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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16C
管理番号 1351825
審判番号 不服2018-4502  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-04 
確定日 2019-06-04 
事件の表示 特願2015-533289号「向上した上部軸受を有するボールジョイントおよびその構築方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日国際公開、WO2014/052346、平成27年10月 5日国内公表、特表2015-529318号、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年9月25日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成28年6月28日に手続補正書が提出され、平成29年3月23日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年6月28日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がされた後、平成30年4月24日付けで審判請求書の請求の理由について手続補正指令が通知され、平成30年6月7日に審判請求書の請求の理由についての手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1ないし6に基いて、その出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2011-513137号公報
2.特開2000-145786号公報
3.特開平8-121469号公報(周知技術を示す文献)
4.特表2010-523910号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2005-133871号公報(周知技術を示す文献)
6.実願昭58-139500号(実開昭60-45921号)のマイクロフィルム(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は、平成29年6月28日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される発明であり、そのうちの本願発明1及び本願発明9は以下のとおりの発明である。

(本願発明1)
「 【請求項1】
筐体と、
前記筐体に配置された、球形軸受面を有するスタッドと、
前記スタッドの前記球形軸受面に摺動当接される凹状の球形軸受面を有する軸受とを含み、
前記軸受は、カーボンファイバを含むファイバ強化ポリアミド材料からなり、
前記軸受は、実質的に均一なファイバ強化ポリアミドのモノリシックピースとして形成され、前記カーボンファイバは前記凹状の球形軸受面の周りを円周方向に延在する、ボールジョイント。」

(本願発明9)
「 【請求項9】
カーボンファイバが分散されたポリアミド材料を射出成形して軸受の凹状の球形軸受面を有するモノリシックピースとして軸受を構築することを含み、前記射出成形のプロセス中に前記ポリアミド材料は円周方向に流れてカーボンファイバを軸受全体にわたって均一に分散させるとともに、前記ポリアミド材料内で前記カーボンファイバを円周方向に延在するように方向づけ、
前記ファイバ強化ポリアミド材料の軸受を金属筐体の中に挿入し、前記凹状の球形軸受面をスタッドの金属の球形軸受面に摺動当接させることを含む、ボールジョイントを構築する方法。」

なお、本願発明2ないし8、10及び11の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10及び11は、本願発明9を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】
タイロッドエンドであって、
一方の端部に球形のボールを有するスタッドと、
前記ボールとの摺動当接のための凹球形軸受面を有する軸受とを備え、
前記ボールまたは前記軸受面のうちの一方には潤滑溝が形成されており、
前記ボールまたは前記軸受面のうちの前記一方には潤滑被膜が接着されている、タイロッドエンド。」

「【請求項9】
タイロッドエンドであって、
凸面を備えたボールを有するスタッドと、
前記ボールを支持する凹軸受面を有し、可動継手をともに提供する軸受とを備え、
前記ボールおよび前記軸受面は、金属製であり、
前記可動継手は、前記継手が軸回転サイクル動かされるときのトルクとして測定される、動きに対する特定の抵抗を与え、前記トルクは、前記継手が最初の軸回転サイクル動かされるときに最大であり、そして前記継手が100万軸回転サイクル動かされたときの、より少ないトルクまで曲線に沿って減少し、
前記ボールおよび前記軸受面のうちの一方に塗布される摩耗可能な減摩被膜をさらに備え、前記減摩被膜は、最初の軸回転サイクルのトルクのレベルを低下させ、そして時間の経過とともに摩耗してトルクを減少させ続けるが、そのような被膜が前記継手に塗布されなかった場合と実質的に同レベルのトルクを100万回目の軸回転サイクルで提供する効果を有する、タイロッドエンド。」

「【0003】
ボールジョイントを被覆して、初期に低減された望ましいレベルの摩擦抵抗を提供し、同時に、ボールジョイントに長い耐用年数を与えるための取組みがなされてきた。しかしながら、ボールジョイントを被覆する既知の取組みはすべて、ボールジョイントの摩擦抵抗が初期に高すぎるままであるか被膜が被覆面から擦り取られるのが早すぎるかのいずれかまたは両方という結果になっている。」

