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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1351356
審判番号 不服2018-4895  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-10 
確定日 2019-05-07 
事件の表示 特願2016-137713号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日出願公開、特開2016-195809号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月6日に出願された特願2013-21711号の一部を平成28年7月12日に新たな特許出願とした特願2016-137713号であって、平成29年5月15日付け(発送日:同年同月25日)で拒絶の理由が通知され、同年7月24日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年12月20日付け(発送日:平成30年1月10日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年4月10日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされ、その後、当審において同年11月26日付け(送達日:同年同月29日)で拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成31年1月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成31年1月28日になされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められる。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである(記号A?Jは、分説するため審決にて付した。)。
「A 遊技機の所定領域に配設された第1表示手段と、
B 前記第1表示手段とは別部位に配設された第2表示手段と、
C 遊技機の統括的な制御を行い、所定の制御コマンドを出力可能な主制御手段と、
D 前記第1表示手段の演出表示を制御するための第1演出データ、および前記第2表示手段の演出表示を制御するための第2演出データを記憶する演出データ記憶手段を有し、前記主制御手段から受信した制御コマンドに基づいて、前記演出データ記憶手段に記憶されている演出データを特定し、当該特定された演出データに基づいて前記第1表示手段および/又は第2表示手段の制御を行う演出制御手段とを含み、
E 前記演出制御手段は、演出図柄が変動する通常変動、前記通常変動に加えて実行される第1特定演出、および前記通常変動に加えて実行される第2特定演出を含む変動動作を実行可能であり、
F 前記第1演出データは、前記変動動作のうち前記第1特定演出のための第1特定演出データと、前記変動動作のうち前記通常変動のための通常変動動作データとを含み、
G 前記第2演出データは、前記変動動作のうち前記第2特定演出のための第2特定演出データと、デモ表示を表示するデモ表示演出のためのデモ表示演出データとを含み、
H 前記第2特定演出は、前記第1特定演出と関連性を有して実行され、
I 前記演出制御手段は、前記第1表示手段への前記第1特定演出の表示を実行しない場合には、前記第2表示手段に前記デモ表示演出を表示させ、前記第1表示手段への前記第1特定演出の表示を実行する場合には、前記第2表示手段への前記デモ表示演出の表示を中断して、前記第2表示手段への前記第2特定演出の表示を開始させ、その後、前記第2表示手段に前記第2特定演出の表示を継続することで、該第2特定演出の表示を、前記第1特定演出の表示に並行して実行させる、
J 遊技機。」

第3 引用文献及び引用発明
1 引用文献2
(1)当審拒絶理由において引用文献2として引用された特開2013-143号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付記した。以下同じ。)。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、本体枠に対して着脱可能に取り付けられる遊技盤と、該遊技盤に形成される遊技領域の前方を覆う透明部材を保持し、前記本体枠に対して開閉可能に取り付けられる透明部材保持枠と、を備える遊技機に関する。」

イ 「【0032】
遊技盤30の表面には、ガイドレール31で囲われた略円形状の遊技領域32が形成されている。遊技領域32は、遊技盤30の右隅に設けられた樹脂製のサイドケース33及びガイドレール31に囲繞されて構成される。遊技領域32には、ほぼ中央に表示装置41を備えたセンターケース40が配置されている。表示装置41は、センターケース40に設けられた凹部に、センターケース40の前面より奥まった位置に取り付けられている。即ち、センターケース40は表示装置41の表示領域の周囲を囲い、表示装置41の表示面よりも前方へ突出するように形成されている。・・・
【0033】
表示装置41は、例えば、LCD(液晶表示器)、CRT(ブラウン管)等の表示画面を有する装置で構成されている。表示画面の画像を表示可能な領域(表示領域)には、複数の識別情報(特別図柄)や特図変動表示ゲームを演出するキャラクタや演出効果を高める背景画像等が表示される。表示装置41の表示画面においては、識別情報として割り当てられた複数の特別図柄が変動表示(可変表示)されて、特図変動表示ゲームに対応した飾り特図変動表示ゲームが行われる。
また、表示画面には遊技の進行に基づく演出のための画像(例えば、大当り表示画像、ファンファーレ表示画像、エンディング表示画像等)が表示される。」

