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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C02F
管理番号 1352283
異議申立番号 異議2018-700682  
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-17 
確定日 2019-04-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6281652号発明「好気性生物処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6281652号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正することを認める。 特許第6281652号の請求項1、2、5に係る特許を維持する。 特許第6281652号の請求項3、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6281652号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年 3月16日を出願日とする出願であって、平成30年 2月 2日に特許権の設定登録がされ、同年 2月21日に特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1?5に係る特許について、同年 8月17日付けで特許異議申立人松川 哲広(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月 8日付けで当審より取消理由が通知され、平成31年 1月 9日付けで特許権者より訂正請求書及び意見書が提出され、これに対し、異議申立人に意見を求めたが、期間内に何らの応答もなされなかったものである。

第2 本件訂正の請求による訂正の適否
1 訂正の内容
平成31年 1月 9日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項からなる(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。」
と記載されているのを、
「少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であり、
該MABR反応槽に活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成されることを特徴とする好気性生物処理装置。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2、5も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項5に「請求項1ないし4のいずれか1項において、」と記載されているのを「請求項1又は2において、」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項、一群の請求項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
(ア)訂正事項1による訂正は、「好気性生物処理装置」の「MABR反応槽」の構成を、「活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成される」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)また、本件特許明細書の【0025】、【0026】(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)には、
「【0025】
本発明では、反応槽は生物活性炭反応槽であってもよい。図2(a)は生物活性炭処理反応槽の一例を示す縦断面図,図2(b)はそのノズルの斜視図である。反応槽3内に上下多段に複数個の酸素透過膜モジュール2が設置されている。・・・
【0026】
原水は、配管14及び複数のノズル14aによって反応槽3の底部に供給され、活性炭の流動床Fを形成する。流動床Fを通り抜けた処理水は、トラフ6を越流し、流出口7から流出する。」
と記載されているから、「好気性生物処理装置」の「MABR反応槽」を、「活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成される」ものに限定する訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2、3について
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除するものであり、訂正事項3による訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項4について
訂正事項4による訂正は、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(4)一群の請求項及び独立特許要件について
(ア)本件訂正前の請求項2は、本件訂正前の請求項1を引用して、本件訂正前の請求項1、2で一群の請求項を構成するものであり、本件訂正前の請求項4は、本件訂正前の請求項3を引用して、本件訂正前の請求項3、4で一群の請求項を構成するものであり、更に、本件訂正前の請求項5は、本件訂正前の1ないし4のいずれかを引用するから、上記2つの一群の請求項は組み合わされて一群の請求項を構成するので、本件訂正前の請求項1?5は一群の請求項である。

(イ)そして、本件訂正は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものではなく、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めもないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?5〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
なお、本件訂正請求においては、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

3 むすび
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?5〕について訂正を認める。

第3 本件特許発明
本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1、2、5に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、5に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
直列に接続された第1ないし第n(nは2以上)の反応槽を備え、各反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、
少なくとも第1反応槽は、反応槽内に配置された、非多孔質の酸素透過膜によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、
該被処理水は、揮発性物質又は臭気の発生する物質を含む有機性廃水であり、
少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であり、該MABR反応槽に活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成されることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記MABR以外の反応槽は、汚泥浮遊反応槽又は担体流動反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1又は2のいずれか1項において、前記酸素透過膜は、酸素含有ガスが送風される中空糸膜であり、該酸素含有ガスの送風圧力が、該中空糸膜の圧力損失より5?20%高い圧力であることを特徴とする好気性生物処理装置。」

第4 異議申立理由の概要
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)各甲号証
甲第1号証:特開2016-43281号公報
甲第2号証:特表2006-518661号公報
甲第3号証:米国特許第6558549号明細書
甲第4号証:Thomas E. Kunetz et al.,Innovative Membrane-Aerated Biofilm Reactor Pilot Test to Achieve Low-energy Nutrient Removal at the Chicago MWRD,WEFTEC2016,2016年,p.2973-2987
甲第5号証:ZeeLung Membrane Aerated Biofilm Reactor,General Electric Company社カタログ,2015年,p.1-2
甲第6号証:特開平10-85787号公報
甲第7号証:Webページ”Innovative Membrane-Aerated Biofilm Reactor Pilot Test to Achieve Low-energy Nutrient Removal at the Chicago MWRD”,インターネット<URL:https://www.ingentaconnect.com/contentone/wef/wefproc/2016/00002016/00000014/art00013>

