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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1351948
審判番号 不服2017-5871  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-04-24 
確定日 2019-05-22 
事件の表示 特願2015-531347「無線通信の半永続的スケジューリングのためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日国際公開、WO2014/052499、平成27年11月12日国内公表、特表2015-532822〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年(平成25年)9月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理、2012年9月28日 米国、2012年11月1日 米国、2013年6月27日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 3月25日付け 拒絶理由通知書
平成28年 9月 9日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 2月 3日付け 拒絶査定
平成29年 4月24日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
平成30年 8月 9日付け 拒絶理由通知書(当該通知書で通知した拒絶理由を、以下「当審拒絶理由」という。)
平成30年11月14日 意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明及び優先権

1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成30年11月14日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項7に係る発明は、以下のとおりのものである。

「CoMP(coordinated multi-point)送信のためにユーザ機器(UE)を構成し、
第1のサブフレーム内で、SPS(semi-persistent scheduling) RNTI(radio network temporary identifier)によりスクランブリングされるSPS開始制御チャネル信号を送信し、前記SPS開始制御チャネル信号は、n_(SCID)の値を伝達し、前記SPS開始制御チャネルはPDSCHリソースエレメント(resource element:RE)マッピング及び地理的同一指示子(PQI)の値を更に伝達し、前記UEは、前記PQIの値により示される送信パラメータセットに基づき、前記SPS PDSCHを処理するよう更に構成され、
別のサブフレーム内で、対応する制御チャネル信号を有しない共有データチャネル信号を送信し、前記共有データチャネル信号は前記第1のサブフレーム内の前記n_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する、
よう構成されるeNB(E-UTRAN(evolved universal terrestrial radio access network)node B)。」

ここで、請求項7の2段落目には「前記SPS PDSCH」と記載されているが、この記載よりも前に「SPS PDSCH」の記載は無く、「前記SPS PDSCH」は「SPS PDSCH」の誤記であることが明らかである。
したがって、本願の請求項7に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認める。
「CoMP(coordinated multi-point)送信のためにユーザ機器(UE)を構成し、
第1のサブフレーム内で、SPS(semi-persistent scheduling) RNTI(radio network temporary identifier)によりスクランブリングされるSPS開始制御チャネル信号を送信し、前記SPS開始制御チャネル信号は、n_(SCID)の値を伝達し、前記SPS開始制御チャネルはPDSCHリソースエレメント(resource element:RE)マッピング及び地理的同一指示子(PQI)の値を更に伝達し、前記UEは、前記PQIの値により示される送信パラメータセットに基づき、SPS PDSCHを処理するよう更に構成され、
別のサブフレーム内で、対応する制御チャネル信号を有しない共有データチャネル信号を送信し、前記共有データチャネル信号は前記第1のサブフレーム内の前記n_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する、
よう構成されるeNB(E-UTRAN(evolved universal terrestrial radio access network)node B)。」

2.優先権
本願は、米国特許仮出願61/707,784号(出願日 2012年9月28日)、米国特許仮出願61/721,436号(出願日 2012年11月1日)、米国特許出願13/928,722号(出願日 2013年6月27日)を優先権の主張の基礎としているが、本願発明を特定する事項である「前記SPS開始制御チャネルはPDSCHリソースエレメント(resource element:RE)マッピング及び地理的同一指示子(PQI)の値を更に伝達し、前記UEは、前記PQIの値により示される送信パラメータセットに基づき、前記SPS PDSCHを処理するよう更に構成され、」との事項は、米国特許仮出願61/721,436号、米国特許出願13/928,722号に記載されているものの、米国特許仮出願61/707,784号には記載されていない。
また、請求人からは上記事項について、米国特許仮出願61/707,784号における具体的な記載等の根拠は何ら示されていない。

したがって、米国特許仮出願61/707,784号に基づく本願発明についての優先権の主張の効果は認められず、以下に検討する特許法第29条第2項に規定する進歩性の判断の基準日は、米国特許仮出願61/721,436号の出願日である2012年(平成24年)11月1日とする。

第3 拒絶の理由

当審拒絶理由は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。そして、本願発明は、本件補正前の請求項8に本件補正前の請求項6に記載された事項を付加したものであり、当審拒絶理由では、本件補正前の請求項8に対して、下記の9が引用されており、本件補正前の請求項6に対して、下記の9、12が引用されており、下記の9に関連する技術常識を示すために、下記の3、10が提示されている。

