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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1351894
審判番号 不服2017-18112  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-06 
確定日 2019-05-21 
事件の表示 特願2015-557429「拡張された機能性を有する電気外科用ハンドヘルド器具」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日国際公開、WO2014/125035、平成28年 3月 7日国内公表、特表2016-506841〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)2月13日(パリ条約による優先権主張 2013年2月15日(DE)独国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 4月18日付け:拒絶理由通知書
平成29年 7月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年 7月27日付け:拒絶査定
平成29年12月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 4月16日 :上申書の提出


第2 平成29年12月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年12月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由](補正の適否の判断)
1 本件補正について(補正の内容)
(1) 本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線は、補正箇所である。)

「【請求項1】
接続側(A)と処置側(B)とを有し、前記処置側(B)上に少なくとも1つの処置電極を備えているハンドピース(10)と、
前記ハンドピース(10)の前記接続側(A)に電気的に接続されかつ高周波電流発生器(200)に電気的に接続可能である接続プラグ(30)とを備えた電気外科器具(100)であって、
前記電気外科器具(100)は、制御ユニット(20)を有しており、
前記制御ユニット(20)は、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力される高周波エネルギーの電圧波形を能動的に制御するように、及び、前記高周波電流発生器(200)から供給される高周波エネルギーを変更し、かつ、変更された前記高周波エネルギーを、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力するように構成されていることを特徴とする電気外科器具(100)。」

(2) 本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年7月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
接続側(A)と処置側(B)とを有するハンドピース(10)と、
前記ハンドピース(10)の前記接続側(A)に電気的に接続されかつ高周波電流発生器(200)に電気的に接続可能である接続プラグ(30)とを備えた電気外科器具(100)であって、
前記電気外科器具(100)は、制御ユニット(20)を有しており、
前記制御ユニット(20)は、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力される高周波エネルギーの電圧波形を能動的に制御するように、及び、前記高周波電流発生器(200)から供給される高周波エネルギーを変更し、かつ、変更された前記高周波エネルギーを、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力するように構成されていることを特徴とする電気外科器具(100)。」


2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ハンドピース(10)」について、上記のとおり限定を付加するものを含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1) 補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2) 引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-67631号公報(平成23年4月7日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、合議体が付与した。)

(ア) 「【0001】(背景)(技術分野)本開示は、概して、無線周波数(RF)電力を発生させる発電機と、電気外科器具と発電機との間でデータ情報を交換するために発電機と二方向通信するように構成されている電気外科器具とを有する電気外科システムに関する。」

(イ) 「【0005】本明細書で使用される場合、用語「電気外科器具」は、アクティブ電極に取り付けられたハンドピースを有し、組織を焼灼し、凝固し、そして/または切断する器具を含むことが意図される。典型的に、電気外科器具は、ハンドスイッチまたはフットスイッチによって動作され得る。アクティブ電極は、通常は細長く、尖った遠位端部または丸まった遠位端部を有する薄い平坦な刃の形態であり得る電気伝導性要素である。代替的に、アクティブ電極は、平坦な遠位端部、丸型な遠位端部、尖った遠位端部または傾斜した遠位端部を有し、中実または中空である細長く狭い円柱形の針を含み得る。典型的には、この種の電極は、「刃」電極、「ループ」電極または「スネア」電極、「針」電極または「ボール」電極として公知である。」

(ウ) 「【0006】上述したように、電気外科器具のハンドピースは、適切な電気外科供給源(すなわち、発電機)に接続され、この電気外科供給源は、電気外科器具の動作のために必要な無線周波数電気エネルギーを生成する。概して、電気外科器具を用いて患者の上で手術が行われるとき、電気外科発電機からの電気外科エネルギーは、手術の部位の組織にアクティブ電極を通して伝えられ、次いで、患者を通してリターン電極に伝えられる。リターン電極は、典型的に、患者の身体の便利な場所に配置され、伝導性材料によって発電機に取り付けられる。典型的に、外科医は、電気外科器具上で制御装置を作動し、所望の外科的効果を達成するようにモード/波形を選択する。「モード」は、様々な電気的波形に関し、例えば、切断波形は組織を切断する傾向を有し、凝固波形は、組織を凝固する傾向を有し、ブレンド切断波形と凝固波形との間のいずれかに存在する。電力パラメータまたはエネルギーパラメータは、典型的に、巡回看護師のような仲介者がこのような調節を必要とする滅菌場の外から制御される。」

