• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03H
管理番号 1352572
審判番号 不服2018-7513  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-01 
確定日 2019-06-13 
事件の表示 特願2015-551412「フィルタ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月11日国際公開、WO2015/083415〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月17日(優先権主張 平成25年12月3日)を国際出願日とする出願であって、平成29年7月3日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日に意見書が提出されるとともに手続補正(補正の対象は明細書のみ)がされたが、平成30年3月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月1日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、それぞれ本願出願時の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された複数段のラダー型回路とを備え、
比帯域幅が4.3%以上であり、
前記複数段のラダー型回路の各段のラダー型回路が、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ直列腕に設けられた直列腕共振子と、前記直列腕とグラウンド電位とを結ぶ並列腕に設けられた並列腕共振子と、前記第1の端部とグラウンド電位との間に接続されている第1のインダクタと、前記第2の端部とグラウンド電位との間に接続されている第2のインダクタとを有する、フィルタ装置。」

「【請求項2】
前記複数段のラダー型回路の内、隣り合う前記ラダー型回路において、一方の前記ラダー型回路の前記第2のインダクタと、他方の前記ラダー型回路の前記第1のインダクタとが1つの共通インダクタに共通化されている、請求項1に記載のフィルタ装置。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1、2に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び引用文献2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2007-202136号公報
引用文献2:特開平10-13187号公報

ここで、拒絶査定において、請求項1及び2についての拒絶理由の備考欄には、以下の記載がある。
「引用文献1の段落[0027],[0032]を参酌すれば、引用文献2(特に、段落[0015]-[0020],[図1],[図13]参照)に記載された不整合損失抑制素子61,62,63に代えて、引用文献2に記載されたはしご型回路51,52,53,54のそれぞれの両端部に並列にインダクタを設けることに格別な困難性はない。
そして、はしご型回路51,52,53,54を備えた共振器型SAWフィルタが帯域通過型フィルタであることは、図13を参酌すれば明らかであり、帯域通過型フィルタにおいて広帯域化を図ることは自明な課題である。そして広帯域化を図るにあたって、比帯域幅をどのように設定するかは当業者が必要に応じて適宜設定することである。
してみれば、本願発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。」
この記載からみて、原査定は引用文献2に記載された発明を主たる引用発明として進歩性の判断をしたものといえる。

