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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62K |
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管理番号 | 1352182 |
審判番号 | 不服2018-2463 |
総通号数 | 235 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-07-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-21 |
確定日 | 2019-06-06 |
事件の表示 | 特願2016-125511号「車両」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 65668号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年6月24日(優先権主張 平成27年9月30日)に出願されたものであって、平成29年6月23日付けで拒絶理由が通知され、同年8月29日に意見書が提出され、同年11月13日付けで拒絶査定がされ、平成30年2月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1?11に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「車両であって、 車体フレームと、 前記車体フレームの左右方向に並ぶように配置されている左前輪および右前輪と、 前記左前輪および前記右前輪より上方に配置されており、前記車体フレームに対する前記左前輪および前記右前輪の相対位置を変更して前記車体フレームを前記車両の左方または右方に傾斜させるように構成されているリンク機構と、 を備えており、 前記リンク機構は、上クロス部材、下クロス部材、左サイド部材、および右サイド部材を備えており、 前記上クロス部材、前記下クロス部材、前記左サイド部材、および前記右サイド部材は、前記上クロス部材と前記下クロス部材が相互に平行な姿勢を保ち、前記左サイド部材と前記右サイド部材が相互に平行な姿勢を保つように連結されており、 前記左前輪を支持し、前記リンク機構に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向への変位を緩衝するように構成されているテレスコピック式の左緩衝装置と、 前記右前輪を支持し、前記リンク機構に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向への変位を緩衝するように構成されているテレスコピック式の右緩衝装置と、 前記左サイド部材に対して回動可能に連結されている左ブラケットと、 前記右サイド部材に対して回動可能に連結されている右ブラケットと、 操舵軸線を中心として回動可能に前記車体フレームに連結されている操舵部材と、 前記操舵部材の回動方向に前記左ブラケットと前記右ブラケットを回動させるように構成されている操舵力伝達機構と、 をさらに備えており、 前記左緩衝装置は、 前記左ブラケットに支持されている左前アウタチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記左前アウタチューブの後方で前記左ブラケットに支持されている左後アウタチューブと、 前記左前アウタチューブに連結されており、前記左前アウタチューブの内側を左伸縮軸線に沿って摺動可能とされている左前インナチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記左前インナチューブの後方で前記左後アウタチューブに連結されており、前記左後アウタチューブの内側を前記左伸縮軸線に沿って摺動可能とされている左後インナチューブと、 一端が前記左前インナチューブと前記左後インナチューブに支持されており、他端が前記左前輪を支持している左車軸と、 前記左前アウタチューブと前記左後アウタチューブを連結している左連結部材と、 を備えており、 前記右緩衝装置は、 前記右ブラケットに支持されている右前アウタチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記右前アウタチューブの後方で前記右ブラケットに支持されている右後アウタチューブと、 前記右前アウタチューブに連結されており、前記右前アウタチューブの内側を右伸縮軸線に沿って摺動可能とされている右前インナチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記右前インナチューブの後方で前記右後アウタチューブに連結されており、前記右後アウタチューブの内側を前記右伸縮軸線に沿って摺動可能とされている右後インナチューブと、 一端が前記右前インナチューブと前記右後インナチューブに支持されており、他端が前記右前輪を支持している右車軸と、 前記右前アウタチューブと前記右後アウタチューブを連結している右連結部材と、 を備えている、 車両。」 第3 原査定の概要 この出願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.国際公開第2015/002166号 引用文献2.国際公開第2014/181736号 第4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明 1 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。