3.3GPP TS 36.211、V11.0.0、[online]、2012年9月19日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.211/36211-b00.zip>
9.3GPP TS 36.213、V11.0.0、[online]、2012年9月19日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.213/36213-b00.zip>
10.3GPP TS 36.212、V11.0.0、[online]、2012年9月19日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.212/36212-b00.zip>
12.DL CoMP Rapporteur (Samsung)、RRC Parameters for Downlink CoMP、3GPP TSG RAN WG1 #70bis、R1-124669、[online]、2012年10月26日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_70b/Docs/R1-124669.zip>

第4 引用例等に記載された事項等及び引用発明等

1.引用例9に記載された事項
当審拒絶理由で引用されたLTE-Aの仕様書である3GPP TS 36.213、V11.0.0、[online]、2012年9月19日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.213/36213-b00.zip>(以下、「引用例9」という。)には、図表とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「If a UE is configured by higher layers to decode PDCCH with CRC scrambled by the SPS C-RNTI, the UE shall decode the PDCCH on the primary cell and any corresponding PDSCH on the primary cell according to the respective combinations defined in Table 7.1-6. The same PDSCH related configuration applies in the case that a PDSCH is transmitted without a corresponding PDCCH. The scrambling initialization of PDSCH corresponding to these PDCCHs and PDSCH without a corresponding PDCCH is by SPS C-RNTI.
If a UE is configured by higher layers to decode EPDCCH with CRC scrambled by the SPS C-RNTI, the UE shall decode the EPDCCH on the primary cell and any corresponding PDSCH on the primary cell according to the respective combinations defined in Table 7.1-6A. The same PDSCH related configuration applies in the case that a PDSCH is transmitted without a corresponding EPDCCH. The scrambling initialization of PDSCH corresponding to these EPDCCHs and PDSCH without a corresponding EPDCCH is by SPS C-RNTI.」(30葉)

(当審仮訳:
UEがSPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHを復号するよう、上位レイヤによって構成される場合、UEは、表7.1-6に定義されたそれぞれの組み合わせに従って、プライマリセルのPDCCH及びプライマリセルの対応するPDSCHを復号する。対応するPDCCHを有しないPDSCHが送信される場合には、同じPDSCH関連設定が適用される。これらのPDCCHに対応するPDSCH及び対応するPDCCHを有しないPDSCHのスクランブルの初期化はSPS C-RNTIによるものである。
UEがSPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するEPDCCHを復号するよう、上位レイヤによって構成される場合、UEは、表7.1-6Aに定義されたそれぞれの組み合わせに従って、プライマリセルのEPDCCH及びプライマリセルの対応するPDSCHを復号する。対応するEPDCCHを有しないPDSCHが送信される場合には、同じPDSCH関連設定が適用される。これらのEPDCCHに対応するPDSCH及び対応するEPDCCHを有しないPDSCHのスクランブルの初期化はSPS C-RNTIによるものである。)

(2)「the UE shall upon detection of a PDCCH with CRC scrambled by the SPS C-RNTI with DCI format 1A or 2C, or upon detection of a EPDCCH with CRC scrambled by the SPS C-RNTI with DCI format 1A or 2C, or for a configured PDSCH without PDCCH intended for the UE, decode the corresponding PDSCH in the same subframe.
A UE configured in transmission mode 10 can be configured with scrambling identities, n_(ID)^(DMRS,i), i = 0,1 by higher layers for UE-specific reference signal generation as defined in Section 6.10.3.1 of [3] to decode PDSCH according to a detected PDCCH/EPDCCH with CRC scrambled by the SPS C-RNTI with DCI format 2C intended for the UE.