「【0010】
現在好ましい実施例の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1には、この発明の1つの現在好ましい実施例に従って構築された、外側タイロッドエンド「ステアリング」ボールジョイントアセンブリ(以下タイロッドエンド10と称する)が説明されている。タイロッドエンド10は、内側タイロッドアセンブリなどの内側ステアリングコンポーネントにアジャスタ等を介して取付けられるように構成された端部13を備えたタイロッド11と、一方の端部16にあるボール14と車両ステアリング部材にたとえばねじ山19等によって取付けられるように構成された対向する端部18とを備えたスタッド12とを有し、車両ステアリング部材は、ステアリングナックルまたはステアリングヨーク(図示せず)等であり得る。タイロッドエンド10は、さらに、ボール14との摺動係合のために構成された軸受アセンブリ20を含み、ボール14と軸受アセンブリ20との間の使用中の荷重は、タイロッド11の全長に沿って径方向または実質的に径方向であり、約400?1800lbsなどであり、使用中にスタッド12の全長に沿ってタイロッドエンド10にかかる軸方向の荷重は、無視できるものであるかまたは実質的に無く、約1000から2000lbsの範囲にわたる軸方向の力が起こり得る典型的な「サスペンション」ボールジョイントとは異なる。軸受アセンブリ20は、第1および第2の軸受部を有して設けることができる。軸受部は、それぞれ上部軸受22および下部軸受24とも称され、ボール14の対向する側部と摺動的に係合するように構成されている。軸受アセンブリ20は、用途のために所望される場合、任意の種類の割り軸受として、または単一で一体構造の材料片から構築された軸受として設けられ得ることが認識されるべきである。さらにまた、タイロッドエンド10は、一般的に26に示される摩耗可能な減摩潤滑被膜を含み、この被膜は、ボール14または軸受アセンブリ20のうちの一方に塗布または接着されているが、好ましくは両方にではなく、これは、使用中のトルクを増加させることを含めてタイロッドに悪影響を及ぼすことが示されているためである。行なわれた実験で使用された潤滑被膜26は、たとえば米国登録商標「Sunoloy」の名で購入することができる商標登録されたポリマーベースの被覆材料であり、より具体的には、ミシガン州プリマスにあるSun Coating社製の製品Sunoly402である。塗布完了時の潤滑被膜26により、タイロッドエンド10は、少なくとも2つの機能特徴が向上する。第1に、潤滑被膜により、初期に組立てられた直後のボール14と軸受アセンブリ20との間の摩擦が削減される。第2に、潤滑被膜が、タイロッドエンド10の約10?50万サイクルなどのタイロッドエンド10の耐用年数の初期段階にわたってボール14と軸受アセンブリ20との間の接触域で実質的に消耗されることによって、ボール14と上部および下部軸受部22、24が示す摩耗が減少することになる。したがって、タイロッドエンド10を軸回転させるのに必要なトルクが、タイロッドエンドの耐用年数にわたって減少される程度は、潤滑被膜26が設けられなかった場合よりも少ない。
【0011】
第1および第2の軸受部22、24は、たとえば焼結粉末金属などの任意の適切な金属で構築することができる。各軸受部22、24は、対向する端部間に延在するそれぞれの外側円筒壁28、30を有し、壁28、30は、タイロッド11のハウジングまたはソケット31内への収容に適した大きさに作られている。各軸受部22、24は、それぞれ、実質的に凹球形の軸受面32、34を有し、この軸受面は、ボール14との摺動当接のためにこのボールとおおむね類似した球面曲率を有する。図2および図3にそれぞれ示されるように、軸受部22、24は、軸受面32、34から径方向に外向きに延在する複数の潤滑溝36を有するものとしても示されている。溝36は、それぞれの軸受部22、24の対向する端部間に延在し、各端部を貫通しており、鋭い端縁37がそれぞれの軸受面32、34と溝36との接合部に形成されている。溝36は、たとえばグリースなどの潤滑剤を輸送して、軸受アセンブリ内の潤滑剤の加圧状態を防止するように、かつ軸受アセンブリ20とボール14との間の摩擦を減少させるように主に作用することによって、タイロッドエンド10の耐用年数を延長する。溝36を、所望するように、数多くの形状および深さで形成することができることが理解されるべきである。潤滑剤をさらに流れやすくするために、上部軸受24は、その最上面を貫通する潤滑スロット39を有して、潤滑がそこを通って自由に流れることを可能にするものとして示されている。
【0012】
スタッド12は、たとえばAISI4140鋼などの任意の適切な金属から構築することができる。ボール14は、ここでは実質的に球形の軸受面38を有するものとして示され、さらに例として潤滑被膜がないものとして示されているものの、潤滑被膜は、軸受アセンブリ20ではなくボール14上に潤滑溝が形成される場合、ボールの軸受面38上に形成され得る。
【0013】
潤滑被膜26は、第1および第2の軸受面32、34に塗布され、接着され、ここでは、例として軸受部22、24の外側表面全体に塗布されるものとして示されているが、これに限定されない。たとえば浸漬、噴霧、または噴霧および混転プロセス(a spray and tumble process)などの、潤滑被膜26を軸受面32、34に塗布し、接着する任意の適切な方法が企図される。潤滑被膜26の「接着完了時の」厚みは、マイクロメートルレベルであり、よって積層許容範囲に著しくは影響を与えない。潤滑被膜26が第1および第2の軸受面32、34に直接塗布されているので、潤滑被膜がボール14のみに塗布されていた場合そうであるだろうように、被膜26が軸受部22、24から擦り取られるのが早すぎる、ということがないことが保証される。これは、ボール14の軸受面38を擦る軸受部22、24上の端縁37により起こるであろうものであり、その直後、継手を固くする傾向がある擦り取られた被覆材料により、タイロッドエンド10のトルクは増大されるであろう。当然ながら、ボール14が潤滑溝を有すべきで、軸受部22、24が潤滑溝なしで構成されるべきであった場合、潤滑被膜26は逆に塗布され、被膜は、軸受面32、34にではなくボール14の接触域に塗布されるであろう。したがって、潤滑被膜を潤滑溝を有する軸受面に塗布することが好ましい。」