以下同様。 (1)「[請求項1] 車両であって、 右旋回時に前記車両の右方に傾斜し、左旋回時に前記車両の左方へ傾斜可能な車体フレームと、 前記車体フレームの左右方向に並べて配置された右前輪および左前輪と、 下部に前記右前輪を支持し、上部に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する右懸架装置と、 下部に前記左前輪を支持し、上部に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向における変位を緩衝する左懸架装置と、 前記右懸架装置の上部を前記車体フレームの上下方向に延びる右操舵軸線回りに回転可能に支持する右サイド部と、 前記左懸架装置の上部を前記右操舵軸線と平行な左操舵軸線回りに回転可能に支持する左サイド部と、 前記右サイド部の上部を右端部に前記車体フレームの前後方向に延びる上右軸線回りに回転可能に支持し、前記左サイド部の上部を左端部に前記上右軸線に平行な上左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記上右軸線および前記上左軸線に平行な上中間軸線回りに回転可能に支持される上クロス部と、 前記右サイド部の下部を右端部に前記上右軸線に平行な下右軸線回りに回転可能に支持し、前記左サイド部の下部を左端部に前記上左軸線に平行な下左軸線回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレームに前記上中間軸線と平行な下中間軸線回りに回転可能に支持される下クロス部と、を含むリンク機構と、 前記リンク機構の少なくとも一部を覆う車体カバーと、 前記車体フレームの左右方向における前記右懸架装置と前記左懸架装置の間で前記車体フレームに支持され、前記車体フレームの上下方向に延びる中間操舵軸線回りに回転可能なステアリングシャフトと、 前記ステアリングシャフトの上端部に設けられたハンドルと、 前記ハンドルの操作に応じた前記ステアリングシャフトの回転に伴い、前記右懸架装置を前記右操舵軸線回りに回転させ、前記左懸架装置を前記左操舵軸線回りに回転させる車輪転舵伝達機構と、 前記リンク機構より下方に設けられ、前記右前輪および前記左前輪の少なくとも一方に制動力を作用させる制動装置と、 前記リンク機構より上方に設けられ、前記制動装置を操作する制動操作装置と、 前記制動操作装置と前記制動装置とを接続し、前記制動操作装置に入力された制動操作を前記制動装置に伝達する制動操作伝達部材と、 を有し、 前記制動操作伝達部材の移動を規制する規制部が、前記上クロス部、前記右サイド部および前記左サイド部の少なくとも1つの上部に設けられ、 前記制動操作伝達部材は、前記制動操作装置と前記規制部との間に位置し前記車体フレームの傾斜に応じて変形するリーン変形部と、少なくとも一部が前記リーン変形部と前記制動装置との間に位置し前記右前輪および前記左前輪の転舵に応じて変形する車輪転舵変形部と、 を有する、車両。」 (2)「[0031] 図1に示すように、車両1は、車両本体部2と、左右一対の前輪3(図2参照)と、後輪4と、操舵機構7と、リンク機構5とを備えている。車両本体部2は、車体フレーム21と、車体カバー22と、シート24と、パワーユニット25とを備えている。」 (3)「[0040] 左右一対の前輪3は、左前輪31および右前輪32を含んでいる。左前輪31および右前輪32は、車体フレーム21の左右方向に並べて配置されている。左前輪31の上方には、左右一対のフロントフェンダー223のうち、第1フロントフェンダー227が配置されている。右前輪32の上方には、左右一対のフロントフェンダー223のうち、第2フロントフェンダー228が配置されている。左前輪31は左緩衝器33に支持されている。右前輪32は右緩衝器34に支持されている。 [0041] 左緩衝器33(左懸架装置の一例)は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器であり、路 面からの振動を減衰させる。左緩衝器33は、下部に左前輪31を支持し、上部に対する左前輪31の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する。左緩衝器33は、第1下側部33aおよび第1上側部33bを有する。左前輪31は第1下側部33aに支持されている。第1下側部33aは、上下方向に延び、その下端側に左車輪軸314が支持されている。左車輪軸314は、左前輪31を支持している。第1上側部33bは、その一部が第1下側部33aに挿入された状態で、第1下側部33aの上側に配置されている。第1上側部33bは、第1下側部33aの延びる方向において、第1下側部33aに対して相対移動可能である。第1上側部33bの上部は、第1ブラケット317に固定されている。 ・・・ [0043] 第1下側部33aおよび第1上側部33bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成している。それにより、第1下側部33aに対して第1上側部33bが相対回転することが抑制されている。」(当審注:[0041]において、「路」と「面」の間で改行されているが、誤記と認める。) (4)「[0044] 右緩衝器34(右懸架装置の一例)は、いわゆるテレスコピック式の緩衝器であり、路面からの振動を減衰させる。