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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1351892
審判番号 不服2017-16492  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-06 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2014-554973「組織壊死の方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日国際公開、WO2013/116380、平成27年 4月16日国内公表、特表2015-511137〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013(平成25)年1月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012(平成24)年1月30日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年10月21日付け:拒絶理由通知書
平成29年 4月10日 :意見書・手続補正書の提出
平成29年 6月30日付け:拒絶査定
平成29年11月 6日 :審判請求書・手続補正書の提出


第2 平成29年11月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年11月6日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所を明らかにするため当審で付与したものである。)

「【請求項1】
制御された組織壊死を作り出すためのシステムであって、該システムは、
平行化された音響エネルギーを送達することが可能なトランスデューサと、
該トランスデューサと身体の血管とを直接的に接触させることなく、該トランスデューサを該身体の血管に送達するために使用されるカテーテルと、
該トランスデューサと通信する制御器であって、該制御器は、該送達された平行化された音響エネルギーから反射された振幅を監視することによって該トランスデューサのエネルギー送達を制御することにより、該反射された振幅に基づいて該組織壊死の幅および深さを制御するように構成されている、制御器と
を含む、システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年4月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。

「【請求項1】
制御された組織壊死を作り出すためのシステムであって、該システムは、
平行化された音響エネルギーを送達することが可能なトランスデューサと、
該トランスデューサと身体の血管とを直接的に接触させることなく、該トランスデューサを該身体の血管に送達するために使用されるカテーテルと、
該トランスデューサと通信する制御器であって、該制御器は、該送達された平行化された音響エネルギーから反射された振幅を監視することによって該トランスデューサのエネルギー送達を制御することにより、該組織壊死の幅および深さを制御するように構成されている、制御器と
を含む、システム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「該組織壊死の幅および深さを制御する」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2011-528580号公報(平成23年11月24日公表。以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線部は、当審で付与したものである。)

