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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1351358 |
審判番号 | 不服2018-5213 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-16 |
確定日 | 2019-05-07 |
事件の表示 | 特願2015-201030号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年4月13日出願公開、特開2017-70621号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯の概要 本願は、平成27年10月9日の出願であって、平成29年7月14日付けで拒絶の理由が通知され、平成29年9月21日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成30年1月9日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年4月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、平成30年12月6日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年2月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年2月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「A 遊技盤が取付固定された本体枠部材と、前記本体枠部材に対して開閉自在に取り付けられた前扉とを備えた遊技機であって、 B 前記前扉は、 B1 ガラス板と、遊技に使用する遊技球を一時的に貯留する上受け皿とを有する固定部と B2 上部が前記本体枠部材の上部と軸支されており、前記ガラス板の前側に位置する閉位置と、前記閉位置から所定量回動した開位置との間で開閉自在に可動する可動部とを備え C 前記可動部は、 C1 下部が開口するとともに、左側、右側、及び前記上部において前記左側及び右側とを繋ぐように形成された上側とからなるコ字形に形成された可動本体と、 C2 前記可動本体の左側、右側及び上側の三方に囲まれた中央部に配置され、前記可動部の奥側に位置する遊技盤を視認することができるように形成されている視認窓とを有しており、 D 前記上受け皿は前記可動部が前記閉位置に位置するときに露出した状態で配置されていることを特徴とする遊技機。」(記号A?Dは、分説するため当審で付した。) 3 拒絶の理由 平成30年12月6日付けの当審で通知した拒絶理由は、概略、次のとおりのものである。 本件出願の平成30年4月16日付け手続補正で補正された請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開2012-139524号公報(新たに引用された文献) 刊行物2:特開2009-189378号公報(周知の技術を示す文献; 新たに引用された文献) 刊行物3:特開2012-176130号公報(周知の技術を示す文献; 新たに引用された文献) 4 刊行物に記載された発明 (1)刊行物1について 当審による拒絶理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物1である特開2012-139524号公報には、図面とともに次の事項が記載されていると認められる(下線は当審で付した。以下同じ。)。 ア 記載事項 (ア)「【技術分野】 【技術分野】 【0001】 本発明は、パチンコ遊技機、スロットマシン、パチロット遊技機等の各種の遊技機に関するものである。 【背景技術】 【0002】 一般に、パチンコ遊技機等の遊技機は、遊技領域を有する遊技盤が内部に組み付けられた本体枠が、矩形状の外枠に着脱自在に取り付けられて構成されている。そして、本体枠には、遊技盤に対して遊技球を発射操作可能な発射ハンドル、余剰球を受ける下皿等が前側(即ち遊技者側)に設けられると共に、遊技盤を透視可能なガラス板を装着した窓枠が開閉自在に取り付けられている」。 (イ)「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、上述した特許文献1に記載の従来のパチンコ遊技機は、装飾カバーによって窓枠全体を覆う構成を採用することにより、デザイン変更等に伴って発生するコストの低減を図るものであり、従来よりも視覚的効果に優れた意匠性を提供するものではなかった。