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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H05H |
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管理番号 | 1351444 |
異議申立番号 | 異議2017-701215 |
総通号数 | 234 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2019-06-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-12-21 |
確定日 | 2019-04-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6150304号発明「インピーダンスマッチング装置、線形運動モジュール、及びラジオ周波数電力供給装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6150304号の請求項8ないし10に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6150304号の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成24年6月28日に出願され、平成29年6月2日にその特許権の設定登録がされ、平成29年6月21日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年12月21日に特許異議申立人上杉則亮より請求項8ないし10について特許異議の申立てがされた。当審は、平成30年 6月12日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者から何らの応答はなかった。 2 本件発明 「【請求項8】 RF電源に連結され、直線運動する第1軸を含む第1可変キャパシターの前記第1軸に軸結合して直線運動を提供する第1線形運動部と、 前記第1軸と前記第1線形運動部の第1駆動軸とを連結する第1絶縁ジョイントと、 前記第1線形運動部の前記第1駆動軸の移動距離を測定する第1変位センサと、を含み、 前記第1線形運動部は、ボイスコイルモーター(voice coil motor)であることを特徴とするプラズマ発生用インピーダンスマッチング装置の線形運動モジュール。 【請求項9】 前記第1可変キャパシターは、真空可変キャパシター(variable vaccuume capacitor)であることと、 前記第1軸が真空と大気との圧力差によって吸い込まれないように前記第1絶縁ジョイントの周りに配置される線形運動停止部をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のプラズマ発生用インピーダンスマッチング装置の線形運動モジュール。 【請求項10】 前記線形運動停止部は、スプリングであることを特徴とする請求項9に記載のプラズマ発生用インピーダンスマッチング装置の線形運動モジュール。」 3 取消理由の概要 請求項8ないし10に係る特許に対して、当審が平成30年 6月12日付けの取消理由通知において特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項8ないし10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載されている技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8ないし10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、請求項8ないし10に係る特許は、取り消されるべきものである。 甲第1号証ないし甲第4号証は次のとおりである。 甲第1号証:特開2000-58383号公報 甲第2号証:特開2006-324687号公報 甲第3号証:特開2002-208538号公報 甲第4号証:特開2010-158128号公報 4 引用文献の記載 (1)取消理由で通知した甲第1号証:特開2000-58383号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本願発明は、高周波回路の整合(空中線整合器、半導体製造の溶着、洗浄等)や低周波回路の位相制御等に幅広く使用されている、真空環境下で可動式電極を固定式電極に近づけたり離したりして電極同士の入り込む対向面積を調節することにより、静電容量を最大容量値から最小容量値まで制御するようにした真空可変コンデンサにおける静電容量の制御方法の改良と、これを用いた真空可変コンデンサに関するものである。」 イ 「【0015】 【実施例】以下、本願発明の一実施例を図面に基づいて説明する。