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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1351288
審判番号 不服2018-5467  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-20 
確定日 2019-05-09 
事件の表示 特願2013-183600「撮像素子および撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月16日出願公開、特開2015- 50446〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は平成25年9月5日の出願であって、平成28年12月22日付けで拒絶理由通知が通知され、平成29年2月9日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月30日付けで最後の拒絶理由通知が通知され、同年8月17日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年1月15日付けで平成29年8月17日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成30年4月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものであり、本願の請求項に係る発明は、平成29年2月9日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
入射光を電荷に変換する第1の光電変換部と、
前記第1の光電変換部を透過した光を電荷に変換する第2の光電変換部と、
前記第1および第2の光電変換部を透過した光を電荷に変換する第3の光電変換部と、
前記第1、第2および第3の光電変換部を透過した光を反射する入射光反射部と、
前記第1および第2の光電変換部の間において第1の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第1の電荷読出し回路と、
前記第2および第3の光電変換部の間において前記第2の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第2の電荷読出し回路と、
前記第3の光電変換部と前記入射光反射部との間において前記第3の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第3の電荷読出し回路と
を具備する撮像素子。」

2 引用例の記載と引用発明
(1)引用例1:特開2011-129873号公報
ア 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-129873号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある(下線は、当審による。以下、同じ。)。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置およびその製造方法、電子機器に関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
…(略)…
【0030】
たとえば、図8の場合には、画素に入射した入射光に含まれる青色成分の光は、最上層の青色用光電変換部201BJで正確に受光される。しかし、緑色成分および赤色成分の光は、緑色用光電変換部201GJと赤色用光電変換部201RJとが下層側にあるので、入射した画素で受光されずに、隣の画素において受光される場合がある。この現象は、上記においては、赤色用光電変換部201RJが最下層に設けられているので、赤色成分の光に関して顕著に生ずる。そして、これに伴って、撮像画像の画像品質の低下などの不具合が生ずる場合がある。
【0031】
したがって、本発明は、撮像画像の画像品質を向上可能な、固体撮像装置およびその製造方法、電子機器を提供する。
…(略)…
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、製造効率等の向上が可能であって、撮像画像の画像品質を向上可能な、固体撮像装置およびその製造方法、電子機器を提供することができる。」

「【0045】
(A-2)固体撮像装置の要部構成
固体撮像装置1の全体構成について説明する。
【0046】
図2は、本発明にかかる実施形態において、固体撮像装置1の全体構成を示すブロック図である。
【0047】
本実施形態の固体撮像装置1は、CMOS型イメージセンサーであり、図2に示すように、基板101を含む。この基板101は、たとえば、シリコンからなる半導体基板であり、図2に示すように、基板101の面においては、撮像領域PAと、周辺領域SAとが設けられている。
【0048】
撮像領域PAは、図2に示すように、矩形形状であり、複数の画素Pが水平方向xと垂直方向yとのそれぞれに、配置されている。つまり、画素Pがマトリクス状に並んでいる。そして、この撮像領域PAは、図1に示した撮像面PSに相当する。画素Pの詳細については、後述する。
【0049】
周辺領域SAは、図2に示すように、撮像領域PAの周囲に位置している。そして、この周辺領域SAにおいては、周辺回路が設けられている。
【0050】
具体的には、図2に示すように、垂直駆動回路13と、カラム回路14と、水平駆動回路15と、外部出力回路17と、タイミングジェネレータ18と、シャッター駆動回路19とが、周辺回路として設けられている。
…(略)…
【0057】
上記の各部は、行単位にて並ぶ複数の画素Pについて同時に駆動させる。
具体的には、上述した垂直駆動回路13によって供給される選択信号によって、画素Pが、水平ライン(画素行)単位で垂直方向yに、順次、選択される。そして、タイミングジェネレータ18から出力される各種タイミング信号によって各画素Pが駆動する。これにより、各画素Pから出力された電気信号が、垂直信号線27を通して、画素列ごとに、カラム回路14に読み出される。そして、カラム回路14にて蓄積された信号が、水平駆動回路15によって選択されて、外部出力回路17へ、順次、出力される。」

