• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1351783
審判番号 不服2018-1329  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-31 
確定日 2019-05-16 
事件の表示 特願2016- 84930「通信システム、及び送信期間の割当方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 8日出願公開、特開2016-165136〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月3日の出願である特願2012-221491号の一部を、平成28年4月21日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 5月20日 手続補正書の提出
平成29年 2月21日付け 拒絶理由通知書
平成29年 6月29日 意見書、手続補正書の提出
平成29年10月24日付け 拒絶査定
平成30年 1月31日 拒絶査定不服審判の請求
平成30年12月 6日付け 拒絶理由通知書(当審)
平成31年 1月31日 面接
平成31年 2月12日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明について
1.本願発明
本願の請求項1?2に係る発明は、平成31月2月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 複数の路側通信機それぞれが、周期的な無線フレームに配列された複数の第1スロット及び第2スロットのうち各路側通信機に固定的に割り当てられた前記第1スロットを用いて無線送信を行い、車載通信機が、前記第2スロットを用いてキャリアセンス方式で無線送信を行う通信システムであって、
前記複数の第1スロットは、
路側通信機と車載通信機との間で行われる路車間通信で用いられる複数の路車間通信用時間スロットと、
前記路車間通信用時間スロットとは別の時間スロットであって、路側通信機同士の間で行われる路路間通信で用いられる複数の路路間通信用時間スロットと、を含み、
各路側通信機が、前記路車間通信用時間スロットには第1のグループ分けに従って割り当てられ、前記路路間通信用時間スロットには前記第1のグループ分けとは異なる第2のグループ分けに従って割り当てられ、
前記周期的な無線フレーム各々に含まれる前記路路間通信用時間スロットの数が前記路車間通信用時間スロットの数よりも少なく、
前記周期的な無線フレームにおける第1フレームの前記路路間通信用時間スロットに割り当てられた前記路側通信機と前記第1フレームの次の第2フレームの当該路路間通信用時間スロットに割り当てられた前記路側通信機とが異なる
通信システム。」

第3 拒絶の理由
平成30年12月6日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、補正前の請求項1に対して特開2008-288939号公報が引用されている。

第4 引用例及び周知技術
1.引用例
当審拒絶理由に引用された特開2008-288939号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。かかるシステムは、主に、インフラ側の通信装置としての複数の路側通信装置と、各車両に搭載される通信装置である車載通信装置とによって、実現される。通信の組み合わせとしては、路側通信装置同士での路路間通信と、路側通信装置と車載通信装置とによる路車(又は車路)間通信と、車載通信装置同士での車車間通信とがある。
(中略)
【0004】
上記のような高度道路交通システムにおいては、限られた周波数帯域内で、路路間、路車間、車車間の各通信を行うべく、マルチアクセス(Multiple Access)が用いられる。マルチアクセスの方法としては、周波数分割多重(FDMA)、符号分割多重(CDMA)もあるが、多くの車載通信装置を含む通信でのマルチアクセスを考えると、時分割多重を含むマルチアクセスが有効である。しかし、時分割多重におけるマルチアクセスでは、各送信機から送信要求があるときに、自律的に通信を行う競合型アクセス方式においては送信信号の衝突が起こると相互干渉により受信ができないという問題が発生する。路側通信装置は固定されているので予約型の非競合型アクセス方式が比較的容易に実現できるが、車載通信装置は移動するため、非競合型アクセスのための適切なタイムスロットの割り当てが困難である。」

(2)「【0008】
《送信エリアについて補足》
なお、上記送信エリアとは主として、与干渉エリア(路側通信装置または移動通信装置から発信される信号が他の信号の送受信を妨害する可能性のあるエリア)をいう。例えば、図10に示すように3台の車両(A車,B車,C車)が路上を走行中で、C車は、A車と通信できるエリアに存在している、とする。斜線を付した部分がA車及びB車の通信可能エリア(路側通信装置または移動通信装置から発信される信号の電界強度が決められたレベル以上となるエリア)であるとき、当該通信可能エリアを含み、さらに大きい範囲の与干渉エリアRa,Rbが存在する。C車は、B車とは通信できない位置にあり、B車からの信号レベルはA車からの信号レベルより低い。しかしながら、B車からの信号は、A車からの信号の受信を妨害するレベルにある。従って、通信可能エリア同士が重ならなくても、通信を妨害する可能性のある与干渉エリアRa,Rbを含んだ送信エリアを決定することが好ましい。但し、上記送信エリアとして、通信可能エリアを設定することも可能ではある。」