本願発明における真空可変コンデンサ(1)は、図1乃至図3に示すように、静電容量の制御を行なう可動式電極(4)と接続されたドライブシャフト(5)を、真空環境下でも固定式電極(3)側へ引き付けられず、これに抗して均衡することとなるように保持された状態とするとともに、この状態の下で該ドライブシャフト(5)を、モータとしてパルスモータ(7)を作動させることにより回動ギア(9)を介して可変シャフトギア(6)を移動させるようにした制御部(2)により、非回動に且つ直線的に移動を行なうよう操作してなるものである。 【0016】固定式電極(3)及び可動式電極(4)は、それぞれ所定間隔を有して幾重にも配置された構造からなる多数の電極板(3a,4a)有しており、該電極板(3a,4a)同士が互いに対向し、一方の電極板が他方の電極板間に入り込むこととなるように配置されている。そして、該固定式電極(3)及び該可動式電極(4)は、真空環境状態とされたハウジング(17)内に収容されている。 【0017】可動式電極(4)には上述のようにドライブシャフト(5)が接続されており、該ドライブシャフト(5)は途中に絶縁カップリング材(10)を介在させて、該可動式電極(4)の取り付け側とは離れた位置に長手方向に沿って可変シャフトギア(6)設けられている。 【0018】また、ドライブシャフト(5)を移動させるようにした前記制御部(2)は、図2に示すように、可変シャフトギア(6)とパルスモータ(7)と回動ギア(9)とからなっており、該可変シャフトギア(6)の表面には多数の溝部が形成され、パルスモータ(7)に設けられた回動ギア(9)の周面に形成された多数の溝部と互いに噛み合うようになっている。また、パルスモータ(7)は、コントローラ(図示せず)からの信号によって動作が制御されてなるものであり、真空可変コンデンサにおけるハウジング(17)を固定する取り付け枠体(18)によって支持されている。 【0019】そして、該ドライブシャフト(5)には、可動式電極(4)と接続されたドライブシャフト(5)を、真空環境下でも固定式電極(3)側へ引き付けられずに抗して均衡することとなるように保持された状態とするコイル状のスプリング(8)からなる弾性体が、可動式電極を収容する該ハウジング(17)に隣接して一体的に取り付けられている。なお、該スプリング(8)の取付位置はこれに限らず、図4に示すように、該ドライブシャフト(5)における可動式電極(4)と離反し、これと逆側において前記制御部(2)を支持する取り付け枠体(18)を介して端部に取り付けるようにしても良い。 【0020】また、図3に示すように、ドライブシャフト(5)には、パルスモータ(7)の動作をコントローラを介して電気的に制御するようにしたソフトリミットストッパ(11)、及び該パルスモータ(7)の動作を機械的に制御するようにしたハードリミットストッパ(12)が共に設けられている。ソフトリミットストッパ(11)は、マイクロスイッチ(13)、アーム(14)及びローラ(15)からなるローラ・アーム型のスイッチであり、静電容量の最大容量値もしくは最小容量値のそれぞれ手前における動作の一定の限界位置で、接点が切り換えら得るスイッチ情報の検出を行うようにし、該ドライブシャフト(5)が静電容量の最大容量値と最小容量値の間でしか移動しないようにパルスモータ(7)の動作を制御する。また、ハードリミットストッパ(12)は、該ドライブシャフト(5)の周囲に凸部を形成するようにした2つの突起体(16a,16b)からなり、該突起体(16a,16b)は、静電容量が限界を超えようとするとパルスモータ(7)を固定する取り付け枠体(18)の上枠(18a)もしくは下枠(18b)に当接してパルスモータ(7)に規定以上の負荷がかかって回動を停止するようにし、該ドライブシャフト(5)が静電容量の最大容量値と最小容量値の範囲を超えて移動しないように動作を制御する。 【0021】以上のように構成した真空可変コンデンサ(1)は、コントローラからの信号によりパルスモータ(7)を作動させて回動ギア(9)を回動させると、これと噛み合う可変シャフトギア(6)を介してドライブシャフト(5)が非回動で直線的に操作され、これに伴って該可動式電極(4)を該固定式電極(3)に近づけたり離したりするように移動させて電極同士の入り込む対向面積を調節し、静電容量を最大容量値から最小容量値まで制御するようにしたものである。そして、ドライブシャフト(5)が固定式電極(3)に最も近づき静電容量の最大容量値となると、ソフトリミットストッパ(11)が動作の一定の限界を知らせるスイッチ情報の検出し、接点が切り換えられて該パルスモータ(7)の回動を制御し、また、ドライブシャフト(5)が固定式電極(3)から最も離れて静電容量が最小容量値となった場合も、ソフトリミットストッパ(11)が動作の一定の限界を知らせるスイッチ情報の検出し、接点が切り換えられて該パルスモータ(7)の回動を制御する。