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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01D
管理番号 1351887
審判番号 不服2018-3977  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-22 
確定日 2019-05-22 
事件の表示 特願2013-171105「一体回転制御特徴要素を備えたタービンバケット」拒絶査定不服審判事件〔平成26年3月6日出願公開、特開2014-40829〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成25年8月21日(パリ条約による優先権主張2012年(平成24年)8月22日、米国)の出願であって、平成28年7月28日に手続補正書が提出され、平成29年4月25日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年8月3日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月30日付けで拒絶査定がされ(発送日:同年12月5日)、これに対し、平成30年3月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、本願の請求項1?8に係る発明は、平成29年8月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ロータ本体の周りの連続ダブテールスロットとロータ本体の表面から半径方向外側に延びるロータ突出部とを含むロータ本体と、
複数のタービンバケットと
を備える、ロータホイール組立体であって、
前記各タービンバケットが、
半径方向内側端部及び半径方向外側端部を有するブレードセクションと、
前記ブレードセクションの半径方向外側端部に接続された一体カバーセクションと、
前記ロータ本体内の連続ダブテールスロットの一部分と係合し且つ前記半径方向内側端部に接続されたベースセクションと
を備えていて、
前記ベースセクションが、
中心本体と、
前記中心本体から軸方向に延びるタングのセットであって、前記タングのセットにおける各タングの軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びるタング突出部を含んでいて、該タング突出部が、ロータ突出部と係合するように構成されている、タングのセットと、
前記タングのセットの半径方向内側にあって前記中心本体から軸方向に延びるフランジのセットと、
前記中心本体から延びて前記ロータ本体内の半径方向開口と係合する回転制御特徴要素と、
を含み、
前記ロータ本体が、前記ロータ突出部に軸方向に隣接する凹部を有する、
ロータホイール組立体。」

第2 原査定の概要
請求項1?8に係る発明は、引用文献1?3に記載された発明及び引用文献4?6に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
1 国際公開第2007/063848号(本審決の引用文献1)
2 特開平7-119402号公報(同引用文献2)
3 特公昭46-28052号公報(同引用文献3)
4 米国特許出願公開第2005/0074335号明細書(同引用文献4)
5 特開平10-196307号公報(同引用文献5)
6 特開昭58-167807号公報

第3 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された国際公開2007/063848号(以下「引用文献1」という。)には、「タービン動翼、タービンロータおよびそれらを備えた蒸気タービン」に関して、図面(特に、図1?3、図8、図9参照)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。

(1)「[0023] 図1は、本発明に係るタービン動翼の第1実施形態を示す斜視図である。
[0024] 本実施形態に係るタービン動翼は、例えば発電所の動力機械としての蒸気タービンに適用するものであり、翼入口部としての前縁1aと翼出口部としての後縁1bを備える翼有効部1の頂部側にスナッバー構造のカバー2を設けるとともに、その底部側にT字型の翼植込み部3を設けて構成されている。
[0025] これら翼有効部1、カバー2、T字型の翼植込み部3のそれぞれの接続は、一つの素材からの削り出しか、または冶金的な接合を行っている。
[0026] T字型の翼植込み部3は、ソリッド (翼台) 4を備えるとともに、このソリッド 4のねじれ止め片法線方向(タービンロータ軸方向)AR1に向い、前縁1a側と後縁1b側とのそれぞれに突出し状のねじれ止め片5を設けている。
[0027] 突出し状のねじれ止め片5は、タービンホイールの周方向に向って延びるとともに、この先端を平坦面6に形成し、この平坦面6をタービンホイール(タービンディスク)のタービンホイール植込み部に嵌合接触させている。なお、タービンホイールは、タービンロータから削り出して形成するとともに、翼植込み部3を嵌合させて植込むタービンホイール植込み部を備えている。」