「【0008】
AF治療に対するより最近のアプローチは、超音波エネルギーを用いることを伴う。肺静脈を囲む領域の標的組織は、1つ以上の超音波トランスデューサによって放出される超音波エネルギーによって加熱される。そのようなアプローチの1つは、Leshらによって特許文献13に説明される。ここでカテーテル遠位先端部分は、超音波要素を含むバルーンが装備される。バルーンは、肺静脈にカテーテルの先端を固定する(secure)固定(anchoring)手段として働く。カテーテルのバルーン部分は選択された肺静脈に位置を決められ、バルーンは、超音波エネルギーに透明である流体で膨張させられる。トランスデューサは、超音波エネルギーを放出し、その超音波エネルギーは、肺静脈におけるまたは肺静脈の近くの標的組織に伝わり、その標的組織を切除する。意図された療法は、肺静脈の周りの電気的伝導経路を破壊し、それによって正常洞調律を回復する。療法は、必要に応じて個々の肺静脈の周りに多数の外傷を作ることを伴う。発明者らは、エネルギー放出器および固定機構の様々な構成を説明する。」
「【0020】
システムはプロセッサをさらに備え、プロセッサは、センサから受信された情報に基づいてエネルギー源によって提供されるエネルギーを制御するように適合されている。システムはエネルギー源に隣接するレンズを有し得、レンズはエネルギー源から放出されるエネルギーのビームパターンを調整するように適合されている。」
「【0021】
標的組織は、左心房組織、肺静脈またはそれに隣接する組織を含み得る。切除帯は、直線の切除経路または弓形の切除経路を備え得る。切除帯は、経壁の切除帯を備え得る。」
「【0031】
図1に示されるように、好ましい実施形態のエネルギー送達システム10は、切除エネルギーの供給源を提供するように機能を果たすエネルギー源12と、エネルギー源12からの切除エネルギーを向け直すように機能を果たす反射表面100と、センサと、センサおよびエネルギー源12に連結され、センサからの情報に基づいてエネルギー源12を制御し得るプロセッサ(図示されていない)とを含む。」
「【0032】
エネルギー源。図1に示されるように、好ましい実施形態のエネルギー源12は、切除エネルギーの供給源を提供するように機能を果たす。エネルギー源は、好ましくはエネルギー供給源12から放出されるエネルギービーム20の形態である。エネルギー源12は、好ましくは超音波ビームを放出する超音波トランスデューサであるが、代わりに切除エネルギーの供給源を提供するように機能を果たす任意の適切なエネルギー源であり得る。」
「【0035】
(前略)図4に示されるように、エネルギー源12は、エネルギービーム20が組織276と相互に作用し、外傷(切除帯278)を形成するようにエネルギービーム20を放出する。エネルギービーム20は、好ましくは超音波ビームである。組織276は、好ましくは平行長さL内のエネルギービーム20に提示される。組織276の前表面280は、ハウジング16の面から距離d(282)だけ離れている。エネルギービーム20が組織276を通って進むと、エネルギービーム20のエネルギーは、組織276によって吸収され、熱エネルギーに変換される。この熱エネルギーは、周囲の組織より高い温度に組織を加熱し、その結果、加熱帯278をもたらす。組織が加熱される帯278において、組織細胞は好ましくは熱によって死なされる。組織の温度は好ましくは加熱帯278において細胞死が起る温度より高く、従って、組織が切除されたと言われる。従って組織278は、好ましくは切除帯または外傷として参照される。」
「【0037】
ハウジング16はまた、エネルギー源12の面と血液または組織との間に障壁を提供するように機能を果たす。流体の流れが組み込まれているとき、流体はエネルギー源を通過して流れ得、それによって、血液がエネルギー源において凝固するのを防ぎ得る。好ましい実施形態において、冷却液は、約毎分1mlでエネルギー源を通過して流れるが、所望により増加させられるかまたは減少させられ得る。さらに、エネルギー源はハウジング内に配置されるので、エネルギー源は、組織と直接に接触しないで、それによってエネルギー源における凝固を防ぐ。」
「【0039】
反射表面。図1に示されるように、好ましい実施形態の反射器100は、エネルギー源12からのエネルギービーム20を向け直すように機能を果たす。反射表面100は、好ましくはエネルギー源12からのエネルギービーム20をハウジング16から好ましくは標的組織の方に向け直す。反射表面100は、好ましくは、エネルギービーム20がハウジング16を出る平行ビームであるように(図2および図3に示されるように)エネルギービーム20を向け直し、反射表面22は、代わりに、エネルギービーム20が好ましくは実質的に単一焦点の方にまたは焦点リングの方に収束する集束ビームであるようにエネルギービーム20を向け直し得る。」
「【0046】
センサは、異なるモード(下記に定義されるAモードなど)で動作するエネルギー源12のトランスデューサと同じトランスデューサであるが、代わりに、円筒形エネルギー源12の上部分に連結される、図3Aに示されるように別個の超音波トランスデューサまたは追加のトランスデューサ40’であり得る。システム10は、標的組織に関する情報を検出する第1のセンサおよびシステム10の要素の位置に関する情報を検出する第2のセンサなどの複数のセンサを含み得る。間隙、切除の標的とされる組織の厚さ、切除された組織の特性、および/またはシステム10の要素の位置についての情報を検出することによって、センサは、好ましくは組織の切除によって提供される療法を導くように機能を果たす。」
「【0047】
センサが、異なるモード(Aモードなど)で動作するエネルギー源12のトランスデューサと同じトランスデューサである、システム10の変種において、センサは、好ましくは、概して組織を加熱するのに十分ではない短い継続時間の超音波のパルスを利用する。これは、当該分野においてAモードまたは振幅モード像(Amplitude Mode imaging)と呼ばれる単純な超音波画像化技術である。図5に示されるように、センサ40は、好ましくは超音波のパルス290を組織276の方に送る。ビームの一部分は、組織276の前表面280から292として反射されかつ/または後方散乱させられる。この反射ビーム292は、短時間後にセンサ40によって検出され、電気信号に変換され、該電気信号は、電気受信器(図示されていない)に送られる。反射されたビーム292は、音がセンサ40から組織276の前境界280に進み、センサ40に戻るのにかかる時間だけ遅延させられる。この進行時間は、センサ40から電気信号を受信するときの遅延を表す。介在媒体(流体286および血液284)における音の速度に基づいて、間隙距離d(282)が決定される。音ビームがさらに組織276の中に進むと、音ビームの一部分293は、形成されている外傷278から散乱させられ、センサ40の方に進む。再びセンサ40は、この音エネルギーを電気信号に変換し、プロセッサ(以下に説明される)は、この情報を厚さなどの外傷形成の特性に変換する。音ビームが組織276の中になおもさらに進むと、組織276の一部分294は、後表面298から反射され、トランスデューサの方に進む。再びセンサ40は、この音エネルギーを電気信号に変換し、プロセッサは、超音波パルス290の入射の地点においてこの情報を組織276の厚さt(300)に変換する。カテーテルハウジング16は、組織276を横切るような方法301で横断されるので、センサ40は、間隙距離d(282)と、外傷特性と、組織の厚さt(300)とを検出する。センサは、好ましくはこれらのパラメータを連続的に検出するが、代わりにこれらのパラメータを定期的または任意の他の適切な方法で検出し得る。この情報は、以下に考察されるように、療法中に組織276の連続的切除を送達するために用いられる。」
「【0048】
プロセッサ。好ましい実施形態のエネルギー送達システム10はまた、センサ40および電気的アタッチメント14に連結されたプロセッサを含み、該プロセッサは、電気的アタッチメント14に送達される電気パルスを制御し、センサ40からの情報に基づいて送達される電位パルスを修正し得る。プロセッサは、好ましくは、マイクロプロセッサまたは集積回路を含むコンピュータプログラムを実行し得る従来のプロセッサまたは論理機械であるが、代わりに所望の機能を実行する任意の適切なデバイスであり得る。」
「【0049】
プロセッサは、好ましくは、間隙距離、切除の標的とされる組織の厚さ、切除された組織の特性、および任意の他の適切なパラメータまたは特性に関係する情報などの情報をセンサから受信する。この情報に基づいて、プロセッサは、この情報を間隙距離、切除の標的とされる組織の厚さ、切除された組織の特性、および任意の他の適切なパラメータまたは特性に変換し、周波数、電圧、デューティサイクル、パルスの長さおよび/または任意の他の適切なパラメータなど、電気的アタッチメント14を介してエネルギー源12に送られる電気パルスを修正することによって、エネルギー源12から放出されるエネルギービーム20を制御する。プロセッサはまた、好ましくは、エネルギー源12のどの部分が電力を通されかつ/またはどの周波数、電圧、デューティサイクルなどでエネルギー源12の異なる部分に電力を通されるかを制御することによって、エネルギービーム20を制御する。さらにプロセッサは、流体の流れコントローラにさらに連結され得る。プロセッサは、好ましくは、切除された組織、未切除組織もしくは標的組織の特性、および/または任意の他の適切な条件のセンサ検出特性に基づいて、流体の流れを増加させるかまたは減少させるために流体の流れコントローラを制御する。」
「【0050】
エネルギービーム20を制御すること(および/または標的組織を冷却すること)によって、切除帯278の形状が制御される。例えば、切除帯の深さ288は、好ましくは経壁外傷(組織の厚さを貫く外傷)が達成されるように制御される。さらにプロセッサは、好ましくは、標的組織を越えて、例えば外側心房壁を越えて、外傷を作る可能性を最小限するように機能を果たす。センサが心房の外側壁を越えて延びる外傷または外傷の深さが事前設定の深さに達するかもしくはそれを超えたことを検出した場合、プロセッサは、好ましくは、発電機の電源を切りかつ/または単数または複数の電気的アタッチメント14に電気パルスを送るのを停止する。さらに、例えば、エネルギー源および/または意図された切除経路に対する標的組織の距離を検出することによって、肺静脈PVに対してシステム10が中心に置かれていないことをセンサが検出した場合、プロセッサは、発電機の電源を切りかつ/または単数または複数の電気的アタッチメント14に電気パルスを送るのを停止し得、電気的アタッチメントに送られるパルスを変化させ得、かつ/または標的組織に対してシステムを再位置決めするように術者またはモータ駆動ユニットを変化させ得る。」
「【0051】
追加の要素。図1に示されるように、好ましい実施形態のエネルギー送達システム10はまた、エネルギー源12に連結された細長い部材18を含み得る。細長い部材18は、好ましくは可撓性の複数内腔管(multi-lumen tube)から作られるカテーテルであるが、代わりに、カニューレ、管または1つ以上の内腔を有する任意の他の適切な細長い構造であり得る。好ましい実施形態の細長い部材18は、プルワイヤ、流体、気体、エネルギー送達構造、電気的連結部、治療カテーテル、誘導(navigation)カテーテル、ペーシング(pacing)カテーテル、および/または任意の他の適切なデバイスまたは要素を収容するように機能を果たす。図1に示されるように、細長い部材18は、好ましくは細長い部材18の遠位部分に位置を決められるハウジング16を含み、細長い部材18は、エネルギー源12および反射表面100を囲むように機能を果たす。細長い部材18はさらに、患者内においてエネルギー源12および/またはハウジング16を動かし、そしてそれらの位置を決めるように機能を果たし、その結果、放出されたエネルギービーム20は、適切な角度で標的組織と接触し、エネルギー源12および/またはハウジング16は、エネルギー源12が切除経路に沿って部分的または完全な切除帯を提供するように切除経路に沿って動かされる。」
「【0052】
好ましい実施形態のエネルギー送達システム10はまた、レンズまたはミラーを含み、該レンズまたはミラーは、エネルギー源12に連結され、エネルギービーム20のビームパターンを調整する際にさらなる可撓性を提供するように機能を果たす。レンズは、好ましくは標準の音響レンズであるが、代わりに、任意の適切な方法でエネルギービーム20を調整する任意の適切なレンズであり得る。レンズは、エネルギービームを集束させるかまたはエネルギービームの焦点をぼかすために用いられる。例えば、音響レンズは、より一様に平行であるビームを作り得、その結果、最小ビーム幅D’はエネルギー源12の直径Dに近づく。このことは、切除窓においてより一様なエネルギー密度を提供し、その結果、組織の深さが窓内において変化するので、より一様な外傷を提供する。レンズはまた、より浅いかまたはより深いかのいずれかの外傷を必要とし得る用途のために、最小ビーム幅D1の位置を動かすために用いられ得る。このレンズは、プラスチックまたは適切な音響特性を有する他の材料から製作され得、エネルギー源12の面に接合され得る。代わりに、エネルギー源12は、それ自体がレンズとして機能を果たすような形状を有し得るか、またはエネルギー源12の整合層もしくはコーティングがレンズとして機能を果たし得る。」

