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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない H04N |
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管理番号 | 1351263 |
審判番号 | 訂正2018-390121 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2018-08-22 |
確定日 | 2019-05-07 |
事件の表示 | 特許第6328277号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6328277号に係る出願は、2015年(平成27年)6月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年6月20日、米国、2014年12月2日、米国、2015年1月27日、米国、2015年1月30日、米国、2015年1月30日、米国、2015年2月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年4月27日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成30年8月22日付けで本件審判が請求されたものである。 そして、当審において平成30年9月20日付けで訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。 第2 請求の趣旨及び訂正の内容 本件審判の請求の趣旨は、特許第6328277号の明細書を本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものである。 そして、本件審判の請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の訂正事項1は、以下のとおりである。 (訂正事項1) 願書に添付した明細書の段落【0097】と【0099】との間に「【0098】 例1と比較して、フラグ Copy_index_only が用いられて、Line fraction copy_indexを示し、それらがすべてcopy_index ランであるので、ラン上のループは、ランタイプをシグナリングする必要がない。」に訂正する。 第3 訂正拒絶理由の概要 平成30年9月20日付けで当審が通知した訂正拒絶理由の概要は、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、本件訂正は認められない、というものである。 第4 当審の判断 本件訂正が、特許法第126条第1項ただし書に掲げる事項を目的とするものであるか検討する。 1 誤記又は誤訳の訂正について 請求人は、審判請求書において、訂正事項1の訂正の目的は誤記又は誤訳の訂正であると述べているので、以下、検討する。 (1)誤記の訂正について 「誤記の訂正」とは、本来その意であることが、明細書、特許請求の範囲又は図面の記載などから明らかな内容の字句、語句に正すことをいい、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められるものをいう。 そして、「誤記の訂正」が認められるためには、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載に誤記が存在することが必要である。 そこで、本件特許の特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」という。)に誤記が存在するかどうかについて検討する。 本件特許明細書等の段落0096?0099の記載は以下のとおりである。 ア「【0096】 例2. この例において、まず、構文設計は、それが、“line copy_above” モードであるか判断する。そうでない場合、さらに、構文要素は、単一ラン (line copy_index)、あるいは、複数のラン (line fraction)モードか判断する。表11は、構文設計を要約する。 【0097】 【表11】 【0099】 “line fraction modes”において、最後のランは、ラインの終わりで終了しなければならないので、その長さは、特別な “run-to-the-end” 構文設計により、シグナリング number_of_run_in_lineをシグナリングすることにより効果的に符号化される。最後のランのラン長さが省略される。」 上記アによれば、段落0097の表11には、フラグCopy_index_onlyにより、Line fraction Copy_indexモードが示されることが記載されており、表11のRemaining syntaxの欄の記載からは、Line fraction Copy_indexモードでは、ランタイプをシグナリングする必要が無いことが理解できる。 そうすると、構文設計の例2として、フラグCopy_index_onlyが用いられること、当該フラグCopy_index_onlyの意味、Line fraction Copy_indexモードにおけるランタイプのシグナリング、及び、Line fraction modesにおいて、特別な “run-to-the-end” 構文設計により、number_of_run_in_lineをシグナリングすることにより、最後のランの長さが効果的に符号化されることは、段落0096、段落0097の表11及び段落0099の記載から理解することができる。 よって、本件特許明細書等の段落0097と段落0099の間に、フラグCopy_index_onlyや、Line fraction Copy_indexモードに関する説明がないことをもって、上記アの例2に関する記載に誤記が存在していたと認めることはできない。 したがって、本件特許明細書等に誤記が存在していたとはいえないから、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものとはいえない。 (2)誤訳の訂正について 次に、誤訳の訂正について検討する。 「誤訳の訂正」とは、翻訳により国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面における意と異なるものとなった記載(誤訳)を、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面の意を表す記載に訂正することをいう。 そして、「誤訳の訂正」が認められるためには、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中の記載の意味が、国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に対応する記載の意味と異なることが必要である。 