「【0017】
タイロッドエンド10、100は両方とも、100万サイクルを完了直後、約20in-lbsの実質的に同じ予圧トルクになった。したがって、タイロッドエンド10、100は、このサイクル試験の完了直後、最良の知覚されたトルクをもたらした。これは、タイロッドエンド10上の潤滑被膜26が100万サイクルにわたる使用中にボール14と軸受部22、24との間の接触域で完全にまたは実質的に消耗され、結果として生じるトルクが約10?20in-lbsであり、これは被膜が塗布されなかった場合の結果として生じるトルクにおおむね相当することによるものである。しかしながら、示されるように、潤滑被膜26を備えたタイロッドエンド10は、被膜26がある結果、タイロッドエンド100と比較し、著しく減少されかつ改善されたトルクから始め、このトルクは、タイロッドエンド100のトルクの実質的に2分の1である。」

したがって、上記引用文献1には、実施例の、スタッドの金属製のボールの球形の軸受面を有し、金属で構築した軸受部の凹球形の軸受面に減摩潤滑被膜を塗布したものに注目すると、次の発明(以下、順に「引用発明」及び「引用方法発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「タイロッドと、
前記タイロッドに支持された、金属製のボールの球形の軸受面を有するスタッドと、
前記スタッドの前記ボールの球形の軸受面に摺動当接される凹球形の軸受面を有する軸受部とを備え、
前記軸受部は、金属で構築し、前記凹球形の軸受面に減摩潤滑被膜が塗布された、タイロッドエンド。」

(引用方法発明)
「金属で構築した軸受部の凹球形の軸受面に減摩潤滑被膜を塗布することを含み、
前記軸受部をタイロッド内へ収容し、前記凹球形の軸受面をスタッドの金属製のボールの球形の軸受面に摺動当接させることを含む、タイロッドエンドを組み立てる方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 外側面および内側面の少なくとも一方において、構成材料が螺旋配向または円周配向していることを特徴とする樹脂製べアリング。
【請求項2】 熱可塑性樹脂の射出成形により製造されたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製ベアリング。
【請求項3】 繊維状充填剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製べアリング。」

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂製べアリングおよびその製造方法に関するものであり、特に、金型への溶融樹脂充填工程中に円周運動を行う金型を用いることにより得られる、高強度、高耐摩耗性、高精度を有する樹脂製べアリングに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、多くの金属べアリングが、軽量化、軸本体部品との一体化、コストダウン化を目的として樹脂製ベアリングに置換されている。このような樹脂製ベアリングの代表例は、円筒体と円柱軸からなる機械要素中でのジャーナル軸受や、スラスト軸受等の、オイルレスベアリングと呼ばれるすべり軸受であり、これは熱可塑性樹脂を材料として生産性に優れた射出成形で製造されている。」

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術に鑑み、本発明の目的は、特に射出成形により製造される熱可塑性樹脂製べアリングをその構成材料の配向を考慮して製造することにより、軸受圧力に係わる強度特性、軸運動に対する耐摩耗特性、摩擦特性のみならず円筒度等の精度特性も改善された樹脂製ベアリングを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、原料樹脂に配合される添加剤や充填剤ならびに樹脂自体を、特定の射出成形条件によって、べアリングの軸方向以外の方向に配向させることにより達成された。」