右緩衝器34は、下部に右前輪32を支持し、上部に対する右前輪32の車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝する。右緩衝器34は、第2下側部34aおよび第2上側部34bを有する。右前輪32は第2下側部34aに支持されている。第2下側部34aは、上下方向に延び、その下端側に右車輪軸324が支持されている。右車輪軸324は、右前輪32を支持している。第2上側部34bは、その一部が第2下側部34aに挿入された状態で、第2下側部34aの上側に配置されている。第2上側部34bは、第2下側部34aの延びる方向において、第2下側部34aに対して相対移動可能である。第2上側部34bの上部は、第2ブラケット327に固定されている。 [0045] 第2下側部34aおよび第2上側部34bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成している。それにより、第2下側部34aに対して第2上側部34bが相対回転することが抑制されている。」 (5)「[0046] 車輪転舵伝達機構6は、左前輪31および右前輪32よりも上方に配置されている。車輪転舵伝達機構6は、乗員の操舵力を入力する部材として、操舵部材28を備えている。操舵部材28は、ステアリングシャフト60と、ステアリングシャフト60の上端部に設けられたハンドルバー23とを有する。 ステアリングシャフト60は、車体フレーム21の左右方向において、左緩衝器33および右緩衝器34の間で、ヘッドパイプ211に支持されている。また、ステアリングシャフト60は、車体フレーム21の上下方向に延びる中間操舵軸線Y3回りに回転可能である。ステアリングシャフト60は、その一部がヘッドパイプ211に挿入されて略上下方向に延びるように配置され、ヘッドパイプ211に対して回転可能である。ステアリングシャフト60は、乗員によるハンドルバー23の操作に伴って回転される。 車輪転舵伝達機構6は、ハンドルバー23の操作に応じたステアリングシャフト60の 回転に伴い、左緩衝器33を上下方向に延びる左操舵軸線Y1回りに回転させ、右緩衝器34を左操舵軸線Y1と平行な右操舵軸線Y2回りに回転させる。 [0047] 車輪転舵伝達機構6は、操舵部材28の他に、第1伝達プレート61、第2伝達プレート62、第3伝達プレート63、第1ジョイント64、第2ジョイント65、第3ジョイント66、タイロッド67、第1ブラケット317および第2ブラケット327を有する。車輪転舵伝達機構6は、乗員がハンドルバー23を操作する操舵力を、これらの部材を介して第1ブラケット317および第2ブラケット327に伝達する。 ・・・ [0053] このように構成された車輪転舵伝達機構6は、操舵部材28から伝達された操舵力を、第1伝達プレート61と第1ジョイント64を介してタイロッド67に伝える。これにより、タイロッド67は左右方向のいずれか一方に変位する。タイロッド67に伝わった操舵力は、タイロッド67から第2伝達プレート62と第2ジョイント65を介して第1ブラケット317に伝わるとともに、タイロッド67から第3伝達プレート63と第3ジョイント66を介して第2ブラケット327に伝わる。これにより、第1ブラケット317および第2ブラケット327は、タイロッド67が変位した方向に回転する。」(合議体注:[0046]において、「ステアリングシャフト60の」と「回転」の間で改行されているが、誤記と認める。) (6)「[0054] 〈リンク機構〉 本例では、平行四節リンク(パラレログラムリンクとも呼ぶ)方式のリンク機構5を採用している。 リンク機構5は、ハンドルバー23より下方に配置されている。リンク機構5は、車体フレーム21のヘッドパイプ211に連結されている。リンク機構5は、車両1の傾斜動作を行うための構成として、上クロス部51、下クロス部52、左サイド部53および右サイド部54を備えている。また、リンク機構5は、左サイド部53の下部に接続されて左サイド部53とともに傾斜する構成として、第1ブラケット317と左緩衝器33を備えている。さらに、リンク機構5は、右サイド部54の下部に接続されて右サイド部54とともに傾斜する構成として、第2ブラケット327と右緩衝器34を備えている。 [0055] 右サイド部54は、右緩衝器34の上部を車体フレーム21の上下方向に延びる右操舵軸線Y2回りに回転可能に支持する。左サイド部53は、左緩衝器33の上部を右操舵軸線Y2と平行な左操舵軸線Y1回りに回転可能に支持する。 上クロス部51は、右サイド部54の上部を右端部に車体フレーム21の前後方向に延びる上右軸線E回りに回転可能に支持し、左サイド部53の上部を左端部に上右軸線Eに平行な上左軸線D回りに回転可能に支持し、中間部が車体フレーム21に上右軸線Eおよび上左軸線Dに平行な上中間軸線C 回りに回転可能に支持される。 下クロス部は、右サイド部54の下部を右端部に上右軸線Eに平行な下右軸線H回りに回転可能に支持し、左サイド部53の下部を左端部に上左軸線Dに平行な下左軸線G回りに回転可能に支持し、中間部が車体フレーム21に上中間軸線Cと平行な下中間軸線F回りに回転可能に支持される。 ・・・ [0059] 左サイド部53は、ヘッドパイプ211の左方に配置され、ヘッドパイプ211の延びる方向と平行に延びている。左サイド部53は、左前輪31の上方であって左緩衝器33よりも上方に配置されている。左サイド部53は、下部が第1ブラケット317に連結され、第1ブラケット317に対して左操舵軸線Y1を中心に回転可能に取り付けられている。