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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1351998
審判番号 不服2018-8336  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-18 
確定日 2019-05-23 
事件の表示 特願2014- 63102「誘導電動機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月22日出願公開、特開2015-186403〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年3月26日の出願であって、平成29年6月15日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年6月20日)、これに対し、平成29年8月9日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成29年11月7日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年11月14日)、平成30年1月5日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年3月14日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成30年3月20日)、これに対し、平成30年6月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.特許請求の範囲
平成30年1月5日の手続補正で特許請求の範囲は以下のように補正された(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】
ステータスロット内の銅線の被膜を除いた素線の断面積を当該ステータスロットのスロット断面積で除して得られるコイル占積率が38%以上で且つβが0.46?0.56の範囲にあり、
βは、ステータティース幅をWs、ステータスロットピッチをσsとしたとき、β=Ws/σsで与えられることを特徴とする誘導電動機。
【請求項2】
ステータスロット高さをDsとしたとき、Ds/Wsが3.0?5.5の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の誘導電動機。
【請求項3】
ステータティースの平均磁束密度が1.7T以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の誘導電動機。」


3.原査定の拒絶の理由
請求項1に対する原査定の拒絶の理由1の概要は以下のとおりである。
「本願発明は、引用例1(特開平1-129726号公報)に記載された発明及び引用例2(特開平10-243618号公報)、引用例3(特開2011-234502号公報)、引用例4(特開平11-187598号公報)に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」


4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1(特開平1-129726号公報)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「この発明は全般的に積層形回転子及び固定子鉄心を持つ回転電気機械、更に具体的に云えば、固定子の歯及び回転子スロットが所定の規模の機械に対する出力が改善される様な相対的な寸法を持つ積層板構造に関する。」(第3頁左上欄20行-右上欄4行)
b「こういう回転子は普通交流誘導電動機に使われており、積重ねた積層板の整合したスロットの中で回転子の軸方向に延びる導電部材が、回転子の外周と機械の固定子の内周の間の空隙に発生された回転磁界と相互作用する。固定子の空隙に隣接した半径方向内向きに突出する歯の間の固定子スロットに埋設された巻線が、交流電源に接続され、固定子巻線の導体は固定子スロットを或る順序で通って、空隙の磁束が、交流電源の周波数と同期して回転する様にする。」(第3頁左下欄7-16行)
c「第3図では、この発明による180又は210フレーム寸法の固定子積層板34が、第7図の表に示した値の外径OD及び或る内径IDを持つ全体的に円形の中孔開口50を持つ強磁性材料の平坦な環状板で構成される。板34は、中間円周54から半径方向に延びる、円周方向に等間隔の多数(S_(1)=24)のスロット用開口52を持っていて、中孔開口50まで半径方向に延びる多数(S_(1)個)の歯56を形成する。第3図の実施例では、積層板34は固定子積層板であり、この為、中孔開口50が、固定子-回転子空隙の一方の境界を定めると共に、回転子を受入れる中孔を構成する。
スロット用開口52は、対応するスロット用開口52が互いに連通する様に略整合する状態で、同じ様な板34を面を合わせて積重ねた時、固定子14を軸方向に通る1つ又は更に多くの固定子巻線を収容する様に形成されている。」(第5頁右上欄15行-左下欄12行)
d「個々の固定子巻線を分離する為、第4図に示す様に、固定子スロット内に絶縁巻線分離材68を配置することができ、固定子スロットの壁に当てて配置した絶縁被膜70が、個々の導体64が、積層板34を構成している材料に対してアークを発生し又は短絡しない様にする。
この発明の一面では、板34の外径ODに対する内径IDの所定の比に対し、歯56はスロット用開口52の面積に比べて十分幅が広く、固定子巻線が付勢された時のヨーク部分60に於ける磁束密度(BY_(1))に対する歯部分58(第3図)の磁束密度(BT_(1))の比が、固定子巻線の所定のn極動作に対して略最適になる様になっている。」(第5頁右下欄18行-第6頁左上欄10行)
e「 表 1
NEMA180フレーム基準
固定子積層板34
打ち抜き外径 203mm
打ち抜き内径 102mm
スロット52の数(S_(1))24
歯幅T_(1) 7.250mm
スロット幅62(W_(10)) 2.600mm」(第7頁左上欄6-13行)
f「下記の表3は、この発明による積層板を用いた2極交流誘導電動機と従来の対応する電動機に対する、百分率効率及び電磁容積を比較したものである。」(第8頁左上欄17-20行)

