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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1351273
審判番号 不服2017-16268  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-01 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2015-98960号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年9月10日出願公開、特開2015-163260号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年2月25日にされた特許出願(特願2011-40949号)の一部を平成27年5月14日に新たな特許出願(特願2015-98960号)としたものであって(優先権主張:平成22年4月8日)、平成28年6月2日付けの拒絶理由通知に対し、同年8月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月6日付けの最後の拒絶理由通知に対し、同年3月17日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月25日付けで同年3月17日付け手続補正を却下するとともに、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものであり、さらに、当審からの平成30年9月19日付けの拒絶理由通知に対し、同年11月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年11月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
(A?Hは本願発明の構成を分説するため当審で付した。)

「【請求項1】
A 発光することで遊技に関する報知を行う発光素子と、
B 当該発光素子を発光させる駆動手段と、
C 予め定められた特定周期で実行される定期処理にて所定の駆動データを更新する駆動データ更新手段と、
D 前記駆動データに基づいて、遊技の状況に応じて前記駆動手段に対して予め定められた駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
E 前記駆動信号が前記特定周期よりも長い所定の期間だけ出力されていることに基づいて、前記発光素子が発光するように前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
を備え、
F 前記駆動信号出力手段は、前記発光素子を発光させる期間よりも長い期間継続して前記駆動信号を出力可能であって、当該駆動信号の出力を前記発光を停止させるべきタイミングに合わせて停止するものであり、
G 前記駆動信号出力手段からの前記駆動信号の出力が停止された場合に、前記発光を停止させる停止処理が実行されること
H を特徴とする遊技機。」


第3 拒絶の理由
平成30年9月19日に当審が通知した拒絶理由の概略は、次のとおりである。
本願発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1:特開2001-17713号公報
(以下、「引用文献1」という。)
刊行物2:特開2007-44222号公報
(以下、「引用文献2」という。)
刊行物3:特開平3-27579号公報
(以下、「引用文献3」という。)
周知例:特開平1-132214号公報
(以下、「引用文献4」という。)
周知例:実願昭58-154533号(実開昭60-61612号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献5」という。)

なお、刊行物3は、上記拒絶理由においては、周知技術を示す文献としても引用されている。


第4 引用文献
1 引用文献1の記載及び引用発明
引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「【0020】上記したターミナルボックス基板55、遊技制御回路基板56、賞球払出制御回路基板57、枠制御回路基板61相互の配線関係は、図3に示すようになっている。図3は、パチンコ遊技機1のブロック形式の配線図である。即ち、ターミナルボックス基板55(ターミナルボックス基盤と表示)には、直流24Vの外部電源が接続されると共に、玉切れスイッチ48とも接続され、賞球払出制御回路基板57(賞球制御基盤と表示)、遊技制御回路基板56(遊技制御基盤と表示)、及び枠制御回路基板61(電飾基板と表示)との間にも電源線や信号線が接続され、更に、エラー信号や扉開放信号を管理コンピュータに送るためにターミナルボックス基板55と枠制御回路基板61のコネクタ10とが接続されている。(以下、省略。)
【0021】また、枠制御回路基板61には、コネクタ1に前記ターミナルボックス基板55からの電源線が接続され、コネクタ2に遊技制御回路基板56から導出される各種の遊技状態に応じた遊技態様信号が入力される信号線が接続され、コネクタ3には、前記賞球払出制御回路基板57からの信号線が接続され、コネクタ4には、ドアースイッチ16が接続され、コネクタ5には、遊技制御回路基板56から導出される音声信号が入力される音声信号線が接続され、コネクタ6には、情報表示器19(表示器と表示)を駆動する表示信号が出力される信号線が接続され、コネクタ7には、LED12を駆動する表示信号が出力される信号線が接続され、コネクタ8には、玉切れ表示器9及び賞球表示器10を駆動する表示信号が出力される信号線が接続され、コネクタ9には、ハンドル動作表示器20及び充満表示器27を駆動する表示信号が出力される信号線が接続され、コネクタ10には、前記したエラー信号や扉開放信号を管理コンピュータに送るためにターミナルボックス基板55と接続される信号線が接続され、コネクタ11には、蛍光管6a,6bを駆動する表示信号が出力される信号線が安定器63を介して接続され、コネクタ12には、スピーカ8a,8bを駆動する音声信号が出力される信号線が接続されている。また、枠制御回路基板61には、前記スピーカ8a,8bの音量を切り換える音量切換スイッチ62が設けられている。なお、コネクタ2に接続される信号線については、後に詳述する。」

イ 「【0026】以上説明した枠制御回路基板61に形成される枠制御回路について図6乃至図9を参照して説明する。図6は、枠制御回路基板61に形成される枠制御回路のブロック図であり、図7は、枠制御回路の一部を構成する入力信号回路96の詳細な回路図であり、図8は、枠制御回路の一部を構成する装飾信号回路97の詳細な回路図であり、図9は、枠制御回路の一部を構成するウォッチドッグ回路99の詳細な回路図である。図において、枠制御回路は、制御中枢としてのMPU90を有し、該MPU90には、音声発生回路91、スイッチ回路93、安定器駆動回路94、情報信号回路95、入力信号回路96、装飾信号回路97、LED駆動回路98、初期設定ウォッチドッグ回路99がそれぞれ接続されている。MPU90は、ROM90aを内蔵しており、このROM90a内にスピーカ8a,8bから出力される効果音データプログラムや、LED9,10,12,20,27,19を駆動表示する表示データプログラムがそれぞれ複数個格納されており、外部からの入力信号に応じて所定のデータプログラムが1つ選択されて、そのプログラムにしたがって効果音が発生されたり、LEDが表示駆動されるものである。」