(エ) 「【0008】さらに、外科医は、典型的に、所定の制御パラメータに従い、公知のモードおよび電力設定内にとどまる。さらに、いくつかの電気外科器具は、しばしば「単一使用」器具として推奨される。このため、外科手術の間、外科医は、手術を完了する前に、様々な理由(例えば、器具の故障)で、電気外科器具を交換する必要があり得る。しかしながら、新しい器具は、外科医を支援し得る現在の使用情報を有しない場合がある。例えば、古い器具を用いた外科手術の間、患者の固有の組織に起因して、電力強度をより高いレベルに調節しなければならない。このより高いレベルの強度は、典型的には、新しい器具によって認識されない。」

(オ) 「【0019】本明細書中で用いられるとき、用語「遠位」は、ユーザから遠い部分を意味し、一方で用語「近位」は、ユーザまたは外科医に近い部分を意味する。」

(カ) 「【0022】図1?3に見ることができるように、電気外科器具10は、細長いハウジング2を含み、該細長いハウジングは、その遠位端3において刃レセプタクル(blade receptacle)4を支持し、そして、ループおよび/または刃の形態で、置換可能な電気焼灼エンドエフェクタ(electrocautery end effector)6をその内部に受容するように構成および適合されている。電気焼灼刃6は、平面状の刃、ループ、ニードル等を含むことが理解される。刃6の遠位端部分8は、レセプタクル4から遠位に延びており、その一方で、刃6の近位端部分11(図3参照)は、ハウジング2の遠位端3内に保持される。電気焼灼刃6は、例えばステンレス鋼等の伝導性タイプの材料から製造され得るか、または、導電性材料でコーティングされ得る。」

(キ) 「【0023】示されているように、電気外科器具10は、ケーブル12を介して従来型の電気外科発電機「G」に結合される。ケーブル12は、伝送ワイヤ14(図3)を含み、該伝送ワイヤは、電気外科発電機「G」と電気焼灼刃6の近位端部分11とを電気的に相互接続する。ケーブル12は、制御ワイヤ16をさらに含み、該制御ワイヤは、ハウジング2の外側表面7上に支持されるモード作動スイッチ(以下に詳細に記載される)と電気外科発電機「G」とを電気的に相互接続する。本明細書中の目的のために、用語「スイッチ」または「複数のスイッチ」は、電気的アクチュエータ、機械的アクチュエータ、電気機械的アクチュエータ(回転可能アクチュエータ、旋回可能アクチュエータ、トグル様アクチュエータ、ボタン等)、または光学的アクチュエータを含む。」

(ク) 「【0026】作動スイッチ24a?24cは、モードおよび/または「波形デューティーサイクル」を制御することにより、所望の外科的意図を達成するように構成および適合されている。例えば、作動スイッチ24aは、特性信号を電気外科発電機「G」に送達するように設定され得、そしてこれは、切断および/または切開(dissect)の効果/機能をもたらすデューティーサイクルおよび/または波形形状を伝送する。その一方で、作動スイッチ24bは、特性信号を電気外科発電機「G」に送達するように設定され得、そしてこれは、ブレンド効果および/または機能(例えば、切開および止血の効果/機能の組み合わせ)をもたらすデューティーサイクルおよび/または波形形状を伝送する。作動スイッチ24cは、特性信号を電気外科発電機「G」に送達するように設定され得、そしてこれは、止血効果/機能をもたらすデューティーサイクルおよび/または波形形状を伝送する。別の作動スイッチ33は、マイクロプロセッサ92に使用情報を発電機「G」へと提供させるために、マイクロプロセッサ92に電気的に結合される。」

(ケ) 「【0027】止血効果/機能は、約1%?約12%のデューティーサイクルを伴う波形を有するものとして規定され得る。ブレンド効果/機能は、約12%?約75%のデューティーサイクルを伴う波形を有するものとして規定され得る。切断および/または切開の効果/機能は、約75%?約100%のデューティーサイクルを伴う波形を有するものとして規定され得る。これらの割合は近似的なものであり、様々な組織のタイプおよび特定のために所望の外科的効果を送達するためにカスタマイズされ得るということは重要である。」

