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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1352278
異議申立番号 異議2017-701082  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-17 
確定日 2019-04-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6128755号発明「冷凍麺」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6128755号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。 特許第6128755号の請求項4に係る特許を維持する。 特許第6128755号の請求項1ないし3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6128755号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成24年5月29日に出願されたものであって、平成29年4月21日にその特許権の設定登録がされ、平成29年5月17日にその特許掲載公報が発行され、その後、その請求項1ないし4に係る発明の特許について、平成29年11月17日に特許異議申立人 石井 宏司 により特許異議の申立てがされ、平成30年1月26日付けで取消理由が通知され、その指定期間内の平成30年3月30日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成30年5月9日に特許異議申立人より意見書が提出され、平成30年7月20日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内の平成30年8月10日に特許権者より意見書の提出及び平成30年3月30日の訂正請求書の請求の理由を補正する手続補正書の提出があった後、平成30年11月1日付けで取消理由が通知され、その指定期間内の平成30年12月26日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、平成31年1月25日に特許権者より平成30年12月26日の訂正請求書の請求の理由を補正する(平成31年1月24日付の)手続補正書が提出され、特許異議申立人に対し平成31年1月30日付けでその訂正の請求に対し意見があれば意見書を提出するように期間を指定して通知したところ、その指定期間内に特許異議申立人より意見書の提出がなかったものである。
なお、平成30年3月30日の訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否についての判断
1 平成31年1月24日付の手続補正書による手続補正について
上記手続補正は、平成30年12月26日の訂正請求書の請求の理由を補正するものであるが、「訂正の理由」を補正するものであって、「訂正事項」を補正するものではなく、請求の理由の要旨を変更するものではないから、同手続補正を採用する。

2 訂正の内容
上記手続補正により補正された平成30年12月26日の訂正の請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項4に、「前記冷凍麺が流水で解凍して喫食するタイプである請求項1?3のいずれかに記載の冷凍麺。」と記載されているのを「小麦粉、デンプン等を粉体として含有する冷凍うどんであって、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを小麦粉10重量部に対して3?5重量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルを粉体1kgに対して0.1g?5g含有し、マルトトリオースを粉体1kgに対して5?100gの割合で練水に含む、流水で解凍して喫食するタイプの冷凍うどん。」と訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5) したがって、特許権者は、特許請求の範囲を、次の訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを請求する(下線は訂正箇所を示す。)。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
小麦粉、デンプン等を粉体として含有する冷凍うどんであって、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを小麦粉10重量部に対して3?5重量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルを粉体1kgに対して0.1g?5g含有し、マルトトリオースを粉体1kgに対して5?100gの割合で練水に含む、流水で解凍して喫食するタイプの冷凍うどん。」

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否並びに一群の請求項
(1) 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項4を、本件訂正前の請求項3を引用するものに限定するとともに、請求項間の引用関係を解消するものであって、さらに、「冷凍麺」を「冷凍うどん」に限定するとともに、マルトトリオースを冷凍うどんの製造時における練水に含むことを限定したものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0014】に「本発明における冷凍麺のジャンルは特に限定されず、うどん、そば、中華麺等のいずれも可能である。」と記載されているとともに、本件特許明細書の【0022】に「オリゴ糖は練水に混合する」と記載され、【0035】に「練水において、さらに、マルトトリオース(オリゴ糖の混合物でマルトトリオースを約50重量%含有するタイプ、以下同様)50gを添加して溶解した」と記載され、及び【0042】の【表1】等に、マルトトリオースを冷凍うどんの製造時における練水に含むことが記載されているように、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。
なお、マルトトリオースを練水に含むとの特定事項は、本件特許に係る発明の「冷凍うどん」という物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されているともいえるが、本件特許に係る発明の「冷凍うどん」は、本件特許明細書の【0014】に「本発明にいう冷凍麺は次のように製造する。まず、小麦粉、澱粉等の粉体に塩等を水に溶解した練水を添加して製麺した生麺を製造する。次いで、前記生麺を茹で又は蒸してα化し、水洗、冷却し所定の型枠に入れて凍結する。このようにして冷凍麺は完成する。」と記載されているように、当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情があるといえる。

(2) 訂正事項2ないし4は、それぞれ訂正前の請求項1ないし3の記載を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合するものであり、また、新規事項を追加するものではないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合するものである。

(3) 本件訂正前の請求項2ないし4は請求項1の記載を引用する関係にあるから、請求項1ないし4に係る訂正は一群の請求項ごとに請求された訂正である。

4 むすび
よって、本件訂正に係る訂正事項1ないし4は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条4項、並びに、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について、訂正することを認める。

第3 取消理由についての判断
1 本件特許に係る発明
本件特許の請求項4に係る発明(以下「本件発明」いう。)は、本件訂正により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものである(「第2 2 (5)」参照。)。

2 本件訂正前の平成30年1月26日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(取消理由1) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(取消理由2) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(取消理由3) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
(取消理由4) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。