(3)「【0012】
また、上記通信システムにおいて、固定型通信装置は、所定エリア内の各路側通信装置に対しても、それらの送信エリアが空間及び時間の少なくとも一方において相互に競合しないように非競合型アクセス用のタイムスロットを割り当てるようにしてもよい。
この場合、移動通信装置のみならず、路側通信装置についても相互に競合しないようにタイムスロットを割り当てることにより、各路側通信装置からの送信信号の衝突を防止することができる。」

(4)「【0021】
図1は、高度道路交通システムの一例としての、本発明の一実施形態による通信システムの構成を示す図である。通信システムは、交通管制センター1と接続された路側通信装置2と、移動通信装置として車両に搭載されている車載通信装置3と、それらの間を結ぶ回線網とにより、構成される。当該回線網のうち、交通管制センター1と路側通信装置2との間は有線(無線も可)で接続され、路側通信装置2同士(路路間、有線も可)、路側通信装置2と車載通信装置との間(路車間/車路間)、及び、車載通信装置3同士(車車間)には、無線通信が用いられる。
【0022】
上記のような通信システムにおいては、限られた周波数帯域内で、時分割多重方式により、路路間、路車間、車路間、車車間の各通信が行われる。図2はフレーム構成の一例であり、路路、路車、車路、及び、車車の各タイムスロット(以下、単にスロットともいう。)によって1フレームが構成されている。
(中略)
【0024】
図4は、路側通信装置2及び車載通信装置3の内部構成を示すブロック図である。路側通信装置2は、アンテナ20に接続された通信部(送受信部)21と、通信に関する制御を行う制御部22と、制御部22に接続された記憶部23とを備えている。制御部22は、内部機能として、通信可能な全ての車載通信装置とその個別の送信エリアを把握する把握手段22aと、路上の所定エリア内において、送信エリアが空間及び時間の少なくとも一方において相互に競合しないように非競合型アクセス用のタイムスロットを各車載通信装置に割り当てる割当手段22bとを有している。」