イ 上記記載事項から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 引用文献に記載された技術は、超音波エネルギーにより切除帯を提供するため(【0008】、【0021】、【0051】)のエネルギー送達システムであって(【0031】)、当該超音波エネルギーのエネルギー源は超音波ビームを放出する超音波トランスデューサであり(【0032】)、エネルギービームは平行ビームであり(【0039】)、ハウジングがエネルギー源の面と血液又は組織との間に障壁を提供することでエネルギー源(超音波トランスデューサ)は組織と直接に接触しない(【0037】)よう構成され、細長い部材は患者内においてエネルギー源(超音波トランスデューサ)の位置を決めるよう(【0051】)構成されている。
b また、引用文献に記載された技術は、システムはプロセッサをさらに備え(【0048】)、センサはAモードまたは振幅モード像(Amplitude Mode imaging)と呼ばれる単純な超音波画像化技術(【0047】)であり、当該センサは異なるモード(Aモード)で動作するエネルギー源のトランスデューサと同じトランスデューサであり(【0046】)、プロセッサはセンサから受信された情報に基づいてエネルギー源から放出されるエネルギービームを制御し(【0049】)、エネルギービームを制御することによって切除帯の形状が制御される(【0050】)よう構成されている。
c ここで、Aモードとは、超音波の各種モードの中で最も基本となっているモードであり、横軸に生体深度(時間軸)、縦軸に反射強度として表示されるものを指し、当該Aモードから得られる生体内情報は各組織の反射強度(振幅)と体表からの各組織及び組織間の距離であることは、技術常識といえる(橋本健二郎、外1名、「超音波診断法の原理と基礎知識」、動物の循環器、日本獣医循環器学会、1984年、17巻、17号、p.2-12)。これを踏まつつ、段落【0047】の「音ビームの一部分293は、形成されている外傷278から散乱させられ、センサ40の方に進む。再びセンサ40は、この音エネルギーを電気信号に変換し、プロセッサ(以下に説明される)は、この情報を厚さなどの外傷形成の特性に変換する。」という記載によれば、引用文献に記載された技術は、センサ(トランスデューサ)によって振幅モード像に基づいた外傷形成の特性を検出するにあたって、外傷から反射された反射波の振幅(反射強度)の情報を取得するものであることは明らかである。そうすると、上記bの認定事項と総合すると、引用文献に記載された技術は、超音波ビームから反射された振幅の情報を取得することによって該超音波トランスデューサの超音波ビームの放出を制御することにより、該反射された振幅に基づいて該切除帯の形状を制御するものであるといえる。
d そして、切除帯は、組織細胞を熱によって細胞死させたものである(【0035】)。