ウ 【図6】

エ 「【0036】上記した「A」「B」「C」の遊技内容を有するパチンコ遊技機においては、相互に類似する遊技状態を出現させるので、機種が相違してもこの類似する遊技状態において同じ信号を遊技制御回路基板から枠制御回路基板61に送ることにより、同じ態様で枠部材に設けられる報知用機器を駆動することができる。例えば、図11に示すように、通常時においては信号線D0?D3に「0000」の4ビットの信号を送り、始動入賞時には、同様に「0001」を送り、可変表示装置を有する機種にあっては、リーチ時(3列の図柄列において最後の図柄列が変動している状態で先に停止した2つの図柄列の組合せが当りと同一の組合せである状態)に「0010」を送り、スーパーリーチ時(より当る確率が高いリーチ状態)には、「0011」を送り、小当り時(大当りよりも遊技価値の低い当り)には、「0100」を送り、大当り時には、「0101」を送り、特定領域入賞時には、「0110」を送り、可変入賞球装置の開放時には、「0111」を送り、可変入賞球装置の閉鎖時には、「1000」を送り、確率変動図柄リーチ(確率変動図柄とは、当りとなる組合せのうち、特別に定められた組合せで大当りとなったときに以後の可変表示装置の変動において当りとなる確率が高くなるような図柄を言う)には、「1001」を送り、確率変動図柄大当りには、「1010」を送り、高確率中(高確率での変動中)には、「1011」を送り、権利発生中には、「1100」を送り、ガラス扉保持枠の開放時(本実施形態では、ドアスイッチ16が遊技制御回路基板56に接続されていないので、このような信号を導出することはできないが、ドアスイッチ16を遊技制御回路基板56に接続すれば、導出することができる)には、「1101」を送り、遊技装置における故障が生じたときには、「1110」を送り、不正行為が行われたときには(例えば、可変入賞球装置の開放中でないときに入賞玉検出器がONしたとき)、「1111」を送る。なお、図11において、対応する機種の遊技状態に丸印が記載されていないのは、多くの場合そのような遊技状態を出現させるものが主流ではないことを意味している。例えば、機種「B」においては、スーパーリーチ状態を出現する遊技内容を有するものは極めて少ないということであり、確実にないというものではない。
【0037】上記した4ビットの信号が遊技制御回路基板56から枠制御回路基板61に送られてきたときには、枠制御回路基板61のMPU90は、ROM90a内に記憶された複数の効果音データや表示データの中から4ビット信号の種類に対応する効果音データや表示データを選択して各報知用機器に出力する。例えば、図12に示すように、「A」タイプのパチンコ遊技機1において、始動入賞時信号「0001」が送られてきたときには、約7秒間表示駆動信号が出力され、リーチ時信号「0010」が送られてきたときには、約10秒間表示駆動信号が出力され、スーパーリーチ時信号「0011」が送られてきたときには、約5秒間表示駆動信号が出力され、大当り時信号「0101」が送られてきたときには、約2秒間表示駆動信号が出力され、特定領域入賞時信号「0110」が送られてきたときには、約1秒間表示駆動信号が出力され、可変入賞球装置開放時信号「0111」が送られてきたときには、約15秒間表示駆動信号が出力され、可変入賞球装置閉鎖時信号「1000」が送られてきたときには、約8秒間表示駆動信号が出力されるようになっている。ただし、各遊技状態に対応する表示駆動信号に基づく効果音データや表示データは、予めROM90a内に記憶されている。
【0038】例えば、リーチ時における信号「0010」が送られてきたときには、MPU90は、ROM90a内に記憶される複数の表示データの中から図13に示すような表示データに基づいてLED12、蛍光管6a,6b、ハンドル動作表示器20を表示駆動する。図13の図表中、LED1?9は、多数のLED12を図10に示すように9種類に分類したときの種類番号であり、LEDa?cは、ハンドル動作表示器20のLED21を図10に示すように3種類に分類したときの種類番号である。また、表中の「0」は消灯を示し、「1」は、点灯を示している。しかして、リーチ時において、例えばLED1は、T1(例えば、5秒)時間/1周期において「001001001」という消灯・点灯パターンで表示駆動され、蛍光管6b(右)は、T1時間/1周期において「011011011」という消灯・点灯パターンで表示駆動される。同様に可変入賞球装置開放時信号「0111」が送られてきたときには、MPU90は、ROM90a内に記憶された図13に示すT2時間(例えば、3秒)/1周期の消灯・点灯パターンデータに基づいてLED12、蛍光管6a,6b、ハンドル動作表示器20を表示駆動する。したがって、図12のタイムチャートによれば、リーチ時には、T1時間周期のパターンを2回繰り返し、可変入賞球装置開放時には、T2時間周期のパターンを5回繰り返すことになる。」

オ 【図13】

カ 上記ア、イ及びエの記載事項並びに上記ウ及びオの図示内容から、以下の認定事項が導かれる。

(ア)上記ア【0021】には、「枠制御回路基板61」の「コネクタ2に遊技制御回路基板56から導出される各種の遊技状態に応じた遊技態様信号が入力される信号線が接続され」、「コネクタ7には、LED12を駆動する表示信号が出力される信号線が接続され」ることが記載されている。
上記エ【0037】より、引用文献1には、「4ビットの信号が遊技制御回路基板56から枠制御回路基板61に送られてきたとき」、「枠制御回路基板61のMPU90」は「各遊技状態に対応する」「表示データを選択して各報知用機器に出力する」ことが記載されているといえる。
そうすると、引用文献1には、
「遊技制御回路基板56から導出される各種の遊技状態に応じた4ビットの遊技態様信号が枠制御回路基板61に入力されると、各遊技状態に対応して表示駆動される、枠制御回路基板61に接続された報知用機器であるLED12」が記載されているといえる。