また、装飾カバーに立体的な装飾を設けた場合には、装飾カバーが本体枠に対して左端で垂直軸心回りに開閉される構造であるため、装飾カバー開放時に当該遊技機の左側に大きく出っ張って隣席の遊技者の邪魔になるという問題がある。 【0009】 一方、特許文献2に記載の従来の遊技機では、ガラス扉枠を上下に開閉させるための開閉駆動装置を設けることによって、従来よりもコストが大幅に増大するという問題がある。また、開閉駆動装置が故障により使用できない場合があり得るだけでなく、故障発生を防止するためにメンテナンスを定期的に行う必要があり、遊技機のメンテナンスに伴う労力やコストも増大するという問題がある。さらに、ガラス板が装着されたガラス扉枠を上方へ開放させる構造では、遊技領域のメンテナンス作業等の際に作業者がガラス板に頭をぶつけて怪我をする危険性がある。すなわち、遊技機は遊技ホールにおいて遊技島に設置されるが、この時、遊技機の最上部は床から140cm程度の高さとなる。このため、ガラス扉枠を上方へ開放して略水平に保持した場合、ガラス板が大人の身長よりも低い140cm程度の高さで保持されることになる。従って、作業者が頭を下げて遊技領域のメンテナンス作業等を行っている際、身長よりも低い位置で略水平に保持されたガラス扉枠の真下で作業者が急に頭を持ち上げると、頭がガラス板にぶつかって最悪の場合にはガラス板が割れて大けがをする危険性がある。 【0010】 解決しようとする課題は、簡単且つ安価な構成で前面部分を上下に容易に開閉可能であると共に視覚的効果に優れた立体的装飾を形成可能な遊技機を提供することである。 ・・・ 【0012】 本発明によれば、装飾枠により窓枠の前面の少なくとも一部を覆って窓枠と装飾枠とが前後に重層する構造を形成することにより、強度の向上を図り、不正行為を防止すると共に、視覚的効果に優れた立体的装飾の形成が可能となる。また、窓枠と装飾枠とで重量が分担されるので、それぞれの強度を高く設定することは必要とされない。また、装飾枠は重量の大きいガラス板等の透明板を有しないため相対的に軽量であり、小さな力で装飾枠を上下に軽く開閉することができる。よって、電動で装飾枠を開閉するための開閉駆動装置等を設ける必要がなく、遊技機全体の構成が複雑化せず且つコストを低く抑えることができる。また、ガラス板等が装着された窓枠が上方に開放される従来構成では、作業者がガラス板に頭をぶつける危険性があるが、本発明によればそのような危険性はなく、安全性が高い。さらに、装飾枠が本体枠に対して上方又は下方に開放されるので、装飾枠に大型の立体的装飾が施された場合でも、隣の遊技者の邪魔にならずに装飾枠を大きく開放することができる。」 (ウ)「【0017】 本体枠3には、後述する下皿ユニット51を除く本体枠3の前面側を覆うように、ガラス扉枠4が本体枠3左端の垂直軸心回りに開閉自在に設けられている。さらに、本体枠3には、装飾枠60が本体枠3上端の水平軸心回りに開閉自在に設けられている。尚、ガラス扉枠4が本発明の窓枠を構成するものである。 【0018】 本体枠3の後側(ガラス扉枠4の奥、外枠2の内側)には、図5に示すように、遊技盤5が着脱可能に装着されている。なお、遊技盤5は、その周縁部が本体枠3の裏側に当接した状態で取り付けられており、図5では、遊技盤5の前面部の略中央部分だけが本体枠3の前面側に露出した状態となっている。この遊技盤5の上下方向の長さは476mm、左右方向の長さは451mmとなっている。また、遊技盤5には、ルータ加工が施されることによって複数の開口部が形成されており、各開口部には、普通入賞チャッカー6、可変入賞装置7、作動チャッカー8、スルーチャッカー10等が配設されている。」 (エ)「【0031】 ガラス扉枠4における窓部41下方の下部フレームには、上皿54が一体的に設けられている。上皿54は、合成樹脂を成形することによって製造され、ガラス扉枠4の払出し口45より払い出された遊技球及び遊技者により投入された遊技球を貯留する貯留部54a、払出し口45より払い出された遊技球を貯留部54aへ流入させる流入口54l、及び貯留部54aに貯留された遊技球をガラス扉枠4の供給穴49を通して発射装置31側へ供給する供給口54rを有し、流入口54l及び供給口54rの後端面においてガラス扉枠4にビス等を用いて取り付け固定されている。」 (オ)「【0048】 また、ガラス扉枠4の窓部41に装着されたガラス板42が、装飾枠60の開口より外部に露出するので、遊技者はガラス板42を介して遊技領域14を確実に視認することができる。また、ガラス扉枠4に設けられた貸し球操作部が装飾枠60の開口より外部に露出するので、遊技者は貸し球操作部を確実に操作することができる。」 (カ)「【0074】 また、前記第一の実施形態において、窓部41より上方部分を覆う上辺部と、窓部41より下方部分を覆う下辺部とを別体とし、上辺部が本体枠3に対して上方へ開放され且つ下辺部が本体枠3に対して下方へ開放されるように構成してもよい。本変形例によれば、本体枠3の遊技領域14等に対するメンテナンスの際には、上辺部のみを本体枠3に対して上方へ開放した状態で作業を行うことができ、上皿54等のメンテナンス作業の際には、下辺部のみを本体枠3に対して下方へ開放した状態で作業を行うことができる。」 (キ)「【0075】 (付記) 上述した実施形態から、以下に示す本発明の各手段を抽出することができる。以下、各手段につき、必要に応じて作用効果等を付記しつつ説明する。 1.遊技領域を有する本体枠と、その本体枠の前面側に設けられ且つ前記遊技領域を臨む窓部に透明板を装着してなる窓枠とを備えた遊技機であって、前記窓枠の前面の少なくとも一部を覆うと共に前記本体枠に対して上下に開閉自在に取り付けられた装飾枠を備えたことを特徴とする遊技機。 手段1によれば、装飾枠により窓枠の前面の少なくとも一部を覆って窓枠と装飾枠とが前後に重層する構造を形成することにより、強度の向上を図り、不正行為を防止すると共に、視覚的効果に優れた立体的装飾の形成が可能となる。また、窓枠と装飾枠とで重量が分担されるので、それぞれの強度を高く設定することは必要とされない。また、装飾枠は重量の大きいガラス板等の透明板を有しないため相対的に軽量であり、小さな力で装飾枠を上下に軽く且つ安全に開閉することができる。よって、電動で装飾枠を開閉するための開閉駆動装置等を設ける必要がなく、遊技機全体の構成が複雑化せず且つコストを低く抑えることができる。また、ガラス板等が装着された窓枠が上方に開放される従来構成では、作業者がガラス板に頭をぶつける危険性があるが、手段1によればそのような危険性はなく、安全性が高い。さらに、装飾枠が本体枠に対して上方又は下方に開放されるので、装飾枠に大型の立体的装飾が施された場合でも、隣の遊技者の邪魔にならずに装飾枠を大きく開放することができる。 ・・・ 【0077】 3.前記装飾枠は、その上端がヒンジを介して前記本体枠上部に取り付けられ、前記本体枠に対して水平軸心回りに開閉自在に枢着されたことを特徴とする手段2に記載の遊技機。 手段3によれば、装飾枠は、その上端がヒンジを介して本体枠上部に取り付けられ、本体枠に対して水平軸心回りに開閉自在に枢着されているので、簡単且つ安価な構成で装飾枠を本体枠に対して上方へ開放することができる。」 (ク)「【0083】 9.前記装飾枠は、前記窓枠における少なくとも前記窓部より上方部分を覆うことを特徴とする手段1乃至8のいずれかに記載の遊技機。 手段9によれば、窓枠における少なくとも窓部より上方部分が装飾枠によって覆われるので、窓部より上方部分における強度の向上を図りつつ視覚的効果に優れた立体的装飾を形成することができる。 【0084】 10.前記装飾枠において前記窓枠の前記窓部より上方部分を覆う上辺部が前記本体枠に対して上方へ開放されるように構成されたことを特徴とする手段9に記載の遊技機。 手段10によれば、窓枠の窓部より上方部分を覆う上辺部を本体枠に対して上方へ開放した状態で、本体枠の遊技領域等に対するメンテナンス作業を行うことができる。」 (ケ)「【0096】 22.前記装飾枠には、前記窓枠に設けられた前記窓部に対応する開口又は切り欠きが形成されたことを特徴とする手段21に記載の遊技機。 手段22によれば、窓枠の窓部に装着された透明板が、装飾枠の開口又は切り欠きより外部に露出するので、遊技者は透明板を介して遊技領域を確実に視認することができる。」 イ 認定事項 (コ)【0075】に「上述した実施形態から、以下に示す本発明の各手段を抽出することができる。・・・」と記載されているように、刊行物1には、実施形態から「手段1.」?「手段32.」を抽出することが記載されている。 そして、「手段9.」について、【0083】に「9.前記装飾枠は、前記窓枠における少なくとも前記窓部より上方部分を覆うことを特徴とする手段1乃至8のいずれかに記載の遊技機」が記載されている。この記載によると、「装飾枠」は、「窓枠における少なくとも窓部より上方部分を覆う」ものであるから、窓枠における窓部より上方部分のみを覆うものも含むものである。ここで、【0017】の記載によると、「ガラス扉枠4が本発明の窓枠を構成する」ものであるので、刊行物1には、ガラス扉枠における窓部より上方部分のみを覆う装飾枠について記載されているといる。 また、「手段10.」について、【0084】に「10.前記装飾枠において前記窓枠の前記窓部より上方部分を覆う上辺部が前記本体枠に対して上方へ開放されるように構成されたことを特徴とする手段9に記載の遊技機」が記載されている。