ウ 上記ア及びイから、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「切除帯を提供するためのエネルギー送達システムであって、該システムは、
平行である超音波ビームを放出することが可能な超音波トランスデューサと、
該トランスデューサと患者内の組織とは直接に接触しないで、該トランスデューサを該患者内の組織に位置決めするよう使用される細長い部材と、
該トランスデューサと通信するプロセッサであって、該プロセッサは、該放出された平行である超音波ビームから反射された振幅の情報を取得することによって該超音波トランスデューサの超音波ビームの放出を制御することにより、該反射された振幅に基づいて該切除帯の形状を制御するように構成されている、プロセッサと
を含む、システム。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「切除帯を提供する」は、その機能及び作用を踏まえると、本件補正発明の「制御された組織壊死を作り出す」に相当し、以下同様に、「エネルギー送達システム」は「システム」に、「平行である超音波ビーム」は「平行化された音響エネルギー」に、「放出」は「送達」に、「超音波トランスデューサ」は「トランスデューサ」に、「患者内の組織とは直接に接触しないで」は「身体の血管とを直接的に接触させることなく」に、「該患者内の組織に位置決めするよう使用される」は「該身体の血管に送達するために使用される」に、「細長い部材」は「カテーテル」に、「プロセッサ」は「制御器」に、「振幅の情報を取得すること」は「振幅を監視すること」に、それぞれ相当する。
また、本件補正発明の「組織壊死の幅および深さ」と引用発明の「切除帯の形状」とは、「組織壊死の形態」である点で共通する。