ウ 「【0048】
表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、例えば前述した数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われる。また、表示装置41では、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われる。・・・
【0052】
次に、図4を用いて遊技盤30の装飾領域Wに施された装飾図柄Dの一例について説明する。
図4(a)は、遊技盤30の左上部の部分拡大図である。
図4(a)に示すように、遊技盤30の遊技領域32の外側となる左上部に設けられた装飾領域Wには装飾図柄(例えば、トラを模したキャラクタ図柄)Dが施されるようになっている。この装飾図柄Dは、遊技機の機種を特徴付ける独自のキャラクタ図柄や、飾り特図変動表示ゲームにおいて、大当りへの期待度が高いときに発生する演出(例えば、リーチ演出)の表示を行う際に表示装置41に表示されるキャラクタと同一又は関連するキャラクタ図柄とすることが望ましい。」

エ 「【0058】
次に、図7を用いて遊技盤30の装飾領域Wに小型表示装置80を設けた場合の一例について説明する。
図7(a)は、同図(b)のBB矢視断面図に対応するガラス枠15の部分断面図を記した図であり、図7(b)は、遊技盤30の左上部の部分拡大図である。
図7(a),(b)に示すように、装飾領域Wには装飾図柄Dや可動役物装置90の代わりに小型表示装置80を配設することも可能である。
小型表示装置80は、表示装置41による表示を補助するための表示装置であり、表示装置41の表示部よりも小さい表示部を有している。
具体的には、小型表示装置80は、表示装置取付部材81に取り付けられるようになっている。そして、この表示装置取付部材81は、遊技盤30の装飾領域Wに取り付けられるようになっている。
なお、表示装置取付部材81は、小型表示装置80を傾けることができるように当該小型表示装置80を配設するようにしても良い。具体的には、表示装置取付部材81は、小型表示装置80の表示面が右斜め下方向を向くようにすることができるようにする。これにより、例えば、小型表示装置80で所定の演出表示を行う際、当該小型表示装置80を傾かせることで、遊技者に当該小型表示装置80の表示面を見やすくすることができるようになる。
また、小型表示装置80にて所定の演出表示を行わないときは、図7(c)に示すように、スピーカやLED等のカバー部材を模した画像を表示するようにしても良い。これにより、通常時は小型表示装置80が周囲のガラス枠15と同化した状態とすることができるようになり、小型表示装置80が装飾領域Wに配設されていることを気付かれ難くすることができる。従って、小型表示装置80にて所定の演出表示が行われたとき、遊技者の意表を突くことができるようになり、当該演出表示への興趣を向上させることができるようなる。
【0059】
図8(a)は、小型表示装置80を用いて大当り報知を行ったときの表示例を示す図である。
図8(a)に示すように、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に例えば「大当り」の文字を表示する。
図8(b)は、小型表示装置80を用いて確率状態が確変状態(高確率状態)に移行したことを示す確変報知を行ったときの表示例を示す図である。
図8(b)に示すように、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば「確変!」の文字を表示する。
また、小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に「上注目」等の文字を表示させるようにしても良い。」

オ 「【0087】
図20は、上述した第1?第3実施形態のパチンコ遊技機10の制御システムのブロック図である。
遊技機10は遊技制御装置100を備え、遊技制御装置100は、遊技を統括的に制御する主制御装置(主基板)であって、遊技用マイクロコンピュータ(以下、遊技用マイコンと称する)111を有するCPU部110と、入力ポートを有する入力部120と、出力ポートやドライバなどを有する出力部130、CPU部110と入力部120と出力部130との間を接続するデータバス140などからなる。・・・
【0093】
遊技用マイコン111は、遊技を統括的に制御する制御手段を構成している。具体的には、遊技用マイコン111は、CPU(中央処理ユニット:マイクロプロセッサ)111A、読出し専用のROM(リードオンリメモリ)111B及び随時読出し書込み可能なRAM(ランダムアクセスメモリ)111Cを備える。・・・
【0098】
CPU111Aは、ROM111B内の遊技制御用プログラムを実行して、払出制御装置200や演出制御装置300に対する制御信号(コマンド)を生成したりソレノイドや表示装置41の駆動信号を生成して出力して遊技機10全体の制御を行う。」