<特許異議申立人による証拠方法>
特許異議申立人は、特許異議申立書に添付して、次の甲第1ないし10号証を提出する。
甲第1号証:特開平6-169714号公報
甲第2号証:「増粘安定剤でめん質バラエティ化!」、麺業新聞、第1996号、株式会社麺業新聞社、平成15年6月27日、10-11頁
甲第3号証:特開2003-219823号公報
甲第4号証:特開平8-173072号公報
甲第5号証:特開2007-49972号公報
甲第6号証:新村出編、「広辞苑」、第5版、第1刷、株式会社岩波書店、1998年11月11日、1868頁
甲第7号証:社団法人日本冷凍食品協会監修、「冷凍食品の事典」、初版、第1刷、株式会社朝倉書店、2000年9月20日、154-157頁
甲第8号証:特開平6-181709号公報
甲第9号証:砂田美和、「ヒドロキシプロピル化デンプンの特性と応用」、月刊フードケミカル、2010年2月号、Vol.26、No.2、通巻298号、株式会社食品化学新聞社、平成22年2月1日、29-32頁
甲第10号証:特開2000-93104号公報

3 取消理由2(36条6項2号)について
本件の事案に鑑み、記載不備に係る取消理由2から、検討する。
(1) 本件訂正前の請求項1の「小麦粉、デンプン等を粉体として」との記載からすると、「粉体」中に「等」として何が含まれるのか不明確である、との理由については、本件訂正により請求項1が削除されたものの、本件訂正後の請求項4の「小麦粉、デンプン等を粉体として」の記載に該当する。
本件特許明細書の【0014】の記載からして、「小麦粉、澱粉等の粉体」と「塩等を水に溶解した練水」とが区別されていることからすると、「小麦粉、澱粉等の粉体」とは、予め練水として水に含有させる粉体を除き、小麦粉、澱粉とともに扱われる粉体であって、練水を加える粉体を指すものと解するのが相当である。このことは、【表1】の記載内容とも整合している。そうすると、「粉体」中に「等」として何が含まれるのか不明確とはいえない。

(2) 本件訂正前の請求項1の「デンプン」との記載は、「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」を指すとも、他のデンプンも指すとも、多義的に解釈できるので、「デンプン」の構成が不明確である、との理由については、本件訂正により請求項1が削除されたものの、本件訂正後の請求項4の「デンプン」の記載に該当し、以下のとおり理由がない。
先に(1)で検討したことを踏まえると、「デンプン」は「粉体」の例示に過ぎず、「粉体」である「デンプン」といえるものを指すといえるので、不明確とはいえない。

(3) 本件訂正前の請求項1の「アルギン酸プロピレングリコールエステルを粉体1kgに対して0.1?5g含有する」の記載からすると、「粉体」の成分が不明であって、その量も不明であるから、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」の含有量も不明である、との理由については、本件訂正により請求項1が削除されたものの、本件訂正後の請求項4の「アルギン酸プロピレングリコールエステルを粉体1kgに対して0.1g?5g含有し」の記載に該当し、以下のとおり理由がない。
先に(1)で検討したことを踏まえると、「粉体」の成分は不明でなく、その量も不明でないから、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」の含有量が不明であるとはいえない。

(4) 本件訂正前の請求項1の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」に係り、「ヒドロキシプロピル化」の許容される置換の程度が特定されておらず、また、「リン酸」の許容される架橋度の程度も特定されていないところ、どちらの程度も食感に影響することは周知の事項であるから、記載不備というべきである、との理由については、本件訂正により請求項1が削除されたものの、本件訂正後の請求項4の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」の記載に該当し、以下のとおり理由がない。
本件訂正により、「冷凍麺」は「冷凍うどん」に訂正されたところ、「冷凍うどん」において普通に用いられる「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」に関し、「ヒドロキシプロピル化」の置換の程度及び「リン酸」の架橋度の程度は、当業者にとって全く不明であるとはいえず、本件発明の「冷凍うどん」においてそれらの程度について特段の特定がないことからすると、普通に用いられる範囲で許容されると解するのが相当である。そうすると、記載不備ということはできない。

(5) 本件訂正前の請求項2の「オリゴ糖を粉体1kgに対して、5?100g含む」の記載からすると、「粉体」の成分が不明であって、その量も不明であるから、「オリゴ糖」の含まれる量も不明である、との理由については、本件訂正により請求項2が削除されたものの、本件訂正後の請求項4の「マルトトリオースを粉体1kgに対して5?100gの割合で練り水に含む」の記載に該当し、以下のとおり理由がない。
先に(1)で検討したことを踏まえると、「粉体」の成分は不明でなく、その量も不明でないから、「マルトトリオース」の含まれる量が不明とはいえない。

(6) 小括
したがって、以上の点において本件発明は明確性要件に違反するとはいえないから、その特許は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、取消理由2について理由がない。