「【0058】
(A-3)固体撮像装置の詳細構成
本実施形態にかかる固体撮像装置1の詳細内容について説明する。
【0059】
図3は、本発明にかかる実施形態において、固体撮像装置の要部を示す図である。ここで、図3は、撮像領域PAの断面を示している。
【0060】
固体撮像装置1は、図3に示すように、「光電変換膜積層型」のCMOS型イメージセンサーであって、基板101の撮像面の上方において、複数の光電変換部201R,201G,201Bが積層するように設けられている。そして、基板101の撮像面において、これらの複数の光電変換部201R,201G,201Bのそれぞれの下方には、読出し回路部202R,202G,202Bが設けられている。
【0061】
本実施形態において、固体撮像装置1は、赤色用光電変換部201Rと、緑色用光電変換部201Gと、青色用光電変換部201Bとを含む。この他に、固体撮像装置1は、赤色用読出し回路部202Rと、緑色用読出し回路部202Gと、青色用読出し回路部202Bとを含む。
【0062】
図3に示すように、固体撮像装置1を構成する各部は、たとえば、シリコン半導体からなる基板101上に、設けられている。
【0063】
具体的には、図3に示すように、赤色用読出し回路部202Rと、赤色用光電変換部201Rとが、基板101の上面に、順次、積層するように設けられている。そして、この上面に、緑色用読出し回路部202Gと、緑色用光電変換部201Gとが、順次、積層するように設けられている。そして、さらに、この上面に、青色用読出し回路部202Bと、青色用光電変換部201Bとが、順次、積層するように設けられている。
【0064】
図4と図5は、本発明にかかる実施形態において、緑色用光電変換部201Gと緑色用読出し回路部202Gとの部分を示す図である。
【0065】
ここで、図4は、緑色用光電変換部201Gと緑色用読出し回路部202Gとの部分を模式的に拡大して示す断面図である。また、図5は、緑色用光電変換部201Gと緑色用読出し回路部202Gの回路構成を示す画素回路図である。
【0066】
緑色用光電変換部201Gは、図4と図5とに示すように、緑色用有機光電変換膜210Gと、画素電極211Gと、共通電極212Gとを含み、画素電極211Gと緑色用有機光電変換膜210Gと共通電極212Gとが上方に順次積層されている。
【0067】
緑色用光電変換部201Gにおいて、緑色用有機光電変換膜210Gは、入射光に含まれる緑色成分の光を吸収して、光電変換することによって、信号電荷を生成するように構成されている。また、緑色用有機光電変換膜210Gは、入射光に含まれる緑色成分以外の光については、透過するように構成されている。たとえば、キナクリドン類などの多環式系有機顔料を用いて、緑色用有機光電変換膜210Gを形成する。
【0068】
図4に示すように、緑色用有機光電変換膜210Gは、緑色用読出し回路部202Gの上方に設けられている。そして、緑色用有機光電変換膜210Gは、図4と図5とに示すように、画素電極211Gと共通電極212Gとによって挟まれている。
【0069】
緑色用光電変換部201Gにおいて、画素電極211Gと共通電極212Gとのそれぞれは、透明電極であって、光が透過するように構成されている。たとえば、画素電極211Gと共通電極212Gは、たとえば、インジウム・スズ酸化物(ITO)などの金属酸化物を、スパッタリング法などの成膜法で成膜することで形成されている。
【0070】
ここでは、画素電極211Gは、複数の画素Pに対応するように複数がギャップ(図示なし)を隔てて配置されている。
【0071】
また、共通電極212Gは、緑色用有機光電変換膜210Gを介して、複数の画素電極211Gに対面しており、撮像領域PAの全体に渡って一体に設けられている。
【0072】
そして、図5に示すように、緑色用光電変換部201Gでは、画素電極211Gが、緑色用読出し回路部202Gに電気的に接続されている。そして、緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷による電気信号が、緑色用読出し回路部202Gにより読み出される。
【0073】
緑色用読出し回路部202Gは、図5に示すように、読出し回路20を含む。
【0074】
