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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E04H
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
管理番号 1352273
異議申立番号 異議2018-700051  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-22 
確定日 2019-04-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6169387号発明「住宅構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6169387号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6169387号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6169387号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成25年3月27日に特許出願され、平成29年7月7日にその特許権の設定登録がされ、平成29年7月26日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1ないし3に係る特許について、平成30年1月22日に特許異議申立人古川慎二(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成30年3月29日付けで取消理由(発送日:平成30年4月4日)が通知され、その指定期間内である平成30年5月31日に意見書の提出及び訂正請求がされ、平成30年7月12日に申立人より意見書が提出され、同年10月2日付けで取消理由(決定の予告)(発送日:平成30年10月9日)が通知され、同年12月6日に意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正」という。)がされ、平成31年2月5日に申立人より意見書が提出されたものである。

なお、本件訂正が請求されたことにより、平成30年5月31日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「仕切り面を介して屋内空間と半屋外空間とが隣接して設けられる住宅の構造であって」とあるのを、「仕切り面を介して、1階の居室である屋内空間と、屋外の庭に面するテラス空間である半屋外空間とが隣接して設けられ、前記屋内空間と前記半屋外空間とを含めた空間が立体的なつながりを持った大空間として演出される住宅の構造であって」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。)。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記屋内空間における前記床部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の床部を形成し、
前記屋内空間における前記天井部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の天井部を形成し、
前記屋内空間における前記1対の壁部のうちの少なくとも一方は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の壁部を形成する」とあるのを、
「前記屋内空間における前記床部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の床部を形成し、
前記屋内空間における前記天井部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の天井部を形成し、
前記屋内空間における前記1対の壁部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の1対の壁部を形成し、前記半屋外空間は、前記屋内空間の床部、天井部、および、1対の壁部のそれぞれと連続するように設けられた床部、天井部、および、1対の壁部によって囲まれ、かつ、前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。)。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項
(1)訂正事項について
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的の適否について
訂正後の請求項1に係る発明では、「屋内空間」が1階の居室であり、「半屋外空間」が屋外の庭に面するテラス空間であることを明らかにするとともに、「住宅の構造」において、仕切り面を介して隣接する(1階の居室である)屋内空間と(屋外の庭に面するテラス空間である)半屋外空間とを含めた空間が立体的なつながりを持った大空間として演出されることを具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、「屋内空間」及び「半屋外空間」の構成並びに「住宅の構造」について限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
「屋内空間」が1階の居室であること及び「半屋外空間」が屋外の庭に面するテラス空間であることは、願書に添付した明細書の段落【0004】に、「特許文献1?3のような住宅では、屋内(居室)空間内での開放感は得られても、屋内空間と半屋外空間との一体感までは得られない。」と記載され、【0013】に、「半屋外空間6は、たとえば1階部分の軒下に位置するテラス空間である。したがって、半屋外空間6の屋外側は、住宅1の庭であることとする。」と記載され、そして、【0017】に、「屋外(庭)の風景が、半屋外空間6を介して屋内空間3としての部屋いっぱいに取り込まれる。その結果、屋内空間3が、庭へと拡がっていくような感覚がもたらされる。」と記載されていることからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、住宅の構造において、屋内空間と半屋外空間とを含めた空間が立体的なつながりを持った大空間として演出されることは、願書に添付した明細書の段落【0017】に、「本実施の形態によれば、屋内空間3と半屋外空間6とを含めた空間が、立体的なつながりを持った大空間として演出される。」と記載され、段落【0018】に、「屋内空間3および半屋外空間6の立体的なつながりをより強調させるために・・・」と記載され、そして、段落【0027】に、「これにより、屋内空間3Aと半屋外空間6Aとを含めた空間を、より立体的なつながりを持った1つの空間として演出することができる。」と記載されていることからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「半屋外空間」の「壁部」を、前記屋内空間における1対の壁部が、前記仕切り面を越えて、半屋外空間に向かって段差なく延びることで形成される1対の壁部と限定するとともに、「半屋外空間」が形成される位置を、前記屋内空間の床部、天井部、および、1対の壁部のそれぞれと連続するように設けられた床部、天井部、および、1対の壁部によって囲まれ、かつ、前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、「半屋外空間」の「壁部」の構成及び「半屋外空間」が形成される位置を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(ウ)明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
「前記屋内空間における前記1対の壁部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の1対の壁部を形成」していることは、願書に添付した明細書の段落【0017】に、「なお、壁部33および壁部63それぞれと対向する2つの壁部の壁面(図1において不図示)も、略面一形状とされてよい。」と記載され、段落【0027】に、「屋内空間3Aにおける1対の壁33,34と、半屋外空間6Aの壁63,64との両方が連続するように設けられている。つまり、屋内空間3Aの1対の壁33,34の両方が、仕切り面5の透光面51を超えて、半屋外空間6Aにまで段差なく延びることで、半屋外空間6Aの1対の壁63,64を形成している。」と記載され、そして、願書に添付した図3に記載されていることからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
また、「前記半屋外空間」が、「前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」ことは、願書に添付した明細書の段落【0013】に、「半屋外空間6の屋外側は、住宅1の庭であることとする。」と記載され、段落【0023】に、「半屋外空間6Aは、たとえば、妻側の外壁よりも奥まった位置に形成されたインナーバルコニー空間、または、テラス空間である。」と記載されていること、そして、願書に添付した図面の図3に、屋内空間における1対の壁部が、仕切り面を越えて、半屋外空間に向かって段差なく延びることで、半屋外空間の1対の壁部を形成されていることが記載されていることからみて、明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 一群の請求項について
訂正前の請求項1?3は、請求項2及び3が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1及び2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1?3について訂正を認める。

