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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1352160
審判番号 不服2017-16927  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-15 
確定日 2019-06-25 
事件の表示 特願2016-220423号「脱酸トマト汁におけるリコピン増量方法、脱酸トマト汁及びその製造方法、並びに、低酸度トマト含有飲料におけるリコピン増量方法及び低酸度トマト含有飲料の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月17日出願公開、特開2018-74975号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件拒絶査定不服審判に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成28年11月11日の特許出願であって、平成29年7月10日付けの拒絶理由通知書に対し、平成29年9月6日に意見書及び手続補正書が提出された後、平成29年10月18日付けで拒絶査定がされ(発送日:平成29年10月25日)、これに対し、平成29年11月15日に本件拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出された。

第2 原査定(平成29年10月18日付け拒絶査定)の概要
本願請求項1-6に係る発明は、以下の引用文献1-3に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2012-223140号公報(拒絶査定時の引用文献4、以下「引用例1」という。)
2.特開2012-223142号公報(拒絶査定時の引用文献1、以下「引用例2」という。)
3.特開2012-223144号公報(拒絶査定時の引用文献2、以下「引用例3」という。)

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成29年11月15日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
【請求項1】
脱酸トマト汁におけるリコピン増量方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程であり、
(1)調合
ここで調合されるのは、少なくとも、トマトペースト又はトマトピューレ?であり、それによって得られるのは、調合液であり、
前記調合液の透過率は、2.26%以上18.3%以下であり、
前記透過率の測定時における前記調合液の糖度は、9.0であり、
かつ、
(2)脱酸
ここで脱酸されるのは、前記調合液であり、それによって得られるのは、脱酸トマト汁であり、
前記脱酸トマト汁が含有するのは、リコピンであり、その含有量は、0.71mg%以上であり、
かつ、
(3)測定
ここで測定されるのは、前記調合液の透過率であり、その実施時期は、前記脱酸の前である。
【請求項2】
脱酸トマト汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程であり、
(1)調合
ここで得られるのは、調合液であり、
前記調合液に含まれるのは、少なくとも、トマトペースト又はトマトピューレ?であり、
前記調合液の透過率は、2.26%以上18.3%以下であり、
前記透過率の測定時における前記調合液の糖度は、9.0であり、
かつ、
(2)脱酸
ここで脱酸されるのは、前記調合液であり、それによって得られるのは、脱酸トマト汁である。
【請求項3】
請求項2の製造方法であって、
前記トマトペースト又は前記トマトピューレ?の一部又は全部は、ホットブレイクされている。
【請求項4】
請求項2又は3の製造方法であって、
前記脱酸トマト汁が含有するのは、リコピンであり、その含有量は、0.71mg%以上である。
【請求項5】
低酸度トマト含有飲料におけるリコピン増量方法であって、それを構成するのは、少なくとも、
配合であり、ここで配合されるのは、少なくとも、脱酸トマト汁であり、
前記脱酸トマト汁は、調合液を脱酸したものであり、
前記調合液が含有するのは、少なくとも、トマトペースト又はトマトピューレ?であり、
前記調合液の透過率は、2.26%以上18.3%以下であり、
前記透過率の測定時における前記調合液の糖度は、9.0であり、
前記脱酸トマト汁が含有するのは、リコピンであり、その含有量は、0.71mg%以上である。
【請求項6】
低酸度トマト含有飲料の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、
配合であり、ここで配合されるのは、少なくとも、脱酸トマト汁であり、
前記脱酸トマト汁は、調合液を脱酸したものであり、
前記調合液が含有するのは、少なくとも、トマトペースト又はトマトピューレ?であり、
前記調合液の透過率は、2.26%以上18.3%以下であり、
前記透過率の測定時における前記調合液の糖度は、9.0であり、