この左サイド部53は、左緩衝器33の上部を左操舵軸線Y1回りに回転可能に支持する。 [0060] 右サイド部54は、ヘッドパイプ211の右方に配置されて、ヘッドパイプ211の延びる方向と平行に延びている。右サイド部54は、右前輪32の上方であって右緩衝器34よりも上方に配置されている。右サイド部54は、下部が第2ブラケット327に連結され、第2ブラケット327に対して右操舵軸線Y2を中心に回転可能に取り付けられている。この右サイド部54は、右緩衝器34の上部を右操舵軸線Y2回りに回転可能に支持する。」 2 引用文献1に記載された発明 上記1の各記載事項及び[図1]?[図6]の記載より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「車両1であって、 右旋回時に前記車両1の右方に傾斜し、左旋回時に前記車両1の左方へ傾斜可能な車体フレーム21と、 前記車体フレーム21の左右方向に並べて配置された右前輪32および左前輪31と、 下部に前記右前輪32を支持し、上部に対する前記右前輪32の前記車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝するテレスコピック式の右緩衝器34と、 下部に前記左前輪31を支持し、上部に対する前記左前輪31の前記車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝するテレスコピック式の左緩衝器33と、 前記右緩衝器34の上部を前記車体フレーム21の上下方向に延びる右操舵軸線Y2回りに回転可能に支持する右サイド部54と、 前記左緩衝器33の上部を前記右操舵軸線Y2と平行な左操舵軸線Y1回りに回転可能に支持する左サイド部53と、 前記右サイド部54の上部を右端部に前記車体フレーム21の前後方向に延びる上右軸線E回りに回転可能に支持し、前記左サイド部53の上部を左端部に前記上右軸線Eに平行な上左軸線D回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレーム21に前記上右軸線Eおよび前記上左軸線Dに平行な上中間軸線C回りに回転可能に支持される上クロス部51と、 前記右サイド部54の下部を右端部に前記上右軸線Eに平行な下右軸線H回りに回転可能に支持し、前記左サイド部53の下部を左端部に前記上左軸線Dに平行な下左軸線G回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレーム21に前記上中間軸線Cと平行な下中間軸線F回りに回転可能に支持される下クロス部52と、を含むリンク機構5と、 前記車体フレーム21の左右方向における前記右緩衝器34と前記左緩衝器33の間で前記車体フレーム21に支持され、前記車体フレーム21の上下方向に延びる中間操舵軸線Y3回りに回転可能なステアリングシャフト60と、 前記ステアリングシャフト60の上端部に設けられたハンドルバー23と、 前記左サイド部53は、下部が第1ブラケット317に連結され、第1ブラケット317に対して左操舵軸線Y1を中心に回転可能に取り付けられ、 前記右サイド部54は、下部が第2ブラケット327に連結され、第2ブラケット327に対して右操舵軸線Y2を中心に回転可能に取り付けられ、 乗員がハンドルバー23を操作する操舵力を、第1ブラケット317および第2ブラケットに伝達して回転させ、 前記ハンドルバー23の操作に応じた前記ステアリングシャフト60の回転に伴い、前記右緩衝器34を前記右操舵軸線Y2回りに回転させ、前記左緩衝器33を前記左操舵軸線Y1回りに回転させる車輪転舵伝達機構6と、 を有し、 前記左サイド部53は、左緩衝器33の上部を左操舵軸線Y1回りに回転可能に支持し、 前記左緩衝器33は、第1下側部33aおよび第1上側部33bを有し、第1下側部33aは、上下方向に延び、その下端側に左車輪軸314が支持され、左車輪軸314は、左前輪31を支持し、第1上側部33bは、その一部が第1下側部33aに挿入された状態で、第1下側部33aの上側に配置され、第1上側部33bは、第1下側部33aの延びる方向において、第1下側部33aに対して相対移動可能であり、第1上側部33bの上部は、第1ブラケット317に固定され、 第1下側部33aおよび第1上側部33bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成しており、 前記右サイド部54は、右緩衝器34の上部を右操舵軸線Y2回りに回転可能に支持し、 前記右緩衝器34は、第2下側部34aおよび第2上側部34bを有し、第2下側部34aは、上下方向に延び、その下端側に右車輪軸324が支持され、右車輪軸324は、右前輪32を支持し、第2上側部34bは、その一部が第2下側部34aに挿入された状態で、第2下側部34aの上側に配置され、第2上側部34bは、第2下側部34aの延びる方向において、第2下側部34aに対して相対移動可能であり、第2上側部34bの上部は、第2ブラケット327に固定され、 第2下側部34aおよび第2上側部34bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成している、車両1。」 3 引用文献2の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている。 (1)「[0009] 図1に示すように、本実施形態に係る懸架装置は、図示しない車体と前輪(車輪)W(図2)との間に介装される。