そこで、本件特許明細書等中の記載の意味が、本件特許の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「本件国際出願明細書等」という。)に対応する記載の意味と異なるかどうかについて検討する。 本件国際出願明細書等の第24頁第4?15行目には、以下の記載がある。 ア「Example 2. In this example, syntax design first determines whether it is "line copy_above" mode. If not, further syntax elements will determine single run (line copy_index) or multiple runs (line fraction) modes. Table 11 summarizes the syntax design. As compared to example 1, a flag Copy_index_only is used to indicate Line fraction copy_index, where the loop over runs does not need to signal the run type since they are all copy_index runs) . For "line fraction modes" , since the last run has to be terminated at the end of the line, its length can be coded efficiently with a special "run-to-the-end" syntax design or by signaling number_of_run_in_line. The run length of the last run can be skipped.」 上記アの翻訳は、本件特許に対する国際出願の明細書の翻訳文の段落0096?0099の記載を援用すると、以下のとおりである。 イ「【0096】 例2. この例において、まず、構文設計は、それが、“line copy_above” モードであるか判断する。そうでない場合、さらに、構文要素は、単一ラン (line copy_index)、あるいは、複数のラン (line fraction)モードか判断する。表11は、構文設計を要約する。 【0097】 【表11】 【0098】 例1と比較して、フラグ Copy_index_only が用いられて、Line fraction copy_indexを示し、それらがすべてcopy_index ランであるので、ラン上のループは、ランタイプをシグナリングする必要がない。 【0099】 “line fraction modes”において、最後のランは、ラインの終わりで終了しなければならないので、その長さは、特別な “run-to-the-end” 構文設計により、シグナリング number_of_run_in_lineをシグナリングすることにより効果的に符号化される。最後のランのラン長さが省略される。」 本件特許明細書等の上記(1)アに記載された意味と、翻訳による本件国際出願明細書等の上記イに記載された意味を対比すると、両者は、フラグCopy_index_onlyにより、Line fraction Copy_indexモードが示され、Line fraction Copy_indexモードでは、ランタイプをシグナリングする必要が無い、という技術事項を意味している点で異なっていない。 よって、本件特許明細書等の上記(1)アに記載された意味は、本件国際出願明細書等の対応する上記アに記載された意味と異なるとはいえない。 したがって、本件特許明細書等に誤訳が存在していたとはいえないから、訂正事項1は、誤訳の訂正を目的とするものともいえない。 (3)まとめ 以上によれば、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとはいえない。 2 明瞭でない記載の釈明について 「明瞭でない記載の釈明」とは、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中のそれ自体意味の不明瞭な記載、又は、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面中の他の記載との関係で不合理を生じているために不明瞭となっている記載等、明細書、特許請求の範囲又は図面に生じている記載上の不備を訂正し、その本来の意を明らかにすることをいう。 そして、「明瞭でない記載の釈明」が認められるためには、特許がされた明細書、特許請求の範囲又は図面に明瞭でない記載が存在することが必要である。 しかしながら、上記1(1)で述べたとおり、本件特許明細書等の段落0096、段落0097の表11及び段落0099の記載は明瞭に理解できるから、本件特許明細書等に明瞭でない記載が存在していたとはいえない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものとはいえない。 3 特許請求の範囲の減縮について 訂正事項1は、特許請求の範囲について訂正を行うものではないから、特許請求の範囲の減縮には該当せず、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。 4 請求項間の引用関係の解消について 訂正事項1は、特許請求の範囲について訂正を行うものではないから、請求項間の引用関係の解消には該当せず、特許法第126条第1項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消を目的とするものとはいえない。 5 まとめ 以上によれば、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもない。 第5 むすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものでもないから、本件訂正は認められない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-11-30 |
結審通知日 | 2018-12-04 |
審決日 | 2018-12-17 |
出願番号 | 特願2016-574156(P2016-574156) |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤穂 州一郎 |
特許庁審判長 |
鳥居 稔 |
特許庁審判官 |
坂東 大五郎 渡辺 努 |
登録日 | 2018-04-27 |
登録番号 | 特許第6328277号(P6328277) |
発明の名称 | ビデオ符号化(coding)のパレット予測器シグナリング方法 |
代理人 | とこしえ特許業務法人 |