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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01M 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01M 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 H01M |
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管理番号 | 1351394 |
異議申立番号 | 異議2016-701002 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-10-20 |
確定日 | 2019-03-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5909815号発明「クラッド式鉛蓄電池、クラッド式正極板、及びクラッド式正極板用集電体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5909815号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9、11-15〕、10について訂正することを認める。 特許第5909815号の請求項3、11ないし15に係る特許を維持する。 特許第5909815号の請求項1、2、4ないし10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5909815号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成28年4月8日付けでその特許権の設定登録がされ、同年4月27日に特許掲載公報が発行され、その後、同年10月20日に特許異議申立人(以下、「申立人」という。)吉田 敦子より請求項1-10に対して特許異議の申立てがされ、平成29年2月13日付けで取消理由が通知され、同年4月17日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、同年7月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年9月25日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、同年11月16日付けで申立人により意見書が提出され、平成30年2月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月26日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、同年5月24日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年6月26日付けで特許権者により意見書が提出され、同年7月25日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年9月27日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出され、同年10月24日付けで申立人に通知書を送付して意見を求めたが、申立人からの意見書の提出はなく、同年12月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、平成31年2月5日付けで特許権者により意見書、及び、平成30年9月27日付け訂正請求書を補正(以下、この補正により補正された訂正請求書による訂正請求を「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)する補正書が提出されたものである。 なお、本件訂正請求の補正は、平成30年12月20日付けで通知した訂正拒絶理由を解消するために、請求項の削除、引用形式の変更、請求項の番号の振り替え等の形式的な補正をするものであり、請求項に係る発明を実体的に補正するものではないので、申立人には意見を求めなかった。 第2 訂正の適否 1.本件訂正 平成29年4月17日にされた訂正請求、平成29年9月25日にされた訂正請求、及び、平成30年4月26日にされた訂正請求は、その後、本件訂正請求がされたため、取り下げられたものとみなす。以下、本件訂正について検討する。 本件訂正は、特許第5909815号の特許請求の範囲の請求項1-10を、訂正後の請求項1-15に、次のとおり訂正するものである。 [訂正前の請求項1-10] 【請求項1】 鉛合金で構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体であって、 前記鉛合金は、前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上7.0質量%以下のアンチモンを含み、残部が鉛及び不可避不純物であり、 前記芯金は、前記鉛合金を加圧鋳造法により鋳造されて構成されており、 前記芯金は、前記芯金の長手方向と直交する方向に切断した断面の断面積を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均断面積が4.9mm^(2)以上7.1mm^(2)以下であることを特徴とするクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項2】 