(2)甲第1号証を主引用例とする場合について(異議申立書28頁11行?29頁下から5行目、33頁1行?9行、34頁4行?35頁22行、38頁2行?6行、38頁22行?39頁20行)
(ア)訂正前の請求項1?2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(イ)訂正前の請求項3?4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ウ)訂正前の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3、5、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)甲第3号証を主引用例とする場合について(異議申立書29頁下から4行目?30頁下から4行目、33頁10行?19行、35頁23行?36頁15行、38頁7行?11行、38頁22行?39頁20行)
(ア)訂正前の請求項1?2に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(イ)訂正前の請求項3?4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ウ)訂正前の請求項5に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第2、3、5、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(4)甲第4号証を主引用例とする場合について(異議申立書30頁下から3行目?32頁2行、33頁20行?25行、36頁16行?37頁9行、38頁12行?16行、38頁22行?39頁20行)
(ア)訂正前の請求項1?2に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(イ)訂正前の請求項3?4に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ウ)訂正前の請求項5に係る発明は、甲第4号証に記載された発明及び甲第2、3、5、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(5)甲第5号証を主引用例とする場合について(異議申立書32頁3行?最終行、33頁26行?34頁3行、37頁10行?38頁1行、38頁17行?39頁20行)
(ア)訂正前の請求項1?2に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(イ)訂正前の請求項3?4に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2?3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(ウ)訂正前の請求項5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2、3、5、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第5 取消理由の概要
1 特許法第29条第1項(新規性)及び第2項(進歩性)について
(1)甲第1号証を主引用例とする場合について
訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)甲第3号証を主引用例とする場合について
(ア)訂正前の請求項1、3に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1?2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(イ)訂正前の請求項1?4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明及び甲第3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1?4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)甲第5号証を主引用例とする場合について
訂正前の請求項3?5に係る発明は、甲第5号証に記載された発明及び甲第2、5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3?5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第6 取消理由についての判断
1 甲第1号証又は甲第3号証を主引用例とする場合について
(1)本件発明1について
(ア)甲第1号証の特許請求の範囲、【0001】、【0025】?【0028】、【0038】?【0051】、【図2】の記載からみれば、甲第1号証には、
「し尿を含む便所排水と、台所排水・風呂排水・洗濯排水などの生活雑排水を処理する浄化槽であって、酸素透過膜からなる、チューブ状の中空体である筒状体を浸漬し、好気性微生物及び嫌気性微生物によって有機物を分解させる生物処理槽と、曝気することによって有機物を分解、あるいは被処理汚水を好気化する後処理槽と、前記筒状体に空気を送入する送風手段と、を備える浄化槽。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(イ)甲第3号証の特許請求の範囲、4欄65行?5欄30行、5欄64行?6欄32行、10欄22行?67行、11欄24行?35行、13欄4行?14欄58行、FIG.12の記載からみれば、甲第3号証には、
「BOD、COD、窒素及びリンを含む廃水を処理するハイブリッド廃水処理反応器であって、酸素源に接続された複数のガス移送膜モジュールを含む第1セクションと、第2セクションに好気条件を生成するように動作可能な酸素源を有する第2セクションとを有する、ハイブリッド廃水処理反応器。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

(ウ)ところが、甲第1号証?甲第3号証のいずれにも、「好気性生物処理装置」を、本件発明1の発明特定事項である、「MABR反応槽に活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成される」ものとすることは記載も示唆もされていない。

(エ)したがって、本件発明1が甲3発明であるとはいえないし、本件発明1を、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも、甲3発明及び甲第3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも、いうことはできない。

(2)本件発明2、5について
(ア)本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1を、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも、甲3発明及び甲第3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも、いうことはできないことは、前記(1)(エ)に記載のとおりであるから、同様の理由により、本件発明2を、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも、甲3発明及び甲第3号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとも、いうことはできない。

(イ)また、本件発明5も、本件発明2と同様に、本件発明1を引用するものであるから、前記(ア)に記載したのと同様の理由により、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 甲第5号証を主引用例とする場合について
(ア)甲第5号証を主引用例とする取消理由は、訂正前の請求項3に係る発明及び訂正前の請求項3を引用する請求項4、5に係る発明についてのものである。

(イ)そして、本件訂正により請求項3及び4は削除されるものとなり、本件発明5は本件発明1又は2のみを引用するものとなったので、甲第5号証を主引用例とする取消理由は対象となる請求項が存在しない。

3 小括
前記1によれば、前記第5の1(1)?(2)の取消理由はいずれも理由がない。
また、前記2によれば、前記第5の1(3)の取消理由は対象となる請求項が存在しない。

