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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60C
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1351999
審判番号 不服2018-12747  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-25 
確定日 2019-05-23 
事件の表示 特願2014-226296「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月23日出願公開、特開2016- 88342〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年11月6日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 3月23日付け:拒絶理由通知
平成30年 5月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 7月 6日付け:拒絶査定
平成30年 9月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成30年11月21日付け:前置報告
平成31年 2月28日 :上申書の提出


第2 平成30年9月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月25日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正における特許請求の範囲の補正は、請求項1についての次の補正事項を含む。(下線部は、補正箇所である。)
「トレッド部にブロックを備え、前記ブロックにはタイヤ幅方向に沿って延びてタイヤ周方向の振幅を有するサイプが設けられた空気入りタイヤであって、
前記サイプは、
前記タイヤ幅方向に沿って延びて第1の厚みを有する第1の幅方向部分と、
前記タイヤ幅方向に沿って延びて第2の厚みを有する第2の幅方向部分と
を備え、
前記第1の厚みは前記第2の厚みより大きく、
前記サイプの前記第1の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の中央領域に配置され、
前記サイプの前記第2の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の端部領域に配置され、
前記第1の幅方向部分の一つの端部には、単一の前記第2の幅方向部分がつながっており、
前記第1の幅方向部分は、前記振幅の頂部を構成し、かつ前記タイヤ幅方向に沿って延びる直線状である、空気入りタイヤ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲のうち、請求項1、2の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
トレッド部にブロックを備え、前記ブロックにはタイヤ幅方向に沿って延びてタイヤ周方向の振幅を有するサイプが設けられた空気入りタイヤであって、
前記サイプは、
前記タイヤ幅方向に沿って延びて第1の厚みを有する第1の幅方向部分と、
前記タイヤ幅方向に沿って延びて第2の厚みを有する第2の幅方向部分と
を備え、
前記第1の厚みは前記第2の厚みより大きく、
前記サイプの前記第1の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の中央領域に配置され、
前記サイプの前記第2の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の端部領域に配置され、
前記第1の幅方向部分の一つの端部には、単一の前記第2の幅方向部分がつながっている、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記サイプの前記第1の幅方向部分は前記振幅の頂部を構成している、請求項1に記載の空気入りタイヤ。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項である「振幅の頂部」について、「タイヤ幅方向に沿って延びる直線状」との限定を付加するものであって、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開2010-64699号公報(平成22年3月25日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の記載がある。

(ア)
「【請求項1】
複数のサイプを形成したブロックを有するトレッドパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記サイプは、ブロックの幅方向中心領域に位置するサイプ中心部と、その両端に位置するサイプ端部とからなり、
前記サイプ中心部は、対向する内壁面の長さ方向に隔設配置された複数の凸部と、前記凸部と噛み合う凹部とを有するものであり、
前記サイプ中心部の幅方向最外側に位置する前記凸部の大きさを、前記サイプ中心部の内側に位置する前記凸部の大きさよりも大きくしたことを特徴とする空気入りタイヤ。」

(イ)
「【請求項4】
前記サイプ中心部のサイプ厚みは、前記サイプ端部のサイプ厚みより厚く形成されたものである請求項1?3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。」

(ウ)
「【0017】
図1は本発明に係る空気入りタイヤの一実施形態を示すトレッドパターンの概略展開図である。図2は同実施形態のタイヤトレッド部に配置されたブロックの拡大概略平面図である。図3(a)は、図2におけるI-I矢視断面図、図3(b)は、図2におけるII-II矢視断面図である。
【0018】
図において、1はタイヤトレッド部、2はこのタイヤトレッド部1に設けられたブロックである。ブロック2はタイヤ周方向に延びる主溝3とタイヤ幅方向に延びる横溝4とで区画されて配置されている。なお、図1中、TCはタイヤトレッドセンターライン、SHはショルダー端部を示している。
【0019】
このブロック2には、図示のとおり、タイヤ幅方向に延びるサイプ5がタイヤ周方向に等間隔をおいて配置されている。これらのサイプ5は、直線状、波形状、ジグザグ状、あるいは矩形状であってもよいが、本実施形態では、ブロックの幅方向中心領域に位置する波形状のサイプ中心部5aと、その両端に位置する直線状のサイプ端部5bとからなる。サイプ中心部5aの波線の周期は、いわゆる波形サイプの特性を好適に発現する上で1.5?4mmが好ましく、振幅(両側頂部の高さの和)は1?2mmが好ましい。また、サイプ5の深さは3?10mmが好ましい。」

(エ)