読出し回路20は、各画素Pのそれぞれに設けられており、各画素Pにおいて、緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷を、読み出すように構成されている。たとえば、読出し回路20は、複数の画素Pの境界部分に配置されている。
【0075】
本実施形態においては、読出し回路20は、図5に示すように、リセットトランジスタ22と、増幅トランジスタ23と、選択トランジスタ24とを含み、3トランジスタ方式のCMOS信号読出し回路として構成されている。
【0076】
緑色用読出し回路部202Gにおいて、リセットトランジスタ22は、増幅トランジスタ23のゲート電位をリセットするように構成されている。
【0077】
具体的には、リセットトランジスタ22は、図5に示すように、…(略)…
【0080】
そして、図4に示すように、リセットトランジスタ22は、層間絶縁膜SZ2Gで被覆されている。そして、リセットトランジスタ22において、ソース電極225SGは、層間絶縁膜SZ2Gを貫通するコンタクトCTを介して、画素電極211Gに電気的に接続されている。
【0081】
緑色用読出し回路部202Gにおいて、増幅トランジスタ23は、緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷による電気信号を、増幅して出力するように構成されている。
【0082】
具体的には、増幅トランジスタ23は、図5に示すように、ゲートがフローティングディフュージョンFDに接続されている。また、増幅トランジスタ23は、ドレインが電源電位供給線Vddに接続され、ソースが選択トランジスタ24に接続されている。
【0083】
図4では図示を省略しているが、上記の増幅トランジスタ23は、上記のリセットトランジスタ22と同様に、絶縁膜SZ1G上において、たとえば、ボトムゲート型構造のTFTとして構成されている。そして、増幅トランジスタ23は、上述の層間絶縁膜SZ2Gで被覆されている。
…(略)…
【0087】
この他に、本実施形態において、緑色用読出し回路部202Gは、図4に示すように、グラウンド電極230Gを含む。
…(略)…
【0091】
この層間絶縁膜SZ3Gの上面においては、図4に示すように、緑色用光電変換部201Gが設けられている。つまり、画素電極211G、緑色用有機光電変換膜210G、共通電極212Gが、上方へ向かって、順次、積層して設けられている。
【0092】
青色用光電変換部201B,青色用読出し回路部202Bの部分、赤色用光電変換部201R,赤色用読出し回路部202Rの部分についても、上記の緑色用光電変換部201G,緑色用読出し回路部202Gの部分と同様に構成されている。
【0093】
つまり、青色用光電変換部201Bは、青色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光して信号電荷を生成し、青色の波長領域の光以外の他の波長領域の光が透過するように形成されている。青色用読出し回路部202Bは、青色用光電変換部201Bにて生成された信号電荷を読み出すように形成されている。
【0094】
そして、上記の緑色用光電変換部201Gは、青色用光電変換部201B,青色用読出し回路部202Bを介して入射する光のうち、緑色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光し、他の波長領域の光が透過するように形成されている。そして、上述したように、緑色用読出し回路部202Gは、緑色用光電変換部201Gにて生成された信号電荷を読み出すように形成されている。
【0095】
そして、赤色用光電変換部201Rは、緑色用光電変換部201G,緑色用読出し回路部202Gを介して入射する光のうち、赤色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光し、他の波長領域の光が透過するように形成されている。そして、上述したように、赤色用読出し回路部202Rは、赤色用光電変換部201Rにて生成された信号電荷を読み出すように形成されている。
【0096】
このように、本実施形態においては、複数の光電変換部201R,201G,201Bは、基板101の面の上方に設置されたものの方が、下方に設置されたものよりも、低い波長領域の光を受光して光電変換するように設けられている。」