(5)「【0026】
図5は、例えば東西に4道路、南北に6道路が相互に交差した市街地の道路を平面視した状態を示す略図である。図示の全域を上記の「所定エリア」Xとすると、当該所定エリアX内には、各交差点に路側通信装置2のアンテナ20が、合計24基設けられている。ここで、例えば図示の5台の車両に搭載された車載通信装置A?Eが、非競合型アクセス用のスロット割当の対象となるものである、とする。斜線を付した楕円の領域は、各車載通信装置A?Eの前方に拡がる送信エリアである。楕円の長軸方向が、車両の進行方向である。
【0027】
次に、図6,図7のフローチャートを参照して、路側通信装置2の制御部22によって実行される処理について説明する。車載通信装置A?Eがいずれか最寄りの路側通信装置2の路車間通信エリアに進入し、当該路側通信装置2からの電波が受信できるようになれば、当該車載通信装置は、路側通信装置2により通信を制御されるモードに移行し、スロットの中であらかじめ車載通信装置用競合領域として設けられたスロットを用いて(図11参照)、競合型アクセスにより送信を行う。路側通信装置2は、車載通信装置からの信号を監視している(ステップS1)。この監視により、路側通信装置2は、各車載通信装置の位置、速度、進行方向等を把握する。
【0028】
位置及び進行方向がわかれば、その位置に存在する車載通信装置から発射される電波が別の車載通信装置において受信可能な範囲(送信エリア)もわかる。また、速度がわかれば、車載通信装置の送信エリアを動的に予測することができる。さらに、送信エリアの予測には、車載通信装置の送信電力と、地形情報とを考慮することができる。
【0029】
ここで考慮すべき地形情報とは、各車載通信装置の進行方向前方の地形情報である。このような地形情報に基づいて送信エリアを予測することにより、前方に電波が届く範囲を地形情報に即してより忠実に予測することができる。例えば、道路のカーブや、前方にビルや大きな看板がある等の理由により電波が反射したり、遮られることも想定して、より正確な予測をすることができる。このようにして、各路側通信装置2は、自己の路車間通信エリア内にある車載通信装置の送信エリアを把握する(ステップS2)。
【0030】
次に、路側通信装置2では、路路間通信を用いて、自分の路車間通信エリア以外にある複数の位置に存在する車両の存在も把握し、それらの車載通信装置からの送信が同時に発生しても相互干渉等の影響のない組み合わせを決定する(ステップS3)。具体的は、図7のサブルーチンに示すように、まず、各送信エリアにおいて空間的に競合するものがあるか否か、の判断が行われる(ステップS31)。
【0031】
ここで、競合がない場合には、各車載通信装置を同一グループとして扱うことができる
(ステップS34)。但し、別々のグループ構成にすることを排除するものではない。一方、競合がある場合には、競合する車載通信装置同士を時間的に分けるべく別々のグループに所属させる(ステップS32)。続いて、各グループの車載通信装置と空間的に競合しないものを、同一グループに入れる(ステップS33)。
【0032】
上記の空間的な競合をしているのは、図5の例では、車載通信装置D及びEである。これらの送信エリアは重なっているため、同一のスロットで通信を行うと、楕円の斜線が重なっている領域内の車両の車載通信装置は、車載通信装置D,Eの双方からの信号を受信する状態となり、信号の衝突が生じる。従って、車載通信装置DとEとは互いに別グループとし、D,Eそれぞれと空間的に競合しない車載通信装置を同一グループに入れる。例えば、(A,B,E)を1グループとして扱い、(C,D)を他のグループとして扱うことができる。
【0033】
なお、空間的な競合の有無に関しては、送信エリアの重なり以外にも、接近している場合や、まもなく接近すると予想される場合も、「競合」に準じるものとして扱うようにしてもよい。例えば、図5において、車載通信装置Aと車載通信装置Cとは、送信エリアが重なってはいないが、互いに接近している。車載通信装置Bと車載通信装置Cとは、まもなく接近すると予想される。
【0034】
図6に戻り、決定された組合せ(グループ)に基づき、路側通信装置2はスロットを割り当てる。具体的には、車載通信装置番号などの車載通信装置に固有の番号とその番号に割り当てられた非競合型アクセス用の車載通信装置用スロットを、路車間通信により送信する。上記の例では、車載通信装置A,B,Eに対して1スロット、車載通信装置C,Dに対して別スロットが、それぞれ割当られる(図8参照)。この路車間通信により、自車載通信装置の番号などが非競合型アクセス用のスロットが割り当てられたことを認識した車載通信装置は、非競合型アクセスのスロットを使用して通信を行う。
【0035】
車載通信装置A,B,Eは同時に送信しても空間的に競合しないので、信号の衝突が生じない。また、車載通信装置C,Dは、異なるスロットで互いに同時に車車間通信しても相互には空間的に競合せず、また、車載通信装置A,B,Eとは時間的に競合しないので、信号の衝突が生じない。
【0036】
以上のように、所定エリア内において、複数の車載通信装置の送信エリアが空間的に競合しないように、これらの車載通信装置にスロット割当を行い、また、所定エリア内に設置された全て(24基)の路側通信装置が、同じ方法によりスロット割当を行うことによって、車載通信装置が所定エリア内をどのように移動しようとも、その送信エリアが空間的に競合しないように、簡便に、各路側通信装置がスロット割当を行うことができる。
【0037】
また、相互干渉のないような位置にある車載通信装置には同一のスロットを割り当てるというスロット割当を繰り返して行うことにより、スロットの利用効率が高まり、多くの車載通信装置を非競合型アクセスに収容できる。また、車載通信装置の進行方向を考慮した組合せをすれば、短時間で送信エリアが重ならない組み合わせを選択することもできる。さらに、所定エリアの端に存在し、所定エリアから流出する方向に進んでいる車載通信装置からの信号を監視することにより、所定エリアから流出したことを判断し、当該車載通信装置に割り当てていたスロットの当該車載通信装置への割当解除を直ちに行うことにより、スロットの有効活用ができる。
【0038】
また、路側通信装置において車載通信装置の送信エリアを予測する際、各路側通信装置において、ある位置の車載通信装置からの信号を監視してこれを統計処理する、または、ある位置に存在する車載通信装置からの送信信号を受信した別の車載通信装置がそのパケットを受信したことを表す情報を発信する機能を持てば、その発信された信号を監視し蓄積して、統計処理を行うことにより、ある地点における車載通信装置からの送信エリアマップを作成し、更新するようにすれば、さらに予測の精度を向上させることができる。
さらに、車載通信装置のアンテナ設置高、指向性等の車載通信装置の送信エリアに影響する情報を車載通信装置が発信する情報の中に含めておけば、予測の精度をより向上させることができるようになる。
【0039】
なお、上記実施形態では、空間的に競合しない車載通信装置同士の車車間通信は、時間的に同時となるようにスロット割当ができることを示しているが、これは、路車、路路を含めたそれぞれの組み合わせについても同様である。例えば、図5において、各車両の車載通信装置A?Eの送信エリアだけでなく、24基の路側通信装置2の送信エリアもマッピングして、これらが空間的、時間的に競合しないようにスロット割当を行うことができる。この場合、車載通信装置A?Eのみならず、路側通信装置2についても相互に競合しないようにタイムスロットを割り当てることにより、各路側通信装置2からの送信信号の衝突を防止することができる。」