(イ)上記ア【0021】には、「枠制御回路基板61」の「コネクタ7には、LED12を駆動する表示信号が出力される信号線が接続され」ることが記載されている。
上記イ【0026】には、「枠制御回路」の「MPU90」には「LED駆動回路98」が「接続」されることが記載されている。
そうすると、引用文献1には、「枠制御回路基板61のMPU90に接続され、LED12を駆動するLED駆動回路98」が記載されているといえる。

(ウ)上記イ【0026】には、「MPU90」に「内蔵」された「ROM90a内に」「LED9,10,12,20,27,19を駆動表示する表示データプログラム」が「複数個格納されており、外部からの入力信号に応じて所定のデータプログラムが1つ選択されて、そのプログラムにしたがって」、「LEDが表示駆動される」ことが記載されている。
上記エ【0036】には、「通常時においては信号線D0?D3に「0000」の4ビットの信号を送り」、「リーチ時...に「0010」を送り」、「可変入賞球装置の開放時には、「0111」を送」ることが記載されている。
上記エ【0037】には、「4ビットの信号が遊技制御回路基板56から枠制御回路基板61に送られてきたとき」、「枠制御回路基板61のMPU90は、ROM90a内に記憶された複数の...表示データの中から4ビット信号の種類に対応する...表示データを選択して各報知用機器に出力する」と記載されている。
上記エ【0037】には、「リーチ時信号「0010」が送られてきたときには、約10秒間表示駆動信号が出力され」、「可変入賞球装置開放時信号「0111」が送られてきたときには、約15秒間表示駆動信号が出力され」ることが記載されている。
上記エ【0038】には、「リーチ時における信号「0010」が送られてきたときには、MPU90は、ROM90a内に記憶される複数の表示データの中から図13に示すような表示データに基づいてLED12...を表示駆動する」、「リーチ時において」、「T1(例えば、5秒)時間/1周期において「001001001」という消灯・点灯パターンで表示駆動され」、「T1時間周期のパターンを2回繰り返」すことが記載されている。
上記エ【0038】には、「可変入賞球装置開放時信号「0111」が送られてきたときには、MPU90は、ROM90a内に記憶された図13に示すT2時間(例えば、3秒)/1周期の消灯・点灯パターンデータに基づいてLED12...を表示駆動」し、「T2時間周期のパターンを5回繰り返す」ことが記載されている。
上記オ【図13】の図示内容から、「遊技状態」が「可変入賞口開放時」(4ビット信号「0111」)の場合には、「T2時間」を1周期とした「10101010」の消灯・点灯パターンデータに基づいてLED12が表示駆動されることが読み取れる。
そうすると、引用文献1には、
「遊技制御回路基板56から枠制御回路基板61に送られる4ビットの信号は、通常時には「0000」、リーチ時には「0010」、可変入賞球装置の開放時には「0111」であり、
上記枠制御回路基板61のMPU90は、ROM90a内に記憶された複数の表示データの中から上記4ビットの信号の種類に対応する表示データを表示データプログラムにしたがって選択し、
上記MPU90は、LED駆動回路98に対して、
リーチ時の場合は、T1時間(5秒)を1周期とした「001001001」の消灯・点灯パターンデータ(「0」は消灯、「1」は点灯を示している)を2回繰り返して約10秒間、表示駆動信号として出力し、
可変入賞球装置の開放時の場合は、T2時間(3秒)を1周期とした「10101010」の消灯・点灯パターンデータ(「0」は消灯、「1」は点灯を示している)を5回繰り返して約15秒間、表示駆動信号として出力すること」が記載されているといえる。

(エ)上記アの【0020】には、「パチンコ遊技機1」が記載されている。

キ 上記(ア)?(エ)の認定事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(a?hは引用発明の構成を分説するため当審で付した。)

[引用発明]
「a 遊技制御回路基板56から導出される各種の遊技状態に応じた4ビットの遊技態様信号が枠制御回路基板61に入力されると、各遊技状態に対応して表示駆動される、枠制御回路基板61に接続された報知用機器であるLED12と、

b 上記枠制御回路基板61のMPU90に接続され、上記LED12を駆動するLED駆動回路98と、
を備え、

d、e 上記4ビットの遊技態様信号は、通常時には「0000」、リーチ時には「0010」、可変入賞球装置の開放時には「0111」であり、
上記MPU90は、ROM90a内に記憶された複数の表示データの中から上記4ビットの遊技態様信号の種類に対応する表示データを表示データプログラムにしたがって選択し、
上記MPU90は、上記LED駆動回路98に対して、
リーチ時の場合は、T1時間(5秒)を1周期とした「001001001」の消灯・点灯パターンデータ(「0」は消灯、「1」は点灯を示している)を2回繰り返して約10秒間、表示駆動信号として出力し、
可変入賞球装置の開放時の場合は、T2時間(3秒)を1周期とした「10101010」の消灯・点灯パターンデータ(「0」は消灯、「1」は点灯を示している)を5回繰り返して約15秒間、表示駆動信号として出力する、
h パチンコ遊技機1。」

2 引用文献2の記載
引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

ア 「[3-2?1(a).演算処理部]
【0061】
演算処理部111acは、図6に示すように、種々の演算処理の他に、出力ポート111aopに出力するデータ(後述するラッチ信号LAT及び切替信号MODE)を作成してセットし、シリアル送信部111atにシリアル出力するデータ(後述する駆動データDAT)を作成してセットする。なお、演算処理部111acは、出力ポート111aop及びシリアル送信部111atの種々の状態を表す信号をセットしたり又は読み込む。」