カ 「【0115】
次に、図21を用いて、演出制御装置300の構成について説明する。
演出制御装置300は、遊技用マイコン111と同様にアミューズメントチップ(IC)からなる主制御用マイコン(1stCPU)311と、該1stCPU311の制御下でもっぱら映像制御を行う映像制御用マイコン(2ndCPU)312と、該2ndCPU312からのコマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP(Video Display Processor)313と、各種のメロディや効果音などをスピーカ19a,19bから再生させるため音の出力を制御する音源LSI314を備えている。」
【0116】
上記主制御用マイコン(1stCPU)311と映像制御用マイコン(2ndCPU)312には、各CPUが実行するプログラムを格納したPROM(プログラマブルリードオンリメモリ)からなるプログラムROM321、322がそれぞれ接続され、VDP313にはキャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、音源LSI314には音声データが記憶された音声ROM324が接続されている。主制御用マイコン(1stCPU)311は、遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示したり、音源LSI314への再生音の指示、装飾ランプの点灯、モータの駆動制御、演出時間の管理などの処理を実行する。主制御用マイコン(1stCPU)311と映像制御用マイコン(2ndCPU)312の作業領域を提供するRAMは、それぞれのチップ内部に設けられている。なお、作業領域を提供するRAMはチップの外部に設けるようにしてもよい。」

キ 「【0219】
また、第2実施形態の遊技機10によれば、透明部材保持枠(ガラス枠15)の被覆部(カバー部材15a)の一部には、当該被覆部の後方を視認可能な第2の視認窓部(視認窓部16)が備えられ、遊技盤30には、第2の視認窓部から視認可能な補助表示装置(小型表示装置80)が備えられ、演出制御手段(演出制御装置300)は、補助表示装置の表示内容を制御し、補助表示装置は、演出制御手段による表示制御によって、表示装置41の表示内容に関連する内容の画像を表示させることとなる。
【0220】
このことから、透明部材保持枠(ガラス枠15)の第2の視認窓部(視認窓部16)を介して遊技盤前方から、当該遊技盤30に備えられた補助表示装置(小型表示装置80)を視認することができるので、透明部材保持枠に当該補助表示装置が配設されているように見せることができる。特に、補助表示装置は、演出制御手段(演出制御装置300)による表示制御によって、表示装置41の表示内容に関連する内容の画像を表示させるようにしたので、独自の透明部材保持枠が用いられているように見せることができる。
【0221】
また、第2実施形態の遊技機10によれば、演出制御手段(演出制御装置300)は、補助表示装置(小型表示装置80)に表示装置41の表示内容に関連する内容の表示をさせる場合に、表示装置41に、補助表示装置における表示を視認することを遊技者に促す情報を表示させることとなる。
【0222】
このことから、補助表示装置(小型表示装置80)に表示装置41の表示内容に関連する内容の表示をさせる場合に、演出制御手段(演出制御装置300)によって、表示装置41に、補助表示装置における表示を視認することを遊技者に促す情報を表示させるようにしたので、補助表示装置における当該表示を遊技者が見逃さないようにすることができる。」