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献2の記載及び引用発明
原査定の拒絶理由で引用された特開平10-13187号公報(引用文献2)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0015】
【発明の実施の形態】
第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態を示す共振器型SAWフィルタの回路図である。この共振器型SAWフィルタは、π型のはしご型フィルタであり、4個の1段はしご型回路51,52,53,54を備えている。各1段はしご型回路51?54は、それぞれSAW共振子で構成されたフィルタ回路である。4個の1段はしご型回路51,52,53,54が縦続接続され、共振器型SAWフィルタが構成されている。なお、ここでは、1段はしご型回路の数を4個にした4段はしご型回路を説明するが、偶数であればよく、2段、6段あるいは8段の構成でもよい。各1段はしご型回路51,52,53,54の段間には、これらの挿入損失を抑制するために、インピーダンスが純リアクタンス成分のみを持つ誘導性素子あるいは容量性素子である不整合損失抑制素子61,62,63が、それぞれ並列に接続されている。不整合損失抑制素子61,62,63としては、外付けのチップコンデンサ、外付けのミアンダ型インダクタ、各SAW共振子と同一基板に形成されたIDT形状のキャパシタ、各SAW共振子と同一基板に形成されたスパイラル型インダクタ及びミアンダ型インダクタ等が考えられる。
【0016】1段はしご型回路51は、端子対T_(51a) ,T_(51b )及び端子対T_(51c) ,T_(51d) 間に接続された並列アームSAW共振子51pと直列アーム共振子51sとで構成されている。1段はしご型回路52は、端子対T_(52c) ,T_(52d) 及び端子対T_(52a),T_(52b) 間に接続された並列アームSAW共振子52pと直列アーム共振子52sとで構成されている。1段はしご型回路53は、端子対T_(53a) ,T_(53b) 及び端子対T_(53c) ,T_(53d) 間に接続された並列アームSAW共振子53pと直列アーム共振子53sとで構成されている。1段はしご型回路54は、端子対T_(54c) ,T_(54d) 及び端子対T_(54a) ,T_(54b) 間に接続された並列アームSAW共振子54pと直列アーム共振子54sとで構成されいる。各並列アーム共振子51p?54pは、まったく同じ素子であり、それらのインピーダンスも等しい。各直列アーム共振子51s?54sも、まったく同じ素子であり、それらのインピーダンスは等しい。従って、1段目の1段はしご型回路51と2段目の1段はしご型回路52の間に並列に接続された素子61と、3段目の1段はしご型回路53と4段目の1段はしご型回路54の間に並列に接続された素子63とは、まったく同じ整合用純リアクタンス成分を持つように設定されている。
【0017】例えば、1段目の1段はしご型回路51において、端子対T_(51a) ,T_(51b)側が特性インピーダンスZ0 で終端され、該1段はしご型回路51を端子対T_(51c) ,T_(51d) 側からみたインピーダンスがZ_(3)(=R_(3) +jX_(3) )とする。段間での不整合損失を除去するためには、両側のインピーダンスが共役関係にあることが必要である。そのため、素子61のインピーダンスはZ_(4) (=-j(R_(3)^(2) +X_(3)^(2) )/2X_(3) )に設定されている。素子63のインピーダンスも同様であり、Z_(4) (=-j(R_(3)^(2) +X_(3)^(2) )/2X_(3) )に設定されている。各素子61,63のインピーダンスをZ_(4) に設定すると、1段はしご型回路51、素子61及び1段はしご型回路52で構成される回路65と、1段はしご型回路53、素子63及び1段はしご型回路54で構成される回路66とは、まったく同じ回路になる。そこで、例えばl段目の1段はしご型回路51において、端子対T_(51a) ,T_(51b) 側が特性インピーダンスZ_(0) で終端され、2段目の1段はしご型回路の端子対T_(52a) ,T_(52b) からみたインピーダンスがZ_(5) (=R_(5) +jX_(5) )とすると、回路65,66での不整合損失を除去するためには、素子62のインピーダンスはZ_(5) (=-j(R_(5)^(2) +X_(5)^(2) )/2X_(5) )にする必要があり、この値に設定されている。
【0018】次に、図1の共振器型SAWフィルタの動作を説明する。共振器型SAWフィルタの入力端子対T_(51a) ,T_(51b) を介して高周波信号が入力されると、フィルタを構成するすべてのSAW共振子51p?54p,51s?54sにおけるIDTの電極指間に電圧差が生じ、弾性表面波が励振される。弾性表面波が励振することによって、これらSAW共振子が水晶共振子または従来のLC共振子と同等なインピーダンス特性を表し、SAW共振子系全体が帯域フィルタの特性を表すことになる。各1段はしご型回路51?54の段間に挿入接続された不整合損失抑制素子61?63は、各段間での反射を抑制し、通過帯域の特性のバランスを整え、リップル(最大値と最小値の差)の小さい特性にする。結果的に、この共振器型フィルタの出力端子対、つまり、1段はしご型回路54における端子対T_(54a) ,T_(54b) から、通過帯域に周波数の合う信号だけが安定な強度で出力される。次に、段間の接続を改善した第1の実施形態の共振器型SAWフィルタの効果を説明する。
【0019】図13は、図1の挿入損失特性を示す図である。図1の共振器型SAWフィルタには、段間に不整合損失抑制素子61?63が設けられているので、段間の両側のリアクタンス分が消去されて通過帯域における反射が改善される。そのため、図13に示したA2の部分のように、共振器型SAWフィルタの挿入損失特性のうちの通過帯域低域側での勾配が、従来に比べて緩やかになり、結果的にフィルタの低損失化を実現できる。即ち、挿入損失特性の他の部分が変わらずに、以前大きかった通過帯域の低域側挿入損失が大きく改善され、フィルタ全体の特性改善になる。また、信号処理の側面からみれば、一般的にフィルタの通過帯域におけるリップルは小さい方が望ましいので、この第1の実施形態の共振器型SAWフィルタは、通過帯域のリップルの抑制にも貢献する。さらに、図lからわかるように、直列アームのSAW共振子が合成されずに、素子61?63のような純リアクタンス素子が追加されるため、それらの値次第では、フィルタの挿入損失特性のうち、通過帯域外の低域における減衰量が通過帯域に比べてかなり増加するという効果もある(図13中のA3の部分)。
【0020】このように挿入損失特性が改善された共振器型SAWフィルタは、従来のものと比べて利用しやすく、応用範囲が広くなるはずである。一般的に、共振器型SAWフィルタは、例えば自動車・携帯電話等の段間フィルタとして使われるが、従来では共用器用フィルタとしてはまだ利用されていない。しかし、図1の共振器型SAWフィルタ及びその段数を増した共振器型SAWフィルタは、低損失なだけでなく低リップルなので、共用器用フィルタとしても十分利用できる。現在の自動車・携帯電話等の共用器用フィルタを構成するセラミックフィルタを、この第1の実施形態の共振器型SAWフィルタに置き換えると、自動車・携帯電話等に使われるフィルタはすべてSAWフィルタでできる。自動車・携帯電話等に使われるフィルタをすべてSAWフィルタにすると、これら自動車・携帯電話の小型化、高性能化および低価格化を飛躍的に推進できる。特に、上述のように、場合によってはフィルタの通過帯域外の低域側の減衰量がかなり増加することがあるので、現在の一般的な自動車・携帯電話の周波数帯域からみれば、この第1の実施形態のフィルタを受信フィルタとして利用すると一層性能を発揮できる。即ち、受信フィルタの低域側に送信フィルタの通過帯域があるため、低域側の減衰量が増加するということは送信回路系とのアイソレーションがよくなるということであり、回路設計がしやすくなる。」