Table 7.1-6: PDCCH and PDSCH configured by SPS C-RNTI


Table 7.1-6A: EPDCCH and PDSCH configured by SPS C-RNTI

」(31-32葉)

(当審仮訳:
UEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するDCIフォーマット1A又は2CのPDCCHを検出した時、または、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するDCIフォーマット1A又は2CのEPDCCHを検出した時、または、そのUE用のPDCCHを有さず構成されたPDSCHに対して、同じサブフレームの対応するPDSCHを復号する。
送信モード10に構成されたUEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有する当該UEに意図されたDCIフォーマット2Cの検出されたPDCCH/EPDCCHに従ってPDSCHを復号するよう、[3]の6.10.3.1節で定義されるUE固有参照信号生成のために上位レイヤによりスクランブリングアイデンティティn_(ID)^(DMRS,i),i=0,1が構成され得る。

表 7.1-6:SPS CRNTIによって構成されるPDCCH及びPDSCH
(表 7.1-6略)
表 7.1-6A:SPS CRNTIによって構成されるEPDCCH及びPDSCH
(表 7.1-6A略)」

2.引用例9に関連する技術常識
当審拒絶理由で提示された、LTE-Aの仕様書である3GPP TS 36.212、V11.0.0、[online]、2012年9月19日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.212/36212-b00.zip>には、図表とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
「5.3.3.1.5C Format 2C
The following information is transmitted by means of the DCI format 2C:
(中略)
- Antenna port(s), scrambling identity and number of layers - 3 bits as specified in Table 5.3.3.1.5C-1 where n_(SCID) is the scrambling identity for antenna ports 7 and 8 defined in section 6.10.3.1 of [2]
(中略)
Table 5.3.3.1.5C-1: Antenna port(s), scrambling identity and number of layers indication

」(70-71葉)

(当審仮訳:
5.3.3.1.5C フォーマット2C
次の情報がDCIフォーマット2Cによって送信される:
(中略)
-アンテナポート、スクランブリングアイデンティティ、レイヤの数 -表 5.3.3.1.5C-1で規定される3ビットであって、n_(SCID)は[2]の6.10.3.1節で定義された、アンテナポート7又は8に対するスクランブリングアイデンティティである
(中略)
表 5.3.3.1.5C-1 アンテナポート、スクランブリングアイデンティティ、レイヤの数のインジケイション
(表 5.3.3.1.5C-1略)
)

また、当審拒絶理由で提示された、LTE-Aの仕様書である3GPP TS 36.211、V11.0.0、[online]、2012年9月19日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/36_series/36.211/36211-b00.zip>には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「6.10.3 UE-specific reference signals associated with PDSCH
(中略)

」(81-82葉)

(当審仮訳:
6.10.3 PDSCHに関連するUE固有参照信号
(中略)
任意のアンテナポートp∈{7,8,...,v+6}に対して、参照信号シーケンスr(m)は
(数式略)
によって定義される。
疑似ランダムシーケンスc(i)は7.2節で定義される。疑似ランダムシーケンス生成は、各サブフレームのスタートにおいて
(数式略)
で初期化される。
n_(ID)^((i)),i=0,1の量は次で与えられる
-n_(ID)^(DMRS,i)の値が上位レイヤによって与えられない場合、又は、PDSCHの送信に関連するDCIに関して、DCIフォーマット1Aが用いられる場合は、n_(ID)^((i))=n_(cell)^(ID)
-その他の場合は、n^((i))_(ID)=n_(ID)^(DMRS,i)
特に断りがない限り、n_(SCID)の値は0である。ポート7又は8でのPDSCH送信に関して、n_(SCID)はPDSCH送信に関連するDCIフォーマット2B又は2Cによって与えられる。DCIフォーマット2Bの場合、n_(SCID)は、表6.10.3.1-1に従って、スクランブリングアイデンティティフィールドによって示される。DCIフォーマット2Cの場合、n_(SCID)は、[3]の表5.3.3.1.5C-1によって与えられる。)

LTE-Aの仕様書に記載された事項は、当業者における技術常識であるから、次の事項は技術常識であると認められる。
・「DCIフォーマット2CのPDCCHによりn_(SCID)の値を伝達する。」こと
・「UE固有参照信号の参照信号シーケンスは、DCIフォーマット2CのPDCCHで与えられるn_(SCID)の値を用いて、n_(ID)^(DMRS,i)が決まることにより、決定される。」こと

