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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1351449
異議申立番号 異議2019-700059  
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-01-28 
確定日 2019-05-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6371140号発明「加熱調理用液体調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6371140号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6371140号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成26年7月3日に出願され、平成30年7月20日にその特許権の設定登録がされ、平成30年8月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成31年1月28日に特許異議申立人高橋麻衣子(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6371140号の請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明3」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
次の成分(A)?(E)
(A)赤唐辛子、
(B)ニンニク、
(C)酢酸及び乳酸から選ばれる有機酸 喫食時の濃度において酸度が0.09?0.25%になる量、
(D)ごま油及び菜種油から選ばれる植物性油脂 喫食時の濃度において0.15?1.0質量%、及び
(E)大豆タンパク加水分解物 喫食時の濃度において窒素量として0.025?0.12%
を含有する加熱調理用液体調味料。
【請求項2】
25℃、喫食時の濃度における粘度が3?200mPa・sである請求項1に記載の液体調味料。
【請求項3】
さらに(F)魚醤及び味噌から選ばれる1種以上を含有する請求項1又は2に記載の液体調味料。」

第3 申立理由の概要
1 特許法第29条第2項(以下「理由1」という。)
本件発明1?3は、本件出願日前に頒布された以下の甲第1号証(主引用例)に記載された発明及び甲第2号証?甲第9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2001-314168号公報
甲第2号証:amiflexアミフレックスシリーズ(R)(審決注:○にR) 2009年4月
甲第3号証:越智 宏倫 著 光琳テクノブックス13天然調味料 株式会社光琳発行 平成5年6月30日
甲第4号証:こく味調味料について キリン協和フーズ株式会社発行 2012年9月1日
甲第5号証:特開2006-166844号公報
甲第6号証:醸造酢の日本農林規格
甲第7号証:加工原料調味料のご案内 富士食品工業株式会社発行 2012年7月
甲第8号証:特開2008-278894号公報
甲第9号証:エバラ食品 キムチ鍋の素まろやか,2013年8月28日,URL,

2 特許法第36条第6項第2号(以下「理由2」という。)
本件発明1?3は、特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。
よって、本件発明1?3についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

第4 当審の判断

1 理由1について
(1)甲号各証の記載
ア 甲第1号証
(1a)「【請求項1】 醤油製造副生成物と香味野菜を含有する混合物を90?150℃で加熱してなることを特徴とする調味用組成物。」
(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、香味力価、持続性に優れた嗜好性の高い調理香味を有する調味用組成物を提供することを目的とする。」
(1c)「【0011】本発明の調味用組成物には、その特徴を損なわない範囲で公知の方法に従い、調味用基質を適宜添加して用いることができる。例を挙げれば、肉感を付加する目的で、含硫化合物を用いることができる。公知のものとしては、チアミン類、タウリン、シスチン、システイン類、メチオニン等がある。また、調理反応を積極的に利用し、香ばしいロースト香味を付加する目的で、糖類、アミノ酸類を用いることができる。糖類としては、グルコース、キシロース、リボース、フラクトース、ソルボース、ガラクトース等の単糖類、蔗糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース等の2糖類、あるいはそれ以上のすべてのオリゴ糖や澱粉の加水分解物などが挙げられ、あるいはそれら二種以上の混合物も利用できる。好ましくは単糖類類ないし2糖類である。
【0012】アミノ酸としては、グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等の単一アミノ酸およびその塩類、あるいはそれらの二種以上の混合物または動植物蛋白の酸加水分解物、動植物蛋白の酵素分解物、魚醤、醤油、酵母エキス等、アミノ酸を含有する食品または調味料が挙げられる。好ましくは動植物蛋白の加水分解物、醤油および酵母エキスである。ここに例示した含硫化合物、糖類、アミノ酸類以外の食品および食品添加物を含有していてもよい。」
(1d)「【0014】上記のタレとしては、焼き肉のタレ、ジンギスカンのタレ、ローストビーフのタレ、蒲焼きのタレ、餃子のタレ、焼売のタレ、納豆のタレ、焼き鳥のタレ、みそカツのタレ、ミートボールのタレ、しゃぶしゃぶのタレ等に用いられる。ソースとしては、とんかつソース、中濃ソース、ウスターソース、ステーキソース、デミグラスソース、カレーソース、てりやきソース、焼きそばソース、焼きうどんソース、パスタソース、ハンバーガーソース、ブラウンソース、ビザソース、たこ焼きソース、お好み焼きソース、もんじゃ焼きソース、クリームソース等に用いられる。また、スープとしては、ラーメンスープ、中華スープ、チキンコンソメスープ、ビーフコンソメスープ、オニオンスープ、うどんスープ、寄せ鍋スープ、石狩鍋スープ、カニすきスープ、キムチ鍋スープ、回鍋肉スープ、もつ鍋スープ、おでんつゆ、フカヒレスープ、テールスープ等に用いられる。また、各種食材の調味ベースとしては、チャーハンの素、麻婆豆腐の素、バンバンジーの素、八宝菜の素、豚汁の素、炊き込みご飯の素、酢豚の素、親子丼の素、牛丼の素、カツ丼の素、玉子丼の素、中華丼の素、煮物調味液、スキヤキ割り下等に用いられる。利用の形態としては、液状、粘性を有するペースト状、固形状、粒状、粉状等いずれの形態でも利用できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】表1に示す原料配合に従って原料を混合し、これを110℃で15分加熱して粘性を有する液状焼き肉のタレを得た。この液状焼き肉のタレについて評価を行った。
【比較例1?3】表1に示す原料配合に従って原料を混合し、これを比較例1では110℃で15分、比較例2および3では85℃で15分加熱して粘性を有する液状焼き肉のタレを得た。この液状焼き肉のタレについて評価を行った。
【0016】
【表1】

