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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1351167
審判番号 不服2017-14612  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-03 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2013- 26835「プリミティブを用いた高解像度ハプティック効果生成」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月29日出願公開、特開2013-168153、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月14日(パリ条約による優先権主張、2012年2月15日(以下、「優先日」といぅ。)、米国)の外国語書面出願であって、平成25年4月15日付けで翻訳文が提出され、平成28年10月25日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年1月25日付けで手続補正がされたが、平成29年5月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成29年10月3日に拒絶査定不服審判が請求され、当審において、平成30年8月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年11月15日付けで手続補正がされ、平成30年12月5日付けで最後の拒絶理由通知がされ、平成31年3月11日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年5月31日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
理由1
この出願の請求項1、6-10に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2
この出願の請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2011-159110号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審における、平成30年12月5日付けの最後の拒絶理由の概要は、次のとおりである。
理由1
この出願の請求項1、9、10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2
この出願の請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-79238号公報

第4 本願発明
本願の請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、平成31年3月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-10は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
持続時間入力パラメータを含む複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブを受信するステップと、
センサから時間と共に変動する入力を受信するステップと、
前記持続時間入力パラメータを用いて、前記ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するステップであって、
前記ハプティック効果信号が、複数の出力パラメータを含み、
前記複数の出力パラメータは、持続時間出力パラメータと周波数出力パラメータとを含み、
前記持続時間出力パラメータおよび前記周波数出力パラメータは、前記持続時間入力パラメータの変化に基づいて変更され、
前記持続時間入力パラメータの前記変化は、前記時間と共に変動する前記入力の関数である、ステップと、
前記ハプティック効果信号をアクチュエータに適用して、ハプティック効果を生成するステップと、
を含む、ハプティック効果を生成する方法。
【請求項2】
前記周波数が周波数変調を用いて変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周波数が位相変調を用いて変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記周波数が倍率を用いて変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
変動した前記出力パラメータが前記ハプティック効果信号の振幅及び周波数であり、前記振幅及び周波数が物理的に誘発される確率事象モデリングアルゴリズムを用いて変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記入力が加速度であり、前記センサが加速度計である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクチュエータが共鳴アクチュエータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記共鳴アクチュエータが圧電アクチュエータ、電気活性高分子アクチュエータ、または静電アクチュエータのうちの1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
プロセッサにより実行された場合、前記プロセッサに請求項1?8に記載の方法によりハプティック効果を生成させる、保存された命令を有するコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
プロセッサと、
前記プロセッサに接続され、命令を保存している記憶装置と、
前記プロセッサに接続されたアクチュエータと、
前記プロセッサに接続されたセンサと、
を備え、少なくとも持続時間を含む複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブ、および前記センサからの入力の受信に応答して前記プロセッサが請求項1?8に記載の方法を実施する、触覚的に使用可能なシステム。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審における、平成30年12月5日付けの最後の拒絶理由通知で引用された引用文献1(特開2006-79238号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明はタッチパネル装置に係わり、特にタッチパネル面をなぞってデータを設定する際に設定データをブラインドタッチ入力できるタッチパネル装置に関する。」

「【0004】
・・・以上から本発明の目的は、タッチパネル面のタッチ位置に応じて振動子の振動量あるいは振動周波数あるいは振動間隔を制御してクリック感を変えてタッチ位置を操作者に感覚的に認識できるようにすることである。
本発明の別の目的は、ブラインドタッチにより音量やイコライゼーションカーブ等のデータの設定、調整を可能にすることである。・・・。」

「【0005】
上記課題は本発明によれば、タッチパネル面をなぞってデータを入力する第1、第2のタッチパネル装置により達成される。
・・・(途中省略)・・・
第1のタッチパネル装置において、前記振動制御部は上下方向のタッチ位置に応じて振動周波数、振動間隔、振動強度のいずれか一つを制御すると共に、左右方向のタッチ位置に応じて振動周波数、振動間隔、振動強度の別の一つを制御し、イコライザカーブ設定部はタッチ位置に基づいて所定周波数帯域におけるゲインを設定する。」