4 理由3及び4(36条6項1号及び36条4項1号)について
(1) 本件特許明細書における冷凍麺の製造の具体例において、試験例が少なく、「小麦粉」と「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」との配合比や「粉体」と「アルギン酸プロピレングリコールエステル」との配合比がそれぞれどのような技術的効果をもたらすかについて説明がないところ、(ア)本件訂正前の請求項1に係る発明において「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」の配合比が「小麦粉」に対する特定割合の範囲であり、また、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」の配合比が「粉体」に対する特定割合の範囲である一方、発明の詳細な説明に記載した試験例が少ないこと、また、(イ)「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」自体の置換度や架橋度によって当該加工澱粉の物性が変化し冷凍麺の質感が左右されるところ、その開示がないし、さらに、(ウ)小麦粉のかわりにそば粉を用いた場合において同様の効果を得ることができるかどうかは不明であり、本件特許明細書における試験例において裏付けられる発明と比較して、特許請求の範囲に記載された本件訂正前の請求項1に係る発明の範囲は広範すぎるとの理由については、本件訂正により請求項1が削除されたものの、本件訂正後の請求項4に該当し、以下のとおり理由がない。
すなわち、(ア)については、本件特許明細書全体の記載からすると、発明が解決しようとする課題との関係における本件発明の本質は、「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」と「アルギン酸プロピレングリコールエステル」とを組み合わせて配合したことというべきであって、両者の組み合わせにおいて、各配合量が適宜設定されるべき事項であるといえ、また、(イ)については、上記「3(4)」にて検討したとおり、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン自体の置換度や架橋度については、「冷凍うどん」において普通に用いられる範囲であるといえることから、当業者が特許明細書の記載から把握できないとまではいえないし、さらに、(ウ)については、本件訂正により、「冷凍麺」は「冷凍うどん」に訂正されたところ、「冷凍うどん」について確認したことは本件特許明細書に開示されている。
以上のことから、上記各点についてはサポート要件違反とはいえない。

(2) 本件訂正前の請求項2及び3に係る発明において「オリゴ糖」について、粉体と「オリゴ糖」の配合比や、粉体と「マルトトリオース」の配合比がそれぞれどのような技術的効果をもたらすかについて説明がないところ、特定割合の範囲が特定されている一方、発明の詳細な説明に記載した試験例が少なく、本件特許明細書における試験例において裏付けられる発明と比較して、特許請求の範囲に記載された本件訂正前の請求項2及び3に係る発明の範囲は広範すぎるとの理由については、本件訂正により請求項2及び3が削除されたものの、本件訂正後の請求項4の「マルトトリオース」に該当し、以下のとおり理由がない。
すなわち、先に述べたとおり発明が解決しようとする課題との関係における本件発明の本質は、「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」と「アルギン酸プロピレングリコールエステル」とを組み合わせて配合したことというべきであって、本件発明の解決しようとする課題の「冷凍麺において再凍結等が起こっても麺質の低下が軽減される新たな方法」(本件明細書【0007】)に関し、「マルトトリオース」は付加的な成分であるから、本件訂正後の本件発明において、「マルトトリオース」を含有することによる特段の複合的効果が求められるものではない。また、「マルトトリオース」を特定された範囲の含有量とすることは、本件特許明細書において一例として記載されているのであって、その範囲を超えて含有することが、本件訂正後の本件発明の効果を妨げるとする証拠や技術常識も確認できない。そうすると、サポート要件違反であるとする理由はない。

(3) 本件特許明細書における冷凍麺の製造の具体例において、試験例が少ないことから、(ア)そば粉が30重量%以上含まれる冷凍そばの場合には本件訂正前の請求項1に係る発明において特定される各種配合割合では、当業者が容易に実施できるとはいえないし、(イ)本件特許に係る発明の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」としてどのようなリン酸架橋度及びヒドロキシプロピル化度を有するデンプンを用いればよいか不明であって、また、(ウ)本件特許に係る発明の「粉体」がどのような成分を包含するかが明確でないため、配合割合が粉体に対して特定された「アルギン酸プロピレングリコールエステル」及び「オリゴ糖」をどのような配合で添加すればよいか不明であって、さらに、(エ)本件特許明細書中に記載された官能試験は少人数の結果であって、その評価の観点に偏りがある上に評価基準が不明であるから、発明の詳細な説明の記載は当業者が本件特許に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとの理由については、本件訂正により請求項1ないし3が削除されたものの、本件発明に該当し、以下のとおり理由がない。
すなわち、(ア)については、本件訂正により、「冷凍麺」は「冷凍うどん」に訂正された上に、「冷凍うどん」についての実施例は記載されている。また、(イ)及び(ウ)については、先に本件発明の明確性要件及びサポート要件について検討したことからすると、いずれも本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとはいえないし、(エ)については、一般的に官能試験において、専門家パネルは必ずしも大人数が必要ということはなく、本件特許明細書に記載された5名であることが、少なすぎるということはできないし、それによる結果が直ちに信用できないということはない。また、本件訂正により、「冷凍麺」は「冷凍うどん」に訂正されたので、評価項目が「弾力・つるみ」の2点からの総合評価によることをして、「冷凍うどん」に係るこれらの観点では評価が不十分であるとまでいえないし、その評価基準について詳細な説明がなされていないからといって、本件発明について直ちに実施可能要件違反となるものではない。