(2)図1は以下のとおり。

(3)図13は以下のとおり。

上記(1)ないし(3)より、引用文献2には、図1に記載された共振器型SAWフィルタについて、以下の事項が記載されている。
共振器型SAWフィルタは、段落[0018]より、高周波信号が入力される入力端子対T51a及びT51bと、通過帯域に周波数の合う信号だけが安定な強度で出力される出力端子対T54a及びT54bとを備え、段落[0019]及び図13の記載も合わせて、帯域通過型のフィルタであるといえる。
そして、前記共振器型SAWは、段落[0015]、図1より、4個(4段)の1段はしご型回路51、52、53及び54を備え、これらが入力側から順に1段目?4段目となるように縦続接続されたものである。そして、前記各1段はしご型回路51、52、53及び54は、段落[0016]、図1より、それぞれ入力側の端子対(T_(51a)、T_(51b);T_(52c)、T_(52d);T_(53a)、T_(53b);T_(54c)、T_(54d))と出力側の端子対(T_(51c)、T_(51d);T_(52a)、T_(52b);T_(53c)、T_(53d);T_(54a)、T_(54b))を備えるとともに、前記入力端子対のうちの入力端子T_(51a)と前記出力端子対のうちの出力端子T_(54a)との間の直列アームに配置された直列アーム共振子51s、52s、53s及び54sと、前記直列アームと前記入力端子対のうちの入力端子T51bと前記出力端子対のうちの出力端子T54bとの間の信号線との間を接続する並列アームに配置された並列アーム共振子51p、52p、53p及び54pとを備えている。
さらに、段落[0015]より、前記共振器型SAWフィルタの各1段はしご型回路51、52、53及び54の段間には、これらの挿入損失を抑制するためにインピーダンスが純リアクタンス成分のみを持つ誘導性素子である不整合損失抑制素子61、62及び63が並列に接続されており、前記不整合損失抑制素子61、62及び63は、インダクタとし得るものである。そして、段落[0019]、図13より、前記共振型SAWフィルタは、段間に不整合損失抑制素子61、62及び63が向けられているので、段間の両側のリアクタンス成分が消去されて通過帯域における反射が改善され、前記共振型SAWフィルタの挿入損失特性のうちの通過帯域低域側での勾配が緩やかになり、フィルタの低損失化を実現できるとともに通過帯域のリップルを抑制することができるものである。