【0017】上記実施例1および比較例1?3の液状焼き肉のタレについての評価結果は、次のとおりである。
実施例1:好ましく持続性の強い香味を有する焼き肉のタレである。
比較例1:単調な醤油ベースの焼き肉のタレである。
比較例2:異臭(刺激臭、重い熟成臭)が強く感じられる。
比較例3:全く単調で全体のまとまりがない。」

イ 甲第2号証
(2a)甲第2号証には、植物たん白加水分解物であるアミフレックス(R)(審決注:○にR)シリーズのうち、粉末タイプの「AE-2」の全窒素量が6.2%であり、濃縮めんつゆに対する飲食時濃度での標準使用量が粉末タイプで0.5?1.5%であることが記載されている。

ウ 甲第3号証
(3a)甲第3号証の41・42頁には、植物性タンパク加水分解物であるHVP(Hydrolyzed vegetable protein)の原料として、「蛋白質含量が高く、安価で供給に不安のない脱脂大豆・大麦・小麦・グルテン・コーングルテンなどの植物性原料が使われる。」ことが記載されている。そして、「HVPを構成する各種アミノ酸やペプタイドは、その複雑な幅のある風味が食品に添加した場合、味を整え、塩かどをとり、苦味をやわらげ、嫌味をとるといわれている。このようにHVPは、呈味の増強効果とともに改良効果がある。また、一方香気の増強効果および改良効果をも発揮する。」と記載されている。

エ 甲第4号証
(4a)甲第4号証の8頁には植物たん白加水分解物としてPW-200が、25頁にはPW-200の特定原材料または特定原材料に準ずるものが大豆であることが記載され、12頁には「PW-200」について「持続性のあるこく味を付与し、熟成させたようなまろやかな味に仕上がります」と記載されている。また、22頁には煮物調味液(鍋物調味液)として「PW-200」が記載されている。

オ 甲第5号証
(5a)「【0013】
上記の如く予備加熱処理を行った練り胡麻又は練り胡麻含有水性液体(処理物)は、そのまま又は調味成分と混合して、加熱殺菌する。
上記調味成分としては、上記水性成分として例示した醤油、食酢、アルコール、みりん、果汁などの他、各種胡麻(煎り、切り、擂り)、糖類、食塩、植物性蛋白加水分解物、アミノ酸、味噌、香辛料、増粘剤、各種エキス、だしなどが挙げられる。これらの調味成分の混合量は、全量に対する練り胡麻の量が1?35質量%、好ましくは5?20質量%となる量である。
本発明の製造法により得られる練り胡麻含有つゆ用調味料の好ましい一配合例を下記に挙げる。この配合例は3倍濃縮品(製品使用時に3倍希釈を行うもの)の配合例であり、pHは4.7?5.0程度のものである。
練り胡麻 5?10質量%
醤油 5?15質量%
各種胡麻(煎り、切り、擂り) 1? 5質量%
砂糖 2? 6質量%
食塩 1? 3質量%
調味料(アミノ酸など) 0? 2質量%
アルコール 0? 8質量%
酢酸 0.1? 5質量%」

カ 甲第6号証
(6a)甲第6号証の第3条(醸造酢の規格)の酸度に「4.0%(穀物酢にあっては4.2%、果実酢にあっては4.5%)以上であること。」と記載されている。

