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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B21D
管理番号 1351098
審判番号 不服2018-2983  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-02 
確定日 2019-05-14 
事件の表示 特願2013-216909「金属加工装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年4月23日出願公開、特開2015-77619、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月18日の出願であって、平成29年7月31日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年10月4日に手続補正がされ、平成29年11月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という)がされ、これに対し、平成30年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年11月9日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1-4に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開平6-210358号公報
2.特開平3-142003号公報(周知技術を示す文献)
3.特開昭52-70687号公報(周知技術を示す文献)
4.実願昭49-155196号(実開昭51-81336号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という)は、平成30年3月2日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
金属製の板状材料に直線状または曲線状に連続する凹部、凸部もしくは段部を設けたり、または、前記板状材料を曲げたりする成形加工を行う金属加工装置において、
それぞれ、前記板状材料の表面に圧接しながら転がる転圧面を有し、それぞれの回転軸が互いに平行となるように所定のロボットに装着され、このロボットの動作により少なくとも3次元的に変位可能である2つのローラと、
前記転圧面を前記板状材料の表面に圧接させる圧接力を調節する調節手段とを備え、
前記2つのローラでは、少なくとも1つのローラが有する転圧面には、前記成形加工の態様に応じた形状であって前記1つのローラの回転軸と同軸の円筒面以外の形状が設けられており、前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続しており、
また、前記2つのローラの内、一方のローラは、前記ロボットに対し相対的に直線移動可能となっており、他方のローラは、前記ロボットに対し相対的に直線移動せず、
前記調節手段は、前記2つのローラの回転軸が互いに平行を保ったまま、前記一方のローラを前記他方のローラから直線的に離したり、近づけたりすることで前記圧接力を調節し、
前記2つのローラにより前記板状材料を挟んでそれぞれのローラの転圧面を前記板状材料の一方の表面および他方の表面にそれぞれ圧接させ、それぞれの転圧面による圧接を維持しながら前記2つのローラを所定の軌跡に沿って移動させることを特徴とする金属加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金属加工装置において、
前記調節手段は、前記2つのローラが前記所定の軌跡に沿って移動しているときに、前記2つのローラの位置に応じて前記圧接力を調節することを特徴とする金属加工装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の金属加工装置において、
前記2つのローラの組合せを2組以上備え、
それぞれの前記組合せごとに異なる前記ロボットに装着されていることを特徴とする金属加工装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は理解の便のため当審で付与)

(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば車両のドアパネルに施されるヘミング加工の前工程として、ドアアウタパネルの外周部(以下、「フランジ部」という)をインナパネル側へ一定角度に折り曲げる(以下、「フランジ立て加工」という)ためのフランジ立てローラー加工方法とこの方法に用いる装置に関するものである。」

(2)「【0013】
【実施例】次に、本発明の実施例を図1ないし図11に基づいて説明する。図1に示すように本例のフランジ立てローラー加工装置1は、基台B上に、被加工材を固定するための固定型4に対向して配置されている。この装置1は、ロボットハンド2と、その先端に装着されたローラー加圧部3と、このローラー加圧部3の作動により被加工材Wのフランジ部を挟み込み可能な一対のローラー6,7と、これらの動作を制御するための制御装置(図示省略)とから構成されている。
【0014】ロボットハンド2は、従来より公知である例えば極座標型の多関節ロボットであって、図示しない制御装置により複数軸制御されて所定の動作を得ることができるよう構成されている。このロボットハンド2の動作は、フランジ立て加工がなされる被加工材WのフランジW_(E)に沿った軌跡であって、例えばティーチングによってあるいは所定のプログラムを直接制御装置に入力することによって与えられている。