ク 図1、3、4、5及び8は次のものである。
【図1】

【図3】


ケ 上記アないしキの記載を踏まえて、上記クの図1をみると、遊技機10が遊技盤30を備えることは明らかである。

(2)引用発明
上記(1)の各記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。記号a?iは、分説するため、本願発明に対応させて当審にて付した。)。
「a 遊技機10は遊技盤30を備え(「(1)」「ク」)、前記遊技盤30の表面には、遊技領域32が形成され、前記遊技領域32には、ほぼ中央に表示装置41を備え(「(1)」「イ」)、
b 前記遊技盤30の左上部の装飾領域Wには小型表示装置80が配設され(「(1)」「エ」)、
c 前記遊技機10は遊技制御装置100を備え、遊技制御装置100は、遊技を統括的に制御する主制御装置(主基板)であって、遊技用マイクロコンピュータ(遊技用マイコン)111を有するCPU部110からなり、前記遊技用マイコン111は、CPU111Aを備え、前記CPU111Aは、ROM111B内の遊技制御用プログラムを実行して、払出制御装置200や演出制御装置300に対する制御信号(コマンド)を生成したりソレノイドや表示装置41の駆動信号を生成して出力して遊技機10全体の制御を行い(「(1)」「オ」)、
d 演出制御装置300は、主制御用マイコン311と、映像制御用マイコン312と、コマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP313を備え、前記VDP313にはキャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、前記主制御用マイコン311は、前記遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示(「(1)」「カ」)するとともに、演出制御装置300は、小型表示装置80の表示内容を制御し、小型表示装置80は、演出制御手段300による表示制御によって、表示装置41の表示内容に関連する内容の画像を表示させ(「(1)」「キ」)、
e、f、i 前記表示装置41は、複数の識別情報(特別図柄)や特図変動表示ゲームを演出するキャラクタや演出効果を高める背景画像等が表示され(「(1)」「イ」)、
前記表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われ、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ(「(1)」「ウ」)、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示し、小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる(「(1)」「エ」)、
j 遊技機(「(1)」「ア」)。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「表示装置41」は、「遊技機10は遊技盤30を備え、前記遊技盤30の表面には、遊技領域32が形成され、前記遊技領域32には、ほぼ中央に」「備え」(構成a)たものであるから、遊技機10の遊技領域32のほぼ中央に備えたものであるといえる。
そして、引用発明の「遊技機10の遊技領域32のほぼ中央」は、本願発明の「遊技機の所定領域」に相当する。
したがって、引用発明の「遊技機10は遊技盤30を備え、前記遊技盤30の表面には、遊技領域32が形成され、前記遊技領域32には、ほぼ中央に」「備え」た「表示装置41」は、本願発明の「遊技機の所定領域に配設された第1表示手段」(構成A)に相当する。

イ 引用発明の「小型表示装置80」は、「前記遊技盤30の左上部の装飾領域Wに」「配設され」(構成b)たものである。
これに対して、上記アで検討したとおり、「表示装置41」は、遊技機10の遊技領域32のほぼ中央に備えたものである。
そうすると、引用発明において、「表示装置41」を遊技機10の遊技領域32のほぼ中央に備えるとともに、「小型表示装置80」を「前記遊技盤30の左上部の装飾領域Wに」「配設」することは、本願発明の「第1表示手段」と「第2表示手段」とを「別部位に配設」することに相当する。
したがって、引用発明の「遊技機10は遊技盤30を備え、前記遊技盤30の表面には、遊技領域32が形成され、前記遊技領域32には、ほぼ中央に表示装置41を備え、前記遊技盤30の左上部の装飾領域Wに」「配設され」た「小型表示装置80」(構成a、b)は、本願発明の「前記第1表示手段とは別部位に配設された第2表示手段」(構成B)に相当する。

ウ 引用発明の「遊技制御装置100」は、「前記遊技機10は遊技制御装置100を備え、遊技制御装置100は、遊技を統括的に制御する主制御装置(主基板)であって、遊技用マイクロコンピュータ(遊技用マイコン)111を有するCPU部110からなり、前記遊技用マイコン111は、CPU111A、を備え、前記CPU111Aは、ROM111B内の遊技制御用プログラムを実行して、払出制御装置200や演出制御装置300に対する制御信号(コマンド)を生成したりソレノイドや表示装置41の駆動信号を生成して出力して遊技機10全体の制御を行」(構成c)うものであるから、遊技機10の遊技を統括的に制御する主制御装置であって、制御信号(コマンド)を生成して出力するものであるといえる。
したがって、引用発明の「前記遊技機10は遊技制御装置100を備え、遊技制御装置100は、遊技を統括的に制御する主制御装置(主基板)であって、遊技用マイクロコンピュータ(遊技用マイコン)111を有するCPU部110からなり、前記遊技用マイコン111は、CPU111A、を備え、前記CPU111Aは、ROM111B内の遊技制御用プログラムを実行して、払出制御装置200や演出制御装置300に対する制御信号(コマンド)を生成したりソレノイドや表示装置41の駆動信号を生成して出力して遊技機10全体の制御を行」う「遊技制御装置100」は、本願発明の「遊技機の統括的な制御を行い、所定の制御コマンドを出力可能な主制御手段」(構成C)に相当する。