(4) 小括
したがって、以上の点において本件発明はサポート要件及び実施可能要件に違反するとはいえないから、その特許は特許法36条6項1号及び同法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものとはいえず、取消理由3及び4について理由がない。

5 取消理由1(29条2項)について
(1) 甲第1ないし5号証の記載事項
(1-1) 甲第1号証の記載事項
・「【請求項1】 主原料として加工澱粉と145メッシュの篩を通過する区分が90重量%以上の粒度を有する小麦粉とを、該加工澱粉と小麦粉との重量比率が約65:35乃至22:78となる範囲で用い且つ必須副原料としてグルテン、卵白及び天然ガムを上記加工澱粉との併用割合がそれぞれ次式を満たす条件となる量で用いることを特徴とするロングライフうどんの製造法。
A=14x±10
A=40y±20
A=60z±20
〔但しAは加工澱粉の使用量(重量部)を、x、y及びzはそれぞれグルテン、卵白及び天然ガムの使用量(乾燥物基準、重量部)を示す。〕
【請求項2】 加工澱粉が置換度約0.04?0.15のアセチル澱粉及び/又はヒドロキシプロピル澱粉である請求項1に記載の方法。
【請求項3】 加工澱粉の原料澱粉が馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉及びワキシーコーンスターチからなる群から選ばれた一種又は二種以上である請求項2に記載の方法。」

・「【0003】該ロングライフ麺は、通常2?6カ月の賞味期間を有しており、その一つであるロングライフうどんは、通常茹うどんを無菌パックすることにより上記賞味期間内での長期保存を可能にしたものであり、本物志向に適合し、喫食時は即席麺と同様に熱湯を注ぐだけで可食状態に戻せる簡便性を併せ持っている。しかしながら、一般に茹うどんは2?3日も保存すると腰がなくなってまずくなる欠点がある。これは麺の表層部と内部との水分差、いわゆる水分勾配かなくなるためとされている。従って、この茹うどんをパックしたロングライフうどんもまた、当然に水分勾配による腰の維持は望むべくもない。
【0004】本発明者らはかかるロングライフうどんの問題点を改善する方法として、先に特定量の澱粉類を含むと共に、可食状態に戻した時の澱粉質の溶出量及び麺成分の膨潤度を特定範囲としたロングライフ麺を提案した(特願平4-232799号公報参照)。
【0005】しかるに、一般にロングライフうどん製品は、常温で流通しているが、冬期の寒冷地等では気温が氷点下に下がることは珍しくなく、かかる条件下では日々の温度差や昼夜の温度差により、通常約70%の水分を保有する茹うどんは、その部分的な凍結や冷凍-解凍の繰返しが起こり、該過酷な条件下に長期保存される製品では品質劣化が激しく、その食感も当然に損なわれる。上述の本発明者らの提案に係わる麺を含めて従来のロングライフうどん製品は、かかる過酷な条件での流通につき考慮は払われておらず、満足な品質を有するものではなかった。
【0006】また、従来の茹麺の中には、このような状態に近い保存形態の麺としての冷凍麺があり、この冷凍麺については、冷凍-解凍復元の過程における食感劣化の改善のための種々の方法、例えばキサンタンガム等の糊料を麺の表面にコーティングする方法(特開昭62-19059号公報)や原料として小麦粉、卵白、タピオカ澱粉等を用いる方法(特開昭60-87747号公報)等が提案されている。しかしながら、上記冷凍麺は一度冷凍されると喫食時まで解凍されず、しかも冷凍、解凍はなるべく品質に影響を与えないように急速冷凍、急速解凍等の配慮がなされており、これは前述の冬期、寒冷地等において遭遇する条件とは比較にならない。従って、之等の方法をロングライフ麺製品に応用しても満足な品質が得られるとは考えられない。」

・「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述した課題を克服して、殊に冬期、寒冷地等においても優れた品質を保有するロングライフうどん及びその製造法を提供する点にある。」

・「【0012】尚、以下の本明細書においては、上記ロングライフうどんの冬期、寒冷地等における過酷な条件下での品質劣化を生じない性質を「低温耐性」という。」

・「【0016】また、上記アセチル化澱粉及びヒドロキシプロピル澱粉には、エステル化又はエーテル化と同時に又は之等に先立って、メタリン酸塩、オキシ塩化リン、アジピン酸等の架橋剤を用いて常法に従って処理して得られる架橋変性させた架橋アセチル澱粉及び架橋ヒドロキシプロピル澱粉も包含される。之等架橋変性された加工澱粉の利用によっても、本発明所期の低温耐性は充分に付与され、之等の利用によれば、食感がやや硬めのロングライフうどんが得られる傾向にある。」