懸架装置は、車体側に連結される車体側連結部材1と、車体側連結部材1によって連結される前後一対のテレスコピック型のチューブ部材2,3と、を備え、これらチューブ部材2,3で前輪(車輪)Wを一方側から支持する。車体側連結部材1は、ステアリングパイプ9が起立した状態で固定される本体部4と、車体の前後方向において本体部4の前後の側面にそれぞれ形成される円弧状の支持溝5,6と、各支持溝5,6に挿入される各チューブ部材2,3をこれら支持溝5,6が最も接近する最深部5a,6aに向けて押し付ける押圧機構7,8と、を備える。 [0010] 懸架装置は、前輪二輪型の鞍乗型車両に利用されており、図2に示すように、左右の前輪(一方の前輪Wのみを図示し、他方の前輪を図示せず)を片持ち支持する左右の脚部(一方の脚部Sのみを図示し、他方の脚部を図示せず)を備えている。本発明は、一方または両方の脚部に適用されるが、以下では一方の脚部について説明する。本実施形態に係る懸架装置は、他の車両に利用してもよく、例えば、二輪車の前輪を片持ち支持する一本脚タイプのフロントフォークに利用してもよい。」 (2)「[0012] 前後のチューブ部材2,3は、車輪側に連結されるアウターチューブ20,30と、車体側に連結されてアウターチューブ20,30に出入りするインナーチューブ21,31と、を有するテレスコピック型である。・・・本実施形態では、アウターチューブ20,30が車輪側に連結されるとともに、インナーチューブ21,31が車体側に連結されているが、アウターチューブ20,30が車体側に連結されるとともに、インナーチューブ21,31が車輪側に連結される構成としてもよい。・・・ [0013] 前後のアウターチューブ20,30には、他方のアウターチューブに向けて延びる上下一対の連結ボス22,23,32,33が設けられている。前側のアウターチューブ20の連結ボス22,23と後側のアウターチューブ30の連結ボス32,33とがボルトB1,B2により締結されることにより、前後のチューブ部材2,3は平行に起立する。前後のアウターチューブ20,30には、前輪Wの前後方向にチューブ部材2,3が並ぶように前後のアウターチューブ20,30を固定する連結片24,34が設けられる。後側のアウターチューブ30の下端部には、前輪Wの車軸に連結される連結部35が設けられる。」 第5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)後者の「車両1」は、前者の「車両」に相当し、以下同様に、「車体フレーム21」は「車体フレーム」に、「左前輪31」は「左前輪」に、「右前輪32」は「右前輪」に、「リンク機構5」は「リンク機構」に、「上クロス部51」は「上クロス部材」に、「下クロス部52」は「下クロス部材」に、「左サイド部53」は「左サイド部」に、「右サイド部54」は「右サイド部材」に、「左緩衝器33」は「左緩衝装置」に、「右緩衝器34」は「右緩衝装置」に「第1ブラケット317」は「左ブラケット」に、「第2ブラケット327」は「右ブラケット」に、「ステアリングシャフト60」及び「ハンドルバー23」は「操舵部材」に、「車輪転舵伝達機構6」は「操舵力伝達機構」に、「左車輪軸314」は「左車軸」に、「右車輪軸324」は「右車軸」にそれぞれ相当する。 (2)上記(1)を踏まえると、後者の 「車両1であって、 右旋回時に前記車両1の右方に傾斜し、左旋回時に前記車両1の左方へ傾斜可能な車体フレーム21と、 前記車体フレーム21の左右方向に並べて配置された右前輪32および左前輪31と、 下部に前記右前輪31を支持し、上部に対する前記右前輪31の前記車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝するテレスコピック式の右緩衝器34と、 下部に前記左前輪31を支持し、上部に対する前記左前輪31の前記車体フレーム21の上下方向における変位を緩衝するテレスコピック式の左緩衝器33と、 前記右緩衝器34の上部を前記車体フレーム21の上下方向に延びる右操舵軸線Y2回りに回転可能に支持する右サイド部54と、 前記左緩衝器33の上部を前記右操舵軸線Y2と平行な左操舵軸線Y1回りに回転可能に支持する左サイド部53と、 前記右サイド部54の上部を右端部に前記車体フレーム21の前後方向に延びる上右軸線E回りに回転可能に支持し、前記左サイド部53の上部を左端部に前記上右軸線Eに平行な上左軸線D回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレーム21に前記上右軸線Eおよび前記上左軸線Dに平行な上中間軸線C回りに回転可能に支持される上クロス部51と、 前記右サイド部54の下部を右端部に前記上右軸線Eに平行な下右軸線H回りに回転可能に支持し、前記左サイド部53の下部を左端部に前記上左軸線Dに平行な下左軸線G回りに回転可能に支持し、中間部が前記車体フレーム21に前記上中間軸線Cと平行な下中間軸線F回りに回転可能に支持される下クロス部52と、を含むリンク機構5と、 前記車体フレーム21の左右方向における前記右緩衝器34と前記左緩衝器33の間で前記車体フレーム21に支持され、前記車体フレーム21の上下方向に延びる中間操舵軸線Y3回りに回転可能なステアリングシャフト60と、 前記ステアリングシャフト60の上端部に設けられたハンドルバー23と、 前記左サイド部53は、下部が第1ブラケット317に連結され、第1ブラケット317に対して左操舵軸線Y1を中心に回転可能に取り付けられ、 前記右サイド部54は、下部が第2ブラケット327に連結され、第2ブラケット327に対して右操舵軸線Y2を中心に回転可能に取り付けられ、 