以上の事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

(引用発明1)
「入力端子対(T_(51a)、T_(51b))と、
出力端子対(T_(54a)、T_(54b))と、
前記入力端子対と前記出力端子対との間に縦続接続された4段の1段はしご型回路51、52、53及び54とを備え、
前記4段の1段はしご型回路51、52、53及び54の各1段はしご型回路51、52、53及び54は、入力側の端子対(T_(51a)、T_(51b);T_(52c)、T_(52d);T_(53a)、T_(53b);T_(54c)、T_(54d))と、出力側の端子対(T_(51c)、T_(51d);T_(52a)、T_(52b);T_(53c)、T_(53d);T_(54a)、T_(54b))と、前記入力側の端子対の一方の端子(T_(51a);T_(52c);T_(53a);T_(54c))と前記出力側の端子対の一方の端子(T_(51c);T_(52a);T_(53c);T_(54a))とを結ぶ直列アームに配置された直列アーム共振子(51s;52s;53s;54s)と、前記入力側の端子対の他方の端子(T_(51b);T_(52d);T_(53b);T_(54d))と前記出力側の端子の他方の端子(T_(51d);T_(52b);T_(53d);T_(54b))とを結ぶ信号線と前記直列アームとを結ぶ並列アームに配置された並列アーム共振子(51p;52p;53p;54p)とを有し、
隣接する2つの1段はしご型回路の一方の出力側の端子対と他方の入力側の端子対の間に、不整合損失抑制素子61、62及び63を備え、該不整合損失抑制素子61、62及び63はインダクタとすることができ、
前記不整合損失抑制素子61、62及び63が設けられることで、段間の両側のリアクタンス分が消去されて通過帯域における反射が改善され、共振型SAWフィルタの挿入損失特性のうちの通過帯域低域側で勾配が緩やかになり、かつ、通過帯域のリップルが抑制される、
帯域通過型の共振型SAWフィルタ。」

一方で不整合損失抑制素子61は、1段目の1段はしご型回路51と2段目の1段はしご型回路52の段間の両側のリアクタンス成分を消去するためのものであり、不整合損失抑制素子62は、2段目の1段はしご型回路52と3段目の1段はしご型回路53の段間の両側のリアクタンス成分を消去するためのものであり、不整合損失抑制素子63は、3段目の1段はしご型回路53と4段目の1段はしご型回路54の段間の両側のリアクタンス成分を消去するためのものであるから、1段目の1段はしご型回路51と、該1段はしご型回路51のリアクタンス成分を消去する作用を含む不整合損失抑制素子61とを合わせて「1段目のはしご型回路」と称することは任意である。さらに、2段目の1段はしご型回路52と、該2段目の1段はしご型回路52の入力側のリアクタンス成分を消去する作用を含む不整合損失抑制素子61と、出力側のリアクタンス成分を消去する作用を含む不整合損失抑制素子62とを合わせて「2段目のはしご型回路」と称し、同様に3段目の1段はしご型回路53と不整合損失抑制素子62及び63とを合わせて「3段目のはしご型回路」と称し、4段目の1段はしご型回路54と不整合損失抑制素子63とを合わせて「4段目のはしご型回路」と称することは任意であり、この場合、前記共振器型SAWフィルタは、4段のはしご型回路を備え、各不整合損失抑制素子61、62及び63は、隣接する2つのはしご型回路で共用するものといえる。