さらに、該ソフトリミットストッパ(11)が誤ってパルスモータ(7)の動作を制御しない場合であっても、ドライブシャフト(5)が固定式電極(3)に最も近づき静電容量の最大容量値となると、ハードリミットストッパ(12)の上方突起体(16a)がパルスモータ(7)を固定する取り付け枠体(18)の上枠(18a)に当接してパルスモータ(7)に規定以上の負荷をかけ、該パルスモータ(7)の動作を制御し、また、ドライブシャフト(5)が固定式電極(3)から最も離れて静電容量が最小容量値となった場合も、ハードリミットストッパ(12)の下方突起体(16b)がパルスモータ(7)を固定する取り付け枠体(18)の下枠(18b)当接してパルスモータ(7)に規定以上の負荷をかけ、該パルスモータ(7)の動作を制御することとなる。 【0022】 【発明の効果】以上のように本願発明によれば、シャフト等に必要以上の負荷を掛かることなく真空可変コンデンサにおける静電容量の制御を行なうようにしたものであるので、機械的寿命が大幅に延長することはもちろんのこと、メンテナンス間隔の大幅な時間的延長を可能とすることが出来ることとなる。」 ウ 図1から、可動式電極(4)に軸が接続されていること、及び、絶縁カップリング材(10)が前記軸とドライブシャフト(5)を接続していることが見て取れる。 以上の記載によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「高周波回路の整合に用いる真空可変コンデンサ(1)の容量の制御に用いる運動モジュールであって、可動式電極(4)、前記可動式電極(4)に接続された軸、直線的に移動するドライブシャフト(5)、可変シャフトギア(6)、回動ギア(9)、パルスモータ(7)、前記軸と前記ドライブシャフト(5)を接続する絶縁カップリング材(10)、スプリング(8)を含む運動モジュール。」 (2)取消理由で通知した甲第2号証:特開2006-324687号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0041】 図2は、上記電子部品搭載装置の作業ヘッド支持塔に保持される作業ヘッドの主要部の構成を示す断面図である。同図には、本発明に関わる主要部のみを示しZ軸モータ、Z軸駆動ベルト、Z軸係合ナット、θ軸モータ、θ軸駆動ベルト、θ軸プーリ、回転・昇降支持ガイド等の機構部の構成は図示を省略している。 【0042】 同図に示すように、作業ヘッド40は、Z軸支持シャフト41の下方からZ軸42が挿通されている。Z軸支持シャフト41の下端には、Z軸支持シャフト41の内径と同し内径を有するフランジ43が固着している。Z軸支持シャフト41の内面には、上記のフランジ43の固着部分から上方へ、軸心を中心に対向する位置に、所定の長さの溝44が穿設されている。この溝44に、Z軸42の周面に軸対称に形成されている凸部45が滑動自在に嵌入している。 【0043】 凸部45の長さは、溝44の長さよりも短く形成されている。Z軸42は、自由状態では、自重で下方に付勢され、凸部45の下端がフランジ43の上面に当接してZ軸支持シャフト41に支持される。また、この静止状態で、凸部45の上方には、凸部45の長さが溝44の長さよりも短い分だけの長さhの間隙が溝44内に形成されている。この長さhの分だけ、Z軸42は、Z軸支持シャフト41の昇降とは独立に、上下に移動可能である。またZ軸42は、その凸部45がZ軸支持シャフト41の溝44に嵌入していることによりZ軸支持シャフト41と一体に回転する。 【0044】 Z軸支持シャフト41の内部では、Z軸42の上端面に、Z軸変位センサ46の伸びきった探針46-1の先端が当接している。探針46-1は、Z軸42の上下の移動に追随して上下に進退してZ軸42の上下の変位を検知する。 【0045】 また、Z軸支持シャフト41の内部には、Z軸42の上端面の近傍の適宜の位置に、Z軸支持シャフト41内の空気圧を検知するための空圧センサ47が配設されている。 また、Z軸42の先端には吸着ノズルを着脱自在に装着するノズル保持部48が形成されている。このノズル保持部48は、支持ピン49を支点に回動可能に配設された鉤形をした複数の把持爪51からなるクランプ機構を備えている。 【0046】 また、上記のフランジ43の下面から下方に筒状体52が固設され、この筒状体52にはコイル53が捲着されている。コイル53には、Z軸支持シャフト41に埋設されて上から下に貫通するコイル用電線54が接続されている。コイル用電線54の図外に延びる他端は、不図示の電流増幅回路を介して図1に示したアクチュエータドライバ38に接続している。 【0047】 上記の筒状体52のコイル53の捲着部を包み込むようにヨーク体55が、ノズル保持機構の上方で、Z軸42に外嵌して固着している。ヨーク体55にはZ軸42側に密着して環状の永久磁石56が配設されている。上記のコイル53、ヨーク体55及び永久磁石56により、Z軸42を上下動させるアクチュエータ57を構成している。 【0048】 このアクチュエータ57は、ボイスコイルモータ形式の極めて小型のリニアモータであり、フレミングの左手の法則を利用した簡単な構造をなし、ほぼ電流値に比例した力を発生する。本例では鉛直方向に10mmほどの稼動範囲(上述した長さhの範囲)でZ軸42つまりノズル保持部48を上下に移動させる力を発生させることが出来る。