3.引用発明
引用例9に記載された事項及び当業者における技術常識からみて、以下のことがいえる。

(1)上記1.(1)、(2)の記載及び表7.1-6、7.1-6Aによれば、UEは、送信モード10に構成される。送信モードは、eNBによって送信されるRRCシグナリングにより、端末に通知されて構成されることは技術常識であって、eNBが種々のパラメータによって所望の動作を行うよう構成されるものであることも技術常識であるから、引用例9には、「送信モード10にUEを構成するよう構成されるeNB」が記載されているといえる。

(2)上記1.(2)の記載によれば、UEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するDCIフォーマット2CのPDCCHを検出する。PDCCHは、eNBがUEへ送信するものであることは技術常識であって、上記2.のとおり、DCIフォーマット2CのPDCCHによりn_(SCID)の値を伝達することも技術常識である。したがって、引用例9に記載されたeNBは、「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHを送信し、前記PDCCHは、n_(SCID)の値を伝達するよう構成される」といえる。

(3)上記1.(2)の記載によれば、UEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに従って、PDSCHを復号する。上記1.(1)の記載によれば、対応するPDCCHを有しないPDSCHは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに対応するPDSCHと同じPDSCH関連設定が適用されて、復号されるため、UEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに従って、対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号するといえる。したがって、引用例9に記載されたUEは、「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに従って、対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号するよう更に構成される」といえる。

(4)上記1.(1)の記載によれば、対応するPDCCHを有しないPDSCHが送信される。PDCCH及びPDSCHがサブフレーム単位でマッピングされ、送信されることは、技術常識であるから、PDSCHが対応するPDCCHを有しないのであれば、そのサブフレームにマッピングされた信号は、対応するPDCCHを有しないといえる。したがって、引用例9に記載されたeNBは、対応するPDCCHを有しないサブフレームにマッピングされた信号を送信するといえる。そして、対応するPDCCHを有しないサブフレームは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHが送信されるサブフレームとは別のサブフレームであることは明らかである。
また、上記1.(2)の記載によれば、UEは、スクランブリングアイデンティティn_(ID)^(DMRS,i),i=0,1により生成されたUE固有参照信号を用いて、PDSCHを復号することから、eNBが送信するサブフレームは、UE固有参照信号を有するといえる。
上記2.のとおり、UE固有参照信号の参照信号シーケンスは、DCIフォーマット2CのPDCCHで与えられるn_(SCID)の値を用いて、n_(ID)^(DMRS,i),が決まることにより、決定されることは技術常識であるから、UEは、PDCCHのn_(SCID)の値に基づき参照信号シーケンスを決定するといえる。
上記1.(1)の記載によれば、対応するPDCCHを有しないサブフレームでも、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに対応するPDSCHと同じPDSCH関連設定が適用されるから、対応するPDCCHを有しないサブフレームについても、参照信号シーケンスを決定するn_(SCID)の値は、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHのn_(SCID)の値であるといえる。
さらに、UE固有参照信号は、PDSCHを復号する際のチャネル推定に用いるものであるため、UEが決定する参照信号シーケンスと同じ参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号をeNBが送信することは技術常識である。
そうすると、引用例9に記載されたeNBは、「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHが送信されるサブフレームとは別のサブフレーム内で、対応するPDCCHを有しないサブフレームにマッピングされた信号を送信し、前記サブフレームにマッピングされた信号はSPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHのn_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する」といえる。

以上を総合すると、引用例9には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「送信モード10にUEを構成し、
SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHを送信し、前記PDCCHは、n_(SCID)の値を伝達し、前記UEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに従って、対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号するよう更に構成され、
SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHが送信されるサブフレームとは別のサブフレーム内で、対応するPDCCHを有しないサブフレームにマッピングされた信号を送信し、前記サブフレームにマッピングされた信号はSPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHのn_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する、
よう構成されるeNB。」

4.引用例12に記載された事項
当審拒絶理由で引用されたDL CoMP Rapporteur (Samsung)、RRC Parameters for Downlink CoMP(当審仮訳:ダウンリンクCoMPにおけるRRCパラメータ)、3GPP TSG RAN WG1 #70bis、R1-124669、[online]、2012年10月26日アップロード、インターネット<http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_70b/Docs/R1-124669.zip>(以下、「引用例12」という。)には、図表とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「2.4 Downlink Control Signalling for CoMP
It was agreed that the specification would provide signalling to indicate the CRS position of at least one cell from which PDSCH transmission may occur. Additionally, it was agreed that the specification would provide signalling to indicate the quasi-colocation assumption on DMRS. Up to 4 sets per CC of PDSCH RE mapping and quasi-co-location parameters can be configured using RRC signalling and indicated by DCI format 2D. Each set that can be signalled in DCI format 2D for TM10 corresponds to a higher-layer list of the parameters listed in Table 5.
Table 5. Set of PDSCH RE mapping and quasi-co-location parameters indicated by each code point in DCI format 2D.