以上を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

(引用発明2)
「入力端子対T_(51a)、T_(51b)と、
出力端子対T_(54a)、T_(54b)と、
前記入力端子対と前記出力端子対との間に接続された4段のはしご型回路とを備え、
1段目のはしご型回路は、入力側の端子対T_(51a)、T_(51b)と、出力側の端子対T_(51c)、T_(51d)と、前記入力側の端子対の一方の端子T_(51a)と前記出力側の端子対の一方の端子T_(51c)とを結ぶ直列アームに配置された直列アーム共振子51sと、前記入力側の端子対の他方の端子T_(51b)と前記出力側の他方の端子T_(51d)とを結ぶ信号線と前記直列アームとを結ぶ並列アームに配置された並列アーム共振子51pと、前記出力側の端子対の一方の端子T_(51c)と他方の端子T_(51d)との間に接続された不整合損失抑制素子61を有し、
2段目のはしご型回路は、入力側の端子対T_(52c)、T_(52d)と、出力側の端子対T_(52a)、T_(52b)と、前記入力側の端子対の一方の端子T_(52c)と前記出力側の端子対の一方の端子T_(52a)とを結ぶ直列アームに配置された直列アーム共振子52sと、前記入力側の端子対の他方の端子T_(52d)と前記出力側の他方の端子T_(52b)とを結ぶ信号線と前記直列アームとを結ぶ並列アームに配置された並列アーム共振子52pと、前記入力側の端子対の一方の端子T_(52c)と他方の端子T_(52d)との間に接続された不整合損失抑制素子61と、前記出力側の端子対の一方の端子T_(52a)と他方の端子T_(52b)との間に接続された不整合損失抑制素子62を有し、
3段目のはしご型回路は、入力側の端子対T_(53a)、T_(52b)と、出力側の端子対T_(52c)、T_(52d)と、前記入力側の端子対の一方の端子T_(52a)と前記出力側の端子対の一方の端子T_(52c)とを結ぶ直列アームに配置された直列アーム共振子53sと、前記入力側の端子対の他方の端子T_(52b)と前記出力側の他方の端子T_(52d)とを結ぶ信号線と前記直列アームとを結ぶ並列アームに配置された並列アーム共振子53pと、前記入力側の端子対の一方の端子T_(52a)と他方の端子T_(52b)との間に接続された不整合損失抑制素子62と、前記出力側の端子対の一方の端子T_(52c)と他方の端子T_(52d)との間に接続された不整合損失抑制素子63を有し、
4段目のはしご型回路は、入力側の端子対T_(54c)、T_(54d)と、出力側の端子対T_(54a)、T_(54b)と、前記入力側の端子対の一方の端子T_(54c)と前記出力側の端子対の一方の端子T_(54a)とを結ぶ直列アームに配置された直列アーム共振子54sと、前記入力側の端子対の他方の端子T_(54d)と前記出力側の他方の端子T_(54b)とを結ぶ信号線と前記直列アームとを結ぶ並列アームに配置された並列アーム共振子54pと、前記入力側の端子対の一方の端子T_(54c)と他方の端子T_(54d)との間に接続された不整合損失抑制素子63とを有し、
前記不整合損失抑制素子61、62及び63のそれぞれは、隣接する一方のはしご型回路の出力側端子対の一方の端子と他方の端子との間に接続された不整合損失抑制素子と、隣接する他方のはしご型回路の入力側の端子対の一方の端子と他方の端子との間に接続された不整合損失抑制素子とが共用されており、かつ、インダクタであり、
前記不整合損失抑制素子が設けられることで、段間の両側のリアクタンス分が消去されて通過帯域における反射が改善され、共振型SAWフィルタの挿入損失特性のうちの通過帯域低域側で勾配が緩やかになり、かつ、通過帯域のリップルが抑制される、
帯域通過型の共振型SAWフィルタ。」

2 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由で引用された特開2007-202136号公報(引用文献1)の段落[0027]、[0032]には、それぞれ以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
「【0027】
この例では、SAW共振子11、12、インダクタ13及び14により一方の回路要素が構成され、またSAW共振子15、16、インダクタ17及び18により他方の回路要素が構成される。なお各図において、点線で囲んである部分は回路要素に相当する。そしてこれら回路要素同士を互いに縦続接続すると、インダクタ13とインダクタ17は直列接続になるため、図12(b)ではこれらを合わせたインダクタンス値をもつ1つのインダクタ19とした回路構成と等価になる。」

「【0032】
図17は、本発明の他の実施形態を示す。同図が図12と異なる部分は、SAW共振子11とSAW共振子15の間に直列に介挿したインダクタ19を省き、この部分に並列にインダクタ20を設けた点にある。すなわち、直列腕SAW共振子11における並列腕SAW共振子12との接続点とは反対側に入力ポート61に対して並列にインダクタを設けると共に直列腕SAW共振子15における並列腕SAW共振子16との接続点とは反対側に出力ポート62に対して並列にインダクタを設ける回路要素とし、両インダクタの並列インダクタンス値を1つのインダクタ20が有する構成としている。」

引用文献1に上記されるように、「直列ないし並列に接続される2つのインダクタを備える回路構成と合成したインダクタンス値を持つ1つのインダクタを備える回路構成は置換可能であること。」は、周知である。