(2)「[0034] このような構成を備えるタービン動翼において、本実施形態は、図2に示すように、 翼有効部1,1を翼有効部配列方向(タービンホイールの周方向)AR2に向って順に配列させると、カバー腹側張出し部9とカバー背側張出し部10とのカバー接触面13が圧接され、この圧接によってカバー2にねじれが発生する。
[0035] この場合、カバー2にねじれが発生しても、このねじれを拘束するものがないと、翼有効部1,1が剛性移動でき、回転が自由であるから、いわゆるねじれ戻りが生じ、力バー接触面13にはカバー接触反力Fcが発生しなくなるおそれがある。
[0036] しかし、カバー接触面13にねじれが発生したときに、例えば、図3に示すように、力バー2にねじれ角θcが発生するとき、翼植込み部3のソリッド(翼台)4に設けたねじり止め片5の役目を十分に機能させるねじり戻り拘束片14をタービンホイール(タービンディスク)15のタービンホイール植込み部16に設けることにより、タービンホイール植込み部16のねじり戻り拘束片14とソリッド4のねじり止め片5との間に発生するねじり戻り拘束片反カRdが発生し、カバー接触面13に発生するカバー接触反力Fcを高く維持させる。」

(3)「[0051] これに対し、本実施形態では、ソリッド4にねじり止め片5を設け、ねじり止め片5を嵌合させるねじり戻り拘束片14をタービンホイール植込み部16に設けたから、カバー2の隣接する相手側のカバー2とのカバー接触面13とねじり止め片5との平行度合が多少ともずれがあってもカバー接触面13に発生するカバー接触反力Fcを十分に確保することができ、カバー接触反力の確保によって制振効果を十分に発揮することができ、全周一群翼綴り構造を実現することができる。
[0052] なお、本実施形態は、ソリッド4にねじり止め片5を設け、ねじり止め片5を嵌合させるねじり戻り拘束片14をタービンホイール植込み部16に設け、カバー接触面13に発生するカバー接触反力Fcを十分に確保させる構成にしたが、この例に限らず、例えば、図7に示すように、タービンロータ軸方向に沿う側のソリッド4の端面20を、図5に示すタービンホイール植込み部16のねじり戻り拘束片14に強く圧接させ、ねじり戻り拘束片反力Rdを発生させ、このねじり戻り拘束片反力Rdの十分な確保の下、カバー接触反力Fcを十分に高く維持させてもよく、また、例えば、図8に示すように、ソリッド4に設けたねじり止め片5の内側面20aにタービンホイール植込み部16を嵌合させ、ねじり戻り拘束片反力Rdを発生させてもよい。」

(4)「[0053] 図9は、本発明に係るタービン動翼の第4実施形態を示す斜視図である。
[0054] なお、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には、同一符号を付し、重複説明を省略する。
[0055] 本実施形態に係るタービン動翼は、翼有効部1の頂部側にスナッバー構造のカバー2を備え、その底部側にT字型の翼植込み部3を備えるとともに、T字型の翼植込み部3の底部側にホイール周方向に向って延びるねじり止め片5を設け、このねじり止め片5を嵌合させるねじり戻り拘束溝(図示せず)をタービンホイール植込み部に設けたものである。
[0056] このように、本実施形態は、T字型の翼植込み部3に設けたねじり止め片5をタービンホイール植込み部のねじり戻り拘束溝に嵌合させ、このねじり止め片5とねじり戻り拘束溝との間に発生するねじり戻り拘束片反カRdに基づいてカバー接触面13に発生するカバー接触反力Fcを確保させる構成にしたので、カバー接触反力Fcの確保の下、カバー2のねじり止めを防止して高い制振効果を発揮させることができる。」

(5)図8には、上記(3)の「図8に示すように、ソリッド4に設けたねじり止め片5の内側面20aにタービンホイール植込み部16を嵌合させ、ねじり戻り拘束片反力Rdを発生させてもよい」との記載とあわせみると、T字型の翼植込み部3の中心本体から軸方向に一対のねじれ止め片5が延び、前記一対のねじれ止め片5における各ねじれ止め片5の軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びる第1の突出部を含むことが示されている。

