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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
管理番号 1351402
異議申立番号 異議2017-700982  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-12 
確定日 2019-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6117373号発明「電圧制限装置を有するフローバッテリ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6117373号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、3〕、6、7、9、12、13、14、〔15、16〕、17について訂正することを認める。 特許第6117373号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6117373号の請求項1?17に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2012年(平成24年)12月9日を国際出願日とする出願であって、平成29年3月31日にその特許権の設定登録がなされ、同年4月19日にその特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、その特許について、同年10月12日に特許異議申立人住友電気工業株式会社(以下、「申立人」という。)により請求項1?17に対して特許異議の申立てがなされ、平成30年1月10日付けで取消理由(以下、単に「取消理由」という。)が通知され、これに対して、同年4月16日に意見書(以下、「意見書」という。)が提出され、その後、同年6月18日付けで取消理由(決定の予告:以下、「決定の予告」という。)が通知されるとともに、特許権者に対して審尋がなされ、これらに対して、同年9月18日に意見書及び回答書(以下、「回答書」という。)が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、本件訂正請求に対して、同年11月1日付けで訂正拒絶理由が通知され、これに対して、同年12月25日に意見書が提出され、平成31年2月8日に申立人から意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の趣旨及び訂正の内容
本件訂正は、特許第6117373号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項2、3、6、7、9、12?17について訂正を求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
請求項2について、本件訂正前の「電圧制限装置と通信する制御装置をさらに備え、制御装置が電圧制限装置のON/OFF状態に関して電圧制限装置の作動を制御するように構成される」を「電圧制限装置と通信する制御装置をさらに備え、制御装置が電圧制限装置のON/OFF状態に関して電圧制限装置の作動を制御するように構成され、不活動状態の停止モードにおいて、貯蔵部分から少なくとも1つのセルへの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にない」と訂正する。
請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項6について、本件訂正前の「不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体を含む」を「不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体を含み、不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にない」と訂正する。

(3)訂正事項3
請求項7について、本件訂正前の「不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが、放電された状態の少なくとも1つの液体電解質を含む」を「不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが、放電された状態の少なくとも1つの液体電解質を含み、不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にない」と訂正する。

(4)訂正事項4
請求項9について、本件訂正前の「予め決められた閾値電位より下に第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限することを含む」を「予め決められた閾値電位より下に第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限することを含み、不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」と訂正する。

(5)訂正事項5
請求項12について、本件訂正前の「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体をセル内に含む」を「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体をセル内に含み、前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」と訂正する。

(6)訂正事項6
請求項13について、本件訂正前の「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、フローバッテリの始動の際に、正の液体電解質および負の液体電解質が一度に1つずつ供給されるように、正の液体電解質および負の液体電解質をそれぞれ第1の電極および第2の電極に供給することを含む」を「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、フローバッテリの始動の際に、正の液体電解質および負の液体電解質が一度に1つずつ供給されるように、正の液体電解質および負の液体電解質をそれぞれ第1の電極および第2の電極に供給することを含み、不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」と訂正する。

(7)訂正事項7
請求項14について、本件訂正前の「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、電圧制限装置が第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するのを停止するように電圧制限装置を切り離すことを含む」を「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、電圧制限装置が第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するのを停止するように電圧制限装置を切り離すことを含み、不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」と訂正する。

(8)訂正事項8
請求項15について、本件訂正前の「前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含み、ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、正の液体電解質および負の液体電解質の活動状態の流れが一度に1つずつ停止されるように、正の液体電解質および負の液体電解質の、それぞれ第1の電極および第2の電極を通る活動状態の流れを停止することを含む」を「前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含み、ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、正の液体電解質および負の液体電解質の活動状態の流れが一度に1つずつ停止されるように、正の液体電解質および負の液体電解質の、それぞれ第1の電極および第2の電極を通る活動状態の流れを停止することを含み、不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」と訂正する。
請求項15を引用する請求項16も同様に訂正する。

(9)訂正事項9
請求項17について、本件訂正前の「前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させ、第1の電極および第2の電極を空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体で満たすことを含む」を「前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させ、第1の電極および第2の電極を空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体で満たすことを含み、不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」と訂正する。

2 当審の判断
2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項2に対し、本件訂正前の請求項4及び5に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項6に対し、本件訂正前の請求項5に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項7に対し、本件訂正前の請求項5に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項9に対し、本件訂正前の請求項10及び11に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項12に対し、本件訂正前の請求項11に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(6)訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項13に対し、本件訂正前の請求項10及び11に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(7)訂正事項7について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項14に対し、本件訂正前の請求項10及び11に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(8)訂正事項8について
ア 訂正事項8は、本件訂正前の請求項15に対し、本件訂正前の請求項10に記載された「不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがな」い事項、及び、本件訂正前の請求項11に記載された「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」事項を付加するものである。
イ まず、訂正の目的について検討する。
ウ 請求項15が引用する請求項8には、「腐食を制御するようにモード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する方法」について記載されているところ、上記「モード移行時」に関して、「(a)第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルを備えるフローバッテリを、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ」る事項が含まれている。
エ そして、請求項8には当該事項について、単に、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ」ると記載されているから、この「移行」は、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ」の、または、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから」の2種の移行のうち、いずれか一方のみが選択される1回の「移行」を意味しているとも考えられる。
オ 一方、本件訂正後の請求項15には、「前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含」む事項、及び、「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含」む事項が含まれており、これら2つの事項において「前記の移行させること」とは、いずれも請求項8の(a)の「移行」を意味することは明らかである。
カ そうすると、請求項8に記載された1回の「移行」が、上記2種の移行から選択されたいずれか一方のみを表すのであるから、請求項15に記載されているように、「フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含み」、かつ、「フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含」むこと、すなわち、2種の移行の両者を同時に選択することはできないから、請求項8及び15の記載は一見矛盾しているようにもみえ、そのような場合には、本件訂正後の請求項15に係る発明は明確とはいえず、訂正事項8は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものか否かが不明であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。
キ しかしながら、技術常識に照らせば、「フローバッテリ」は、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ」の「移行」、及び、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから」の「移行」を繰り返し行うものであるから、請求項8の「移行」は、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ」の、または、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから」の2種の移行を1回に限定するものではなく、当該移行を複数回行うことも含んでいるといえる。
ク そうすると、請求項8及び15の記載は矛盾することはないから、本件訂正後の請求項15に係る発明は明確である。
ケ そして、訂正事項8は、上記アのとおり、本件訂正前の請求項10及び11に記載された事項を付加するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

(9)訂正事項9について
訂正事項9は、本件訂正前の請求項17に対し、本件訂正前の請求項10及び11に記載された事項を付加するものであるところ、請求項17は請求項8を引用するものであり、また、本件訂正後の請求項17には、「前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含」む事項、及び、「前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含」む事項が含まれている。
そうすると、訂正事項9は、上記(8)で検討した理由と同様の理由により、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、さらに、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正である。

2-2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項3は請求項2を引用するものであり、請求項16は請求項15を引用するものであるから、本件訂正前の請求項2、3及び請求項15、16はそれぞれ一群の請求項である。
そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔2、3〕、6、7、9、12、13、14、〔15、16〕、17をそれぞれ訂正単位とする訂正の請求をするものである。

2-3 独立特許要件について
訂正事項1?9は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

3 小結
以上のとおりであるから、平成30年9月18日に特許権者が行った本件訂正、すなわち、請求項〔2、3〕、6、7、9、12、13、14、〔15、16〕、17についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法第120条の5第4項の規定に適合し、同法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2、3〕、6、7、9、12、13、14、〔15、16〕、17について訂正を認める。

第3 特許異議申立について
1 本件発明
本件訂正請求は、上記第2で検討したように認められるものなので、
本件特許の特許請求の範囲の請求項1?17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明17」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1?17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルと、
少なくとも1つのセルと流体的に接続される貯蔵部分と、
電気化学的活性種を含み、少なくとも1つのセルに選択的に供給可能である、少なくとも1つの液体電解質と、
第1の電極および第2の電極と電気的に結合される電気回路であって、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するように構成された電圧制限装置を備える、電気回路と、
を備え、
電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能であることを特徴とするフローバッテリ。
【請求項2】
電圧制限装置と通信する制御装置をさらに備え、制御装置が電圧制限装置のON/OFF状態に関して電圧制限装置の作動を制御するように構成され、
不活動状態の停止モードにおいて、貯蔵部分から少なくとも1つのセルへの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項1記載のフローバッテリ。
【請求項3】
制御装置が電気インピーダンスの量に関して電圧制限装置の作動を制御するように作動可能であることを特徴とする請求項2記載のフローバッテリ。
【請求項4】
不活動状態の停止モードにおいて、貯蔵部分から少なくとも1つのセルへの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがないことを特徴とする請求項1記載のフローバッテリ。
【請求項5】
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項4記載のフローバッテリ。
【請求項6】
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体を含み、
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項4記載のフローバッテリ。
【請求項7】
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが、放電された状態の少なくとも1つの液体電解質を含み、
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項4記載のフローバッテリ。
【請求項8】
(a)第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルを備えるフローバッテリを、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ、
(b)ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、第1の電極および第2の電極と電気的に結合された電気回路内に配置された電圧制限装置を用いて、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する、
ことを含み、
電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能であることを特徴とする、腐食を制御するようにモード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する方法。
【請求項9】
予め決められた閾値電位より下に第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限することを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体をセル内に含み、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、フローバッテリの始動の際に、正の液体電解質および負の液体電解質が一度に1つずつ供給されるように、正の液体電解質および負の液体電解質をそれぞれ第1の電極および第2の電極に供給することを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、電圧制限装置が第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するのを停止するように電圧制限装置を切り離すことを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項15】
前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含み、ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、正の液体電解質および負の液体電解質の活動状態の流れが一度に1つずつ停止されるように、正の液体電解質および負の液体電解質の、それぞれ第1の電極および第2の電極を通る活動状態の流れを停止することを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項16】
正の液体電解質および負の液体電解質のうちの一方の流れを停止した後で、負の液体電解質および正の液体電解質のうちの他方の流れを停止する前に、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限することをさらに含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させ、第1の電極および第2の電極を空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体で満たすことを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。」

