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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 D06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 D06F
管理番号 1351208
審判番号 不服2018-5562  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-23 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2014-165713「洗濯機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日出願公開、特開2016- 41152、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年8月18日の出願であって、平成29年6月23日付けの拒絶理由の通知に対し、同年8月30日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成30年1月31日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年4月23日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成31年1月28日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年3月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成30年1月31日付け)の概要は次のとおりである。
本願請求項1?2に係る発明は、以下の引用文献1?2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2014-128351号公報
2.登録実用新案第3066964号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1には、「洗濯液」という用語と「洗濯水」という用語が記載されているが、これらの用語が、同じ事項を意味しているのか、異なる事項を意味しているのかが明確でない。同じく、請求項3に記載された「洗濯液」についても、請求項3が引用する請求項1に記載された「洗濯水」と同じ事項を意味しているのか、異なる事項を意味しているのかが明確でない。
よって、請求項1、3に係る発明は明確でない。請求項1を引用する請求項2、4に係る発明についても同様である。

第4 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成31年3月19日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
衣類を収容する収容槽と、
前記収容槽内の洗濯液を泡生成部に供給する循環ポンプと、を備え、
前記泡生成部は、前記循環ポンプから供給された洗濯液を貯留する泡生成室を有し、前記循環ポンプからの洗濯液を前記泡生成室内に貯留した洗濯液の液面に衝突するように構成し、
前記循環ポンプから前記泡生成室に前記洗濯液を循環供給する循環経路を備え、
前記循環経路は、前記泡生成室上方位置に、前記泡生成室内に貯留されている前記洗濯液に向けて前記洗濯液を吐出する吐出口を備え、
前記泡生成室には、前記吐出口から離間した位置に流出口を形成し、前記吐出口からの流入量と前記流出口からの流出量が均衡した状態となって前記泡生成室に洗濯液を溜める構成とする洗濯機。
【請求項2】
前記泡生成部は、前記収容槽の外に配設されることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記泡生成部は、前記収容槽の内面に配設し、かつ前記循環ポンプから供給された洗濯液が直接衣類にかからない位置に配設することを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記収容槽は、水槽と、前記水槽内に収容される回転ドラムとを含み、
前記泡生成部は、前記水槽と前記回転ドラムとの間に配設されることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。」

第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

ア 「【0022】
洗濯機100は、主筐体200と、制御部300と、給水機構400と、洗濯機構500と、循環機構600と、乾燥機構700と、を備える。・・・。」

イ 「【0024】
洗濯機構500は、衣類が収容される収容槽510と、収容槽510を駆動するモータ520と、を備える。・・・。」

ウ 「【0026】
循環機構600は、循環ポンプ610と、泡生成部620と、を備える。循環機構600は、上述の洗い工程及び濯ぎ工程において、循環ポンプ610と収容槽510との間で水を循環させてもよい。本実施形態において、循環機構600は、循環ポンプ610と収容槽510との間での水の循環のために、第1循環経路611と第2循環経路612とを備える。第1循環経路611が用いられるとき、水は、泡生成部620を通じて、収容槽510に流入する。第2循環経路612が用いられるとき、水は、循環ポンプ610から収容槽510へ直接的に送られる。単一のポンプ610によって、水は、泡生成部620及び収容槽510に送られるので、主筐体200内のスペースは有効に利用され、且つ、洗濯機100は、廉価に製造され得る。加えて、単一のポンプ610の使用は、主筐体200内のレイアウト設計の自由度の増大に帰結する。
【0027】
泡生成部620は、泡を生成する。泡生成部620によって生成された泡は、収容槽510に送られる。泡を形成する泡膜は、高濃度の界面活性剤を含有するので、収容槽510内の衣類は、泡との接触によって、効果的に洗浄されることとなる。」

エ 「【0038】
循環機構600は、循環ポンプ610と泡生成部620(図1を参照)とに加えて、排水弁690と、水槽540から循環ポンプ610へ流れる水の経路を規定する上流循環管640と、循環ポンプ610から水槽540へ戻る水の経路を規定する下流循環管650と、主筐体200外への排水経路を規定する排水管660と、を備える。排水弁690は、排水管660に取り付けられる。制御部300(図1を参照)は、排水弁690を制御する。収容槽510と循環ポンプ610との間で水が循環されている間、制御部300は、排水弁690を閉じる。制御部300は、不要となった水を排出するために排水弁690を開く。
【0039】
下流循環管650は、循環ポンプ610が吐出した水が流入する主管659と、主管659から分岐し、泡生成部620へ接続される第1枝管651と、主管659から分岐し、外環壁541に接続される第2枝管652と、を含む。第1枝管651は、図1を参照して説明された第1循環経路611を規定する。第2枝管652は、図1を参照して説明された第2循環経路612を規定する。制御部300は、循環ポンプ610の揚水量を制御し、第1枝管651を通じた水の循環と、第2枝管652を通じた水の循環と、を選択的に実行してもよい。本実施形態において、下流循環管650は、分岐管として例示される。」