【0015】このロボットハンド2の先端には、上記ローラー6,7を備えたローラー加圧部3が装着されている。このローラー加圧部3は、図2ないし図4に示すように上下スライド部とこの上下スライド部に取付けられた水平スライド部から概略構成されており、上下スライド部に小径のローラー(以下、「受けローラー」という)7が、水平スライド部に大径のローラー(以下、「押付けローラー」という)6が装着されている。」

(3)「【0018】このスライドブロック8の下部にはベアリング20,20によって前記した受けローラー7が回転自在に支持されている。この受けローラー7の下端部の一定範囲が被加工材Wのフランジ部W_(E)の内側面(折曲げ前においては上面)にあてがわれる部分で、この部分の径は被加工材Wの角部を折り曲げる際に一定のRで折曲げ後の角部が形成されるよう小径(φ10?φ20程度)に形成されている。
【0019】また、このスライドブロック8の下部から図2において左方へ支持ベース部21が張出し状に形成されている。この支持ベース部21に水平スライド部が組付けられている。すなわち、この支持ベース部21の下面にはスライドブロック23が図2において左右にスライド可能に支持され、またこの支持ベース部21の後端部(図示左端部)下面には支持ブラケット22が取付けられている。
【0020】そして、この支持ブラケット22とスライドブロック23との間には上記上下スライド部と同様にピストン24が組み込まれている。このピストン24は支持ブラケット22側に固定され、その先端面とスライドブロック23との間には油圧室25が形成され、この油圧室25は油圧ポート25a(図4参照)に連通され、この油圧ポート25aには図示省略した油圧ホースおよび切換えバルブを経て油圧源が接続されている。
【0021】また、図4に示すように上記支持ベース部21にはスライドブロック23の直下(図示手前側)において左右(図示上下)に掛け渡された支持縁21aが設けられ、またこの支持縁21aに対向してスライドブロック23には張出し縁23aが形成されている。そして、支持縁21aには挿通孔21b,21bが形成され、両挿通孔21bにはそれぞれ支持ピン26がスライド可能に挿通され、両支持ピン26はスライドブロック23の張出し縁23aにねじ込まれている。また、両支持ピン26はその頭部間でベース28により固定されており、このベース28と支持縁21aとの間であって両支持ピン26の軸回りにはそれぞれスプリング27が装着されている。これによりスライドブロック23は図2において左方へ戻される方向に付勢されている。
【0022】以上の構成から、油圧室25に圧油を供給するとスライドブロック23は図2において右方へスライドする一方、油圧室25の圧油を抜くとこのスライドブロック23はスプリング27の付勢力によって図示左方に戻されるようになっている。
【0023】このように支持されたスライドブロック23の先端部(図2において右端部)に、前記した押付けローラー6が回転可能かつ上記受けローラー7と平行に取付けられている。この押付けローラー6は受けローラー7よりも大きな径(φ40程度)のものが用いられている。この押付けローラー6の周面が被加工材Wのフランジ部W_(E)の外側面(折曲げ前においては下面)に押し付けられる転動面であり、受けローラー7の転動面とほぼ同レベルとなるよう位置調整されている。そして、両ローラー6,7間にフランジ部W_(E)を位置させて油圧室25に圧油を供給すると押付けローラー6は前進してフランジ部W_(E)を受けローラー7に押付け、これによりこのフランジ部W_(E)が両ローラー6,7間に挟み込まれる。」

(4)「【0027】こうして被加工材Wをセットした上でロボットハンド2を作動させる。この時点においてローラー加圧部3は図2に示す原位置の状態となっている。すなわち、油圧室16,26に圧油は供給されておらず、従って上下スライド部のスライドブロック8は上方に、水平スライド部のスライドブロック23は図示左方に後退した状態にあり、両ローラー6,7間は開いた状態となっている。この状態でロボットハンド2を作動させて、両ローラー6,7間にフランジ部W_(E)が位置する状態となるまでローラー加圧部3を移動させる。さらにロボットハンド2を作動させてローラー加圧部3を受けローラー7の軸方向に直交する方向に移動させ、これによりこの受けローラー7をフランジ部W_(E)の上面側にあてがった状態とする。然る後、上下スライド部の油圧室16に圧油を供給してスライドブロック8を下方へスライドさせ、これにより受けローラー7を被加工材Wに対して軸方向に押し付け、次に油圧室25に圧油を供給してスライドブロック23を前進させ、これにより押付けローラー6をフランジ部W_(E)に押し付けて両ローラー6,7間にこのフランジ部W_(E)を挟み込んだ状態(図6に示す状態)とする。
【0028】このようにして、両ローラー6,7間にフランジ部W_(E)を挟み込んだならば、次にロボットハンド2を作動させてローラー加圧部3を、受けローラー7の下角部を中心にして両ローラー6,7の軸線が垂直方向にほぼ一致するまで上方へ起こすようにして移動させる。これによりフランジ部W_(E)は、図7に示すようにほぼ垂直方向に沿った状態にまで折り曲げられる。