この記載は、「手段9.」の装飾枠のガラス扉枠における窓部より上方部分のみを覆う装飾枠を、「上辺部」と定義すると共に、その「上辺部」が「本体枠に対して上方へ開放されるように構成され」ていることを特定するものである。 さらに、「手段3.」について、【0077】に「3.前記装飾枠は、その上端がヒンジを介して前記本体枠上部に取り付けられ、前記本体枠に対して水平軸心回りに開閉自在に枢着されたことを特徴とする手段2に記載の遊技機。」が記載されている。 また、装飾枠の実施形態について記載された【0074】に「・・・窓部41より上方部分を覆う上辺部・・・上辺部が本体枠3に対して上方へ開放され・・・」と記載されている。したがって、刊行物1には、装飾枠から「窓部41より上方部分を覆う上辺部」を抽出可能なことが示されている。 これらのことからみて、刊行物1には、その上端がヒンジを介して本体枠上部に取り付けられ、本体枠に対して水平軸心回りに開閉自在に枢着されることにより、本体枠に対して上方へ開放されるように構成され、ガラス扉枠における窓部より上方部分のみを覆う上辺部からなる装飾枠について記載されているものと認められる。 (サ) 「手段22.」について、【0096】に「22.前記装飾枠には、前記窓枠に設けられた前記窓部に対応する」「切り欠きが形成されたことを特徴とする手段21に記載の遊技機」が記載されている。 そして、装飾枠全体を示す正面図である【図10】(a)において、 ![]() 開口部が形成された装飾枠のうち、ガラス扉枠における窓部41の中央より上方の部分のみを覆う箇所に着目すれば、当該箇所は、下方に略半円弧状の切り欠きを有する略コ字状に形成されていると認められる。 したがって、認定事項(コ)に基づくと、刊行物1には、上辺部からなる装飾枠が、下方に窓部に対応する略半円弧状の切り欠きを有する略コ字状に形成されていることが記載されているものと認められる。 ウ 刊行物発明 上記アの(ア)?(ケ)の記載事項、及び、上記イの(コ)?(サ)の認定事項、及び、図面の図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる(a?dは、本願発明のA?Dに対応させて付与した。)。 「a 遊技盤5が装着されている本体枠3と(【0018】)、本体枠3に開閉自在に設けられているガラス扉枠4(【0017】)とを備えたパチンコ遊技機であって(【0001】)、 b ガラス扉枠4は、 b1 ガラス板42が装着された窓部41(【0048】)と、 遊技球を貯留する上皿54が一体的に設けられている下部フレーム(【0031】)と、 b2 その上端がヒンジを介して本体枠上部に取り付けられ、本体枠に対して水平軸心回りに開閉自在に枢着されることにより、本体枠に対して上方へ開放されるように構成され、ガラス扉枠における窓部より上方部分のみを覆う上辺部からなる装飾枠(認定事項(コ))とを備え、 c 上辺部からなる装飾枠は、 c1 下方に窓部に対応する略半円弧状の切り欠きを有する略コ字状に形成され(認定事項(サ))、 c2 ガラス扉枠の窓部に装着されたガラス板が、装飾枠の切り欠きより外部に露出するので、遊技者はガラス板を介して遊技領域を確実に視認することができる(【0012】、【0017】、【0096】) パチンコ遊技機。」 5 対比 本願発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。 (a) 刊行物発明における「本体枠3」、「ガラス扉枠4」は、それぞれ、本願発明における「本体枠部材」、「前扉」に相当する。 したがって、刊行物発明における構成aの「パチンコ遊技機」は、本願発明における構成Aの「遊技機」に相当する。 (b、b1) 刊行物発明における「ガラス板42」、「遊技球を貯留する上皿54」は、それぞれ、本願発明における「ガラス板」、「遊技に使用する遊技球を一時的に貯留する上受け皿」に相当する。 したがって、刊行物発明における構成bの「窓部41」と「下部フレーム」とを併せたものは、本願発明における「固定部」に相当する。 (b、b2) 刊行物発明における「その上端がヒンジを介して本体枠上部に取り付けられ、本体枠に対して水平軸心回りに開閉自在に枢着される」ことは、本願発明における「上部が本体枠部材の上部と軸支されて」「開閉自在に可動する」ことに相当する。 そして、刊行物発明において、装飾枠が「ガラス扉枠における窓部より上方部分のみを覆う」ことは、「上辺部からなる装飾枠」が、ガラス板42が装着された窓部41を前側から覆う閉状態にあることであるから、本願発明における可動部が「ガラス板の前側に位置する閉位置」にあることに相当する。 