・「【0018】上記特定粒度の小麦粉と加工澱粉との比率は、約65:35乃至22:78の割合とする必要があり、加工澱粉の比率がこれより小さくなると低温耐性に劣り、大きくなると食感的に劣ったものとなる。」

・「【0020】上記必須副原料としてのグルテンは、いわゆる活性グルテンで、冷凍品、乾燥品とも使用し得るが、乾燥品の方が使用上簡便である。尚、前記(1)式はこの乾燥品での関係式であり、冷凍品を用いる場合は乾燥品に換算して使用量を決定すればよい。卵白としても、生の卵白でも乾燥卵白でも適宜使用できるが、前記(1)式は乾燥卵白での関係式であり、生の卵白を使用する時には乾燥卵白に換算して用いるものとする。また、天然ガムとしては通常のもの、例えばキサンタンガム、グアーガム、タマリンド種子ガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ソーダ、サイリュウムシードガム等をいずれも使用でき、之等は1種単独でも2種以上混合しても使用できる。」

・「【0024】かくして本発明により得られるロングライフうどんは、熱湯を加えて約2分程度放置するでけで可食状態に戻すことができ、そのまま調味料を加えて温かいうどんとして喫食できるし、更に冷やして冷やしうどんとすることもできる。また、湯をきり、ソースを加えて焼きうどん風として食することもできる。いずれにせよ、本発明により得られるロングライフうどんは、低温耐性に優れたものであり、殊に冬期、寒冷地等での流通に適しており、長期保存によっても品質劣化やそれによる食感の低下のない品質良好なものである。」

・「【0027】
【参考例2】参考例1において、ワキシーコーンスターチを小麦澱粉に替え、プロピレンオキサイドの添加量を4部とする他は同様にして、置換度0.072のエーテル化澱粉(ヒドロキシプロピル澱粉)を得た。これを試料No.5とする。」

・「【0041】
【実施例1】145メッシュの篩を通過する区分が93.3%の中力小麦粉70部と、試料No.5のエーテル化澱粉30部とを主原料とし、これにグルテン2.3部、乾燥卵白0.7部、キサンタンガム0.3部、タマリンド種子ガム0.2部及び乳化剤(エルメンプロ、扶桑化学工業社製)1部を添加混合した後、食塩2部とpH調整剤(エルメンpH、扶桑化学工業社製)2部とを水40部に溶解した液を添加して混練し、その後製麺ロール及び回転切刃(No.10)を用いて生うどんを製造した。
【0042】得られた生うどんを熱湯中で茹上り水分が約70%前後になるように茹上げ、次いでこれを水洗いし、水切り後、浸漬用pH調整剤(エルディップ、扶桑化学工業社製)を1.5%添加した液に30秒浸漬した。その後、水を切り、植物油をまぶした後、200gづつ合成樹脂フィルムで包装し、この包装茹麺を更に90?100℃で50分加熱殺菌して、ロングライフうどんを得た。
【0043】これを冷却後冷凍し、そして5日間冷凍した後、常温に1日置いて解凍し、更に5日間冷凍し、1日で解凍するサイクルを15回繰り返した後、熱湯を加えて2分間放置し、調味料を加えて試食用本発明サンプルとした。
【0044】尚、対照サンプルとして、145メッシュの篩を通過する区分が85.6%の中力小麦粉を用いた他は同様にして製造、処理した対照うどんを試食させた。
【0045】その結果、本発明サンプルは粘り、滑らかさ、艶、喉越しともに良好であったのに対し、対照品はぼそぼそ感があり、粘り、艶が劣り、うどんの食感としては劣ったものであった。」

(1-2) 甲第2号証の記載事項(「増粘安定剤でめん質バラエティ化!」に係る記載事項)
・「増粘安定剤でめん質バラエティ化!」(10頁大見出し)

・「従来とは一味違う食感実現
茹めん類に効果発揮
麺類には小麦粉やそば粉などの主原料の他に、食感改良を目的として様々な添加物が使用されている。代表的なものとして澱粉をはじめ、グルテンや卵白などが挙げられるが、最近では従来の麺質とはひと味違う食感を出すために増粘安定剤や増粘多糖類の利用が注目されている。」(10頁小見出し)

・「増粘安定剤とは、・・・(略)・・・区別しているが、麺用途の場合は「増粘・安定・ゲル化」といった目的よりも食感改良の目的で使用されている(添加率=対粉0.1?1.0%)。
また多糖類とは、・・・(略)・・・一括表示される。」(10頁囲み欄)

・「増粘安定剤や・・・(略)・・・大別できる。
麺類では、ほとんどの即席麺に増粘多糖類が使われているが、チルドめんの分野でも調理めんや冷凍めん、LLめんなどの茹めん類に利用できるほか、レンジアップ商品への応用など用途が広がっている。今回は、麺類に使われる主な増粘安定剤の種類や、それらの機能(○1(当審注:「○1」は丸数字の1を表す。以下同様。)基原・製法・本質○2特徴○3麺類への効果)などについて一覧表とともに紹介する(資料提供/太陽化学(株))。」(10頁1段目)