図3?5は、以下のとおりである。


イ 引用発明
したがって、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「「光電変換膜積層型」のCMOS型イメージセンサーであって、
撮像領域PAには、画素Pがマトリクス状に並んでおり、各画素Pから出力された電気信号が、外部出力回路17へ、順次、出力されるものであり、
赤色用読出し回路部202Rと、赤色用光電変換部201Rとが、基板101の上面に、順次、積層するように設けられ、この上面に、緑色用読出し回路部202Gと、緑色用光電変換部201Gとが、順次、積層するように設けられ、さらに、この上面に、青色用読出し回路部202Bと、青色用光電変換部201Bとが、順次、積層するように設けられており、
緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷による電気信号が、緑色用読出し回路部202Gにより読み出され、
緑色用読出し回路部202Gは、読出し回路20を含み、読出し回路20は、増幅トランジスタ23を含み、
緑色用読出し回路部202Gにおいて、増幅トランジスタ23は、緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷による電気信号を、増幅して出力するように構成されており、増幅トランジスタ23は、ゲートがフローティングディフュージョンFDに接続されており、
青色用光電変換部201B,青色用読出し回路部202Bの部分、赤色用光電変換部201R,赤色用読出し回路部202Rの部分についても、上記の緑色用光電変換部201G,緑色用読出し回路部202Gの部分と同様に構成されており、
青色用光電変換部201Bは、青色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光して信号電荷を生成し、青色の波長領域の光以外の他の波長領域の光が透過するように形成され、青色用読出し回路部202Bは、青色用光電変換部201Bにて生成された信号電荷を読み出すように形成されており、
緑色用光電変換部201Gは、青色用光電変換部201B,青色用読出し回路部202Bを介して入射する光のうち、緑色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光し、他の波長領域の光が透過するように形成され、上述したように、緑色用読出し回路部202Gは、緑色用光電変換部201Gにて生成された信号電荷を読み出すように形成されており、
赤色用光電変換部201Rは、緑色用光電変換部201G,緑色用読出し回路部202Gを介して入射する光のうち、赤色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光し、他の波長領域の光が透過するように形成され、赤色用読出し回路部202Rは、赤色用光電変換部201Rにて生成された信号電荷を読み出すように形成されている
固体撮像装置。」

(2)引用例2
同じく原査定に引用され、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、特開2006-270021号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

「【請求項15】
異なる波長域の光に応答する複数の有機光電変換膜と、全ての該有機光電変換膜から見て光入射側とは逆に位置しており、該有機光電変換膜のうち少なくとも一つの膜が吸収する波長域の光の反射率を増加させる光学薄膜とが設けられていることを特徴とする光電変換素子。
…(略)…
【請求項18】
緑の波長域の光に主に応答する有機光電変換膜が光入射側に最も近く設けられ、青・緑・赤の波長域の光のすべての反射率を増加させる光学薄膜を設けたことを特徴とする請求項15?17のいずれかに記載の光電変換素子。」

「【0009】
(光電変換素子の説明)
以下に本発明の光電変換層積層型の光電変換素子について説明する。
光電変換素子は電磁波吸収/光電変換部位と光電変換により生成した電荷の電荷蓄積/転送/読み出し部位よりなる。
電磁波吸収/光電変換部位は、少なくとも青光、緑光、赤光を各々吸収し光電変換することができる少なくとも2層の積層型構造を有する。青光吸収層(B)は少なくとも400?500nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピーク波長の吸収率は50%以上である。緑光吸収層(G)は少なくとも500?600nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピーク波長の吸収率は50%以上である。赤光吸収層(R)は少なくとも600?700nmの光を吸収することができ、好ましくはその波長域でのピーク波長の吸収率は50%以上である。これらの層の序列はいずれの序列でも良く、3層積層型構造の場合は上層からBGR、BRG、GBR、GRB、RBG、RGBの序列が可能である。好ましくは最上層がGである。2層積層型構造の場合は上層がR層の場合は下層が同一平面状にBG層、上層がB層の場合は下層が同一平面状にGR層、上層がG層の場合は下層が同一平面状にBR層が形成される。好ましくは上層がG層で下層が同一平面状にBR層である。このように下層の同一平面状に2つの光吸収層が設けられる場合には上層の上もしくは上層と下層の間に色分別できるフィルター層を例えばモザイク状に設けることが好ましい。場合により4層目以上の層を新たな層としてもしくは同一平面状に設けることが可能である。
電荷蓄積/転送/読み出し部位は電磁波吸収/光電変換部位の下に設ける。下層の電磁波吸収/光電変換部位が電荷蓄積/転送/読み出し部位を兼ねることは好ましい。
【0010】
電磁波吸収/光電変換部位は有機層または無機層または有機層と無機層の混合よりなる。有機層がB/G/R層を形成していても良いし無機層がB/G/R層を形成していても良い。好ましくは有機層と無機層の混合である。この場合、基本的には有機層が1層の時は無機層は1層または2層であり、有機層が2層の時は無機層は1層である。有機層と無機層が1層の場合には無機層が同一平面状に2色以上の電磁波吸収/光電変換部位を形成する。好ましくは上層が有機層でG層であり、下層が無機層で上からB層、R層の序列である。場合により4層目以上の層を新たな層として、もしくは同一平面状に設けることが可能である。有機層がB/G/R層を形成する場合には、その下に電荷蓄積/転送/読み出し部位を設ける。電磁波吸収/光電変換部位として無機層を用いる場合には、この無機層が電荷蓄積/転送/読み出し部位を兼ねる。」