前記脱酸トマト汁が含有するのは、リコピンであり、その含有量は、0.71mg%以上である。

第4 引用文献の記載事項
1. 引用例1(拒絶査定時の引用文献4)
(1) 原査定の拒絶の理由に引用文献として示された、上記引用例1には、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、トマト含有飲料及びその製造方法、並びに、トマト含有飲料の酸味抑制方法に関する。
・・・・・・・・・・・・・・
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、濃厚な味わいでトマト本来の甘みが際立っており、主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても飲み易さが高められた、新規なトマト含有飲料及びその製造方法、並びに、トマト含有飲料の酸味抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定のトマト果実由来物を、特定割合で用いることにより、意外にも、トマト自身の甘みによってトマトの酸味が隠蔽され、これにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下(1)?(23)を提供する。
(1)少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)とが配合されてなり、
これらの重量割合(A)/(B)が1.5?4.5であることを特徴とする、
トマト含有飲料。
・・・・・・・・・・・・・・
【0033】
本発明によれば、比較的に粘度上昇を抑制しつつ糖度(Brix)を高めることができ、これにより、濃厚な味わいとなるのみならず、謂わばトマト自身の甘みによってトマトの酸味が隠蔽される。そのため、トマト本来の甘みが際立ち、主原料となるトマト以外の野菜汁や果汁を配合しなくても飲み易さが高められた、新規なトマト含有飲料及びその製造方法が実現される。
【0034】
また、本発明の好ましい態様によれば、重曹の配合により、トマトのエグ味(青臭さ、生臭さ等)が緩和されることに加えて、適度なpHに調整されて酸味が効果的に抑制されるため、トマト本来の風味を過度に損なうことなくトマト本来の甘みがより一層際立った、トマト含有飲料及びその製造方法が実現される。
・・・・・・・・・・・・・・
【0039】
ここで、本明細書において、トマト果実由来物とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これらを濃縮したもの(濃縮トマト)を意味し(これらを希釈還元したものが含まれる)、JAS規格で指定されたトマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を包含する概念である。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。かかるトマト果実由来物の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状(擬固体状)、半固体状、固体状のいずれであってもよい。なお、主原料とは、トマト含有飲料の総量に対して50重量%以上を占めるものをいう。
【0040】
また、本明細書において、トマトペースト(A)とは、上記の濃縮トマトのうち、無塩可溶性固形分が24%以上のものを意味する。トマトペースト(A)は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、飲料製造時の扱いやすさの観点から、無塩可溶性固形分が24?40%のものが好ましい。なお、本明細書において、トマトピューレとは、上記の濃縮トマトのうち、無塩可溶性固形分が8%以上24%未満のものを意味する。さらに、本明細書において、透明トマト汁(B)とは、濁度の指標であるT%(660nmでの透過率)が10%以上のものを意味する。かかる透明トマト汁としては、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離等して得た上清を濃縮したもの(言い換えれば、水不溶性固形分の一部を除去した濃縮トマト)及びこれらを希釈還元したものが包含される。また、「透明」とは、Brix4.5において、Brix4.5を超えるものに対して、透明度に優れることを意味する。ここで、透明トマト汁(B)は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、飲料製造時の扱いやすさの観点から、無塩可溶性固形分が4?70%のものが好ましい。
【0041】
上記のトマトペースト(A)の調製は、当業界で公知の手法により適宜行うことができ、特に限定されない。例えば、常法にしたがい、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁を濃縮することにより得ることができ、また、市販のトマト搾汁を濃縮することにより得ることもでき、さらには、市販のトマトペーストを用いることもできる。なお、トマトペースト(A)は、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。
【0042】