「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の樹脂製べアリングは通常、図1中符号1で示すような中空の円筒形状、または中実の円柱形状である。円筒の場合、摺動面はその内面または外面のいずれかまたはその両方であることができる。また転がり軸受けや滑り軸受けのいずれにも適用が可能である。ベアリングを構成する樹脂は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂であり、好ましくは熱可塑性樹脂である。ベアリングの成形方法は通常、トランスファー成形または射出成形であり、いずれの成形方法によっても、円筒状体の内側における配向および/または外側における配向方向が円筒状体の軸方向と異なればよい。円柱状体の場合は、当然内側面は存在しないので、外側面における配向方向が円柱状体の軸方向と異なることが特徴である。
【0014】射出成形で製造される成形品の各部位の内、いわゆるウェルド部分は、成形品を開裂させる方向に変形力が加わったときに最も破壊を生じ易い部位である。ここで、射出成形して製造される円筒体からなるベアリングが受ける変形の形態は、一般には該円筒体を円周方向に押し広げようとする変形である。しかるに、円筒状キャビティーの一端にゲートを設けた従来の射出成形装置によれば、得られる円筒の側面にはウェルドが円筒の軸方向と同一方向に発生する。すなわち、上記円周方向への変形がウェルドを開裂させる方向に作用してしまう。これは円柱の成形においても同様である。
【0015】従って、少なくともウェルドの発生パターンを円筒軸方向と一致させないこと、好ましくはウェルドを実質的に存在させないことが、高強度のベアリングを製造する条件となる。具体的には、ゲート形状によってウェルドの発生パターンを制御し、実質的にウェルドを消滅させれば良い。
【0016】さらに、この変形力による成形体の伸び(変位)量を低減させることも、その機械強度を向上させるために重要である。このためには、該変形方向(すなわち円周方向)の弾性率を可能な限り大にすることが必要である。具体的には、高弾性率材料を使用するだけではなく、樹脂材料の異方性を積極的に利用し、樹脂材料の配向方向を円筒体の円周方向に可能な限り一致させることが必要である。また、このような配向をとった円筒体は、円周方向の弾性率が高い上に、断面の真円度、円筒体の真直度も向上し、これらの点からも樹脂製ベアリングとして優れた特性を有する。すなわち、射出成形で製造される熱可塑性樹脂成形品の耐摩耗特性、摩擦特性にも異方性が発生するような場合、一般に、配向方向と同方向に生じる応力による抵抗に対する耐摩耗特性、摩擦特性は優れており、反対に直交する方向が最も劣るものである。特に、繊維等の高アスペクト比をもつ充填剤が含有される場合には、この耐摩耗特性、摩擦特性の異方性特性が強まる。
【0017】ここで、円筒体からなるベアリングが受ける摩擦抵抗力は円周方向に発生するものが主体であるのにもかかわらず、従来方法に従って円筒体形成用キャビティーの一端にゲートを設けて射出成形を行うと、得られた円筒状体の材料配向は円筒の軸方向と同一方向に発生するので(内外表面ともに)、両者は直交関係をとることになる。
【0018】すなわち、従来の方法により製造される樹脂製のベアリングは、この点からも機械的強度が低く、単に高弾性率な材料を用いてもかえってその特性を生かせない結果となる恐れがある。前述のように繊維等の高アスペクト比をもつ充填剤が含有される場合には、この耐摩耗特性、摩擦特性の異方性特性が強まるために、その特性がかえって欠点になる傾向が強まる。
【0019】しかるに本発明のべアリングは、軸方向とは異なる材料配向を有するために、樹脂自体の配向性および充填剤の異方性が、従来の製法によるものとは全く反対に作用する。その結果、本発明のべアリングは耐摩耗特性、摩擦特性にも優れたものである。
【0020】本発明のベアリングは、樹脂を以下に示すような特定のゲート様式、特定の金型構造またはその両手法により製造することができる。
【0021】特定のゲート様式とは、円筒状キャビティーの一端に設けられた鋭角で連結する複数のゲートであり、このゲートを通して溶融樹脂をキャビティーへ注入すると、樹脂が螺旋状に配向する。このような機能のゲートは、一般にはタンジェンシャルエッジゲート(tangential edge gate)と呼ばれる(例えば、Robert A.Malloy "Plastic Part Design for Injection Molding ”p.58, Hanserを参照)。
【0022】また上記特定の金型構造とは、ベアリング円筒部分の内側および外側を形成する金型の少なくとも一方が、溶融樹脂がキャビティーに充填されるときに円周方向に回転するものである。上記手法は各々単独で採用しても、両方組み合わせても良い。
【0023】また、これらの手法は、樹脂材料が熱硬化性樹脂であるときはトランスファー成形において、樹脂材料が熱可塑性樹脂であるときは射出成形において使用することが好ましい。
【0024】本発明においては、成形材料として熱可塑性樹脂、配向手法として上記の回転金型構造を用いることが好ましい。これは、溶融樹脂中に適当な剪断応力が生じることと、配向を促進する力が円筒部全体に作用するためである。
【0025】従来の射出成形による製造では、円筒金型キャビティーの底または側面のゲートから樹脂を射出する。したがって、従来技術では樹脂の流れは円筒の軸方向にほぼ平行となる。従来技術の場合樹脂の配向方向は常に明瞭とは限らないが、明瞭に認められる場合は樹脂流れと同様円筒軸方向にほぼ平行である。
【0026】中空円筒状のベアリングを成形する場合、通常、ベアリングの内側と外側の熱可塑性樹脂の配向が、円筒状体の軸方向に対して10°以上異なる方向に配向するよう金型部材を回転運動させる。このためには、回転部材の回転数は、円筒状体の形状、充填所要時間、目的配向角度、回転部材と溶融樹脂間の摩擦抵抗等の関係で実験的・経験的に決定することが適当である。これは、金型表面粗度、材料特性、成形条件等によって、摩擦抵抗が大きく影響されるためである。通常、外径20mm、壁厚1mm、高さ5cmの中空円筒状体を製造するには、充填所要時間1秒、目的配向角度45°の場合で、かつ円筒状体の内側形成金型部材を回転させる場合、その回転数の目安は200から400rpmである。
【0027】また、配向によって高い弾性率が出現する好ましい樹脂として代表的な熱可塑性樹脂としては、芳香族環を有する化合物を主構成モノマーとして含み、該モノマーが主鎖中に含有され、剛直な分子構造を有するものが挙げられる。このような主構成モノマーとしての芳香族環を有するモノマー化合物は、具体的にはビスフェノールA、メタキシリレンジアミン、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2価フェノール等のモノマーが例示される。
【0028】これら芳香族環を有する化合物を主構成モノマーとして含み、該モノマーが主鎖中に含有され、剛直な分子構造を有する樹脂は、市販の樹脂として容易に入手できる。例示すれば、メタキシリレンジアミンを主構成モノマーとするポリアミド(例えば、三菱ガス化学社製のMXDナイロン樹脂(商品名));テレフタル酸を主構成モノマーとするポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂);2,6-ナフタレンジカルボン酸を主構成モノマーとするポリエステル(例えば、PEN系樹脂);ビスフェノールAを主構成モノマーとするポリカーボネートおよびポリエステル;ポリフェニレンスルファイド;ポリフェニレンオキシド;ポリスルフォン;2価フェノールを主構成モノマーとするポリアリレート(例えば、ユニチカ社製のUポリマー樹脂(商品名));ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;p-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、2価フェノールまたはビフェノールを主構成モノマーとする、溶融時に光学的異方性を示すサーモトロピック液晶ポリマー(例えば、住友化学社製のスミカスーパー(商品名)、アモコ社製のザイダー(商品名)、デュポン社製のゼナイト(商品名)、ヘキスト-セラニーズ社製のべクトラ(商品名)、東レ社製のシベラス(商品名)、ユニチカ社製のロッドラン(商品名))が挙げられる。」