前記アンチモンの含有量が、前記鉛合金の全質量に対して4.0質量%以上5.0質量%以下である請求項1に記載のクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項3】 前記鉛合金には、前記鉛合金の全質量に対して0.01質量%以上0.40質量%以下のヒ素が含まれている請求項1または2に記載のクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項4】 前記芯金は、前記断面の輪郭形状が円形である請求項1に記載のクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項5】 前記断面の直径を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均直径が2.5mm以上3.0mm以下である請求項4に記載のクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項6】 請求項1?5のいずれか1項に記載の集電体を備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板であって、 フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結して構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とをさらに備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板。 【請求項7】 請求項1?5のいずれか1項に記載の集電体を備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板であって、 フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結して構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とをさらに備え、 前記正極活物質の密度が3.30g/cm^(3)以上3.75g/cm^(3)以下であるクラッド式鉛蓄電池用正極板。 【請求項8】 請求項1?5のいずれか1項に記載の集電体を備える正極板を用いたクラッド式鉛蓄電池であって、 前記正極板が、さらに フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結させて構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とを備えているクラッド式鉛蓄電池。 【請求項9】 請求項1?5のいずれか1項に記載の集電体を備える正極板を用いたクラッド式鉛蓄電池であって、 前記正極板が、さらに フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結させて構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とを備え、 前記正極活物質の密度が3.30g/cm^(3)以上3.75g/cm^(3)以下であるクラッド式鉛蓄電池。 【請求項10】 鉛合金を鋳造して構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体の製造方法であって、 前記鉛合金は、前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上7.0質量%以下のアンチモンを含み、残部が鉛及び不可避不純物であり、 前記芯金は、前記鉛合金を加圧鋳造法により鋳造されて構成されており、 前記芯金は、前記芯金の長手方向と直交する方向に切断した断面の断面積を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均断面積が4.9mm^(2)以上7.1mm^(2)以下であることを特徴とするクラッド式鉛蓄電池用集電体の製造方法。 [訂正後の請求項1-15] 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 鉛合金で構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体であって、 前記鉛合金は、前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上7.0質量%以下のアンチモンと0.01質量%以上0.20質量%以下のヒ素を含み、残部が鉛及び不可避不純物であり、 前記芯金は、前記鉛合金を加圧鋳造法により鋳造されて構成されており、 前記芯金は、前記断面の輪郭形状が円形であり、 前記芯金は、前記芯金の長手方向と直交する方向に切断した断面の断面積を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均断面積が4.9mm^(2)以上5.7mm^(2)以下であることを特徴とするクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 前記アンチモンの含有量が、前記鉛合金の全質量に対して4.0質量%以上5.0質量%以下である請求項3に記載のクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項12】 請求項3又は11に記載の集電体を備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板であって、 フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結して構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とをさらに備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板。 