第3 取消理由通知に記載した取消理由について
1 訂正後の請求項に係る発明
上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれの発明を「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
仕切り面を介して、1階の居室である屋内空間と、屋外の庭に面するテラス空間である半屋外空間とが隣接して設けられ、前記屋内空間と前記半屋外空間とを含めた空間が立体的なつながりを持った大空間として演出される住宅の構造であって、
前記屋内空間は、床部、天井部、および、対向する1対の壁部によって囲まれ、
前記仕切り面は、透光面により形成されており、
前記屋内空間における前記床部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の床部を形成し、
前記屋内空間における前記天井部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の天井部を形成し、
前記屋内空間における前記1対の壁部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の1対の壁部を形成し、
前記半屋外空間は、前記屋内空間の床部、天井部、および、1対の壁部のそれぞれと連続するように設けられた床部、天井部、および、1対の壁部によって囲まれ、かつ、前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている、住宅構造。
【請求項2】
前記住宅は、勾配屋根を有し、
前記屋内空間および前記半屋外空間の天井部は、前記勾配屋根の勾配に沿って形成される、請求項1に記載の住宅構造。
【請求項3】
略面一形状である前記屋内空間の前記壁部および前記半屋外空間の前記壁部それぞれに沿って、その一端が前記仕切り面と当接するように配置される、略同一高さの突出部材をさらに備える、請求項1または2に記載の住宅構造。」

2 取消理由通知の概要
平成30年5月31日付け訂正請求書により訂正された請求項1ないし3に係る特許に対して通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、または、甲第1号証に記載された発明及び周知技術、甲第2号証に記載された発明及び周知技術、又は甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術、甲第2号証及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術、又は甲第6号証及び甲第4号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証及び甲第6号証に記載された発明並びに周知技術、甲第2号証及び甲第6号証に記載された発明並びに周知技術、又は甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

3 各甲号証及び文献について
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証の記載事項
取消理由通知において引用した甲第1号証(別冊住まいの設計189MYHOME100選,株式会社扶桑社,2012年9月30日,VOL.11,p.204-205,208-209)には、写真及び図とともに以下の事項が記載されている。

(ア)208頁の上方の写真から、
a ベッドが設置された室内の空間と床に長方形の床材が複数敷き詰められたた屋外の空間とを仕切る面部を介して、ベッドが設置された室内の空間と長方形の床材が複数敷き詰められた屋外の空間とが隣接して設けられている住宅の構造であって、室内の空間は、床、天井、および、対向する1対の壁によって囲まれている点が看て取れる。
b また、上記の仕切る面部は、室内から屋外を見通せるようになっている点が看て取れる。
c さらに、ベッドが設置された室内の空間を構成する床と、屋外の空間に形成された床とが段差なく隣接している点、室内の空間の天井と、屋外の空間に形成された天井とが段差なく隣接している点、そして、室内の空間における1対の壁部のうちの一方(右側)の壁と、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間に隣接する一方の壁とが段差なく隣接している点が看て取れる。
d さらに、屋外に樹木が植生している点が看て取れる。(なお、写真の右上には、「建物の一番西側、玄関から最も奥に位置する寝室。庭側は前面開口になっている・・・」と記載されている。)

(イ)205頁の写真から、長方形の床材が複数敷き詰められた屋外の空間は、天井が形成されている空間と、当該空間の外側において、天井が形成されず吹き抜け状になっており、天井の高さより上方に至る樹木が植生した吹き抜け状空間を含んでいる点が看て取れる。

(ウ)209頁の下方に記載された間取りから、1Fの室内の空間の一部に、「寝室」と記載された領域、及び、この領域に隣接する屋外の領域が看て取れるとともに、屋外の空間が平面視で、建物に沿った点線によって「寝室」側と「隣地」側に区分されている点が看て取れる。さらに、2Fの「バルコニー」の「隣地」側に、一点鎖線によるX状の記号が記載されている点が看て取れる。

(エ)上記(イ)及び(ウ)から、長方形の床材が複数敷き詰められた屋外の空間は、バルコニーの軒裏部分を天井とし、その下に位置する屋外天井下空間と、当該空間の外側に設けられた、天井が形成されず、樹木が植生した吹き抜け状空間とを含んでいるといえる。

(オ)上記(ア)のベッドが設置された室内の空間及び上記(イ)の樹木が植生した空間の位置関係と、上記(ウ)の間取りの「寝室」と記載された領域及びこれに隣接する屋外の領域の位置関係を比べると、ベッドが設置された室内の空間は、「寝室」であるといえる。

(カ)209頁の下方に記載された間取りから、寝室における1対の壁のうち他方(東側)の壁をはさんで浴室及び洗面が設けられ、住宅の他方(東側)において、1Fのスタディルームの駐車場側に住宅の外壁を有している点が看て取れる。また、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間に隣接する一方の壁は、隣地との境界の近くまで寄せられて設けられている点が看て取れる。

(キ)209頁の下方に記載された間取り



なお、上記間取りにおいて、囲み及び数字等は、申立人が記入したものであり、甲1発明の認定には考慮していない。以下の甲各号証においても同様である。

イ 甲第1号証に記載された発明の認定
上記アの(ア)?(キ)から、甲第1号証には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
(甲1発明)
「仕切る面部を介して、1Fの寝室の空間と、長方形の床材が複数敷き詰められ、バルコニーの軒裏部分を天井とし、その下に位置する屋外天井下空間とが隣接して設けられ、当該屋外天井下空間の外側に、天井が形成されず、樹木が植生した吹き抜け状空間が設けられた住宅の構造であって、
1Fの寝室の空間は、床、天井、および、対向する1対の壁によって囲まれ、
上記仕切る面部は、室内から屋外を見通せるものであって、
1Fの寝室の空間の床と、屋外天井下空間の床とが、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
1Fの寝室の空間の天井と、屋外天井下空間に形成された天井とが、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
1Fの寝室の空間における1対の壁のうちの一方の壁と、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間に隣接する一方の壁とが、仕切る面部を介して段差なく隣接するとともに、当該屋外天井下空間及び吹き抜け状空間に隣接する一方の壁が隣地との境界の近くまで寄せられて設けられ、
寝室の他方の壁をはさんで浴室及び洗面が設けられ、
住宅の他方において、1Fのスタディルームの駐車場側に住宅の外壁を有している住宅の構造。」