(6)


上記各記載及び当業者における技術常識からみて、

a 上記(6)の図1によれば、通信システムには複数の路側通信装置があることは明らかである。
上記(4)の段落34によれば、路車間通信により、路側通信装置から車載通信装置への送信が行われていることから、路車タイムスロットは路側通信装置から車載通信装置への送信を行うタイムスロットである。また、車路タイムスロットは車載通信装置から路側通信装置への送信を行うタイムスロットであることは明らかである。
よって、上記(3)及び上記(4)の段落21、22、24の記載によれば、路側通信装置がフレーム内の非競合型で割り当てられた路路タイムスロットと路車タイムスロットを用いて無線送信を行い、車載通信装置が、非競合型で割り当てられた車路タイムスロットと車車タイムスロットを用いて無線送信を行う通信システムといえる。
そして、路路タイムスロットと路車タイムスロットは各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットといえ、車路タイムスロットと車車タイムスロットは車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットといえる。
また、フレームは周期的に繰り返されることは技術常識である。
よって、「複数の路側通信装置それぞれが、周期的なフレームに配列された各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロット及び車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットのうち各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットを用いて無線送信を行い、車載通信装置が、車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットを用いて無線送信を行う通信システム」といえる。

b 上記(4)の段落22の記載及び上記(6)の図2の記載によれば、フレームには路車タイムスロットと路路タイムスロットが含まれており、上記(1)の段落2の記載によれば、路車間通信は路側通信装置と車載通信装置とによる通信であるから、路車タイムスロットは路側通信装置と車載通信装置との間で行われる路車間通信で用いられる路車タイムスロットといえる。
また、上記(1)の段落2の記載によれば、路路間通信は路側通信装置同士の間で行われる通信であるから、路路タイムスロットは路路間通信で用いられる路路タイムスロットといえ、路車タイムスロットとは別のタイムスロットであることは明らかである。
そしてフレーム内に路車タイムスロットや路路タイムスロットを複数設けることができることは明らかである。
よって、「各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットは、路側通信装置と車載通信装置との間で行われる路車間通信で用いられる複数の路車タイムスロットと、前記路車タイムスロットとは別のタイムスロットであって、路側通信装置同士の間で行われる路路間通信で用いられる複数の路路タイムスロットと、を含」むといえる。

c 上記(5)の段落32、34の記載及び上記(6)の図8の記載によれば、A、B、EからなるグループとC、Dからなるグループにグループ分けをしてスロットを割り当てていることから、スロット割当てはグループ分けに従って行われているといえ、段落35の記載によれば、このグループ分けによって、空間的に競合しない車載通信装置同士の車車間通信は、時間的に同時となるようにスロット割当が行われているといえる。
そして、上記(5)の段落39の記載に「上記実施形態では、空間的に競合しない車載通信装置同士の車車間通信は、時間的に同時となるようにスロット割当ができることを示しているが、これは、路車、路路を含めたそれぞれの組み合わせについても同様である。」と記載されていることから、路車と路路もそれぞれの組み合わせについてもグループ分けを行い、空間的に競合しない装置間の通信を時間的に同時となるようにスロットが路側通信装置に割り当てられることが記載されているといえる。
よって、「各路側通信装置が、前記路車タイムスロットには第1のグループ分けに従って割り当てられ、前記路路タイムスロットには第2のグループ分けに従って割り当てられ」ているといえる。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 複数の路側通信装置それぞれが、周期的なフレームに配列された各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロット及び車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットのうち前記各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットを用いて無線送信を行い、車載通信装置が、前記車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットを用いて無線送信を行う通信システムであって、
前記各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットは、
路側通信装置と車載通信装置との間で行われる路車間通信で用いられる複数の路車タイムスロットと、
前記路車タイムスロットとは別のタイムスロットであって、路側通信装置同士の間で行われる路路間通信で用いられる複数の路路タイムスロットと、を含み、
各路側通信装置が、前記路車タイムスロットには第1のグループ分けに従って割り当てられ、前記路路タイムスロットには第2のグループ分けに従って割り当てられる
通信システム。」