【請求項13】 請求項3又は11に記載の集電体を備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板であって、 フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結して構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とをさらに備え、 前記正極活物質の密度が3.30g/cm^(3)以上3.75g/cm^(3)以下であるクラッド式鉛蓄電池用正極板。 【請求項14】 請求項3又は11に記載の集電体を備える正極板を用いたクラッド式鉛蓄電池であって、 前記正極板が、さらに フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結させて構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とを備えているクラッド式鉛蓄電池。 【請求項15】 請求項3又は11に記載の集電体を備える正極板を用いたクラッド式鉛蓄電池であって、 前記正極板が、さらに フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結させて構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とを備え、 前記正極活物質の密度が3.30g/cm^(3)以上3.75g/cm^(3)以下であるクラッド式鉛蓄電池。 2.訂正の適否 (1)請求項1-9、11-15について ア 訂正の目的 (ア)訂正後の請求項1、2に係る訂正 訂正後の請求項1、2に係る訂正は、請求項1、2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)訂正後の請求項3に係る訂正 訂正後の請求項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を独立形式の記載とし、その「0.01質量%以上0.40質量%以下のヒ素」、「平均断面積が4.9mm^(2)以上7.1mm^(2)以下」を、それぞれ、「0.01質量%以上0.20質量%以下のヒ素」、「平均断面積が4.9mm^(2)以上5.7mm^(2)以下」に限定し、さらに、「前記芯金は、前記断面の輪郭形状が円形であり、」との限定を付加するものであるから、訂正後の請求項3に係る訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (ウ)訂正後の請求項4-9に係る訂正 訂正後の請求項4-9に係る訂正は、請求項4-9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (エ)訂正後の請求項11に係る訂正 訂正後の請求項11は、訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3を、訂正後の請求項3を引用して訂正前の請求項2に記載の特定事項で限定する記載とするものであるから、上記(イ)の訂正後の請求項3に係る訂正と同じ限定をするものであり、訂正後の請求項11に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (オ)訂正後の請求項12-15に係る訂正 訂正後の請求項12-15は、訂正前の請求項6-9が「請求項1?5のいずれか1項に記載の」と訂正前の請求項1?5を引用していたものを、請求項1、2、4、5を削除する訂正をしたことに伴い、引用する請求項を「請求項3又は11に記載の」とするものであるから、上記(イ)の訂正後の請求項3に係る訂正、又は、上記(エ)の訂正後の請求項11に係る訂正と同じ限定をするものであり、訂正後の請求項12-15に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 拡張・変更、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内 請求項3、11-15に係る訂正は、明細書の段落【0058】の【表3】の実施例16、17の記載、訂正前の【請求項4】の記載、及び、明細書の段落【0016】の記載に基づいて特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (2)請求項10について 訂正後の請求項10に係る訂正は、請求項10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (3)一群の請求項 訂正前の請求項2-9は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1-9は一群の請求項であり、したがって、本件訂正請求は一群の請求項ごとにするものである。そして、別の訂正単位とする求めは実質的には認められないから、本件訂正は、訂正後の請求項〔1-9、11-15〕、10を訂正単位とする訂正の請求をするものである。 (4)まとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書、同条第3項、第4項、及び、同条第9項で準用する第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-9、11-15〕、10について訂正を認める。 第3 異議申立について 1.