(2)甲第2号証
ア 甲第2号証の記載事項
取消理由通知において引用した甲第2号証(別冊新しい住まいの設計156 MY HOME100選,株式会社扶桑社,2009年3月30日,VOL.4,P.72-77)には、写真及び図とともに以下の事項が記載されている。
(ア)73頁の右下の写真から、
a ベッドが設置された室内の空間と屋外の空間とを仕切る面部を介して、ベッドが設置された室内の空間と屋外の空間とが隣接して設けられている住宅の構造であって、室内の空間は、床、天井、および、対向する1対の壁によって囲まれている点が看て取れる。
b また、上記の仕切る面部は、室内から屋外を見通せるようになっている点が看て取れる。
c さらに、ベッドが設置された室内の空間を構成する床と、屋外の空間に形成された床とが段差なく隣接している点、室内の空間の天井と、屋外の空間に形成された天井とが段差なく隣接している点、そして、室内の空間における1対の壁うち、写真の左側の壁と屋外の空間の壁とが段差なく隣接している点が看て取れる。
d 室内の空間の天井と同じ高さに位置する天井が、屋外の空間に延出して形成され、その下に空間が位置している点が看て取れる。

(イ)73頁の上の写真から、室内の空間の床にベッドが配置された点が看て取れる。

(ウ)73頁の上の写真の下方に、「1階のひろびろとした寝室。1階の居室はここのみ。将来、家族が増えたときにはベッドの奥側を個室にできるようになっている」と記載されている。

(エ)73頁の左下の写真から、床材が敷き詰められた屋外の空間は、天井が形成され、その下に位置した屋外天井下空間と、当該屋外天井下空間の外側に設けられた、天井が形成されず、植物が設置されている吹き抜け状空間とを含んでいる点が看て取れる。なお、屋外の空間の床については、複数の床材が敷き詰められており、床材が概ね天井が形成されている領域の床と、天井が形成されず、植物が設置されている領域の床とが、色若しくは模様により区別されうるようになっている点が看て取れる。

(オ)73頁の左下の写真の上方に「1階南側の外1空間。2階の明るさとも北側の暗さとも異なり、明るさのグラデーションを感じさせる。ここから見上げる空は白い壁に切り取られて青さを増す」と記載されている。

(カ)77頁に記載された間取りから、1Fの室内の空間に、「寝室」と記載された領域、及び、この領域に隣接する外側に、「外1」と記載された領域が看て取れる。

(キ)上記(ア)dのベッドが設置された室内の空間及び植物が設置された空間の位置関係と、上記(カ)の間取りの「寝室」と記載された領域及びこれに隣接する屋外の領域の位置関係を比べ、更に上記(ウ)の記載を踏まえると、ベッドが設置された室内の空間は、「寝室」であるといえる。

(ク)72頁の左下の写真の説明には、「外壁後退の規制をクリアするギリギリのラインで高い壁を回して領域を囲い込む。」と記載されている。

(ケ)77頁に記載された間取り




イ 甲第2号証に記載された発明の認定
上記アの(ア)?(ケ)から、甲第2号証には以下の発明(甲2発明)が記載されていると認められる。
(甲2発明)
「仕切る面部を介して、1Fの寝室の空間と、床材が複数敷き詰められ、天井が形成され、その下に位置する屋外天井下空間とが隣接して設けられ、当該屋外天井下空間の外側に、天井が形成されず、植物が設置された吹き抜け状空間が設けられた住宅の構造であって、
1Fの寝室の空間は、床、天井、および、対向する1対の壁によって囲まれ、
上記仕切る面部は、室内から屋外を見通せるものであって、
1Fの寝室の空間の床と、屋外天井下空間に形成された床とが、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
1Fの寝室の空間の天井と、屋外天井下空間に形成された天井とが、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
1Fの寝室の空間における1対の壁部のうち、一方の壁と屋外天井下空間の壁とが、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
外壁後退の規制をクリアするギリギリのラインで高い壁を回して領域を囲い込んでいる、住宅の構造。」

(3)甲第3号証
ア 甲第3号証の記載事項
取消理由通知において引用した甲第3号証(アイデア住宅,株式会社ワールドフォトプレス,平成16年10月20日,Vol.21,p.24-27)には、写真とともに以下の事項が記載されている。
(ア)24-25頁にまたがる写真の左下には、「写真右/2階のフロアとフラットにつながるデッキテラス。」と記載されている。

(イ)27頁には、左上の写真について「写真左上/2階の子供部屋には、コンパクトな2段ベッドも収納されている。」と記載されている。

(ウ)24-25頁の写真、及び、27頁の上方の左の写真から、室内の空間と屋外の空間とを仕切る面部を介して、室内の空間と屋外の空間とが隣接して設けられている住宅の構造であって、室内の空間の、床、天井、および、対向する1対の壁が、屋外の空間に形成された床、天井、及び、室内空間のにおける1対の壁と段差なく隣接している点が看て取れる。

(4)甲第4号証
ア 甲第4号証の記載事項
取消理由通知において引用した甲第4号証(別冊住まいの設計177MYHOME100選,株式会社扶桑社,2011年3月20日,VOL.8,P.82-85、88、p.264-269)には、写真とともに以下の事項が記載されている。
(ア)267頁の下の写真から、勾配屋根を有し、テラスの天井が、勾配屋根と概ね同じ勾配で傾斜して形成されている住宅構造が看て取れる。

(イ)268-269頁の写真から、勾配屋根を有した住宅構造において、屋内空間の床、天井及び一対の壁と、屋外空間の床、天井及び一対の壁とが段差なく隣接している点が看て取れる。

(ウ)268-269頁の写真の左下には、「片流れの天井」と記載されている。

(エ)268頁の下方に、「間仕切りもほとんどない一室空間で、テラスにより外部とも一体化。」、「東側の大開口からはたっぷりと朝日が入り」と記載されている。

(オ)269頁の下方の間取り(2F)には、LDKの外方にテラスが配置されている点や、LDK内におけるの1対の壁が、仕切る面部を越えて、屋外空間に向かって段差なく延びている点が看て取れる。

(カ)269頁の下方の間取り(1F)には、浴室の外方にテラスが配置されている点や、浴室内におけるの1対の壁のうち一方が、仕切る面部を越えて、屋外空間に向かって段差なく延びている点が看て取れる。

(キ)267頁には、「休日には好きな音楽を聴きながら、ゆっくりお風呂につかる。・・・窓の外には室内と連続するテラスがあり、その向こうは芝生・・・を見渡せる。」(上段3-9行)と記載されている。

(ク)267頁の上の写真3から、浴室である室内側の浴槽上部の平面部と天井部が、仕切る面部を越えて、屋外空間の床部と屋根部それぞれに延び、屋外空間は、緑地に面している点が看て取れる。