「【0031】熱可塑性樹脂には、その配向時の配向方向の弾性率を増加させることを目的として、繊維状充填剤を加えることが効果的である。繊維状充填剤の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維(例えば、デュポン社製ケプラー(商品名))、炭化珪素繊維、ボロン繊維、フェノール樹脂繊維(例えば、群栄化学社製カイノール(商品名))が挙げられる。」

「【0037】回転コア、外金型またはその両方を回転させる射出成形方法で製造される中空円筒状体中の材料配向は、射出成形機から加えられた圧力に起因する軸と同一方向の溶融樹脂流動と、回転部材と溶融樹脂間の摩擦抵抗に起因する軸と90°方向の溶融樹脂流動のバランスで決定される。したがって、金型の中空円筒状体の内側と外側を形成させる部材の回転運動に差が存在すれば(例えば、内側形成部材のみを回転させた場合)、円筒状体の壁厚方向の各部分の両流動のバランスは連続的に変化している状態になるから、材料配向も壁厚方向に連続的に変化する。この結果として壁厚方向の各部分の配向は異なる。
【0038】
【発明の効果】本発明の樹脂製ベアリングは、外面と内面のいずれかまたはその両方にある構成材料が、配向方向成分として円周方向成分を有するように配向しているために、回転軸の運動に対する耐摩耗特性に優れ、また、付随して発生する応力に対して強度にも優れており、容易に破壊しない。」

したがって、上記引用文献2には、「炭素繊維を含有するポリアミドを、特定の射出成形条件によって、べアリングの軸方向以外の方向に配向させて射出成形し、外側面および内側面の少なくとも一方において、螺旋配向または円周配向し、軸受圧力に係わる強度特性、軸運動に対する耐摩耗特性、摩擦特性および円筒度等の精度特性が改善された樹脂製ベアリング及びその製造方法に係る技術的事項」が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0029】次に、以上の各実施例に共通する軸受の材料(摺動性のよい樹脂又は有機合成ゴム)につき詳述する。その材料として用いられる摺動性の良い樹脂としては、熱硬化性または熱可塑性のいずれの樹脂であってもよく、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン・フェノール共縮合樹脂、キシレン変性フェノール樹脂、ユリア・グアナミン共縮合樹脂、アミノ樹脂、アセトグアナミン樹脂、メラミン・グアナミン樹脂、ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、クロロトリフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂(低密度、高密度、超高分子量)、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、水架橋ポリオレフィン樹脂、エチレン・ビニルアセテート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネイト樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、メチルペンテン重合体、ポリアリルスルホン樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、全芳香族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、その他各種高分子物質のブレンド物などを例示することができる。
【0030】また、これらの樹脂材料の摺動特性を改良する目的で、四フッ化エチレン樹脂、リン片状ないし球状グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、金属酸化物等の固体潤滑剤やガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸カルシウムウィスカー、アラミド繊維等の繊維状物質、ウォラストナイト、クレイ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、球状ないし無定形のカーボン等の物質、ブロンズ、銅、スズ等の金属物質などが配合されたものを用いてもよい。さらに、同じく、摺動特性を改良する目的で、鉱物油、ポリアルファオレフィン油、エステル油、シリコーン油、フッ素化油、ポリエーテル油等の油を含油した樹脂を用いてもよい。」