上記記載及び図面を参照すると、スロットに巻線が巻回されており、通常コイル占積率とはスロット断面積に占める導体断面積の割合であるから、コイル占積率は所定値を有している。
上記記載及び図面を参照すると、固定子内周は102πmmであり、スロット数が24であるから、ステータスロットピッチは13.352で、歯幅をステータスロットピッチで割った値で与えられるβは0.543となる。

上記記載事項からみて、引用例1には、
「コイル占積率は所定値を有し且つβが0.543であり、
βは、歯幅をステータスロットピッチで割った値で与えられる交流誘導電動機。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

5.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「βが0.543」は、本願発明の「βが0.46?0.56の範囲」に相当する。
引用発明の「βは、歯幅をステータスロットピッチで割った値で与えられる」は、本願発明の「βは、ステータティース幅をWs、ステータスロットピッチをσsとしたとき、β=Ws/σsで与えられる」に相当する。
引用発明の「交流誘導電動機」は、本願発明の「誘導電動機」に相当する。
引用発明の「コイル占積率は所定値を有し」と、本願発明の「ステータスロット内の銅線の被膜を除いた素線の断面積を当該ステータスロットのスロット断面積で除して得られるコイル占積率が38%以上」は、「ステータスロット内の銅線の被膜を除いた素線の断面積を当該ステータスロットのスロット断面積で除して得られるコイル占積率が所定値」で一致する。

したがって、両者は、
「ステータスロット内の銅線の被膜を除いた素線の断面積を当該ステータスロットのスロット断面積で除して得られるコイル占積率が所定値で且つβが0.46?0.56の範囲にあり、
βは、ステータティース幅をWs、ステータスロットピッチをσsとしたとき、β=Ws/σsで与えられる誘導電動機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
コイル占積率の所定値に関し、本願発明は、38%以上であるのに対し、引用発明は、値が特定されていない点。


6.判断
誘導電動機に限らず、回転電機は巻線をスロットに巻回するため何某かの占積率を有している。占積率は高ければ高い程アンペアターンが大きくなるため、高い方が好ましい(必要であれば、引用例2【0009】参照。)。また、通常回転電機は占積率38%以上のものが使用されている[必要があれば、引用例3【0050】、引用例4【0004】、【0006】-【0008】、【0011】、【0052】、特開平8-149725号公報【0008】参照。なお、引用例2は占積率に絶縁物の断面積をスロット断面積から省いて最小限68%以上としているが、スロット絶縁物は通常薄いので、仮に通常の占積率としても、38%未満となることはない(引用例4【0006】参照)。]。
そうであれば、引用発明において、占積率を38%以上とすることは当業者が適宜なし得ることと認められる。

なお、請求人は、審判請求書において、「本願発明は、コイル占積率が38%以上の誘導電動機に限って、効率向上に最適なβの範囲を見出した点が最大の特徴です。つまり、「コイル占積率が38%以上である」構成Aと「βが0.46?0.56の範囲にある」構成Bは、一体不可分であり、両方の構成が同時に存在して初めて本願発明の技術的意義が生じます。」と主張するが、コイル占積率が38%未満の誘導電動機は製造することはできるかもしれないが、上述のように通常使用する誘導電動機のコイル占積率は38%以上であるから、引用発明の誘導電動機もコイル占積率を38%以上とすることは当業者が適宜なし得、しかも請求人は構成Aと構成Bが一体不可分による作用効果を何等主張していないから、請求人の上記主張は採用できない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び引用例2-4記載の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2-4記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



7.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び引用例2-4記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-18 
結審通知日 2019-03-19 
審決日 2019-04-08 
出願番号 特願2014-63102(P2014-63102)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土田 嘉一  
特許庁審判長 柿崎 拓
特許庁審判官 山村 和人
堀川 一郎
発明の名称 誘導電動機  
代理人 小島 誠  
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