3 申立理由及び取消理由の概要
3-1 申立理由の概要
申立人による申立理由の概要は、以下の(1)?(3)のとおりである。
(1)本件発明1?4,6?10及び12?17は、常にセルが液体電解質によって満たされている場合を包含するものであって、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(申立書第17頁第4行?第18頁第14行)
(2)本願の請求項1及びその引用請求項である請求項2?7に係る発明、並びに、請求項8及びその引用請求項である請求項9?17に係る発明は、移行期間について、発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明であるから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(申立書第15頁第18行?第17頁第2行)
(3)本件の請求項1?12、14、17に係る発明は、下記1?4の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(申立書第18頁第16行?第38頁最後から3行)

刊行物1:特開2006-313691号公報(申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平4-130603号公報(申立人が提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平6-77013号公報(申立人が提出した甲第3号証)
刊行物4:図面、鈴木合金株式会社、2003年11月7日

3-2 取消理由の概要
取消理由の概要は、以下の(1)?(3)のとおりであり、このうち決定の予告でも通知したものは、以下の(1)のみである。
なお、以下の(2)の理由は、申立人が主張した申立理由においては、特許法第36条第6項第1号に規定する要件の違反であったが、その内容に鑑み、適用条文を特許法第36条第6項第2号に変更して、取消理由を通知した。
(1)本件発明1?4,6?10及び12?17は、常にセルが液体電解質によって満たされている場合を包含するものであって、発明の詳細な説明に記載されたものとはいえないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(上記3-1の(1)に対応。)
(2)本願の請求項1及びその引用請求項である請求項2?7に係る発明、並びに、請求項8及びその引用請求項である請求項9?17に係る発明は、移行期間について、明確でないから、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。(上記3-1の(2)に対応。)
(3)本件の請求項1?4,7?10、14に係る発明は、下記1?3の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであって、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(上記3-1の(3)に対応。)
なお、申立理由では下記1?3の刊行物に加えて、甲第4号証(図面、鈴木合金株式会社、2003年11月7日)も提出されたが、作成者が不明であり書証として成立していないため、取消理由では採用しなかった。

刊行物1:特開2006-313691号公報(申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平4-130603号公報(申立人が提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平6-77013号公報(申立人が提出した甲第3号証)

4 本件明細書の記載
請求項1?7に記載された「フローバッテリ」及び請求項8?17に記載された「フローバッテリ内の電位を制御する方法」について、願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)及び図面には、次の記載がある。
なお、下線は当審で付した。以下、同じ。
(1)発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本開示は電気エネルギーを選択的に貯蔵および放出するフローバッテリに関する。」
「【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、電気エネルギーを選択的に貯蔵および放出する実施例のフローバッテリ20の一部を概略的に示す。一例として、フローバッテリ20は、再生可能エネルギーシステム内で生成される電気エネルギーを化学エネルギーに変換するように使用されることができ、化学エネルギーは、後により大きな需要があってフローバッテリ20がその時に化学エネルギーを電気エネルギーに変換し戻すまで貯蔵される。フローバッテリ20は、例えば高圧送電線網に電気エネルギーを供給することができる。以下に説明するように、開示のフローバッテリ20は、向上した腐食保護のための特徴を備える。」
「【0013】
液体電解質22、26は、セル36に供給されて、電気エネルギーを化学エネルギーに変換するか、あるいは逆反応で、化学エネルギーを、放出可能な電気エネルギーに変換する。電気エネルギーは、電極42、44と電気的に結合した電気経路48を通してセル36へ、およびセル36から伝達される。電気回路48は、電圧制限装置50を備える。説明するように、電圧制限装置50は、活動状態の充電/放電モードに関する不活動状態の停止モードへの、または、活動状態の充電/放電モードに関する不活動状態の停止モードからの、1つまたは複数のセル36の移行の際に、電極42、44に亘る電位Vを制限するように構成される。
【0014】
フローバッテリ20は、不活動状態の停止モードを含め、いくつかの使用モードを有する。これらのモードは、フローバッテリ20のさまざまな物理状態によって示される。例えば、フローバッテリ20は、活動状態の充電/放電モードを有し、このモードでは、液体電解質22、26は、貯蔵タンク32、34から1つまたは複数のセル36を通って、貯蔵タンク32、34内へと戻るように連続的に循環する。充電/放電モードでは、フローバッテリは、電気回路48からの電気エネルギーで充電されるか、あるいは電気エネルギーを電気回路48へ放電する。さらに、1つまたは複数のセル36は、実質的にまたは完全に液体電解質22、26で満たされる。例えば、充電/放電モード時に、1つまたは複数のセルの多孔質の体積は、液体電解質22、26で理論的に100%満たされ、最低でも、液体電解質22、26で90%満たされる。
【0015】
フローバッテリ20は、充電や放電のために使用されていない場合、または、それとは逆に始動のために使用されていない場合、充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと移行する。多数の不活動状態の停止モードのうちのどれを選択するかに応じて、フローバッテリ20の停止のための多数のさまざまな手順があり得る。一実施例では、液体電解質22、26は、1つまたは複数のセル36を通って流れず、主にそれぞれの貯蔵タンク32、34内に保持されるように、少なくとも活動状態のポンプ送りに関して、不活動状態の停止モードにおいて静的である。
【0016】
さらなる実施例において、1つまたは複数のセル36は、部分的にまたは完全に空になるように、停止モードにおいて液体電解質22、26が少なくとも部分的に排出される。例えば、1つまたは複数のセル36は、1つまたは複数のセル36の多孔質の体積内の液体電解質22、26に関して90%を超えて空になる。この場合、1つまたは複数のセル36の多孔質の体積は、セルから排出された液体の体積によって置換された貯蔵タンクのヘッドスペースからの気体で主に満たされる。セルの液体が排出される場合、空気もシステムに浸透し、セルに入ることができる。
【0017】
さらなる実施例において、1つまたは複数のセル36は、上述したように、停止モードにおいて液体電解質22、26が少なくとも部分的に排出され、空の体積には、化学的にかつ電気化学的に不活性の被覆気体が供給される。例えば、被覆気体は、窒素、アルゴン、ヘリウムまたはこれらの組み合わせを含む。さらなる実施例において、被覆気体は、これらの与えられた1つまたは複数の気体の90%以上の純度を有する。被覆気体は、空気または酸素が1つまたは複数のセル36に入るのを防止するのを促進しかつ電気化学的活性種による酸化腐食または自己放電反応から保護するように、1つまたは複数のセル36を比較的化学的に不活性の環境内で覆うのに役立つ。
【0018】
さらなる実施例において、1つまたは複数のセル36は、停止モードにおいて液体電解質22、26で部分的にまたは完全に満たされ、放電された状態への自己放電が可能となる。放電された液体電解質22、26は、不活動状態の停止モードの期間において、活動状態のポンプ送り循環なしに、1つまたは複数のセル36内に保持される。放電された液体電解質22、26は、フローバッテリ20に浸透し得る空気または酸素への暴露を制限するように、1つまたは複数のセル36を覆うのに役立つ。
【0019】
不活動状態の停止モードにある場合、フローバッテリ20は、不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードにするように始動される必要がある。逆に、充電/放電モードにある場合、フローバッテリ20は、不活動状態の停止モードにするように中止または停止される必要がある。例えば、始動期間は、貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を開始させることで始まり、液体電解質22、26が活動状態の充電/放電モードにおいて上述したように1つまたは複数のセル36を実質的にまたは完全に満たすと終了する。停止期間は、貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を停止させることで始まり、始動期間が始まると終了する。
【0020】
フローバッテリ20は、これらの始動または停止の移行期間に腐食を受け易く、それによって、フローバッテリ20の性能および使用寿命が低下し得る。腐食の種類および程度は、不活動状態の停止モードのうちのどれを使用するかに依存し得る。例えば、1つまたは複数のセル36が少なくとも部分的に空である、不活動状態の停止モードにおいて、1つまたは複数のセル36の自由容積は、フローバッテリ20に浸透した空気および水分を含有し得る。不活動状態の停止モードにおいて、液体電解質22、26の自発的な自己放電からの少量の水素も存在し得る。始動の際に、液体電解質22、26は、1つまたは複数のセル36内に供給される。液体電解質22、26が1つまたは複数のセル36の供給入口を満たすので、通常の作動時にそうであるように、それらはセル電圧を生成する。しかしながら、このセル電圧は、セル構成要素が良好な導電体であるためセルの出口にも存在し、しかも、液体電解質22、26は、始動期間にセル出口にまだ到達していず、空気/酸素および水がセル出口に存在する。セル電圧が閾値を超えた場合、電極42、44に生成した電位は、炭素基構成要素の炭素を二酸化炭素に変換するなどのように、酸素、水、および/または水素と1つまたは複数のセル36の材料との間の望ましくない腐食反応を駆動し得る。一実施例では、フローバッテリ20の閾値は、炭素腐食反応を駆動するには1.5ボルト毎セルである。
【0021】
いくぶん同様に、1つまたは複数のセル36内に保持された、放電された液体電解質22、26を有するか、または被覆気体を使用する、不活動状態の停止モードにおいて、1つまたは複数のセル36の出口における電位は、望ましくない腐食反応を駆動する閾値を超え得る。この閾値、従って、腐食反応のひどさは、選択された不活動状態の停止モードおよび停止期間の長さに応じて変わり得る。同様の現象が、充電/放電モードから停止モードへの停止の際に生じ得る。
【0022】
移行期間に電極42、44に生成した電位を制御または制限するために、フローバッテリ20は、電圧制限装置50を備える。電圧制限装置50は、移行時にセル電圧の低減を促進し、それによって、生じ得る望ましくない腐食反応を低減する。例えば、電圧制限装置50は、抵抗器、加減抵抗器、ゲートトランジスタなどの制御可能抵抗器、並列または直列に電気的に接続される複数の抵抗器、または従来の充電可能バッテリなどの外部負荷とさえもすることができる。
【0023】
電圧制限装置50は、移行期間に特定のフローバッテリ20によって生成される電圧に相当するように選択される電気インピーダンスを有する。例えば、選択された電気インピーダンスは、セルまたはスタック電圧を制限するが、反応に利用可能な液体電解質22、26の量に関して1つまたは複数のセル36の枯渇状態を生成するほど大きな電流を引き出さない。すなわち、腐食反応を駆動するための閾値より低い非ゼロ電位が望ましい。
【0024】
さらなる実施例では、液体電解質22、26が1つまたは複数のセル36を満たす間の移行期間を通して瞬間の望ましい量の電気インピーダンスが変化する。従って、電圧制限装置50の電気インピーダンスは、特定された閾値に関して電位を維持または制御するように移行期間を通して変化し得る。例えば、始動期間では、電圧制限装置50は、最初に比較的低い電気インピーダンスを提供することができ、この電気インピーダンスは次いで、液体電解質22、26が1つまたは複数のセル36を満たす間の始動期間を通して増加される。その逆を停止では用いることができる。
【0025】
図2は、別の実施例のフローバッテリ120の選択された部分を示す。この開示では、適切な場合は同様の参照符号が同様の構成要素を示しており、100またはその倍数を追加した参照符号が、対応する構成要素の同じ特徴および利益を実現すると理解される修正された構成要素を示す。この実施例では、フローバッテリ120の電気回路148は、複数の抵抗器150aを有する電圧制限装置150を備える。抵抗器150aは、直列にまたは並列に接続することができる。
【0026】
電圧制限装置150は、制御装置152と通信する。制御装置152は、ポンプ、弁、気体供給源、その他などのフローバッテリ120の他の構成要素の作動を制御するために、これらの構成要素とも接続され得る。制御装置152は、ソフトウェアおよびハードウェアのいずれか一方または両方を備えることができ、抵抗器150aに関して電圧制限装置150の作動を制御するように作動可能である。この説明が与えられるならば、当業者は、本明細書に説明されるように制御装置152を作動させる適切なハードウェアおよび/またはプログラミングを提供することができるであろう。一実施例では、制御装置152は、移行期間を通して電圧制限装置150の全体の電気インピーダンスを変化させるように、ON(抵抗あり)とOFF(抵抗なし)状態との間で抵抗器150aのそれぞれを個別に制御できる。」