「【0032】
(電荷蓄積/転送/読み出し部位)
電荷転送/読み出し部位については特開昭58-103166号公報、特開昭58-103165号公報、特開2003-332551号公報等を参考にすることができる。半導体基板上にMOSトランジスタが各画素単位に形成された構成や、あるいは、素子としてCCDを有する構成を適宜採用することができる。例えばMOSトランジスタを用いた光電変換素子の場合、電極を透過した入射光によって光導電膜の中に電荷が発生し、電極に電圧を印加することにより電極と電極との間に生じる電界によって電荷が光導電膜の中を電極まで走行し、さらにMOSトランジスタの電荷蓄積部まで移動し、電荷蓄積部に電荷が蓄積される。電荷蓄積部に蓄積された電荷は、MOSトランジスタのスイッチングにより電荷読出し部に移動し、さらに電気信号として出力される。これにより、フルカラーの画像信号が、信号処理部を含む固体撮像装置に入力される。
一定量のバイアス電荷を蓄積ダイオードに注入して(リフレッシュモード)おき、一定の電荷を蓄積(光電変換モード)後、信号電荷を読み出すことが可能である。受光素子そのものを蓄積ダイオードとして用いることもできるし、別途、蓄積ダイオードを付設することもできる。
【0033】
信号の読み出しについてさらに詳細に説明する。信号の読み出しは、通常のカラー読み出し回路を用いることができる。受光部で光/電気変換された信号電荷もしくは信号電流は、受光部そのものもしくは付設されたキャパシタで蓄えられる。蓄えられた電荷は、X-Yアドレス方式を用いたMOS型撮像素子(いわゆるCMOSセンサ)の手法により、画素位置の選択とともに読み出される。他には、アドレス選択方式として、1画素づつ順次マルチプレクサスイッチとデジタルシフトレジスタで選択し、共通の出力線に信号電圧(または電荷)として読み出す方式が挙げられる。2次元にアレイ化されたX-Yアドレス操作の撮像素子がCMOSセンサとして知られる。これは、X-Yの交点に接続された画素に設けられたスイッチは垂直シフトレジスタに接続され、垂直走査シフトレジスタからの電圧でスイッチがオンすると同じ行に設けられた画素から読み出された信号は、列方向の出力線に読み出される。この信号は水平走査シフトレジスタにより駆動されるスイッチを通して順番に出力端から読み出される。
出力信号の読み出しには、フローティングディフュージョン検出器や、フローティングゲート検出器を用いることができる。また画素部分に信号増幅回路を設けることや、相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling)の手法などにより、S/Nの向上をはかることができる。
信号処理には、ADC回路によるガンマ補正、AD変換機によるデジタル化、輝度信号処理や、色信号信号処理を施すことができる。色信号処理としては、ホワイトバランス処理や、色分離処理、カラーマトリックス処理などが挙げられる。NTSC信号に用いる際
は、RGB信号をYIQ信号の変換処理を施すことができる。
…(略)…電荷転送・電荷読み出しの方式は数多く提案されているが、何れの方式でも良い。特に好ましい方式はCMOS型あるいはCCD型のデバイスである。更にCMOS型の方が高速読み出し、画素加算、部分読み出し、消費電力などの点で好ましいことが多い。」