(6)図8には、一対のねじれ止め片5の半径方向内側にあって前記中心本体から軸方向に延びる一対の第2の突出部が示されている。

(7)図9には、上記(4)の「T字型の翼植込み部3の底部側にホイール周方向に向って延びるねじり止め片5を設け、このねじり止め片5を嵌合させるねじり戻り拘束溝(図示せず)をタービンホイール植込み部に設けたものである」との記載とあわせみると、T字型の翼植込み部3がその中心本体から延びてタービンホイール15内のねじり戻り拘束溝と嵌合するねじり止め片5を含むことが示されている。

上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物には、図8に示される実施例に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「タービンホイール15の周りのタービンホイール植込み部16とタービンホイール15の表面から半径方向外側に延びるねじり戻り拘束片14とを含むタービンホイール15と、
複数のタービン動翼と
を備える、蒸気タービンであって、
前記各タービン動翼が、
頂部側端部及び底部側端部を有する翼有効部1と、
前記翼有効部1の頂部側端部に接続されたカバー2と、
前記タービンホイール15内のタービンホイール植込み部16の一部分と係合し且つ前記底部側端部に接続されたT字型の翼植込み部3と
を備えていて、
前記T字型の翼植込み部3が、
中心本体と、
前記中心本体から軸方向に延びる一対のねじれ止め片5であって、前記一対のねじれ止め片5における各ねじれ止め片5の軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びる第1の突出部を含んでいて、該第1の突出部の内側面20aが、タービンホイール植込み部16と嵌合するように構成されている、一対のねじれ止め片5と、
前記一対のねじれ止め片5の半径方向内側にあって前記中心本体から軸方向に延びる一対の第2の突出部と、
を含む、
蒸気タービン。」

また、引用文献1には、上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、図9に示される実施例に関して、次の事項(以下「引用文献1に記載された事項」という。)が記載されている。

「T字型の翼植込み部3の中心本体から延びてタービンホイール15内のねじり戻り拘束溝と嵌合するねじり止め片5を含んでいるT字型の翼植込み部3。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された文献である特開平7-119402号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面(特に、図4参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「【0002】
【従来の技術】従来の一般的なタービンロータ翼溝部の構造について図3のロータディスク部の側面図、図4に示す図3のA-A矢視断面図により説明する。図3は複数段設けられているロータディスクの横断側面図であるが、ロータディスク16の構成は中心孔18、ロータ軸19及びバランスホール20からなり、タービンロータには図示していないが、このような構造の複数のロータディスク16が設けられており、各々の外周側にはタービン動翼12及びそれに取付けられたシュラウド14を結合固設させるための翼溝部が周方向あるいはロータ軸方向に形成されている。その内、図4はロータディスク16外周側の周方向に形成された翼溝部の断面図である。
【0003】即ち、ロータディスク16外周側の周方向に形成された翼溝9には、同翼溝9と同形状を呈した翼根11を有する複数の動翼12が挿入され、結合され、同動翼12の翼根11は翼溝9底部のロータディスク16周方向に形成された支持ピン溝10に連設された支持ピン13で翼溝9に固定設されている。また、動翼12は翼根11の他に、動翼12に発生する振動を軽減し流体の散逸を防止するためのシュラウド14と同シュラウド14を各々の動翼12頭部に圧着させるためのテノン15から構成されている。このような構造のタービンロータが軸19を中心に高速回転をすることになる。」

(2)図4には、上記(1)と合わせみると、回転翼12の翼根11の軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びる内径方向突出部を含んでいて、該内径方向突出部の内側面等が、ロータディスク16の外径方向突出部と相補的に取り付けられることが示されている。

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された文献である特公昭46-28052号公報(以下「引用文献3」という。)には、図面(特に、第2図、第3図参照)とともに、次の事項が記載されている。