乗員がハンドルバー23を操作する操舵力を、第1ブラケット317および第2ブラケットに伝達して回転させ、 前記ハンドルバー23の操作に応じた前記ステアリングシャフト60の回転に伴い、前記右緩衝器34を前記右操舵軸線Y2回りに回転させ、前記左緩衝器33を前記左操舵軸線Y1回りに回転させる車輪転舵伝達機構6と、 を有し」ていることは、前者の 「車両であって、 車体フレームと、 前記車体フレームの左右方向に並ぶように配置されている左前輪および右前輪と、 前記左前輪および前記右前輪より上方に配置されており、前記車体フレームに対する前記左前輪および前記右前輪の相対位置を変更して前記車体フレームを前記車両の左方または右方に傾斜させるように構成されているリンク機構と、 を備えており、 前記リンク機構は、上クロス部材、下クロス部材、左サイド部材、および右サイド部材を備えており、 前記上クロス部材、前記下クロス部材、前記左サイド部材、および前記右サイド部材は、前記上クロス部材と前記下クロス部材が相互に平行な姿勢を保ち、前記左サイド部材と前記右サイド部材が相互に平行な姿勢を保つように連結されており、 前記左前輪を支持し、前記リンク機構に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向への変位を緩衝するように構成されているテレスコピック式の左緩衝装置と、 前記右前輪を支持し、前記リンク機構に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向への変位を緩衝するように構成されているテレスコピック式の右緩衝装置と、 前記左サイド部材に対して回動可能に連結されている左ブラケットと、 前記右サイド部材に対して回動可能に連結されている右ブラケットと、 操舵軸線を中心として回動可能に前記車体フレームに連結されている操舵部材と、 前記操舵部材の回動方向に前記左ブラケットと前記右ブラケットを回動させるように構成されている操舵力伝達機構と、 をさらに備えて」いることに相当するといえる。 (3)後者の「左緩衝器33」の「第1上側部33b」は、「その一部が第1下側部33aに挿入され」るものであるから、インナチューブといえるものであり、同様に「第1下側部33」はアウタチューブといえるものである。また、「第1下側部33aおよび第1上側部33bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成して」いるものであるから、左前、左後のものからなることは明らかである。 後者の「右緩衝器34」についても同様のことがいえる。 (4)以上のことから、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点〕 「車両であって、 車体フレームと、 前記車体フレームの左右方向に並ぶように配置されている左前輪および右前輪と、 前記左前輪および前記右前輪より上方に配置されており、前記車体フレームに対する前記左前輪および前記右前輪の相対位置を変更して前記車体フレームを前記車両の左方または右方に傾斜させるように構成されているリンク機構と、 を備えており、 前記リンク機構は、上クロス部材、下クロス部材、左サイド部材、および右サイド部材を備えており、 前記上クロス部材、前記下クロス部材、前記左サイド部材、および前記右サイド部材は、前記上クロス部材と前記下クロス部材が相互に平行な姿勢を保ち、前記左サイド部材と前記右サイド部材が相互に平行な姿勢を保つように連結されており、 前記左前輪を支持し、前記リンク機構に対する前記左前輪の前記車体フレームの上下方向への変位を緩衝するように構成されているテレスコピック式の左緩衝装置と、 前記右前輪を支持し、前記リンク機構に対する前記右前輪の前記車体フレームの上下方向への変位を緩衝するように構成されているテレスコピック式の右緩衝装置と、 前記左サイド部材に対して回動可能に連結されている左ブラケットと、 前記右サイド部材に対して回動可能に連結されている右ブラケットと、 操舵軸線を中心として回動可能に前記車体フレームに連結されている操舵部材と、 前記操舵部材の回動方向に前記左ブラケットと前記右ブラケットを回動させるように構成されている操舵力伝達機構と、 をさらに備えている、車両」 〔相違点〕 本願発明の「左緩衝装置」、「右緩衝装置」が、 「前記左緩衝装置は、 前記左ブラケットに支持されている左前アウタチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記左前アウタチューブの後方で前記左ブラケットに支持されている左後アウタチューブと、 前記左前アウタチューブに連結されており、前記左前アウタチューブの内側を左伸縮軸線に沿って摺動可能とされている左前インナチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記左前インナチューブの後方で前記左後アウタチューブに連結されており、前記左後アウタチューブの内側を前記左伸縮軸線に沿って摺動可能とされている左後インナチューブと、 一端が前記左前インナチューブと前記左後インナチューブに支持されており、他端が前記左前輪を支持している左車軸と、 前記左前アウタチューブと前記左後アウタチューブを連結している左連結部材と、 を備えており、 前記右緩衝装置は、 前記右ブラケットに支持されている右前アウタチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記右前アウタチューブの後方で前記右ブラケットに支持されている右後アウタチューブと、 