イ 「[3-2-1(b).シリアル送信部]
【0062】
シリアル送信部111atは、図6に示すように、演算処理部111acから受け取ったデータを駆動データDATとして、転送クロックCLKと同期して、ランプ駆動基板112にシリアル出力する。この駆動データDATは、演出ランプ44a?44dをON(点灯)する演出ランプ用ON/OFFデータと、階調ランプ49a,49bの輝度を階調する階調データと、階調ランプ49a,49bをON(点灯)する階調ランプ用ON/OFFデータと、から構成されている。なお、本実施形態では、駆動データDATは2ミリ秒(ms)の定時間タイマ割込処理時間ごとに更新されている。この定時間タイマ割込処理時間内に駆動データは、転送クロックCLKと同期して、シリアル送信部111atからランプ駆動基板112にシリアル出力される。転送クロックCLKの速さとしては250キロヘルツ(kHz)に設定されており、1周期が4マイクロ秒(μs)、パルス幅が2μsとなり、駆動データDATのデータ幅がパルス幅と同じ2μsとなる。」

ウ 「[3-2-2.ランプ駆動基板]
【0065】
ランプ駆動基板112は、図6に示すように、サブ統合基板111からシリアル出力された駆動データDATのうち、演出ランプ用ON/OFFデータを取り込むシフトレジスタ112h,112iと、階調データ及び階調ランプ用ON/OFFデータを取り込む階調制御IC112gと、を備えている。シフトレジスタ112h,112i及び階調制御IC112gは、デイジーチェーン接続、つまり数珠繋ぎに接続されており、サブ統合基板111からシリアル出力された階調データ及び階調ランプ用ON/OFFデータは、シフトレジスタ112h,112iを介して、階調制御IC112gに取り込まれる。」

エ 「[3-2-2(a).シフトレジスタ]
【0066】
シフトレジスタ112h,112iは、図6に示すように、サブ統合基板111からシリアル出力された駆動データDATのうち演出ランプ用ON/OFFデータを取り込む。そして、サブ統合基板111から出力されたラッチ信号LATが入力されると、このラッチ信号LATを契機として、取り込んだ演出ランプ用ON/OFFデータであるシリアルデータをパラレルデータに変換し、パラレル信号を駆動信号として演出ランプ44a?44dにそれぞれ出力する。演出ランプ44a?44dは、この駆動信号に応じてそれぞれ点灯する。」

オ 上記ア?エの記載事項を総合すれば、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用文献2記載事項]
「サブ統合基板111の演算処理部111acは、シリアル送信部111atにシリアル出力するデータを作成してセットし、(ア【0061】)
サブ統合基板111のシリアル送信部111atは、演算処理部111acから受け取ったデータを演出ランプ44a?44dをON(点灯)する演出ランプ用ON/OFFデータを含む駆動データDATとして、ランプ駆動基板112にシリアル出力し、(イ【0062】)
ランプ駆動基板112のシフトレジスタ112h,112iは、駆動データDATのうち演出ランプ用ON/OFFデータを取り込み、取り込んだシリアルデータをパラレルデータに変換して駆動信号として演出ランプ44a?44dにそれぞれ出力し、(ウ【0065】、エ【0066】)
演出ランプ44a?44dは、この駆動信号に応じてそれぞれ点灯する、
(エ【0066】)
遊技機において、
上記駆動データDATは、2ミリ秒(ms)の定時間タイマ割込処理時間ごとに更新され、(イ【0062】)
上記定時間タイマ割込処理時間内に駆動データDATはシリアル送信部111atからランプ駆動基板112にシリアル出力されるようにしたこと。(イ【0062】)」


第5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
なお、見出しは(a)?(h)とし、引用発明の分説に対応させている。

(a)引用発明の「LED12」は、発光素子であり、「各遊技状態に対応して表示駆動される」「報知用機器」であるところ、発光することで遊技状態に応じた遊技に関する報知を行うものであるといえるから、本願発明の「発光することで遊技に関する報知を行う発光素子」に相当する。
したがって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

(b)引用発明の「LED駆動回路98」は、「上記LED12を駆動」して発光させるものであるから、引用発明の「LED駆動回路98」は、本願発明の「当該発光素子を発光させる駆動手段」に相当する。
したがって、引用発明の構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

(d)引用発明の「4ビットの遊技態様信号」は、構成aより「LED12」を「表示駆動」するための信号であって、「通常時には「0000」、リーチ時には「0010」、可変入賞球装置の開放時には「0111」であり」、「通常時」、「リーチ時」、「可変入賞球装置の開放時」などの遊技の状況に応じて信号の種類を異ならせているから、引用発明の「4ビットの遊技態様信号の種類に対応する表示データ」は、本願発明の「駆動データ」に相当する。
また、引用発明の「表示駆動信号」は、「リーチ時の場合は、T1時間(5秒)を1周期とした「001001001」の消灯・点灯パターンデータ(「0」は消灯、「1」は点灯を示している)を2回繰り返して約10秒間」出力され、「可変入賞球装置の開放時の場合は、T2時間(3秒)を1周期とした「10101010」の消灯・点灯パターンデータ(「0」は消灯、「1」は点灯を示している)を5回繰り返して約15秒間」出力されるものであるところ、これらの消灯・点灯パターンは、消灯を示す「0」に対応する消灯駆動信号(以下、「「0」信号」という。)、点灯を示す「1」に対応する点灯駆動信号(以下、「「1」信号」という。)が時系列に連なっているものと見ることができるから、引用発明の「表示駆動信号」の構成要素である「0」信号及び「1」信号は、本願発明の「駆動信号」に相当する。
さらに、引用発明では、遊技の状況が「リーチ時」であるか「可変入賞球装置の開放時」であるかに応じて異なるように定められた信号パターンを、異なる周期で異なる時間分、「表示駆動信号」として出力するものであるから、引用発明においても、本願発明と同様に、駆動データ(4ビットの遊技態様信号の種類に対応する表示データ)に基づいて、遊技の状況に応じて(リーチ時、可変入賞球装置の開放時)、予め定められた駆動信号(「0」信号、「1」信号)を出力しているといえる。
そして、引用発明の「4ビットの遊技態様信号の種類に対応する表示データ」は、「MPU90」が「選択」するものであり、引用発明の「表示駆動信号」(「0」信号、「1」信号を含む)は、「MPU90」が「LED駆動回路98に対して」「出力」するものであるから、引用発明の「MPU90」は、本願発明の「前記駆動データに基づいて、遊技の状況に応じて前記駆動手段に対して予め定められた駆動信号を出力する駆動信号出力手段」としての機能を有するものである。
したがって、引用発明の構成dは、本願発明の構成Dに相当する。

