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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D06F |
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管理番号 | 1351888 |
審判番号 | 不服2018-9265 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-05 |
確定日 | 2019-05-22 |
事件の表示 | 特願2015-555653「衣類処置機器のための処置プレート」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月14日国際公開、WO2014/122023、平成28年3月7日国内公表、特表2016-506787〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年2月6日 米国(US)、2013年4月2日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成29年1月12日に手続補正書が提出され、平成29年7月7日に手続補正書及び早期審査に関する事情説明書が提出され、平成29年10月6日付けで拒絶理由が通知され、平成29年12月14日に意見書及び手続補正書が提出されが、平成30年3月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成30年7月5日に拒絶査定不服審判が請求され、早期審理に関する事情説明書が提出された。 そして、当審から平成30年8月6日付けで拒絶理由が通知され、平成30年10月26日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年8月6日付け拒絶理由通知の概要 平成30年8月6日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの請求項5に対する理由3(新規性)は次のとおりである。 ●理由3(新規性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 ・請求項 5 ・引用文献等 1.特開2008-23368号公報 第3 本願発明 本願請求項5に係る発明は、平成30年10月26日に提出された手続補正書による補正後の特許請求の範囲の請求項5に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項5】 衣類処置機器のための処置プレートの接触面に被覆を生成する方法であって、前記接触面は、使用時に処置されている衣類上を滑動するものであり、前記方法は、 チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、又はこれら金属若しくは化合物の混合物から選択された金属又は化合物の前駆体材料の層を、前記接触面に堆積させるステップであって、前記前駆体材料は、加水分解性前駆体又は加水分解性前駆体溶液のうちの1つ以上を有するステップと、 前記層を硬化させ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、又はこれらの混合物を有する層を得るステップと、 を有する方法。」 第4 引用文献の記載及び引用発明 1.引用文献の記載 当審の拒絶の理由に引用された、特開2008-23368号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審において付加したものである。) ア.「【0001】 本発明は、金属のソールプレートを有しており、無機重合体を含有する減摩層が備えられているアイロンに関する。また、本発明は、減摩層を有しており、アイロンに用いるのに適するソールプレートに関する。」 イ.「【0012】 減摩層の無機重合体はゾル-ゲル法によって、硬質層上に設けられるのが好ましい。この方法では、立体的な、無機重合体が形成される。所要により、この重合体は、有機側基を含むことができる。適切な減摩層は、Zr-酸化物、Al-酸化物、Ti-酸化物及び、好ましくは、Si-酸化物、又はそれらの混合物に基づく重合体を含んでいる。 【0013】 基体上に層を製造するためにゾル-ゲル溶液を用いる場合、まず第一に、液体中の固形粒子のコロイド懸濁液を調製する。本発明の場合、前記コロイド懸濁液は、有機溶媒中の加水分解された金属-アルコキシド粒子からなるのが好ましい。ちなみに、既知の金属アルコキシドは、Ti-、Zr-、Al-及びSi-テトラアルコキシドである。通常、アルコールを有機溶媒として用いる。前記コロイド溶液は、所定量の水並びに触媒としての少量の酸又は塩基を金属-酸化物(混合物)に添加することによって形成する。得られたコロイド溶液は、アルコール中で安定化され、次いで、薄層の形態で、所望の基体上に提供することができる。添加された触媒と水は、アルコキシドの(部分的)加水分解を引き起こす。結果として、重縮合が起こるので、無機重合体が形成される。この方法は高温で促進される。得られたゾル-ゲル層の溶媒は、供給過程中に主として蒸発する。残余の溶媒は高温で蒸発させる。 【0014】 ゾル-ゲル法によれば、極めて薄い層の立体的な、無機重合体をアルミニウムソールプレートの硬質中間層上に形成することができる。前記金属-テトラアルコキシドを用いる場合、前記層の厚さは約0.5マイクロメーター以下である。前駆体として金属アルコキシドを有する立体的な、無機重合体を基礎とする薄い層の使用は、本発明にかかる減摩層が著しく安価になることを保証する。立体的な無機重合体が線形の無機重合体よりも高い硬度と耐破壊性を示すことは、注目される。したがって、立体的な重合体が好ましい。 【0015】 コロイド溶液をソールプレート上に層の形態で設けるには種々の方法があり、例えば、浸漬被覆又はスピニングによる。好ましくは、この層は噴霧技術によって設けられる。この方法で設けられた層は、スピン-コーティングによって設けられた層よりも低い摩擦係数を有する。