(コ) 「【0028】電気外科器具10は、ハウジング2上にスライドするように支持される強度コントローラ28をさらに含む。強度コントローラ28は、一対のナブ29a?29bを含み、該一対のナブは、作動スイッチ24a?24cの両側においてハウジング2の外側表面7に形成されたそれぞれのガイドチャネル30a?30bに、それぞれスライドするように支持される。作動スイッチ24a?24cの両側にナブ2a?29bを提供することにより、コントローラ28は、ユーザの両手によって容易に操作され得るか、または、同じ電気外科器具が、右利きまたは左利きのユーザによって操作され得る。」

(サ) 「【0030】強度コントローラ28は、所定の出力強度をもたらすために、電力パラメータ(例えば、電圧、電力および/または電流の強度)および/または電力対インピーダンス曲線の形状を調整するように構成および適合され得る。例えば、強度コントローラ28が遠位方向に大きく移動させられると、電気焼灼刃6に伝送される電力パラメータのレベルが大きくなる。電気焼灼を用い、約2Kオームの典型的な組織インピーダンスを有する場合、電流強度が約60mA?約240mAの範囲であり得ることが、想定される。60mAの強度レベルは、非常に軽度のおよび/または最小の切断/切開/止血効果を提供する。240mAの強度レベルは、非常にアグレッシブな切断/切開/止血効果を提供する。よって、電流強度の好適な範囲は、2Kオームにおいて約100mA?約200mAである。」

(シ) 「【0032】動作中、所望の特定の電気外科機能に応じて、外科医は、矢印「Y」(図1参照)によって示される方向に、作動スイッチ24a?24cのうちの1つを押下げ、これにより、対応するスイッチ26a?26cをVDN27に向けて促し、これにより、電気外科発電機「G」へのそれぞれの特性信号の伝送を制御する。例えば、外科医は、作動スイッチ24aを押下げることにより、切断および/または切開機能を実行し得、作動スイッチ24bを押下げることにより、ブレンド機能を実行し得、または、作動スイッチ24cを押下げることにより、止血機能を実行し得る。そして、発電機「G」は、伝送ワイヤ14を介して、適切な波形出力を、電気焼灼刃6に伝送する。」

(ス) 「【0036】図3に最も良く見ることができるように、電気外科器具10は、成形されたおよび/または輪郭形成されたハンドグリップ5を含み、該ハンドグリップは、ハウジング2の遠位端および近位端ならびにハウジング2の下側を実質的に包囲する。輪郭形成されたハンドグリップ5は、外科医による電気外科器具10の取り扱いを向上させるような形状および寸法にされている。よって、電気外科器具10を使用および/または操作するためには、比較的低い圧力および把持力が必要され、これにより、外科医によって経験される疲労を潜在的に低減する。」

(セ) 「【0037】図4は、本開示に従う制御回路20のブロック図である。制御回路20は、電力コード12を介して、電気外科エネルギーの供給源に電気的に接続する(図3参照)。制御回路20は、使用情報を記録し、電気外科器具10と発電機「G」との間での使用情報の双方向通信を可能にする。使用情報は、電気外科器具のシリアル番号、器具タイプ、電気外科器具が作動された回数、電気外科器具が使用された全時間、各作動の間の少なくとも1つの作動要素の動作パラメータ、各作動の間の治療部分の動作状態、電力設定を含み得る。使用情報は、ケーブルコード12を介してリアルタイムで発電機「G」に伝送され得るか、または、発電機「G」に伝送されるように取り出し可能なように格納され得る。代替的に、双方向通信または2方向通信は、RFまたは誘導結合または光学的センサによって、無線で実行され得る(図6参照)。使用情報は、品質保証目的で利用され得る。例えば、使用情報は、強度コントローラ28を調整することによって強度レベルを増加または減少させることにより最適な切断および高周波療法を達成するために、外科医のためのフィードバック機構としての役割を果たし得る。使用情報はまた、電気外科器具の製造者が選りすぐれた器具を設計することを助け得る。」