」(4-5葉)

(当審仮訳:
2.4 CoMPのためのダウンリンク制御シグナリング
この仕様は、PDSCH送信が生じ得る、少なくとも1つのセルのCRS位置を示すためのシグナリングを提供することが合意された。さらに、この仕様は、DMRSのquasi-co-locationアサンプションを示すためのシグナリングを提供することが合意された。PDSCH RE mapping及びquasi-co-locationのパラメータのCCあたり最大4つのセットがRRCシグナリングを用いて構成され、DCIフォーマット2Dにより示される。TM10のDCIフォーマット2Dでシグナリング可能な各々のセットは、表5に列挙されたパラメータの上位レイヤリストに対応する。
表5.DCIフォーマット2Dの各コードポイントにより示されるPDSCH RE mapping及びquasi-co-locationのパラメータセット
(表5略)
)

5.公知技術
引用例12に記載された事項及び当業者における技術常識からみて、引用例12には、次の技術(以下、「公知技術」という。)が記載されていると認められる。

「CoMPのためのダウンリンク制御シグナリングに係る技術であって、RRCシグナリングにより、PDSCHを復号するためのPDSCH RE mapping及びquasi-co-locationのパラメータセットを複数構成し、DCIフォーマット2Dにより、そのうちのいずれかのパラメータセットを示す。」

第5 対比及び判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

1.引用発明の「送信モード10」は、CoMP送信のための送信モードであることは当業者における技術常識である。したがって、引用発明の「送信モード10にUEを構成」することは、「CoMP(coordinated multi-point)送信のためにユーザ機器(UE)を構成」するといえる。

2.引用発明の「SPS C-RNTI」は、本願発明の「SPS(semi-persistent scheduling) RNTI(radio network temporary identifier)」に含まれる。また、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHは所定の周期で送信されるものであって、そのSPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有する最初のPDCCHにより、SPSの開始が指示されることは技術常識であるから、引用発明の「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCH」のうち、最初のPDCCHは、本願発明の「SPS(semi-persistent scheduling) RNTI(radio network temporary identifier)によりスクランブリングされるSPS開始制御チャネル信号」に相当する。さらに、PDCCHがサブフレーム単位でマッピングされ、送信されることは当業者における技術常識であるから、最初のPDCCHは、第1のサブフレーム内といえる。したがって、引用発明の「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHを送信し、前記PDCCHは、n_(SCID)の値を伝達」することは、「第1のサブフレーム内で、SPS(semi-persistent scheduling) RNTI(radio network temporary identifier)によりスクランブリングされるSPS開始制御チャネル信号を送信し、前記SPS開始制御チャネル信号は、n_(SCID)の値を伝達」する点で本願発明と共通する。

3.本願の発明の詳細な説明の段落【0070】の記載によれば、本願発明の「SPS PDSCH」は、「SPS PDSCH(つまり、対応するPDCCH/EPDCCHを有しないPDSCH)」を含むから、引用発明の「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに従って、対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号する」の「対応するPDCCHを有しないPDSCH」は、本願発明の「SPS PDSCH」に含まれる。
また、本願の発明の詳細な説明の段落【0105】の記載によれば、本願発明の「前記SPS PDSCHを処理する」ことは、「PQI値を伝達するSPS PDSCHに対応する制御信号が受信されなくても、UE102はSPS PDSCHの中のデータを読み出す」ことを含むと認められる。そして、引用発明の「対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号する」ことは、PDSCHの中のデータを読み出すことに他ならないから、本願発明の「前記SPS PDSCHを処理する」ことに含まれる。
したがって、本願発明の「前記UEは、前記PQIの値により示される送信パラメータセットに基づき、前記SPS PDSCHを処理するよう更に構成され」ることと、引用発明の「前記UEは、SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHに従って、対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号するよう更に構成され」ることは、「前記UEは、前記SPS開始制御チャネルに基づき、SPS PDSCHを処理するよう更に構成され」る点で共通している。