エ 引用発明の「演出制御装置300」は、「主制御用マイコン311と、映像制御用マイコン312と、コマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP313を備え、前記VDP313にはキャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、前記主制御用マイコン311は、前記遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示するとともに」、「小型表示装置80の表示内容を制御し、小型表示装置80は、演出制御手段300による表示制御によって、表示装置41の表示内容に関連する内容の画像を表示させ」(構成d)るものであるところ、「小型表示装置80の表示内容」がどこに記憶されているか明記されていない。
しかしながら、「演出制御装置300」は「キャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され」た上で、「表示装置41への映像表示」及び「小型表示装置80の表示」を行うものであるから、「小型表示装置80の表示内容」も「キャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323」に記憶されていてよいといえる。
そうすると、引用発明の「表示装置41への映像表示のため」のために「画像ROM323」に記憶された「キャラクタ画像や映像データ」は、本願発明の「第1演出データ」に相当するとともに、引用発明の「小型表示装置80の表示内容」は、本願発明の「第2演出データ」に相当するといえる。
そして、引用発明の「演出制御装置300」が、「遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示」するから、遊技用マイコン111からのコマンドに基づいて、画像ROM323に記憶されているキャラクタ画像や映像データを特定し、当該キャラクタ画像や映像データに基づいて「表示装置41への映像表示」及び「小型表示装置80の表示」の制御を行うことは明らかである。
したがって、引用発明の「主制御用マイコン311と、映像制御用マイコン312と、コマンドやデータに従って表示装置41への映像表示のための画像処理を行うグラフィックプロセッサとしてのVDP313を備え、前記VDP313にはキャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、前記主制御用マイコン311は、前記遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示するとともに」、「小型表示装置80の表示内容を制御し、小型表示装置80は、演出制御手段300による表示制御によって、表示装置41の表示内容に関連する内容の画像を表示させ」(構成d)る「演出制御装置300」は、本願発明の「前記第1表示手段の演出表示を制御するための第1演出データ、および前記第2表示手段の演出表示を制御するための第2演出データを記憶する演出データ記憶手段を有し、前記主制御手段から受信した制御コマンドに基づいて、前記演出データ記憶手段に記憶されている演出データを特定し、当該特定された演出データに基づいて前記第1表示手段および/又は第2表示手段の制御を行う演出制御手段」(構成D)に相当する。

オ 上記エでの検討も踏まえると、引用発明の「演出制御装置300」は、「前記表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われ、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」(構成e、f、i)するものであるから、「数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示する飾り特図変動表示ゲーム」、「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ」る「飾り特図変動表示ゲーム」、及び、「特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」することを行うといえる。
そうすると、引用発明の「数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示する飾り特図変動表示ゲーム」は、本願発明の「演出図柄が変動する通常変動」に相当する。
また、引用発明の「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ」る「飾り特図変動表示ゲーム」は、本願発明の「通常変動に加えて実行される第1特定演出」に相当する。
さらに、引用発明の「特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」することは、本願発明の「通常変動に加えて実行される第2特定演出」に相当する。
したがって、引用発明の「前記表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われ、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示し、小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる」「演出制御装置300」は、本願発明の「演出図柄が変動する通常変動、前記通常変動に加えて実行される第1特定演出、および前記通常変動に加えて実行される第2特定演出を含む変動動作を実行可能」な「演出制御手段」(構成E)に相当する。