上記の透明トマト汁(B)の調製も、当業界で公知の手法により適宜行うことができ、特に限定されない。例えば、常法にしたがい、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離する等して得た上清を濃縮することにより得ることができ、また、市販のトマト搾汁或いは濃縮トマトを濃縮することにより得ることもでき、さらには、市販の透明トマト汁を用いることもできる。市販品の透明トマト汁としては、特に限定されないが、例えば、三栄源エフエフアイ社のクリアトマト濃縮汁等が挙げられる。透明トマト汁(B)は、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。
・・・・・・・・・・・・・・
【0044】
本実施形態において、トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)との重量割合は、1.5?4.5であることが必要とされる。ここで、本明細書において、重量割合(A)/(B)は、トマトストレートBrix4.5換算で算出したものとする。なお、トマト含有飲料が後述する脱酸トマト汁(D)、すなわち透明トマト汁(B)を脱酸処理したものを含む場合には、トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)との重量割合は、(A)/〔(B)+(D)〕とする。
本発明者らが上記構成のトマト含有飲料を作製したところ、酸味が抑制されているとともにトマト本来の甘みが際立っており、格別に飲み易いトマト含有飲料が、再現性よく簡便に実現されることが判明した。かかる効果が奏される作用機構の詳細は、未だ明らかではないものの、例えば、以下のとおり推定される。
すなわち、トマト含有飲料の酸味を目立たなくさせるには、高濃度のトマト搾汁(濃縮トマト)を使用する等して、単に糖度(Brix)を上げればよいと考えられる。しかしながら、この場合、粘度が非常に高くなり、飲用に適さないものとなってしまう。これに対し、本実施形態のトマト含有飲料においては、濃縮トマトの中でも比較的に固形分濃度の高いトマトペースト(A)と、不要な水不溶性固形分の少なくとも一部が除去されたトマト搾汁或いは濃縮トマト(透明トマト汁(B))とを、かかる重量割合で用いることにより、おそらくは水不溶性固形分を過度に増加させることなく高濃度でトマト成分が配合され、比較的に低粘度に維持しつつも糖度(Brix)を高めることができ、これにより、濃厚な味わいとなるのみならず、謂わばトマト自身の甘みによってトマトの酸味が隠蔽され、その結果、トマト本来の甘みが際立って飲み易さが高められたものと推定される。
トマトペースト(A)の重量割合が上記範囲よりも多い場合或いは透明トマト汁(B)を使用しない場合は、比較的低粘度の範囲ではトマトの甘味及び濃厚な味わいが不十分となり、高濃度の場合は非常に粘性が高く飲みづらいものとなる。一方、透明トマト汁(B)の重量割合が上記範囲よりも多い場合或いはトマトペースト(A)を使用しない場合は、粘性が低く十分な食感またはのど越しが得られないものもしくは高配合の場合は味が濃すぎて飲用に適さないものとなる。トマトの甘み、酸味、及び濃厚な味わいのバランスをより一層高める観点から、トマトペースト(A)と透明トマト汁(B)との重量割合(A)/(B)は、2.5?3.5であることが好ましい。
【0045】
本実施形態のトマト含有飲料は、pH調整剤を含むことが好ましい。pH調整剤の配合により、トマト含有飲料のpHが酸性側にふれることによる酸味の増強が抑制され、トマト含有飲料の飲み易さが向上する傾向にある。かかるpH調整剤としては、重曹(C)が好ましい。pH調整剤として重曹(C)を採用することにより、上述したpH調整機能に加えて、さらにトマトのエグ味(青臭さ、生臭さ等)が緩和されてトマト含有飲料の飲み易さが向上する傾向にある。
【0046】
トマト含有飲料に対する重曹(C)の配合割合は、特に限定されないが、固形分換算で、0.1?5.0g/Lであることが好ましく、より好ましくは1.0?3.0g/Lである。重曹(C)の含有割合が0.1g/L未満であると、重曹(C)の配合効果が十分に発揮されない傾向にある。一方、重曹(C)の含有割合が5.0g/Lを超えると、香味がぼやけてメリハリがなくなり、トマト本来の風味が損なわれる傾向にあり、また、ナトリウム含量が増加する傾向にある。
【0047】
本実施形態のトマト含有飲料は、pHが4.4?4.8、より好ましくは4.5?4.6に調整されていることが好ましい。この範囲にある本実施形態のトマト含有飲料は、殊に、濃厚な味わいでトマト本来の甘みが際立ち、飲料形態としておいしく飲めるものとなる。なお、pHが高すぎるものは衛生上の観点から強い殺菌処理が必要となる傾向にあるので、生産性及び経済性の観点から好ましくなく、この殺菌処理にともない焦げや加熱臭や焼け臭が強くなる傾向にもあるので、これらの観点からも、本実施形態のトマト含有飲料のpHは4.4?4.8の範囲内に調整されていることが好ましい。
【0048】