してみれば、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点)
「制御された組織壊死を作り出すためのシステムであって、該システムは、
平行化された音響エネルギーを送達することが可能なトランスデューサと、
該トランスデューサと身体の血管とを直接的に接触させることなく、該トランスデューサを該身体の血管に送達するために使用されるカテーテルと、
該トランスデューサと通信する制御器であって、該制御器は、該送達された平行化された音響エネルギーから反射された振幅を監視することによって該トランスデューサのエネルギー送達を制御することにより、該反射された振幅に基づいて該組織壊死の形態を制御するように構成されている、制御器と
を含む、システム。」

(相違点)
組織壊死の形態について、本件補正発明においては、「幅および深さ」であるのに対して、引用発明においては、そのような構成を有するか明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
まず、本件補正発明の制御の対象である「深さ」について検討するに、上記(2)アの【0050】の「例えば、切除帯の深さ288は、好ましくは経壁外傷(組織の厚さを貫く外傷)が達成されるように制御される。さらにプロセッサは、好ましくは、標的組織を越えて、例えば外側心房壁を越えて、外傷を作る可能性を最小限するように機能を果たす。センサが心房の外側壁を越えて延びる外傷または外傷の深さが事前設定の深さに達するかもしくはそれを超えたことを検出した場合、プロセッサは、好ましくは、発電機の電源を切りかつ/または単数または複数の電気的アタッチメント14に電気パルスを送るのを停止する。」という記載から、引用発明の「切除帯の形状を制御する」にあたって、切除帯の深さ方向について制御していることは明らかである。