カ 引用発明は、「キャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、前記主制御用マイコン311は、前記遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示」(構成d)するものであって、「前記表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われ、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ」(構成e、f、i)るから、当該「数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)」及び「キャラクタ」は、「キャラクタ画像や映像データ」として画像ROM323に記憶されているものと解される。
そして、引用発明では、「前記表示装置41は、複数の識別情報(特別図柄)や特図変動表示ゲームを演出するキャラクタや演出効果を高める背景画像等が表示され」(構成e、f、i)るから、引用発明の「演出内容」のための「画像ROM323」に記憶された「キャラクタ画像や映像データ」は、本願発明の「変動動作データ」及び「演出データ」に相当する。
また、上記オで検討したとおり、引用発明の「数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示する飾り特図変動表示ゲーム」は、本願発明の「演出図柄が変動する通常変動」に相当するとともに、引用発明の「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ」る「飾り特図変動表示ゲーム」は、本願発明の「通常変動に加えて実行される第1特定演出」に相当する。
したがって、引用発明の「キャラクタ画像や映像データが記憶された画像ROM323が接続され、前記主制御用マイコン311は、前記遊技用マイコン111からのコマンドを解析し、演出内容を決定して映像制御用マイコン312へ出力映像の内容を指示」するものであって、「前記表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われ、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ」る「キャラクタ画像や映像データ」(構成e、f、i)は、本願発明の「前記変動動作のうち前記第1特定演出のための第1特定演出データと、前記変動動作のうち前記通常変動のための通常変動動作データとを含」む「第1演出データ」(構成F)に相当する。

キ 引用発明は、「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示し、小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる」(構成e、f、i)から、表示装置41において、「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき」、あるいは、「確変状態に移行したとき」に、「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し」、ないしは、「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」するとともに、「小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる」ものである。
したがって、表示装置41において、「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき」、あるいは、「確変状態に移行したとき」に、「小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる」ことと、「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し」、ないしは、「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」することは関連していると認められる。
そうすると、上記オで検討したとおり、引用発明の「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ」る「飾り特図変動表示ゲーム」は、本願発明の「通常変動に加えて実行される第1特定演出」に相当するとともに、引用発明の「特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」する「飾り特図変動表示ゲーム」は、本願発明の「通常変動に加えて実行される第2特定演出」に相当するから、引用発明における「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示し、小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる」(構成e、f、i)ことは、本願発明の「前記第2特定演出は、前記第1特定演出と関連性を有して実行され」(構成H)ることに相当する。

ク 引用発明の「遊技機」は、本願発明の「遊技機」に相当する。

(2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、
「A 遊技機の所定領域に配設された第1表示手段と、
B 前記第1表示手段とは別部位に配設された第2表示手段と、
C 遊技機の統括的な制御を行い、所定の制御コマンドを出力可能な主制御手段と、
D 前記第1表示手段の演出表示を制御するための第1演出データ、および前記第2表示手段の演出表示を制御するための第2演出データを記憶する演出データ記憶手段を有し、前記主制御手段から受信した制御コマンドに基づいて、前記演出データ記憶手段に記憶されている演出データを特定し、当該特定された演出データに基づいて前記第1表示手段および/又は第2表示手段の制御を行う演出制御手段とを含み、
E 前記演出制御手段は、演出図柄が変動する通常変動、前記通常変動に加えて実行される第1特定演出、および前記通常変動に加えて実行される第2特定演出を含む変動動作を実行可能であり、
F 前記第1演出データは、前記変動動作のうち前記第1特定演出のための第1特定演出データと、前記変動動作のうち前記通常変動のための通常変動動作データとを含み、
H 前記第2特定演出は、前記第1特定演出と関連性を有して実行される、
J 遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

ア 本願発明は、「演出制御手段」において、「前記第2演出データは、前記変動動作のうち前記第2特定演出のための第2特定演出データと、デモ表示を表示するデモ表示演出のためのデモ表示演出データとを含」(構成G)むのに対して、引用発明の「演出制御装置300」において、「画像ROM323」の「キャラクタ画像や映像データ」が、「デモ表示を表示するデモ表示演出のためのデモ表示演出データ」を含むと特定されない点(以下「相違点1」という。)。

イ 本願発明は、「演出制御手段」が、「前記第1表示手段への前記第1特定演出の表示を実行しない場合には、前記第2表示手段に前記デモ表示演出を表示させ、前記第1表示手段への前記第1特定演出の表示を実行する場合には、前記第2表示手段への前記デモ表示演出の表示を中断して、前記第2表示手段への前記第2特定演出の表示を開始させ、その後、前記第2表示手段に前記第2特定演出の表示を継続することで、該第2特定演出の表示を、前記第1特定演出の表示に並行して実行させる」(構成I)のに対して、引用発明は、「演出制御装置300」がこのような制御を実行するとは特定されない点(以下「相違点2」という。)。