本実施形態のトマト含有飲料は、脱酸トマト汁(D)が配合されたものであることが好ましい。ここで、脱酸トマト汁(D)とは、上述した透明トマト汁を脱酸処理したもの及びその濃縮物を意味する。また、脱酸処理とは、透明トマト汁に含まれ得るクエン酸等のヒドロキシ酸を除去或いは低減する処理を意味する。ヒドロキシ酸はトマト含有飲料中において酸味成分として機能し得るので、ヒドロキシ酸が除去或いは低減された脱酸トマト汁(D)を用いることにより、トマト含有飲料の総量に対する酸味成分の含有割合が低くなり、その結果、トマトの酸味が抑制されて、トマト本来の甘みがより一層際立つ傾向にある。なお、脱酸トマト汁(D)は、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。
【0049】
脱酸トマト汁(D)の調製は、公知の手法を適用して適宜行うことができ、特に限定されない。例えば、塩交換法、キレート化する方法、酵素を用いた分解処理法、陰イオン交換樹脂を用いた処理法等を適用することにより、上述した透明トマト汁中のヒドロキシ酸を除去或いは低減することができる。
・・・・・・・・・・・・・・
【0052】
上述した本実施形態のトマト含有飲料は、粘度が350?1000cP、より好ましくは350?600cPに調整されていることが好ましい。この程度の低粘度であることにより、飲み易さが高められる傾向にある。
【0053】
また、上述した本実施形態のトマト含有飲料は、上記の成分(A)?(D)以外に、当業界で公知の他の成分を含んでいてもよい。かかる他の成分としては、例えば、食塩、上述したトマトペースト(A)や透明トマト汁(B)や脱酸トマト汁(D)以外のトマト搾汁又は濃縮トマト(例えば、JAS規格のトマトジュース、JAS規格のトマトピューレ等)、トマト以外の野菜汁及び果汁、果実パルプ等が挙げられる。また、JAS規格により許容されている成分としては、例えば、ビタミン類、亜鉛、カルシウム、鉄、銅、マグネシウムなどのミネラル類などの強化剤あるいはその塩、砂糖、はちみつ、天然香料等が挙げられる。その他、JAS規格外の添加物ではあるが、クエン酸やクエン酸Naなどの酸味料やアミノ酸類、pH調整剤、酸化防止剤、酵素、ペクチン等の安定剤、砂糖以外の糖類、天然色素や合成色素等の着色料、天然香料や合成香料等の香料、二酸化炭素等が挙げられる。このように添加可能な他成分については、例えば、『食品表示マニュアル』(食品表示研究会編集、中央法規出版、平成元年2月改訂)にも記載されている。これらは、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。
・・・・・・・・・・・・・・
【0055】
また、上述した本実施形態のトマト含有飲料は、糖度が高いものであることが好ましい。本明細書においては、糖度とは、Brix値を意味する。具体的には、Brix値が4.0?10.0であることが好ましく、より好ましくは6.0?10.0である。なお、Brix値は、溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である、Brix値は、市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。
・・・・・・・・・・・・・・
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
まず、市販のトマトペースト(Brix:28、酸度:1.60、pH:4.10、Brix4.5調整時の粘度:108cP)と、市販の透明濃縮トマト汁(Clear Tomato Concentrate 60°Brix、LYCORED社製、Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)とを準備した。
次に、上記の透明濃縮トマト汁をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:14.6、酸度:0.86、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:
1.36cP)を準備した。
そして、これらトマトペースト及び透明トマト汁を表1に記載の通りの重量割合(なお、表1において、トマトペースト、透明トマト汁、脱酸トマト汁X及び脱酸トマト汁Yの配合量は、いずれもトマトストレートBrix4.5換算値である。)で配合し、目開き0.5?1.0mm程度のメッシュを用いて裏ごしして異物を除去することにより、調合液を調製した。
得られた調合液に、重曹を温水に溶解した溶液を、重曹の固形分換算で2.2g/L配合することにより、実施例1のトマト含有飲料を作製した。
得られた実施例1のトマト含有飲料を、加熱殺菌し、その後冷却し、紙パックへ封入し、実施例1の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。
【0065】
(実施例2)
重曹の配合を省略し、透明トマト汁の配合量を表1に記載の通りに変更すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例2のトマト含有飲料および実施例2の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。
【0066】
(比較例1)