イ 引用文献2に記載された発明の認定

(ア)引用文献2の請求項1には、「複数のサイプを形成したブロックを有するトレッドパターンを備えた空気入りタイヤにおいて、前記サイプは、ブロックの幅方向中心領域に位置するサイプ中心部と、その両端に位置するサイプ端部とからな・・・る空気入りタイヤ」が記載され、請求項4には、「前記サイプ中心部のサイプ厚みは、前記サイプ端部のサイプ厚みより厚く形成されたものである」ことが記載されている。
また、段落【0017】?【0019】の記載及び図2から、タイヤ幅方向に延びるサイプであって、ブロックの幅方向中心領域に波形状のサイプ中心部を有すること、ブロックの幅方向中心領域に位置するサイプ中心部の一つの端部には、単一のサイプ端部がつながっていることが見てとれる。
さらに、段落【0019】には、サイプ中心部の形状として波形状と並び矩形状を採用できることが記載されている。

(イ)してみると、引用文献2には、
「トレッドに複数のサイプを形成したブロックを備え、前記ブロックにはタイヤ幅方向に延びるサイプであって、矩形状のサイプ中心部を有する空気入りタイヤであって、
前記サイプは、
ブロックの幅方向中心領域に位置するサイプ中心部と、
ブロックの幅方向両端に位置するサイプ端部と
を備え、
前記サイプ中心部のサイプ厚みは、前記サイプ端部のサイプ厚みより厚く形成されたものであり、
サイプ中心部の一つの端部には、単一のサイプ端部がつながっている、
空気入りタイヤ。」
(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

(3) 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「トレッド」、「ブロックの幅方向中心領域に位置するサイプ中心部」、「ブロックの幅方向両端に位置するサイプ端部」は、それぞれ本願補正発明の「トレッド部」、サイプの「タイヤ幅方向に沿って延びて第1の厚みを有する第1の幅方向部分」、サイプの「タイヤ幅方向に沿って延びて第2の厚みを有する第2の幅方向部分」に相当する。また、引用発明の「サイプ中心部」はブロックの幅方向中心領域に位置するものであり、「サイプ端部」はブロックの幅方向両端に位置するものであるから、本願補正発明の「前記サイプの前記第1の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の中央領域に配置され」ること、「前記サイプの前記第2の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の端部領域に配置され」ることに相当することも明らかである。

イ また、引用発明のサイプは、ブロックの幅方向中心領域に位置するサイプ中心部と、ブロックの幅方向両端に位置するサイプ端部とを有するものであるが、引用発明におけるサイプ中心部、つまり、引用文献2の図2で示されるところのサイプ5のサイプ中心部5aを「矩形状」のものとした場合、当然に矩形状の部分が連なった、いわゆる矩形波状のものとなるといえる。してみると、サイプの中心部が「矩形状」の場合、サイプは、「タイヤ周方向の振幅」を有するとともに「振幅の頂部を構成し、かつ、タイヤ幅方向に沿って延びる直線状」の部分を有するものとなる。

ウ してみると、本願補正発明と引用発明は、
「トレッド部にブロックを備え、前記ブロックにはタイヤ幅方向に沿って延びてタイヤ周方向の振幅を有するサイプが設けられた空気入りタイヤであって、
前記サイプは、
前記タイヤ幅方向に沿って延びて第1の厚みを有する第1の幅方向部分と、
前記タイヤ幅方向に沿って延びて第2の厚みを有する第2の幅方向部分と
を備え、
前記第1の厚みは前記第2の厚みより大きく、
前記サイプの前記第1の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の中央領域に配置され、
前記サイプの前記第2の幅方向部分は、前記ブロックにおける前記タイヤ幅方向の端部領域に配置され、
前記第1の幅方向部分の一つの端部には、単一の前記第2の幅方向部分がつながっており、
前記第1の幅方向部分は、前記振幅の頂部を構成し、かつ前記タイヤ幅方向に沿って延びる直線状である、空気入りタイヤ。」
である点で一致するものであり、両者の間に相違点はない。

エ なお、仮に、引用発明がサイプ中心部の形状を「矩形状」としたものが「矩形波状」のものとはいえないとしても、段落【0019】に「矩形状」を採用できることが記載されている以上、引用発明を実施するにあたり、サイプ中心部の形状として、サイプ端部とつながるように矩形状の形状を利用したもの、例えば、特開2011-246053号公報の図1や特開2008-143262号公報の図1に例示されるような、「矩形状」を取り入れた周知のサイプ形状のものとすることは、当業者にとって容易になし得たことである。

オ したがって、本件補正発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるか、あるいは、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成30年9月25日にされた手続補正は、上記の通り却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成30年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものである、
この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との理由を含むものである。

引用文献2:特開2010-64699号公報

3 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記第1の幅方向部分は、前記振幅の頂部を構成し、かつ前記タイヤ幅方向に沿って延びる直線状である」との限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用文献2に記載された発明であるか、仮にそうではないとしても、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献2に記載された発明であるか、仮にそうではないとしても、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮にそうではないとしても、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-03-22 
結審通知日 2019-03-26 
審決日 2019-04-09 
出願番号 特願2014-226296(P2014-226296)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60C)
P 1 8・ 121- Z (B60C)
P 1 8・ 113- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子河島 拓未  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 渕野 留香
植前 充司
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 前堀 義之  
代理人 山尾 憲人  

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