オ 「【0052】
泡生成部620は、泡が生成される生成空間629を規定する筐体621と、筐体621から上方に突出する上筒622と、筐体621から下方に突出する下筒623と、を備える。図3を参照して説明された第1枝管651は、下筒623に接続される。循環ポンプ610が泡生成部620へ洗剤を含有する水を揚水すると、生成空間629内には、液層WLと空気層ALとの境界BDが形成される。図3を参照して説明された第1導気管761は、上筒622に接続される。上筒622は、境界BDの上方で、生成空間629に連通する送風口624を形成する。したがって、送風ファン730が作動すると、第1導気管761、上筒622及び送風口624によって下方に方向付けられた空気は、空気層ALを通じて、境界BDに向けて吹き出される。この結果、大きな泡が生成空間629内で生成される。送風口624は、境界BDよりも上方に存在するので、水は、送風口624を通じて、送風ファン730へ向かいにくくなる。したがって、送風ファン730は、高い信頼性を以て、空気を液層WLに向けて吹き付けることができる。・・・。」

カ 「【0053】
筐体621は、下筒623が突出する底壁625と、底壁625の上方で横たわる天壁626と、底壁625の前端と天壁626の前端とに接続される前壁627と、前壁627とは反対側の後壁628と、天壁626の後端から後壁628の上端にかけて下方に傾斜した傾斜壁630と、を含む。上筒622は、傾斜壁630から突出する。
【0054】
筐体621は、L字板631を更に含む。L字板631は、底壁625と天壁626との間で横たわる横板632と、横板632の後端から送風口624に向かって立設された縦板633と、を含む。縦板633と後壁628との間並びに横板632と底壁625との間には、通風路634が形成される。
【0055】
下筒623は、底壁625から下方に突出した下部635と、底壁625から上方に突出した上部636と、を含む。下筒623は、洗剤を含む水の流動経路637を規定する。通風路634中に現れる上部636は、流動経路637を、通風路634から隔離する。したがって、通風路634中には、水はほとんど漏出しない。上部636は、横板632上に開口部638を規定する。下筒623を通じて送り出された水は、開口部638からL字板631上に溢れ出す。
【0056】
筐体621は、横板632から上方に突出した制御板641を更に含む。制御板641は、横板632と接続される接続縁642と、接続縁642とは反対の制限縁643と、を含む。生成空間629内の液位が制限縁643を超えると、水は、制限縁643を乗り越え、筐体621から排出される。したがって、制御板641は、生成空間629内の液位を適切に制御することができる。」

キ 「【0061】
筐体621は、前周壁545に対向する左壁661を含む。制御板641と前壁627との間において、左壁661には、下排気口662及び上排気口663が形成される。下排気口662は、通風路634に連通する。生成空間629内で生成された泡は、制御板641を乗り越え、上排気口663から排出される。」

さらに、記載事項ウ、オ及び図3、図6の図示内容によると、以下の事項が理解できる。
ク 循環ポンプ610は、洗剤を含有する水を泡生成部620に揚水し、収容槽510との間で洗剤を含有する水を循環させている。

ケ 泡生成部620は、循環ポンプ610が泡生成部620へ洗剤を含有する水を揚水すると液層WLと空気層ALとの境界BDが形成され、泡が生成される生成空間629を備えている。

コ 泡生成部620は、送風ファン730が作動すると、送風口624によって下方に方向付けられた空気を、境界BDに向けて吹き出すように構成している。

サ 循環ポンプ610と収容槽510との間での洗剤を含有する水の循環のために備えられ、洗剤を含有する水を泡生成部620を通じて、収容槽510に流入させる際に用いられる第1循環経路611を備えている。

また、記載事項エ、オ、カ及び図3、図6の図示内容によると、以下の事項が理解できる。
シ 第1循環経路611を規定する第1枝管651に接続され、洗剤を含有する水の流動経路637を規定する下筒623を備えている。