(2)図面の記載
「【図1】


「【図2】



5 甲号証の記載
申立人が提出した甲第1?3号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲3」という。)には、それぞれ次の(1)?(3)の記載がある。

(1)甲第1号証
ア 発明の詳細な説明の記載
「【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷平準化や瞬低・停電対策などに利用されるレドックスフロー電池システムに関するものである。特に、電解液の循環を停止している期間において、セル内部の温度上昇を抑制することができるレドックスフロー電池システムに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レドックスフロー電池では、電解液の温度が電池容量や電圧効率などの特性に影響を及ぼすため、充放電中において電解液の温度管理が重要である。しかし、本発明者が検討した結果、充放電時だけでなく、電力系統に対する通常の充放電を行っていないとき、具体的には、電解液の循環を停止させているときにも、セル内部の温度が上昇して、セルの構成部材の劣化を促進させる恐れがあるとの知見を得た。例えば、充電後待機状態に移行するべく、電解液の循環を停止すると、セル内部には、満充電状態の活物質が残留する。この状態で電解液の循環を停止し続けると、これらセルに残存する活物質が自己放電を起こし、この自己放電に伴う反応熱により、セル内部の温度を上昇させてしまう。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、電解液の循環を停止させている期間において、セル内部の温度上昇をより効果的に抑制することができるレドックスフロー電池システムを提供することにある。」
「【0010】
そこで、本発明は、通常の充放電を行わない電解液の循環停止中においてセル内部の温度上昇をより効果的に抑えるべく、セル内部に残留してセルの温度上昇を生じさせる原因となる活物質の電気エネルギーを消費するための停止時用負荷を通常の放電対象となる外部負荷とは別に具えることを規定する。即ち、本発明レドックスフロー電池システムは、セルに電解液を循環供給して充放電を行うレドックスフロー電池本体と、この電池本体に 接続され、電解液の循環停止中においてセル内の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費する停止時用負荷と、上記電池本体と停止時用負荷との間に配置され、電池本体から停止時用負荷への電気エネルギーの供給及び停止を制御にする開閉部とを具えることを特徴とする。以下、本発明をより詳しく説明する。」
「【0013】
レドックスフロー電池システムでは、電力系統に対して充放電を行う際、ポンプにより電解液がセルに循環され、電力系統に対して充放電を行わない待機状態の場合、ポンプの駆動を停止して、電解液の循環を停止することが行われている。このようなレドックスフロー電池システムにおいて、本発明では、電力系統に対して充放電を行わない電解液の循環停止中において、セル内部の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費するべく停止時用負荷を具え、セルに残存してセルの温度上昇に寄与するような余分な電気エネルギーを停止時用負荷に供給する。具体的には、電池本体に停止時用負荷を接続させておき、電解液の循環停止中において、セルの電極に染み込んだ電解液中に残留する活物質の電気エネルギーを停止時用負荷に供給して消費させる。本発明システムは、停止時用負荷を具えることで電解液の循環停止中において、セル内の電解液中に残存する活物質の電気エネルギーを効果的に消費して電池本体が自己放電を起こすことを低減して自己放電による発熱を防止し、セル内部の温度上昇を抑制する。このような停止時用負荷は、電気エネルギーを消費できるものであればよく、電気抵抗部材を利用することが挙げられる。電気抵抗部材の抵抗値の大きさは、消費する電気エネルギーの大きさに応じて適宜選択するとよい。
【0014】
上記停止時用負荷は、電解液の循環停止中のみ電池本体と電気的に接続されて電気エネルギーが供給されるように、本発明システムには、電池本体と停止時用負荷との間に開閉部を具える。この開閉部は、電解液の循環が停止されるとONされて、電池本体と停止時用負荷とが電気的に接続され、電池本体から電気エネルギーが停止時用負荷に供給され、電解液の循環を開始する前に、開閉部をOFFにすることで、電池本体と停止時用負荷とが電気的に分離され、電池本体から電気エネルギーが停止時用負荷に供給されないようにできる。
【0015】
このような開閉部は、作業者が手作業により開閉動作を操作する構成としてもよいが、開閉部自体が自動的に開閉を行う構成のものを利用してもよい。このような開閉部として、例えば、電磁石により開閉を行うコンタクタが挙げられる。また、開閉部が自動的に開閉動作を行うのに必要な電気エネルギーは、電力系統から得られるようにしてもよいが、電池本体から得られるように構成してもよい。開閉部の開閉動作に必要な電力を電池本体から得る構成とすれば、例えば、発電設備の異常(停電など)、直交流変換器やポンプなどの装置などの事故(故障など)といった事情により、電解液の循環が停止した場合であっても、開閉部は、開閉動作を行うことができる。開閉部の開閉動作に必要な電力を電力系統から得る構成とする場合は、上記異常や事故などが生じても開閉部が開閉動作を行うことができるように、別途電源を設けておくことが好ましい。更に、制御部を具えておき、制御部により、開閉部の開閉状態を制御する構成としてもよい。このとき、制御部は、電解液の循環が停止された際、開閉部をONにするように開閉部にON命令を出し、電解液の循環が行われる際、開閉部をOFFにするように開閉部にOFF命令を出すように構成しておく。この制御部の駆動に必要な電気エネルギーも、電力系統や別途設けた電源から得るようにしてもよいし、電池本体から得られるようにしておいてもよい。」
「【0020】
開閉部がONの間、セル内部に残存する活物質の電気エネルギーは、停止時用負荷に供給されて消費され、この消費に伴い、セルの電圧は0Vに向かって低下していき、セル内部の温度上昇も抑制される。このとき、上記開閉部や検出部などの電源を電池本体とする場合などでは、停止時用負荷に電気エネルギーを供給している間、セル内部の温度上昇を十分に抑制すると同時に、開閉部や検出部などが正常に動作できる程度の電力(電圧)を電池本体に残存させておくことが望まれる。従って、このような場合、電池本体に必要な電力が確保できるシステムとしておく。即ち、停止時用負荷によってセル内部に残存する活物質の電気エネルギーの消費が十分に行われ、かつセルの電力が開閉部などの駆動に必要な電力が確保されていることが確認できるシステムとしておく。
【0021】
例えば、電池本体が停止時用負荷に電気エネルギーを供給している際の時間を検出するタイマ部を具え、停止時用負荷に放電する時間を設定しておき、所定時間となったら、開閉部をOFFにして停止時用負荷への電気エネルギーの供給を停止することが挙げられる。このとき、停止時用負荷に放電中、タイマ部により放電時間を検出して検出結果を制御部に伝送し、所定時間となったら、制御部は、開閉部をOFFにするようにしてもよい。このようなタイマ部は、制御部と別個に具えてもよいし、制御部としてタイマ部を内蔵するものを利用してもよい。また、タイマ部は、停止時用負荷に放電を行っている際のみ駆動させ、それ以外のときは停止させてもよいし、常時作動させておき、停止時用負荷への電気エネルギーの供給が行われているときのみ検出結果が制御部に送られるように構成してもよい。なお、前者の場合、タイマ部の動作制御も制御部が行うようにしてもよい。停止時用負荷の消費電力は、選択した抵抗値により決められるため、タイマ部により放電時間を測定することで、セルに残る電力を把握することができる。このようにタイマ部を用いることで、停止時用負荷は、電気エネルギーの消費を十分に行うことができ、かつ開閉部を正常に動作させることができる。
【0022】