したがって、上記引用文献3には、「樹脂を用いた滑り軸受において、摺動性能の向上のために、樹脂材料にブロンズを配合する技術的事項」が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
本発明は、特にボールソケット形軸継手用の、滑り軸受けシェルを有する球面滑り軸受けに関し、ここで、滑り軸受けシェルは、摺動性材料を含む摺動層および少なくとも1層の寸法安定性支持層を含む。」

「【0013】
摺動層中に存在する摺動性材料は、一方で、異なる材料を含有することが好ましい。摺動性材料は、プラスチック、好ましくは高温プラスチック、特に、フルオロポリマー、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン-クロロトリフルオロエチレン(ECTFE)およびパーフルオロアルコキシポリマー(PFA)からなる群から選択されるもの、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリスルホン、特にポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリフェニレンオキシドおよびこれらの混合物を含有することが好ましい。その優れた摺動特性によりポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることが特に好ましい。
【0014】
摺動層は、潤滑剤および/または充填材、特にガラスおよび/または炭素繊維、シリコーン、グラファイト、ポリエーテルエーテルケトン、二硫化モリブデン、芳香族ポリエステル、炭素粒子、青銅、フルオロポリマー、熱可塑性充填材、例えばポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン(PPSO2)または液晶ポリマー(LCP)、鉱物性充填材、例えば珪灰石または硫酸バリウム(BaSO4)、またはこれらの組み合わせを含有することが好ましい。」

したがって、上記引用文献4には、「樹脂を用いた滑り軸受において、摺動性能の向上のために、樹脂材料に青銅すなわちブロンズを配合する技術的事項」が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0012】
図1に示されるのは本発明の実施例によるボールジョイント1である。このボールジョイント1は、軸線方向に延びる長径aと長径aより短く水平方向に延びる短径bとよりなる断面楕円形状の長球部4と長球部4から突出する柄部3とからなるボールスタッド2と、ボールスタッド2の長球部4を揺動回動自在に内包し一方にベアリング開口6を他方に閉じるベアリング底部26を有する合成樹脂製のベアリング5とを備え、図2に示す如くベアリング5の内周面7には長球部4とベアリング5との間、特にベアリング開口6側右半部及びベアリング底部26側左半部に隙間を形成する凹部8が形成されている。このベアリング開口6側右半部に形成される一方凹部8は、ベアリング開口6側からベアリングの中心を通る赤道線に向けて漸次薄く形成され、且つ一方凹部8の周方向両端部から中央に向けて漸次深く形成されている。また、ベアリング底部26側左半部に形成される他方凹部8は、ベアリング底部26側からベアリングの中心を通る赤道線に向けて漸次薄く形成され、且つ他方凹部8の周方向両端部から中央に向けて漸次深く形成されている。このようなベアリング5は略円筒状のハウジング9に包持され、ハウジング9には、一方にボールスタッド2の柄部3を突出させる小開口10、他方に端部内周に円盤状の閉止板14がかしめ固定される大開口11と、ハウジング9の外周面に軸線方向に間隔をおいて形成される二本の周状の溝12,13とが形成されている。ベアリング5のベアリング底部26と閉止板14との間には金属製のワッシャ15及びワッシャ15内に位置決めされる弾性部材である皿ばね16が配置されている。また18はダストカバーで、断面略L字状のL字環21が埋設されたダストカバー小開口部19がボールスタッド2の柄部3外周に、圧入環22が埋設されたダストカバー大開口部20がハウジング9の小開口10外周に各々装着される。このボールジョイント1が穴部32の内周面に一本の周状の溝33を有するアーム31の穴部32に、ハウジング9の小開口10側に形成される溝12とアーム31の溝33が対向する状態で圧入されている。このハウジング9の小開口10側に形成される溝12とアーム31の溝33との間に一部が切りかかれたC状の抜け止めリング17が圧入され、ボールジョイント1とアーム31とが結合している。」

したがって、上記引用文献5には、「ボールジョイントを、閉止板すなわちエンドキャップと、ベアリングすなわち軸受とエンドキャップとの間にワッシャ及び皿ばねすなわちワッシャスプリングとを含むように構成する技術的事項」が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。

