを設定して省電力状態になる」技術(引用文献2技術)が記載されている。
引用発明と引用文献2技術は、画像形成装置の省電力の技術として技術分野が共通しているから、引用発明に引用文献2技術を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明は、通常状態で操作部が検出されると第2電力状態に移行しないものであるから、引用発明に引用文献2技術を適用して、引用発明において、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されることなく前記人感センサが人を検知しなくなることにより前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行」するようにすることは、当業者が容易になし得ることである(相違点1)。

また、引用発明は、通常状態で操作部が操作されると第2電力状態に移行しないものであり、引用文献2技術は、検知センサが操作者を検知しなくなって、所定時間操作者が近づいてこなければ、省電力状態になるものであって、検知センサが操作者を検知しなくなると直ちに省電力になるものではないから、引用発明に、引用文献2技術を適用して、「前記第1電力状態に移行してから前記操作部が操作されると、前記人感センサが人を検知しなくなっても前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行」しないようにし、前記操作部の操作から所定時間経過後に前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行するようにすることは当業者が容易に想到し得ることである(相違点2)。

したがって、補正発明は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反している。

3 まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年1月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?19に係る発明は、平成30年7月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?19に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

(本願発明)
「(A)第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置であって、
(B)人感センサと、
(C)ユーザの操作を受け付ける操作部と、
(D-1’)前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行する、及び、
(D-2’)前記操作部によって受け付けられたユーザの操作から経過した時間に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する
(D)制御手段と、を備え、
(D-3’)前記制御手段は、さらに、前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する、
(A)ことを特徴とする画像形成装置。」

((A)?(D)は、当審で付与した。補正発明と同じ構成要件には、同じ記号を付与した。以下各構成要件を「構成要件A」?「構成要件D」という。)

2 対比
引用発明は、上記第2の2(4)ア(イ)のとおりである。
本願発明と引用発明とを対比する。
構成要件A?Dと構成a?dの対比は、上記第2の2(5)ア?ウ、キのとおりである。

構成要件D-1’と構成d-3とを対比する。
構成d-3の「人感センサがユーザが近づいてきたことを検知すると、スリープ2状態から通常状態に復帰する」は、「前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行する」といえるから、構成要件D-1’と一致する。

構成要件D-2’と構成d-2とを対比する。
構成d-2の「通常状態で、ユーザにより操作部が一切の操作が行われず、予め設定した時間が経過した場合、スリープ2状態に移行」するは、「前記操作部によって受け付けられたユーザの操作から経過した時間に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」といえるから、構成要件D-2’と一致する。

構成要件D-3’は、「前記制御手段は、さらに、前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」であるが、「制御手段」に相当する引用発明の「CPU及び省電力制御部」は、「前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」ものではなく、本願発明と相違する。

以上によると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。

(一致点)
第1電力状態と前記第1電力状態より省電力の第2電力状態とを少なくとも有する画像形成装置であって、
人感センサと、
ユーザの操作を受け付ける操作部と、
前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態から前記第1電力状態に移行する、及び、前記操作部によって受け付けられたユーザの操作から経過した時間に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。

(相違点)
「制御手段」が、本願発明においては、「前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」のに対し、引用発明においては、「前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」ものではない点

3 判断
上記相違点について検討する。
引用文献2には、上記第2の2(4)イ(イ)のとおり、「検知センサが操作者を検知しなくなると、所定時間操作者が近づくことがなければパワーダウンモードを設定して省電力状態になる」技術(引用文献2技術)が記載されている。
引用発明と引用文献2技術は、画像形成装置の省電力の技術として技術分野が共通しているから、引用発明に引用文献2技術を適用することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、引用発明に引用文献2技術を適用して、引用発明において、「前記人感センサの検知結果に基づいて前記画像形成装置の電力状態を前記第2電力状態に移行する」ようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項2?19に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-25 
結審通知日 2019-02-26 
審決日 2019-03-11 
出願番号 特願2013-130608(P2013-130608)
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (H04N)
P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 明粕谷 満成  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 渡辺 努
小池 正彦
発明の名称 画像形成装置、及び画像形成装置の制御方法  
代理人 特許業務法人ひのき国際特許事務所  
代理人 水垣 親房  
代理人 西脇 博志  

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