【0029】こうして折り曲げられた部分がフランジ立て加工の始点となり、あとはロボットハンド2を所定の軌跡に従って作動させてローラー加圧部3をフランジ部W_(E)に沿ってフランジ立て加工の終点まで移動させればよく、フランジ部W_(E)はロボットハンド2すなわちローラー加圧部3の移動に伴って連続して所定角度に折り曲げられていく。この際、前記したようにクランプ装置5は順次アンクランプ側に作動してローラー加圧部3とクランプアーム5aが干渉することはない。以上のようにしてフランジ立て加工がなされるのであるが、フランジ部W_(E)の折曲げ角度が不足の場合は再度上記動作を繰り返すことにより、所望の角度にまで折り曲げることが可能である。」

(5)「【0033】次に、前記した押付けローラー6の変更例を図11および図12に基づいて説明する。先ず、図11には円弧曲げ用の押付けローラー30を示した。前記した押付けローラー6は周面に凹凸のない滑らかな通常のローラー体であり、これはローラー加圧部3(ローラー6,7)を一直線に移動させて被加工材Wのフランジ部W_(E)を平坦面に折り曲げる場合に好適であった。
【0034】これに対して、被加工材Wを円弧部に沿ってフランジ立て加工する場合にはローラー加圧部3を円弧移動させてフランジ部W_(E)をこの円弧部に沿って曲面に折り曲げる必要があり、従ってこの場合には分図(c) に示すようにシワを寄せながらフランジ部W_(E)を折り曲げていく必要がある。このようにすることで折曲げ前においては平坦面であったフランジ部W_(E)を円弧部に沿った曲面に折り曲げることができる。
【0035】そこで、円弧部に沿ってフランジ立て加工をする場合には分図(a) に示すような円弧曲げ用の押付けローラー30を用いる。この押付けローラー30の周面には、図示するように一定間隔でシワ寄せ用の溝部31?31が形成されている。各溝部31は図示するようにローラー30の周面上端から下端近傍に至って上下方向(軸方向)に形成されており、同ローラー30の上面において断面ほぼ半円形の深さから下部に至って徐々に浅くかつ幅が狭くなるように形成されている。周面下部の一定幅の部分は、凹凸のない滑らかな(シワ寄せ溝31が形成されていない)周面として残されている。
【0036】このように形成された円弧曲げ用の押付けローラー30を前記直線曲げ用の押付けローラー6に代えて装着する。なお、この円弧曲げ用の押付けローラー30は、分図(b) に示すように溝部31のより深い側がフランジ部W_(E)の先端側に押し当てられ、溝部31の形成されていない滑らかな一定幅部分が折曲げ基部側に押し当てられるように装着しておく。
【0037】そして、前記直線曲げの場合と同様に押付けローラー30と受けローラー7との間にフランジ部W_(E)を挟み込んで起こすようにして折曲げ、この状態からロボットハンド2を作動させてローラー加圧部3を円弧移動させる。これにより、フランジ部W_(E)は、そのだぶつく部分を溝部31内に逃がしながら折り曲げられて分図(c) に示すように一定間隔でシワ寄せされながら折曲げられ、よってきれいなフランジ立て加工をスムーズに行うことができる。
【0038】次に、図12にはガイド面付きの押付けローラー40を示した。すなわち、この押付けローラー40の先端角部には、その周面に対して一定の角度で傾斜するガイド面40aが全周にわたって形成されており、このガイド面40aを図示するように固定型4の側面に押し当てた状態でこの押付けローラー40および受けローラー7をフランジ部W_(E)に沿って移動させるようにしてもよく、これによれば両ローラー40,7をより正確な軌跡で移動させることができる。」

(6)図6、図7、図11、図12


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「車両のドアパネルである被加工材Wに折り曲げ加工を行うフランジ立てローラー加工装置1において、
それぞれ、前記被加工材Wの表面に押し付けられる転動面を有し、それぞれの軸が互いに平行となるようにロボットハンド2に装着され、このロボットハンド2の動作により少なくとも3次元的に変位可能である円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7と、
前記転動面を前記被加工材Wの表面に押し付けて挟み込むローラー加圧部3とを備え、
前記円弧曲げ用の押し付けローラー30の周面には、一定間隔でシワ寄せ用の溝部31が形成され、周面下部の一定幅の部分はシワ寄せ溝31が形成されていない周面として残されており、
また、前記円弧曲げ用の押付けローラー30は、前記ロボットハンド2に対し上下方向及び左右方向に直線移動可能であるが、前記受けローラー7は、前記ロボットハンド2に対し上下方向に直線移動するが左右方向には直線移動せず、
前記ローラー加圧部3は、前記円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7が互いに平行を保ったまま、前記円弧曲げ用の押付けローラー30を前記受けローラー7から直線的に離したり、近づけたりすることで前記挟み込みを調節し、
前記円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7により前記被加工材Wを挟んでそれぞれのローラーの転動面を前記被加工材Wの一方の表面および他方の表面にそれぞれ押し付けて、それぞれの転圧面で挟み込んだ状態で前記円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7を円弧部に沿って移動させるフランジ立てローラー加工装置1。