(e)引用発明の「表示駆動信号」の構成要素である「0」信号及び「1」信号の時間幅について、リーチ時の場合は、その消灯・点灯パターンデータは「001001001」であり、「0」信号及び「1」信号の個数は9個あり、1周期T1=5秒であるから、1個の信号当たり0.555秒(5秒/9個)の時間幅を有すると見積もることができ、可変入賞球装置の開放時の場合は、消灯・点灯パターンデータは「10101010」であり、「0」信号及び「1」信号の個数は8個あり、1周期T2=3秒であるから、1個の信号当たり0.375秒(3秒/8信号)の時間幅を有すると見積もることができ、いずれにしても概ね数百ミリ秒であるといえる。
そうすると、引用発明では、「表示駆動信号」の構成要素である「1」信号は、点灯駆動信号として概ね数百ミリ秒の期間だけ出力されており、それに基づいて「LED12」が発光しているといえる。
そして、引用発明の「表示駆動信号」(「0」信号、「1」信号を含む)は、「MPU90」が「LED駆動回路98に対して」「出力」するものであるから、引用発明の「MPU90」は、「1」信号が所定の期間(概ね数百ミリ秒)だけ出力されていることに基づいて、発光素子(LED12)が発光するように駆動手段(LED駆動回路98)を制御する駆動制御手段としての機能を有するものであるといえる。
したがって、本願発明の構成Eと引用発明の構成eとは、「前記駆動信号が所定の期間だけ出力されていることに基づいて、前記発光素子が発光するように前記駆動手段を制御する駆動制御手段」を備える点で共通する。

(h)引用発明の構成hである「パチンコ遊技機1。」は、本願発明の構成Hである「遊技機。」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「A 発光することで遊技に関する報知を行う発光素子と、
B 当該発光素子を発光させる駆動手段と、
D 前記駆動データに基づいて、遊技の状況に応じて前記駆動手段に対して予め定められた駆動信号を出力する駆動信号出力手段と、
E’ 前記駆動信号が所定の期間だけ出力されていることに基づいて、前記発光素子が発光するように前記駆動手段を制御する駆動制御手段と、
を備えた、
H 遊技機。」
である点で一致し、以下の相違点1?4で相違する。

[相違点1]
本願発明は、「予め定められた特定周期で実行される定期処理にて所定の駆動データを更新する駆動データ更新手段」(構成C)を備えるのに対して、引用発明はそのような構成を備えるものであるか明らかではない点。

[相違点2]
「前記駆動信号が所定の期間だけ出力されていることに基づいて、前記発光素子が発光するように前記駆動手段を制御する駆動制御手段」に関し、本願発明は、「前記駆動信号が前記特定周期よりも長い所定の期間だけ出力されている」(構成E)と特定しているのに対して、引用発明は、そのような特定がされていない点。

[相違点3]
本願発明は、「前記駆動信号出力手段は、前記発光素子を発光させる期間よりも長い期間継続して前記駆動信号を出力可能であって、当該駆動信号の出力を前記発光を停止させるべきタイミングに合わせて停止するもの」(構成F)であるのに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

[相違点4]
本願発明は、「前記駆動信号出力手段からの前記駆動信号の出力が停止された場合に、前記発光を停止させる停止処理が実行される」(構成G)のに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。


第6 判断
上記相違点1?4について検討する。
1 相違点1及び2について
上記相違点1及び2は、「特定周期」において関連しているので、以下ではまとめて検討する。
引用文献2記載事項の「駆動データDAT」は、「演出ランプ44a?44dをON(点灯)する演出ランプ用ON/OFFデータを含む」ものであるから、本願発明の「所定の駆動データ」に相当する。
また、引用文献2記載事項の「駆動データDAT」は、「2ミリ秒(ms)の定時間タイマ割込処理時間ごとに更新され」、「上記定時間タイマ割込処理時間内」に「ランプ駆動基板112」に出力されるところ、この「2ミリ秒(ms)の定時間タイマ割込処理時間」は、本願発明の「予め定められた特定周期」に相当し、「定時間タイマ割込処理」は、本願発明の「定期処理」に相当するから、引用文献2記載事項の「上記駆動データDATは、2ミリ秒(ms)の定時間タイマ割込処理時間ごとに更新され」ることは、本願発明の「予め定められた特定周期で実行される定期処理にて所定の駆動データを更新する」ことに相当する。
そして、引用文献2記載事項の「駆動データDAT」の「更新」は、「サブ統合基板111」において行われており、この「サブ統合基板111」は、本願発明の「駆動データ更新手段」に相当する。
ここで、引用発明と上記引用文献2記載事項とは、遊技機が備える発光素子の発光駆動に関する技術であるという点で共通しており、引用発明の「パチンコ遊技機1」においても、明示はされていないものの技術常識からみて、「枠制御回路基板61」において所定の周期で割込処理を実行しているか、メイン処理により直接実行しているかのいずれであるから、上記引用文献2記載事項の「駆動データDATは、2ミリ秒(ms)の定時間タイマ割込処理時間ごとに更新され」ることを引用発明に適用して、「4ビットの遊技態様信号の種類に対応する表示データ」の更新を割込処理により実行し、当該割込処理により駆動データを更新するように構成することに格別の困難性はない。
その際、上記「第5 対比」の(e)において検討したとおり、引用発明の「表示駆動信号」の構成要素である「0」信号及び「1」信号の時間幅は概ね数百ミリ秒であるから、数ミリ秒という割込処理の周期と比べて「長い期間」、駆動信号が出力されていることになるのは明らかである。
したがって、上記引用文献2記載事項を引用発明に適用して、上記相違点1に係る本願発明の構成Cとすること、及び、上記相違点2に係る本願発明の構成Eとすることは、当業者が容易になし得たことである。


