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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C04B
管理番号 1352149
審判番号 不服2018-12046  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-07 
確定日 2019-06-25 
事件の表示 特願2015- 27841「スラグ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月22日出願公開、特開2016-150858、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月16日の出願であって、平成30年4月17日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月6日付けで手続補正がされ、同年6月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月7日付けで拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の理由
原査定(平成30年6月29日付け拒絶査定)の理由は、「本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、引用文献1に記載された発明(および周知技術)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

引用文献等一覧
1.国際公開第2015/012354号
2.特開2001-40406号公報(周知文献)

第3 本願発明
本願発明は、平成30年6月6日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
製鋼工程で生成された溶融スラグを溶融状態のままスラグ保持炉に投入し、前記スラグ保持炉から、溶鉄層と前記溶鉄層上に形成された溶融スラグ層とを収容する電気炉内に、間欠的に前記溶融スラグを注入し、前記電気炉にて前記溶融スラグを連続的に還元して、前記溶融スラグ中の有価物を前記溶鉄層中に回収するスラグ処理方法であって、
前記電気炉で発生した排ガスを前記スラグ保持炉内に導気するとともに、前記スラグ保持炉内に酸素含有ガスを所定の流量で供給することによって前記排ガス中の可燃性成分を燃焼させるに際し、
前記溶融スラグの注入直後の前記酸素含有ガスの流量を、前記溶融スラグの注入量ΔWと、注入前に前記溶融スラグ層に含まれる前記溶融スラグの量Swおよび注入前に前記溶融スラグ層に含まれる前記溶融スラグの温度Tと、操業時の実績値に基づく定数αとβとに基づいて下記式で算出した流量に設定した後、
前記酸素含有ガスの流量を、前記スラグ保持炉のガス排出口付近における前記排ガス中のCO濃度および酸素濃度に基づいてフィードバック制御する、スラグ処理方法。
【数1】


ここで、
FO_(2):前記溶融スラグの注入直後の前記酸素含有ガスの流量
FO_(2)’:注入前の前記酸素含有ガスの流量
ΔW:前記溶融スラグの注入量
Sw:注入前に前記溶融スラグ層に含まれる前記溶融スラグの量
T:注入前に前記溶融スラグ層に含まれる前記溶融スラグの温度
α,β:定数」

第4 引用文献について
第4-1 引用文献1(国際公開第2015/012354号)について
引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]
製鋼工程で生成された溶融スラグをスラグ保持炉に投入し、前記スラグ保持炉から、溶鉄層と前記溶鉄層上に形成された溶融スラグ層とを収容する電気炉内に、前記溶融スラグを注入し、前記電気炉にて前記溶融スラグを連続的に還元して、前記溶融スラグ中の有価物を前記溶鉄層中に回収するスラグ処理プロセスにおける排ガス処理方法であって、
前記電気炉で発生した排ガスを前記スラグ保持炉内に導気するとともに、前記スラグ保持炉内に酸素含有ガスを供給することによって前記排ガス中の可燃性成分を燃焼させ;
前記燃焼後の排ガスを前記スラグ保持炉から排気管を経由して吸引装置まで導気し;
前記排気管の途中に設けられた開口部から前記排気管内に外気を導入することによって前記電気炉の内圧を調節し;
前記開口部に設けられる開口面積変更手段を用いて、前記電気炉の内圧の変動に応じて前記開口部の面積を変更する;
ことを特徴とする、排ガス処理方法。」