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献2の3ページ左上欄最終行-右上欄4行並びに第4図及び第5図の記載からみて、当該引用文献2には、「熱間加工機の上下一対の圧延ロール20、21が有する転圧面には、成形加工の態様に応じた形状であって圧延ロールの回転軸と同軸の円筒面以外の形状である、曲面突起部201及びV字溝210がそれぞれ設けられており、前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続している」という技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3の第2、4、6、8、10、12図の記載からみて、当該引用文献3には、「上下一対のローラー状の金型が有する転圧面には、成形加工の態様に応じた形状であってローラー状の金型の回転軸と同軸の円筒面以外の形状である、凹型及び凸型等が設けられており、前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続している」という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4の第1図及び第2図の記載からみて、当該引用文献4には、「上下一対の加工工具である雄駒及び雌駒が有する転圧面には、成形加工の態様に応じた形状であって雄駒及び雌駒の回転軸と同軸の円筒面以外の形状である孔型が設けられており、前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続している」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「車両のドアパネルである被加工材W」、「フランジ立てローラー加工装置1」、「押し付けられる転動面」、「軸」、「ロボットハンド2」、「押付けローラー30及び受けローラー7」、「円弧部」は、本願発明1における「金属製の板状材料」、「金属加工装置」、「圧接しながら転がる転圧面」、「回転軸」、「所定のロボット」、「2つのローラ」、「所定の軌跡」に相当する。
引用発明における「折り曲げ加工」は、本願発明1における「直線状または曲線状に連続する凹部、凸部もしくは段部を設けたり、または、」「曲げたりする成形加工」と対比すると、「曲げたりする成形加工」である点では一致する。
引用発明の「前記転動面を前記被加工材Wの表面に押し付けて挟み込むローラー加圧部3」は、円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7で被加工材Wを挟んだり離したりすることで、ローラーの押し付け力を調節しているものといえるから、本願発明1の「前記転圧面を前記板状材料の表面に圧接させる圧接力を調節する調節手段」に相当する。
引用発明の「前記円弧曲げ用の押し付けローラー30の周面には、一定間隔でシワ寄せ用の溝部31が形成され、周面下部の一定幅の部分はシワ寄せ溝31が形成されていない周面として残されており」という事項について検討すると、押し付けローラー30周面のシワ寄せ溝31が形成されていない周面下部の一定幅の部分については、本願発明1の「円筒面」に相当し、「シワ寄せ用の溝部31」は、円弧部の折り曲げ加工に適応する形状となっており、押し付けローラー30周面に一定間隔で形成されていることからみて、本願発明1の「成形加工の態様に応じた形状であって1つのローラの回転軸と同軸の円筒面以外の形状」に相当する。そうすると、引用発明の「前記円弧曲げ用の押し付けローラー30の周面には、一定間隔でシワ寄せ用の溝部31が形成され、周面下部の一定幅の部分はシワ寄せ溝31が形成されていない周面として残されており」という事項と、本願発明1の「前記2つのローラでは、少なくとも1つのローラが有する転圧面には、前記成形加工の態様に応じた形状であって前記1つのローラの回転軸と同軸の円筒面以外の形状が設けられており、前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続しており」という事項とを対比すると、「前記2つのローラでは、少なくとも1つのローラが有する転圧面には、前記成形加工の態様に応じた形状であって前記1つのローラの回転軸と同軸の円筒面以外の形状が設けられており」という事項では一致する。
引用発明の「前記ローラー加圧部3は、前記円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7が互いに平行を保ったまま、前記円弧曲げ用の押付けローラー30を前記受けローラー7から直線的に離したり、近づけたりすることで前記挟み込みを調節し」という事項は、「ローラー加圧部3」が本願発明1の「調節手段」に相当することを勘案すると、本願発明1の「前記調節手段は、前記2つのローラの回転軸が互いに平行を保ったまま、前記一方のローラを前記他方のローラから直線的に離したり、近づけたりすることで前記圧接力を調節し」という事項に相当する。
引用発明の「前記円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7により前記被加工材Wを挟んでそれぞれのローラーの転動面を前記被加工材Wの一方の表面および他方の表面にそれぞれ押し付けて、それぞれの転圧面で挟み込んだ状態で前記円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7を円弧部に沿って移動させる」ことは、「押し付け」が本願発明1の「圧接」に相当し、「円弧部」が本願発明1の「所定の軌跡」に相当するから、本願発明1の「前記2つのローラにより前記板状材料を挟んでそれぞれのローラの転圧面を前記板状材料の一方の表面および他方の表面にそれぞれ圧接させ、それぞれの転圧面による圧接を維持しながら前記2つのローラを所定の軌跡に沿って移動させること」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「金属製の板状材料を曲げたりする成形加工を行う金属加工装置において、