2.周知技術1
(1)特開2009-303096号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
「【0032】
〔路側通信装置の制御部による通信制御〕
図4は、上記制御部12の割当手段12aが割り当てるタイムスロットの一例を示す図である。
図4に示すように、制御部12の割当手段12aは、所定周期T(例えば、100ms)で繰り返し生成されるタイムスロットの範囲内において、路側通信装置1の送信専用スロットである第1時間帯Tiと、車載通信装置3の送信専用スロットである第2時間帯Tvとを交互に時分割で割り当てるものである。
(中略)
【0035】
他方、第2時間帯Tvは、車両5の車載通信装置3がキャリアセンス方式で無線通信するための、車両側送信専用のタイムスロットである。従って、路側通信装置1の制御部12は、第2時間帯Tvにおいては、通信部11からのデータ送信は行わず、通信部11を受信態勢に設定するようになっている。」

(2)特開2010-252137号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
「【0020】
〔無線送信の方式等〕
図2は、高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。この高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機の一種である車載通信機3と備えている。
【0027】
親機2Aが有している前記生成部23Aは、前記路側用時間帯(以下、第一タイムスロットT1という)と、前記車載用時間帯(以下、第二タイムスロットT2という)とを含む基礎となるタイムスロットについての割り当て情報を生成する機能を有していて、基礎となるタイムスロットは、第一タイムスロットT1と第二タイムスロットT2とが同じ周期で交互に繰り返すように規定されている。第一スロットT1は、路側通信機2用のタイムスロットであり、この時間帯では、路側通信機2による無線送信が許容され、車載通信機3による無線送信は原則として制限される。また、第二タイムスロットT2は、車載通信機3用のタイムスロットであり、この時間帯では、車載通信機3による無線送信が許容され、路側通信機2は原則として無線送信を行わない。
(中略)
【0031】
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせるものであり、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。したがって、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。」

(3)特開2012-83859号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
「【0048】
自装置2周辺を走行する車両の車載通信機3は、路側通信機2から上記スロット情報S6を受信すると、スロット情報S6に記された路側専用のタイムスロット(図2の第1スロットSL1)以外の時間帯(図2の第2スロットSL2)を利用して、キャリアセンス方式による無線送信を行う。」

上記の(1)?(3)の記載によれば、「車載通信機は、車載通信機のタイムスロットにおいてキャリアセンス方式で無線送信を行う。」ことは周知技術(以下、周知技術1という。)であると認められる。

3.周知技術2
(1)国際公開第2010/024335号には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

ア 「[0028] 図4は、無線通信装置300A及び300Bが、間欠配置されたタイムスロットを使用して無線通信を行っている場合のフレーム構成を示す図である。図4は、2つの無線通信装置が1フレームおきに同一のタイムスロットを使用して無線通信を行っている、2多重の場合を示している。」



(2)特開平9-172674号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

ア 「【0026】ここで、例えば図2(a)に示す移動局3の用いていたスロットTX3/RX3が、再割当スロットとして選定されたとする。このスロット番号が通知された制御部14は、既に使われている当該スロットに対して、1フレームおきに、それぞれ移動局3と移動局4との通信に用いることができるように再割当を実行する(図2(b)参照)。その際、既に通信中の移動局3とその相手局との回線接続を保持したまま、新たな移動局4の呼接続要求に従って、接続相手先との回線接続処理を実行する。」



上記の(1)?(2)の記載によれば「2つの無線通信装置が1フレームおきに同一のタイムスロットを使用して無線通信を行う。」ことは周知技術(以下、周知技術2という。)であると認められる。