或いは、電池本体が停止時用負荷に電気エネルギーを供給している際のセル電圧を測定する電圧測定部を具え、必要なセル電圧(設定電圧)を予め設定しておき、セル電圧が設定値となったら、開閉部をOFFにして停止時用負荷への電気エネルギーの供給を停止することが挙げられる。このとき、停止時用負荷に放電中、電圧測定部によりセル電圧を検出して、検出結果を制御部に伝送し、測定電圧が所定の電圧(設定値)となったら、制御部は、開閉部をOFFにするようにしてもよい。電圧測定部は、停止時用負荷に放電を行っている際のみ駆動させ、それ以外のときは停止させてもよいし、常時作動させておき、停止時用負荷への電気エネルギーの供給が行われているときのみ検出結果が制御部に送られるように構成してもよい。なお、前者の場合、電圧測定部の動作制御も制御部が行うようにしてもよい。セル電圧は、セルに残る電力を端的に示すものであり、セル電圧を測定することで、開閉部などが正常に動作可能な電圧を満たすか否かを簡単に把握することができる。また、セル電圧を測定することで、セル内部の活物質の消費状況を検出することも可能である。例えば、セル電圧が設定値以下であれば、活物質の消費が十分に行われていると判断できる。このように電圧測定部を用いることで、停止時用負荷は、電気エネルギーの消費を十分に行うことができ、かつ開閉部を正常に動作させることができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明レドックスフロー電池システムを示す概略構成図、図2は、本発明レドックスフロー電池システムに利用した電池本体の概略構成図である。このシステムは、セル10を有する電池本体1と、セル10に供給/排出される電解液を貯留するタンク11,12と、セル10とタンク11,12とを連結する電解液の輸送路13,14と、各輸送路13,14に配置されてタンク11,12からそれぞれ正極電解液、負極電解液をセル10に循環させるためのポンプ15,16とを具える。電池本体1には、直交流変換器20が接続され、直交流変換器20を介して、電池が充電する際に電池に電力を供給する発電設備、電池が放電する際に電池が電力を供給する外部負荷といった電力系統30が接続される。ここまでの構成は、従来のレドックスフロー電池システムと同様であり、本発明システムの特徴とするところは、セル10に対して電解液の循環を停止させている際、セル10内の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費する停止時用負荷2と、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3とを具えることにある。
【0028】
電池本体1は、図2に示すように複数のレドックスフロー電池用のセルを積層した積層体(セルスタック)構造とした。各セルは、イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具える。正極電極10p及び負極電極10nの各々の外側には、セルフレーム10sが配置される。セルフレーム10sは、プラスチックカーボン製の双極板10cと、その外周に形成されるフレーム枠10fとを具える。フレーム枠10fには、電極10p,10nに電解液を供給する給液用マニホールド10sp,10snと、電極10p,10nからの電解液を外部に排出する排液用マニホールド10dp,10dnとが複数形成されている。給液用マニホールド10sp,10snは、電極10p,10nの下方に、排液用マニホールド10dp,10dnは、電極10p,10nの上方に設けており、電解液は、図2の矢印で示すように電極10p,10nの下方から上方に向かって流通される。これらマニホールド10sp,10sn,10dp,10dnは、多数のセルを積層することで電解液の流路を構成し、図1における導管13,14へと接続される。フレーム枠10fにおいてマニホールド10sp,10sn,10dp,10dnと双極板10cとの間には、電解液を流通するスリット10gがそれぞれ設けられている。各電極10p,10nには、それぞれタンク11,12(図1)から輸送路13,14(図1)を介して正極電解液、負極電解液が供給される。本例では正極電解液にV^(5+)を含む溶液、負極電解液にV^(2+)を含む溶液を用いた。また、このセルスタックは、電解液の循環を停止しても電解液をセルに貯留することができるように、電池本体1の位置がタンクに貯留される電解液の液面よりも低くなるように、電池本体1及びタンクを配置した。
【0029】
停止時用負荷2は、市販の電気抵抗部材であり、電池本体1に直列に接続させている。開閉部3は、電磁石により開閉動作を行うコンタクタであり、停止時用負荷2と電池本体1との間に電池本体1と直列に接続される。本例において開閉部3の開閉動作に必要な電力は、電池本体1から供給される構成とした。」
「【0031】
制御部4は、圧力測定部5の始動・停止の制御、圧力測定部5からの検出結果の取得、この検出結果から電解液が循環されているか否かの判定、電圧測定部6からの検出結果の取得、タイマ部7からの検出結果の取得、判定結果や検出結果に基づく開閉部3の開閉動作の制御、冷却ファン8の始動・停止の制御などといった種々の処理を行う。具体的な処理は、後述の制御手順の説明にて行う。このような制御部4として本例では、検出結果などを取得する取得手段、各種判定を行う判定手段、設定値などを記憶する記憶手段、各種の命令を行う命令手段、各種比較を行う比較手段などを具える市販のコンピュータを利用した。また、本例において制御部4,圧力測定部5,電圧測定部6,タイマ部7,冷却ファン8に必要な電力は、電池本体1から供給される構成とした。
【0032】
上記システムにおいて電力系統30に対して充放電を行う場合、各電解液は、タンク11,12に接続された正極電解液用の輸送路13、負極電解液用の輸送路14を介してセル10に供給される。そして、セル10で電池反応が行われた後、各電解液は、セル10から排出されてそれぞれ輸送路13,14を経てタンク11,12に戻される。電力系統30に対する充放電中は、このような電解液の循環が繰り返し行われる。
【0033】
一方、電力系統30に対して充放電を停止する待機中、即ち、電池本体1が外部負荷に対して電力供給を行わない状態のとき、電解液の循環を停止する。このとき、本発明システムでは、開閉部3が閉じて電池本体1に停止時用負荷2が電気的に接続された状態となる。従って、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを停止時用負荷2にて消費することができる。即ち、本発明システムは、電解液が循環されている通常運転時、電力系統30に対して通常の放電を行い、電解液が循環されていない待機時、停止時用負荷2に対して放電を行う。この構成により、本発明システムは、待機中において、セル10内に残存する活物質が自己放電して発熱し、セル内部の温度を上昇させることを緩和する。従って、本発明システムは、温度上昇によるセルの構成部材などの劣化を抑制することができる。」
イ 図面の記載
「【図1】


「【図2】



(2)甲第2号証
ア 発明の詳細な説明の記載
ア-1「近年、各種制御機器の電子部品等の回路定数を調整する可変抵抗器(ボリューム)が多く使用されている。例えば、サーマルプリンタに内蔵される印字/駆動制御装置では印字タイミング信号のパルス幅を設定する時定数調整に可変抵抗器が使用されている。」(第2頁右下欄第1行?第6行)
ア-2「〔作 用〕
本発明の第1の電子可変抵抗器によれば、第1図(a)に示すように、スイッチング素子Tiを含む単位抵抗選択手段11と、信号出力手段12とが具備され、該スイッチング素子TiがバイポーラトランジスタQ又は電界効果トランジスタFETから成っている。
例えば、単位抵抗選択手段11が一以上設けられ、かつ、該単位抵抗選択手段11が直列接続されている場合であって、スイッチング素子TiがバイポーラトランジスタQにより構成された場合、該トランジスタのコレクタ・エミッタ間に並列接続された固定抵抗素子Riの選択/非選択動作をすることができる。すなわち、バイポーラトランジスタQのベースに、外部設定データDinに基づいて信号出力手段12により制御信号SWi=「H」レベルが入力されると、該バイポーラトランジスタQが「ON」し、固定抵抗素子Riの両端が電気的にショート(短絡)される。これにより、該抵抗素子Riの両端の等価抵抗は、制御信号SWi=「L」レベル時の合成抵抗値から降下した抵抗値となる。
このことで、直列接続されているn個の固定抵抗素子R1?Rnの選択/非選択処理をすることが可能となる。」(第4頁右上欄第2行?左下欄第5行)
イ 図面の記載