(ケ)上記(イ)及び(オ)から、268頁の写真に記載の屋外空間はテラスであるといえる。

(コ)上記(キ)及び(ク)から、267頁の上の写真3に記載の屋外空間にはテラスがあり、当該テラスは緑地(芝生)に面しているといえる。

(5)甲第5号証
ア 甲第5号証の記載事項
甲第5号証(LiVES Living&Lifestyle Magazine,株式会社第一プログレス,2011年10月1日,Vol.59,p.146)には、写真とともに以下の事項が記載されている。
(ア)2枚目の写真から、室内の空間が床、天井、および、壁によって囲まれた点が看て取れる。

(6)甲第6号証
ア 甲第6号証の記載事項
甲第6号証(I'm home:high end design and lifestyle,2005 AUTUMN no.20,「光と影が織りなすミニマムな世界」及び「Bringing light into minimumミニマムデザインの旗手・・」の記載があるページ,及びp.20-23,28)には、写真とともに以下の事項が記載されている。
(ア)21頁の写真から、
a ソファが配置された室内の空間と床材が複数敷き詰められた屋外の空間とを仕切る面部を介して、ソファが配置された室内の空間と床材が複数敷き詰められた屋外の空間とが隣接して設けられている住宅の構造であって、ソファが配置された室内の空間は、床、天井、および、壁によって囲まれている点が看て取れる。
b また、上記の仕切る面部を介して、室内の空間から屋外の空間において植生している樹木を見通せるようになっている点が看て取れる。
c また、室内の空間を構成する床と、屋外の空間に形成された床とが段差なく隣接している点、室内の空間の天井と、屋外の空間に形成された天井とが段差なく隣接している点、そして、室内の空間における、片側(写真の左側)の壁と屋外の空間の壁とが段差なく隣接している点が看て取れる。(屋外の空間に天井が形成されていることは、樹木の上部が、仕切る面部の上端より少し下方で切れていることからよみとれる。)
d さらに、室内の空間の壁及び屋外の空間の壁それぞれに沿って、その一端が仕切る面部と近接するように配置される略同一高さのベンチを備えた点が看て取れる。

(イ)20頁の下方の写真の説明には、「左頁(注:「21頁」のこと)/リビングの窓を開け放てば心地よい外気を感じられ・・・」及び「前頁(注:「光と影が織りなすミニマムな世界」及び「Bringing light into minimumミニマムデザインの旗手・・」の記載があるページ)右/中庭から見たリビング。・・・」と記載されている。

(ウ)「光と影が織りなすミニマムな世界」及び「Bringing light into minimumミニマムデザインの旗手・・」の記載があるページの写真から、
床材が複数敷き詰められた屋外の空間は、天井が形成され、その下に位置する屋外天井下空間と、当該屋外天井下空間の外側に設けられた、天井が形成されず吹き抜け状となっており、樹木が植生した吹き抜け状空間を含んでいる点が看て取れる。

(エ)28頁の左側に記載された間取には、「1F PLAN」と「2F PLAN」の記載があり、「1F PLAN」の間取りから、1Fの番号5の場所が「LIVING」であること、及び、番号6の場所が「COURTYARD」であることが看て取れるとともに、屋外の空間が、平面視で、縦方向の点線によって、5の「LIVING」側と「隣地」側に区分されている点が看て取れる。さらに、「2F PLAN」の間取りから番号12の場所が「TERRACE」であること、そして、番号13が「VOID」とされ一点鎖線によるX状の記号が記載されている点が看て取れる。
また、「1F PLAN」の間取りには、番号5及び番号6の場所の壁に沿って設けられた部位に「Bench」との文字が付された点、及び番号5の壁に沿って設けられた部位と番号6の場所の壁に沿って設けられた部位の両者が、番号5の場所と番号6の場所とを仕切る線に対して隙間を置くことなく、記載されている点が看て取れる。
さらに、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間をはさんで、1対の壁が設けられている点が看て取れる。
さらに、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間をはさむ1対の壁のうち一方の壁が、「LIVING」の一方の壁と仕切る面部を介して段差なく隣接する点が看て取れる。
さらに、「LIVING」の一方の壁が、住宅の外壁になっている点が看て取れる。
さらに、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間をはさむ1対の壁のうち他方の壁(28頁の間取り(1F)における下側の壁)が、住宅の外壁(TEA ROOM7における概ね北東側の壁)に連なっている点が看て取れる。

(オ)上記(ア)のソファが配置された室内の空間及び樹木が植生した屋外の空間の位置関係と、上記(エ)の間取りの「LIVING」と記載された領域及びこれに隣接する屋外の領域の位置関係を比べると、ソファが配置された室内の空間は、「LIVING」であるといえ、上記bを踏まえると、当該室内の空間は、「リビング」であるといえる。

(カ)上記(エ)の間取りの「TERRACE12」の右端の位置が、「LIVING5」と「COURTYARD6」との境界の位置よりも右側に位置していることから、上記アのcの屋外の空間に形成される天井は、前記「TERRACE12」の軒裏部分であるといえる。

(キ)22頁の下段2-6行
「手塚邸は、モミジを植えた中庭を中心に、高さ約6m、2層分の壁が取り囲む。家が建ち並ぶ都市型の立地であるため、この壁面は外部環境に対するスクリーンとしての役割を担い、同時に採光も考慮されている。」

(ク)28頁の右下の写真には、住宅に隣接して、別の住宅が建てられている点が看て取れる。前記写真における住宅の配置と、前記別の住宅が建てられている方向からみて、前記別の住宅が建てられている方向は、上記(エ)の間取りにおける、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間をはさむ1対の壁のうち他方の壁が連なる住宅の外壁側であるといえる。

