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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B01D
管理番号 1351351
審判番号 不服2018-2137  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-15 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2014-27510号「除湿具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月24日出願公開、特開2015-150523号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成26年2月17日の出願であって、平成29年9月22日付けの拒絶理由通知書に対して同年11月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年11月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年2月15日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、そして、同年11月12日付けの当審による拒絶理由の通知に対して平成31年1月11日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである

II.本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成31年1月11日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
通気性が105?1000cm^(3)/cm^(2)・sの範囲にある不織布から形成され、表面に備長炭粉末が塗布されている袋体の中に、粒子径が3?10mmの範囲にあるシリカゲルが収容されてなる除湿具。」

III.当審による拒絶理由の概要
平成29年11月29日付けの当審による拒絶理由は、「本願発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」旨を理由の一つにするものである。
「1.登録実用新案第3096946号公報(引用例1)
2.特開2007-197028号公報(引用例2)」

IV.引用例記載の事項
IV-1 引用例1記載の事項
(a)「【請求項1】
空気中の水分を吸収して除湿するための除湿シートであって、乾燥/除湿剤を小分けして2枚の不織布の間に保持しているものにおいて、前記2枚の不織布の少なくとも一方の表面に備長炭の粉末が塗布してあることを特徴とする除湿シート。」

(b)「【0002】
【従来の技術】
従来から、敷き布団の下や押し入れの床に敷いて布団の湿気を吸収して除湿する除湿シートが知られている。かかる除湿シート(防湿シートとも言う)は、不織布を2枚突き合わせてその間にシリカゲルなどの乾燥/除湿剤を小分けして挟んだ状態で貼り合わせて構成されている。従来の除湿シートを構成する不織布は、通気性を考慮しており、特に着色されることがなく、白色のままである。かかる従来の除湿シートとしては、下記の特許文献1に記載されたものがある。」

(c)「【0009】
圧着する面は、平板状で、不織布12、14の間に乾燥/除湿剤を小分けして保持する袋部を形成するよう構成されている。この袋部には、乾燥/除湿剤として粒径が2?5mmのB型シリカゲルが所定量保持される。この除湿シート10は、その幅Wが90cmであり、長さLが100cmである。また、乾燥/除湿剤の入った袋部16は、幅方向に16個、長さ方向にも16個設けられている。なお、長さは、必要に応じて更に長くしたり、あるいは短くすることができる。」

V.引用例1記載の発明
上記(a)及び(c)からして、引用例1には、
「空気中の水分を吸収して除湿するための除湿シートであって、粒径が2?5mmのB型シリカゲル(除湿剤)を小分けして2枚の不織布の間に保持しているものにおいて、2枚の不織布の少なくとも一方の表面に備長炭の粉末が塗布されている除湿シート。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

VI.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の「備長炭の粉末」、「不織布」、「B型シリカゲル」及び「空気中の水分を吸収して除湿するための除湿シート」、は、本願発明の「備長炭粉末」、「不織布」、「シリカゲル」及び「除湿具」にそれぞれ相当する。

(ii)上記(i)を考慮した上で、引用発明の「空気中の水分を吸収して除湿するための除湿シートであって、」「B型シリカゲル(除湿剤)を小分けして2枚の不織布の間に保持しているものにおいて、2枚の不織布の少なくとも一方の表面に備長炭の粉末が塗布されている」をみたとき、これは、本願発明の「不織布から形成され、表面に備長炭粉末が塗布されている袋体の中に、」「シリカゲルが収容されてなる」に相当する。

上記(i)及び(ii)より、本願発明と引用発明とは、「不織布から形成され、表面に備長炭粉末が塗布されている袋体の中に、シリカゲルが収容されてなる除湿具」という点で一致し、以下の点(以下、「相違点」という。)で相違している。
<相違点>
本願発明は、シリカゲルの「粒子径が3?10mmの範囲にあ」って、不織布の「通気性が105?1000cm^(3)/cm^(2)・sの範囲にあ」るのに対して、引用発明は、B型シリカゲルの「粒径が2?5mm」であって、不織布の通気性が不明である点。

以下、上記<相違点>について検討する。
(A)引用例1には、「かかる除湿シート(防湿シートとも言う)は、不織布を2枚突き合わせてその間にシリカゲルなどの乾燥/除湿剤を小分けして挟んだ状態で貼り合わせて構成されている。従来の除湿シートを構成する不織布は、通気性を考慮しており」(上記(b))との記載があることからして、不織布を2枚突き合わせてその間にシリカゲルなどの除湿剤を小分けして挟んだ状態で貼り合わせて構成されたものであるという点では従来の除湿シート(除湿具)と同様である引用発明の除湿シート(除湿具)も、通気性が考慮されたものであるというべきである。