(3)甲第3号証
ア 発明の詳細な説明の記載
「【0011】21,22,23,24は、固定抵抗器11,?14のそれぞれに直列に接続される開閉素子としての半導体スイッチング素子(以降、SW1,SW2,SW3,SW4と略称することがある。)であり、それぞれの開閉素子21,?24は、半導体基板中に半導体素子の製造プロセスにより形成されている。本実施例の場合においては、SW1,?SW4は、MOSFETであり、それぞれのSW1,?SW4には、例えば、SW1の場合で説明すると、固定抵抗器11に接続されてこの固定抵抗器11に通流する電流を通流させる一方の端子21aと、前記電流を通流させる固定抵抗器11に接続されない他方の端子21bと、SW1をON/OFFさせる開閉信号を入力する信号用端子21cを備えたものである。」
「【0019】図4,図5において、開閉素子21,?24は、それぞれの開閉素子21,?24の、例えば、開閉素子21の場合で説明すると、一方の端子21aおよび信号用端子21cは、開閉素子21の他の端子、ならびに、開閉素子22,?24のすべての端子に対し電気的に絶縁されて、同一の半導体基板8中に半導体素子の製造プロセスにより一体に形成されている。また、固定抵抗器積層体7は、半導体基板8の外表面に、電気絶縁膜を介して、例えば蒸着法等により導電性薄膜、電気抵抗薄膜、および電気絶縁性薄膜を直接形成することにより、一体に形成されている。それぞれの固定抵抗器11,?14と、それぞれの開閉素子21,?24との、例えば、固定抵抗器11と開閉素子21との場合で説明すると、固定抵抗器11の端子11eと開閉素子21の端子21aとの間は、半導体素子の製造プロセスにより形成された導電路9により、ボンディング・ワイヤを使用することなく接続される。
【0020】内部に開閉素子21,?24を一体に形成し、しかも固定抵抗器積層体7を外表面に一体に形成した半導体基板8を備える可変抵抗器は、以降、半導体素子の製造手法により、図示されていないリードフレームあるいは半田バンプ,外装樹脂層等が形成されて完成する。なお、固定抵抗器11,?14の構成、あるいは開閉素子22,?24のON-OFFによる合成電気抵抗値(R0)の調整方法については、前述した実施例1の場合と同一である。
【0021】本発明では前述の構成としたことで、前述の実施例1と比較して、それぞれの開閉素子21,?24を同一の半導体基板8中に一体に形成することで一層小型の開閉素子とすることができ、また、固定抵抗器積層体7を半導体基板8上に一体に形成することにより、実施例1における基板1aあるいは支持用基板3を省略することができ、しかも固定抵抗器積層体7と開閉素子21,?24との間のスペースが不要となることから、なお一層小型な可変抵抗器を得ることができる。
【0022】実施例3;図6は、本発明の請求項2,5に対応する一実施例による可変抵抗器の回路構成図である。図6において、図1,?図3に示した本発明の請求項1,5に対応する一実施例による可変抵抗器と同一部分には、同一符号を付しその説明を省略する。図6による可変抵抗器において、図1,?図3と相違するところは、その単位抵抗器の構成および単位抵抗器相互間の接続方法である。図6において、101は、固定抵抗器11と開閉素子21を電気的に並列に接続して構成した単位抵抗器である。単位抵抗器101においては、固定抵抗器11の端子11eと開閉素子21の一方の端子21a間と、および、固定抵抗器11の端子11fと開閉素子21の他方の端子21b間を、それぞれボンディング・ワイヤ4により接続することで、固定抵抗器11の短絡路101aに開閉素子21が介挿される回路構成とする。単位抵抗器102,?104も、単位抵抗器101と同様に、それぞれ、固定抵抗器12,?14と開閉素子22,?24が、電気的に並列に接続されて構成され、それぞれの単位抵抗器102,?104の短絡路102a,?104aに、開閉素子22,?24が介挿される回路構成とする。
【0023】また、単位抵抗器101に属する固定抵抗器11の端子11e側を一方の外部端子111に接続し、単位抵抗器101,?104の相互間を、例えば単位抵抗器101と単位抵抗器102の間を例にとれば、単位抵抗器101に属する固定抵抗器11の端子11f側と、単位抵抗器102に属する固定抵抗器12の端子12e側との間をボンディング・ワイヤ4により接続し、さらに単位抵抗器104に属する固定抵抗器14の端子14f側を他方の外部端子112に接続することで、単位抵抗器101,?104は、電気的に直列に接続されている。
【0024】本発明では前述の構成とし、それぞれの単位抵抗器101,?104中に接続されたSW1,?SW4を適宜にON-OFFさせて、固定抵抗器11.?14を短絡する短絡路101a,?104aを閉路あるいは開路することにより、外部端子111,112の間で得られる合成電気抵抗値(R0)を、可変とすることができるものである。」
イ 図面の記載
「【図2】


「【図5】


「【図6】



6 当審の判断
(1)特許法第36条第6項第1号違反(上記3の3-2の(1)の取消理由)について
ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば、「フローバッテリ」の「向上した腐食保護」(上記4(1)の【0008】)を達成することであると認められる。
イ そして、本件明細書には、フローバッテリーの腐食のメカニズムの一例として、「始動の際に、液体電解質22、26は、1つまたは複数のセル36内に供給される。液体電解質22、26が1つまたは複数のセル36の供給入口を満たすので、通常の作動時にそうであるように、それらはセル電圧を生成する。しかしながら、このセル電圧は、セル構成要素が良好な導電体であるためセルの出口にも存在し、しかも、液体電解質22、26は、始動期間にセル出口にまだ到達していず、空気/酸素および水がセル出口に存在する。セル電圧が閾値を超えた場合、電極42、44に生成した電位は、炭素基構成要素の炭素を二酸化炭素に変換するなどのように、酸素、水、および/または水素と1つまたは複数のセル36の材料との間の望ましくない腐食反応を駆動し得る」(上記4(1)の【0020】)と記載されている。
ウ ここで、該記載において、「望ましくない腐食反応を駆動し得る」箇所は、「生成した電位」がかかる箇所、つまり電極であって、酸素や水がある箇所であるから、酸素や水と接触可能な「電極」の一部であると考えられる。
エ そうすると、上記イの本件明細書の記載からみて、フローバッテリーの腐食のメカニズムとは、「液体電解質22、26」により「生成」される「セル電圧」が「閾値を超え」ることにより、「電極」に「閾値を超えた」「電位」が「生成」され、かつ、「酸素、水、および/または水素」と「電極」とが接触する場合に、「望ましくない腐食反応を駆動し得る」ことと解されるから、「電極」が「酸素、水、および/または水素」に接触しない状態の時、すなわち、フローバッテリのセルに液体電解質が完全に満たされている状態の時は、腐食反応が起こらないこととなる。
オ 一方、本件発明1を引用する発明である本件発明2、5?7は、「不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にない」との発明特定事項を含むものであるが、本件発明1は、該発明特定事項を含まないから、不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が完全に満たされる形態を含むものといえる。
カ そして、不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が完全に満たされる形態は、上記エより、腐食反応が起こらないから、本件発明1は、上記アの課題が生じ得ない形態を含むものといえる。
キ したがって、本件発明1は、そもそも上記アの課題を有さない発明を含むものであるから、そのような場合は、上記アの課題を解決し得ないものと考えられる。
ク 同様に、本件発明8を引用する本件発明9、11?15、17は、「フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にない」との発明特定事項を含むものであるが、本件発明8は、該発明特定事項を含まないから、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が完全に満たされる形態を含むものといえ、このような形態は上記アの課題が生じ得ないから、上記アの課題を解決し得ないものと考えられる。
ケ 本件発明1と本件発明8とが、上記アの課題を解決しないものであるとの指摘に対し、特許権者は、回答書において、「腐食は、セルに電解質が満たされている状況においても、停止モードへの移行あるいは停止モードからの移行の際に、いくつかの状況下で生じ得ます」(回答書第2頁第6?7行)と述べた上で、例として、VO_(2)^(+)がVO^(2+)に変換されるバナジウムバッテリを用いる場合を挙げて、十分な量のVO^(2+)が存在する状況下では、VO^(2+)は通常通りプロトンと電子を生成するが、セル内の電解質の流れが少ない位置においてVO^(2+)の局所的枯渇が生じている場合には、プロトンと電子を生成する望ましくない副反応が起こり、このような場合に腐食が生じる旨(以下、「第1の主張」という。)、及び、レドックスフローバッテリシステムは、セルが完全にシールされておらず、僅かな空気が侵入することにより、セル内で気泡を形成し、それにより、腐食が生じる旨(以下、「第2の主張」という。)述べている(回答書第2頁第8行?第3頁第2行)。
コ そして、上記ケの第1の主張及び第2の主張は、いずれも「フローバッテリ」に起こり得る事象であると考えられ、不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が完全に満たされる形態においても、腐食が生じ得るといえるから、本件発明1及び本件発明8において、上記アの課題が生じ得ないということはできない。
サ そうすると、本件発明1及び本件発明8は、上記アの課題を有さない発明を含むとはいえず、しかも、本件明細書の記載から、上記アの課題を解決し得るものといえる。
シ よって、本件発明1及びその引用発明である本件発明2?7、並びに、本件発明8及びその引用発明である本件発明9?17は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
ス なお、申立人は、申立人意見書において、上記ケの第1の主張及び第2の主張に対して次のセ及びソの主張をしている。
セ 第1の主張について、本件発明1及び本件発明8は、セル内の電解液にVO^(2+)が局所的に枯渇する箇所が存在しない場合も包含しているから、上記アの課題が生じ得ない形態を含んでいる。
ソ また、第2の主張について、セル内に気泡が形成されてしまえば、セルはもはや電解液で満たされていることにならないから、この主張は矛盾しており、失当である。
タ しかしながら、上記セの主張について、いくらVO^(2+)が局所的に枯渇する箇所が存在しないようにセルを設計したとしても、セル内のVO^(2+)の濃度を完全に均一にすることは困難であるから、VO^(2+)が局所的に減少する箇所が必ず存在すると考えられ、このような箇所において、僅かな腐食が起こり得るといえる。
チ そうすると、本件発明1及び本件発明8は、上記アの課題が生じ得ない形態を含んでいるとはいえないから、上記セの主張は採用できない。
ツ また、上記ソの主張について、第2の主張は、もともと電解液で満たされているときでも、セル内に気泡が形成されてしまうことがあり得るとの主張であるから、何ら矛盾はないし、失当でもない。
テ よって、申立人の上記セ及びソの主張は採用できない。