4.周知技術3
(1)特開2011-199738号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

ア 「【0060】
かかる直接干渉は、図6(a)に示すように、2つの路側通信機2A,2BのダウンリンクエリアA,Aが重複する範囲にある車両5に対して、各路側通信機2A,2Bが同時にダウンリンク送信する場合に発生する。」




(2)特開2009-124418号公報には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

ア 「【0022】
図1中左側の交差点B1に設置された路側通信装置1は、実線で示した十字状の無線通信領域A1において、路車間及び車車間の無線通信を集中管理している。」




上記の(1)?(2)の記載によれば、路車通信エリアは路路通信エリアと異なるエリアになっていることから、「路路通信エリアと路車通信エリアが異なる。」ことは周知技術(以下、周知技術3という。)であると認められる。

第5 対比及び判断
1.引用発明の「路側通信装置」、「車載通信装置」はそれぞれ、本願発明の「路側通信機」、「車載通信機」に相当する。
また、引用発明は無線送信を行う通信システムであるから、引用発明の「フレーム」は本願発明の「無線フレーム」に相当する。
そして、引用発明の「各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロット」を第1スロットと称することは任意であり、引用発明の「車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロット」を第2スロットと称することも任意である。
また、引用発明の「非競合型で割り当てられた」とは競合しないように割り当てられていることから、「固定的に割り当てられた」といえる。
よって、引用発明の「複数の路側通信装置それぞれが、周期的なフレームに配列された各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロット及び車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットのうち前記各路側通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットを用いて無線送信を行い、車載通信装置が、前記車載通信装置に非競合型で割り当てられたタイムスロットを用いて無線送信を行う通信システム」は、本願発明と「複数の路側通信機それぞれが、周期的な無線フレームに配列された複数の第1スロット及び第2スロットのうち各路側通信機に固定的に割り当てられた前記第1スロットを用いて無線送信を行い、車載通信機が、前記第2スロットを用いて無線送信を行う通信システム」の点で一致している。

2.引用発明の「路車タイムスロット」と「路路タイムスロット」は本願発明の「路車間通信用時間スロット」と「路路間通信用時間スロット」に相当する。
よって、引用発明と本願発明は「前記複数の第1スロットは、路側通信機と車載通信機との間で行われる路車間通信で用いられる複数の路車間通信用時間スロットと、前記路車間通信用時間スロットとは別の時間スロットであって、路側通信機同士の間で行われる路路間通信で用いられる複数の路路間通信用時間スロットと、を含」む点で一致する。

3.引用発明では「各路側通信装置が、前記路車タイムスロットには第1のグループ分けに従って割り当てられ、前記路路タイムスロットには第2のグループ分けに従って割り当てられる」ことから、第1のグループ分けと第2のグループ分けが異なることが含まれていることは明らかである。
したがって、引用発明と本願発明とは「各路側通信機が、前記路車間通信用時間スロットには第1のグループ分けに従って割り当てられ、前記路路間通信用時間スロットには第1のグループ分けとは異なる第2のグループ分けに従って割り当てられる」の点で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 複数の路側通信機それぞれが、周期的な無線フレームに配列された複数の第1スロット及び第2スロットのうち各路側通信機に固定的に割り当てられた前記第1スロットを用いて無線送信を行い、車載通信機が、前記第2スロットを用いて無線送信を行う通信システムであって、
前記複数の第1スロットは、
路側通信機と車載通信機との間で行われる路車間通信で用いられる複数の路車間通信用時間スロットと、
前記路車間通信用時間スロットとは別の時間スロットであって、路側通信機同士の間で行われる路路間通信で用いられる複数の路路間通信用時間スロットと、を含み、
各路側通信機が、前記路車間通信用時間スロットには第1のグループ分けに従って割り当てられ、前記路路間通信用時間スロットには前記第1のグループ分けとは異なる第2のグループ分けに従って割り当てられる
通信システム。」