(1)「羽根14は良く知られた半径方向に挿入される型であって、翼形部分又は羽根部分18と台部分19とT形横断面の根元部分20を備えている。羽根14の外先端に半径方向に延びる柄部分21を設ける。これらの柄部分21は円形横断面として示されているが、良く知られているように、任意の他の形状の横断面であって良い。
回転子円板12にその周辺部分15で周溝22を設ける。この溝はT形の羽根根元部分20と良く一致するT形横断面である。図示するように、溝22は横断面が根元部分より少し大きく、後で説明するように組立て易くする。しかし所望に応じては両者をきちんと嵌込んだり、滑り嵌めにしたりすることができる。
第2図及び第3図に最も良く示すように、溝22のT形横断面の一部分が向合って相隔たる一対の周フランジ24で定められ、これらのフランジは羽根のT形部分を横断して羽根を溝内に良く保持する。」(3欄16行?34行)

(2)第2図及び第3図には、上記(1)と合わせみると、羽根14の台部分19の軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びる内径方向突出部を含んでいて、該内径方向突出部の内側面等が、回転子円板15の周フランジ24の外径方向突出部と相補的に取り付けられることが示されている。

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された文献である米国特許出願公開第2005/0074335号明細書(以下「引用文献4」という。)のFig.2?4には、符号1の指示線の先をみると、ロータ2の動翼植込み部の隅部に、比較的大きな湾曲凹面が形成されることが示されている。

5 引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された文献である特開平10-196307号公報(以下「引用文献5」という。)の図2には、中間ウェブ10の隅部に湾曲凹面が形成されることが示されている。

6 引用文献6
本願の優先日前に頒布された文献である特開平8-61019号公報(以下「引用文献6」という。)の図3には、エンジンバルブに関するものであるが、シム(010)が嵌合されるタペット本体(06)の保持孔(09)の連接隅部(012)に環状の逃げ溝(013)が形成されることが示されている。

7 引用文献7
本願の優先日前に頒布された文献である特開昭59-190401号公報(以下「引用文献7」という。)の第11図及び第12図には、タービンロータに関するものであるが、ホイール3のハブ部9のホイールラジアルキー溝10に嵌合するトルクリング15のラジアルキー18の隅部に凹面が形成されることが示されている。

8 引用文献8
本願の優先日前に頒布された文献である特開2007-268661号公報(以下「引用文献8」という。)の図4には、チップソーに関するものであるが、歯形部3が嵌合する嵌合溝16の隅部に凹状の逃がし空間部20が形成されることが示されている。

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「タービンホイール15」は前者の「ロータ本体」に相当し、以下同様に、「タービンホイール植込み部16」は「連続ダブテールスロット」に、「ねじり戻り拘束片14」は「ロータ突出部」に、「タービン動翼」は「タービンバケット」に、「蒸気タービン」は「ロータホイール組立体」に、「頂部側端部及び底部側端部を有する翼有効部1」は「半径方向内側端部及び半径方向外側端部を有するブレードセクション」に、「カバー2」は「一体カバーセクション」に、「T字型の翼植込み部3」は「ベースセクション」に、「一対のねじれ止め片5」は「タングのセット」に、「第1の突出部」は「タング突出部」に、「一対の第2の突出部」は「フランジのセット」にそれぞれ相当する。

したがって、両者は、
「ロータ本体の周りの連続ダブテールスロットとロータ本体の表面から半径方向外側に延びるロータ突出部とを含むロータ本体と、
複数のタービンバケットと
を備える、ロータホイール組立体であって、
前記各タービンバケットが、
半径方向内側端部及び半径方向外側端部を有するブレードセクションと、
前記ブレードセクションの半径方向外側端部に接続された一体カバーセクションと、
前記ロータ本体内の連続ダブテールスロットの一部分と係合し且つ前記半径方向内側端部に接続されたベースセクションと
を備えていて、
前記ベースセクションが、
中心本体と、
前記中心本体から軸方向に延びるタングのセットであって、前記タングのセットにおける各タングの軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びるタング突出部を含んでいる、タングのセットと、
前記タングのセットの半径方向内側にあって前記中心本体から軸方向に延びるフランジのセットと、
を含む、
ロータホイール組立体。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
本願発明は、タングのセットが「該タング突出部が、ロータ突出部と係合するように構成されている」のに対し、
引用発明は、一対のねじれ止め片5が「該第1の突出部の内側面20aが、タービンホイール植込み部16と嵌合するように構成されている」点。