(1-2)「[0070]以上のように、傾動装置40を用いてスラグ保持炉2を傾動させることで、溶融スラグ4を電気炉1に間欠的に注入したり、その注入量を調整したりすることが可能になる。電気炉1への溶融スラグ4の注入時には、注入された溶融スラグ4が電気炉1内の溶鉄と急激に反応してオーバーフローが発生しないように、傾動装置40を用いて溶融スラグ4の注入量を適切に調整(すなわち、スラグ保持炉2の傾動角度を調整)しながら、溶融スラグ4を間欠的に注入することが好ましい。溶融スラグ4の注入時に、溶融スラグ4の注入速度が速すぎると、電気炉1内でスラグフォーミングが発生し、その結果、オーバーフローが発生する場合がある。この場合は、傾動装置40によりスラグ保持炉2の傾動角度を小さくすることで、溶融スラグ4の注入を一時停止するか、または、溶融スラグ4の注入量を低下させることで、電気炉1内での溶融スラグ4と溶鉄との反応を抑制することが好ましい。」

(1-3)[0076]本実施形態では、排ガスg1中のCOガスを完全燃焼させるために、スラグ保持炉2のガス排出口25に近い排気管55に分析計52が設置されている。この分析計52は、濃度指示制御器53に接続されている。分析計52は、排気管55内の排ガスg2の成分を分析して、CO濃度とO_(2)濃度とを算出する。濃度指示制御器53は、分析計52によって測定されたCO濃度およびO_(2)濃度に応じて、酸素ガス供給ノズル51への酸素ガスの供給量を制御する。より具体的には、濃度指示制御器53は、排気管55内でのCO濃度がほぼ0%となり、且つO_(2)濃度が0%よりも大きく可能な限り0%に近い値になるように、酸素ガス供給ノズル51への酸素ガスの供給量を弁54などを用いて制御する。
[0077]例えば、分析計52によって測定されたCO濃度が0%よりも大きい場合、濃度指示制御器53は酸素ガス供給ノズル51への酸素ガスの供給量を増加させることにより、COガスをスラグ保持炉2内で完全燃焼させ、COガスが排気管55内に流入することを防ぐ。また、分析計52によって測定されたO_(2)濃度が0%を大きく超えて所定の許容範囲を上回っている場合、濃度指示制御器53は酸素ガス供給ノズル51への酸素ガスの供給量を減少させることにより、過剰な酸素ガスの供給によってスラグ保持炉2が不必要に冷却されるのを防止する。例えば、O_(2)濃度の許容範囲は5%以下に設定することが好ましい。
[0078]なお、スラグ保持炉2から電気炉1への溶融スラグ4の注入が開始される場合、または、注入される溶融スラグ4の量が増加する場合には、濃度指示制御器53は、先行して酸素ガス供給ノズル51への酸素ガスの供給量を増加させ、電気炉1で発生するCOガスの増加に備えてもよい。溶融スラグ4の注入量に関する情報は、例えばスラグ保持炉2の傾動角の制御によって溶融スラグ4の注入量を制御する制御手段(図示せず)から濃度指示制御器53に提供されてもよい。また、濃度指示制御器53に代えて、分析計52の出力値及び溶融スラグ4の注入状況を監視しているオペレータが、酸素ガス供給ノズル51を手動操作することによって、上記のような酸素ガスの供給量の制御を実行してもよい。」

上記(1-1)ないし(1-3)より、引用文献1には、スラグ処理プロセスについて、「製鋼工程で生成された溶融スラグをスラグ保持炉に投入し、スラグ保持炉から、溶鉄層と溶鉄層上に形成された溶融スラグ層とを収容する電気炉内に、間欠的に溶融スラグを注入し、電気炉にて溶融スラグを連続的に還元して、溶融スラグ中の有価物を溶鉄層中に回収するスラグ処理プロセスであって、電気炉で発生した排ガスをスラグ保持炉内に導気するとともに、スラグ保持炉内に酸素含有ガスを供給することによって排ガス中の可燃性成分を燃焼させるとき、スラグ保持炉のガス排出口に近い排気管内の排ガスの成分を分析して算出したCO濃度およびO_(2)濃度に応じて、酸素ガス供給ノズルへの酸素ガスの供給量を制御し、スラグ保持炉から電気炉への溶融スラグの注入が開始される場合、または、注入される溶融スラグの量が増加する場合には、先行して酸素ガス供給ノズルへの酸素ガスの供給量を増加させ、電気炉で発生するCOガスの増加に備えてもよい、スラグ処理プロセス。」(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。