「【0007】
本発明によれば、タッチパネル面のタッチ位置に応じて振動子の振動量あるいは振動周波数あるいは振動間隔を制御してクリック感を変えてタッチ位置を操作者に感覚的に認識させることができ、これにより、ブラインドタッチにより音量やイコライゼーションカーブ等の設定、調整が可能になった。
本発明によれば、タッチパネル面に表示されている画像を移動表示し、画像移動距離に応じて振動子の振動周波数あるいは振動間隔あるいは振動強度を制御してクリック感を変えて画像移動距離を操作者に感覚的に認識させることができ、これにより、ブラインドタッチにより車載の各スピーカの遅延時間が設定可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1(A),(B)はタッチパネル面をなぞってデータを入力する第1のタッチパネル装置の概略説明図であり、指あるいはペン等のポインタPNTのタッチパネル面TP上のタッチ位置を検出し、該タッチ位置に応じた振動周波数あるいは振動間隔あるいは振動強度でタッチパネル面を振動させる。なお、振動間隔とは間欠的に振動させる場合における振動と振動の間隔である。(以下、省略)」

「【0009】
図1(B)では、イコライザカーブ設定画面を表示し、タッチパネル面TPの二次元タッチ位置に応じてタッチパネル面の振動強度および振動周波数(あるいは振動間隔)の2つを制御し、該タッチ位置に基づいてイコライザカーブを設定する。すなわち、縦方向をゲインとし、設定画面の下ほどゲインが小さいから振動を小さくし、上ほどゲインが大きいから振動を大きくする。また、横方向を帯域周波数とし、左ほど帯域周波数が低いから振動周波数を小さくし(あるいは振動間隔を大きくし)、右ほど帯域周波数が高いから振動周波数を大きくする(あるいは振動間隔を小さくする)。このようにすれば、振動が大きくなるほどゲインが増加し、また、振動周波数が大きくなるほど帯域周波数が高くなり、振動の大きさとゲインとの間に相関があり、しかも振動周波数(振動間隔)と帯域周波数との間にも相関があるため、ブラインドタッチでイコライザカーブの設定が可能になる。」

「【0013】
図4はイコライザカーブを設定する場合のタッチパネル装置の構成図であり、図3と同一部分には同一符号を付している。
ユーザがイコライザカーブの設定を指示すると、入出力制御部12はタッチパネル11にイコライザカーブ設定画面EQSCRを表示する。かかる状態で、イコライザカーブを設定するために、ポインタPNTで画面を所望のイコライザカーブにしたがって設定画面をなぞる。二次元タッチ位置検出部21はポインタPNTの横方向及び縦方向のタッチ位置(X,Y)を検出して入出力制御部12と振動周波数/振動強度制御部14に入力する。
入出力制御部12は連続して入力するタッチ位置(X,Y)に基づいて各帯域周波数のゲイン(イコライザカーブ)を求めてオーディオ回路15に入力する。オーディオ回路15は各帯域周波数のゲイン、すなわち、イコライザカーブをグラフィックイコライザに設定して音質を制御する。なお、イコライザカーブ設定画面EQSCRの縦方向をゲインとし、設定画面の下ほどゲインが小さく、上ほどゲインが大きいとする。また、横方向を帯域周波数とし、左ほど帯域周波数が低く、右ほど帯域周波数が高いとする。
【0014】
位置-振動強度テーブル22は縦方向タッチ位置と振動強度の対応(Y-Vd)を記憶している。すなわち、イコライザカーブ設定画面EQSCRの下ほど振動が小さく、上ほど振動が大きくなるように縦方向タッチ位置と振動強度の対応を記憶している。また、位置-振動周波数テーブル23は横方向タッチ位置と振動周波数の対応(X-Vf)を記憶している。すなわち、イコライザカーブ設定画面EQSCRの左ほど振動周波数が低く、右ほど振動周波数が大きくなるように横方向タッチ位置と振動周波数の対応を記憶している。
振動周波数/振動強度制御部14は、縦方向タッチ位置Yに応じた振動強度を位置-振動強度テーブル22より求め、横縦方向タッチ位置Xに応じた振動周波数を位置-振動周波数テーブル23より求め、該振動強度、振動周波数に応じた振動子駆動信号を発生して振動部アクチュエータ17を駆動し、振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御する。なお、振動間隔は一定とする。この結果、イコライザカーブ設定画面EQSCRを所望のイコライザカーブにしたがってなぞると二次元タッチ位置に応じて振動振幅、振動周波数が変化する。すなわち、振動振幅が大きくなるほどゲインが増加し、また、振動周波数が大きくなるほど帯域周波数が高くなり、振動の大きさとゲインとの間に相関があり、しかも振動周波数と帯域周波数との間にも相関があるため、ブラインドタッチでイコライザカーブの設定が可能になる。
なお、以上では振動強度と振動周波数の2つを制御したが、振動強度、振動周波数、振動間隔のいずれか2つをタッチ位置に応じて制御するように構成することもできる。」

