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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23K |
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管理番号 | 1352092 |
審判番号 | 不服2018-8440 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-06-20 |
確定日 | 2019-06-18 |
事件の表示 | 特願2014-31122「導体の接合方法および導体の接合装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年8月27日出願公開,特開2015-155106,請求項の数(5)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は,平成26年2月20日の出願であって,平成29年9月13日付けで拒絶理由通知がされ,同年11月20日に手続補正がされ,平成30年3月13日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ,これに対し,同年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願請求項1及び5に係る発明は,以下の引用文献1に基づいて,また,本願請求項2ないし4に係る発明は,以下の引用文献1及び2に基づいて,それぞれ,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2006-502688号公報 2.特開2013-165615号公報 第3 本願発明 本願請求項1ないし5に係る発明(以下,各請求項に係る発明を「本願発明1」などという。)は,平成30年6月20日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,そのうちの本願発明1及び5の記載は以下のとおりである(なお,下線は,理解を容易にするために当審で付したものである。以下同じ。)。 「 【請求項1】 コアから突出した径方向に隣接する導体の先端同士を接合する導体の接合方法であって, 径方向に延伸する軸を中心に回転可能に設けたくさび部と,前記導体をその周方向に押圧する押圧部と,径方向最内径の前記導体に当接する内径押し部と,径方向最外径の前記導体を径方向内側に押圧する外径押し部と,を設け, 前記内径押し部と前記外径押し部により,前記内径押し部と前記外径押し部との間で径方向に並んだ前記導体の相対位置を規定する径方向位置規定工程と, 前記押圧部により前記径方向に隣接する前記導体を周方向に規制する周方向規制工程と, 前記押圧部によって前記径方向に隣接する前記導体の周方向位置を規制した状態で,前記くさび部を回転させ,前記導体を径方向側から押圧して前記導体を位置決めする位置決め工程と, 前記位置決め工程によって位置決めされた前記導体の先端同士を接合する接合工程と, を含むことを特徴とする導体の接合方法。」 「 【請求項5】 コアから突出した隣接する導体の先端同士を接合する導体の接合装置であって, 径方向最内径の前記導体に当接する内径押し部と, 径方向最外径の前記導体を径方向内側に押圧する外径押し部と,を有し前記内径押し部と外径押し部との間で,径方向に並んだ前記導体の相対位置を規定する径方向押し部と, 前記導体の先端同士から構成される前記導体を位置決めする位置決め部と, 前記導体の先端同士を接合する接合部と,を備え, 前記位置決め部は, 前記導体を周方向に押圧する押圧部と, 前記押圧部によって前記導体の周方向位置が規制された状態で,径方向に延伸する軸を中心に回転して,前記導体を径方向に押圧するくさび部と, を有することを特徴とする導体の接合装置。」 また,本願発明2ないし4は,本願発明1の構成全てを引用する従属請求項に係る発明である。 第4 引用文献,引用発明等 1.引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,複数の導電性セグメントによって形成されているステータの巻線のような,回転電機の巻線の,一対の導電性セグメントの端部の溶接箇所の配置方法に関するものであり,該導電性セグメントの両端は,溶接によって直列につながれており,支持体の中で支えられており,それは,溶接対象の導電性のセグメントの複数の対の端部が,支持体の軸心に沿った側面に全体的にリング状のヘアピース体を形成するように成されており,これにおいて,溶接対象の導電性の対のセグメントの各端部は,支持体のラジアル方向に並置されており,また,円周上において互いにずれてラジアル方向の列の形で支持体の外側に設置されており,前記溶接箇所の配置方法は,溶接の際に前記各端部を締め付ける治具を含んでいる。」 「【0031】 図1は,回転電機のステータの巻線を示すものであり,その巻線は,ヘアピンの形をした導電性セグメント5によって形成されている。ヘアピンは,全体としてU字形であり,それゆえに,この場合,Uの底の部分を構成する,捩られた頭部と,その自由端が同様に捩られている二つの分枝とを有する。符号1,2および3は,それぞれ,ステータ本体と,ヘアピン状の導電性セグメントの頭部から形成される第一のヘアピース体と,対でまとめられているヘアピンの分枝の自由端から形成される第二のヘアピース体とを指しており,導電性セグメントのそれぞれの対の自由端は,溶接で直列につながれなければならない。