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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B64D
管理番号 1351956
審判番号 不服2017-15323  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-16 
確定日 2019-05-22 
事件の表示 特願2012-186137号「航空機での電力分配」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 82434号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月27日(パリ条約による優先権主張 2011年8月30日 (GB)英国)の出願であって、平成28年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成29年2月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年6月13日付けで補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成29年10月16日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年10月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成29年10月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
なお、本件補正前になされた平成29年2月10日付けの手続補正は、同年6月13日付けの補正の却下の決定により却下されたため、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成28年7月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載である。

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
航空機用の電力分配システムであって、
電力供給に接続された第1のワイヤリングハーネスと、
前記第1のワイヤリングハーネスを通して前記電力供給に接続され、前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む、少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置と、
第2のワイヤリングハーネスを通してそれぞれの統合スイッチング電力変換装置の出力に接続された少なくとも1つの電気負荷と、
前記少なくとも1つの電気負荷を流れる第1の電流を表す第1の電流検出信号と、所定の配電保護条件に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つの電気負荷を流れる前記第1の電流を制限する、変換制御装置と、
を備え、
前記変換制御装置は、前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置の一次コイルを流れる第2の電流を表す第2の電流検出信号に少なくとも部分的に基づいて前記第2の電流を制御することにより、前記第1の電流を制限する、
電力分配システム。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
航空機用の電力分配システムであって、
電力供給に接続された第1のワイヤリングハーネスと、
前記第1のワイヤリングハーネスを通して前記電力供給に接続され、前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む単一の集電装置を備える、少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置と、
第2のワイヤリングハーネスを通してそれぞれ、統合スイッチング電力変換装置の出力に接続された複数の電気負荷と、
を備え、
前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置は、
前記複数の電気負荷のうちの対応する1つを流れる電流を制限する、電力変換装置を複数備え、
前記集電装置は、電流感知抵抗器を使用して検出した前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置の一次コイルを流れる電流を表す電流検出信号に基づいて前記一次コイルを流れる電流を電力トランジスタを使用して制御することにより、前記電力変換装置への電流を制限し、
前記電力トランジスタが、前記一次コイルと前記電流感知抵抗器の間に配置される、
電力分配システム。」

2 補正の適否 (新規事項の追加の有無)
(1)補正事項
上記1のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載について、少なくとも、
a「前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む単一の集電装置を備える」こと(以下「事項a」という。)、
b「前記複数の電気負荷のうちの対応する1つを流れる電流を制限する、電力変換装置を複数備え」ること(以下「事項b」という。)、
c「前記集電装置は、電流感知抵抗器を使用して検出した前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置の一次コイルを流れる電流を表す電流検出信号に基づいて前記一次コイルを流れる電流を電力トランジスタを使用して制御することにより、前記電力変換装置への電流を制限」すること(以下「事項c」という。)、
d「前記電力トランジスタが、前記一次コイルと前記電流感知抵抗器の間に配置される」こと(以下「事項d」という。)、を限定して補正するものである。
そこで、上記事項a?dが、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」といい、特許請求の範囲及び図面を併せて「当初明細書等」という。)、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」か否か(参考判決:知財高裁 平成20年5月30日特別部判決 平成18年(行ケ)第10563号)について、以下検討する。