本件発明 本件訂正は上述のとおり適法なものであるので、訂正により削除された請求項1、2、4-10以外の本件特許の請求項3、11-15に係る発明(以下、請求項の番号により、「本件発明3」、「本件発明11」・・・などという。)は、それぞれ、本件訂正後の請求項3、11-15に記載した事項により特定されるとおりのものである。 2.特許異議申立理由及び取消理由の概要 申立人は、証拠として次の甲第1号証?甲第9号証を提出し、以下の申立理由1、2によって、本件訂正前の請求項1?10に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。また、この申立理由1、2に基づいて、当審により、平成30年7月25日付けで取消理由を通知した。 甲第1号証:特公昭59-29945号公報 甲第2号証:特開2011-96489号公報 甲第3号証:特開2001-52715号公報 甲第4号証:特開2012-74239号公報 甲第5号証:特開平6-325755号公報 甲第6号証:特開昭50-47137号公報 甲第7号証:特開2001-283838号公報 甲第8号証:特開2009-123407号公報 甲第9号証:特開2013-93312号公報 申立理由1:本件訂正前の請求項1?5、10に係る発明は、本件特許出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件の請求項1?5、10に係る特許は取り消すべきものである。 申立理由2:本件訂正前の請求項1?10に係る発明は、本件特許出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第2?9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件の請求項1?10に係る特許は取り消すべきものである。 3.甲各号証の記載 (1)甲第1号証 本件特許の出願日前に頒布された刊行物である上記甲第1号証には、以下の技術事項が記載されている。なお、下線は当審により付したものである。 ア.「発明の詳細な説明 本発明は鉛蓄電池の管状極板用格子の製造方法に関する。多年に亘り所謂管状極板が定置用および牽引車輛用鉛蓄電池の陽極板として使用されてきた。またこの種の管状極板は“装甲板”とも云われ、例えばウイッテ氏(E.Witte)の著書鉛蓄電池(西独、マインツ、オットークラウスコップ社出版、1969年第三版、23?34頁)またはジャーナル.オブ.パワー.ソーセス(Journal of Power Sources)第2巻、1977?78、3頁にも記載されている。 陽極の管状極板は外径が約9mmで相互に並行に配置される多孔質のプラスチックチューブより成り、中心部に耐腐蝕性の鉛合金製の丸棒を挿入し、その後酸化鉛が充填される。充填した極板は稀硫酸中で酸化鉛が酸化されて過酸化鉛に変化する陽極処理を受ける。今日使用されるプラスチックチューブには例えば耐酸かつ塩素に冒されない繊維が使用され、グラスファイバー、ポリプロピレンまたはポリエステルがすぐれた耐久性を示し好評を得ている。」(第1頁右欄第21行?第2頁左欄第4行) イ.「壁の厚みが0.3乃至0.4mmで0.2未満の細孔をもち、多芯のポリエステル繊維の束で編み上げ、多管ポケットの形状に仕上げたものが管状極板の蓄電池用として今日市場で入手出来る。 管状極板の蓄電池を従来の薬品を塗布した格子板と比較した利点の1つは、繰返し使用における長寿命である。一例として管状極板の電池は或る型の充放電サイクルとして1000乃至2000サイクルに耐えるのに対し通常の薬品塗布極板は同種の充放電サイクルに対し僅か400乃至800サイクルに耐えるに過ぎない。この理由は管状極板の場合には過酸化鉛の粒子で構成される活発な反応物質が管の中に閉じこめられ、そのため“流出”即ち電極から脱出し崩壊することがないためである。 一方管状極板用の硬い鉛製の棒の鋳造には多大の問題を抱えている。電気鉄道車輛における高出力化と比較的小床面積への据付の要請から電気機関車用蓄電池は屡々丈の高い構造のものとなり当然丈の高い極板が必要となる。中心部の格子棒は標準直径が精々3mm程度であるのに長さは800mm乃至其れ以上のものとなる。 非常に丈の高い極板はとりわけ鋳造上の問題を伴う。今日ダイキャスト方式が管状極板の格子の製造に広く用いられ、この目的のため特別製のダイカストマシンが数社のメーカーから入手出来る。これ等の機械においては鉛棒の長手方向に円錐形のノズルから高圧下で鉛が型の中に噴射される。鋳造品の寸法が長ければダイキャストマシンの価格が高価になる。経験によるとアンチモニーの含有量が少量または皆無の棒の圧力鋳造が特に困難であるがこれはアンチモニーの含有量が少くなるにつれて鋳造性が低下するためであり、今日では極板の高さにもよるが通常管状極板用格子に対しては12%のアンチモニーを含有する鉛合金が使用されている。」(第2頁左欄第5行?第2頁左欄第40行) ウ.「併し乍らアンチモニーの含有量の多いことは次の点で好ましくない。第1にアンチモニーは鉛より遥かに原価が高いので電池が高価格になる。第2はアンチモニーの高含有量による技術的な欠点である。陽極の酸化によつて格子から溶出したアンチモニーは電解液中に拡散して陰極に至りここでアンチモニーの金属の形で沈積する。この結果陰極板のアンチモニー汚損を生ずるが、これはアンチモニーがマイナスの鉛電極の水素の過電圧を低下させるからである。そこでは水素の急激な発生が起りマイナスの陰極板の自己放電を招く。長期間電池不使用時に自己放電により酸の濃度が低下し、この結果陽極格子の腐蝕を助長する。さらに水素の発生は電池の水の損失を意味するもので、水の補給を頻繁に行うことを要し保守が厄介となる。 従つてアンチモニーの含有量が少量または皆無の管状極板用合金棒を製造することは有益なことである。 