透明トマト汁及び重曹の配合を省略し、トマトペーストの配合量を表1に記載の通りに変更すること以外は、実施例1と同様に処理して、比較例1のトマト含有飲料および比較例1のPET容器詰トマト含有飲料を作製した。
【0067】
(参考例1)
リファレンスとして、市販のトマトジュースPET大(トマト100%、トマトペーストの希釈還元物:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。
【0068】
(参考例2)
リファレンスとして、市販のトマトジュースPET大(トマト100%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。
【0069】
(参考例3)
リファレンスとして、市販のトマトジュースPET大(トマト100%:JAS規格に指定された食塩無添加トマトジュース)を用いた。
【0070】
(実施例3)
透明トマト汁の配合を省略し、実施例1で使用したトマトペースト及び脱酸トマト汁Xを表1に記載の通りの重量割合で配合し、さらに重曹の配合を省略すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例3のトマト含有飲料および実施例3の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。
なお、ここで用いた脱酸トマト汁Xは、以下の手順で調製したものである。まず、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学株式会社製、PA316)をタンクに充填し、これに3%NaOH水溶液を通液した後、イオン交換水、3%NaHCO_(3)水溶液、イオン交換水を順次通液して、重炭酸置換を行った。そして、上記の透明トマト汁を重炭酸置換した陰イオン交換樹脂に上向流方式で複数回通液した後、100メッシュのフィルターで濾過することにより、脱酸トマト汁X(Brix:12.4、酸度:0.21、pH:6.0)を調製した。
【0071】
(実施例4)
実施例1で用いた透明トマト汁及び脱酸トマト汁Yを表1に記載の通りの重量割合で配合し、さらに重曹の配合量を1.8g/Lに変更すること以外は、実施例1と同様に処理して、実施例4のトマト含有飲料および実施例4の紙容器詰トマト含有飲料を作製した。
なお、ここで用いた脱酸トマト汁Yは、以下の手順で調製したものである。実施例1で使用した透明濃縮トマト汁をBrix:19.8に希釈還元した透明トマト汁(Brix:19.8、酸度:1.18、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を80℃まで加温した後、炭酸カルシウムを前記透明トマト汁の総量に対して固形分換算で0.95重量%配合し、得られた調合物を60分間攪拌して、発生する炭酸ガスを排出した。タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、市販の珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去して、脱酸トマト汁Y(Brix:14.8、酸度:0.24、pH:5.4)を調製した。
【0072】
なお、各種測定方法及び評価方法は、以下の通りである。
【0073】
<Brix>
光学屈折率計(アタゴ社製、Digital Refractometers、RX5000α-Bev)を用いて、Brixを測定した。
【0074】
<酸度>
自動滴定装置(平沼産業株式会社製、COM-1750)を用い、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を使用した電位差滴定法に基づいて、クエン酸換算で算出した。
【0075】
<粘度>
TVB-10型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、回転数60rpm及び30秒の条件下で、粘度を測定した(表中の数値は、3回の平均値である)。なお、比較例1については、粘度が高すぎるため回転数を12rpmに落として測定した。また、透明トマト汁については、粘性が低すぎるため、ローターを特殊ローターL/Adpに変更して測定した。
【0076】
<クエン酸>
CAPI-3300(大塚電子株式会社製)を用いて、キャピラリー電気泳動法に基づいてクエン酸の含有量(重量%(g/100g))を求めた。
サンプル調整法:
サンプルを適量はかりとり、蒸留水に懸濁後、フィルターろ過して分析に供した。
キャピラリー電気泳動測定条件:
キャピラリーサイズ:75μm×800mm
注入方法:落差法(ΔH=25mm 90sec)
電圧 :-15kv(定電圧)
温度 :25℃
検出波長:265nm
泳動液 :20mMキノリン酸 0.25mM TTAB-2 (pH6.0)
【0077】
<アミノ酸>
Allianceシステム(Waters株式会社製)を用いて、HPLC法(蛍光検出)に基づいてアミノ酸の含有量(重量%(g/100g))を求めた。
サンプル調整法:
サンプルを適量はかりとり、蒸留水に懸濁後、フィルターろ過して分析に供した。
HPLC測定条件:
カラム :XBridge Shield RP18 3.0×100mm
温度 :40℃
注入量 :5μL