「以下、この考案の一実施例を第1図?第3図にしたがって説明する。ボールジョイントの断面を示した第1図において、略筒状の内側に球帯状の球座面11を設けたソケット10には、球形頭部13をもつボールスタッド12が挿通され、その球形頭部13の首寄り周面14がソケット10の球座面11に摺接されるとともに、ソケット10には球座面17をもつボールシート16が嵌入され、その球座面17がボールスタッド12の球形頭部13の頂部周面15に摺接され、さらに、ソケット10には板状のキャップ18が同キャップ18とボールシート16との間に交互に積重ねた皿ばね19,19を介在した状態で嵌着されかつソケット10の端縁20をローラあるいはダイス等にてかしめることにより固着され、その皿ばね19,19の弾性にてボールシート16がボールスタッド12に押圧されている。なお、ボールシート16と皿ばね19との間には座金21が介在されている。」(明細書4頁15行-同5頁13行)

したがって、上記引用文献6には、「ボールジョイントを、キャップすなわちエンドキャップと、ボールシートすなわち軸受とエンドキャップとの間に座金及び皿ばねすなわちワッシャスプリングとを含むように構成する技術的事項」が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「タイロッド」は、本願明細書の段落【0018】に「タイロッドエンド10は、・・・(略)・・・タイロッド筐体11を有する」と記載されているように技術常識からして、本願発明1の「筐体」に相当し、同様に、「支持された」態様は「配置された」態様に、「ボールの球形の軸受面」は「球形軸受面」に、「凹球形の軸受面」は「凹状の球形軸受面」に、「軸受部」は「軸受」に、「備え」る態様は「含」む態様に、「タイロッドエンド」は、本願明細書の段落【0018】に「本発明の1つの例示的な実施形態に従って構築されるボールジョイント10を示しており、当該ボールジョイント10は、例示として外側タイロッドエンドボール型ジョイントアセンブリとして示され、以下タイロッドエンド10と称される」と記載されているように技術常識からして、「ボールジョイント」に、それぞれ相当する。
また、本願発明1の「軸受は、カーボンファイバを含むファイバ強化ポリアミド材料からなり、前記軸受は、実質的に均一なファイバ強化ポリアミドのモノリシックピースとして形成され、前記カーボンファイバは前記凹状の球形軸受面の周りを円周方向に延在する」態様と引用発明の「軸受部は、金属で構築し、前記凹球形の軸受面に減摩潤滑被膜が塗布された」態様とは、「軸受は、所定の材料で所定の構造である」態様の限りにおいて一致している。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「筐体と、
前記筐体に配置された、球形軸受面を有するスタッドと、
前記スタッドの前記球形軸受面に摺動当接される凹状の球形軸受面を有する軸受とを含み、
前記軸受は、所定の材料で所定の構造である、ボールジョイント。」