本発明はアンチモニー含有量が皆無または少量の管状極板用格子を容易に簡単に製造する方法を提供することを目的とする。また此の方法は非常に丈の高い格子の鋳造を容易にするものでなければならない。 上記の目的のため本発明による鉛蓄電池の管状極板用格子の製造方法は管状極板用格子の鋳造時、溶解した鉛合金を、格子棒の側方から格子棒長手方向に対し直角方向に前記格子棒内および各格子棒長手方向に離隔配置され相隣れる格子棒を一時的に連結する複数の連結部内に注入して格子棒および連結部を同時に鋳造し、さらに次工程で格子棒自体を無傷のまま残して前記連結部を打抜き、完成した格子を得ることを特徴とするものである。」(第2頁左欄第41行?第2頁右欄第29行) エ.「以下本発明の実施例につき図面について説明する。 第1図は従来技術による管状極板用格子の鋳造方法を示す。溶融した鉛合金を圧力をかける機械の手段によつて格子棒の長手方向に並行に湯口1から噴射する。格子棒2は直径が約3mmで通常の場合芯出しのための摘み3を備える。鋳造後格子を切断線4に沿って切断し整形する。 経験によると上記の目的のため市販される圧力式ダイキャストマシンを使用する場合、或る長さの格子棒を製作するためには鉛合金のアンチモニー含有量を充分高める必要がある。格子の長さとアンチモニーの量との関係は経験によつて下記の第1表の通り定められている。この数字は管状極板用格子の鋳造用として推奨される通常の機械に適用されるもので、圧力は10気圧、鋳造温度は400乃至450℃である。 第 1 表 格子長 必要アンチモニー (mm) 含有量(%) 200 4 400 8 600 10 800 12 したがつてこの機械を使用する限り、長い格子をアンチモニーの少ないまたは皆無の鉛合金で製作することは不可能であり、さらに高価な機械を高圧力で使用することが必要となる。」(第2頁右欄第30行?第3頁左欄第14行) オ.「第2図は本発明の製造方法にもとずく実施例を示す。溶解した鉛合金は格子棒2に垂直に格子の略全長に亘つて格子の長辺部に沿つて鋳型に注入される。格子棒2の間の一時的な連結部5は20乃至120mmの間隔をとって同時に鋳造される。 第3図は一時的な連結部5の好適な形状を示すもので、第2図の管状極板用格子を連結部5の高さの所で横断した図形である。収縮部6は後記の通り打抜き作業を容易ならしめるためのものである。連結部5の厚肉部7は鉛を鋳型に容易に充満させるためのものである。鉛合金の鋳型への注入が進行する過程において熱の補給はこの厚肉部から行われる。厚肉部7を構成する鉛の熱容量が比較的大きいため、この部分は収縮部6または格子棒2よりも遅れて冷却する。引続き冷却が進行した結果は収縮は厚肉部7に発生し、格子棒2には完全な充満が保証される。 一時的な連結部5の厚肉部7の切断面は個々の格子棒2のそれよりも大きいことが好ましい。一例として、厚肉部7は厚さ2乃至6mm、長さ10乃至30mm、収縮部6は厚さ0.8乃至1.6mm、長さ5乃至20mmである。なお公知の芯出用摘み3を格子棒2に付着させる(第2図及び第3図に図示せず)。棒2の間の連結部5は要具を用いて本体から均等に打抜く。この際連結部の小部分は本体に残置し芯出用摘み3と同形としその代用を果す。 格子製造のための上記の方法は楕円形の管状極板用格子に対しても当然類似の方法を適用出来る。」(第3頁左欄第15行?第3頁左欄第43行) カ.「一時的な連結部を備えた格子の鋳造は手動または陰極の格子板に使用される安価な格子鋳造機即ち圧力式というより重力式ダイキャストを使用しても作業が可能である。従つてこの方法の利点の一つは高価な圧力式ダイキャストマシンを必要としないことてある。勿論単純な圧力式ダイキャストマシンの使用も可能ではあるが、圧力を使用する必要は全くないことが証明された。 溶融した鉛は鋳型の頂部に注入される。併し特別の場合、例えば高所に位置する加熱貯蔵槽から供給され鉛の湯の流れが良好であるときは鋳型の底部から注入してもよい。 鋳造後、格子棒2の間の一時的な連結部5、湯口1及び端部9は一括して格子棒本体を害なうことなく本体から打抜かれる。切断線4は収縮部6の位置を撰ぶ。打抜要具は鋳物を取扱う上において間違いのない適切な形状のものとする。打抜機を小型にするため一時的な連結部を各列毎に個別に打抜いてもよいが、1列のものを打抜後、列間の間隔だけその都度位置を変え次の格子に移動する。 上記の方法により最終的に管状極板用として正規の格子の外観を備えた格子が製造される。」(第3頁右欄第1行?第3頁右欄第23行) キ.「前述の方法はアンチモニー含有量が最小の管状極板用鉛合金製格子の鋳造を可能とする。即ちアンチモニー含有量が0乃至4%の格子が非常に容易に製造される。この程度の鉛合金に対しては砒素を0.3乃至0.5%添加するのが好ましい。またこの方法は例えばアンチモニー含有量が全く皆無の鉛-カルシウム合金製格子の鋳造にも適している。 本発明の方法がもたらす進歩は簡素で効果的でしかも低アンチモニーまたはアンチモニーを含有しない安価な性能のよい管状極板用格子の製造方法を提供したことである。」(第3頁右欄第24行?第3頁右欄第35行) ク.「図面の簡単な説明 第1図は管状極板用格子について従来の代表的な鋳造方法を示した図、第2図は本発明の鋳造方法にもとずく代表的な実施例を示した図、第3図は第2図のA-A線部の切断平面図である。 1…湯口、2…格子、4…打抜き線、5…連結部、6…連結部の収縮部、7…連結部の厚肉部。」(第3頁右欄第36行?第3頁右欄第42行) ケ. 「 」 コ. 「 」 サ. 「 」 4.判断 (1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について ア.