また、刊行物発明において、装飾枠が「本体枠に対して上方へ開放される」ことは、本願発明における可動部が「閉位置から所定量回動した開位置」にあることに相当する。 したがって、刊行物発明における構成b2の「上辺部からなる装飾枠」は、本願発明における構成B2の「可動部」に相当する。 (c、c1) 刊行物発明における「下方に窓部に対応する略半円弧状の切り欠きを有する」ことは、本願発明における「下部が開口する」ことに相当する。 刊行物発明における「略コ字状に形成され」ることは、「上辺部からなる装飾枠」が、左辺、右辺、左辺と右辺とを連結する上辺よりなる形状を有するといえる。 したがって、刊行物発明における「下方に窓部に対応する切り欠きを有する略コ字状に形成され」た「上辺部からなる装飾枠」は、本願発明における「下部が開口するとともに、左側、右側、及び前記上部において前記左側及び右側とを繋ぐように形成された上側とからなるコ字形に形成された可動本体」を有する「可動部」に相当する。 (c、c2) 刊行物発明における「装飾枠の切り欠き」は、構成c1より「窓部に対応する」ものであって、「略コ字状に形成され」た「上辺部からなる装飾枠」の「下方に」あるものである。 そして、上記(c、c1)において検討したように、刊行物発明において、「略コ字状」とは、左辺、右辺、上辺よりなり、上辺は左辺と右辺とを連結する形状のことである。 そうすると、刊行物発明における「装飾枠の切り欠き」は、左辺、右辺、上辺よりなり、上辺は左辺と右辺とを連結する形状の「上辺部からなる装飾枠」の左辺、右辺、上片の三方に囲まれた中央部に位置するといえる。 したがって、刊行物発明における「装飾枠の切り欠き」は、本願発明における「可動本体の左側、右側及び上側の三方に囲まれた中央部に配置され」る「視認窓」に相当する。 そして、刊行物発明における「遊技領域」は、刊行物1の記載事項(ア)として摘記した【背景技術】に「遊技領域を有する遊技盤」と記載されているように、「遊技盤5」に設けられるものであることは、当業者にとって自明である。 また、刊行物発明における「略半円弧状の切り欠きを有する」「上辺部からなる装飾枠」は、構成b2より「窓部」を覆うものであるから、窓部の手前側に位置するものである。 さらに、刊行物発明は、構成a?bを備えることにより、「ガラス板42が装着された窓部41」を備える「ガラス扉枠4」は、「遊技盤5が装着されている本体枠3」に「開閉自在に設けられている」ものであるから、「ガラス扉枠4」は「本体枠3」の手前側に位置するといえる。 したがって、刊行物発明における「ガラス板を介して遊技領域を確実に視認すること」は、ガラス板を介して遊技盤の表面を確実に視認することでもあるから、本願発明における「可動部の奥側に位置する遊技盤を視認することができるように形成されている」ことに相当する。 ゆえに、刊行物発明における「装飾枠の切り欠き」を有する「上辺部からなる装飾枠」は、本願発明における「可動本体の左側、右側及び上側の三方に囲まれた中央部に配置され、可動部の奥側に位置する遊技盤を視認することができるように形成されている視認窓」を有する「可動部」に相当する。 上記(a)?(c、c2)における本願発明と刊行物発明との対比から、本願発明と刊行物発明とは、 「A 遊技盤が取付固定された本体枠部材と、前記本体枠部材に対して開閉自在に取り付けられた前扉とを備えた遊技機であって、 B 前記前扉は、 B1 ガラス板と、遊技に使用する遊技球を一時的に貯留する上受け皿とを有する固定部と B2 上部が前記本体枠部材の上部と軸支されており、前記ガラス板の前側に位置する閉位置と、前記閉位置から所定量回動した開位置との間で開閉自在に可動する可動部とを備え C 前記可動部は、 C1 下部が開口するとともに、左側、右側、及び前記上部において前記左側及び右側とを繋ぐように形成された上側とからなるコ字形に形成された可動本体と、 C2 前記可動本体の左側、右側及び上側の三方に囲まれた中央部に配置され、前記可動部の奥側に位置する遊技盤を視認することができるように形成されている視認窓とを有している遊技機。」の点で一致し、構成Dに関し、次の点で相違する。 [相違点](構成D) 本願発明は、上受け皿は可動部が閉位置に位置するときに露出した状態で配置されているのに対して、 刊行物発明は、そのような構成を備えているか否か不明である点。 6 当審の判断 (1)相違点について 上記相違点について検討する。 パチンコ遊技機の技術分野において、本体枠に対して、垂直方向を回転軸として回動自在に設けられた前枠が、ガラス板を備えることに加えて、露出した状態で配置されている上皿を有することは、刊行物2:特開2009-189378号公報の【0014】、【図2】や、刊行物3:特開2012-176130号公報の【0018】、【0020】?