・「タマリンドシードガム
○1マメ科タマリンドの種子の胚乳部分から水で抽出して得られたもの。○2耐酸・耐塩・耐熱性に優れ、経時的にも非常に安定。○3麺に艶を与え、保水性を向上させる。」(10頁3段目)

・「アルギン酸プロピレングリコールエステル
○1アルギン酸とプロピレングリコールをエステル結合させたもの。使用基準があり(食品に1%以下)、また、他の増粘安定剤と併用しても物質名表示(アルギン酸エステル)が必要。○2耐熱性に優れ、界面活性作用がある。○3麺に強力な弾力を付与し、茹・湯伸びを抑制する。」(10頁4段目)

・「キサンタンガム
○1グラム陰性細菌のXantomonas campestris(キサントモナス・カンパストリス)の生産した多糖類を分離、精製して得られたもの。○2ローカストビーンガムとはゲル化相乗効果があり、グァーガムとは増粘相乗効果がある。○3麺にしなやかな弾性を与える。また、ローカストビーンガムや卵白粉末との併用により、さらに安定した粘弾性を付与できる。」(10頁5段目)

・「組み合わせが新たな麺質を生む!?」(11頁小見出し)

・「以上のように増粘安定剤には様々な種類や特性があり、中にはpHや塩類に影響されるものもあるが、組み合わせによっては、新商品の開発や今までにない麺質のバラエティー化が図れるものと期待される。」(11頁6段目末文)

(1-3) 甲第3号証の記載事項
・「【0013】また本発明の茹麺を調製する際に増粘剤を配合するとさらに食感が向上する。本発明に使用される増粘剤としては、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ガティーガム、アラビノガラクタン、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、カードラン、ゼラチン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられるが、特にアルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルが好ましい。
【0014】前記の増粘剤の添加量は全穀粉原料に対し0.01?3.0重量%、好ましくは0.02?1.0重量%の範囲である。」

・【0022】の【表1】には、「実施例4」の「製麺原料」が「デュラムセモリナ(重量部)」が「100」に対して「アルギン酸プロピレングリコールエステル(重量部)」が「0.08」であることが記載されている。

(1-4) 甲第4号証の記載事項
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷凍麺を製造するにあたり、麺線に糖液を浸潤させる工程を経た後、冷凍工程をとることを特徴とする冷凍麺の製造方法。
【請求項2】 麺線に糖液を浸潤させる工程において、麺線中の糖含有量を10?25重量%とすることを特徴とする請求項1記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項3】 糖液として、水あめ、還元水あめ、オリゴ糖類の内、少なくとも一種類以上のものを使用することを特徴とする請求項1又は2記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項4】 糖液を浸潤させる工程において、麺線を糖液中で60?100℃の温度にて1?60分間加熱することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍麺の製造方法。
【請求項5】 糖液を浸潤させる工程において、麺線を水溶液中で60?100℃の温度にて1?60分間加熱し水洗後、該水洗麺線を糖液に浸潤させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍麺の製造方法。」

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、麺類の凍結変性を起こさず、加熱調理をしなくとも生鮮解凍するだけで食に供することができる冷凍麺を製造する方法に関するものである。なお、本発明において生鮮解凍とは、常温で、静止又は流動状態にて、空気解凍又は水解凍を行なうことをいい、積極的な加熱処理を施さない解凍方法をいう。」

・「【0009】本発明の方法で用いられる糖液は、食品衛生法上、その使用が認められているものであれば、その由来、その加工法を問わないが、水あめ,還元水あめ,オリゴ糖類又はこれらの2種以上の混合物を用いることが好ましい。水あめは、糖化率〔DE: Dextrose Equivalence 〕が20?50の範囲のものが好ましい。DEが20未満のものの場合には、粘度が高いために不適当であり、一方、DEが50を超えるものでは甘味が強くなるので不都合である。また、還元水あめ(水あめを水素添加した還元澱粉糖化物)の場合でも同様になる。さらに、オリゴ糖類としては、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖が還元水あめと同様な効果がある。さらに好ましくは、甘味の少ない、浸漬速度の速い還元水あめが適している。」

・「【0015】
【作用】本発明の方法では、麺線に糖液を浸潤させることにより、冷凍・冷蔵状態で澱粉のα化度が低下していく老化現象を防止して品質劣化させない作用により、加熱調理での解凍は勿論のこと、加熱なしに生鮮解凍してもその品質が保持されておいしい麺を提供することができるものである。」

(1-5) 甲第5号証の記載事項
・「【0005】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、澱粉の老化に起因する品質劣化を解消し、特にチルド又は冷凍のいずれで保管した後に喫食しても、茹で上げ直後と同様、ぼそつき感がなく、且つ弾力性にも優れた食感を有する調理済みパスタを提供することを課題とするものである。」