請求項3、11-15について 次項(2)で述べるように、請求項3、11-15に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、少なくとも相違点1-3が存在するから、請求項3、11-15に係る発明が甲第1号証に記載された発明であるということはできない。 イ.請求項1、2、4-10について 申立理由1のうち請求項1、2、4-10を対象とするものは、本件訂正により請求項1、2、4-10が削除されたため、対象とする請求項が存在しない。 (2)申立理由2(特許法第29条第2項)について ア.請求項3について 甲第1号証には、「鉛蓄電池の管状極板用格子」について記載され、ここで、「鉛蓄電池の管状極板」とは、「鉛蓄電池の陽極板として使用され」、「相互に並行に配置される多孔質のプラスチックチューブより成り、中心部に耐腐蝕性の鉛合金製の丸棒を挿入し、その後酸化鉛が充填される」ものである(上記3.(1)ア.の下線部を参照)。 この「鉛蓄電池の管状極板」における、プラスチックチューブの中心部に挿入される「鉛合金製の丸棒」は、甲第1号証では「格子棒」、あるいは、単に「棒」とも称され、管状極板では、複数の棒が、プラスチックチューブの中心部で相互に並行に配置され、鉛蓄電池の管状極板用の格子を構成するもの(すなわち、管状極板は、管状極板用格子を備えるもの)であるといえる(なお、甲第1号証では、「格子棒」の文言は、「プラスチックチューブの中心部に挿入される棒」の意味、または、「棒を鋳造するための鋳型」との意味の二とおりに用いられているので、以下の甲第1号証に記載の発明の認定にあたっては、混同を避けるため前者の意味の場合には「丸棒」又は「棒」と、後者の意味の場合は「格子棒」と記載した。)。 以上を背景技術として、上記3.(1)ケ.の第1図及び上記3.(1)エ.の下線部には、「従来技術による管状極板用格子」について記載されている。 ここでいう「管状極板用格子」とは、鉛蓄電池の管状極板に用いられている格子であって、実際に鉛蓄電池を製造するときの部品としての形状のものと考えるのが自然であるから、上記3.(1)ケ.の第1図及び上記3.(1)エ.の下線部の記載によれば、鋳造後に第1図の切断線4に沿って切断し整形したものといえ、換言すれば、「管状極板用格子」とは、複数の丸棒が(第1図の)上部で連結されたものであるといえる。 また、上記3.(1)エ.の下線部によれば、前記鉛合金は、格子長200mmの場合について注目すると、アンチモニー含有量が4%であり、前記丸棒は、「溶融した鉛合金を圧力式ダイキャストマシンによって格子棒の長手方向に並行に湯口から噴射」して鋳造されるものであって、直径が、格子棒とほぼ同じ約3mmといえるから、甲第1号証には、「従来技術による管状極板用格子」として、 「鉛合金製の丸棒が複数連結されて構成された鉛蓄電池の管状極板用格子であって、 前記管状極板は、相互に並行に配置される多孔質のプラスチックチューブより成り、中心部に耐腐蝕性の鉛合金製の前記丸棒を挿入し、その後酸化鉛が充填されるものであり、 前記鉛合金は、アンチモニー含有量が4%であり、 溶融した鉛合金を圧力式ダイキャストマシンによって格子棒の長手方向に並行に湯口から噴射して鋳造され、 前記丸棒は、直径が約3mmで長さが200mmである、 鉛蓄電池の管状極板用格子。」 が記載されているといえる。 甲第1号証の第2図に示される「本発明の製造方法にもとずく実施例」は、管状極板用格子の鉛合金のアンチモニーの含有量が多いことによる従来の問題点を解決するために(上記3.(1)イ.ウ.)、格子を製造する鋳型に一時的な連結部5を備える(上記3.(1)コ.の第2図及び上記3.(1)オ.)ことにより、アンチモニー含有量が最小、即ち、0乃至4%の管状極板用鉛合金製格子の鋳造を可能とする(上記3.(1)キ.)ものであり、また、圧力式ダイキャストマシンの使用も可能ではあり(上記3.(1)カ.)、鉛合金に対して砒素を0.3乃至0.5%添加するのが好ましいものである(上記3.(1)キ.)。 したがって、甲第1号証には、上記「従来技術による管状極板用格子」とは、鉛合金製の丸棒が一時的な連結部を有する鋳型に注入されて鋳造される点(上記3.(1)カ.)、鉛合金のアンチモニーと砒素の含有量がそれぞれ0乃至4%と0.3乃至0.5%である点(上記3.(1)キ.)、一時的な連結部5を切断すること等により鉛合金製の棒が丸棒でなく(上記3.(1)サ.の第3図及び上記3.(1)カ.)、断面が円でないため直径が特定されていない点、で異なる管状極板用格子である次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「鉛合金製の棒が複数連結されて構成された鉛蓄電池の管状極板用格子であって、 前記管状極板は、相互に並行に配置される多孔質のプラスチックチューブより成り、中心部に耐腐蝕性の鉛合金製の前記棒を挿入し、その後酸化鉛が充填されるものであり、 前記鉛合金は、アンチモニー含有量が0乃至4%であり、砒素が0.3乃至0.5%添加されており、 前記管状極板用格子は、溶解した鉛合金を圧力式ダイキャストマシンによって一時的な連結部を有する鋳型に注入されて鋳造される、 鉛蓄電池の管状極板用格子。」 本件発明3と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「鉛蓄電池」は、その「管状極板」が「相互に並行に配置される多孔質のプラスチックチューブより成り、中心部に耐腐蝕性の鉛合金製の前記棒を挿入し、その後酸化鉛が充填されるもの」であるから、技術常識によれば「クラッド式鉛蓄電池」といえるものであり、甲1発明の「鉛合金製の棒が複数連結されて構成された鉛蓄電池の管状極板用格子」は、本件発明3の「鉛合金で構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体」に相当するから、本件発明3と甲1発明は、いずれも「鉛合金で構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体」である点で一致する。 