2 相違点3及び4について
上記相違点3及び4は、いずれも、駆動信号の出力停止と発光素子の発光停止との関係を含むという点において関連しているので、以下ではまとめて検討する。
まず、上記相違点3に係る本願発明の構成Fは、「前記駆動信号出力手段は、前記発光素子を発光させる期間よりも長い期間継続して前記駆動信号を出力可能であって、当該駆動信号の出力を前記発光を停止させるべきタイミングに合わせて停止するもの」であり、これは、駆動信号の出力期間を発光素子の発光期間よりも長くするという要件を、駆動信号の出力停止タイミングと発光素子の発光停止タイミングとを合わせるという条件の下で満たすことを規定したものと解することができる。
かかる条件の下で上記要件を満たすためには、駆動信号の出力開始タイミングよりも発光素子の発光開始タイミングを遅らせる必要があるから、結局、上記構成Fは、駆動信号の出力開始タイミングよりも発光素子の発光開始タイミングを遅らせ、かつ、駆動信号の出力停止タイミングと発光素子の発光停止タイミングとを合わせることを規定したものに他ならない。
そして、開始タイミングと停止タイミングは、それぞれ信号波形の立ち上がり時点と立ち下がり時点として別個に分けることが可能であり、互いに影響することなく設定可能なものであるから、以下に示すように、駆動信号と発光の開始タイミング、及び、駆動信号と発光の停止タイミングに分けて検討を行う。


駆動信号と発光の開始タイミングについて、ノイズ吸収回路(積分回路)などの時定数回路を用いて、発光素子の発光開始タイミングを駆動信号の出力開始タイミングよりも所定時間遅延させることにより、外部からのノイズを吸収してその影響を除去することは、例えば、上記引用文献4及び5に記載されているように本願優先日前に周知である。
(例えば、上記引用文献4の「2.特許請求の範囲」、第1頁右下欄第3?5行、第2頁左上欄第9行?右上欄第12行、第2頁左下欄第8行?右下欄第3行、第2図、第3図には、外部機器の接点(4)が第3図(a)に示すように時刻t_(1)にてオフ状態からオン状態に変化して、外部入力信号がインターフェース装置(1)に入力された場合、LED駆動回路(9)に入力される入力電圧V_(B)は、第3図(c)に示すように、抵抗(7)及びコンデンサ(8)によって決まる時定数で5[V]から0[V]に向かって緩やかに変化し、入力電圧V_(B)が閾値V_(th)に下がった時刻t_(2)において、LED駆動回路(9)の出力V_(C)は、第3図(d)に示すように5[V]から0[V]にステップ状に変化して、LEDの点灯を時刻t_(1)よりも遅延させて時刻t_(2)にて行うことにより、外部からのパルス状のノイズが入力された場合でも、このノイズの内部制御回路への入力を防ぐことが記載されており、
上記引用文献5の第2頁第6?10行、第4頁第5行?第5頁第5行、第5頁第16行?第6頁第4行、第8頁第12行?第9頁第1行、第4図、第6図(a)、(b)、(c)には、スイッチ手段11からのコード信号が、抵抗R_(3)及びコンデンサCで決められる時定数を有する積分回路(遅延回路)13によって積分され、さらに波形整形回路14で波形整形され、デコーダ15、16を介してデイジタル表示器17、18に供給されるポジションコーダにおいて、第6図(a)に示されている不正規信号S_(2)は、正規信号S_(1)と共に積分回路13によって積分され(第6図(b)の波形)、さらに波形整形回路14で波形整形されることにより(第6図(c)の波形)、ノイズの影響が除去されてディジタル表示器17、18に供給されることが記載されており、第6図の(a)と(c)に示された波形を比較すると、第6図(a)の不正規信号S_(2)の立ち上がり時点よりも、第6図(c)の整形波形の立ち上がり時点は遅延していることが読み取れる。)
(以下、「周知技術1」という。)