「【0037】
(光学薄膜)
本発明の積層型光電変換素子においては、単層もしくは多層からなる光学薄膜を設け、該光学薄膜から見て光入射側に位置する光電変換膜(例えば、基板上部光電変換膜、あるいは、光学薄膜から見て光入射側に位置する有機光電変換膜、等。)が吸収する波長域の光の反射率を光学薄膜がないときに比べて増加させている。…(略)…
光学薄膜により反射した光の吸収により光入射側の光電変換膜の感度を向上させることができ、さらに、光電変換膜の光学的厚さを適切とすることで該光電変換膜内における干渉効果により、光吸収の分光感度をシャープ化することができる。また、光学薄膜により不要な光は反射され、必要な光は透過することで、光入射側と逆に位置する光電変換層への光の色分離も向上することができる。
そのような所望の波長領域の光だけを反射し、他の波長域の光は透過させる光学薄膜としては、例えば屈折率の異なる2層を交互に設けた光学干渉膜を用いることができる。
…(略)…
なお、光学薄膜は、基板内部光電変換部と基板上部光電変換膜との間、あるいは複数の有機光電変換膜の間のように、通常、異なる波長域の光に応答する複数の光電変換層の間に設けられるが、光電変換層が全て有機光電変換膜からなる場合には、光学薄膜が、全ての光電変換層から見て光入射側とは逆に位置してもよい。この場合、光学薄膜は、光を透過する必要はない。」

「【0045】
〔実施例3〕
図3は緑・青・赤色の光を受光する全ての層を、有機光電変換膜G,B,Rで構成したものである。緑・青・赤の検出には、それぞれ緑・青・赤に吸収スペクトルのピークを有した有機半導体からなる光電変換膜G,B,Rを用いている。そして、最上層の有機光電変換膜Gの下には、緑色の光の反射率を増加するよう設計された干渉反射膜1が設けられていて、緑検出光電変換膜Gの感度を向上させるとともに、下部の有機光電変換膜B,Rへの緑光の透過を抑えている。
この図では積層順を上から順に緑、青、赤としているが、この限りではない。さらには干渉反射膜の位置も、光入射側に最も近い光電変換膜と2番目に近い光電変換膜との間にある必要は必ずしも無い。例えば、上から青、赤、緑という順になるよう光電変換膜を積層し、赤と緑の光電変換膜の間に、青と赤の光の反射率を増加させる光学薄膜を設ける構造も可能である。ただし、絶縁体中あるいは有機膜中での光損失等を考慮すると、上層の有機光電変換膜が最も光利用効率が高いため、視感度の点から緑色の光を受光する層を光入射側に最も近い光電変換膜とし、これに続く光電変換膜との間に、緑光を反射の反射率を増加させる光学薄膜を設けるのが好ましい。
本構成の場合、緑光の吸収係数が大きい有機材料を用いることで光電変換膜の厚みを抑えることができるため、製造プロセスの難易度を下げることができる。」

「【0047】
〔実施例4〕
本実施例は、緑・青・赤色の光を受光する全ての層を、有機光電変換膜G,B,Rで構成した点では、実施例3と同様であるが、全ての有機光電変換膜G,B,Rの下に光学薄膜としての、アルミ製の反射膜1が設けられていて、全ての有機光電変換膜G,B,Rの感度を向上させている。
この場合、積層順を上から順に緑、青、赤としているが、この限りではない。ただし、絶縁体中あるいは有機膜中での光損失等を考慮すると、上層の有機光電変換膜が最も光利用効率が高いため、視感度の点から緑色の光を受光する層を光入射側に最も近い光電変換膜とするのが好ましい。
また、光学薄膜の組が複数設けられている構成でも良く、実施例4において、さらに緑色の光を受光する光電変換膜と青色の光を受光する光電変換膜との間に、緑色の光の反射率を増加させる光学薄膜を設けても良いし、また、さらに青色の光を受光する光電変換膜と赤色の光を受光する光電変換膜との間に、緑色と青色の光の反射率を増加させる光学薄膜を設けても良い。」