移動相A:50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH6.0)
移動相B:アセトニトリル
検出器 :Waters 2475マルチ波長蛍光検出器
検出波長:励起335nm エミッション450nm
【0078】
<風味>
トマト含有飲料の風味の評価試験は、12人のパネラーに委託して行い、各風味の強度を以下に示す基準で7段階評価したものである。ここで、表中の数値は、12人のパネラーの評価の平均値である。
3点:非常に強い
2点:かなり強い
1点:やや弱い
0点:感じない又はどちらでもない
-1点:やや弱い
-2点:かなり弱い
-3点:非常に弱い
【0079】
表1に、実施例1?4及び比較例1並びに参考例1?3のトマト含有飲料の配合組成を示す。また、これら飲料の特性並びに評価結果を、表1に併せて示す。
【0080】
【表1】


(2) 上記記載を検討し、特に実施例1に着目すれば、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「透明濃縮トマト汁をイオン交換水で約4倍に希釈還元した透明トマト汁52.0重量部とトマトペースト168.0重量部を配合して目開き0.5?1.0mm程度のメッシュを用いて裏ごしして異物を除去することで調合液を調製し、
前記調合液に対して重曹を温水に溶解した溶液を、重曹の固形分換算で2.2g/L配合する、
トマト含有飲料の製造方法。」
2. 引用例2
(1) 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された新規なトマト含有飲料を再現性よく簡易に実現可能な、新規な脱酸トマト汁及びその製造方法、並びに、濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された、新規なトマト含有飲料及びトマト含有飲料の酸味抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、透明トマト汁を重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより、また、これをトマト含有飲料の原料として用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・・・・・・・・・・・・
【0020】
本実施形態の脱酸トマト汁は、主原料としてトマト果実由来物を含有するものであって、透明トマト汁を重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより得られるものである。
【0021】
ここで、本明細書において、トマト果実由来物とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これらを濃縮したもの(濃縮トマト)を意味し(これらを希釈還元したものが含まれる)、JAS規格で指定されたトマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を包含する概念である。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。かかるトマト果実由来物の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状(擬固体状)、半固体状、固体状のいずれであってもよい。なお、主原料とは、トマト含有飲料の総量に対して50重量%以上を占めるものをいう。
【0022】
また、本明細書において、透明トマト汁とは、濁度の指標であるT%(660nmでの透過率)が10%以上のものを意味する。かかる透明トマト汁としては、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離等して得た上清を濃縮したもの(言い換えれば、トマト搾汁或いは濃縮トマトに含まれる水不溶性固形分の一部を除去した濃縮トマト)及びこれらを希釈還元したものが包含される。また、「透明」とは、Brix4.5において、Brix4.5を超えるものに対して、透明度に優れることを意味する。なお、透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、飲料製造時の扱いやすさの観点から、無塩可溶性固形分が4?70%のものが好ましい。
【0023】
上記の透明トマト汁の調製は、当業界で公知の手法により適宜行うことができ、特に限定されない。例えば、常法にしたがい、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離する等して得た上清を濃縮することにより得ることができ、また、市販のトマト搾汁或いは濃縮トマトを濃縮することにより得ることもでき、さらには、市販の透明トマト汁を用いることもできる。市販品の透明トマト汁としては、特に限定されないが、例えば、三栄源エフエフアイ社のクリアトマト濃縮汁等が挙げられる。なお、透明トマト汁(B)は、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。
・・・・・・・・・・・・・・
【0025】