〔相違点2〕
本願発明は、ベースセクションが「前記中心本体から延びて前記ロータ本体内の半径方向開口と係合する回転制御特徴要素」を含んでいるのに対し、
引用発明は、T字型の翼植込み部3がかかる構成を備えていない点。

〔相違点3〕
本願発明は、「前記ロータ本体が、前記ロータ突出部に軸方向に隣接する凹部を有する」のに対し、
引用発明は、タービンホイール15がかかる構成を備えていない点。

第5 判断
そこで、各相違点について検討する。
1 相違点1について
引用発明においては、ねじれ止め片5の軸方向端部から半径方向内側に延びる第1の突出部の内側面20aが、タービンホイール植込み部16と嵌合するように構成されているが、タービンホイール植込み部16のどのような構成要素に嵌合するのかは明らかでない。
しかし、ねじれ止め片5の第1の突出部の内側面20aがタービンホイール植込み部16に嵌合すること、及び図8におけるねじり戻り拘束片反力Rdの作用方向からみて、タービンホイール植込み部16のねじり戻り拘束片14に追加して、或いは変形して、第1の突出部の内側面20aと嵌合し得るような略相補形状の外径方向突出部を設けることが必須である。
このような外径方向突出部に関して、引用文献2、3には、タービンバケットのベースセクションの軸方向端部が、各端部の軸方向端部から半径方向内側に延びる内径方向突出部を含んでいて、該内径方向突出部の内側面等が、ロータ本体の外径方向突出部と相補的に取り付けられているものが開示されている。
そうすると、引用発明に引用文献2、3に開示された上記事項を適用して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
引用文献1に記載された事項は、「T字型の翼植込み部3の中心本体から延びてタービンホイール15内のねじり戻り拘束溝と嵌合するねじり止め片5を含んでいるT字型の翼植込み部3」である。
本願発明と引用文献1に記載された事項とを対比すると、後者の「ねじり戻り拘束溝」は前者の「半径方向開口」に相当し、同様に、「ねじり止め片5」は「回転制御特徴要素」に、「嵌合」は「係合」にそれぞれ相当する。
そうすると、引用文献1に記載された事項は、本願発明の用語で表すと、「ベースセクションの中心本体から延びてロータ本体内の半径方向開口と係合する回転制御特徴要素を含んでいるベースセクション」ということができる。
引用発明において、ねじり戻り拘束の効果の一層の向上等のために、引用文献1に記載された事項を適用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 相違点3について
本願発明において、「ロータ本体が、ロータ突出部に軸方向に隣接する凹部を有する」ことの技術的意義(特に、従来のいかなる課題をいかにして解決するのか)については、本願明細書等に特に記載がなく、明確でない。
しかしながら、一般に、嵌合関係にある機械構造において、突出部に隣接する隅部に凹部を設けることは、引用文献4?8に記載されているように周知技術である。
引用発明において、ねじれ止め片5の第1の突出部の内側面20aがタービンホイール植込み部16の外径方向突出部に嵌合するように構成することが容易想到であることは、上記「1 相違点1について」において前述したとおりである。そして、その場合においても、外径方向突出部の軸方向に隣接する隅部に上記周知技術を適用して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。

4 効果について
本願発明が奏する効果は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2、3に開示された事項及び上記周知技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2、3に開示された事項及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
本願発明は、引用発明、引用文献1に記載された事項、引用文献2、3に開示された事項及び前記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-18 
結審通知日 2018-12-26 
審決日 2019-01-09 
出願番号 特願2013-171105(P2013-171105)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬戸 康平  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 鈴木 充
冨岡 和人
発明の名称 一体回転制御特徴要素を備えたタービンバケット  
代理人 小倉 博  
代理人 荒川 聡志  
代理人 田中 拓人  

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