(2)検討
ア 当初明細書等には、上記事項a?dに関連し、以下の記載がある(下線は、当審で付した。以下同様。)。
(ア)「【0015】
図2は、本発明の様々な実施形態に従った航空機用電力分配システム100を示す。電力分配システム100は、電力供給120に接続された第1のワイヤリングハーネス150を備える。第1のワイヤリングハーネス150は、例えば、電力供給120から高電圧交流または直流電力を分配するために使用されることがある。一実施形態では、ワイヤリングハーネス150は、高圧(HT)交流または直流電力を例えば直流270Vで分配する一対の細い電線を備える。そのような電線を使用することで、比較的軽いケーブルが可能になるだけでなく、これに接続された任意のデバイスの共通モード電圧保護も可能になる。このことは、第1のワイヤリングハーネス150が実質的に航空機全体にわたって分布するとき、特に有用である。というのは、そのとき第1のワイヤリングハーネス150は、雷雨、落雷、その他によって引き起こされる電磁干渉(EMI)から航空機中のデバイスを適切に保護するからである。
・・・
【0017】
電力分配システム100は、また、第1のワイヤリングハーネス150を通して電力供給120に接続された少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置180を含む。スイッチング変換装置は、線形調整器に比べてより高い効率をもたらすので、好ましい。例えば、図3から6に関連して以下で説明される実施形態の統合スイッチング電力変換装置が使用されることがある。そのような統合スイッチング電力変換装置180は、それが駆動すべきそれぞれの負荷170に近い航空機胴体の周りに配置されることがある。このようにして、比較的短いより大きな電流容量の第2のワイヤリングハーネス160を使用して、電気負荷170を関連した統合スイッチング電力変換装置180のそれぞれの出力に接続することができる。このように、電気負荷170は、電気負荷を駆動しかつ保護する統合スイッチング電力変換装置180の近位に位置付けすることができる。」
(イ)「【0023】
図3は、本発明の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置280を示す。統合スイッチング電力変換装置280は、組合せ電力変換段およびSSPC段を含む。SSPC段は、どのような調整も証明することなしにケーブル保護機能を行うために使用されることがある。
【0024】
統合スイッチング電力変換装置280は、変成器251に接続された電力入力線250を備えている。電力入力線250に送り込まれる電力は、電圧変換回路によって、負荷270を駆動する直流電力に変換される。変成器251の一次コイル252は、統合スイッチング電力変換装置280の電力調整および保護を行う固体電力制御装置回路に接続されている。
【0025】
電力入力線250は、一次コイル252の一方の側に接続されている。一次コイル252の他方の側は、電力MOSFET256のドレインに接続されている。MOSFET256のソース接続は、電流感知抵抗器262を通して接地に接続されている。逆バイアスダイオード258が、MOSFET256のソース接続とドレイン接続の間に備え付けられて、MOSFET256の逆方向誘起EMF損傷を防いでいる。MOSFET256の基板接続はソース電位に接続され、一方で、ゲート接続は、抵抗器268を通して変換制御装置272に結合されている。
【0026】
演算増幅器264への入力は、電流感知抵抗器262の両端間に接続されている。演算増幅器264は、予め決められた固定利得を与えるように構成されている。次に、演算増幅器264の出力は、変換制御装置272に送られる電流感知信号を供給する。変換制御装置272は、SSPC274に結合されている。SSPC274は、直流供給282によって電力を供給され、さらに変換制御装置272を制御して、変換制御装置272が次に、抵抗器268を通して電力MOSFET256のゲートに加えられる電圧を変えて一次コイル252の電流を調整するようにする。有利なことには、開または閉のどちらの状態のMOSFET256のどんな故障も、負荷270に電力が供給されるのを妨げる。SSPC274のための電流感知は、負荷270への入力電流を測定するために使用される電流感知回路292の出力294から取られる。出力電流は、このようにSSPC274によって測定され、判定は、SSPC274によって行われて、スイッチング変換装置の動作を不能にすることができる。例えば、電流感知回路292は、変換制御装置272に電流感知信号を供給するために使用されるのと同様な電流感知抵抗器/オペアンプ配列によって実現されることがある。したがって、この設計は、様々な形で使用されて、本質的にフェールセーフの電力分配システムを実現することができる。
【0027】
変成器251の二次コイル254の第1の端は、第1の整流ダイオード284およびチョーク288と直列に接続されて、負荷270に接続されている。二次コイル254の第1の端は、第1の整流ダイオード284の陽極に接続されている。二次コイル254の第2の端は、負荷と第2の整流ダイオード286の陽極に接続されている。第1および第2の整流ダイオード284、286の陰極は、互いに接続され、かつチョーク288の一方の端に接続されている。チョーク288の他方の端は、電流感知回路292を通して負荷270に接続されている。出力コネクタ260が、平滑コンデンサ290の両端子を、負荷270と電流感知回路292の両端に並列に結合している。チョーク288に電気的に接続されていない平滑コンデンサ290のリード線は、負荷270と第2の整流ダイオード286の陽極との両方に接続されている。