また、駆動信号と発光の停止タイミングについて、駆動信号の出力を停止するタイミングと発光素子の発光を停止するタイミングを合わせることにより、適切なタイミングで発光を停止させ遊技者に誤解を与えないようにすることは、上記引用文献3の他にも例えば、特開2010-15883号公報、特開2005-269051号公報、特開2007-88210号公報及び特開2005-211419号公報などに記載されているように本願優先日前に周知であり、これらの周知例では、いずれも、駆動信号の出力が停止された場合に、発光素子の発光を停止させる停止処理を実行している。
(上記引用文献3の第4頁左上欄第8?11行、第4頁右下欄第6行?第5頁左上欄第4行、第1?3図には、発光ダイオード2と並列に接続されたトランジスタ13を有し、消光時に立下り時間短縮回路6のトランジスタ13をオン動作させることにより、発光ダイオード2が瞬時に消光し光パルス出力の立下り時間が大幅に短縮される発光ダイオード駆動回路が記載されており、発光ダイオード2の駆動を停止するタイミングと発光ダイオード2の発光を停止するタイミングを合わせているといえる。そして、「消光時に立下り時間短縮回路6のトランジスタ13をオン動作させること」が「停止処理」に相当する。
特開2010-15883号公報の段落【0047】?【0058】、【図1】、【図3】には、端子11に入力される点灯制御信号V_(con)の電圧がハイレベルからローレベルへ変化すると、入力スイッチ回路4のFETQ4はオフし、出力スイッチ回路5のFETQ5はオンし、昇圧回路7の出力電流I_(0)が急速に減少するとともに、LED群101の駆動電流がただちに失われ、LED群101はただちに消灯することが記載されており、特に、【図3】の図示内容から、点灯制御信号V_(con)がハイレベルからローレベルになる時点Teにおいて、出力電流I_(0)も0になっていることが読み取れるから、駆動信号の出力を停止するタイミングとLED群101の発光を停止するタイミングをTeに合わせているといえる。そして、「入力スイッチ回路4のFETQ4はオフし、出力スイッチ回路5のFETQ5はオン」することが「停止処理」に相当する。
特開2005-269051号公報の段落【0016】?【0017】、【図1】、【図2】には、発光ダイオードD1への電流をオン・オフするドライバであるPNPトランジスタTr1の駆動電圧Vi1がVonからVccに変化したときに、トランジスタTr1がオフし、発光ダイオードD1がオフして消灯する際に、NPNトランジスタTr2をオンして発光ダイオードD1のアノードとカソード間に閉ループを構成し、発光ダイオードD1に蓄積された電荷を放電させることにより、発光ダイオードのオフを高速に行うことが記載されており、特に、【図2】の図示内容から、駆動電圧Vi1がVonからVccに変化したタイミングと発光ダイオードD1が消灯(Off)するタイミングを合わせていることが読み取れる。そして、「NPNトランジスタTr2をオンして発光ダイオードD1のアノードとカソード間に閉ループを構成し、発光ダイオードD1に蓄積された電荷を放電させること」が「停止処理」に相当する。
特開2007-88210号公報の段落【0073】?【0078】、【図9】?【図10】、【0079】?【0086】、【図11】?【図13】には、パチンコ遊技機において、消灯信号入力端子T_(in2)に信号が入力されると、第1の電流制御回路20のトランジスタTr_(3)のベースに印加される電圧V8は、消灯信号入力端子T_(in2)からの信号に支配され、消灯信号入力端子T_(in2)からの信号がHになったタイミングでLED4は消灯することが記載されており、LED4の駆動を停止するタイミングとLED4の発光を停止するタイミングを合わせているといえる。そして、「消灯信号入力端子T_(in2)に信号が入力されると、第1の電流制御回路20のトランジスタTr_(3)のベースに印加される電圧V8は、消灯信号入力端子T_(in2)からの信号に支配され、消灯信号入力端子T_(in2)からの信号がH」とすることが「停止処理」に相当する。
特開2005-211419号公報の段落【0066】?【0075】、【図6】、【図8】には、パチンコ遊技機において、パチンコ台制御部15からの制御信号に基づいて、入力部105のスイッチSW2のオン/オフによりLED32の連続発光を制御する際、スイッチSW2をオフとした時点t2においてLED32が消灯することが記載されており、LED32の駆動を停止するタイミングとLED32の発光を停止するタイミングをt2に合わせているといえる。そして、「スイッチSW2をオフ」することが「停止処理」に相当する。)
(以下、「周知技術2」という。)


ここで、引用発明と上記周知技術1及び2とは、いずれも発光素子の発光駆動に関する技術である点で共通している。
そして、ノイズによる発光素子の誤作動に伴う遊技者の混乱を防止すること、及び、適切なタイミングで発光素子の発光を停止させ遊技者に誤解を与えないようにすることは、いずれも遊技機の分野においては自明の課題である。
そうすると、上記(1)及び(2)において検討したことを踏まえると、引用発明において、ノイズ信号による悪影響を防止するために上記周知技術1を適用して、駆動信号の出力を開始するタイミングよりもLED12の発光を開始するタイミングをノイズ吸収回路(積分回路)により遅延させるとともに、適切なタイミングでLED12の発光を停止させるために上記周知技術2を適用して、駆動信号の出力を停止するタイミングとLED12の発光を停止するタイミングを合わせ、LED12の発光を停止させる停止処理が実行されるようにすることは、格別のことではなく、それにより、駆動信号がLED12を発光させる期間よりも長い期間継続して出力され、かつ、当該駆動信号の出力が発光を停止させるべきタイミングに合わせて停止され、その場合に、発光を停止させる停止処理が実行されるようになるのは明らかである。
したがって、上記相違点3に係る本願発明の構成Fとすること、及び、上記相違点4に係る本願発明の構成Gとすることは、当業者が容易になし得たことである。

なお、上記(2)のイで例示した周知例である特開2010-15883号公報の【図3】には、点灯制御信号V_(con)がハイレベルである期間(駆動信号出力期間)は、出力電流I_(0)がハイレベルである期間(発光期間)よりも長く継続しており、かつ、点灯制御信号V_(con)がハイレベルからローレベルになる時点Teにおいて、駆動信号の出力を停止するタイミングと発光を停止するタイミングを合わせていることが読み取れる。
すなわち、駆動信号の出力期間を発光素子の発光期間よりも長くするという要件を、駆動信号の出力停止タイミングと発光素子の発光停止タイミングとを合わせるという条件の下で満たすような駆動信号自体は周知であって、格別のものであるとはいえない。