(ソ) 「【0039】図5は、制御回路20に電力供給するために用いられる電力回路22の一実施形態を示す。電力回路22は、第1および第2のノード42a?42bを有する抵抗器42を含む。第1のノード42aは、伝送ワイヤ14を介して電気外科エネルギーの供給源(発電機「G」)に電気的に結合され、第2のノード42bは、電気焼灼電極6に電気的に結合される。代替的な実施形態において、ノード42aは、伝送ワイヤ14に接続され得、ノード42bは、接地(例えば、アース接地、シャーシ接地、またはリターンパスおよび/または発電機「G」に対する接地)に接続され得る。電気外科エネルギーが抵抗器42を流れるときに、第1および第2のノード42a?42bの間に、第1の電圧差が提供される。ブリッジ回路44は、入力ノードの対および出力ノードの対44a?44bをそれぞれ含む。入力ノードの対44aは、第1の電圧差を受信するために、抵抗器42の第1および第2のノード42a?42bに電気的に結合される。ブリッジ回路44は、第1の電圧差を整流することにより、第2の電圧を提供する。」

(タ) 「【0051】外科医が別の器具を選んで電気外科器具10を切り換える場合に、発電機内に格納された最も新しい使用情報が、ここで、新しい器具にアップロードされなければならず、その結果、外科医は、情報(例えば、電力制御設定、強度設定など)を損なうことなしに継続し得る。使用情報のダウンロードの前に、元の器具10のケーブル12は、発電機「G」から接続される。次いで、別の電気外科器具が発電機「G」に接続される。いったん、新しい器具が接続され、作動されると、制御回路20は、発電機と新しい器具との間の双方向通信を可能にする。双方向通信の一部として、発電機「G」は、使用情報を新しい器具に送る。」

(チ) 図1


(ツ) 図3


(テ) 引用発明
上記記載事項(イ)によると、電気外科器具はアクティブ電極とハンドピースから構成されるものである。また、上記記載事項(ソ)をあわせ読めば、電気焼灼電極(6)がアクティブ電極であるといえる。さらに、上記(ツ)の図3には、電気焼灼電極(6)が電気外科器具(10)を構成していることがみてとれる。これらの事項から、電気外科器具(10)のうち、電気焼灼電極(6)以外の部分は、ハンドピースであると認められる。
上記(ツ)の図3によると、ハンドピースにはユーザから遠い部分とユーザに近い部分があることをうかがえる(以下、これら「ユーザから遠い部分」及び「ユーザに近い部分」を、上記記載事項(オ)に照らし、それぞれ「遠位側」及び「近位側」という。)。そうすると、ハンドピースの遠位側に電気焼灼電極(6)を備えているということができる。
上記記載事項(ウ)、(ク)、(ケ)、(シ)を踏まえると、制御回路(20)は、作動スイッチ(24a?c)の押下げに応じて、切開、切開と止血のブレンド、止血といった機能に対応した特性信号を電気外科発電機(G)に送達し、電気外科発電機(G)は、これら特性信号に応じたデューティーサイクルの波形形状、すなわち高周波エネルギーの電圧波形を電気焼灼電極(6)に伝送していると認められる。そうすると、制御回路(20)は、ハンドピースの遠位側に伝送される高周波エネルギーの電圧波形を制御するように、及び、電気外科発電機(G)から伝送される高周波エネルギーを前記電気外科発電機(G)において切り替え、かつ、切り替えられた前記高周波エネルギーを、前記ハンドピースの前記遠位側に伝送するように構成されているということができる。

上記記載事項(ア)?(ツ)を、これらの認定事項と併せて技術常識を踏まえて整理すると、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。

「 近位側と遠位側とを有し、前記遠位側に電気焼灼電極(6)を備えているハンドピース、
を備えた電気外科器具(10)であって、
前記電気外科器具(10)は、制御回路(20)を有しており、
前記制御回路(20)は、前記ハンドピースの前記遠位側に伝送される高周波エネルギーの電圧波形を制御するように、及び、電気外科発電機(G)から伝送される高周波エネルギーを前記電気外科発電機(G)において切り替え、かつ、切り替えられた前記高周波エネルギーを、前記ハンドピースの前記遠位側に伝送するように構成されている、
電気外科器具(10)。」


(3) 対比
補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。
引用発明の「近位側」は、補正発明の「接続側(A)」に相当し、以下同様に、「遠位側」は「処置側(B)」に、「電気焼灼電極(6)」は「少なくとも1つの処置電極」に、「ハンドピース」は「ハンドピース(10)」に、「電気外科器具(10)」は「電気外科器具(100)」に、「制御回路(20)」は「制御ユニット(20)」に、「伝送される」は「出力される」に、「電気外科発電機(G)」は「高周波電流発生器(200)」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「制御する」は、補正発明の「能動的に制御する」と、「制御する」点で共通する。
さらに、引用発明の「前記電気外科発電機(G)において切り替え」と、補正発明の「変更し」とは、「制御する」点で共通する。