本件発明3における「鉛合金」は、「前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上7.0質量%以下のアンチモンと0.01質量%以上0.20質量%以下のヒ素を含み、残部が鉛及び不可避不純物」である。 甲1発明における「鉛合金」は、「アンチモニー含有量が0乃至4%であり、砒素が0.3乃至0.5%添加されて」おり、また、技術常識から不可避不純物を含むのは明らかである。 したがって、本件発明3と甲1発明は、「前記鉛合金は、前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上4質量%以下のアンチモンと、ヒ素を含み、残部が鉛及び不可避不純物であ」る点では共通している。 もっとも、ヒ素を含む割合が、本件発明3では、「0.01質量%以上0.20質量%以下」であるのに対し、甲1発明では、「0.3乃至0.5%」である点では両者は相違する。 また、本件発明3では、「前記芯金は、前記断面の輪郭形状が円形」であるのに対し、甲1発明では、鉛合金製の棒の断面の輪郭形状は円形ではない点で両者は相違する。 甲1発明における「管状極板用格子」は、「鉛合金製の棒が複数連結されて構成され」、「溶融した鉛合金を圧力式ダイキャストマシンによって格子棒の長手方向に並行に湯口から噴射して鋳造される」ものであり、甲1発明の「棒」は、本件発明1の「芯金」に相当するから、本件発明3と甲1発明は、「前記芯金は、前記鉛合金を加圧鋳造法により鋳造されて構成されて」いる点で一致する。 甲1発明における鉛合金製の棒は、その断面積については規定されていないが、甲1発明は、上記「従来技術による管状極板用格子」を従来技術とするもので、従来技術におけるアンチモニーの含有量が多いことによる問題点を解決することを課題とし、連結部を用いた鋳造方法を採用して課題を解決したものであるから、鋳造される棒の長さや断面積は従来技術と同程度のものであると考えられる。「従来技術による管状極板用格子」の丸棒の断面積は、直径が約3mmであることから、約7.065mm^(2)程度と計算でき、よって、甲1発明における棒の断面積は、従来技術と同程度の約7.065mm^(2)程度であるといえる。 したがって、本件発明3は、「前記芯金は、前記芯金の長手方向と直交する方向に切断した断面の断面積を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均断面積が4.9mm^(2)以上5.7mm^(2)以下である」のに対し、甲1発明は、該断面積が「7.065mm^(2)程度である」点で両者は相違する。 以上をまとめると、本件発明3と甲1発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 鉛合金で構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体であって、 前記鉛合金は、前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上4質量%以下のアンチモンと、ヒ素を含み、残部が鉛及び不可避不純物であり、 前記芯金は、前記鉛合金を加圧鋳造法により鋳造されて構成されている、 クラッド式鉛蓄電池用集電体。 [相違点1] 芯金を構成する鉛合金のヒ素を含む割合が、本件発明3では、「0.01質量%以上0.20質量%以下」であるのに対し、甲1発明では、「0.3乃至0.5%」である点。 [相違点2] 本件発明3では、「前記芯金は、前記断面の輪郭形状が円形」であるのに対し、甲1発明では、鉛合金製の棒の断面の輪郭形状は円形ではない点。 [相違点3] 本件発明3は、「前記芯金は、前記芯金の長手方向と直交する方向に切断した断面の断面積を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均断面積が4.9mm^(2)以上5.7mm^(2)以下である」のに対し、甲1発明は、該断面積が「7.065mm^(2)程度である」点。 事案に鑑みて、まず、上記相違点3について検討する。 上述したように、甲1発明は、従来技術におけるアンチモニーの含有量が多いことによる問題点を解決するために、アンチモニーの含有量を低減した管状極板用合金棒を製造することを課題とし、連結部を用いた鋳造方法を採用して上記課題を解決したものであるから、鋳造される棒の長さや断面積は従来技術と同程度のもの(その断面積は7.065mm^(2)程度)であると考えられ、棒の断面積を小さく変更することについては、甲第1号証には、全く示唆されていない。 したがって、甲1発明において、7.065mm^(2)程度である棒の断面積を小さくして、本件発明3のように「4.9mm^(2)以上5.7mm^(2)以下とする」動機はない。また、そのようにする動機となる技術事項は甲第1号証にも甲第2?9号証にも記載されていない。 また、仮に、棒の断面積を小さくするという動機があったとしても、棒の断面積を小さくすると、鋳造性はさらに低下すると考えられるから、連結部を用いた鋳造法を採用していたとしても、アンチモニーの含有量を低減した管状極板用合金棒を製造するという課題が解決できなくなる恐れがあるので、棒の断面積を小さくすることが当業者とって容易になし得ることであるとはいえない。 