この第二のヘアピース体は,環の形をしている。」 「【0047】 ヘアピンの分枝は,ステータ本体のアキシャル方向に沿ったもう一端に,冠状の第二のヘアピース体3突き出して形成するために,スロット7により,ステータ本体1を通り抜ける。」 「【0054】 締め付け機構13は,ロッドの形を有する。 【0055】 一つの実施態様においては,溶接対象の一対の導電性セグメントを締め付けるために,ロッドは,少なくとも二つの歯を有する鍵の形を有するように形成されている。 【0056】 図1?3の実施態様においては,ロッドは,三つの歯15,16,17を有する鍵のような形を有するように形成された,導電体の対を締め付ける端部を有しており,該三つの歯は,アキシャル方向に規則的に間隔を置いて並べられている。隣接する二つの歯15,16および16,17の間の隔たりは,図3で明らかにみられるように,二対の導電性セグメントの二つの端部9a,9bまたは9c,9dのラジアル状の方向の幅に対応しており,その一方で,中央の歯16の幅は,溶接対象の二対の端部の間の間隔25に対応している。この三つの歯のおかげで,溶接対象の導電性セグメントの自由端の列Rに沿ってラジアル状に並べられた二対の間の距離を確保することができる。」 「【0058】 変形例では,中立位置は,鍵を溝Sに挿入するために該鍵をステータ本体1に対してアキシャル方向に移動することによって得ることも可能である。位置決め機構を構成するロッドは,溝Sの内部のそれぞれの最終位置を占めているときに,90°の角度で,それぞれのロッドの軸心の周りに回転させることができる。図2と図3は,ロッドの回転の前と後のそれぞれの位置にある二つの締め付け機構13を示している。これらの図面から分かるように,図3の回転位置では,それぞれの対の二対の端部9a,9bおよび9c,9dは,一方で,歯17および16の間に,他方では,歯16および15の間に捕らえられ,歯16は溶接対象の二対の端部の間の間隔25に係合している。したがって,歯は溶接対象の端部9a?9dを維持し,ラジアル線状でブロックする手段を構成する。 【0059】 対になった導電体の,歯15,16,17のおかげによるラジアル方向でのブロックに加え,締め付け機構13は,円周上でのブロックも可能にする。そのため,本発明の一つの特徴によると,ロッド13の,二つの隣接する歯の間の部分19は,カムの形をした楕円形の横断面を有しており,該横断面は,図5にみられるように有利には楕円形である。これらの部分19においてロッドは,歯15から17の方向において,厚みd1を有しており,該厚みは,導電性セグメント9aから9dの端部が隣接している二つの列Rの,円周上の方向の隔たりに対応しているものであり,それはつまり,これらの二つの列の間に挟まれた溝の幅Sに対応しているということである。更に詳細には,厚みd1は,図3に示されている溶接対象の端部の対がラジアル方向にブロックされる位置において,締め付け機構13が,それらの二つの列Rに向かい合うように,側面21に押しつけられるように接触するように選択されるものであり,該二つの列の間で係合しており,また,同様に溶接対象の対になった導電体の円周上でのブロックを確実に行う。」 「図1 」 「図2 」 「図3 」 「図5 」 2.引用文献1に記載された技術的事項 上記1.に示す記載事項からみて,引用文献1には,次の技術的事項が記載されているということができる。 ア.導電性セグメント5は,U字状のヘアピンの形をしており,二つの分岐した自由端を有すること(【0031】)。 イ.導電性セグメント5のヘアピンの分岐した自由端が,ステータ本体1を通り抜けていること(【0047】)。 ウ.導電性セグメント5のそれぞれの対の自由端を溶接でつなぐこと(【0031】)。 エ.締め付け機構13が,ロッドの形を有しており(【0054】),ロッドは三つの歯15,16,17を有する鍵のような形を有し,ロッド13の歯15,16,及び16,17の間隔は,導電性セグメント5の二つの端部のラジアル状の方向の幅に対応するように設けられている(【0056】)ことから,ロッド13は,ラジアル方向に延伸しているといえること。 オ.ロッド13の中央の歯16の幅は,溶接対象の二対の端部の間の間隔25に対応しており,当該間隔25を確保することができる(【0056】)こと。 カ.ロッド13が,ロッドの軸心の周りに回転させることができること(【0058】)。 キ.ロッド13の歯15,16,17は,対になった導電体のラジアル方向でのブロックを可能にすること(【0059】)。 ク.ロッド13の二つの隣接する歯の間の部分19は,楕円形の横断面を有しており,対になった導電体の円周上でのブロックを可能にすること(【0059】)。 ケ.溶接対象の対のセグメントの各端部を締め付けて溶接すること(【0001】)。 3.引用発明 上記2.に示す引用文献1に記載された技術的事項をまとめると,引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。 「ステータ本体1を通り抜けた対の導電性セグメント5の分岐した各自由端を溶接する導電性セグメント5の溶接方法であって, ラジアル方向に延伸しているロッド13に回転可能に設けた歯15,16,17と,導電性セグメント5を円周上でブロックする楕円形の横断面を有する部分19と,を設け, ロッド13の部分19により導電性セグメント5を円周上でブロックすることと, ロッド13の部分19によって導電性セグメント5を円周上でブロックした状態で,歯15,16,17を回転させ,導電性セグメント5をラジアル方向でブロックして締め付けることと, 締め付けられた溶接対象の対のセグメントの各端部を溶接することを含む導電性セグメント5の溶接方法。」