【0028】
動作中に、第1および第2の整流ダイオード284、286、チョーク288および平滑コンデンサ290は、二次コイル254によって供給される交流電力を整流し平滑化するように働く。したがって、直流供給が、出力コネクタ260から負荷270に供給される。
【0029】
図4は、図3の統合スイッチング電力変換装置280のI^(2)t配電保護曲線210を示す。I^(2)t配電保護曲線210は、統合スイッチング電力変換装置280を負荷270に接続するワイヤリングハーネスと負荷270を保護するために、出力コネクタ260から負荷270への電流出力がどのように時間的に制限されるかを図示している。
【0030】
時間Δの間電流が最大レベル212(例えば、定格最大一定電流の600%)に制限される短い継続時間領域216が示されている。短い継続時間領域216は、変換制御装置272によってサイクルごとに管理される。これを今度はSSPC274が監視し、SSPC274は、また、I^(2)t機能領域214を制御する。SSPC274は、変換制御装置272と同じ電流感知信号を与えられるが、電力変換段を抑止する全体的な権限を持っている。したがって、この組合せは、負荷保護および分散スイッチング制御の統合電力変換機能全体を実現することができる。」
(ウ)「【0031】
図5は、本発明の他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380を示す。統合スイッチング電力変換装置380は、一組の3本の入力電力線350を含む。これらの入力電力線350は、三相電力を集電装置382に供給する。入力電力線350に接続されたケーブルは、第1のワイヤリングハーネス(図示されない)の高電圧低電流配線に接続することがあり、入力電力を統合スイッチング電力変換装置380に供給する。集電装置382は、この電気システムがどんな川上供給源にも抵抗器のように見えるようにする力率補正を行う。そのような力率補正は、大抵の航空宇宙用途では義務付けられることが多く、入力電力が発生させることができるよりも高い電位で動作する高電圧直流リンクバスを使用する出力をもたらすことができる。
【0032】
集電装置382は、第1の直流電力線383と第2の直流電力線385の間に直流出力電位を生じさせる。3個の直流-直流変換装置384が互いに並列に備え付けられている。また、第1と第2の直流電力線383、385の間には、平滑コンデンサ351が接続されている。このようにして、直流入力が、各々の直流-直流変換装置384に供給される。
【0033】
直流-直流変換装置384は、制御ユニット360によって第1および第2の制御線357、359を通して制御される。各それぞれの直流-直流変換装置384は、また、第2のワイヤリングハーネス(図示されない)に接続する一対の出力コネクタ362を備えている。直流-直流変換装置384を使用する1つの有利点は、局所短絡保護と共に冗長性を可能にすることである。その上、直流-直流変換を使用することによって、制御ユニット360が故障した場合に、統合スイッチング電力変換装置380は、電力供給から変成器386を越えて負荷に電力が伝えられないように動作を中断し、それによってこの設計の本質的フェールセーフモードを実現するという有利点が得られる。
【0034】
動作中に、制御ユニット360は、スイッチング制御信号をそれぞれの直流-直流変換装置384に供給して、出力電圧を調整し、さらに出力接続362によって供給される電流を制限する。スイッチング制御信号は、例えば、直流-直流変換装置384のパルス幅変調(PWM)制御を行うことがある。当技術分野で知られているように、PWMは、スイッチングデバイスの2つの制御状態、すなわち無/低電流の電圧降下または無/低降下電圧の電流を生成するために使用されることがある。したがって、例えば、MOSFET自体の抵抗損が大きくなる直線駆動方式に比べて、スイッチ自体で生じる電力損失が小さい。固定または可変デューティサイクルスイッチングも使用されることがある。
【0035】
また、制御ユニット360は、好ましくは、マイクロプロセッサユニット(図示されない)を含む。SSPC機能が実現されるように統合スイッチング電力変換装置380にアルゴリズム的処理を追加するために、マイクロプロセッサユニットを使用することができる。スイッチング変換装置をSSPC機能と統合することによって、本発明の様々な実施形態は、大電流出力のために普通必要とされる従来のSSPC高出力電力MOSFET無しで済ませ、代わりに、変換装置でスイッチング機能を行うために使用されるMOSFETなどのより低電力のスイッチを不能にすることができる局所SSPC機能を用意することができる。随意選択的に、そのとき制御ユニット360によって監視することができる統合スイッチング電力変換装置380に、様々な電流センサ(図示されない)が備え付けられることもある。
【0036】
図6は、図5の統合スイッチング電力変換装置380に使用される直流-直流変換装置384を示す。第1の直流電力線383が、第1のFETスイッチ381のドレイン接続に接続されている。第1のFETスイッチ381のゲート接続は、第1の制御線357に接続されている。第2の直流電力線385が、第2のFETスイッチ387のソース接続に接続されている。第2のFETスイッチ387のゲート接続は、第2の制御線359に接続されている。第1および第2のFETスイッチ381、387の1つまたは複数は、炭化ケイ素(SiC)電界効果トランジスタを使用して形成されることがある。そのようなSiC FETは、HT供給が用意される場合に特に有用である。」
(エ)当初明細書等には、以下の図が示されている。