それぞれ、前記板状材料の表面に圧接しながら転がる転圧面を有し、それぞれの回転軸が互いに平行となるように所定のロボットに装着され、このロボットの動作により少なくとも3次元的に変位可能である2つのローラと、
前記転圧面を前記板状材料の表面に圧接させる圧接力を調節する調節手段とを備え、
前記2つのローラでは、少なくとも1つのローラが有する転圧面には、前記成形加工の態様に応じた形状であって前記1つのローラの回転軸と同軸の円筒面以外の形状が設けられており、
前記調節手段は、前記2つのローラの回転軸が互いに平行を保ったまま、前記一方のローラを前記他方のローラから直線的に離したり、近づけたりすることで前記圧接力を調節し、
前記2つのローラにより前記板状材料を挟んでそれぞれのローラの転圧面を前記板状材料の一方の表面および他方の表面にそれぞれ圧接させ、それぞれの転圧面による圧接を維持しながら前記2つのローラを所定の軌跡に沿って移動させる金属加工装置。」
<相違点1>
少なくとも1つのローラが有する転圧面に設けられた円筒面以外の形状について、本願発明1では、「前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続しており」という構成を備えるのに対し、引用発明のシワ寄せ用の溝部31は、円弧曲げ用の押し付けローラー30の周面に一定間隔で形成されており、周方向に連続していない点。
<相違点2>
本願発明1は、「前記2つのローラの内、一方のローラは、前記ロボットに対し相対的に直線移動可能となっており、他方のローラは、前記ロボットに対し相対的に直線移動せず」という構成を備えるのに対し、引用発明は、円弧曲げ用の押付けローラー30は、ロボットハンド2に対し上下方向及び左右方向に直線移動可能であるが、受けローラー7は、ロボットハンド2に対し上下方向に直線移動するが左右方向には直線移動しない構成となっている点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、相違点1に係る本願発明1の「前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続しており」という事項は、上記「第4」の引用文献2-4にも示されていることからみて、本願出願日前において周知技術であったといえる。
しかし、引用文献2-4に記載された技術は、上下一対で設置された圧延ロール、ローラー状金型、雌雄駒等の上下工具間に金属板材を送り込み通過させることで成形加工を行う装置に係るものであり、ロボットに装着された2つのローラ間に金属板を挟んで折り曲げる加工を行う技術とは異なるものである。また、引用発明の円弧曲げ用の押付けローラー30の周面に形成されたシワ寄せ用の溝部31は、フランジ部W_(E)の円弧部分を折り曲げたときに生じてしまうだぶつく部分を当該溝部31に逃がすために設けられたものであるが、引用文献2-4に示す周知技術による加工では、だぶつく部分を逃がすことはできない。
したがって、仮に引用発明の当該溝部31に代えて、上記引用文献2-4に示された上下一対で設置された工具の形状を採用した場合、引用発明の円弧曲げ用の押付けローラー30及び受けローラー7でフランジ部W_(E)を挟むと、両ローラーによってフランジ部が成形されてしまい、円弧部分を折り曲げて生じただぶつき部分を逃がす機能が無くなってしまうことになる。そうすると、たとえ、上記引用文献2-4に記載された事項が金属板材の成形加工において周知技術であったとしても、引用発明に上記引用文献2-4に記載された事項を適用することには阻害要因がある。
また、引用文献1には、図12に示されたガイド面付きの押し付けローラー40のように、その周面の先端角部に一定の角度で傾斜するガイド面40aが全周にわたって形成されたものも記載されている(段落【0038】参照)が、当該ガイド面40aは、あくまでも固定型4の側面に押し当てた状態でガイドとして使用されるものであり、転動面を構成するものではない。
なお、原査定においては、相違点1に係る本願発明1の「前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続しており」という事項は、上記周知技術を適用すれば容易であるとの判断がされているが、上記のとおり阻害要因があるため、適用することが容易であるとはいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1を引用するものであり、本願発明1の「前記円筒面以外の形状は、前記転圧面上で周方向に連続しており」という構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明することができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2-4に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-04-22 
出願番号 特願2013-216909(P2013-216909)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 村上 聡  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 齋藤 健児
栗田 雅弘
発明の名称 金属加工装置  
代理人 石黒 健二  
代理人 長谷 真司  
代理人 石黒 健二  
代理人 長谷 真司  

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