ス 下筒623の上部636に、洗剤を含有する水をL字板631上に溢れ出させる開口部638を備えている。

そして、記載事項オ、カ、キ及び図6、図7の図示内容によると、以下の事項が理解できる。
セ 生成空間629を規定する筐体621に上排気口663を形成し、生成空間629内で生成された泡が制御板641を乗り越え、上排気口663から排出され、制御板641によって、生成空間629内の液位を適切に制御している。

(2)引用発明
したがって、前記引用文献1の記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「衣類が収容される収容槽510と、
洗剤を含有する水を泡生成部620に揚水し、前記収容槽510との間で洗剤を含有する水を循環させる循環ポンプ610と、を備え、
前記泡生成部620は、前記循環ポンプ610が前記泡生成部620へ前記洗剤を含有する水を揚水すると液層WLと空気層ALとの境界BDが形成され、泡が生成される生成空間629を備え、送風ファン730が作動すると、送風口624によって下方に方向付けられた空気を、前記境界BDに向けて吹き出すように構成し、
前記循環ポンプ610と前記収容槽510との間での前記洗剤を含有する水の循環のために備えられ、前記洗剤を含有する水を前記泡生成部620を通じて、前記収容槽510に流入させる際に用いられる第1循環経路611と、前記第1循環経路611を規定する第1枝管651に接続され、前記洗剤を含有する水の流動経路637を規定する下筒623を備え、
前記下筒623の上部636に、前記洗剤を含有する水をL字板631上に溢れ出させる開口部638を備え、
前記生成空間629を規定する筐体621に上排気口663を形成し、前記生成空間629内で生成された泡が制御板641を乗り越え、前記上排気口663から排出され、前記制御板641によって、前記生成空間629内の液位を適切に制御している洗濯機100。」

2 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

ソ 「【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、ハエやアブ等の飛翔性害虫を駆除可能な飛翔性害虫駆除装置に関する。」

タ 「【0007】
【考案が解決しようとする課題】
ところで、殺虫剤を噴霧して飛翔性害虫を駆除する方法は、食品を扱う場所(厨房、食品加工場等)では禁止されており、ハエ取り紙は使用場所が限定されている。そのため、かかる場所では、ハエ等が入り込んでしまうと、駆除するのが困難となり衛生上問題がある。
【0008】
なお、殺虫剤の噴霧(散布)が許されている場所でも、噴霧(散布)作業は手間が掛かるとともに、周辺の環境に重大な悪影響を与える。
【0009】
また、牛舎やプール等は一般的に広く外部に開放されているので、殺虫剤を噴霧(散布)しても効果がなく、有効な飛翔性害虫駆除技術の開発が強く求められている。
【0010】
本考案の目的は、手間を掛けることなく屋内外で安全かつ効果的に飛翔性害虫を駆除できる飛翔性害虫駆除装置を提供することにある。」

チ 「【0031】
具体的には、図1に示すように、容器11は、上部12が開口されており、泡発生用液体Qを収容して保持可能に形成されている。
【0032】
また、泡発生部は、容器11内に収容された泡発生用液体Q中に空気を吹き込んで泡BLを大量発生可能な空気吹込み手段21から形成されている。」