・「【0007】
すなわち、本発明は、パスタの表層部に糖類が2.0?10.0質量%含有されていることを特徴とする調理済みパスタにより上記課題を解決したものである。
【0008】
また、本発明は、乾燥パスタを茹でた後、この茹でパスタを40?105℃に維持せしめた糖類含有水溶液に5?60分間浸漬させることを特徴とする調理済みパスタの製造方法により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、茹で上げ直後と同様の食感が維持され、特にぼそつき感がなく、且つ弾力性にも優れた調理済みパスタを得ることができる。しかも、この優れた食感はチルド又は冷凍のいずれで保管した後においても維持される。」

・「【0011】
次いで、茹でたパスタを糖類含有水溶液に浸漬させる。浸漬させる際の水溶液の温度は、40℃?105℃、就中90?105℃が好ましく、特に熱湯の状態であることがより好ましい。水溶液の温度が40℃より低いと、茹で上げたパスタが硬化することにより、糖類が吸収されにくくなる。また、浸漬時間としては、5?60分間、特に10?30分間が好ましい。
本発明は、パスタを茹でた後、パスタが熱を有し、柔軟な状態であれば、パスタの表層部に糖類を集中的に吸収させることができ、所望の食感及び弾力性を有するパスタを得ることができる、と云う知見からなっており、このことからも、茹で上げたパスタの品温を出来る限り下げることなく糖類を吸収させる操作をする必要がある。ここで、パスタの表層部とは、パスタ表面から内側方向において5?30質量%を占める領域部分を指す。
【0012】
本発明において、糖類含有水溶液に用いられる糖類としては、食品衛生法上、その使用が認められているものであれば、その由来、その加工法を問わないが、例えばオリゴ糖、トレハロース、水あめ、還元水あめ、デキストリン、ポリデキストロース等を挙げることができ、これらを単体で又は2種以上を混合して用いることができる。このなかでも、パスタへの浸透が容易であるという観点から、オリゴ糖、又はトレハロースが好ましく、オリゴ糖がより好ましい。さらに、オリゴ糖の中でも、重合度4?7のオリゴ糖がより好ましい。」

(2) 対比・判断
甲第1号証には、特に実施例1の、生うどんを茹でた後に包装し、包装茹麺を加熱殺菌して、ロングライフうどんを得て、「これを冷却後冷凍し、そして5日間冷凍した後、常温に1日置いて解凍し、更に5日間冷凍し、1日で解凍するサイクルを15回繰り返した後、熱湯を加えて2分間放置し、調味料を加えて試食用本発明サンプルとした」(【0043】)ロングライフうどんの、最後の解凍前の冷凍したロングライフうどんに注目すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「中力小麦粉70部とヒドロキシプロピル澱粉30部とを主原料とし、グルテン2.3部、乾燥卵白0.7部、キサンタンガム0.3部、タマリンド種子ガム0.2部及び乳化剤1部を添加混合した後、食塩2部とpH調整剤2部とを水40部に溶解した液を添加して混練して生うどんを製造し茹上げ包装した、所期の低温耐性は充分に付与される冷凍したロングライフうどん。」

本件発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「食塩2部とpH調整剤2部とを水40部に溶解した液を添加して混練して生うどんを製造」する「中力小麦粉70部とヒドロキシプロピル澱粉30部とを主原料とし、グルテン2.3部、乾燥卵白0.7部、キサンタンガム0.3部、タマリンド種子ガム0.2部及び乳化剤1部を添加混合した」ものは本件発明の「小麦粉、デンプン等を粉体とし」たものに相当し、引用発明の「中力小麦粉」は本件発明の「小麦粉」に相当する。
また、本件発明の「冷凍うどん」と引用発明の「生うどんを製造し茹上げ包装した」ものである「所期の低温耐性は充分に付与される冷凍したロングライフうどん」とは「冷凍した茹でうどん」の限りにおいて一致している。
そうすると、引用発明の「冷凍したロングライフうどん」は「小麦粉、デンプン等を粉体として含有する冷凍した茹でうどん」といえる。
さらに、本件発明の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」と引用発明の「ヒドロキシプロピル澱粉」とは「加工デンプン」の限りで一致し、本件発明の「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを小麦粉10重量部に対して3?5重量部含」む態様と引用発明の「中力小麦粉70部とヒドロキシプロピル澱粉30部を主原料と」する態様とは「加工デンプンを小麦粉10重量部に対して所定重量部含」む態様の限りにおいて一致している。なお、引用発明の「中力小麦粉70部とヒドロキシプロピル澱粉30部を主原料と」する態様は「加工デンプンを小麦粉10重量部に対して約4.3(=30/70×10)重量部含」む態様といえる。
また、本件発明の「アルギン酸プロピレングリコールエステル」と引用発明の「キサンタンガム」及び「タマリンド種子ガム」とは、甲第2及び3号証に記載された事項を考慮すると、「増粘安定剤」の限りにおいて一致している。そして、引用発明において、「粉体」は「中力小麦粉70部とヒドロキシプロピル澱粉30部とを主原料とし、グルテン2.3部、乾燥卵白0.7部、キサンタンガム0.3部、タマリンド種子ガム0.2部及び乳化剤1部を添加混合した」のであるから、全部で「104.5部」であるところ、「増粘安定剤」は「キサンタンガム0.3部、タマリンド種子ガム0.2部」であるから「0.5部」であるので、粉体1kgに対して換算すると、約4.8gとなる。
そうすると、引用発明の「冷凍したロングライフうどん」は「加工デンプンを小麦粉10重量部に対して約4.3重量部含み、増粘安定剤を粉体1kgに対して約4.8g含有する冷凍した茹でうどん」といえる。
したがって、本件発明と引用発明とは、
「小麦粉、デンプン等を粉体として含有する冷凍した茹でうどんであって、加工デンプンを小麦粉10重量部に対して所定重量部含み、増粘安定剤を粉体1kgに対して所定量g含有する冷凍した茹でうどん。」
の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
「冷凍した茹でうどん」に関し、本件発明では「冷凍うどん」であるのに対し、引用発明では「冷凍したロングライフうどん」である点。
[相違点2]
「加工デンプン」に関し、本件発明では「ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン」であって「小麦粉10重量部に対して3?5重量部含」むのに対し、引用発明では「ヒドロキシプロピル澱粉」であって「小麦粉10重量部に対して約4.3重量部含」む点。
[相違点3]
「増粘安定剤」に関し、本件発明では、「アルギン酸プロピレングリコールエステル」であって「粉体1kgに対して0.1g?5g含有する」のに対し、引用発明では、「キサンタンガム」及び「タマリンド種子ガム」であって、「粉体1kgに対して約4.8g含有する」点。
[相違点4] 「冷凍した茹でうどん」に関し、本件発明では「マルトトリオースを粉体1kgに対して5?100gの割合で練り水に含む」のに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。
[相違点5] 「冷凍した茹でうどん」に関し、本件発明では「流水で解凍して喫食するタイプである」のに対し、引用発明ではそのように特定されていない点