すなわちこのアクチュエータ57は、Z軸42に対して従来の受動的なダンパースプリングに代わって上述した長さhの範囲でZ軸42に対し能動的に上下方向への力を作用させることができる。」 上記記載から、引用文献2には、ボイスコイルモータによりシャフトを移動する装置において、シャフトの変位を変位センサを用いて検出する技術が記載されていると認められる。 (3)取消理由で通知した甲第3号証:特開2002-208538号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0002】 【発明が解決しようとする課題】プラズマ成長やプラズマ・スパッタリングなど、プラズマの利用による材料処理は、長年の間、良く知られている。一般に、これらの処理は、プラズマ・チャンバに接続される無線周波(以下、RFと記す)電力信号を発生する必要がある。プラズマ・チャンバの入力インピーダンスが高度に非線形であるため、RF電源、RF発生器およびプラズマ・チャンバの間に整合回路網が設置されるのが普通である。この整合回路網は、材料処理工程の間中、アクティブに制御され、全処理工程中に発生するプラズマ・チャンバの入力インピーダンスの変化によってRF発生器に課せられる電気的ストレスを緩和する。整合回路網は、発生器からプラズマ・チャンバまでのRF電力の安定した流れを容易にして、システムの電力効率を高めるとともに費用を少なくしてRF発生器の出力電力容量を小さくする。一般に、従来の整合回路網は、プラズマ・チャンバの入力インピーダンスの変化に応答して制御される少なくとも1つの可変コンデンサを備えたπ形フィルタを含む。整合回路網に使用される従来の可変コンデンサは、装置の容量を制御するためモータで駆動される軸を含む。一般に、このコンデンサは、空気誘電体または真空誘電体で作られている。」 上記記載から、引用文献3には、RF電源とプラズマ・チャンバ(すなわちプラズマ発生源)の間に、真空可変コンデンサ(すなわち、可変キャパシター)を有する整合回路網を設ける技術が記載されていると認められる。 (4)取消理由で通知した甲第4号証:特開2010-158128号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 「【0008】 この装置は、浮上体123を静電力で浮上させる静電アクチュエータ120の電極121、122と、電極122と浮上体123との間隔を検出するギャップセンサ140と、可変キャパシタ130を構成する固定電極132及び可動電極131と、可動電極131を可動するボイスコイルモータ(VCM)133と、ギャップセンサ140の検出結果に基づいてVCM133を制御するコントローラ150と、一定の高電圧を発生する定電圧源110とを備えており、定電圧源110は、直列接続した静電アクチュエータ120及び可変キャパシタ130の両端に一定の高電圧を印加している。 この装置では、静電アクチュエータ120の電極122と浮上体123との間隔が常にギャップセンサ140で検出され、検出結果がコントローラ150に送られる。 ・・・」 上記記載から、引用文献4には、可変キャパシタの可動電極の可動手段としてボイスコイルモータを用いる技術が記載されていると認められる。 5 対比・判断 (1)請求項8に係る発明について ア 請求項8に係る発明と引用発明との対比 (ア)引用発明の「高周波回路の整合に用いる真空可変コンデンサ(1)」は、「高周波回路の整合に用いる」が高周波電源に連結されることを間接的に意味するといえること、高周波電源が「RF電源」に相当すること、「整合」が「インピーダンスマッチング」に相当することから、請求項8に係る発明の「RF電源に連結され」た「第1可変キャパシター」、「インピーダンスマッチング」に相当する。 (イ)引用発明の「前記可動式電極(4)に接続された軸」は、絶縁カップリング材(10)により直線的に移動するドライブシャフト(5)と接続されており、ドライブシャフト(5)と連動して直線的に移動するから、請求項8に係る発明の「直線運動する第1軸」に相当する。 (ウ)引用発明の「直線的に移動するドライブシャフト(5)、可変シャフトギア(6)、回動ギア(9)、パルスモータ(7)」は、ドライブシャフト(5)が前記軸と絶縁カップリング材(10)で接続されているから、請求項8に係る発明の「前記第1軸に軸結合して直線運動を提供する第1線形運動部」に相当する。 (エ)引用発明の「ドライブシャフト(5)」は、請求項8に係る発明の「第1駆動軸」に相当する。 (オ)引用発明の「前記軸と前記ドライブシャフト(5)を接続する絶縁カップリング材(10)」は、請求項8に係る発明の「前記第1軸と前記第1線形運動部の第1駆動軸とを連結する第1絶縁ジョイント」に相当する。 イ よって、請求項8に係る発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。 (ア)一致点 「RF電源に連結され、直線運動する第1軸を含む第1可変キャパシターの前記第1軸に軸結合して直線運動を提供する第1線形運動部と、 前記第1軸と前記第1線形運動部の第1駆動軸とを連結する第1絶縁ジョイントと、を含む、 インピーダンスマッチング装置の線形運動モジュール。」 (イ)相違点1 請求項8に係る発明は「前記第1線形運動部の前記第1駆動軸の移動距離を測定する第1変位センサ」を含むのに対して、引用発明はこのような変位センサを有していない点。 (ウ)相違点2 請求項8に係る発明は、第1線形運動部が「ボイスコイルモーター(voice coil motor)」であるのに対して、引用発明は「ドライブシャフト(5)、可変シャフトギア(6)、回動ギア(9)、パルスモータ(7)」からなるものである点。 (エ)相違点3 インピーダンスマッチング装置の用途が、請求項8に係る発明はプラズマ発生用であるのに対して、引用発明は高周波回路に用いるものであるがプラズマ発生用に限定されていない点。 ウ 相違点について (ア)前記相違点1及び相違点2について 引用文献4の【0008】と図9に記載されているように、可変キャパシタの可動電極の可動手段としてボイスコイルモータが公知である。また、引用文献2の【0041】-【0048】、図2に記載されているように、ボイスコイルモータによりシャフトを移動する装置において、シャフトの変位を変位センサを用いて検出する技術も公知である。 よって、引用文献4及び引用文献2の記載に基づいて、引用発明のシャフトをボイスコイルモータを用いて駆動すること、及び、シャフトの変位を測定するセンサを設けることは、当業者が容易になし得たことである。 (イ)前記相違点3について 引用文献3の【0002】に記載されているとおり、RF電源とプラズマ・チャンバ(すなわち、プラズマ発生源)の間に、真空可変コンデンサ(すなわち、可変キャパシター)を有する整合回路網を設けたものは公知である。 よって、引用発明のインピーダンスマッチング装置をプラズマ発生用に用いることは、当業者が容易になし得たことである。 エ したがって、請求項8に係る発明は、引用発明及び引用文献2ないし4の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (2)請求項9に係る発明について ア 請求項9に係る発明と引用発明との対比 (請求項9は請求項8を引用している。請求項8と重複する構成の対比は省略する。) 引用発明の「スプリング(8)」は、「可動式電極(4)と接続されたドライブシャフト(5)を、真空環境下でも固定式電極(3)側へ引き付けられずに抗して均衡することとなるように保持された状態とする」(引用文献1の【0019】参照。)ものであるから、請求項9の「線形運動停止部」に相当する。 よって、請求項9に係る発明と引用発明との間には、前記(1)で記載したものと同じ相違点があるといえる。 前記相違点1ないし3についての検討は前記(1)に記載したとおりである。 イ したがって、請求項9に係る発明は、引用発明及び引用文献2ないし4の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 (3)請求項10に係る発明について ア 請求項10に係る発明と引用発明との対比(請求項10は請求項9を引用している。請求項8又は9と重複する構成の対比は省略する。) 引用発明の「スプリング(8)」は、請求項10の「スプリング」に相当する。 よって、請求項10に係る発明と引用発明との間には、前記(1)で記載したものと同じ相違点があるといえる。 前記相違点1ないし3についての検討は前記(1)に記載したとおりである。 イ したがって、請求項10に係る発明は、引用発明及び引用文献2ないし4に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 6 むすび 以上のとおり、請求項8ないし10に係る発明は、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項8ないし10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
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異議決定日 | 2018-12-07 |
出願番号 | 特願2014-518799(P2014-518799) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Z
(H05H)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 藤本 加代子 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
西村 直史 村井 友和 |
登録日 | 2017-06-02 |
登録番号 | 特許第6150304号(P6150304) |
権利者 | エムケーエス コリア リミテッド |
発明の名称 | インピーダンスマッチング装置、線形運動モジュール、及びラジオ周波数電力供給装置 |
代理人 | 高橋 香元 |
代理人 | 高岡 亮一 |
代理人 | 岩堀 明代 |
代理人 | 小田 直 |