3 請求人の主張について
請求人は、平成30年11月26日に提出された意見書において、
「(2)拒絶理由に対する意見
本願の補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)と、引用文献1-3に記載の発明とを対比すると、本願発明が「前記駆動信号出力手段は、前記発光素子を発光させる期間よりも長い期間継続して前記駆動信号を出力可能であって、当該駆動信号の出力を前記発光を停止させるべきタイミングに合わせて停止するものであり、前記駆動信号の出力が停止された場合に、前記発光を停止させる停止処理が実行される」という特徴的構成を備えているのに対し、引用文献1-3に記載の発明がそのような構成を備えていない点で相違する(以下、「相違点」という)。
時定数回路等に委ねるのみでは発光手段の消灯タイミングが不安定になり、遊技者の誤解を招く懸念があるところ、上記相違点に係る構成は、ノイズによる誤発光の回避と適切なタイミングでの発光手段の消灯とを両立させるにはどうしらよいか、また、そのような課題を簡単な構成で解決するにはどうしたらよいか、という新たな課題に着目し、創意工夫の結果、導出されたものである。
そして、上記相違点に係る構成では、発光手段を発光させる期間よりも長い期間に亘って出力されるとともに、その出力が発光手段の発光を停止させるべきタイミングで停止されるという特殊な駆動信号を生成し、そのような駆動信号の出力停止タイミングで停止処理を実行して発光手段を消灯させるものとなっている。この場合、発光手段の発光タイミングのみが遅延され、消灯タイミングについては上記駆動信号により制御することができる。これにより、遅延処理による発光手段の消灯タイミングのゆれを排除し、適切なタイミングでの消灯を実現することができる。よって、消灯タイミングのずれによる遊技者の誤解を抑制し、意図するゲーム性を好適に伝えることが可能になる。その際、上記駆動信号は、発光手段を発光させる期間よりも長い期間に亘って出力されるため、発光手段を発光させるべき期間に対して実際の発光期間が短くなることも回避できる。
加えて、本構成では、発光手段を消灯させる停止処理の実行タイミングを駆動信号そのものによって制御することができるため、駆動信号とは別の上記実行タイミングを制御するための構成を省略することができる。よって、構成や処理が複雑化することを抑制できる。
このように、本願発明の上記相違点に係る構成によれば、ノイズによる誤発光を回避することと、適切なタイミングで発光手段を消灯させることとの両立を好適に図ることができ、しかも、そのような構成を比較的簡単な構成によって実現することが可能になる。
ところが、引用文献1では、LEDの誤発光を防止するためのノイズ除去回路として整流器101及びフォトカプラー102を備えることに留まり、引用文献2には、定期処理によってLEDの発光制御を行うことが記載されている程度である。また、引用文献3は、光通信に用いられる赤色LEDに関し、応答性が低いという特性を踏まえ、駆動信号のレベル変化に対するLEDのオン/オフの追従性を高めたものでしかない。
このため、拒絶理由通知書でのご指摘のように、引用文献1の駆動信号に周知技術を適用して駆動信号を遅延させる遊技機の構成を獲得し、さらにその構成に引用文献3を適用したとしても、遅延処理後の駆動信号に対してLEDが迅速に追従して消灯する構成が得られる程度である。これでは、依然としてLEDの消灯タイミングが遅延の影響を受けるため、本願発明のように、ノイズによる誤発光を回避しつつ適切なタイミングで発光手段を消灯させることはできない。そればかりか、その出力期間が発光手段を発光させる期間よりも長く、発光手段を消灯させるべきタイミングで出力が停止するという本願発明の特殊な駆動信号についても得ることができない。
加えて、上記各引用文献には、本願発明の上記新たな課題について一切記載されておらず、その示唆もなされていない。
このように本願発明と引用文献1-3に記載された発明とは構成が全く相違するとともに、これらの引用文献のいずれにもその相違点を埋め合わせるだけの動機付けとなる記載が存在しない。よって、上記各引用文献に接した当業者が本願発明の上記相違点に係る構成を導出することは不可能であり、本願発明が所謂進歩性を備えないとする合理的理由がないと確信する。」
と主張している(下線は、当審で付した。)。

しかしながら、請求人の主張における上記「相違点」については、上記2において述べたように、(1)駆動信号と発光の開始タイミング、及び、(2)駆動信号と発光の停止タイミングに分けて検討をしたところ、上記周知技術1及び上記周知技術2を引用発明に適用することにより、駆動信号の出力開始タイミングよりも発光素子の発光開始タイミングをノイズ吸収回路(積分回路)により遅らせ、かつ、駆動信号の出力停止タイミングと発光素子の発光停止タイミングとを合わせることは、当業者が容易になし得たことであって、それにより、駆動信号の出力期間を発光素子の発光期間よりも長くするという要件を、駆動信号の出力停止タイミングと発光素子の発光停止タイミングとを合わせるという条件の下で満たすことが可能となるのであるから、上記「相違点」に係る構成を得ることは当業者ならば格別の困難性はないというべきである。

また、駆動信号の出力開始タイミングよりも発光素子の発光開始タイミングを遅延させて、発光手段を発光させる期間よりも長い期間に亘って駆動信号が出力されるとともに、その出力が発光手段の発光を停止させるべきタイミングで停止されるという駆動信号自体は、上述のとおり特開2010-15883号公報の【図3】にも示されているように周知であるから、とりわけ特殊なものであると評することはできない。

さらに、ノイズによる誤発光の回避と適切なタイミングでの発光手段の消灯とを両立させるという課題についても、駆動回路を用いた発光素子の発光技術において、それぞれが個別に広く知られた自明な課題であり、それら自明な課題の単なる組合せを課題として設定したにすぎないというべきであって、格別新たなものであるとはいえない。

そして、本願発明の奏する効果についても、引用発明、上記引用文献2記載事項及び上記周知技術1?2から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできないから、請求人の上記主張を採用することはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、上記引用文献2記載事項及び上記周知技術1?2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-11 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2015-98960(P2015-98960)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 尾崎 俊彦  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 濱野 隆
牧 隆志
発明の名称 遊技機  
代理人 山田 強  

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