(2)特許法第36条第6項第2号違反(上記3の3-2の(2)の取消理由)について
ア 本件発明1は、「フローバッテリ」において、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する」との発明特定事項を含むものである。
イ そして、本件発明1には、「フローバッテリ」における「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行」が、どのような状態を意味しているのか、具体的に定義されていない。
ウ また、本件明細書にも、「フローバッテリ」における「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行」が、どのような状態を意味しているのか、明確に定義されていない。
エ 一方、特許権者は、意見書において、「請求項1には、単一の時点ではなく、所定の長さを明瞭に表す「移行」という用語が記載されています」(意見書第4頁第2?3行。以下、「第3の主張」という。)と述べた上で、「本件明細書の段落【0019】には、以下のような記載があります(下線追加)。
「不活動状態の停止モードにある場合、フローバッテリ20は、不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードにするように始動される必要がある。逆に、充電/放電モードにある場合、フローバッテリ20は、不活動状態の停止モードにするように中止または停止される必要がある。例えば、始動期間は、貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を開始させることで始まり、液体電解質22、26が活動状態の充電/放電モードにおいて上述したように1つまたは複数のセル36を実質的にまたは完全に満たすと終了する。停止期間は、貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を停止させることで始まり、始動期間が始まると終了する。」
理由1では、これらの実施例が全く考慮されていません。これらの実施例では、移行の期間を画定する明確な開始点および終了点が与えられています」(意見書第4頁最終行?第5頁第12行。以下、「第4の主張」という。)と述べている。
オ すなわち、上記エの第3の主張によれば、本件発明1の「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行」は、「単一の時点ではなく、所定の長さ」を表しているとのことである。
カ また、上記エの第4の主張によれば、本件発明1の「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの」「少なくとも1つのセルの移行」とは、「貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を停止させ」た時点が開始点であり、「始動期間が始ま」った時点、すなわち、「貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を開始させ」た時点が終了点であり、また、本件発明1の「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行」とは、「貯蔵タンク32、34からの液体電解質22、26の循環を開始させ」た時点が開始点であり、「液体電解質22、26が」「1つまたは複数のセル36を実質的にまたは完全に満た」した時点が終了点であるとのことである。
キ そして、上記オ及びカの定義は、本件の特許請求の範囲の記載、及び、本件明細書の記載と矛盾することはないし、本件の特許請求の範囲の記載、及び、本件明細書の記載から読み取れる、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行」の定義として、妥当なものである。
ク したがって、本件発明1は、「フローバッテリ」において、「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する」との発明特定事項は、明確である。
ケ また、本件発明8は、「(a)・・・(略)・・・少なくとも1つのセルを備えるフローバッテリを、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ、(b)ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、第1の電極および第2の電極と電気的に結合された電気回路内に配置された電圧制限装置を用いて、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する」との発明特定事項を含むものである。
コ そして、特許権者は意見書において、「請求項8についても同様の説明に依拠しています」(意見書第4頁第17行)と述べている。
サ そうすると、本件発明8の「ステップ(a)の移行の期間」とは、上記カの開始点及び終了点を用いて同様に定義されるものであり、上記カの定義と同様に、本件の特許請求の範囲の記載、及び、本件明細書の記載と矛盾することはないし、本件の特許請求の範囲の記載、及び、本件明細書の記載から読み取れる定義として、妥当なものである。
シ よって、本件発明1及びその引用発明である本件発明2?7、並びに、本件発明8及びその引用発明である本件発明9?17は、明確である。

(3)特許法第29条第2項違反(上記3の3-2の(3)の取消理由)について
(3)-1 本件発明1?7について
ア 甲1の記載及び甲1発明について
(ア)上記5(1)ア及びイには、「レドックスフロー電池システム」についての記載がある。
(イ)上記5(1)アの【0028】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、電池本体1は複数のセル10を積層したものであり、各セルは、イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるものである。
また、上記5(1)イの図1から、電池本体1は、セル10が直列に接続されていることが看取できる。
そうすると、「レドックスフロー電池システム」は、イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるセル10を複数積層し、直列に接続した電池本体1を具えているといえる。
(ウ)上記5(1)アの【0027】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、セル10に供給/排出される電解液を貯留するタンク11,12と、セル10とタンク11,12とを連結する電解液の輸送路13,14を具えている。
(エ)上記5(1)アの【0028】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、各電極10p,10nには、それぞれタンク11,12から輸送路13,14を介して正極電解液、負極電解液が供給されるところ、「各電極10p,10n」は、上記(イ)より、「正極電極10p及び負極電極10n」であるから、正極電極10p及び負極電極10nには、それぞれタンク11,12から輸送路13,14を介して正極電解液、負極電解液が供給される。
(オ)上記5(1)アの【0028】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、正極電解液にV^(5+)を含む溶液、負極電解液にV^(2+)を含む溶液を用いている。
(カ)上記5(1)アの【0029】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、停止時用負荷2は、電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材である。
(キ)上記5(1)アの【0033】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、停止時用負荷2は、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを消費することができるものである。
(ク)上記5(1)アの【0027】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3を具えている。
(ケ)上記5(1)アの【0027】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、電池本体1には、電池が放電する際に電池が電力を供給する外部負荷といった電力系統30が接続されている。
(コ)上記5(1)アの【0033】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、電解液が循環されている通常運転時、電力系統30に対して通常の放電を行い、電解液が循環されていない待機時、停止時用負荷2に対して放電を行う。
(サ)上記(ク)のとおり、開閉部3は、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御するものであって、上記5(1)アの【0029】によれば、開閉部3は、停止時用負荷2と電池本体1との間に電池本体1と直列に接続されるものであるから、上記(コ)の電力系統30に対して通常の放電を行う通常運転時は、開閉部3は開き、上記(コ)の停止時用負荷2に対して放電を行う待機時は、開閉部3は閉じるものである。
(シ)上記(コ)及び(サ)より、電解液が循環されている通常運転時、開閉部3が開くとともに、電力系統30に対して通常の放電を行い、電解液が循環されていない待機時、開閉部3は閉じるとともに、停止時用負荷2に対して放電を行う。
(ス)上記(ア)?(ケ)、(シ)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるセル10を複数積層し、直列に接続した電池本体1と、
セル10に供給/排出される電解液を貯留するタンク11,12と、
セル10とタンク11,12とを連結する電解液の輸送路13,14と、を具え、
正極電極10p及び負極電極10nには、それぞれタンク11,12から輸送路13,14を介して正極電解液、負極電解液が供給され、
正極電解液にV^(5+)を含む溶液、負極電解液にV^(2+)を含む溶液を用い、
電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材からなり、電解液の循環を停止後、セル10に対して電解液の循環を停止させている際、セル10内の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費することができる停止時用負荷2と、
停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3と、を具え、
電池本体1には、電池が放電する際に電池が電力を供給する外部負荷といった電力系統30が接続され、
電解液が循環されている通常運転時、開閉部3が開くとともに、電力系統30に対して通常の放電を行い、電解液が循環されていない待機時、開閉部3が閉じるとともに、停止時用負荷2に対して放電を行う、
レドックスフロー電池システム。」

イ 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明との対比とを対比する。
(ア)甲1発明の「イオンが通過できるイオン交換隔膜10i」、「正極電極10p」、「負極電極10n」、「セル10」、「タンク11,12」、「正極電解液」及び「負極電解液」、「V^(5+)」及び「V^(2+)」、「停止時用負荷2」、「レドックスフロー電池システム」は、本件発明1の「電解質セパレータ層」、「第1の電極」または「第2の電極」、「第2の電極」または「第1の電極」、「セル」、「貯蔵部分」、「液体電解質」、「電気化学的活性種」、「電圧制限装置」、「フローバッテリ」にそれぞれ相当する。

(イ)甲1発明の「イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるセル10を複数積層」した「電池本体1」「を具え」る事項は、本件発明1の「第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセル」「を備え」る事項に相当する。

(ウ)甲1発明の「セル10に供給/排出される電解液を貯留するタンク11,12」「を具え」る事項は、本件発明1の「少なくとも1つのセルと流体的に接続される貯蔵部分」「を備え」る事項に相当する。

(エ)甲1発明の「正極電解液にV^(5+)を含む溶液、負極電解液にV^(2+)を含む溶液を用い」る事項は、本件発明1の「電気化学的活性種を含」む「少なくとも1つの液体電解質」「を備え」る事項に相当する。