【0021】、【図2】に示されているように本願出願前に周知の技術事項である。 そして、引用発明と上記周知の技術事項とは、前扉に上皿を一体的に設けた点で共通する。 また、刊行物発明において「上皿54」をどこに配置するかは、上皿自体の強度や、設置箇所を「本体枠3」にするか、「ガラス扉枠4」にするか等を考慮して、当業者が適宜決定し得たものである。 よって、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用して、上皿54を全体を露出した状態で配置することは、当業者が必要に応じてなし得たものである。 次に、刊行物発明が奏する効果について検討する。 刊行物発明は、「・・・作業者がガラス板に頭をぶつけて怪我をする危険性がある。・・・作業者が・・・頭がガラス板にぶつかって・・・ガラス板が割れて大けがをする危険性がある。」なる課題の認識の下、刊行物発明の構成b2が基づく「手段10.」を備えることによる、「窓枠の窓部より上方部分を覆う上辺部を本体枠に対して上方へ開放した状態で、本体枠の遊技領域等に対するメンテナンス作業を行うことができる。」という効果を奏するものである。 また、刊行物発明が前提手段とする「手段1.」が、「・・・強度を高く設定することは必要とされない。・・・小さな力で装飾枠を上下に軽く且つ安全に開閉することができる。」(【0075】)という効果を奏するものであることから、刊行物発明は、本願発明が奏する効果と同様の効果を奏するものである。 よって、本願発明は、刊行物発明に上記周知の技術事項を適用することにより当業者が容易になし得たものである。 (2)請求人の主張について 平成31年2月8日付け意見書において、請求人は、「本願発明は、上記(ロ)から(ヘ)の構成を備えています。特に、本願発明は、上記(ニ)、(ホ)の構成、すなわち可動部は下部が開口するとともに、左側、右側、及び本体枠部材の上部において左側及び右側とを繋ぐように形成された上側とからなるコ字形に形成された可動本体と、可動本体の左側、右側及び上側の三方に囲まれた中央部に配置され、可動部の奥側に位置する遊技盤を視認することができるように形成されている視認窓とを有しています。 しかしながら、引用文献1に記載された発明は、本願発明における可動本体に対応する構成を一切備えていません。つまり、本願発明では、可動本体が上記した通りコ字形に形成されており、しかも上側が本体枠部材の上部において軸支されるように構成されているのに対し、引用文献1に記載された発明は、本願発明の可動本体に相当する部材が本願発明における本体枠部材の上部において左右を繋ぐように形成されているのみならず、下部においても左右を繋ぐように形成されています。したがって、引用文献1に記載された発明では、本願発明における視認窓の構成も備えることにはならないだけでなく、そもそも本願発明における可動本体の構成も備えていないことになるのです。」と主張する。 そこで、請求人の上記主張について検討する。 刊行物発明における構成c?c2は、「上辺部からなる装飾枠は、下方に窓部に対応する切り欠きを有する略コ字状に形成され」るものであり、また、「ガラス扉枠の窓部に装着されたガラス板が、装飾枠の切り欠きより外部に露出するので、遊技者はガラス板を介して遊技領域を確実に視認することができる」ものである。 そして、刊行物発明の構成c?c2が本願発明の構成C?C2に相当することは、上記「5 対比(c、c1)?(c、c2)」において検討したとおりである。 したがって、刊行物発明は、「可動本体」と「視認窓」を有することから、請求人の上記主張を採用することはできない。 (3)小括 本願発明により奏される効果は、刊行物発明、及び、周知の技術事項から予測し得る効果の範囲内のものであって、格別なものではない。 よって、本願発明は、刊行物発明、及び、周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-02-28 |
結審通知日 | 2019-03-06 |
審決日 | 2019-03-19 |
出願番号 | 特願2015-201030(P2015-201030) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮川 数正 |
特許庁審判長 |
安久 司郎 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 荒井 誠 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 細井 勇 |
代理人 | 佐藤 太亮 |