第7 異議申立理由についての判断
1 本件発明1について
(ア)本件発明1を、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記第6の1(1)(エ)に記載のとおりであり、また、同(ウ)に記載したのと同様の理由により、本件発明1を、甲3発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(イ)甲第4号証の2974頁下から21行目?下から7行目、2975頁6行?15行、下から17行目?下から11行目、Figure1.の記載からみれば、甲第4号証には、
「プラントの最前部に設けられる嫌気ゾーンと、中空糸膜である酸素透過ポリマーを有する複数のMABRカセットが装着されるMABRゾーンと、微細気泡曝気ゾーンを有する、TSS及びアンモニアの除去に対する能力を向上した、ハイブリッドMABRプラント。」の発明(以下、「甲4発明」という)が記載されているといえる。

(ウ)甲第5号証の1頁左欄1行?右欄14行、2頁左欄9行?11行、Figure1、4の記載からみれば、甲第5号証には、
「アンモニア及び有機物などの基質含む廃水を処理するMABRバイオリアクターであって、ZeeLungカセットと、微細気泡曝気装置と、エアレーションブロワーとを備えるMABRバイオリアクター。」の発明(以下、「甲5発明」という)が記載されているといえる。

(エ)ところが、前記第6の1(1)(ウ)に加えて、甲第4号証?甲第6号証のいずれにも、「好気性生物処理装置」を、本件発明1の発明特定事項である、「MABR反応槽に活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成される」ものとすることは記載も示唆もされていない。

(オ)したがって、本件発明1を、甲4発明又は甲5発明と、甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本件発明2、5について
(ア)本件発明2を、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記第6の1(2)(ア)に記載のとおりである。

(イ)また、本件発明2は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1を、甲3発明、甲4発明又は甲5発明と、甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記1(ア)、(オ)に記載のとおりであるから、同様の理由により、本件発明2を、甲3発明、甲4発明又は甲5発明と、甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)更に、本件発明5は、本件発明1を引用するものであって、本件発明1を、甲1発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記第6の1(1)(エ)に記載のとおりであり、甲3発明、甲4発明又は甲5発明と、甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないことは、前記1(ア)、(オ)に記載のとおりである。

(エ)また、前記第6の1(1)(ウ)に加えて、甲第4号証?甲第6号証のいずれにも、「好気性生物処理装置」を、本件発明1の発明特定事項である、「MABR反応槽に活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成される」ものとすることは記載も示唆もされていないことは、前記1(エ)に記載のとおりであり、このことと、前記(ウ)によれば、本件発明5を、甲1発明、甲3発明、甲4発明又は甲5発明と、甲第2、3、5、6号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 小括
前記1、2によれば、前記第4の1(2)(ア)(ウ)、同(3)(ア)(ウ)、同(4)(ア)(ウ)、同(5)(ア)(ウ)の異議申立理由は、いずれも理由がない。
また、本件訂正により請求項3及び4は削除されるものとなり、本件発明5は本件発明1又は2のみを引用するものとなったので、前記第4の1(2)(イ)、同(3)(イ)、同(4)(イ)、同(5)(イ)の異議申立理由は、いずれも対象となる請求項が存在しない。

第8 むすび
以上のとおり、異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書で通知された取消理由によっては、本件発明1、2、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3、4に係る特許に対して異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された第1ないし第n(nは2以上)の反応槽を備え、各反応槽内で好気性生物処理を行う好気性生物処理装置において、
少なくとも第1反応槽は、反応槽内に配置された、非多孔質の酸素透過膜によって酸素を被処理水に溶解させるMABR反応槽であり、
該被処理水は、揮発性物質又は臭気の発生する物質を含む有機性廃水であり、
少なくとも最終反応槽はMABR以外の反応槽であり、
該MABR反応槽に活性炭が充填されており、該MABR反応槽に被処理水が上向流通水されて活性炭流動床が形成されることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項2】
請求項1において、前記MABR以外の反応槽は、汚泥浮遊反応槽又は担体流動反応槽であることを特徴とする好気性生物処理装置。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1又は2において、前記酸素透過膜は、酸素含有ガスが送風される中空糸膜であり、該酸素含有ガスの送風圧力が、該中空糸膜の圧力損失より5?20%高い圧力であることを特徴とする好気性生物処理装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-04-17 
出願番号 特願2017-51090(P2017-51090)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C02F)
P 1 651・ 851- YAA (C02F)
P 1 651・ 121- YAA (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松井 一泰  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 櫛引 明佳
金 公彦
登録日 2018-02-02 
登録番号 特許第6281652号(P6281652)
権利者 栗田工業株式会社
発明の名称 好気性生物処理装置  
代理人 重野 剛  
代理人 重野 剛  

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