(オ)甲1発明は、「電池本体1」は「セル10を複数積層し、直列に接続した」ものであって、「停止時用負荷2」が「電池本体1に直列に接続された」ものである。
そうすると、甲1発明の「停止時用負荷2」は、「電池本体1」の「複数」の「セル10」のうちの一端側の「セル10」の「正極電極10p」、及び、「電池本体1」の「複数」の「セル10」のうちの他端側の「セル10」の「負極電極10n」に電気的に接続されるものであるといえる。

(カ)一方、本件発明1の「電気回路」は、「第1の電極および第2の電極と電気的に結合される」ものであるところ、該「第1の電極および第2の電極」は、「少なくとも1つのセル」が「有する」ものであるが、本件発明1は、いくつの「セル」を備えているのか特定されていない。
そうすると、本件発明1が、1つの「セル」しか備えていない場合には、該「第1の電極および第2の電極」は、同一の「セル」の「第1の電極および第2の電極」であると解されるが、複数の「セル」を備えている場合には、該「第1の電極および第2の電極」は、同一の「セル」のものとは限らず、「電気回路」は、複数の「セル」のうちの、一端側のセルの「第1の電極」、および、他端側のセルの「第2の電極」と「電気的に結合される」場合も含んでいると解される。

(キ)上記(オ)及び(カ)の検討から、甲1発明の「電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材からな」る「停止時用負荷2と、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3と、を具える」との事項は、本件発明1の「第1の電極および第2の電極と電気的に結合される電気回路」「を備え」るとの事項に相当する。

(ク)そして、甲1発明は、「電解液が循環されていない待機時、開閉部3が閉じるとともに、停止時用負荷2に対して放電を行う」ものであって、「電池本体1に直列に接続された」「停止時用負荷2」により、「電池本体1」の「セル10内の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費」して、「電池本体1」の電位を下げるものである。
そうすると、甲1発明の「停止時用負荷2」は、本件発明1の「第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するように構成された」との事項に相当する構成を含むものといえる。
また、甲1発明は「電解液が循環されている通常運転時、開閉部3が開くとともに、電力系統30に対して通常の放電を行い、電解液が循環されていない待機時、開閉部3が閉じるとともに、停止時用負荷2に対して放電を行う」ものであるから、本件発明1の「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する」との事項に相当する構成を有するものであるといえる。

(ケ)上記(キ)及び(ク)の検討から、甲1発明の「電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材からなり、セル10に対して電解液の循環を停止させている際、セル10内の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費する停止時用負荷2と、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3と、を具え、電池本体1には、電池が放電する際に電池が電力を供給する外部負荷といった電力系統30が接続され、電解液が循環されている通常運転時、開閉部3が開くとともに、電力系統30に対して通常の放電を行い、電解液が循環されていない待機時、開閉部3が閉じるとともに、停止時用負荷2に対して放電を行う」事項と、本件発明1の「第1の電極および第2の電極と電気的に結合される電気回路であって、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するように構成された電圧制限装置を備える、電気回路」「を備え、電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能である」事項とは、「第1の電極および第2の電極と電気的に結合される電気回路であって、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するように構成された電圧制限装置を備える、電気回路」「を備え、電圧制限装置が抵抗器を有」する事項で共通する。

(コ)上記(ア)?(エ)、(ケ)より、本件発明1と甲1発明とは、
「第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルと、
少なくとも1つのセルと流体的に接続される貯蔵部分と、
電気化学的活性種を含む、少なくとも1つの液体電解質と、
第1の電極および第2の電極と電気的に結合される電気回路であって、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するように構成された電圧制限装置を備える、電気回路と、
を備え、
電圧制限装置が抵抗器を有する、
フローバッテリ。」で一致し、次の相違点1及び相違点2で相違する。

(相違点1)
「電圧制限装置」の「抵抗器」が、本件発明1は、「複数の抵抗器」であって、「複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能である」のに対し、甲1発明は、複数存在し、個別に制御可能であるとの特定がされていない点。
(相違点2)
「少なくとも1つの液体電解質」が、本件発明1は、「少なくとも1つのセルに選択的に供給可能である」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

ウ 相違点1についての検討
(ア)複数の抵抗器のそれぞれにスイッチング素子を接続して、それぞれの抵抗器を選択/非選択とするようにした可変抵抗器は、周知技術(上記5(2)アのア-2、上記5(2)イの第1図(a)、及び、上記5(3)アの【0011】、【0019】?【0024】、上記5(3)イの図2、図5、図6参照。)である。
(イ)そして、上記可変抵抗器の「複数の抵抗器のそれぞれにスイッチング素子を接続して、それぞれの抵抗器を選択/非選択とするようにした」との事項は、本件発明1の「複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能である」との事項に相当するから、甲1発明において、その「停止時用負荷2」に代えて、上記周知の可変抵抗器を採用すれば、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を得ることができるので、この点を当業者が容易になし得たものであるか否かを、以下検討する。
(ウ)「セル10内の電解液に残存する活物質の電気エネルギーを消費する停止時用負荷2」について、甲1には、「停止時用負荷は、電気エネルギーを消費できるものであればよく、電気抵抗部材を利用することが挙げられる。電気抵抗部材の抵抗値の大きさは、消費する電気エネルギーの大きさに応じて適宜選択するとよい」(上記5(1)アの【0013】)と記載されている。
(エ)ここで、上記「電気抵抗部材の抵抗値の大きさは、消費する電気エネルギーの大きさに応じて適宜選択するとよい」との記載について検討する。
(オ)上記記載に関して、「電気抵抗部材の抵抗値の大きさ」を「選択」するタイミングとして、例えば(A)「レドックスフロー電池システム」を構築するタイミング、及び、(B)「レドックスフロー電池システム」を構築した後、電気抵抗部材を実際に使用するタイミングの2通りが考えられるところ、選択するタイミングが(A)の場合には、「レドックスフロー電池システム」において電解液の循環が停止された際の、セル内に残存し得る最大の電気エネルギー(容量)に基づいて、所定の「電気抵抗部材の抵抗値の大きさ」を「選択」することが考えられ、また、選択するタイミングが(B)の場合には、「レドックスフロー電池システム」において電解液の循環が停止された際の、セル内に残存する電解液の充電状態に基づいて、複数の抵抗値が設定可能である「電気抵抗部材」において「抵抗値の大きさ」を「選択」することが考えられる。
(カ)しかしながら、上記(エ)の記載は、甲1の他の記載を参酌したとしても、上記(オ)で検討した(A)の場合及び(B)の場合のいずれを想定しているのか、また、それ以外のことを想定しているのか不明であり、具体的な技術内容を確定することができない。
(キ)そうすると、甲1には、甲1発明の「停止時用負荷2」の抵抗値を可変とするとの技術思想が存在するとまでいえないから、甲1発明において、その「停止時用負荷2」として、上記(ア)の可変抵抗器を採用することが容易になし得たことであるとはいえない。
(ク)よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(ケ)また、本件発明1を引用する本件発明2?7は、いずれも本件発明1の「電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能である」との事項を含むものであるから、本件発明2?7と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違しており、上記(ア)?(ク)で検討した理由と同様の理由により、甲1発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)-2 本件発明8?12、14、17について
ア 甲1の記載及び甲1方法発明について
(ア)上記5(1)ア及びイには、「フローバッテリ内の電位を制御する方法」についての記載がある。
(イ)上記5(1)アの【0028】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、電池本体1は複数のセル10を積層したものであり、上記5(1)アの【0028】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、各セルは、イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具える。
また、上記5(1)イの図1から、「レドックスフロー電池システム」において、電池本体1は、セル10が直列に接続されていることが看取できる。
そうすると、「レドックスフリー電池システム」において、イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるセル10を複数積層し、直列に接続した電池本体1を具えているといえる。
(ウ)上記5(1)アの【0029】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、停止時用負荷2は、電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材である。
(エ)上記5(1)アの【0033】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、停止時用負荷2は、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを消費することができるものである。
(オ)上記5(1)アの【0027】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3を具えている。
(カ)上記5(1)アの【0031】によれば、「レドックスフロー電池システム」において、開閉部3の開閉動作の制御を行う制御部4を具えている。
(キ)上記5(1)アの【0032】によれば、「フローバッテリ内の電位を制御する方法」において、電力系統30に対して充放電を行う場合、各電解液はセル10に供給される。
(ク)上記5(1)アの【0033】によれば、「フローバッテリ内の電位を制御する方法」において、電力系統30に対して充放電を停止する待機中、各電解液の循環を停止し、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを停止時用負荷2にて消費する。
(ケ)上記(ア)?(ク)より、甲1には、次の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されている。
「イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるセル10を複数積層し、直列に接続した電池本体1と、
電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材からなり、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを消費することができる停止時用負荷2と、
停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3と、
開閉部3の開閉動作の制御を行う制御部4と、
を具えるレドックスフロー電池システムにおいて、
電力系統30に対して充放電を行う場合、各電解液はセル10に供給され、
電力系統30に対して充放電を停止する待機中、各電解液の循環を停止し、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを停止時用負荷2にて消費する方法。」

イ 本件発明8と甲1方法発明との対比
本件発明8と甲1方法発明との対比とを対比する。
(ア)甲1方法発明の「イオンが通過できるイオン交換隔膜10i」、「正極電極10p」、「負極電極10n」、「セル10」、「停止時用負荷2」、「レドックスフロー電池システム」は、本件発明8の「電解質セパレータ層」、「第1の電極」または「第2の電極」、「第2の電極」または「第1の電極」、「少なくとも1つのセル」、「電圧制限装置」、「フローバッテリ」にそれぞれ相当する。