第4-2 引用文献2(特開2001-40406号公報)(周知文献)について
引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2-1)「【請求項1】 高炉出銑口より出銑する溶銑を受ける出銑大樋内に存在する溶銑に接する電極と、該溶銑の上部内に存在するスラグに接する電極を電流調整機構を介して接続し、該電極、溶銑存在部、およびスラグ存在部とからなる電気回路を形成し、前記電流調整機構により両電極間を流れる電流量を調整することにより、出銑大樋において溶銑の脱硫または脱珪を行うことを特徴とする出銑大樋における溶銑の脱硫・脱珪方法。」

(2-2)「【0009】炉床の酸素分圧がFe-FeO平衡で規定される場合、P_(O2)は下記(3)式で表される。
P_(O2)=(aFeO/aFe)^(2)・exp(-57269/T+11.75)
ここで、aFeO :スラグ中FeOの活量〔-〕
aFe :溶銑中Feの活量〔-〕
aFeOはスラグ中のFeO含有量に比例するため、P_(O2)はスラグ中FeOの2乗に比例する。結局、溶銑中の平衡Sはスラグ中のFeO含有量に比例して増加する。したがって、SとSiの両者を共に低減させることは非常に難しいことである。」

上記(2-1)および(2-2)より、引用文献2には、
「高炉出銑口より出銑する溶銑を受ける出銑大樋において溶銑の脱硫または脱珪を行う脱硫・脱珪方法において、炉床の酸素分圧がFe-FeO平衡で規定される場合、P_(O2)は、P_(O2)=(aFeO/aFe)^(2)・exp(-57269/T+11.75)(aFeO:スラグ中FeOの活量〔-〕、aFe:溶銑中Feの活量〔-〕)で表される」ことが記載されているということができる。

第5 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
○引用発明の「スラグ処理プロセス」は、本願発明の「スラグ処理方法」に相当する。

○引用発明の「製鋼工程で生成された溶融スラグをスラグ保持炉に投入し、スラグ保持炉から、溶鉄層と溶鉄層上に形成された溶融スラグ層とを収容する電気炉内に、間欠的に溶融スラグを注入し、電気炉にて溶融スラグを連続的に還元して、溶融スラグ中の有価物を溶鉄層中に回収するスラグ処理プロセスにおける排ガス処理方法であって、電気炉で発生した排ガスをスラグ保持炉内に導気するとともに、スラグ保持炉内に酸素含有ガスを供給することによって排ガス中の可燃性成分を燃焼させるとき」は、本願発明の「製鋼工程で生成された溶融スラグを溶融状態のままスラグ保持炉に投入し、スラグ保持炉から、溶鉄層と溶鉄層上に形成された溶融スラグ層とを収容する電気炉内に、間欠的に溶融スラグを注入し、電気炉にて溶融スラグを連続的に還元して、溶融スラグ中の有価物を溶鉄層中に回収するスラグ処理方法であって、電気炉で発生した排ガスをスラグ保持炉内に導気するとともに、スラグ保持炉内に酸素含有ガスを所定の流量で供給することによって排ガス中の可燃性成分を燃焼させるに際し」に相当する。

○引用発明の「スラグ保持炉のガス排出口に近い排気管内の排ガスの成分を分析して算出したCO濃度およびO_(2)濃度に応じて、酸素ガス供給ノズルへの酸素ガスの供給量を制御」するは、本願発明の「酸素含有ガスの流量を、スラグ保持炉のガス排出口付近における排ガス中のCO濃度および酸素濃度に基づいてフィードバック制御する」に相当する。