上記の透明トマト汁を重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより、処理後の透明トマト汁(脱酸トマト汁)において酸味が低減する。これは、透明トマト汁に含まれるクエン酸等の酸味成分が重炭酸置することで除去され、また、置換した重炭酸が炭酸ガスとなって抜け出ることによるものと推定される。」
(2) 上記記載から、引用例2には、次の技術的事項が記載されていると認めることができる(以下、これを「引用例2記載の技術的事項」という。)。
「透明トマト汁を重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂で処理して、酸味が低減された脱酸トマト汁を得ること。」
3. 引用例3
(1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された新規なトマト含有飲料を再現性よく簡易に実現可能な、新規な脱酸トマト汁及びその製造方法、並びに、濃厚な味わいでフルーツトマトのような甘みがあり且つトマトの酸味が抑制された、新規なトマト含有飲料及びトマト含有飲料の酸味抑制方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合することにより、また、これをトマト含有飲料の原料として用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・・・・・・・・・・・・
【0023】
本実施形態の脱酸トマト汁は、主原料としてトマト果実由来物を含有するものであって、透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合することにより得られるものである。
【0024】
ここで、本明細書において、トマト果実由来物とは、トマトを破砕して搾汁し或いは裏ごしし、皮や種子等を除去して得られるトマト搾汁、及び、これらを濃縮したもの(濃縮トマト)を意味し(これらを希釈還元したものが含まれる)、JAS規格で指定されたトマトジュース、トマトピューレ、トマトペースト及び濃縮トマト等を包含する概念である。これらは、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。かかるトマト果実由来物の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状(擬固体状)、半固体状、固体状のいずれであってもよい。なお、主原料とは、トマト含有飲料の総量に対して50重量%以上を占めるものをいう。
【0025】
また、本明細書において、透明トマト汁とは、濁度の指標であるT%(660nmでの透過率)が10%以上のものを意味する。かかる透明トマト汁としては、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離等して得た上清を濃縮したもの(言い換えれば、トマト搾汁或いは濃縮トマトに含まれる水不溶性固形分の一部を除去した濃縮トマト)及びこれらを希釈還元したものが包含される。また、「透明」とは、Brix4.5において、Brix4.5を超えるものに対して、透明度に優れることを意味する。なお、透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、飲料製造時の扱いやすさの観点から、無塩可溶性固形分が4?70%のものが好ましい。
【0026】
上記の透明トマト汁の調製は、当業界で公知の手法により適宜行うことができ、特に限定されない。例えば、常法にしたがい、上述したトマト搾汁或いは濃縮トマトを遠心分離する等して得た上清を濃縮することにより得ることができ、また、市販のトマト搾汁或いは濃縮トマトを濃縮することにより得ることもでき、さらには、市販の透明トマト汁を用いることもできる。市販品の透明トマト汁としては、特に限定されないが、例えば、三栄源エフエフアイ社のクリアトマト濃縮汁等が挙げられる。なお、透明トマト汁(B)は、1種のみを単独で、或いは2種以上を組み合わせて、用いることができる。
・・・・・・・・・・・・・・
【0028】
上記の透明トマト汁に、カルシウム又はその塩を配合することにより、処理後の透明トマト汁(脱酸トマト汁)において酸味が低減する。」
(2) 上記記載から、引用例3に次の技術的事項が記載されていると認めることができる(以下、これを「引用例3記載の技術的事項」という。)。
「透明トマト汁に、カルシウム又はその塩を配合し、酸味が低減された脱酸トマト汁を得ること。」

第5 対比・判断
事案に鑑みて、本願発明2について先ず検討する。
1.本願発明2について
本願発明2(以下、「前者」ということがある。)と引用発明(以下、「後者」ということがある。)を対比する。
(1) 前者の「脱酸トマト汁」と後者の「トマト含有飲料」は、「トマト含有液」であるという点で共通する。
(2) 後者の「透明濃縮トマト汁をイオン交換水で約4倍に希釈還元した透明トマト汁52.0重量部とトマトペースト168.0重量部を配合して目開き0.5?1.0mm程度のメッシュを用いて裏ごしして異物を除去する」ことで「調製」された「調合液」は、明らかに「トマトペースト」を含むから、前者の「少なくとも、トマトペースト又はトマトピューレ?」が含まれる「調合液」に相当する。