次に、本件補正発明の制御の対象である「幅」について検討するに、本願明細書の段落【0123】の「壊死組織1100の特定の領域の幅は、超音波ビーム900の入り口の近く(例えば、血管表面1010)でより広く、それからより遠く離れると(例えば、組織1000においてより深くなると)より狭くなる。」という記載及び同段落【0125】の「エネルギーパラメータを調節することによって、組織壊死1100の領域、特に領域の深さが、制御されることができる。」という記載からみて、本件補正発明は、エネルギーパラメータを調整することにより、組織壊死の領域の深さを制御することで、それと同時に当該領域の幅についても制御するものであるといえる。
ここで、引用発明においては、上記(2)アの【0035】の「図4に示されるように、エネルギー源12は、エネルギービーム20が組織276と相互に作用し、外傷(切除帯278)を形成するようにエネルギービーム20を放出する。組織276は、好ましくは平行長さL内のエネルギービーム20に提示される。組織276の前表面280は、ハウジング16の面から距離d(282)だけ離れている。エネルギービーム20が組織276を通って進むと、エネルギービーム20のエネルギーは、組織276によって吸収され、熱エネルギーに変換される。この熱エネルギーは、周囲の組織より高い温度に組織を加熱し、その結果、加熱帯278をもたらす。組織が加熱される帯278において、組織細胞は好ましくは熱によって死なされる。」という記載を踏まえて、図4をみると、引用発明の切除帯(加熱帯278)の幅は、組織276内においてより深くなるにつれて狭くなる点が開示されているといえ、そして、この開示された点と、同【0050】の「エネルギービーム20を制御すること(および/または標的組織を冷却すること)によって、切除帯278の形状が制御される。例えば、切除帯の深さ288は、好ましくは経壁外傷(組織の厚さを貫く外傷)が達成されるように制御される。」という記載とをあわせみれば、引用発明において、エネルギービームの制御により、切除帯(加熱帯)の深さとともに、幅についても制御することは、当業者にとって何ら困難性はないということができる。

また、本願明細書の段落【0128】の「遠位アセンブリ400は、後退させられ、同様に、所望の形状(単数または複数)を形成するために必要な場合、前進させられ得、または前進および後退および回転させられ得る。本発明は、組織壊死1100の領域を作り出すことが可能であるシステムを提供し、その組織壊死の領域は、1つまたはそれよりも多くのスポット、様々な形状の線(例えば、渦巻きまたは螺旋)、連続または断続的な線、円、狭いまたは広い線等、およびそれらの組み合わせからなり得る。」という記載からみて、本件補正発明の組織壊死の「幅」を、エネルギービームを照射しながら遠位アセンブリ(トランスデューサを内蔵)を移動することにより生じる、組織(例えば、血管壁)の軸方向ないし周方向の広がりを有する組織壊死の領域であると解したとしても、引用発明において、まず、上記(2)アの【0021】の「切除帯は、直線の切除経路または弓形の切除経路を備え得る。」という記載からみて、切除帯は少なくとも経路に沿った方向に広がりを有することは明らかであるし、さらに、同【0051】の「細長い部材18はさらに、患者内においてエネルギー源12および/またはハウジング16を動かし、そしてそれらの位置を決めるように機能を果たし、その結果、放出されたエネルギービーム20は、適切な角度で標的組織と接触し、エネルギー源および/またはハウジング16は、エネルギー源12が切除経路に沿って部分的または完全な切除帯を提供するように切除経路に沿って動かされる」という記載を踏まえると、引用発明の「切除帯の形状を制御する」とは、切除経路に沿った方向の広がりにしたがってエネルギー源及び/又はハウジングを移動して形成するものであることは明らかである。

してみれば、引用発明において切除帯の形状を、その幅及び深さとすることで、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって何ら困難性はない。

そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年11月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年4月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「該組織壊死の幅および深さを制御する」について「該反射された振幅に基づいて」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-19 
結審通知日 2018-12-20 
審決日 2019-01-09 
出願番号 特願2014-554973(P2014-554973)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 利充  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 芦原 康裕
瀬戸 康平
発明の名称 組織壊死の方法および装置  
代理人 大塩 竹志  
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