前記右前アウタチューブに連結されており、前記右前アウタチューブの内側を右伸縮軸線に沿って摺動可能とされている右前インナチューブと、 前記車体フレームの前後方向における前記右前インナチューブの後方で前記右後アウタチューブに連結されており、前記右後アウタチューブの内側を前記右伸縮軸線に沿って摺動可能とされている右後インナチューブと、 一端が前記右前インナチューブと前記右後インナチューブに支持されており、他端が前記右前輪を支持している」 というものであるのに対し、引用発明の「左緩衝器33」(左緩衝装置)及び「右緩衝器34」(右緩衝装置)は、 「前記左サイド部53は、左緩衝器33の上部を左操舵軸線Y1回りに回転可能に支持し、 前記左緩衝器33は、第1下側部33aおよび第1上側部33bを有し、第1下側部33aは、上下方向に延び、その下端側に左車輪軸314が支持され、左車輪軸314は、左前輪31を支持し、第1上側部33bは、その一部が第1下側部33aに挿入された状態で、第1下側部33aの上側に配置され、第1上側部33bは、第1下側部33aの延びる方向において、第1下側部33aに対して相対移動可能であり、第1上側部33bの上部は、第1ブラケット317に固定され、 第1下側部33aおよび第1上側部33bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成しており、 前記右サイド部54は、右緩衝器34の上部を右操舵軸線Y2回りに回転可能に支持し、 前記右緩衝器34は、第2下側部34aおよび第2上側部34bを有し、第2下側部34aは、上下方向に延び、その下端側に右車輪軸324が支持され、右車輪軸324は、右前輪32を支持し、第2上側部34bは、その一部が第2下側部34aに挿入された状態で、第2下側部34aの上側に配置され、第2上側部34bは、第2下側部34aの延びる方向において、第2下側部34aに対して相対移動可能であり、第2上側部34bの上部は、第2ブラケット327に固定され、 第2下側部34aおよび第2上側部34bは、前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成している」 というものであって、左前の「第1下側部33a」(左前アウタチューブ)、左前の「第1上側部33b」(左前インナチューブ)、左後の「第1下側部33a」(左後アウタチューブ)、左後の「第1上側部33b」(左後インナチューブ)、右前の「第2下側部34a」(右前アウタチューブ)、右前の「第2上側部34b」(右前インナチューブ)、右後の「第2下側部34a」(右後アウタチューブ)、右後の「第2上側部34b」(左後インナチューブ)の車体側及び車輪側の支持に関するアウタチューブ、インナチューブの関係が逆であり、また、「第1下側部33aおよび第1上側部33b」、「第2下側部34aおよび第2上側部34b」は、「前後に並列して連結された2つのテレスコピック要素を構成」するものではあるが、連結部材の特定がない点。 第6 判断 上記相違点について検討する。 1 上記「第4 3(2)」の[0012]の「アウターチューブ20,30が車体側に連結されるとともに、インナーチューブ21,31が車輪側に連結される構成としてもよい」との記載から、引用文献2には[図2]等に示されるアウターチューブ20,30とインナーチューブ21,31の車体側、車輪側の関係を逆としているものも実質的に開示されているといえる。そして、その場合、インナーチューブ21,31に対し、前輪Wの車軸の連結部35がどのような構成となっているのかの直接的な記載はない。しかしながら、インナーチューブはアウターチューブより細く剛性確保を考慮する必要があることや、車両の左右前輪の緩衝装置において、車軸を前後のチューブを繋げる部材に支持するようにすることは技術常識(一例として、特開2008-168893号公報の【図2b】、【図3】等参照。)であることから、上述のアウターチューブ20,30とインナーチューブ21,31の車体側、車輪側の関係を逆としているものにおいては、インナーチューブ21,31を繋げる部材を設け、それを車軸を支持する連結部とする構成としていると解するのが自然である。 そうすると、引用文献2には、上記「第4 3」の各記載事項及び[図2]の記載からみて、次の技術的事項が記載されているといえる。なお、便宜上符号はそのまま用いた。 「前輪二輪型の鞍乗型車両の懸架装置において、 車体側に連結される車体側連結部材1と、車体側連結部材1によって連結される前後一対のテレスコピック型のチューブ部材2,3と、を備え、これらチューブ部材2,3で前輪(車輪)Wを一方側から支持し、 前後のチューブ部材2,3は、車体側に連結されるアウターチューブ20,30と、車輪側に連結されてアウターチューブ20,30に出入りするインナーチューブ21,31と、を有するテレスコピック型であり、 前後のアウターチューブ20,30には、他方のアウターチューブに向けて延びる上下一対の連結ボス22,23,32,33が設けられ、前側のアウターチューブ20の連結ボス22,23と後側のアウターチューブ30の連結ボス32,33とがボルトB1,B2により締結されることにより、前後のチューブ部材2,3は平行に起立し、 インナーチューブ21,31を繋げる部材を設け、それを車軸を支持する連結部とした」技術的事項。 ここで、上記引用文献2に記載された技術的事項の「連結ボス22,23」、「連結ボス32,33」、「ボルトB1,B2」は、車両の左右両側にあることは自明のことであり、「アウターチューブ20,30」を連結するものであるから、本願発明の「左連結部材」、「右連結部材」に相当する。 