ツ 「【0035】
また、この実施形態では、泡発生用液体Qとして洗剤入りの水を使用している。洗剤としては、中性洗剤や洗濯用洗剤等が使用できる。」

テ 「【0046】
なお、上記実施形態では、泡発生部を図1に示す空気吹込み手段21から形成したが、例えば泡発生部を図2に示す液体落下手段31から形成してもよい。
【0047】
ここで、液体落下手段31は、循環用ポンプ32と循環用パイプ33と複数個のノズル34とを含み、容器11内に各ノズル34から泡発生用液体Qを落下させて泡BLを大量発生可能に形成されている。なお、循環用ポンプ32は、商用電気を利用して駆動される。
【0048】
かかる構成とすることにより、容器11内に泡発生用液体Qを落下させるだけで泡BLを大量に発生することができる。したがって、一段と構成を簡易化できる。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
以下、本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「収容槽510」は、本願発明1の「収容槽」に相当するから、引用発明の「衣類が収容される収容槽510」は、本願発明1の「衣類を収容する収容槽」に相当する。
引用発明の「洗剤を含有する水」、「泡生成部620」及び「循環ポンプ610」は、それぞれ本願発明1の「洗濯液」、「泡生成部」及び「循環ポンプ」に相当するから、引用発明の「洗剤を含有する水を泡生成部620に揚水し、前記収容槽510との間で洗剤を含有する水を循環させる循環ポンプ610」は、本願発明1の「前記収容槽内の洗濯液を泡生成部に供給する循環ポンプ」に相当する。
引用発明の「生成空間629」は、本願発明1の「泡生成室」に相当する。そして、引用発明の「生成空間629」には、洗剤を含有する水により液層WLと空気層ALとの境界BDが形成されているから、洗剤を含有する水が貯留されているといえる。すると、引用発明の「前記泡生成部620は、前記循環ポンプ610が前記泡生成部620へ前記洗剤を含有する水を揚水すると液層WLと空気層ALとの境界BDが形成され、泡が生成される生成空間629を備え」るという事項は、本願発明1の「前記泡生成部は、前記循環ポンプから供給された洗濯液を貯留する泡生成室を有」するという事項に相当する。
引用発明の「境界BD」は、貯留された洗剤を含有する水の液面であるといえるから、引用発明の「送風ファン730が作動すると、送風口624によって下方に方向付けられた空気を、前記境界BDに向けて吹き出すように構成」するという事項と、本願発明1の「前記循環ポンプからの洗濯液を前記泡生成室内に貯留した洗濯液の液面に衝突するように構成」するという事項とは、「流体を前記泡生成室内に貯留した洗濯液の液面に衝突するように構成」する限りにおいて共通する。
引用発明の「前記循環ポンプ610と前記収容槽510との間での前記洗剤を含有する水の循環のために備えられ、前記洗剤を含有する水を前記泡生成部620を通じて、前記収容槽510に流入させる際に用いられる第1循環経路611」と「前記第1循環経路611を規定する第1枝管651に接続され、前記洗剤を含有する水の流動経路637を規定する下筒623」とは、洗剤を含有する水を泡生成部620に備えられた生成空間629に循環させる際の経路であるといえるから、本願発明1の「前記循環ポンプから前記泡生成室に前記洗濯液を循環供給する循環経路」に相当する。
引用発明の「下筒623」は、前記したように本願発明1の「循環経路」の一部に相当するものであり、また、引用発明の「L字板631上」には「生成空間629」が形成されているから、引用発明の「前記下筒623の上部636に、前記洗剤を含有する水をL字板631上に溢れ出させる開口部638を備え」るという事項は、本願発明1の「前記循環経路は、前記泡生成室上方位置に、前記泡生成室内に貯留されている前記洗濯液に向けて前記洗濯液を吐出する吐出口を備え」るという事項と対比して、「前記循環経路は、前記泡生成室に前記洗濯液を流入させる開口を備え」る限りにおいて共通する。
引用発明の「上排気口663」は、本願発明1の「流出口」に相当し、「開口部638」から離れた位置に形成されているから、引用発明の「前記生成空間629を規定する筐体621に上排気口663を形成」するという事項は、本願発明1の「前記泡生成室には、前記吐出口から離間した位置に流出口を形成」するという事項と対比して、「前記泡生成室には、前記開口から離間した位置に流出口を形成」する限りにおいて共通する。
引用発明の「前記生成空間629内で生成された泡が制御板641を乗り越え、前記上排気口663から排出され、前記制御板641によって、前記生成空間629内の液位を適切に制御している」という事項は、本願発明1の「前記吐出口からの流入量と前記流出口からの流出量が均衡した状態となって前記泡生成室に洗濯液を溜める」という事項と対比して、「前記泡生成室に洗濯液を溜める」限りにおいて共通する。
引用発明の「洗濯機100」は、本願発明1の「洗濯機」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、
「衣類を収容する収容槽と、
前記収容槽内の洗濯液を泡生成部に供給する循環ポンプと、を備え、
前記泡生成部は、前記循環ポンプから供給された洗濯液を貯留する泡生成室を有し、前記流体を前記泡生成室内に貯留した洗濯液の液面に衝突するように構成し、
前記循環ポンプから前記泡生成室に前記洗濯液を循環供給する循環経路を備え、
前記循環経路は、前記泡生成室に前記洗濯液を流入させる開口を備え、
前記泡生成室には、前記開口から離間した位置に流出口を形成し、前記泡生成室に洗濯液を溜める構成とする洗濯機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
流体を洗濯液の液面に衝突させる構成について、本願発明1においては、泡生成室「上方位置」に、「前記泡生成室内に貯留されている前記洗濯液に向けて前記洗濯液を吐出する吐出口」を備え、「循環ポンプからの洗濯液」を衝突させているのに対し、引用発明においては、洗剤を含有する水をL字板631上に溢れ出させる開口部638を備えるものの、この開口部638から溢れ出た洗剤を含有する水を、液層WLと空気層ALとの境界BDに衝突させるものではなく、送風口624によって下方に方向付けられた空気を、前記境界BDに向けて吹き出している点。