キ 甲第7号証
(7a)甲第7号証の29頁には「エキストラート(R)(審決注:○にR)Y」が動物性たん白質を主原料とするエキスであり、窒素含有量(T-N)が8.2%であることが記載されている。

ク 甲第8号証
(8a)「【請求項1】
ストレート換算で、20℃における粘度が130?700cpとなるように粘度調整剤により粘度調整されていることを特徴とする、鍋物調理用調味料。」

ケ 甲第9号証
(9a)甲第9号証には、原材料として唐辛子、にんにく、醸造酢、ごま油、味噌及び魚醤を含む、キムチ鍋の素が記載されている。

(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、「濃い口醤油を30%、力味Sを10%、水飴を10%、上白糖を10%、エキストラートYを5%、旭味を0.5%、醸造酢を3%、煎りゴマを1%、純正ごま油を1%、オニオンパウダーYSを2%、ガーリックパウダーGNSを3%、レットペッパーを0.1%、水を23%及び醤油油を1%含有し、110℃で15分加熱して得た焼き肉のタレ」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているということができる(摘記(1d)実施例1)。

(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「レットペッパー」、「ガーリックパウダーGNS」、「醸造酢」、「純正ごま油」は、本件発明1の「(A)赤唐辛子」、「(B)ニンニク」、「(C)酢酸及び乳酸から選ばれる有機酸」、「(D)ごま油及び菜種油から選ばれる植物性油脂」にそれぞれ相当する。
そして、甲1発明の「焼き肉のタレ」は本件発明1の「液体調味料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「次の成分(A)?(D)
(A)赤唐辛子、
(B)ニンニク、
(C)酢酸及び乳酸から選ばれる有機酸、
(D)ごま油及び菜種油から選ばれる植物性油脂 喫食時の濃度において0.15?1.0質量%、及び
を含有する液体調味料。」である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本件発明1では液体調味料が「加熱調理用」であるのに対し、甲1発明は焼き肉のタレであから、「加熱調理用」に特定されない点。
(相違点2)
本件発明1が大豆タンパク加水分解物を 喫食時の濃度において窒素量として0.025?0.12%を含有するのに対し、甲1発明は「エキストラートY」を5%含有する点。
(相違点3)
本願発明1は(C)酢酸及び乳酸から選ばれる有機酸について、喫食時の濃度において酸度が0.09?0.25%になる量を含むのに対し、甲1発明は醸造酢を3%含む点。

イ 相違点についての検討
相違点3について検討する。
甲1発明の「醸造酢を3%」は、甲第6号証の農林水産省が定める醸造酢の日本農林規格には、醸造酢の規格として酸度が「4.0%(穀物酢にあっては4.2%、果実酢にあっては4.5%)以上であること。」と記載されており、4.0%程度であれば、「喫食時の濃度において少なくとも酸度0.12%程度」含まれるものとなり、「(C)酢酸及び乳酸から選ばれる有機酸 喫食時の濃度において酸度が0.09?0.25%になる量」に相当するから、この点は相違点とはならない。
相違点1について検討する。
甲第1号証には確かに調味用組成物をキムチ鍋スープ等とすることも記載され(摘記(1d))、ここで、キムチ鍋スープは加熱調理用液体調味料であるといえる。しかし、焼き肉のタレをそのままキムチ鍋スープに使用できるという技術常識もないことから、甲第1号証に、甲1発明の焼き肉のタレをキムチ鍋スープすることが記載されているとも、そのことが当業者にとって容易であるともいえない。
また、甲第2号証ないし甲第9号証にも、当該相違点に係る技術的事項を採用することが当業者にとって容易であるとするに足る記載や示唆はない。
したがって、当該相違点に対応する本願発明1の技術的事項を甲1発明において採用することが当業者にとって容易であるとはいえない。
相違点2について検討する。
甲第7号証には「エキストラートY」が動物性たん白質を主原料とするエキスであり、窒素含有量(T-N)が8.2%であることが記載されている(摘記(7a))。
よって、甲1発明の焼き肉のタレには、その加熱前に動物性たん白質を主原料とするエキスが窒素量として0.41%含まれているといえる。
しかし、甲1発明において、動物性たん白質を主原料とするエキスに代えて、(E)大豆タンパク加水分解物を採用し、さらに、その喫食時の濃度における窒素量を0.025?0.12%とする動機付けはない。
また、甲第2号証ないし甲第9号証にも、当該相違点に係る技術的事項を採用することが当業者にとって容易であるとするに足る記載や示唆はない。
したがって、当該相違点に対応する本願発明1の技術的事項を甲1発明において採用することが当業者にとって容易であるとはいえない。