また、上記引用文献2に記載された技術的事項の「インナーチューブ21,31を繋げる部材を設け、それを車軸を支持する連結部とした」ことは、本願発明の「一端が前記左前インナチューブと前記左後インナチューブに支持されており、他端が前記左前輪を支持している左車軸」及び「一端が前記右前インナチューブと前記右後インナチューブに支持されており、他端が前記右前輪を支持している」という事項に相当することも明らかである。 そして、引用発明も引用文献2に記載された技術的事項も共にテレスコピック式の左右の緩衝装置を備える車両に関する技術であり、共通する技術分野に属するといえ、引用文献2にアウターチューブ20,30とインナーチューブ21,31の車体側、車輪側への配置関係を正逆どちらにでも構成できることが記載されているのであるから、どちらを選ぶのかは単なる設計事項というべきであり、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、上記引用文献2に記載された技術的事項は「前後のアウターチューブ20,30には、他方のアウターチューブに向けて延びる上下一対の連結ボス22,23,32,33が設けられ、前側のアウターチューブ20の連結ボス22,23と後側のアウターチューブ30の連結ボス32,33とがボルトB1,B2により締結されることにより、前後のチューブ部材2,3は平行に起立し」ているものであるから、緩衝装置の剛性が高められることに加え、路面から入力される負荷により生じるねじれを抑制できることは、その構成から自明のことであり、ねじれが抑制されればトー角やキャンバ角に与える影響が抑制できることも当業者であれば十分予測可能なことであるので、本願発明が奏する作用効果について検討しても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項から予測される範囲内にとどまるといえる。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 請求人は審判請求書の「3.(3-2)」において、引用文献2に記載された技術的事項に関し、「引用発明2におきましては、左前輪Wを支持している左車軸の一端は、左後アウターチューブ30のみによって支持されています(段落0013)。具体的には、左前輪Wを支持している左車軸の一端は、左後アウターチューブ30における連結部材(連結ボス23,33,ボルトB2)から下方に延長された部位のみによって支持されています。すなわち、左車軸(連結部35)は、左前アウターチューブ20には支持されておりません。引用発明2においては、アウタチューブとインナチューブの位置関係を逆にしてもよいとされていますが(段落0012)、仮にそのような変更を適用したとしても、左車軸が前後のインナチューブによって支持されるという要件Jを満足することはできません。」と主張する。 引用文献2に記載された技術的事項の認定は、上記「1」のとおりであるが、請求人の主張について検討する。 請求人の主張は、「連結部35」が「インナーチューブ21」と「インナーチューブ31」の両者に直接設けられる構成にならないことを意図しているようである。 しかしながら、「支持」(字義は「ささえること。ささえて持ちこたえること。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])に関し、本願の請求項1では「一端が前記左前インナチューブと前記左後インナチューブに支持されており、他端が前記左前輪を支持している左車軸」、「一端が前記右前インナチューブと前記右後インナチューブに支持されており、他端が前記右前輪を支持している右車軸」という記載であって、「支持」する部材の具体的構成の特定はないものであるから、当該主張は、請求項1の記載に基づくものとはいえず、請求人の主張は採用できない。 仮に請求人のいうように、インナーチューブ31のみに連結部35が設けられる構成であったとしても、インナーチューブ21にも力を伝達する構成となっていなければ、チューブ部材2は機能しないのであるから、インナーチューブ21とインナーチューブ31を連結する部材が必要となることは至極当然のことである(引用文献2の[図2]のものにおいても、「車軸」は、その一端が「連結部35」を介して「アウターチューブ30」に支持され、さらに「連結ボス22,23」、「連結ボス32,33」、「ボルトB1,B2」を介して「アウターチューブ20」にも支持されている。)。 そして、そのようなものであるなら、「車軸」はその一端が「インナーチューブ21」と「インナーチューブ31」に「支持されて」いるといえる。 したがって、この場合であったとしても、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-03-29 |
結審通知日 | 2019-04-02 |
審決日 | 2019-04-15 |
出願番号 | 特願2016-125511(P2016-125511) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B62K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 信成、志水 裕司 |
特許庁審判長 |
島田 信一 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 氏原 康宏 |
発明の名称 | 車両 |
代理人 | 特許業務法人 信栄特許事務所 |