第5 本願発明1と引用発明2との対比・判断
1 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明2の「入力端子対T_(51a)、T_(51b)」及び「出力端子対T_(54a)、T_(54b)」は、本願発明1の「入力端子」及び「出力端子」に相当する。
引用発明2の「はしご型回路」は、下記相違点2ないし4を除き本願発明1の「ラダー型回路」に相当し、両者は「前記入力端子と前記出力端子との間に接続された」点で共通する。また、引用発明2の「4段」は、本願発明1の「複数段」に含まれる。
本願発明1の「比帯域幅が4.3%以上であ」る点は、引用発明2に特定されていない(相違点1)。
次に、各段のラダー型回路が有する構成について検討する。
引用発明2の1段目ないし4段目のはしご型回路が備える「入力側の端子対」及び「出力側の端子対」は、それぞれ本願発明1の「第1の端部」及び「第2の端部」に相当する。
引用発明2の1段目ないし4段目のはしご型回路が備える「前記入力側の端子対の一方の端子と前記出力側の端子対の一方の端子とを結ぶ直列アーム」は、本願発明1の「前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ直列腕」に相当し、引用発明2の前記直列アームに配置された「直列アーム共振子」は、本願発明1の前記直列腕に設けられた「直列腕共振子」に相当する。
引用発明2の1段目ないし4段目のはしご型回路が備える「前記直列アームと、前記入力側の端子対の他方の端子と前記出力側の他方の端子とを接続する信号線とを結ぶ並列アーム」と本願発明1の「前記直列腕とグラウンド電位とを結ぶ並列腕」とは、引用発明2の「前記入力側の端子対の他方の端子と前記出力側の他方の端子とを接続する信号線」は所定の電位であるといえるから、両者は「前記直列腕と所定の電位とを結ぶ並列腕」といえる点で共通し、引用発明2の「並列アーム共振子」と本願発明1の「並列腕共振子」とは「並列腕に設けられた並列腕共振子」である点で共通する。
引用発明2の1段目のはしご型回路には、本願発明1の各段のラダー型回路が備える「前記第1の端部とグラウンド電位(所定の電位)との間に接続されている第1のインダクタ」がなく、同4段目、すなわち最終段のはしご型回路には、本願発明1の各段のラダー型回路が備える「前記第2の端部とグラウンド電位(所定の電位)との間に接続されている第2のインダクタ」がない(相違点3)。
引用発明2の「不整合損失抑制素子61、62及び63」は、いずれも「インダクタ」であるから、引用発明2の1段目を除くはしご型回路の「前記入力側の端子対の一方の端子と他方の端子との間に接続された不整合損失抑制素子」と本願発明1の「前記第1の端部とグラウンド電位との間に接続されている第1のインダクタ」とは、「前記第1の端部と所定の電位との間に接続されている第1のインダクタ」である点で共通する。また、引用発明2の4段目すなわち最終段を除くはしご型回路の「前記出力側の端子対の一方の端子と他方の端子との間に接続された不整合損失抑制素子」と本願発明1の「前記第2の端部とグラウンド電位との間に接続されている第2のインダクタ」とは、「前記第2の端部と所定の電位との間に接続されている第2のインダクタ」である点で共通する。
引用発明2の「帯域通過型の共振型SAWフィルタ」は、本願発明1の「フィルタ装置」に含まれる。

以上より、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された複数段のラダー型回路とを備え、
前記複数段のラダー型回路の各段のラダー型回路が、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ直列腕に設けられた直列腕共振子と、前記直列腕と所定の電位とを結ぶ並列腕に設けられた並列腕共振子と、第1段を除き前記第1の端部と所定の電位との間に接続されている第1のインダクタと、最終段を除き前記第2の端部と所定の電位との間に接続されている第2のインダクタとを有する、フィルタ装置。」

(相違点1)
本願発明1では「比帯域幅が4.3%以上」であるのに対し、引用発明2ではこの点が特定されていない点。

(相違点2)
一致点である「所定の電位」について、本願発明1では「グラウンド電位」であるのに対し、引用発明2では「接続線」の電位が「グラウンド電位」と特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1では、複数段のラダー型回路のうち、1段目のラダー型回路は「第1のインダクタ」を有し、最終段のラダー型回路は「第2のインダクタ」を有するのに対し、引用発明2では、これらのインダクタを有しない点。

(相違点4)
本願発明1では、複数段のラダー型回路のうち、相違点3に係る1段目のラダー型回路の第1のインダクタ及び最終段のラダー型回路の第2のインダクタを除く、第1のインダクタ及び第2のインダクタが、個別に設けられているのに対し、引用発明2では、隣接する一方のはしご型回路の出力側端子対の一方の端子と他方の端子との間に接続された不整合損失抑制素子と、隣接する他方のはしご型回路の入力側の端子対の一方の端子と他方の端子との間に接続された不整合損失抑制素子とが共用されている点。