イ 上記ア(ア)によれば、図2は、本発明の様々な実施形態に従った航空機用電力分配システム100を示すこと(段落【0015】)、及び、上記航空機用電力分配システム100は、第1のワイヤリングハーネス150を通して電力供給120に接続された少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置180を含むものであって、かかる統合スイッチング変換装置180は、例えば、図3から6に関連した実施形態の統合スイッチング電力変換装置が使用されること(段落【0017】)、が明らかである。
また、上記ア(イ)によれば、図3は、「本発明の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置280」を示し(段落【0023】)、図4は、図3の統合スイッチング電力変換装置280のI^(2)t配電保護曲線210を示すこと(段落【0029】)が明らかである。
さらに、上記ア(ウ)によれば、図5は、「本発明の他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」を示し(段落【0031】)、図6は、図5の統合スイッチング電力変換装置380に使用される直流-直流変換装置384を示すこと(段落【0036】)が明らかである。
したがって、当初明細書等には、図2に示される本発明の様々な実施形態に従った航空機用電力分配システム100における統合スイッチング電力変換装置180として、図3に示される実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置280を使用して構成されたもの、及び、上記図3の実施形態と異なる図5、6に示される他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380を使用して構成されたものが記載されていると認められる。

ウ 以上を踏まえて検討する。
(ア)補正後の請求項1に記載された「電力分配システム」は、上記事項aの「前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む単一の集電装置」を備えるものであるところ、当初明細書等(上記ア(ウ)(エ))には、「図5は、本発明の他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380を示す。統合スイッチング電力変換装置380は、一組の3本の入力電力線350を含む。これらの入力電力線350は、三相電力を集電装置382に供給する。・・・集電装置382は、この電気システムがどんな川上供給源にも抵抗器のように見えるようにする力率補正を行う。」(【0031】)と記載されており、上記「集電装置382」が力率補正を行う電力補正部として機能するものと理解することができること、さらに、図5には単一の「集電装置382」が図示されていることから、上記「他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」が、上記事項aの「力率補正を行う電力補正部を含む単一の集電装置」を備えるものと認めることができる。
また、補正後の請求項1に記載された「電力分配システム」は、上記事項bの「前記複数の電気負荷のうちの対応する1つを流れる電流を制限する、電力変換装置を複数備え」るものであるところ、当初明細書等(上記ア(ウ)(エ))には、「集電装置382は、第1の直流電力線383と第2の直流電力線385の間に直流出力電位を生じさせる。3個の直流-直流変換装置384が互いに並列に備え付けられている。また、第1と第2の直流電力線383、385の間には、平滑コンデンサ351が接続されている。このようにして、直流入力が、各々の直流-直流変換装置384に供給される。」(段落【0032】)、及び「動作中に、制御ユニット360は、スイッチング制御信号をそれぞれの直流-直流変換装置384に供給して、出力電圧を調整し、さらに出力接続362によって供給される電流を制限する。」(段落【0034】)と記載され、上記「他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」において、直流-直流変換装置384が、供給電流を制限することが記載されていることから、上記「他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」が、上記事項bの「前記複数の電気負荷のうちの対応する1つを流れる電流を制限する、電力変換装置」を備えるものと認めることができる。
しかし、上記「他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」を構成する「集電装置382」は、「第1の直流電力線383と第2の直流電力線385の間に直流出力電位を生じさせる」(段落【0032】)ものとして特定することはできても、上記事項cの「電流感知抵抗器を使用して検出した前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置の一次コイルを流れる電流を表す電流検出信号に基づいて前記一次コイルを流れる電流を電力トランジスタを使用して制御することにより、前記電力変換装置への電流を制限」するものということはできないし、さらに、上記事項dの「前記電力トランジスタが、前記一次コイルと前記電流感知抵抗器の間に配置される」ということもできない。
(イ)また、当初明細書等には、上記ア(イ)(エ)のとおり、図3、4に示す本発明の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置280も記載されているが、かかる統合スイッチング電力変換装置280に上記事項aの「単一の集電装置」を備えることは記載されていないし、また、上記事項bの「前記複数の電気負荷のうちの対応する1つを流れる電流を制限する、電力変換装置を複数備え」ることも記載されていない。