(B)次に、引用例2には、「【0019】
本発明の袋体の積層不織布の通気性は、袋体の中に充填する消臭剤、除湿剤等の粉漏れを生じない程度に、その効果を十分に発揮するため、1?100cc/cm^(2)/sec、好ましくは、5?90cc/cm^(2)/secである。通気性が1cc/cm^(2)/sec未満では、空気の流通が少なくなり、消臭剤、除湿剤の効果が低下する。一方、100cc/cm^(2)/sec超えると空気の流通は十分であるが粉漏れし易くなる。」及び
「【0035】
[実施例12]
実施例2の・・・省略・・・その時に袋内に、顆粒処理した粒径0.5?3mmのシリカゲルを95%、顆粒処理した粒径が200?500μmのヤシガラ活性炭を5%の混合粒子を、袋体1個当たり約4g入れた連続包装の本発明の除湿剤又は/消臭剤の袋体を作成した。・・・省略・・・10回繰り返し使用した結果は、破袋せず、表面の毛羽立ち、粉漏れもなく、快適に使用できた。」との記載があり、これらからして、引用例2には、
「粒径0.5?3mmのシリカゲルを95%、粒径が200?500μmのヤシガラ活性炭を5%の混合粒子を充填した、除湿・消臭剤の袋体は、通気性が1?100cc/cm^(2)/secであり、粉漏れを生じさせない不織布を使用するものである」ことが記載されているということができる。

(C)上記(A)及び(B)より、引用発明の「除湿シート」(除湿具)と、引用例2記載の「除湿・消臭剤の袋体」(除湿具)とは、不織布からなる袋の中にシリカゲルを入れた除湿具という点で同等であることからして、引用発明の「除湿シート」(除湿具)も、通気性が考慮されると共に、粉漏れを生じさせない不織布を使用するものであるということができる。

(D)そして、一般に、不織布の袋に充填された粉粒の粒径を大きくしたとき、これに応じて不織布の目を大きくしても、粉漏れは生じず、結果として、通気性が上がることは、当業者に自明の事項である。
そうすると、引用例2記載の「粒径0.5?3mmのシリカゲルを95%、粒径が200?500μmのヤシガラ活性炭を5%の混合粒子を充填した、除湿・消臭剤の袋体」における「不織布」の「通気性が1?100cc/cm^(2)/secであ」ることからして、引用発明の「除湿シート」(除湿具)において、選択可能な「3?5mm」の範囲のB型シリカゲルを使用したとき、引用発明の「除湿シート」(除湿具)における不織布の通気性が、上記「100cc/cm^(2)/sec(cm^(3)/cm^(2)・s)」よりも大きくなること、つまり、「105?1000cm^(3)/cm^(2)・sの範囲」内のものであることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、本願の発明の詳細な説明には、「【発明の効果】
【0011】
本発明の除湿具は吸湿効率に優れているため、靴内部のような通気性が低い環境下での除湿具として有利に使用できる。また、本発明の除湿具は乾燥効率に優れているため、靴のように毎日使用される物品の除湿具として有利に使用できる。」及び
「【0016】
シリカゲルは、B型シリカゲルであることが好ましい。シリカゲルは球状であることが好ましい。シリカゲルの粒子径は、不織布の孔から漏れ出ないサイズであればよく、一般に1?10mmの範囲、好ましくは2?8mmの範囲、特に好ましくは3?5mmの範囲である。」との記載があり、これらからして、本願発明は、シリカゲル(除湿剤)の粉漏れを生じさせず、また、「吸湿効率及び乾燥効率」(除湿効果)を十分に発揮させることを、本願発明の効果とするものであるといえるところ、これは、上記(C)からして、引用発明及び引用例2記載の事項から予期し得るものであり、格別顕著なものであるとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VII.請求人の主張について
請求人は、平成31年1月11日付け意見書において、引用例1記載の発明の除湿具における除湿剤の粒径は比較的大きいのに対して、引用例2記載の事項の除湿具における除湿剤の粒径のレベルは比較的小さく、また、引用例1記載の発明の除湿具における不織布には備長炭粉末の塗布層が設けられているのに対して、引用例2記載の事項の除湿具における不織布には備長炭粉末の塗布層が設けられていないので、引用例1記載の発明に、引用例2記載の事項を組み合わせる(引用例1記載の発明において、引用例2記載の事項を参考にする)ことはできない旨を主張するものであると認める。

しかしながら、上記(C)で指摘したように、両者は、同様の構造を有する除湿具に関するものであるから、引用例2記載の事項を参考にすることに困難性はない。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。

VIII.むすび
上記のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び引用例2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、当審拒理による理由により拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-08 
結審通知日 2019-03-12 
審決日 2019-03-25 
出願番号 特願2014-27510(P2014-27510)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神田 和輝  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 小川 進
豊永 茂弘
発明の名称 除湿具  
代理人 柳川 泰男  
代理人 柳川 泰男  

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