(相違点1)
一致点である「第2スロット」に関して、本願発明ではキャリアセンス方式で無線送信を行うのに対し、引用発明では非競合型で割り当てられている点。

(相違点2)
一致点である「路路間通信用時間スロット」に関して、本願発明では「周期的な無線フレーム各々に含まれる路路間通信用時間スロットの数が路車間通信用時間スロットの数よりも少なく、前記周期的な無線フレームにおける第1フレームの前記路路間通信用時間スロットに割り当てられた路側通信機と前記第1フレームの次の第2フレームの当該路路間通信用時間スロットに割り当てられた前記路側通信機とが異なる」のに対し、引用発明では当該発明特定事項が特定されていない点。

以下、各相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例(「第4 引用例及び周知技術」の「1.引用例」の「(1)」の段落4 参照)に「路側通信装置は固定されているので予約型の非競合型アクセス方式が比較的容易に実現できるが、車載通信装置は移動するため、非競合型アクセスのための適切なタイムスロットの割り当てが困難である。」と記載されているように、車載通信装置のタイムスロットは非競合型アクセスが困難であることが知られており、「第4 引用例及び周知技術」の「2.周知技術1」のとおり、「車載通信機は、車載通信機のタイムスロットにおいてキャリアセンス方式で無線送信を行う。」ことは周知技術である。
したがって、引用発明において非競合型アクセスが困難である車載通信機のタイムスロットについて、周知技術1を適用し、キャリアセンス方式で無線送信を行うようにすることは当業者にとって格別困難なことではない。

(相違点2について)
路路間通信用時間スロットの数と路車間通信用時間スロットの数の配分については、通信量を考慮して定めるべき設計的事項にすぎない。
また、「第4 引用例及び周知技術」の「3.周知技術2」のとおり、「2つの無線通信装置が1フレームおきに同一のタイムスロットを使用して無線通信を行う。」ことは周知技術である。
したがって、引用発明において路路間通信用時間スロットの数と路車間通信用時間スロットの数の配分について適宜設定し、周知技術2を適用することで、「周期的な無線フレーム各々に含まれる路路間通信用時間スロットの数が路車間通信用時間スロットの数よりも少なく、前記周期的な無線フレームにおける第1フレームの前記路路間通信用時間スロットに割り当てられた路側通信機と前記第1フレームの次の第2フレームの当該路路間通信用時間スロットに割り当てられた前記路側通信機とが異なる」スロット割当とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。

なお、平成31年2月12日に提出された意見書において、「引用例7(本審決の引用例)において・・・すなわち、受信側が車載通信装置か路側通信装置かで送信エリアを異ならせることを示す記載や示唆は引用例7にありません。」と主張し、更に、「本願発明では、路車間通信と路路間通信とで電波干渉の関係が異なり得るという本発明者等の知見(本願明細書の段落0045?0048及び図4)に基づき、固定的な割り当てを路車間通信と路路間通信とで異ならせています。」と主張している点について、以下で検討する。
まず、「第4 引用例及び周知技術」の「1.引用例」の「(5)」の段落39に「図5において、各車両の車載通信装置A?Eの送信エリアだけでなく、24基の路側通信装置2の送信エリアもマッピングして、これらが空間的、時間的に競合しないようにスロット割当を行うことができる。」と記載され、送信エリアについては「(2)」の段落8に「上記送信エリアとは主として、与干渉エリア・・・をいう。・・・斜線を付した部分がA車及びB車の通信可能エリア・・・であるとき、当該通信可能エリアを含み、さらに大きい範囲の与干渉エリアRa,Rbが存在する。」と記載されていることから、引用例で考慮する送信エリアは通信可能エリアに基づく与干渉エリアである。
ここで、「第4 引用例及び周知技術」の「4.周知技術3」のとおり、「路路通信エリアと路車通信エリアが異なる。」ことから、引用発明の路車と路路のグループ分けで考慮される送信エリアが路路通信エリアと路車通信エリアが異なることは周知技術であり技術常識である。また、路車通信と路路通信で必要とする通信相手が異なることは当然想定され、その場合には送信エリアも異なることは明らかである。したがって、異なる送信エリアに基づく路車と路路のグループ分けでは異なるグループ分けとなることは自明であるから、引用発明のグループ分けと本願発明のグループ分けとで相違はない。
よって、出願人の主張は採用できない。
仮に相違があるとしても、当業者にとって格別困難なことではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-15 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-01 
出願番号 特願2016-84930(P2016-84930)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 羽岡 さやか  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 中木 努
長谷川 篤男
発明の名称 通信システム、及び送信期間の割当方法  
代理人 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