ウ 発明の効果について
【0028】?【0031】の記載からみて、本件発明1の構成を備える加熱調理用液体調味料は、加熱調理したときは、キムチ風の発酵感及び熟成感が良好であり、かつ後味がすっきりしているといえる。

エ したがって、本件発明1は、甲第1号証(主引用例)に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

オ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は甲第1?9号証を示して縷々主張しているが、上記イのとおり、甲第1号証には焼き肉のタレと同じ組成のキムチ鍋スープが記載されているとは認められないから、本件発明1が甲第1?9号証に基づいて容易とすることはできない。

(4)本件発明2、3について
本件発明2は、本件発明1に対して、さらに25℃、喫食時の濃度における粘度が3?200mPa・sであるという技術的事項を追加したものであり、本件発明3は、本件発明1に対して、さらに(F)魚醤及び味噌から選ばれる1種以上を含有するという技術的事項を追加したものである。よって、本件発明2及び3は、本件発明1が上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第9号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない以上、本件発明1を技術的にさらに限定したものである本件発明2及び3も、上記(3)に示した理由と同様の理由により、上記甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第9号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易になし得るものではない。

(5)まとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、本件出願前に頒布された甲第1号証(主引用例)に記載された発明及び甲第2号証乃至甲第9号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件発明1?7についての特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第2号に該当せず、この理由によって取り消されるべきものではない。

2 理由2について
(1)特許異議申立人の主張
【0019】に記載の調味料として例示されている「醤油、味噌」は、麹を加えることで酵素分解された大豆タンパク加水分解物である。また、九州地方の醤油に古くから使用されている大豆等のタンパク加水分解物である「アミノ酸液」も本件特許発明を含む調味料分野において使用されている。甲第10号証の【0019】には、大豆蛋白加水分解物の例として「アミノ酸液」が記載され、【0025】の【表2】には、アミノ酸液を使用した液体調味料が記載されている。甲第11号証の【請求項1】には、アミノ酸液を使用した冷凍濃縮つゆが記載されている。このように、大豆タンパク加水分解物は様々なものが調味料分野で使用されている。
それに対して、【0030】の【表3】に記載の試験No.4-6及び試験No.4-7はそれぞれ「白味噌(窒素分2.66%)」と「豆味噌(窒素分2.72%)」を使用しているにもかかわらず、分析値の「植物タンパク加水分解物由来窒素分(%)」の結果は、試験No.4-6及び試験No.4-7と他の試験No.で違いは見られない。
よって、大豆タンパク加水分解物由来の窒素分であっても、本件特許発明の効果に寄与するものと寄与しないものがあることになる。そうすると、上記のように大豆タンパク加水分解物は様々なものが調味料分野で使用されているにも関わらず、本件特許発明1(E)の記載は、大豆タンパク加水分解物由来の窒素以外の特定はなく、どのような大豆タンパク加水分解物であれば本件特許発明の効果が得られるのか不明確である。
したがって、本件特許発明1が不明確であるため、本件特許発明2及び3も同じく不明確である。

(2)本件発明1は、成分(E)について大豆タンパク加水分解物について、喫食時の濃度において窒素量として0.025?0.12%であることを特定しているが、それ自体で何ら不明確な点はない。

(3)確かに、味噌を使用する試験No.4-6及び試験No.4-7の植物性タンパク加水分解物由来窒素(%)が他の試験No.と数値が変わらない。
ここで、味噌に含まれる窒素分が全て大豆タンパク加水分解物に由来するものであったとしても、その量は試験No.4-6及び試験No.4-7でいずれも約0.019%であり、仮にそれを【表3】の植物タンパク質加水分解物に加算しても、約0.1%で数値は変わらない。
そうすると、味噌が含まれるにもかかわらず、植物タンパク加水分解物由来窒素分(%)に違いが見られないことを前提とした特許異議申立人の主張はその前提において誤りがあるから、当該主張は採用できない。

(4)理由2についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、特許を受けようとする発明が明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合する。
よって、本件発明1?3についての特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号に該当せず、理由2によって取り消されるべきものではない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?3に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2019-04-24 
出願番号 特願2014-137369(P2014-137369)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23L)
P 1 651・ 121- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮岡 真衣  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 冨永 保
瀬下 浩一
登録日 2018-07-20 
登録番号 特許第6371140号(P6371140)
権利者 株式会社Mizkan Holdings 株式会社Mizkan
発明の名称 加熱調理用液体調味料  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 高橋 洋平  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

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