よって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明の特定事項とすることが、当業者にとって容易になし得ることであるとはいえないから、その他の相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ.請求項11-15について 本件発明11-15は、本件発明3にさらに発明特定事項を付加して限定したものであるから、本件発明11-15と甲1発明との間には、少なくとも上記相違点3がある。 したがって、本件発明3と同じ理由により、本件発明11-15は、いずれも、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?9号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項3、11-15に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項3、11-15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項1、2、4-10に係る特許については、特許異議申立理由の対象とする請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 鉛合金で構成された芯金を備えるクラッド式鉛蓄電池用集電体であって、 前記鉛合金は、前記鉛合金の全質量に対して3.0質量%以上7.0質量%以下のアンチモンと0.01質量%以上0.20質量%以下のヒ素を含み、残部が鉛及び不可避不純物であり、 前記芯金は、前記鉛合金を加圧鋳造法により鋳造されて構成されており、 前記芯金は、前記断面の輪郭形状が円形であり、 前記芯金は、前記芯金の長手方向と直交する方向に切断した断面の断面積を前記芯金の長手方向に亘って平均化した平均断面積が4.9mm^(2)以上5.7mm^(2)以下であることを特徴とするクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 前記アンチモンの含有量が、前記鉛合金の全質量に対して4.0質量%以上5.0質量%以下である請求項3に記載のクラッド式鉛蓄電池用集電体。 【請求項12】 請求項3又は11に記載の集電体を備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板であって、 フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結して構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とをさらに備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板。 【請求項13】 請求項3又は11に記載の集電体を備えるクラッド式鉛蓄電池用正極板であって、 フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結して構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とをさらに備え、 前記正極活物質の密度が3.30g/cm^(3)以上3.75g/cm^(3)以下であるクラッド式鉛蓄電池用正極板。 【請求項14】 請求項3又は11に記載の集電体を備える正極板を用いたクラッド式鉛蓄電池であって、 前記正極板が、さらに フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結させて構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とを備えているクラッド式鉛蓄電池。 【請求項15】 請求項3又は11に記載の集電体を備える正極板を用いたクラッド式鉛蓄電池であって、 前記正極板が、さらに フェノ-ル樹脂を含浸した筒状のガラス繊維を焼結させて構成されたチューブと、 前記チューブ内に前記集電体の芯金を挿入した状態で、前記チューブと前記芯金との間に充填された正極活物質とを備え、 前記正極活物質の密度が3.30g/cm^(3)以上3.75g/cm^(3)以下であるクラッド式鉛蓄電池。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2019-03-08 |
出願番号 | 特願2015-37314(P2015-37314) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
YAA
(H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M) P 1 651・ 857- YAA (H01M) P 1 651・ 113- YAA (H01M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 高木 康晴 |
特許庁審判長 |
池渕 立 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 土屋 知久 |
登録日 | 2016-04-08 |
登録番号 | 特許第5909815号(P5909815) |
権利者 | 日立化成株式会社 |
発明の名称 | クラッド式鉛蓄電池、クラッド式正極板、及びクラッド式正極板用集電体 |
代理人 | ▲高▼見 良貴 |
代理人 | 酒井 俊尚 |
代理人 | 酒井 俊尚 |
代理人 | 西浦 ▲嗣▼晴 |
代理人 | 西浦 ▲嗣▼晴 |
代理人 | 出山 匡 |
代理人 | ▲高▼見 良貴 |
代理人 | 出山 匡 |