(イ)甲1方法発明の「イオンが通過できるイオン交換隔膜10iの両側にカーボンフェルト製の正極電極10p及び負極電極10nを具えるセル10」「を具える」との事項は、本件発明8の「第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセル」「を備える」との事項に相当する。

(ウ)甲1方法発明は、「電力系統30に対して充放電を行う場合、各電解液はセル10に供給され、電力系統30に対して充放電を停止する待機中、各電解液の循環を停止」するものであるから、本件発明8の「活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ」る「ことを含」むとの事項に相当する構成を有するものである。

(エ)甲1方法発明は、「電池本体1」が「セル10を複数積層し、直列に接続した」ものであって、「停止時用負荷2」が「電池本体1に直列に接続された」ものである。
そうすると、甲1方法発明の「停止時用負荷2」は、「電池本体1」の「複数」の「セル10」のうちの一の「セル10」の「正極電極10P」、及び、「電池本体1」の「複数」の「セル10」のうちの他の「セル10」の「負極電極10n」に電気的に接続されるものであるといえる。

(オ)一方、本件発明8の「電気回路」は、「第1の電極および第2の電極と電気的に結合される」ものであるところ、該「第1の電極および第2の電極」は、「少なくとも1つのセル」が「有する」ものであるが、本件発明8は、いくつの「セル」を備えているのか特定されておらず、本件発明8が、1つの「セル」しか備えていない場合には、該「第1の電極および第2の電極」は、同一の「セル」の「第1の電極および第2の電極」であると解されるが、複数の「セル」を備えている場合には、該「第1の電極および第2の電極」は、同一の「セル」のものとは限らず、「電気回路」は、複数の「セル」のうち、一端側のセルの「第1の電極」、および、他端側のセルの「第2の電極」と「電気的に結合される」場合も含んでいると解される。

(カ)そして、甲1方法発明は、「電池本体1に直列に接続された」「停止時用負荷2」により、「電池本体1」の「セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを消費」して、「電池本体1」の電位を下げるものである。
そうすると、甲1方法発明の「停止時用負荷2」は、本件発明8の「第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する」との事項に相当する構成を含むものといえる。
また、甲1方法発明は「電力系統30に対して充放電を行う場合、各電解液はセル10に供給され、電力系統30に対して充放電を停止する待機中、各電解液の循環を停止し、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを停止時用負荷2にて消費する」との事項は、本件発明8の「ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、」「フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する」との事項に相当する。

(キ)上記(エ)?(カ)の検討から、甲1方法発明の「電池本体1に直列に接続された電気抵抗部材からなり、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを消費することができる停止時用負荷2と、停止時用負荷2への電気エネルギーの供給及び停止を制御する開閉部3と、開閉部3の開閉動作の制御を行う制御部4と、を具え」、「電力系統30に対して充放電を行う場合、各電解液はセル10に供給され、電力系統30に対して充放電を停止する待機中、各電解液の循環を停止し、電解液の循環を停止後、セル10内に残存する余分な活物質の電気エネルギーを停止時用負荷2にて消費する」との事項と、本件発明8の「ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、第1の電極および第2の電極と電気的に結合された電気回路内に配置された電圧制限装置を用いて、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する、ことを含み、電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能であることを特徴とする、腐食を制御するようにモード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する」との事項とは、「ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、第1の電極および第2の電極と電気的に結合された電気回路内に配置された電圧制限装置を用いて、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する、ことを含み、電圧制限装置が抵抗器を有」する、「モード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する」との事項で共通する。

(ク)上記(ア)?(ウ)、(キ)より、本件発明8と甲1方法発明とは、
「(a)第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルを備えるフローバッテリを、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ、
(b)ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、第1の電極および第2の電極と電気的に結合された電気回路内に配置された電圧制限装置を用いて、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する、
ことを含み、
電圧制限装置が抵抗器を有する、
モード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する方法。」で一致し、次の相違点3及び相違点4で相違する。

(相違点3)
「電圧制限装置」の「抵抗器」が、本件発明8は、「複数の抵抗器」であって、「複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能である」のに対し、甲1方法発明は、複数存在し、個別に制御可能であるか不明である点。
(相違点4)
「モード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する」ことが、本件発明8は、「腐食を制御する」ためであるのに対し、甲1方法発明は、腐食を制御するためであるか不明である点。

ウ 相違点3についての検討
(ア)上記相違点3は、上記相違点1(上記(3)-1イ参照。)と同様の相違点であり、上記(3)-1ウにおいて検討した理由と同様の理由により、当業者が上記相違点3に係る本件発明8の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たものとはいえない。
よって、相違点4について検討するまでもなく、本件発明8は、甲1方法発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
(イ)また、本件発明8を引用する本件発明9?12、14、17は、いずれも本件発明8の「電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能である」との発明特定事項を含むものであるから、本件発明9?12、14、17と甲1方法発明とは、少なくとも上記相違点3で相違しており、上記(ア)の理由と同様の理由により、甲1方法発明及び甲2、甲3に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(3)-3 本件発明13、15、16について
本件発明13、15、16については、特許法第29条第2項違反の異議申立がなされていないから、ここでは、特許法第29条第2項違反についての判断は行わない。

5 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由、取消理由及び証拠によっては、本件請求項1?17に係る特許を取り消すことはできない
また、他に本件請求項1?17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルと、
少なくとも1つのセルと流体的に接続される貯蔵部分と、
電気化学的活性種を含み、少なくとも1つのセルに選択的に供給可能である、少なくとも1つの液体電解質と、
第1の電極および第2の電極と電気的に結合される電気回路であって、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへの、または活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードからの、少なくとも1つのセルの移行に応答して第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するように構成された電圧制限装置を備える、電気回路と、
を備え、
電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能であることを特徴とするフローバッテリ。
【請求項2】
電圧制限装置と通信する制御装置をさらに備え、制御装置が電圧制限装置のON/OFF状態に関して電圧制限装置の作動を制御するように構成され、
不活動状態の停止モードにおいて、貯蔵部分から少なくとも1つのセルへの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項1記載のフローバッテリ。
【請求項3】
制御装置が電気インピーダンスの量に関して電圧制限装置の作動を制御するように作動可能であることを特徴とする請求項2記載のフローバッテリ。
【請求項4】
不活動状態の停止モードにおいて、貯蔵部分から少なくとも1つのセルへの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがないことを特徴とする請求項1記載のフローバッテリ。
【請求項5】
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項4記載のフローバッテリ。
【請求項6】
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体を含み、
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項4記載のフローバッテリ。
【請求項7】
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルが、放電された状態の少なくとも1つの液体電解質を含み、
不活動状態の停止モードにおいて、少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が少なくとも部分的にないことを特徴とする請求項4記載のフローバッテリ。
【請求項8】
(a)第1の電極と、第1の電極から離間した第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置された電解質セパレータ層と、を有する少なくとも1つのセルを備えるフローバッテリを、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードへ、または、活動状態の充電/放電モードに関して不活動状態の停止モードから、移行させ、
(b)ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、第1の電極および第2の電極と電気的に結合された電気回路内に配置された電圧制限装置を用いて、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限する、
ことを含み、
電圧制限装置が複数の抵抗器を有し、複数の抵抗器のそれぞれがON/OFF状態間で個別に制御可能であることを特徴とする、腐食を制御するようにモード移行時にフローバッテリ内の電位を制御する方法。
【請求項9】
予め決められた閾値電位より下に第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限することを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、少なくとも1つのセルが空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体をセル内に含み、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、フローバッテリの始動の際に、正の液体電解質および負の液体電解質が一度に1つずつ供給されるように、正の液体電解質および負の液体電解質をそれぞれ第1の電極および第2の電極に供給することを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電角質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させ、電圧制限装置が第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限するのを停止するように電圧制限装置を切り離すことを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項15】
前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させることを含み、ステップ(a)の移行の期間中の少なくとも一時期に、正の液体電解質および負の液体電解質の活動状態の流れが一度に1つずつ停止されるように、正の液体電解質および負の液体電解質の、それぞれ第1の電極および第2の電極を通る活動状態の流れを停止することを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項16】
正の液体電解質および負の液体電解質のうちの一方の流れを停止した後で、負の液体電解質および正の液体電解質のうちの他方の流れを停止する前に、フローバッテリの第1の電極と第2の電極とに亘る電位を制限することをさらに含むことを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記の移行させることは、フローバッテリを活動状態の充電/放電モードから不活動状態の停止モードへと停止させ、第1の電極および第2の電極を空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、およびこれらの組み合わせから成る群より選択される被覆気体で満たすことを含み、
不活動状態の停止モードにおいて、フローバッテリの貯蔵部分から少なくとも1つのセルへのフローバッテリの少なくとも1つの液体電解質の活動状態の流れがなく、
前記の移行させることは、フローバッテリを不活動状態の停止モードから活動状態の充電/放電モードへと始動させることを含み、フローバッテリの始動の際に、フローバッテリの少なくとも1つのセルには少なくとも1つの液体電解質が部分的にないことを特徴とする請求項8記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-03-18 
出願番号 特願2015-546436(P2015-546436)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01M)
P 1 651・ 121- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 佐藤 知絵  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 ▲辻▼ 弘輔
土屋 知久
登録日 2017-03-31 
登録番号 特許第6117373号(P6117373)
権利者 ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション
発明の名称 電圧制限装置を有するフローバッテリ  
代理人 富岡 潔  
代理人 富岡 潔  
代理人 小林 博通  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 小林 博通  
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