したがって、上記引用文献1には、イコライザカーブを設定する場合のタッチパネル装置に関して、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「タッチパネル面のタッチ位置に応じて振動子の振動量あるいは振動周波数を制御してクリック感を変えてタッチ位置を操作者に感覚的に認識させることができ、これにより、ブラインドタッチによりイコライゼーションカーブ等の設定、調整が可能になる(段落【0007】より。以下、同様。)タッチパネル装置であって(【0013】)、
ユーザがイコライザカーブの設定を指示すると、入出力制御部12はタッチパネル11にイコライザカーブ設定画面EQSCRを表示し、かかる状態で、イコライザカーブを設定するために、ポインタPNTで画面を所望のイコライザカーブにしたがって設定画面をなぞり、二次元タッチ位置検出部21はポインタPNTの横方向及び縦方向のタッチ位置(X,Y)を検出して入出力制御部12と振動周波数/振動強度制御部14に入力し(【0013】)、
位置-振動強度テーブル22は縦方向タッチ位置と振動強度の対応(Y-Vd)を記憶しており、また、位置-振動周波数テーブル23は横方向タッチ位置と振動周波数の対応(X-Vf)を記憶しており、振動周波数/振動強度制御部14は、縦方向タッチ位置Yに応じた振動強度を位置-振動強度テーブル22より求め、横縦方向タッチ位置Xに応じた振動周波数を位置-振動周波数テーブル23より求め、該振動強度、振動周波数に応じた振動子駆動信号を発生して振動部アクチュエータ17を駆動し、振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御し、振動間隔は一定とし、この結果、イコライザカーブ設定画面EQSCRを所望のイコライザカーブにしたがってなぞると二次元タッチ位置に応じて振動振幅、振動周波数が変化し、ブラインドタッチでイコライザカーブの設定が可能になり、
振動強度と振動周波数の2つを制御したが、振動強度、振動周波数、振動間隔のいずれか2つをタッチ位置に応じて制御するように構成することもできる(【0014】)、
タッチパネル装置。」

2.対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1では、「振動周波数/振動強度制御部14」が、「縦方向タッチ位置Yに応じた振動強度」及び「横縦方向タッチ位置Xに応じた振動周波数」に応じて振動子駆動信号を発生していることから、該「振動強度」及び「振動周波数」が、振動子駆動信号を発生する「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータとなっていることは明らかである。
よって、引用発明1における「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータである「振動強度」及び「振動周波数」と、本願発明1における「持続時間入力パラメータを含む複数の入力パラメータ」とは、「複数の入力パラメータ」の点で共通する。