[相違点2]
泡生成室に洗濯液を溜める構成について、本願発明1においては、「前記吐出口からの流入量と前記流出口からの流出量が均衡した状態となって」いるのに対し、引用発明においては、「制御板641によって、前記生成空間629内の液位を適切に制御して」おり、開口部638からの流入量と、上排気口663からの排出量とが、必ずしも均衡しているとはいえない点。

(2)判断
以下、相違点1について検討する。
引用文献2の記載事項タ、チ、ツ、テ及び図2の図示内容によると、引用文献2には、容器11の上方に、容器11内に収容された洗剤入りの水に対して、洗剤入りの水を落下させるノズル34を備え、循環用ポンプ32により循環された洗剤入りの水を落下させて泡を大量発生可能に形成した飛翔性害虫駆除装置が記載されている。
そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、ともに洗剤を含有する水から泡を生成する手段を備える点で共通するものの、引用発明の「洗濯機100」と、引用文献2に記載された「飛翔性害虫駆除装置」とは、発明の属する技術分野が大きく異なり、また、引用発明は「泡を用いて、衣類の繊維間に存在する汚れを除去することができる洗濯機を提供すること」(引用文献1の段落【0005】)を課題とするのに対し、引用文献2に記載された事項は「手間を掛けることなく屋内外で安全かつ効果的に飛翔性害虫を駆除できる飛翔性害虫駆除装置を提供すること」(引用文献2の段落【0010】)を課題としており、両者が解決しようとする課題も大きく異なるものであるから、これらを総合すると、引用発明の送風ファン730を用いた泡生成部620に代えて、引用文献2に記載された循環用ポンプ32により循環された洗剤入りの水を落下させることにより泡を生成する手段を敢えて採用する動機付けは存在しない。
仮に、引用発明の泡生成部620に、引用文献2に記載された事項の適用を試みたとしても、引用文献2に記載された事項は、容器11内に収容された洗剤入りの水を直接、循環用ポンプ32で揚水し、洗剤入りの水を容器11の上方のノズル34から落下させるものであるから、引用発明に適用した際、引用発明の生成空間629に貯留された洗剤を含有する水を、ポンプにより直接、揚水し、生成空間629の上方からノズルにより落下させる事項が想到されるとしても、このポンプとして、引用発明の「収容槽510との間で洗剤を含有する水を循環させる循環ポンプ610」を用いることや、 生成空間629における上方位置、つまり生成空間629を規定する筐体621における上方位置に吐出口を設けることまでは、当業者といえども、容易に想到することはできないものである。

したがって、本願発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?本願発明4について
請求項2?4は請求項1を引用するものであり、本願発明2?本願発明4も、本願発明1の前記相違点1に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2?本願発明4は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
平成31年3月19日にされた手続補正により、本願発明1?本願発明4は、前記相違点1に係る、泡生成室「上方位置」に、「前記泡生成室内に貯留されている前記洗濯液に向けて前記洗濯液を吐出する吐出口」を備え、「循環ポンプからの洗濯液」を衝突させるという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び引用文献2に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由についての判断
平成31年3月19日の手続補正により、補正前の請求項1に記載された「洗濯水」は、補正後の請求項1において「洗濯液」と補正された。そうすると、補正後の請求項1の記載、及び請求項1を引用する請求項3の記載において、「洗濯液」という用語と「洗濯水」という用語が混在することはなくなり、請求項1の記載、及び請求項1を引用する請求項3の記載は、明確なものとなった。
したがって、当審拒絶理由を維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、本願発明1?本願発明4(請求項1?4に係る発明)は、当業者が引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-07 
出願番号 特願2014-165713(P2014-165713)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (D06F)
P 1 8・ 121- WY (D06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶本 直樹一ノ瀬 薫  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 久保 竜一
柿崎 拓
発明の名称 洗濯機  
代理人 鎌田 健司  
代理人 野村 幸一  

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