(ケ)28頁の左側に記載された間取り




イ 甲第6号証に記載された発明
上記アの(ア)?(ケ)から、甲第6号証には以下の発明(以下、「甲6発明」という。)または甲第6号証に記載された事項が記載されていると認められる。
(甲6発明)
「仕切る面部を介して、1Fのリビングの空間と、床材が複数敷き詰められ、天井が形成され、その下に位置する屋外天井下空間とが隣接して設けられ、当該屋外天井下空間の外側に、天井が形成されず、天井の高さより上方に至る樹木が植生した吹き抜け状空間が設けられた住宅の構造であって、
1Fのリビングの空間は、床、天井、および、壁によって囲まれ、
上記仕切る面部は、室内から屋外を見通せるものであって、
1Fのリビングの空間の床と、屋外天井下空間の床とが、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
1Fのリビングの空間の天井と、屋外天井下空間に形成された天井とが仕切る面部を介して段差なく隣接し、
前記屋外天井下空間及び吹き抜け状空間をはさんで1対の壁が設けられ、
当該1対の壁のうち一方の壁は、1Fのリビングの空間の一方の壁と、仕切る面部を介して段差なく隣接し、
さらに、1Fのリビングの空間の一方の壁が、住宅の外壁の1部であり、当該1対の壁のうち他方の壁は、隣接して別の住宅が建てられている側の住宅の外壁に連なり、
さらに、1Fのリビングの空間の壁並びに当該1対の壁のうち一方の壁に沿って、その一端が仕切る面部と近接するように配置される略同一高さのベンチを備えている、
住宅の構造。」

(7)甲第7号証
ア 甲第7号証の記載
甲第7号証(特開2012-1891号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
この発明は、例えばリビング室や和室等の居室空間の屋外側に、床部及び屋根部を備えた半屋外空間を設けた住宅に関する。」

(イ)「【0020】
開口部3は、その幅寸法Wが4000mm以上(具体的には、4000mm)、高さ寸法Hが2000mm以上(具体的には、2000mm?2300mm)の大開口とされている。この開口部3には、床面に跨ぎ段差が生じないようにして、フルフラットサッシ30が設けられている。
【0021】
この住宅においては、居室空間1の天井部15における半屋外空間2の屋根部21の張出寸法L1に相当する長さ分だけ開口部3から屋内側に入り込んだ部位に、境界用段差16が開口部3の幅方向に沿って設けられている。そして、居室空間1における開口部3から境界用段差16までの開口部近傍空間10の天井面15aの高さレベルが、その開口部近傍空間10よりも境界用段差16を挟んで屋内側(奥側)に位置する開口部離間空間11の天井面15bの高さレベルよりも例えば200mm程度低くなっていて、開口部近傍空間10の天井面15aと半屋外空間2の屋根部21の軒裏面21aとが略同じ高さレベル(略面一)に揃うようにして連続されている。なお、より具体的に説明すると、開口部近傍空間10は、境界用段差16から開口部3に対して平行に垂下させた仮想垂直面18(図3参照)と開口部3との間の空間である。」

(ウ)図1から、フルフラットサッシ30が、居室空間1から半屋外空間2を見通すことがでいる部材である点が看て取れる。

(エ)図1から、屋根部21を有する半屋外空間2が、樹木や草などが植生している領域に面している点が看て取れる。

(8)甲第8号証
ア 甲第8号証の記載事項
甲第8号証(特開2005-42459号公報)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0023】
上記、リビング20の南側には窓20aおよび西側には窓20bが設けられ、リビング20および窓20aに隣接してデッキスペース24が配置されている。このデッキスペース24は、リビング20の間口と同様の大きさに形成され、建物外部と連絡した開放的な空間として形成されている。すなわち、図に示すように、リビング20側に第2の出入り口23bを備えた大型収納室23とリビング20とデッキスペース24とが一直線上に連続して形成され、全体として一つの空間として構成されている。これにより、居住空間の有効利用を図ることができると共に、敷地面積に制限のある狭小住宅においても、閉疎感を感じることなく快適な居住空間を形成することができる。また、視線の通りも良好となる。」

(イ)図2から、リビング20に1対の壁が設けられている点及びデッキスペース24に1対の壁が設けられている点が看て取れる。

(9)文献1
ア 文献1の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開2012-1892号公報(以下、「文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
この発明は、例えばリビング室や和室等の居室空間の屋外側に、床部及び屋根部を備えた半屋外空間を設けた住宅に関する。」

(イ)【図1】




図1から、半屋外空間に面した樹木や草などの植物が植生している領域が看て取れる。

(10)文献2
ア 文献2の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開2012-251423号公報(以下、「文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
この発明は、例えばリビング室や和室等の居室空間の屋外側に、床部及び屋根部を備えた半屋外空間を設けた住宅に関する。」

(イ)【図1】




図1から、半屋外空間に面した樹木や草などの植物が植生している領域が看て取れる。

(11)文献3
ア 文献3の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開2002-174038号公報(以下、「文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リビングルーム内に土間を設けて半屋外的な雰囲気を楽しむことができる土間付きリビングルームのある住宅に関する。」

(イ)「【0013】
・・・リビング・ダイニングルーム10とキッチン15の南には、リビング・ダイニングルーム10の床高と同一レベルの土間16が設けられている。この土間16は、テーブルや椅子を設置して屋内のテラスとして使用したり、置物や鉢植えを置く展示スペースとして利用可能であり、この土間16によって、単調になりがちなリビング・ダイニングルーム10が変化に富んだものとなっている。前記土間16と庭4との間の壁には、掃き出し窓17が設けられ、土間16から庭4へ出入り可能となっている。・・・」

(ウ)【図1】



図1から、土間16に面した庭4が看て取れる。

(12)文献4
ア 文献4の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開2013-19100号公報(以下、「文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
この発明は、狭小敷地における庭構造に関する。」

(イ)「【0007】
・・・この実施の形態にかかる庭構造は、狭小敷地における庭Gを中心とした外構であって、この庭Gに面した居室1における温熱環境の向上(冬期に暖かく夏期に涼しく過ごせるようにする)にも心理面から寄与し得るものである。かかる庭構造は、典型的には、30坪以下の狭小敷地の庭Gに適用するのに適している。
【0008】
かかる庭構造は、庭Gに面した開口部1a(掃き出し窓)を介して居室1の床面1bに床面2bを連続させるように設置される屋外床部2と、
この屋外床部2の前方において、この屋外床部2の床面2bに植栽地盤面4aを連続させるように前記庭Gに形成された盛り上げ植栽領域4とを備えてなる。
【0009】
図1にかかる庭構造の概要構成を示す。図中符号2aはこの屋外床部2を庭Gの地盤面上に支持する脚部、符号3は庇である。また、図中符号Hは隣接する敷地に立てられている別の建物の外壁であり、符号Haはこの別の建物の窓である。」