(ウ)ところで、請求人は、平成29年10月16日付け審判請求書の「補正の根拠について」の項において、「電力集電装置が、一次コイルと電流感知抵抗器の間に配置される点及び、電流感知抵抗器を使用して、一次コイルを流れる電流を表す電流検出信号を検出する点は、少なくとも図3、5及び、第0025、0026段落の『電力入力線250は、一次コイル252の一方の側に接続されている。一次コイル252の他方の側は、電力MOSFET256のドレインに接続されている。MOSFET256のソース接続は、電流感知抵抗器262を通して接地に接続されている。』、『演算増幅器264への入力は、電流感知抵抗器262の両端間に接続されている。演算増幅器264は、予め決められた固定利得を与えるように構成されている。次に、演算増幅器264の出力は、変換制御装置272に送られる電流感知信号を供給する。』との記載に基づきます。」と主張する。
しかし、電力集電装置(審決注:上記事項aの「集電装置」の意と解される。)が、一次コイルと電流感知抵抗器の間に配置される点は、図3、5、段落【0025】、【0026】には記載されていない。当初明細書等の図3、段落【0025】、【0026】(上記ア(イ)(エ))には、一次コイル252と電流感知抵抗器262の間にMOSFET256を配置することが記載されているが、集電装置を配置することは記載されていないし、図5等(上記ア(ウ)(エ))には、集電装置382に、三相電流を供給する入力電力線350が接続されるとともに、直流入力を各々の直流-直流変換装置384に供給する第1及び第2の直流電力線383、385が接続されることが記載されているものの、請求人が主張する、電力集電装置が、一次コイルと電流感知抵抗器の間に配置される点、及び電流感知抵抗器を使用して、一次コイルを流れる電流を表す電流検出信号を検出する点は記載も示唆もなされていない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(エ)また、請求人は、平成29年2月10日付け意見書の「理由2について」の項において、「図5は、3個の直流-直流変換装置384を開示しており、本願明細書第0024段落は『統合スイッチング電力変換装置280は、変成器251に接続された電力入力線250を備えている。電力入力線250に送り込まれる電力は、電圧変換回路によって、負荷270を駆動する直流電力に変換される。変成器251の一次コイル252は、統合スイッチング電力変換装置280の電力調整および保護を行う固体電力制御装置回路に接続されている。』と説明しております。したがって、当業者であれば、図5の3個の直流-直流変換装置384の各々に図3の統合スイッチング電力変換装置280を組み込むことが可能であることは明らかであり、実質的に記載されている事項であると思料いたします。」とも主張する。
図5には、請求人が主張するとおり、確かに3個の直流-直流変換装置384が記載されている。しかし、当初明細書には、「直流-直流変換装置384は、制御ユニット360によって第1および第2の制御線357、359を通して制御される。各それぞれの直流-直流変換装置384は、また、第2のワイヤリングハーネス(図示されない)に接続する一対の出力コネクタ362を備えている。」(段落【0033】)及び「図6は、図5の統合スイッチング電力変換装置380に使用される直流-直流変換装置384を示す。第1の直流電力線383が、第1のFETスイッチ381のドレイン接続に接続されている。第1のFETスイッチ381のゲート接続は、第1の制御線357に接続されている。第2の直流電力線385が、第2のFETスイッチ387のソース接続に接続されている。第2のFETスイッチ387のゲート接続は、第2の制御線359に接続されている。」(段落【0036】)と記載されているとおり、上記「直流-直流変換装置384」は、制御ユニット360によって第1及び第2の制御線357、359を通して制御されるように構成されたものであり、かつ、図5に示される3個の直流-直流変換装置384の各々に図3に示される統合スイッチング電力変換装置280を組み込むことは記載されていないし、それを示唆する記載も存在しないから、第1及び第2の制御線357、359で制御される図5に示される直流-直流変換装置384に、第1及び第2の制御線357、359により制御されていない図3に示される統合スイッチング電力変換装置280を組み込むことが記載ないし示唆されているということはできない。当初明細書には、「直流-直流変換装置384を使用する1つの有利点は、局所短絡保護と共に冗長性を可能にすることである。」(段落【0033】)と記載されているとおり、図5に示される「直流-直流変換装置384」は、第1及び第2の制御線357、359により、図6に示される第1及び第2のFETスイッチ381、387を制御する(要するに、2系統の電力供給構造を具備する)ことを前提として、その冗長性を確保しているのであるから、そのような制御の態様を前提としていない図3に示す統合スイッチング電力変換装置280を図5に示される直流-直流変換装置384に組み込むことが可能とする合理性はない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(オ)してみると、上記事項a?dを全て満たして構成したものは、「当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項である」ということはできない。