より一層厚い層を望む場合には、塗布工程を多数回繰り返す。」 ウ.「【0029】 ”タイプD”のアイロンの減摩層を以下のようにして製造した。まず、19.4gのMTMS(メチルトリメトキシシラン)、0.9gのTEOS(テトラエチルオルトシリケート)、2.7gのHAc(酢酸)、20gの酸化物ナノ粒子(50%の固形分を有するシリカゾル;ルドックス)及び1gの無機有色顔料を含有するゾル-ゲル溶液を調製した。1時間の加水分解の後、この溶液を、陽極酸化したアルミニウムのソールプレートのアイロン掛け面上に、噴霧ロボットによって噴霧した。このようにして設けたゾル-ゲル層を、300℃で45分間硬化させた。得られた減摩層は、有機的に修飾されたポリシリケート(厚さ10マイクロメーター)の立体的な無機重合体を主として含有していた。無機顔料の種類によって、減摩層は異なる色調に製造することができた。この層は、良好な耐引掻性及び金属ソールプレートに対する良好な接着性を示した。ソールプレートを500回、20?300℃の温度サイクルに曝した後、接着性の劣化は起こらなかった。」 エ.上記ア.及びウ.の記載から、引用文献記載の方法は、アイロンに用いるソールプレートのアイロン掛け面に減摩層を設ける方法であることが理解できる。 オ.上記ウ.の記載と技術常識から、アイロン掛け面は、使用時に処置されている衣類上を滑動するものであることが理解できる。 カ.上記イ.の特に段落【0013】及び【0015】並びにウ.の記載から、引用文献記載の方法は、Ti-、Zr-、Al-及びSi-テトラアルコキシド粒子からなるコロイド懸濁液をアイロン掛け面に層の形態で設けるステップを有することが理解できる。 キ.上記イ.の特に段落【0013】及び【0014】の記載から、コロイド懸濁液は、加水分解性前駆体溶液であることが理解できる。 ク.上記イ.及びウ.の記載から、引用文献記載の方法は、前記層を硬化させ、Zr-酸化物、Al-酸化物、Ti-酸化物及び、好ましくは、Si-酸化物を有する層を得るステップを有することが理解できる。 2.引用発明 上記(1)及び図面の記載を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「アイロンに用いるソールプレートのアイロン掛け面に減摩層を設ける方法であって、前記アイロン掛け面は、使用時に処置されている衣類上を滑動するものであり、前記方法は、 Ti-、Zr-、Al-及びSi-テトラアルコキシド粒子からなるコロイド懸濁液をアイロン掛け面に層の形態で設けるステップであって、前記コロイド懸濁液は、加水分解性前駆体溶液であるステップと、 前記層を硬化させ、Zr-酸化物、Al-酸化物、Ti-酸化物及び、好ましくは、Si-酸化物を有する層を得るステップと、 を有する方法。」 第5 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「アイロンに用いるソールプレート」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「衣類処置機器のための処置プレート」に相当し、以下同様に、「アイロン掛け面」は「接触面」に、「減摩層を設ける」ことは「被覆を生成する」ことに、「コロイド懸濁液」は「前駆体材料」に、「Ti-、Zr-、Al-及びSi-テトラアルコキシド粒子からなるコロイド懸濁液」は「チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、又はこれら金属若しくは化合物の混合物から選択された金属又は化合物の前駆体材料」に、「コロイド懸濁液をアイロン掛け面に層の形態で設ける」ことは「前駆体材料の層を、前記接触面に堆積させる」ことに、「加水分解性前駆体溶液」は「加水分解性前駆体又は加水分解性前駆体溶液のうちの1つ以上」に、「Zr-酸化物、Al-酸化物、Ti-酸化物及び、好ましくは、Si-酸化物」は「酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、又はこれらの混合物」にそれぞれ相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「衣類処置機器のための処置プレートの接触面に被覆を生成する方法であって、前記接触面は、使用時に処置されている衣類上を滑動するものであり、前記方法は、 チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スカンジウム、イットリウム、又はこれら金属若しくは化合物の混合物から選択された金属又は化合物の前駆体材料の層を、前記接触面に堆積させるステップであって、前記前駆体材料は、加水分解性前駆体又は加水分解性前駆体溶液のうちの1つ以上を有するステップと、 前記層を硬化させ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、又はこれらの混合物を有する層を得るステップと、 を有する方法。」 の点で一致し、相違点はない。 よって、本願発明は、引用発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項5に係る発明は、引用発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-12-25 |
結審通知日 | 2018-12-27 |
審決日 | 2019-01-08 |
出願番号 | 特願2015-555653(P2015-555653) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WZ
(D06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 遠藤 邦喜 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
山村 和人 佐々木 芳枝 |
発明の名称 | 衣類処置機器のための処置プレート |
代理人 | 矢ヶ部 喜行 |
代理人 | 笛田 秀仙 |
代理人 | 五十嵐 貴裕 |