したがって、補正発明と引用発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「接続側と処置側とを有し、前記処置側上に少なくとも1つの処置電極を備えているハンドピース、
を備えた電気外科器具であって、
前記電気外科器具は、制御ユニットを有しており、
前記制御ユニットは、前記ハンドピースの前記処置側に出力される高周波エネルギーの電圧波形を制御するように、及び、前記高周波電流発生器から供給される高周波エネルギーを変更し、かつ、変更された前記高周波エネルギーを、前記ハンドピースの前記処置側に出力するように構成されている、電気外科器具。」


そして、補正発明と引用発明とは、以下の2点で相違している。
<相違点1>
電気外科器具について、補正発明においては、「前記ハンドピース(10)の前記接続側(A)に電気的に接続されかつ高周波電流発生器(200)に電気的に接続可能である接続プラグ(30)」を備えるのに対し、引用発明においては、そのような構成を有するかどうか具体的には明らかでない点。

<相違点2>
制御ユニットにおける制御について、補正発明においては、「能動的に」であるとともに「高周波エネルギーを変更」するものであるのに対し、引用発明においては、「高周波エネルギーを前記電気外科発電機(G)において切り替え」るものである点。


(4) 判断
上記相違点1、2について、以下、検討する。

ア 相違点1について
上記(2)ア(ウ)の記載事項によれば、引用発明のハンドピースは発電機(G)に電気的に接続されるものであり、また、上記(2)ア(エ)の記載事項によれば、引用発明の電気外科器具は発電機(G)に対して交換可能なものであるといえる。
ところで、外科用電気プローブにおいて、当該プローブをエネルギー供給源に対して着脱できるように、当該プローブに取り付けられたケーブルの先端部に接続ポート(プラグ)を設けることは周知の技術である(必要とあらば、米国特許出願公開第2007/0167941号明細書の段落[0002]、段落[0051]、図1及び図5を参照のこと)。
してみれば、引用発明において、電気外科器具を発電機に対して交換できるように、上記周知の技術を採用してハンドピースの接続側にポート(プラグ)を設け、上記相違点1に係る補正発明の構成とすることに、何ら困難性はない。

イ 相違点2について
補正発明の「前記制御ユニット(20)は、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力される高周波エネルギーの電圧波形を能動的に制御するように、及び、前記高周波電流発生器(200)から供給される高周波エネルギーを変更し、かつ、変更された前記高周波エネルギーを、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力するように構成されている」という記載について検討するに、制御ユニットは、(あ)前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力される高周波エネルギーの電圧波形を能動的に制御する、(い)「前記高周波電流発生器(200)から供給される高周波エネルギーを変更し」、(う)「変更された前記高周波エネルギーを、前記ハンドピース(10)の前記処置側(B)に出力する」ことを実現できるよう構成されているというにとどまり、上記(あ)、(い)、(う)の各構成について、器具内の制御ユニットがこれらすべてを実行するとまでは限定されておらず、制御ユニットが、上記(あ)、(い)、(う)の構成を、器具内の制御ユニットからの信号に基づいて高周波発生器内の制御手段を介して実行するよう構成されていることを排除するものとはなっていない。
また、本願明細書の「切開のための電圧波形と凝固のための電圧波形を形成して電気外科器具に出力するならば、当該器具側では能動的な制御装置により、例えば高周波電流発生器から提供されてない第3の電圧波形を、例えばプラズマブレンドモードの電圧波形を補うことができるようになる。」(段落[0010])という記載にみられるとおり、器具内の制御装置が新たな電圧波形を形成できるような事例が紹介される一方で、「能動的な電圧適合化や切り替えは、ハンドヘルド器具内で行われるのではなく、高周波電流発生器からの機能的な出力によって行われる。」(段落[0007])という記載や、「すなわち、信号の適合化、つまり所望の電圧波形への高周波エネルギーの変更及び/又は変調は必ずしも当該器具内で行う必要はない。むしろ本発明の改善例においては、電気外科器具内に設けられた制御ユニットが高周波電流発生器に対する「外部制御ユニット」を意図して作用している。」(段落[0011])という記載からも看守されるとおり、能動的な制御について、器具内の制御装置(ユニット)だけで実行されるものだけではなく、高周波電流発生器内の制御手段において実行される事例が紹介されている。
してみれば、補正発明は、これらの記載にあるとおり、上記(あ)、(い)、(う)の構成について、器具内の制御ユニット内でそのすべてが実行されるものだけでなく、高周波発生器内の制御手段において実行されるものを含むものであると解することができる。そして、補正発明の「能動的に制御する」という構成は、制御ユニットと高周波電流発生器との間の関係において、ハンドスイッチによる手動入力を受けた制御ユニットが、当該入力に応じた信号を高周波発生器に対して発信し、当該高周波発生器を制御する構成を含むものであると解することができる。
ここで、引用発明について検討するに、器具内の制御回路が高周波エネルギーを前記電気外科発電機(G)において切り替える構成となっているが、以上の補正発明についての検討を踏まえると、引用発明の「制御回路」による「高周波エネルギーの電圧波形を制御」するとともに「高周波エネルギーを前記電気外科発電機において切り替え」は、本件発明の「制御ユニット」による「高周波エネルギーの電圧波形を能動的に制御する」とともに「高周波エネルギーを変更し」に相当するといえる。
そうすると、上記相違点2に係る補正発明の構成は、実質的な相違点ではないことになる。