(以下「引用発明」という。) 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,引用発明の「ステータ本体1」が本願発明1の「コア」に相当し,以下同様に,「ステータ本体1を通り抜けた」ことが「コアから突出した」ことに,「対の導電性セグメント5」が「径方向に隣接する導体」に,「導電性セグメント5の分岐した各自由端」が「導体の先端同士」に,「溶接」が「接合」に,「導電性セグメント5の溶接方法」が「導体の接合方法」に,「ラジアル方向に延伸」することが「径方向に延伸」することに,「ロッド13」が「軸」に,「ロッド13に回転可能に設」けることが「軸を中心に回転可能に設」けることに,「導電性セグメント5を円周上でブロックする」ことが「前記導体をその周方向に押圧する」ことに,「楕円形の横断面を有する部分19」が「押圧部」に,「ロッド13の部分19により導電性セグメント5を円周上でブロックすること」が「前記押圧部により前記径方向に隣接する前記導体を周方向に規制する周方向規制工程」に,「ロッド13の部分19によって導電性セグメント5を円周上でブロックした状態」が「前記押圧部によって前記径方向に隣接する前記導体の周方向位置を規制した状態」に,「導電性セグメント5をラジアル方向でブロックして締め付けること」が「前記導体を径方向側から押圧して前記導体を位置決めする位置決め工程」に,「締め付けられた溶接対象の対のセグメントの各端部を溶接すること」が「前記位置決め工程によって位置決めされた前記導体の先端同士を接合する接合工程」に相当する。 また,引用発明の「歯15,16,17」と本願発明1の「くさび部」は,「挿入部」という点で一致する。 したがって,本願発明1と引用発明とは,次の点で一致及び相違する。 <一致点> 「コアから突出した径方向に隣接する導体の先端同士を接合する導体の接合方法であって, 径方向に延伸する軸を中心に回転可能に設けた挿入部と,前記導体をその周方向に押圧する押圧部と,を設け, 前記押圧部により前記径方向に隣接する前記導体を周方向に規制する周方向規制工程と, 前記押圧部によって前記径方向に隣接する前記導体の周方向位置を規制した状態で,前記挿入部を回転させ,前記導体を径方向側から押圧して前記導体を位置決めする位置決め工程と, 前記位置決め工程によって位置決めされた前記導体の先端同士を接合する接合工程と, を含む導体の接合方法。」 <相違点1> 本願発明1は,「径方向最内径の前記導体に当接する内径押し部と,径方向最外径の前記導体を径方向内側に押圧する外径押し部」を設けており,「前記内径押し部と前記外径押し部により,前記内径押し部と前記外径押し部との間で径方向に並んだ前記導体の相対位置を規定する径方向位置規定工程」を含むのに対して,引用発明は,内径押し部や外径押し部を設けておらず,そのため,径方向位置規定工程を含まない点。 <相違点2> 挿入部が,本願発明1は「くさび部」であるのに対して,引用発明は「歯15,16,17」である点。 (2)相違点についての判断 上記相違点1について検討すると,引用文献2には,相違点1に係る内径押し部及び外径押し部を設けることや,径方向位置規定工程について,記載も示唆もないから,相違点1に係る構成は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 (3)小括 したがって,相違点2について検討するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 2.本願発明2ないし4について 本願発明2ないし4は,本願発明1の構成全てを引用する従属請求項に係る発明であるから,本願発明1と同じ理由により,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 3.本願発明5について 本願発明1が導体の接合方法の発明であるのに対して,本願発明5は導体の接合装置の発明であるところ,本願発明5は,本願発明1と同じく,「径方向最内径の前記導体に当接する内径押し部」及び「径方向最外径の前記導体を径方向内側に押圧する外径押し部」を有している。 そして,当該内径押し部及び外径押し部に係る構成は,上記1.(2)と同じ理由により,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。 したがって,本願発明5は,引用発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明することができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 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審決日 | 2019-06-06 |
出願番号 | 特願2014-31122(P2014-31122) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B23K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 奥隅 隆 |
特許庁審判長 |
平岩 正一 |
特許庁審判官 |
齋藤 健児 刈間 宏信 |
発明の名称 | 導体の接合方法および導体の接合装置 |
代理人 | 正林 真之 |
代理人 | 星野 寛明 |
代理人 | 林 一好 |