上記記載から、引用文献2には、以下の技術が記載されていると認められる。

「電磁波吸収/光電変換部位と光電変換により生成した電荷の電荷蓄積/転送/読み出し部位よりなる光電変換層積層型の光電変換素子であって、
電磁波吸収/光電変換部位は、少なくとも青光、緑光、赤光を各々吸収し光電変換することができ、層の序列は上層からBGR(青光吸収層(B)、緑光吸収層(G)、赤光吸収層(R))の序列の3層積層型構造を有し、
電磁波吸収/光電変換部位は有機層よりなり、
電荷蓄積/転送/読み出し部位は、電磁波吸収/光電変換部位であるB/G/R層の下に設け、
全ての光電変換膜G,B,Rの下に、青・緑・赤の波長域の光のすべての反射率を増加させる光学薄膜としての、アルミ製の反射膜1が設けられていて、全ての有機光電変換膜G,B,Rの感度を向上させており、
半導体基板上にMOSトランジスタが各画素単位に形成され、入射光によって発生した電荷がMOSトランジスタの電荷蓄積部まで移動し、電荷蓄積部に電荷が蓄積され、MOSトランジスタのスイッチングにより電気信号として出力され、これにより、フルカラーの画像信号が、信号処理部を含む固体撮像装置に入力され、
出力信号の読み出しには、フローティングディフュージョン検出器を用いることができ、また画素部分に信号増幅回路を設けることができ、好ましい電荷読み出しの方式はCMOS型である、光電変換素子。」

3 引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「青色用光電変換部201B」、「緑色用光電変換部201G」、「赤色用光電変換部201R」、「青色用読出し回路部202B」、「緑色用読出し回路部202G」、「赤色用読出し回路部202R」、「フローティングディフュージョンFD」、「固体撮像装置」は、それぞれ本願発明の「第1の光電変換部」、「第2の光電変換部」、「第3の光電変換部」、「第1の電荷読出し回路」、「第2の電荷読出し回路」、「第3の電荷読出し回路」、「浮遊拡散層」、「撮像素子」に相当する。

(2)引用発明では、「赤色用読出し回路部202Rと、赤色用光電変換部201Rとが、基板101の上面に、順次、積層するように設けられ、この上面に、緑色用読出し回路部202Gと、緑色用光電変換部201Gとが、順次、積層するように設けられ、さらに、この上面に、青色用読出し回路部202Bと、青色用光電変換部201Bとが、順次、積層するように設けられており」、「青色用光電変換部201Bは、青色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光して信号電荷を生成し、青色の波長領域の光以外の他の波長領域の光が透過するように形成され」、「緑色用光電変換部201Gは、青色用光電変換部201B,青色用読出し回路部202Bを介して入射する光のうち、緑色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光し、他の波長領域の光が透過するように形成され」、「赤色用光電変換部201Rは、緑色用光電変換部201G,緑色用読出し回路部202Gを介して入射する光のうち、赤色の波長領域の光を他の波長領域の光よりも多く受光し、他の波長領域の光が透過するように形成され」ているから、本願発明と引用発明とは、「入射光を電荷に変換する第1の光電変換部と、前記第1の光電変換部を透過した光を電荷に変換する第2の光電変換部と、前記第1および第2の光電変換部を透過した光を電荷に変換する第3の光電変換部と」を具備する点で一致する。

(3)また、引用発明では、「緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷による電気信号が、緑色用読出し回路部202Gにより読み出され、緑色用読出し回路部202Gは、読出し回路20を含み、読出し回路20は、増幅トランジスタ23を含み、緑色用読出し回路部202Gにおいて、増幅トランジスタ23は、緑色用有機光電変換膜210Gで生成された信号電荷による電気信号を、増幅して出力するように構成されており、増幅トランジスタ23は、ゲートがフローティングディフュージョンFDに接続されて」いるから、本願発明と引用発明とは、「前記第2および第3の光電変換部の間において前記第2の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第2の電荷読出し回路」を具備する点で一致する。