イ 引用発明1における「クリック感」が、本願発明1における「ハプティック効果」に相当する。

ウ 本願明細書の段落【0007】には「ハプティック効果は、ハプティック「プリミティブ」の形態で表され」と記載されている。
すると、引用発明1は、「ユーザがイコライザカーブの設定を指示する」ことによって、「クリック感」(ハプティック効果)が「振動強度」及び「振動周波数」によって「変化」する形態が採用されることになるから、このことと、本願発明における「持続時間入力パラメータを含む複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブを受信するステップ」とは、「複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブを用意するステップ」の点で共通するといえる。

エ 引用発明1では、「ポインタPNTで画面を所望のイコライザカーブにしたがって設定画面をなぞり、二次元タッチ位置検出部21はポインタPNTの横方向及び縦方向のタッチ位置(X,Y)を検出して入出力制御部12と振動周波数/振動強度制御部14に入力し」ているから、「振動周波数/振動強度制御部14」が、「二次元タッチ位置検出部21」から、「設定画面をなぞ」ることで「検出」された「ポインタPNTの横方向及び縦方向のタッチ位置(X,Y)」の入力を受信していることは明らかであって、このことが、本願発明1における「センサから時間と共に変動する入力を受信するステップ」に相当する。

オ 引用発明1における「振動子駆動信号」は、「操作者」に「クリック感」(ハプティック効果)を生じさせるために用いられる信号であるから、本願発明1における「ハプティック効果信号」に相当する。

カ 上記「ウ」、「オ」を踏まえると、引用発明1における「振動周波数/振動強度制御部14」が「縦方向タッチ位置Yに応じた振動強度を位置-振動強度テーブル22より求め、横縦方向タッチ位置Xに応じた振動周波数を位置-振動周波数テーブル23より求め、該振動強度、振動周波数に応じた振動子駆動信号を発生」することと、本願発明1における「前記持続時間入力パラメータを用いて、前記ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するステップ」とは、「前記ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するステップ」の点で共通する。

キ 引用発明1において、「振動周波数/振動強度制御部14」は、「該振動強度、振動周波数に応じた振動子駆動信号を発生して」「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御し」ているから、「振動子駆動信号」(ハプティック効果信号)が「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」するパラメータを含んでいることは明らかであって、このことと、本願発明1における「前記ハプティック効果信号が、複数の出力パラメータを含み、前記複数の出力パラメータは、持続時間出力パラメータと周波数出力パラメータとを含」むこととは、「前記ハプティック効果信号が、複数の出力パラメータを含み、前記複数の出力パラメータは、周波数出力パラメータを含」む点で共通する。

ク 引用発明1において「振動子駆動信号」に含まれる「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」するパラメータ(出力パラメータ)が「タッチ位置に応じて制御」されることと、本願発明1における「前記持続時間出力パラメータおよび前記周波数出力パラメータは、前記持続時間入力パラメータの変化に基づいて変更され」ることとは、「前記周波数出力パラメータは、前記入力パラメータの変化に基づいて変更され」る点で共通する。

ケ 引用発明1における「タッチ位置(X,Y)」が、「設定画面をなぞ」ることで時間と共に変動することは明らかである。
よって、引用発明1における「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータである「振動強度」及び「振動周波数」が、時間と共に変動する「タッチ位置に応じて制御」されていることと、本願発明1における「前記持続時間入力パラメータの前記変化は、前記時間と共に変動する前記入力の関数である、ステップ」とは、「前記入力パラメータの前記変化は、前記時間と共に変動する前記入力の関数である、ステップ」の点で共通する。

コ 引用発明1における「振動子駆動信号を発生して振動部アクチュエータ17を駆動し、振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」し「クリック感を変えてタッチ位置を操作者に感覚的に認識させる」ことが、本願発明1における「前記ハプティック効果信号をアクチュエータに適用して、ハプティック効果を生成するステップ」に相当する。

サ 引用発明1の「タッチパネル装置」における、「操作者」に「クリック感」を生じさせるための構成は、方法として捉えることもできるから、本願発明1における「ハプティック効果を生成する方法」に相当するといえる。

