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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C08J
管理番号 1351387
異議申立番号 異議2017-700828  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-31 
確定日 2019-02-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6087491号発明「熱収縮性ポリエステル系フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6087491号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲とおり、訂正後の請求項[1?8]について訂正することを認める。 特許第6087491号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6087491号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願(以下、「本件出願」という。)は、2008年(平成20年)12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年12月11日 大韓民国(KR))を国際出願日とする出願であって、平成29年2月10日にその特許権の設定登録がされ、同年3月1日に特許公報への掲載がされ、その後、その請求項1ないし8に係る特許に対し、同年8月31日(受理日同年9月4日)に特許異議申立人 早川いづみ(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
そして、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年11月30日付け:取消理由通知書(同年12月5日発送)
平成30年 2月27日 :訂正請求書、意見書(特許権者)
平成30年 4月20日 :意見書(申立人)
平成30年 6月21日付け:取消理由通知書(同年6月26日発送)

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年2月27日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正」という。)の訂正の内容は以下の(1)のとおりである(なお、合議体により、訂正部分に下線を付した。)。

(1) 訂正事項1
訂正前の請求項1の「機械方向に工程上自然に発生する延伸比」を、
「機械方向にフィルムの製造工程上発生する自然延伸比」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 訂正の目的の適否
訂正事項1は、取消理由(特許法第36条第6項第2号)に対応して、訂正前の請求項1の「機械方向に工程上自然に発生する延伸比」を、「機械方向にフィルムの製造工程上発生する自然延伸比」とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(2) 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1の「フィルムの製造工程上」については、願書に最初に添付された明細書(以下、「当初明細書」という。)の段落【0010】に、
「また、本発明は、フィルムの製造工程、印刷工程、スリット工程及び容器製作工程のいずれかにおいて、一定張力を伴う工程中に発生する破断に対して安定でありながらも印刷均一性を確保した熱収縮性フィルムを提供する。」
と記載され、また、段落【0041】に
「前記特性を有する本発明のポリエステル熱収縮フィルムは、下記のような製造工程によって製造できる。」と記載されており、訂正前の「工程上」が「フィルムの製造工程」上を意味するのは自明である。
また、訂正事項1に係る「自然延伸比」については、当初明細書の段落【0018】、【0019】、【0045】に記載されている。
よって、訂正事項1は新規事項の追加には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
そして、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものでないから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項にも適合する。

(3) 一群の請求項について
訂正事項による本件訂正は、訂正前の請求項1を訂正するものであるところ、訂正前の請求項1ないし8は、請求項1の記載を請求項2ないし7で直接又間接的に引用しており、訂正事項1により連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項である。

(4) まとめ
以上総括すると、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項の規定並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを認める。


第3 本件発明について
上記第2のとおり、本件訂正は認容されるので、本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、平成30年2月27日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ポリエステルの押し出し及び延伸によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸のようなジカルボン酸を1種以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールのようなジオールを1種以上含むジオール成分とから得られるコポリエステルより選択される1種以上のコポリエステル、またはホモポリエステルと前記コポリエステルとの混合物を含み、
前記ポリエステルを、200?350℃で、ポリマーせん断速度が100?500sec^(-1)となるように調整して押し出す工程と、
機械方向にフィルムの製造工程上発生する自然延伸比に加えて、機械方向の総延伸比が3.5?8.4%になるように機械方向に延伸する工程と、
幅方向に延伸する工程とを含み、
初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5?6.5kg/mm^(2)、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50?700%、厚さ均一度(ΔR)が4μm以下、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記幅方向に延伸する工程は、(ポリエステルのガラス転移温度-10℃)?(ポリエステルのガラス転移温度+30℃)の温度範囲で行われる請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、95℃温水中での主収縮方向の収縮率が40%以上であり、主収縮方向の破断伸度が60?120%である請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、溶融ピーク温度が190?210℃であり、固有粘度が0.60?0.72dl/gである請求項1?3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記コポリエステルは、テレフタル酸単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を60モル%以上含むジオール単位を含む請求項1?4のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記コポリエステルは、ガラス転移温度が67?77℃、固有粘度が0.60?0.75dl/gである請求項1?5のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ホモポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリトリエチレンテレフタレートである請求項1?6のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリエステル樹脂の総量の7?15重量%で使用される請求項7に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。」


第4 特許異議の申立てについて
訂正された本件特許の請求項1ないし8に係る発明に対して、平成30年6月21日付けで概略以下の取消理由通知を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかった。

「1 本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2 本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」

そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項1ないし8に係る発明は、この取消理由によって取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルの押し出し及び延伸によって熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法であって、
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸のようなジカルボン酸を1種以上含むジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールのようなジオールを1種以上含むジオール成分とから得られるコポリエステルより選択される1種以上のコポリエステル、またはホモポリエステルと前記コポリエステルとの混合物を含み、
前記ポリエステルを、200?350℃で、ポリマーせん断速度が100?500sec^(-1)となるように調整して押し出す工程と、
機械方向にフィルムの製造工程上発生する自然延伸比に加えて、機械方向の総延伸比が3.5?8.4%になるように機械方向に延伸する工程と、
幅方向に延伸する工程とを含み、
初期伸度10%未満での主収縮方向に垂直な方向の強度が3.5?6.5kg/mm^(2)、主収縮方向に垂直な方向の破断伸度が50?700%、厚さ均一度(ΔR)が4μm以下、主収縮方向に垂直な方向の収縮率が5%以下である熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記幅方向に延伸する工程は、(ポリエステルのガラス転移温度-10℃)?(ポリエステルのガラス転移温度+30℃)の温度範囲で行われる請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、95℃温水中での主収縮方向の収縮率が40%以上であり、主収縮方向の破断伸度が60?120%である請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、溶融ピーク温度が190?210℃であり、固有粘度が0.60?0.72dl/gである請求項1?3のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記コポリエステルは、テレフタル酸単位を80モル%以上含むジカルボン酸単位、及びエチレングリコール単位を60モル%以上含むジオール単位を含む請求項1?4のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記コポリエステルは、ガラス転移温度が67?77℃、固有粘度が0.60?0.75dl/gである請求項1?5のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ホモポリエステルは、ポリブチレンテレフタレートまたはポリトリエチレンテレフタレートである請求項1?6のいずれか1項に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ポリブチレンテレフタレートは、ポリエステル樹脂の総量の7?15重量%で使用される請求項7に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-19 
出願番号 特願2010-537864(P2010-537864)
審決分類 P 1 651・ 536- ZAA (C08J)
P 1 651・ 537- ZAA (C08J)
P 1 651・ 853- ZAA (C08J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 上坊寺 宏枝  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岡崎 美穂
小柳 健悟
登録日 2017-02-10 
登録番号 特許第6087491号(P6087491)
権利者 コーロン インダストリーズ インク
発明の名称 熱収縮性ポリエステル系フィルム  
代理人 相田 伸二  
代理人 鄭 元基  
代理人 林 一好  
代理人 正林 真之  
代理人 相田 京子  
代理人 鄭 元基  
代理人 林 一好  
代理人 相田 伸二  
代理人 正林 真之  
代理人 相田 京子  

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