(3)まとめ
以上のとおり、上記事項a?dを全て満たして構成したものは、本願の当初明細書等に記載がなされているということはできず、また、上記事項a?dを全て満たして構成したものが、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということもできない。
よって、上記事項a?dを含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項に規定に違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項1?22に係る発明は、平成28年7月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(補正前の請求項1)」に記載したとおりのものである。

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成28年11月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由であって、以下の理由を含むものである。
「(新規事項)平成28年7月19日手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

請求項1には、力率補正を行う電力補正部に関する構成と第1の電流を制限する変換制御装置に関する構成とが特定されている。
しかし、当初明細書等には、力率補正を行う電力補正部に関する発明としては図5のもののみが記載され、第1の電流を制限する変換制御装置に関する発明としては図3のもののみが記載され、両構成をともに有する発明は記載されていない。
そして、両構成を有するシステムが当初明細書等に記載されているに等しいとも言えない。」

第5 当審の判断
1 平成28年7月19日付けの手続補正について
平成28年7月19日付けの手続補正(以下「手続補正1」という。)は、特許請求の範囲を補正するものであり、請求項1についての補正前後の記載は以下のとおりである。
なお、補正前の請求項1の記載は、当初明細書等の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、また、補正後の請求項1の記載は、上記「第2 1(補正前の請求項1)」に記載したとおりであって補正箇所に下線を付して再掲する。

(補正前の請求項1)
「【請求項1】
航空機用の電力分配システムであって、
電力供給に接続された第1のワイヤリングハーネスと、
前記第1のワイヤリングハーネスを通して前記電力供給に接続された少なくとも1つの
統合スイッチング電力変換装置と、
第2のワイヤリングハーネスを通してそれぞれの統合スイッチング電力変換装置のそれ
ぞれの出力に接続された少なくとも1つの電気負荷と
を備える電力分配システム。」

(補正後の請求項1)
「【請求項1】
航空機用の電力分配システムであって、
電力供給に接続された第1のワイヤリングハーネスと、
前記第1のワイヤリングハーネスを通して前記電力供給に接続され、前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む、少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置
と、
第2のワイヤリングハーネスを通してそれぞれの統合スイッチング電力変換装置の出力に接続された少なくとも1つの電気負荷と、
前記少なくとも1つの電気負荷を流れる第1の電流を表す第1の電流検出信号と、所定の配電保護条件に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つの電気負荷を流れる前記第1の電流を制限する、変換制御装置と、
を備え、
前記変換制御装置は、前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置の一次コイルを流れる第2の電流を表す第2の電流検出信号に少なくとも部分的に基づいて前記第2の電流を制御することにより、前記第1の電流を制限する、
電力分配システム。」