2 判断
(1)上記相違点1及び2について検討する。
ア 引用発明の「小型表示装置80」は、「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示」する前の状態、あるいは、「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示」する前の状態が特定されない。
しかしながら、「飾り特図変動表示ゲーム」を実行する遊技領域のほぼ中央に備えた表示装置とは別に配設された表示装置において、デモ演出のためのデモ表示演出データを適宜の記憶手段に記憶し、通常時はデモ表示を行い、所定の表示を行うに際しては所定の表示を行うことは従来周知の構成である(必要ならば後記エの参考文献参照)。
そうすると、引用発明の小型表示装置80において、「画像ROM323」の「キャラクタ画像や映像データ」に、デモ演出のためのデモ表示演出データも含めて、本願発明の「前記第2演出データは、前記変動動作のうち前記第2特定演出のための第2特定演出データと、デモ表示を表示するデモ表示演出のためのデモ表示演出データとを含」(構成G)む構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

イ また、上記アで検討したように、引用発明において、「小型表示装置80において、デモ演出のためのデモ表示演出データを適宜の記憶手段に記憶し、通常時はデモ表示を行い、所定の表示を行うに際して、所定の表示を行う構成」となした場合には、「小型表示装置80」は通常はデモ演出を行い、「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し」あるいは「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示する」際には、当該デモ演出を中断して「大当り」あるいは、「確変!」の文字を表示する構成となることは明らかである。
また、当該「大当り」及び「確変!」の文字の表示を一瞬とするか、あるいは、所定時間継続するかは、発明を実施する際に当業者が適宜定める事項であるところ、遊技者に大当り報知や確変報知を行うための表示であるから、遊技者により確実に報知するべく所定時間継続するものとなすことは当業者が容易になし得ることである。
さらに、「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し」あるいは「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示する」場合は、表示装置41において、「特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき」あるいは「確変状態に移行したとき」及び「『上注目』等の文字を表示させる」ときであるから、表示装置41における当該表示と並行して小型表示装置80に表示することも、発明を実施する際に当業者が適宜定める事項であるところ、引用発明の「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し」あるいは「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示する」ことは、遊技者に大当り報知や確変報知を行うための表示であるから、遊技者により確実に報知するべく表示装置41における当該表示と並行して小型表示装置80に表示することも当業者が容易になし得ることである。

ウ 以上ア及びイでの検討によれば、引用発明において、「小型表示装置80」は通常はデモ演出を行い、「小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し」あるいは「小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示する」際には、当該デモ演出を中断して「大当り」あるいは、「確変!」の文字を表示する構成となし、当該「大当り」及び「確変!」の文字の表示を所定時間継続するものとなし、表示装置41における当該表示と並行して小型表示装置80に表示することとなすことは当業者が容易になし得ることであるから、引用発明の「前記表示装置41における飾り特図変動表示ゲームは、数字等で構成される飾り特別図柄(識別情報)が左(第一特別図柄)、右(第二特別図柄)、中(第三特別図柄)の順に変動表示を開始して、所定時間後に変動している図柄を順次停止させて、特図変動表示ゲームの結果を表示することで行われ、特図始動記憶数に対応する飾り特別図柄による変動表示ゲームを行うとともに、興趣向上のためにキャラクタの出現など多様な演出表示が行われ、特図変動表示ゲームにて大当り結果が導出されるとき、小型表示装置80に『大当り』の文字を表示し、確変状態に移行したとき、小型表示装置80に例えば『確変!』の文字を表示し、小型表示装置80にて大当り報知や確変報知を行うとき、小型表示装置80に注目させるため、表示装置41に『上注目』等の文字を表示させる」(構成e、f、i)構成に基づいて、本願発明の「前記演出制御手段は、前記第1表示手段への前記第1特定演出の表示を実行しない場合には、前記第2表示手段に前記デモ表示演出を表示させ、前記第1表示手段への前記第1特定演出の表示を実行する場合には、前記第2表示手段への前記デモ表示演出の表示を中断して、前記第2表示手段への前記第2特定演出の表示を開始させ、その後、前記第2表示手段に前記第2特定演出の表示を継続することで、該第2特定演出の表示を、前記第1特定演出の表示に並行して実行させる」構成(構成I)となすことは当業者が容易に想到し得たことである。