4.本願発明の「別のサブフレーム内」が、「第1のサブフレーム」とは「別のサブフレーム内」を意味することは明らかである。また、本願発明の「共有データチャネル信号」は「UE固有参照信号を有する」ものであり、本願の発明の詳細な説明の「用語PDSCHは、PDSCHデータのような物理層データを有するリソースエレメント308及び/又はサブフレーム302にマッピングされる任意の信号を広義に意味する。」(段落【0024】)との記載から、サブフレームにマッピングされる任意の信号を含むと認められる。してみると、引用発明の「対応するPDCCHを有しないサブフレームにマッピングされた信号」は、本願発明の「対応する制御チャネル信号を有しない共有データチャネル信号」に含まれる。
また、引用発明の「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHのn_(SCID)の値」は、本願発明の「前記第1のサブフレーム内の前記n_(SCID)の値」に相当する。
したがって、引用発明の「SPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHが送信されるサブフレームとは別のサブフレーム内で、対応するPDCCHを有しないサブフレームにマッピングされた信号を送信し、前記サブフレームにマッピングされた信号はSPS C-RNTIによりスクランブルされたCRCを有するPDCCHのn_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する」ことは、「別のサブフレーム内で、対応する制御チャネル信号を有しない共有データチャネル信号を送信し、前記共有データチャネル信号は前記第1のサブフレーム内の前記n_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する」点で本願発明と共通する。

5.引用発明の「eNB」は、「eNB(E-UTRAN(evolved universal terrestrial radio access network)node B)」といえる。

以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「CoMP(coordinated multi-point)送信のためにユーザ機器(UE)を構成し、
第1のサブフレーム内で、SPS(semi-persistent scheduling) RNTI(radio network temporary identifier)によりスクランブリングされるSPS開始制御チャネル信号を送信し、前記SPS開始制御チャネル信号は、n_(SCID)の値を伝達し、前記UEは、前記SPS開始制御チャネルに基づき、SPS PDSCHを処理するよう更に構成され、
別のサブフレーム内で、対応する制御チャネル信号を有しない共有データチャネル信号を送信し、前記共有データチャネル信号は前記第1のサブフレーム内の前記n_(SCID)の値に基づき決定される参照信号シーケンスを有するUE固有参照信号を有する、
よう構成されるeNB(E-UTRAN(evolved universal terrestrial radio access network)node B)。」

(相違点)
本願発明は、更に「前記SPS開始制御チャネルはPDSCHリソースエレメント(resource element:RE)マッピング及び地理的同一指示子(PQI)の値を更に伝達し、前記UEは、前記PQIの値により示される送信パラメータセットに基づき、前記SPS PDSCHを処理するよう更に構成され」との発明特定事項を有しているのに対し、引用発明は、当該発明特定事項を有していない点

以下、相違点について検討する。

上記「第4」の「5.公知技術」で認定したとおり、「CoMPのためのダウンリンク制御シグナリングに係る技術であって、RRCシグナリングにより、PDSCHを復号するためのPDSCH RE mapping及びquasi-co-locationのパラメータセットを複数構成し、DCIフォーマット2Dにより、そのうちのいずれかのパラメータセットを示す。」ことは、公知技術であって、引用発明はCoMPの技術であるから、引用発明に、公知技術を適用することに格別の困難性はなく、阻害要因も見出せない。
したがって、引用発明に、公知技術を適用し、PDCCHのDCIに、PDSCH RE mapping及びquasi-co-locationのパラメータセットを示す値を追加し、UEがその値により示されるPDSCH RE mapping及びquasi-co-locationのパラメータセットに基づき、対応するPDCCHを有しないPDSCHを復号して、本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。

また、本願発明の作用効果も、引用発明及び公知技術の奏する作用効果から当業者が予測し得る範囲内のものである。

そうすると、本願発明は、引用発明及び公知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-19 
結審通知日 2018-12-25 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2015-531347(P2015-531347)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 松永 稔
長谷川 篤男
発明の名称 無線通信の半永続的スケジューリングのためのシステム及び方法  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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