(ウ)【図1】



図1から、屋外床部2に面した庭Gが看て取れる。

(13)文献5
ア 文献5の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開2012-211457号公報(以下、「文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
この発明は、建物の屋外(外周部)に設けられるポーチ、テラス、或いは犬走り等々の所謂「跳ね出し部」が、冬期に寒冷地の地盤が凍結して発生する凍上現象により破損等することを防止する構造ないし施工法の技術分野に属する。」

(イ)「【0013】
図1は、本発明による建物屋外跳ね出し部の凍上防止工法の実施例を示している。
建物1の外周部である屋外の地盤3上に建物基礎7と一体化した構造の跳ね出し部2を施工するにあたり、先ずは地盤3の掘削を行う。地盤3の掘削は、建物基礎7に相当する部分の地盤を掘削する工程と並行して、当該跳ね出し部2に相当する部分の直下地盤3を、跳ね出し部2の深さと平面形状に沿って掘削することになる。
地盤3の掘削に際しては、掘削底面である跳ね出し部の下面相当部は、建物1の基礎側から同跳ね出し部2の先端側に向かって、上向き勾配θの傾斜面に形成することが特徴である。前記上向き勾配θの具体的な大きさに関しては、後述するように地盤3に凍上現象が発生し、凍上力Fが作用した際に、跳ね出し部2の下面(傾斜面)に垂直な分力f2の大きさが、跳ね出し部2を破損させる虞のない範囲に設計することになる。
跳ね出し部2を建物基礎7に一端を固定した片持ち梁と見た場合に、垂直な力f2の大きさが、跳ね出し部2を破損させることのない安全率の範囲内の小さな数値となるように設計し施工することになる。
その一方で、跳ね出し部2の下面(傾斜面)に平行な分力f1は多少大きくても、この分力f1は滑り材6によって地盤3と跳ね出し部2とを縁切りしたから、縁切り面での滑りによって応力は解放される。よって、前記上向き勾配θの大きさは、前記垂直分力f2の大きさのみを考慮して決定すれば足り、具体的には30度以上とするのが好ましい。」

(ウ)【図1】



図1から、跳ね出し部2が地盤3と段差なく設けられている点が看て取れる。

(14)文献6
ア 文献6の記載事項
本件特許の出願前に頒布された、本間至、「プランニングからディテールまで How to Design the Ultimate Houses 最高の住宅をデザインする方法[新装版]」、株式会社エクスナレッジ、2011年3月2日、p.21,267(以下、「文献6」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)p.21の上方の図



上記図から、リビング及びダイニングに隣接するテラスが庭に面している点が看て取れる。
(イ)「■CASE15 所在地/東京都府中市 竣工/2007.8 施工/幹建設 構造/木造 ・・・」(p267 右列の上から三つ目の部分)

(15)文献7
ア 文献7の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開平9-291710号公報(以下、「文献7」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、南面の中途部にテラスのような凹入空間部が設けられた2階建て住宅に関し、比較的狭い敷地に建てる住宅に実施して好適なものである。」
(イ)「【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は南北に約6.5m、東西に約14mの矩形状の細長い敷地に建てられた本発明2階建て住宅の1階のレイアウトの一例を示す平面図である。
図1において、1は本発明2階建て住宅の南面の中途部に設けられた凹入空間部であり、凹入空間部1はテラスとして使用されている。凹入空間部1は奥行きの長さが約2m、幅の長さが約3mの矩形状であり、凹入空間部1には板張りのテラス床11が設けられ、テラス床11の前方には植樹12が施され、夏の太陽光を遮るようになっている。
【0012】
21は凹入空間部1の左方に設けられた1階の和室であり、和室21の広さは6畳であり、和室21の凹入空間部1との境界部には開閉できる掃き出し採光窓211が設けられ、和室21の南面には開閉できる採光窓212が設けられている。
【0013】
22は凹入空間部1の右方に設けられた1階の洋風居間であり、洋風居間22のテラス1との境界部には開閉できる掃き出し採光窓221が設けられ、洋風居間22の南面には出窓222が設けられている。
【0014】
凹入空間部1の左方の和室21の南面と右方の洋風居間22の南面とはほぼ同一立面上に一致されている。
23は凹入空間部1の後方に設けられた食堂であり、食堂23と凹入空間部1との境界部には開閉できる掃き出し採光窓231が設けられている。食堂23の後方には台所24が設けられている。
25は洋風居間22の後方に設けられた玄関ロビー、251は玄関ロビー25に隣接する玄関土間、252は玄関出入口、253は玄関ロビー25横に設けられた2階に通じる階段である。」

(ウ)【図1】




(16)文献8
ア 文献8の記載事項
本件特許の出願前に頒布された特開2000-54655号公報(以下、「文献8」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅に関し、特に、一部屋内に異なる居住領域を有する住宅に関する。」

(イ)「【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明に係る住宅の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明に係る住宅の1階部分の平面図である。
【0020】
図1に示す住宅1の一階部分には、南側のほぼ中央部に玄関ホール2が設けられている。この玄関ホール2の西側には居間3が配設されており、この居間3の更に西側には、簡易書斎4が配設されている。この簡易書斎4の床面は前記居間3の床面よりも一段高く形成されており、該簡易書斎4と前記居間3とは腰壁5によって区切られている。
前記居間3の北側には食堂6が配設され、この食堂6の床面は居間3の床面より一段高く、前記簡易書斎4の床面と同高さに形成されている。
【0021】
また、前記食堂6の北側には、台所7が配設され、この台所7と前記簡易書斎4との間には、テラス8が配設されている。このテラス8は、住宅1の西側の外壁から窪んだ位置に配設されており、前記食堂6から出入り出来るようになっている。
また、前記玄関ホール2の北側には、該玄関ホール2から一段あがった位置に第1の廊下10と第2の廊下11が設けられている。」

(ウ)【図1】



図1から、食堂6がテラスに隣接している点が看て取れる。

4 当審の判断
(1)甲第1号証を主引用例とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点A>
「テラス空間である半屋外空間」について、本件発明1では、「庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」のに対して、甲1発明では、そのような特定がなされていない点

(イ)判断
上記のとおり、本件発明1と甲1発明とは相違点Aがあるので、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