(相違点)
(相違点1)
「軸受」の「所定の材料で所定の構造である」態様に関し、本願発明1は「カーボンファイバを含むファイバ強化ポリアミド材料からなり、実質的に均一なファイバ強化ポリアミドのモノリシックピースとして形成され、前記カーボンファイバは前記凹状の球形軸受面の周りを円周方向に延在する」のに対し、引用発明では、「金属で構築し、前記凹球形の軸受面に減摩潤滑被膜が塗布された」点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると、「第4 引用文献、引用発明等」に記載したように、引用文献2には「炭素繊維を含有するポリアミドを、特定の射出成形条件によって、べアリングの軸方向以外の方向に配向させて射出成形し、外側面および内側面の少なくとも一方において、螺旋配向または円周配向し、軸受圧力に係わる強度特性、軸運動に対する耐摩耗特性、摩擦特性および円筒度等の精度特性が改善された樹脂製ベアリング及びその製造方法に係る技術的事項」が記載され、引用文献3及び4には「樹脂を用いた滑り軸受において、摺動性能の向上のために、樹脂材料にブロンズを配合する技術的事項」が記載され、引用文献5及び6には「ボールジョイントを、エンドキャップと、軸受とエンドキャップとの間にワッシャスプリングとを含むように構成する技術的事項」が記載されているといえるものの、上記引用文献1ないし6のいずれにも、本願発明1の上記相違点1に係る、「球形軸受面に摺動当接される凹状の球形軸受面を有する軸受」が、実質的に均一なファイバ強化ポリアミドの「モノリシックピースとして形成され」「カーボンファイバは凹状の球形軸受面の周りを円周方向に延在する」構成は記載されていない。
そして、引用文献2には、「近年、多くの金属べアリングが、軽量化、軸本体部品との一体化、コストダウン化を目的として樹脂製ベアリングに置換されている」ことが記載されていて(段落【0001】)、金属ベアリングを樹脂製ベアリングに置換することが周知技術であるとしても、引用文献2に開示された技術的事項は軸方向が特定されるものであって、実質的に円筒、円柱形状のベアリングを対象とし、ボール形状のベアリングは想定していないと認識されるから、引用発明のボールジョイントであるタイロッドエンドのベアリングに当該技術的事項を適用する動機づけがあるとはいえない。
また、引用文献1の【請求項9】並びに段落【0003】及び【0017】の記載からすると、引用発明の軸受部は、金属で構築することを前提としたうえで、その金属に摩耗する減摩潤滑被膜を塗布することで、最初のトルクレベルの低下及び長い耐用年数という所望の特性を得るためのものであると認識できるから、その材料を金属及び減摩潤滑被膜に替えてファイバ強化ポリアミドのモノリシックピースとすることは、金属で構築するという前提を全面的に変更するうえに、その金属に摩耗する減摩潤滑被膜を塗布することを除くこととなるので、当業者は採用しないというべきである。このことは、引用発明に引用文献2の技術的事項を適用することを阻害する事由ということができる。
以上のことからすると、引用発明をして相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども、容易に想到することができたということはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2ないし8について
本願発明2ないし8は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3.本願発明9について
(1)対比
本願発明9と引用方法発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用方法発明の「軸受部」は本願発明9の「軸受」に相当し、同様に、「凹球形の軸受面」は「凹状の球形軸受面」に、「タイロッド」は、本願明細書の段落【0018】に「タイロッドエンド10は、・・・(略)・・・タイロッド筐体11を有する」と記載されているように技術常識からして、「筐体」に、「タイロッド内へ収容し」た態様は「筐体の中に挿入し」た態様に、「金属製のボールの球形の軸受面」は「金属の球形軸受面」に、「タイロッドエンド」は、本願明細書の段落【0018】に「本発明の1つの例示的な実施形態に従って構築されるボールジョイント10を示しており、当該ボールジョイント10は、例示として外側タイロッドエンドボール型ジョイントアセンブリとして示され、以下タイロッドエンド10と称される」と記載されているように技術常識からして、「ボールジョイント」に、「組み立てる方法」は「構築する方法」に、それぞれ相当する。
また、本願発明9の「ファイバ強化ポリアミド材料の軸受」について「カーボンファイバが分散されたポリアミド材料を射出成形して軸受の凹状の球形軸受面を有するモノリシックピースとして軸受を構築することを含み、前記射出成形のプロセス中に前記ポリアミド材料は円周方向に流れてカーボンファイバを軸受全体にわたって均一に分散させるとともに、前記ポリアミド材料内で前記カーボンファイバを円周方向に延在するように方向づけ」る態様と、引用方法発明の「金属で構築した軸受部の凹球形の軸受面に減摩潤滑被膜を塗布することを含」む態様とは、「凹状の球形軸受面を有する軸受は、所定の材料で所定の構造とすることを含」む態様の限りにおいて一致している。

したがって、本願発明9と引用方法発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「凹状の球形軸受面を有する軸受は、所定の材料で所定の構造とすることを含み、
前記軸受を筐体の中に挿入し、前記凹状の球形軸受面をスタッドの金属の球形軸受面に摺動当接させることを含む、ボールジョイントを構築する方法。」

(相違点)
(相違点A)
「凹状の球形軸受面を有する軸受は、所定の材料で所定の構造とすることを含」む態様に関し、本願発明9は「ファイバ強化ポリアミド材料の」ものであって「カーボンファイバが分散されたポリアミド材料を射出成形して軸受の凹状の球形軸受面を有するモノリシックピースとして軸受を構築することを含み、前記射出成形のプロセス中に前記ポリアミド材料は円周方向に流れてカーボンファイバを軸受全体にわたって均一に分散させるとともに、前記ポリアミド材料内で前記カーボンファイバを円周方向に延在するように方向づけ」る態様であるのに対し、引用方法発明では、「金属で構築した軸受部の凹球形軸受面に減摩潤滑被膜を塗布することを含」む態様である点
(相違点B)
本願発明9は「筐体」が「金属筐体」であるのに対し、引用方法発明では、「タイロッド」が金属か否か不明である点。

(2)相違点についての判断
上記相違点Aについて検討すると、上記「1.(2)」にて既に検討した事項を踏まえると、引用方法発明をして相違点Aに係る本願発明9の構成とすることは、当業者といえども、容易に想到することができたということはできない。
したがって、上記相違点Bについて判断するまでもなく、本願発明9は、当業者であっても、引用方法発明及び引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4.本願発明10及び11について
本願発明10及び11は、本願発明9を減縮した発明であるから、本願発明9と同様の理由により、当業者であっても、引用方法発明及び引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし11は、当業者が引用発明あるいは引用方法発明及び引用文献1ないし6に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-05-21 
出願番号 特願2015-533289(P2015-533289)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 日下部 由泰尾形 元中島 亮  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 田村 嘉章
内田 博之
発明の名称 向上した上部軸受を有するボールジョイントおよびその構築方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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