2 補正事項
上記1のとおり、手続補正1は、特許請求の範囲の請求項1について、
(1)「少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置」が「前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む」こと(以下「事項i」という。)、
(2)「前記少なくとも1つの電気負荷を流れる第1の電流を表す第1の電流検出信号と、所定の配電保護条件に少なくとも部分的に基づいて、前記少なくとも1つの電気負荷を流れる前記第1の電流を制限する、変換制御装置」を備えること(以下「事項ii」という。)、及び、
(3)「前記変換制御装置は、前記少なくとも1つの統合スイッチング電力変換装置の一次コイルを流れる第2の電流を表す第2の電流検出信号に少なくとも部分的に基づいて前記第2の電流を制御することにより、前記第1の電流を制限する」こと(以下「事項iii」という。)を追加するものである。
そこで、上記事項i?iiiが、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものといえるか否か、すなわち、「当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである」か否かについて、以下検討する。

3 検討
(1)上記「第2 2(2)イ」で述べたとおり、当初明細書等には、図2に示される本発明の様々な実施形態に従った航空機用電力分配システム100における統合スイッチング電力変換装置180として、図3に示される実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置280を使用したもの、及び、図3の実施形態と異なる図5、6に示される他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380を使用したものが記載されていると認めることができる。
そして、補正後の請求項1に記載された「電力分配システム」は、上記事項iの「前記電力供給のために力率補正を行う電力補正部を含む」ものであるところ、当初明細書等(上記第2 2(2)ア(ウ)(エ))には、「図5は、本発明の他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380を示す。統合スイッチング電力変換装置380は、一組の3本の入力電力線350を含む。これらの入力電力線350は、三相電力を集電装置382に供給する。・・・集電装置382は、この電気システムがどんな川上供給源にも抵抗器のように見えるようにする力率補正を行う。」(段落【0031】)と記載されており、上記「集電装置382」が力率補正を行う電力補正部として機能するものと理解することもできるから、上記「他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」において、上記事項iを備えるものと認めることができる。
しかし、上記「他の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置380」は、上記事項ii及び事項iiiで特定される「変換制御装置」を具備するものではない。
(2)また、当初明細書等(第2 2(2)ア(イ)(エ))には、図3に示す本発明の実施形態に従った統合スイッチング電力変換装置280について、上記事項ii及びiiiに関連し、「演算増幅器264への入力は、電流感知抵抗器262の両端間に接続されている。演算増幅器264は、予め決められた固定利得を与えるように構成されている。次に、演算増幅器264の出力は、変換制御装置272に送られる電流感知信号を供給する。変換制御装置272は、SSPC274に結合されている。SSPC274は、直流供給282によって電力を供給され、さらに変換制御装置272を制御して、変換制御装置272が次に、抵抗器268を通して電力MOSFET256のゲートに加えられる電圧を変えて一次コイル252の電流を調整するようにする。」(段落【0026】)とも記載されているが、上記「第2 2(2)イ、ウ」で述べたとおり、図5及び図6に示される「統合スイッチング電力変換装置380」と、図3に示される「統合スイッチング電力変換装置280」とは、そもそもそれぞれ異なる実施形態であって、それらの構造を組み合わせたものが記載されていると解すべき合理性はない。
(3)してみると、上記事項i?iiiを全て満たして構成したものは、「当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項である」ということはできない。

4 まとめ
以上のとおり、上記事項i?iiiを全て満たして構成したものは、本願の当初明細書等に記載がなされているということはできず、また、上記事項i?iiiを全て満たして構成したものは、当業者によって当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるということもできない。
よって、上記事項i?iiiを含む手続補正1は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項に規定に違反するものである。

第6 むすび
以上のとおり、平成28年7月19日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-12-11 
結審通知日 2018-12-18 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2012-186137(P2012-186137)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (B64D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畔津 圭介  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 出口 昌哉
氏原 康宏
発明の名称 航空機での電力分配  
代理人 荒川 聡志  
代理人 小倉 博  
代理人 田中 拓人  
代理人 黒川 俊久  
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