まず、本件発明1の「半屋外空間」の意義について検討する。
「庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」について、「住宅の外壁」が住宅の外側にある壁を意味しており、また、「奥まる」が「奥に位置する」(広辞苑第三版)を意味し、そして、「奥」が「内へ深く入った所」(同)を意味するから、「外壁より奥まった位置」とは、外壁より内側へ深く入った所の位置を意味しているといえる。また、本件発明1の半屋外空間は、「屋内空間の床部、天井部、および、1対の壁部のそれぞれと連続するように設けられた床部、天井部、および、1対の壁部によって囲まれ」ていると規定されている。
そうすると、本件発明1の「半屋外空間」は、庭側に配置された外壁より内側へ深く入ったところであって、1対の壁部によって囲まれてことになるから、半屋外空間の左右に存在する当該1対の壁は、庭側の外壁と連なる外壁であると解するのが自然である。

上記の理解に基づき、上記相違点Aについて検討する。(下記相違点B及びCにおける検討においても同様の理解に基づく。)
甲1発明の1Fの寝室の空間の1対の壁のうち一方の壁に仕切る面部を介して段差なく隣接する屋外天井下空間及び吹き抜け状空間の一方の壁は、隣地との境界の近くまで寄せられて設けられているから、「半屋外空間」を「庭側に配置された前記住宅の外壁より奥まった位置に形成」するために、外壁を設けることはできず、そのような外壁を設ける動機付けはないと言うべきである。
また、1Fの寝室の空間の1対の壁のうち他方の壁においては、屋外天井下空間及び吹き抜け状空間側に壁部を連続して突出させて設ける理由はなく、加えて、隣に、浴室、洗面及びスタディルームなどが存在するので、「半屋外空間」を「庭側に配置された前記住宅の外壁より奥まった位置に形成」するために、住宅の外壁を設ける理由もない。
したがって、甲1発明の「屋外天井下空間」や「吹き抜け空間」を「住宅の外壁より奥まった位置」とすることは、当業者が容易に想到しうることではない。
また、文献6?文献8などに記載されているように、テラスが住宅の外壁よりも奥まった位置に形成することが周知技術(上記第3の3(14)?(16)参照)であったとしても、甲1発明は、屋外天井下空間及び吹き抜け空間の一方の壁は、隣地との境界の近くまで寄せられて設けられていて、隣地との関係が制限されているものであり、「庭側の住宅の外壁より奥まった位置に形成」するために、外壁を設けることができないのであるから、甲1発明に対して当該周知技術を適用する動機付けはなく、仮に適用したとしても本件発明1のようになるとはいえない。
以上のことから、甲1発明において、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることではない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、「前記半屋外空間は、・・・前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」という訂正事項2の構成には、文献6のCASE15におけるテラスは、庭側に配置された住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」という構成が対応し、文献7の図1における「凹入空間部1(テラス床11部分)は、植樹12があるスペースに配置された住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」という構成が対応し、文献8の図1における「テラス8は、庭側に配置された住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」という構成が対応する旨主張している。(平成31年2月5日付け意見書2頁下から2行?3頁6行)

しかしながら、上記(イ)で説示したように、文献6、文献7及び文献8に記載されている上記構成が周知であるとしても、甲1発明に対して当該周知技術を適用し、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることではない。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。

また、甲第2号証ないし甲第8号証、及び、周知技術として提示された文献1ないし文献5をみても、相違点Aに係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、本件発明1は、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術(文献1ないし8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア参照)により、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術(文献1ないし8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、本件発明1?3は、甲1発明、及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(2)甲第2号証を主引用例とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明を対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点B>
「テラス空間である半屋外空間」について、本件発明1では、「庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」ているのに対して、甲2発明では、そのような特定がなされていない点

(イ)判断
上記のとおり、本件発明1と甲2発明とは相違点Bがあるので、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。

上記相違点Bについて検討する。
甲2発明は、住宅の構造の壁に関して「外壁後退の規制をクリアするギリギリのラインで高い壁を回し」たものであるから、甲2発明の、「屋外天井下空間」や「吹き抜け空間」を囲う壁に連ねて、さらに住宅の外壁を設けることはできない。
したがって、甲2発明の「屋外天井下空間」や「吹き抜け空間」を「住宅の外壁より奥まった位置」とする動機付けはなく、そのような構成とすることも当業者が容易に想到しうることではない。
また、文献6?文献8などに記載されているように、テラスが住宅の外壁よりも奥まった位置に形成することが周知技術(上記第3の3(14)?(16)参照)であったとしても、甲2発明は、屋外天井下空間及び吹き抜け空間の壁が、外壁後退の規制をクリアするギリギリのラインで回されたものであり、さらに外壁を設けることを想定できない住宅構造である点で周知技術とは前提が異なるのであるから、甲2発明に対して当該周知技術を適用する動機付けはなく、仮に適用したとしても本件発明1のようになるとはいえない。
以上のことから、甲2発明において、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることではない。

(ウ)申立人の主張について
上記(1)ア(ウ)で説示したことと同様である。

また、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第8号証、並びに、周知技術として提示された文献1ないし文献5をみても、相違点Bに係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。


(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、本件発明1は、甲2発明、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術(文献1ないし8)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア参照)により、甲2発明、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1は甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、また、本件発明1?3は、甲2発明、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

(3)甲第6号証を主引用例とした場合
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲6発明を対比すると、甲6発明の「住宅の外壁」が、本件発明1の「住宅の外壁」に相当する。
しかしながら、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点C>
「テラス空間である半屋外空間」について、本件発明1では、「庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」ているのに対して、甲6発明では、そのような特定がなされていない点