上記より、本願発明と引用発明とは、「製鋼工程で生成された溶融スラグを溶融状態のままスラグ保持炉に投入し、スラグ保持炉から、溶鉄層と溶鉄層上に形成された溶融スラグ層とを収容する電気炉内に、間欠的に溶融スラグを注入し、電気炉にて溶融スラグを連続的に還元して、溶融スラグ中の有価物を溶鉄層中に回収するスラグ処理方法であって、電気炉で発生した排ガスをスラグ保持炉内に導気するとともに、スラグ保持炉内に酸素含有ガスを所定の流量で供給することによって排ガス中の可燃性成分を燃焼させるに際し、酸素含有ガスの流量を、スラグ保持炉のガス排出口付近における排ガス中のCO濃度および酸素濃度に基づいてフィードバック制御する、スラグ処理方法」という点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明は、「溶融スラグの注入直後の酸素含有ガスの流量」を設定するのに対して、引用発明は、「スラグ保持炉から電気炉への溶融スラグの注入が開始される場合、または、注入される溶融スラグの量が増加する場合には、先行して酸素ガス供給ノズルへの酸素ガスの供給量を増加させ、電気炉で発生するCOガスの増加に備えてもよい」というように、溶融スラグの注入に先行して酸素ガスの供給量を設定する点。

<相違点2>
酸素含有ガスの流量について、本願発明は、「溶融スラグの注入量ΔWと、注入前に溶融スラグ層に含まれる溶融スラグの量Swおよび注入前に溶融スラグ層に含まれる溶融スラグの温度Tと、操業時の実績値に基づく定数αとβとに基づいて下記式」の「【数1】・・省略・・」「FO_(2):前記溶融スラグの注入直後の前記酸素含有ガスの流量」「FO_(2)’:注入前の前記酸素含有ガスの流量」「ΔW:前記溶融スラグの注入量」「Sw:注入前に前記溶融スラグ層に含まれる前記溶融スラグの量」「T:注入前に前記溶融スラグ層に含まれる前記溶融スラグの温度」「α,β:定数」「で算出した流量に設定」するのに対して、引用発明は、どのように特定するのか不明である点。

上記相違点1、2をまとめて検討する。
引用文献2(周知文献)には、上記「第4-2」で示した事項が記載されており、これからして、炉床の酸素分圧がスラグ中のFe-FeO平衡で規定されることは把握できるものの、これは、製銑工程における溶銑処理に関する技術事項であって、製鋼工程におけるスラグ保持炉への酸素供給量に関する技術事項ではないことからして、上記相違点1、2に係る本願発明の特定事項については記載も示唆もないというべきである。
また、本願発明は、「電気炉内に、間欠的に前記溶融スラグを注入し」「以上説明したように本発明によれば、溶融スラグの注入直後のスラグ保持炉への酸素供給量を適切に決定することができる。」(【発明の効果】【0029】)との記載からして、電気炉への溶融スラグの注入直後のスラグ保持炉への酸素供給量を適切に決定できることを、発明の効果にするものであるところ、引用発明は、電気炉への溶融スラグの注入に先行して酸素ガス供給ノズルへの酸素ガスの供給量を単に増加させて、電気炉で発生するCOガスの増加に備えるものであって、電気炉への溶融スラグの注入直後のスラグ保持炉への酸素ガスの供給量に予め余裕をもたせることを示唆するものに過ぎず、該供給量を適切に決定するものではないことからして、上記効果を奏するものであるとはいえず、また、引用文献2(周知文献)に記載の事項(上記「第4-2」で示した事項)は、上記で示したように、スラグ保持炉への酸素供給量に関する技術事項ではないことからして、上記効果を奏し得るものであるとはいえないので、上記効果は、引用発明および引用文献2(周知文献)に記載の事項から予期し得るものではない。
上記より、上記相違点1、2に係る本願発明の特定事項を、引用発明および引用文献2(周知文献)に記載の事項から導き出すことはできない。
したがって、本願発明は、「引用文献1に記載された発明および引用文献2(周知文献)に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである」とはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明(および周知技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないので、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-07 
出願番号 特願2015-27841(P2015-27841)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 武西垣 歩美  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 豊永 茂弘
小川 進
発明の名称 スラグ処理方法  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  
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