よって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブを用意するステップと、
センサから時間と共に変動する入力を受信するステップと、
前記ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するステップであって、
前記ハプティック効果信号が、複数の出力パラメータを含み、
前記複数の出力パラメータは、周波数出力パラメータを含み、
前記周波数出力パラメータは、前記入力パラメータの変化に基づいて変更され、
前記入力パラメータの前記変化は、前記時間と共に変動する前記入力の関数である、ステップと、
前記ハプティック効果信号をアクチュエータに適用して、ハプティック効果を生成するステップと、
を含む、ハプティック効果を生成する方法。」

(相違点1)
本願発明1では、「複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブ」を「受信する」ステップを含んでいるのに対し、引用発明1では、「ユーザがイコライザカーブの設定を指示する」ことによって、「クリック感」(ハプティック効果)が「振動量あるいは振動周波数」の「制御」によって「変化」する形態(ハプティック効果プリミティブ)が採用されるものの、そのような形態を「受信する」ことは示されていない点。

(相違点2)
本願発明1では、複数の入力パラメータが「持続時間入力パラメータ」を含み、ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するのに「前記持続時間入力パラメータ」を用い、「前記持続時間入力パラメータ」の変化は、時間と共に変動する入力の関数であるのに対し、引用発明1では、「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータとして「振動量」及び「振動周波数」を用い、該「振動強度」及び「振動周波数」が、時間と共に変動する「タッチ位置に応じて制御」されているものの、「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータとして「持続時間パラメータ」を用いることは示されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、ハプティック効果信号の「複数の出力パラメータ」が、周波数出力パラメータだけでなく「持続時間出力パラメータ」を含み、「前記持続時間出力パラメータおよび前記周波数出力パラメータは、前記持続時間入力パラメータの変化に基づいて変更され」ているのに対し、
引用発明1では、「振動子駆動信号」(ハプティック効果信号)が「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」するパラメータ(出力パラメータ)を含んでいることは明らかであるものの、「持続時間出力パラメータ」は、「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」するパラメータ(出力パラメータ)に含まれておらず、さらに、「振動周波数/振動強度制御部14」が、「持続時間入力パラメータ」の変化に基づいて「振動子駆動信号」(ハプティック効果信号)の「持続時間出力パラメータ」及び振動周波数を制御(変更)することも示されていない点。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)新規性について
上記「第5」「2.」で述べたとおり、本願発明1と引用発明1との間には、上記相違点1-3があるから、本願発明1は、引用発明1ではない。

(2)進歩性について
事案に鑑みて、まず、上記相違点2、3についてまとめて判断する。
ア 相違点2、3について
(ア)引用発明1では、「振動子駆動信号」の「振動間隔は一定」とされているが、「振動強度と振動周波数の2つを制御したが、振動強度、振動周波数、振動間隔のいずれか2つをタッチ位置に応じて制御するように構成することもでき」ることも示されている。

(イ)しかし、引用文献1の段落【0008】に「振動間隔とは間欠的に振動させる場合における振動と振動の間隔である。」と記載されているとおり、引用発明1における「振動間隔」とは、「振動と振動の間隔」であるから、これを「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータ、あるいは「振動子駆動信号」(ハプティック効果信号)が「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」するパラメータ(出力パラメータ)として用いても、本願発明1における「持続時間入力パラメータ」や「持続時間出力パラメータ」とはならない。

(ウ)また、引用文献1には、「タッチパネル面のタッチ位置に応じて」「クリック感を変え」るために、「振動周波数/振動強度制御部14」の入力パラメータとして「持続時間入力パラメータ」を用いることも、該「持続時間入力パラメータ」を、時間と共に変動する「タッチ位置に応じて制御」されているものとすることも、「振動子駆動信号」(ハプティック効果信号)が「振動部11cの振動振幅及び振動周波数を制御」するパラメータ(出力パラメータ)として「持続時間出力パラメータ」を用いることも、「持続時間出力パラメータ」および振動周波数が「持続時間入力パラメータの変化に基づいて変更され」るようにすることも、記載されておらず、またこれらの構成が本願優先日前において周知技術であったともいえない。