まず、相違点4について検討する。
甲第4号証には、麺類の凍結変性を起こさず、冷凍・冷蔵状態でのデンプンのα化度が低下していく老化現象を防止して品質劣化をさせない作用により、加熱調理での解凍は勿論のこと、加熱なしに生鮮解凍、すなわち、常温で、静止又は流動状態にて、空気解凍又は水解凍を行ってもその品質が保持されておいしい麺を提供することができるように、麺線にオリゴ糖類の糖液を浸潤させることが開示されている。
また、甲第5号証には、澱粉の老化に起因する品質劣化を解消し、特にチルド又は冷凍のいずれで保管した後に喫食しても、茹で上げ直後と同様、ぼそつき感がなく、且つ弾力性にも優れた食感を有する調理済みパスタであって、パスタ表面から内側方向において5?30質量%を占める領域部分を指すパスタの表層部に糖類が2.0?10.0質量%含有されている調理済みパスタのうち冷凍処理したパスタに係る事項が開示され、その糖類としてオリゴ糖が挙げられ、「オリゴ糖の中でも、重合度4?7のオリゴ糖がより好ましい」ことも開示されている。
しかしながら、甲第4号証に開示されたものは、麺線にオリゴ糖類の糖液を浸潤させたものであるし、甲第5号証に開示されたものは、パスタ表面から内側方向において5?30質量%を占める領域部分を指すパスタの表層部に糖類が含有されているものであって、どちらも、マルトトリオースを練水に含むものではないから、平成30年12月26日の意見書(6頁)において特許権者が主張するように、麺線のほぼ全域に均一にマルトトリオースを含有することになる本件発明とは、麺線中の糖類の存在形態が異なるといえる。そして、甲第1ないし3及び6ないし10号証にも、マルトトリオースを練り水に含む冷凍うどんは記載も示唆もされていない。そうすると、引用発明をして、相違点4に係る本件発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことということはできない。
したがって、相違点1ないし3及び5について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明及び甲第1ないし10号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3) 小括
以上のとおりであるから、本件発明に係る取消理由1は理由がない。

第4 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載された申立て理由について
上記申立て理由の概要は、本件訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである、というものであるが、上記「第2 2 (2)」に述べたとおり、請求項1に係る特許は削除された。

第5 むすび
以上のとおりであるから、上記取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された申立て理由によっては、本件特許の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項1ないし3に係る特許は、本件訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1ないし3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
小麦粉、デンプン等を粉体として含有する冷凍うどんであって、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンを小麦粉10重量部に対して3?5重量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルを粉体1kgに対して0.1g?5g含有し、マルトトリオースを粉体1kgに対して5?100gの割合で練水に含む、流水で解凍して喫食するタイプの冷凍うどん。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-09 
出願番号 特願2012-121871(P2012-121871)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 536- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 戸来 幸男原 大樹小林 薫  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 井上 哲男
田村 嘉章
登録日 2017-04-21 
登録番号 特許第6128755号(P6128755)
権利者 日清食品冷凍株式会社
発明の名称 冷凍麺  
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