(3) 後者における「透明濃縮トマト汁をイオン交換水で約4倍に希釈還元した透明トマト汁52.0重量部とトマトペースト168.0重量部を配合して目開き0.5?1.0mm程度のメッシュを用いて裏ごしして異物を除去することで調合液を調製し、」は、「調合液」を得る「調合」の工程であり、また、「前記調合液に対して重曹を温水に溶解した溶液を、重曹の固形分換算で2.2g/L配合する、」とは、「前記調合液」に“重曹を配合する”工程であるから、後者の製造方法は、「調合」の工程及び「重曹を配合する工程」から構成されるものである。そうすると、後者の製造方法と前者の製造方法は、「それを構成するのは、少なくとも、次の」「(1)調合」の工程である点で共通する。
(4) 以上を踏まえると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
《一致点》
「トマト含有液の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、次の工程であり、
(1)調合
ここで得られるのは、調合液であり、
前記調合液に含まれるのは、少なくとも、トマトペースト又はトマトピューレ?である。」
《相違点1》
トマト含有液について、前者では「脱酸トマト汁」であるのに対して後者では「トマト含有飲料」である点。
《相違点2》
前者が調合液を「脱酸」する工程を備えるのに対して、後者は、「前記調合液に対して重曹を温水に溶解した溶液を、重曹の固形分換算で2.2g/L配合する」工程を備える点。
《相違点3》
「調合液」について、前者では「調合液の透過率は、2.26%以上18.3%以下であり、前記透過率の測定時における前記調合液の糖度が9.0であ」ると特定されているのに対して、後者ではそのような特定がない点。
(5) 相違点についての判断
先ず、上記相違点3について検討する。
引用例1には、調合液にトマトペーストと共に用いる「透明トマト汁」における「透明」について、「濁度の指標であるT%(660nmでの透過率)が10%以上のものを意味する」(段落【0040】)と記載されている。しかしながら当該「透明」は、「調合液」の透過率についていうものではないし、調合液の透過率が「2.26%以上18.3%以下であ」ることと、「前記透過率の測定時における前記調合液の糖度が9.0」とを関連づける記載や示唆もない。
そして、本願発明が、上記相違点3に係る本願発明の構成を採用しているのは、「・・・透過率が低すぎると、粘度が高くなり、扱いにくくなる。透過率が高すぎると、リコピン含有量が増量しない。透過率の測定時期は、脱酸の前である。透過率を測定することの利点は、リコピンを測定するよりも簡便な点である。また、有機溶媒を使用する必要もないため、食品製造工程へ導入し易い。・・・調整するBrixが9.0である理由は、飲料に配合する原料として扱いやすい濃度の下限だからである。脱酸前の脱酸トマト汁のBrixが9.0を下回ると、飲料に配合する際に、大量の脱酸トマト汁が必要となるため、扱いにくくなる。・・・」(【0026】)というのであるから、相違点3に係る本願発明の構成を設計的事項ということもできない。
したがって、上記相違点1及び2について判断するまでもなく、本願発明2は、当業者であっても、引用発明、引用例2及び3記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
2.本願発明1、3、4、5及び6について
本願発明1、3、4、5及び6も、上記相違点3に係る本願発明2の構成を備えるものであるから、本願発明2と同様な理由により、当業者であっても、引用発明、引用例2及び3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1-6は「調合液の透過率は、2.26%以上18.3%以下であり、前記透過率の測定時における前記調合液の糖度が9.0であ」るという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用例1-3に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由4(特許法第29条第2項)を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-6は、当業者が引用発明、引用例2及び3に記載の技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-06-13 
出願番号 特願2016-220423(P2016-220423)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松岡 徹  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 莊司 英史
藤原 直欣
発明の名称 脱酸トマト汁におけるリコピン増量方法、脱酸トマト汁及びその製造方法、並びに、低酸度トマト含有飲料におけるリコピン増量方法及び低酸度トマト含有飲料の製造方法  

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