(エ)よって、当業者であっても、引用発明1において、上記相違点2、3に係る本願発明の構成を採用することは、容易になし得たこととはいえない。

進歩性についてのまとめ
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1と同じく、複数の入力パラメータが「持続時間入力パラメータ」を含み、前記ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するのに「前記持続時間入力パラメータ」を用い、「前記持続時間入力パラメータ」の変化は、時間と共に変動する入力の関数であり、ハプティック効果信号の「複数の出力パラメータ」が「持続時間出力パラメータ」を含み、「前記持続時間出力パラメータおよび前記周波数出力パラメータは、前記持続時間入力パラメータの変化に基づいて変更され」る構成(以下、「相違点2、3に係る本願発明1の構成」という。)を備えているものである。
よって、本願発明2-8は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9は、「プロセッサにより実行された場合、前記プロセッサに請求項1?8に記載の方法によりハプティック効果を生成させる、保存された命令を有するコンピュータ可読媒体」の発明であって、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えているものである。
よって、本願発明9は、本願発明1と同様の理由により、引用発明1ではなく、また、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明10について
本願発明10は、「少なくとも持続時間を含む複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブ、および前記センサからの入力の受信に応答して前記プロセッサが請求項1?8に記載の方法を実施する」ことを発明特定事項として含む「触覚的に使用可能なシステム」の発明であって、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えているものである。
よって、本願発明10は、本願発明1と同様の理由により、引用発明1ではなく、また、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
1.本願発明1について
(1)新規性について
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献A(特開2011-159110号公報)にも、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成、つまり、複数の入力パラメータが「持続時間入力パラメータ」を含み、前記ハプティック効果プリミティブからハプティック効果信号を生成するのに「前記持続時間入力パラメータ」を用い、「前記持続時間入力パラメータ」の変化は、時間と共に変動する入力の関数であり、ハプティック効果信号の「複数の出力パラメータ」が「持続時間出力パラメータ」を含み、「前記持続時間出力パラメータおよび前記周波数出力パラメータは、前記持続時間入力パラメータの変化に基づいて変更され」る構成は記載されていない。
よって、本願発明1は、引用文献Aに記載された発明ではない。

(2)進歩性について
上記相違点2、3に係る本願発明1の構成は、本願優先日前において周知技術であったともいえないから、当業者であっても、引用文献Aに記載された発明において、上記相違点2、3に係る本願発明の構成を採用し、本願発明1の構成とすることは、容易になし得たこととはいえない。

2.本願発明2-8について
本願発明2-8も、本願発明1と同じく、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明6-8は引用文献Aに記載された発明と同一ではなく、また本願発明2-8は、当業者であっても、引用文献Aに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明9について
本願発明9は、「プロセッサにより実行された場合、前記プロセッサに請求項1?8に記載の方法によりハプティック効果を生成させる、保存された命令を有するコンピュータ可読媒体」の発明であって、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えているものである。
よって、本願発明9は、本願発明1と同様の理由により、引用文献Aに記載された発明と同一ではなく、また当業者であっても、引用文献Aに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明10について
本願発明10は、「少なくとも持続時間を含む複数の入力パラメータを含むハプティック効果プリミティブ、および前記センサからの入力の受信に応答して前記プロセッサが請求項1?8に記載の方法を実施する」ことを発明特定事項として含む「触覚的に使用可能なシステム」の発明であるから、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものである。
よって、本願発明10は、本願発明1と同様の理由により、引用文献Aに記された発明と同一ではなく、また、当業者であっても、引用文献Aに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2013-26835(P2013-26835)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 113- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 尊志星野 昌幸  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 清水 稔
稲葉 和生
発明の名称 プリミティブを用いた高解像度ハプティック効果生成  
代理人 藤田 和子  

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