エ 参考文献
(ア)特開平11-267342号公報
段落【0027】「可変表示部20の下方には情報表示部3を構成する第1情報表示部30Aが設けられており、可変表示部20から離間した遊技盤面11の右上隅には情報表示部30を構成する第2情報表示部30Bが設けられている。」、【0039】「遊技機10が稼動状態にないときは、情報表示部30の一つである第2情報表示部30Bは遊技機10外に設けられた情報表示の制御をする情報提供装置100から送られて来た情報を表示する。例えば、当該遊技機10で遊技を行おうとする遊技者を迎えるような『いらっしゃい/本日サービスDay』等の情報を表示する。」及び【0040】「第2情報表示部30Bには図柄合せゲームの進行に合わせて遊技者を応援するメッセージ等が表示される。」との記載。
(イ)特開2008-29542号公報
段落【0025】「パチンコ遊技機1における遊技領域の中央位置には、複数種類の演出画像(第1の演出画像)を含む各種画像の表示を行う第1画像表示装置5Aが設けられている。また、第1画像表示装置5Aとは別個に、複数種類の演出画像(第2の演出画像)を含む各種画像の表示を行う第2画像表示装置5Bが設けられている。・・・第2画像表示装置5Bは遊技領域の外部や遊技機用枠3の前面上部、前面下部、前面側方といった、パチンコ遊技機1における任意の位置に設置されていてもよい。」、【0028】「第1画像表示装置5Aの表示画面では、特別図柄表示装置4による特図ゲームにおける特別図柄の可変表示に対応して、例えば3つに分割された表示領域としての可変表示部にて、特別図柄とは異なる各々が識別可能な複数種類の飾り図柄を可変表示する。第2画像表示装置5Bの表示画面では、パチンコ遊技機1における遊技に関する所定の情報などを表示することができる。ここで、パチンコ遊技機1における遊技に関する所定の情報としては、例えばパチンコ遊技機1の機種名や製造会社名、パチンコ遊技機1での大当り確率や小当り確率(スペック)、パチンコ遊技機1での遊技の手順、各種のリーチ演出が行われた場合に大当りとなる確率(リーチの信頼度)、パチンコ遊技機1での遊技中に出現するキャラクタの説明などを示す情報のうち、いずれかが含まれていればよい。」及び、【0389】「第2画像表示装置5Bの表示画面上に表示される演出画像としては、例えば図21(A)?(C)に示すようなデモ画面#1?#3が用意されている。」との記載。

(3)本願発明が奏する効果について
上記相違点によって本願発明が奏する効果は、当業者が引用発明から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、意見書の「2.特許請求の範囲および明細書の補正について」の「(2)補正後の本願発明の効果について」において、
「デモ表示演出の表示の中断後に第1特定演出および第2特定演出の表示が開始されるので、遊技者が、第1特定演出および第2特定演出の開始直前までデモ表示演出を視認可能です。これにより、第1特定演出および第2特定演出に関連する情報を、その演出の開始直前まで、デモ表示演出によって得ることができます。
したがって、遊技者が、第1特定演出および第2特定演出を効果的に楽しむことができます。ゆえに、遊技の興趣を向上させることができます。」
と主張している。

イ しかしながら、本願請求項1は、「デモ表示」の具体的内容について、「第1特定演出および第2特定演出に関連する情報」とは特定していない。
そうすると、遊技機の技術分野における「デモ表示」は、ホールのCMを含め、遊技機に関する適宜のデモを含むと解される。
そして、遊技機がデモを表示していれば、遊技者が当該デモに関する情報を得ることができることは当然予測し得る当然の効果にすぎない。
したがって、上記相違点により奏する本願発明の効果は特別なものではない。

(5)まとめ
以上のように、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-02-28 
結審通知日 2019-03-07 
審決日 2019-03-19 
出願番号 特願2016-137713(P2016-137713)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 知晋  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 松川 直樹
荒井 誠
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人あい特許事務所  

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