次に、念のため、上記(あ)、(い)、(う)の構成について、器具内の制御ユニット内で実行されるものと、補正発明の構成が追加限定されていたと仮定した場合についてさらに検討する。
切断や止血等の各機能に応じて電圧波形等を変更する高周波電気外科器具において、当該変更のための回路を当該器具内に備えることは、周知の技術である(必要とあらば、特表2010-512214号公報の段落[0068]?[0094]及び図1?5、特開2011-98202号公報の段落[0023]、[0030]、[0035]、[0037]及び図7等を参照)ことを踏まえると、引用発明において当該回路をハンドピース側又は電気外科発電機側のいずれに備えるよう構成するかは、必要に応じて選択することのできる設計事項に過ぎず、当業者にとって何ら困難性はない。

なお、仮に、上記(あ)、(い)、(う)の構成について、高周波発生器側において高周波エネルギーの電圧波形を変更したうえで、さらに、高周波電気外科器具の制御ユニットにおいても当該出力された高周波エネルギーの電圧波形をさらに変更できるよう、高周波発生器及び高周波外科器具の双方に高周波エネルギーの電圧波形を変更するための変調回路が搭載されると、補正発明の構成がさらに追加限定されていたとすれば、引用発明および上記周知の技術を示す文献においてこのような構成が記載されているということはできないが、補正発明にこのような特定はなされていない。

そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年12月6日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年7月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1(2)に記載のとおりのものである。


2.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?10に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2011-67631号公報(本審決における上記引用文献1)


3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、上記第2の2(2)に記載したとおりである。


4.対比・判断
本願発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、「ハンドピース(10)」について「前記処置側(B)上に少なくとも1つの処置電極を備えている」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2の2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.上申書について
平成30年4月16日に提出された上申書には、「制御ユニット」の構成を、請求項2に記載されている内容に限定する「補正案発明1」が示されているが、上記第2の2(4)イに示したとおり、引用発明においても、波形出力(切開、切開と止血のブレンド、止血の機能)のデュティーサイクルを切り替えるものであり、パルス変調しているといえる(必要とあらば、特開平6-30949号公報の段落[0020]?[0022]を参照のこと。)。
なお、高周波電気外科器具に波形出力を振幅変調により実現することも周知の技術である(必要とあらば、特開平2-99053号公報の第2ページ左下欄第3行?第3ページ左下欄第6行を参照のこと。)。
よって、「補正案発明1」であっても結論に変わりはない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-10 
結審通知日 2018-12-18 
審決日 2019-01-04 
出願番号 特願2015-557429(P2015-557429)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮下 浩次  
特許庁審判長 芦原 康裕
特許庁審判官 二階堂 恭弘
長屋 陽二郎
発明の名称 拡張された機能性を有する電気外科用ハンドヘルド器具  
代理人 高橋 佳大  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
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