(4)また、引用発明では、「『青色用読出し回路部202Bの部分』についても、上記の『緑色用読出し回路部202Gの部分』と同様に構成されており」、「青色用読出し回路部202Bは、青色用光電変換部201Bにて生成された信号電荷を読み出すように形成されて」いるから、本願発明と引用発明とは、「前記第1および第2の光電変換部の間において第1の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第1の電荷読出し回路」を具備する点で一致する。

(5)また、引用発明では、「『赤色用読出し回路部202Rの部分』についても、上記の『緑色用読出し回路部202Gの部分』と同様に構成されており」、「赤色用読出し回路部202Rは、赤色用光電変換部201Rにて生成された信号電荷を読み出すように形成されている」から、本願発明と引用発明とは、「前記第3の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第3の電荷読出し回路」を具備する点で一致する。

(6)以上のことから、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「入射光を電荷に変換する第1の光電変換部と、
前記第1の光電変換部を透過した光を電荷に変換する第2の光電変換部と、
前記第1および第2の光電変換部を透過した光を電荷に変換する第3の光電変換部と、

前記第1および第2の光電変換部の間において第1の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第1の電荷読出し回路と、
前記第2および第3の光電変換部の間において前記第2の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第2の電荷読出し回路と、
前記第3の光電変換部から前記電荷を読み出して浮遊拡散層に蓄積する第3の電荷読出し回路と
を具備する撮像素子。」

<相違点1>
本願発明では、「前記第1、第2および第3の光電変換部を透過した光を反射する入射光反射部」を具備するのに対し、引用発明では「『青色用光電変換部201B』、『緑色用光電変換部201G』、および『赤色用光電変換部201R』」を透過した光について、そのような特定はなされていない点。

<相違点2>
第3の電荷読出し回路について、本願発明は、「前記第3の光電変換部と前記入射光反射部との間」において読み出して浮遊拡散層に蓄積するものであるのに対し、引用発明では、「赤色用読出し回路部202Rと、赤色用光電変換部201Rとが、基板101の上面に、順次、積層するように設けられ」ており、すなわち、赤色用読出し回路部202Rは、「赤色用光電変換部201Rと基板101との間」におけるものであり、本願発明のような特定はなされていない点。

4 判断
以下、相違点について検討する。

(1)相違点1及び相違点2について
相違点1及び相違点2について、まとめて検討する。
引用発明と引用文献2に記載の技術は、光電変換膜積層型のCMOS型イメージセンサーである点で共通する。
引用文献2に記載の技術は、「全ての光電変換膜G,B,Rの下に光学薄膜としての、アルミ製の反射膜1が設けられていて、全ての有機光電変換膜G,B,Rの感度を向上させて」いるものであるところ、上記「2(1)ア」の段落【0031】、【0035】に摘記したように、引用発明は、撮像画像の画像品質を向上可能とすることを課題としているから、引用発明においても、引用文献2に記載の技術と同様に、緑色用光電変換部201G、青色用光電変換部201B、赤色用光電変換部201R、全ての感度を向上させることが望ましいことは明らかである。
したがって、引用発明において、引用文献2に記載の技術に基づき、全ての光電変換膜G,B,Rの下に、青・緑・赤の波長域の光のすべての反射率を増加させる光学薄膜としての、アルミ製の反射膜1を設けられた構成を採用することは当業者であれば容易になし得たことである。
よって、引用発明において、引用文献2に記載の技術に基づき、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

そして、引用発明において、当該反射膜1を設ける際の、「全ての光電変換膜G,B,Rの下」における具体的な配置を、光電変換膜Rの直下、あるいは赤色読出し回路部202Rの直下のいずれとするかは、当業者が適宜設定し得る設計的事項にすぎないのであって、反射膜を赤色読出し回路部202Rの直下に設けることに格別の困難性は認められないし、その位置に格別の技術的意義ないし効果は認められない。
よって、引用発明において、引用文献2に記載の技術に基づき、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。

(2)判断についてのまとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-06 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2013-183600(P2013-183600)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田邊 顕人  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 河合 俊英
恩田 春香
発明の名称 撮像素子および撮像装置  
代理人 丸島 敏一  

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