(イ)判断
上記相違点Cについて検討する。
甲6発明の1対の壁のうち他方の壁に連なる住宅の外壁は、当該外壁に隣接して別の住宅が建てられているのであるから、庭を配置することはできず、また、庭を配置する動機付けもないと言うべきである。
また、甲6発明の1対の壁のうち一方の壁は、1Fのリビングの空間の一方の壁とともに、住宅の外周を囲む外壁として機能しているものであるから、「半屋外空間」を「庭側に配置された前記住宅の外壁より奥まった位置に形成」するために、当該外壁の構成を大きく変更することは想定されないし、そのような外壁を設ける動機付けはないと言うべきである。
また、文献6?文献8などに記載されているように、テラスが住宅の外壁よりも奥まった位置に形成することが周知技術(上記第3の3(14)?(18)参照)であったとしても、上記したように甲6発明は、1対の壁のうち他方の壁に連なる住宅の外壁に隣接して別の住宅が建てられており、また、1対の壁のうち一方の壁が、1Fのリビングの空間の一方の壁とともに、住宅の外周を囲む外壁として機能しているものであるから、甲6発明に対して当該周知技術を適用する動機付けはなく、仮に適用したとしても本件発明1のようになるとはいえない。
以上のことから、甲6発明において、相違点Cに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることではない。

(ウ)申立人の主張について
上記(1)ア(ウ)で説示したことと同様である。

また、甲第1号証ないし甲第5号証、甲第7号証ないし甲第8号証、及び、周知技術として提示された文献1ないし文献5をみても、相違点Cに係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。

(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲6発明、甲第1号証ないし甲第5号証、及び甲第7号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記ア参照)により、甲6発明、甲第1号証ないし甲第5号証、及び甲第7号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ まとめ
したがって、本件発明1?3は、甲6発明、甲第1号証ないし甲第5号証、及び甲第7号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第4 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において、甲第3号証を主引用例として、請求項1ないし3に記載された発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。(適用条文は特許法29条2項であると認める。)(申立書3頁17行-4頁13行)
しかしながら、甲第3号証には、本件発明1の「仕切り面を介して、1階の居室である屋内空間と、屋外の庭に面するテラス空間である半屋外空間とが隣接して設け」た構成が記載されているとはいえない。
そして、上記したように甲第3号証に記載されたものは、本件発明1とは前提となる構造が異なるから、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第8号証、並びに周知技術を参酌したとしても、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。
また、本件発明2及び3も、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。

したがって、本件発明1ないし3は、甲第3号証に記載された発明、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第8号証に記載された事項並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

2 申立人は、訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立書において請求項1及び2に記載された発明は、甲第7及び8号証に記載された発明及び甲第4,5号証に記載された発明又は技術手段から、当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張している。(適用条文は特許法29条2項であると認める。)(申立書4頁16行-5頁28行)

(ア)本件発明1について
甲第7号証には、居室空間2における1対の壁部から、開口部3を越えて半屋外空間2に向かって段差なく延びることで形成される半屋外空間2の壁部は、記載も示唆もされていない。つまり、甲第7号証には、本件発明1の「前記屋内空間における前記1対の壁部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の1対の壁部を形成し、
前記半屋外空間は、前記屋内空間の床部、天井部、および、1対の壁部のそれぞれと連続するように設けられた床部、天井部、および、1対の壁部によって囲まれ、かつ、前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている」という構成(以下、「構成A」という。)が記載されているとはいえない。
また、甲第8号証の段落【0023】及び図2には、住宅の構造において、リビング20に1対の壁が設けられるとともに、デッキスペース24に1対の壁が設けられている発明が記載されている。しかしながら、図2にはリビング20とデッキスペース24の境界部において壁から中央に向かっての短い壁状のもの(符号なし)が延出して設けられている点も記載されている。そして当該短い壁状のものによってリビング20に設けられた1対の壁がデッキスペース24に設けられた1対の壁に向かって段差なく延びていない構成となっている。また、甲第8号証の他の箇所を見ても、リビング20に設けられた1対の壁がデッキスペース24に設けられた1対の壁に向かって段差なく延びている構成は、記載も示唆もされていない。つまり、甲第8号証においても、本件発明1の上記構成Aが記載されているとはいえない。
よって、甲第7号証に記載された発明に、甲第8号証に記載された発明を適用したとしても、本件発明1に想到しないことは明らかである。
また、申立人が提出した甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、上記構成Aは記載も示唆もされていないのであるから、甲第4号証及び甲第5号証に記載された事項を、甲第7号証に記載された発明及び甲第8号証に記載された発明に適用したとしても、本件発明1に想到しないことは明らかである。
したがって、本件発明1は、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明及び甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明又は技術手段から、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。

(イ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に従属し、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、本件発明1と同様の理由(上記(ア)参照)により、本件発明2は、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明及び甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明又は技術手段から、当業者が容易に発明をすることができたものではないことは明らかである。

(ウ)まとめ
よって、本件発明1及び2は、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明及び甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明又は技術手段から、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切り面を介して、1階の居室である屋内空間と、屋外の庭に面するテラス空間である半屋外空間とが隣接して設けられ、前記屋内空間と前記半屋外空間とを含めた空間が立体的なつながりを持った大空間として演出される住宅の構造であって、
前記屋内空間は、床部、天井部、および、対向する1対の壁部によって囲まれ、
前記仕切り面は、透光面により形成されており、
前記屋内空間における前記床部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の床部を形成し、
前記屋内空間における前記天井部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の天井部を形成し、
前記屋内空間における前記1対の壁部は、前記仕切り面を越えて、前記半屋外空間に向かって段差なく延びることで、前記半屋外空間の1対の壁部を形成し、
前記半屋外空間は、前記屋内空間の床部、天井部、および、1対の壁部のそれぞれと連続するように設けられた床部、天井部、および、1対の壁部によって囲まれ、かつ、前記庭側に配置された前記住宅の外壁よりも奥まった位置に形成されている、住宅構造。
【請求項2】
前記住宅は、勾配屋根を有し、
前記屋内空間および前記半屋外空間の天井部は、前記勾配屋根の勾配に沿って形成される、請求項1に記載の住宅構造。
【請求項3】
略面一形状である前記屋内空間の前記壁部および前記半屋外空間の前記壁部それぞれに沿って、その一端が前記仕切り面と当接するように配置される、略同一高さの突出部材をさらに備える、請求項1または2に記載の住宅構造。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-03 
出願番号 特願2013-66052(P2013-66052)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (E04H)
P 1 651・ 121- YAA (E04H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新井 夕起子  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 住田 秀弘
西田 秀彦
登録日 2017-07-07 
登録番号 特許第6169387号(P6169387)
権利者 大和ハウス工業株式会社
発明の名称 住宅構造  
代理人 特許業務法人アイミー国際特許事務所  
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