2 判断
相違点1について検討する。
本願明細書を参照すると、「比帯域幅とは、フィルタ装置1における通過帯域の周波数範囲を中心周波数で除算して得られた割合」(段落[0025])であり、「通過帯域は挿入損失が0dBから3.0dBまでの範囲」(同段落)のことといえる。
この定義に従うと、引用発明2は、不整合損失抑制素子であるインダクタが設けられることで、段間の両側のリアクタンス分が消去されて通過帯域における反射が改善され、共振型SAWフィルタの挿入損失特性のうちの通過帯域低域側で勾配が緩やかになり、かつ、通過帯域のリップルが抑制されるものであるから、挿入損失が3.0dBより小さい範囲、すなわち通過帯域が広がることで、不整合損失抑制素子が設けられていない従来のフィルタよりも比帯域幅は大きくなるといえる。
一方、本願明細書を参照しても、比帯域幅を4.3%以上とすることの臨界的な技術的意味については記載がなく、引用発明2において、比帯域幅をどの程度に設定するかは中心周波数の数値にも応じて当業者が適宜になし得るものである。

次に、相違点2について検討する。
引用発明2の帯域通過型の共振型SAWフィルタは、入力端子対の一方の入力端子T_(51a)から出力端子対の一方の出力端子T_(54a)に連なる直列アームに入力信号が伝送されるものであるから、入力端子対の他方の入力端子T_(51b)から出力端子対の他方の出力端子T_(54b)に連なる接続線の電位をグラウンド電位とすることは、当業者が適宜になし得たことである。

次に、相違点3について検討する。
本願発明1の相違点3に係る「第1のインダクタ」及び「第2のインダクタ」は、本願明細書(段落[0005])に記載された従来技術も備えている「整合インダクタ」に対応するものであり、このように、入力側及び出力側に結合する他の回路とのインピーダンス整合のための素子を入力端子及び出力端子に設けることは、例示するまでもなく周知の事項であるから、引用発明2において、1段目のはしご型回路の入力側の端子対の一方の端子T_(51a)と他方の端子T_(51b)との間にインピーダンス整合用のインダクタンスを接続し、4段目のはしご型回路の出力側の端子対の一方の端子T_(54a)と他方の端子T_(54b)との間にインピーダンス整合用のインダクタを接続することは、当業者が適宜になし得たことである。

最後に、相違点4について検討する。
上記第4の2の項に記載したとおり、「直列ないし並列に接続される2つのインダクタを備える回路構成と合成したインダクタンス値を持つ1つのインダクタを備える回路構成は置換可能であること。」は、周知であるから、引用発明2において、隣接する2つのはしご型回路で共用されている不整合損失抑制素子61、62及び63であるインダクタを、等価である2つのインダクタで構成し、前記隣接する2つのはしご型回路のそれぞれにインダクタを配置する構成とすることは、当業者が適宜になし得たことである。

したがって、本願発明1は、引用発明2と引用文献1に記載された周知事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第6 本願発明2と引用発明1との対比・判断
1 本願発明2について
本願発明2は、請求項1及び請求項2の記載からみて、請求項2に請求項1に記載の事項を組み入れた、次の発明であると認められる。
「入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された複数段のラダー型回路とを備え、
比帯域幅が4.3%以上であり、
前記複数段のラダー型回路の各段のラダー型回路が、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ直列腕に設けられた直列腕共振子と、前記直列腕とグラウンド電位とを結ぶ並列腕に設けられた並列腕共振子と、前記第1の端部とグラウンド電位との間に接続されている第1のインダクタと、前記第2の端部とグラウンド電位との間に接続されている第2のインダクタとを有し、
さらに、
前記複数段のラダー型回路の内、隣り合う前記ラダー型回路において、一方の前記ラダー型回路の前記第2のインダクタと、他方の前記ラダー型回路の前記第1のインダクタとが1つの共通インダクタに共通化されている、フィルタ装置。」

ここで、「1つの共通インダクタ」は、隣り合うラダー型回路のどちらに属するかが不明であるから、明細書(段落[0034]-[0036])及び図5を参照すると、前記「1つの共通インダクタ」は、隣り合うラダー型回路の間に配置されているといえ、本願発明2は、そのように解することができる。

2 対比
上記1を踏まえて、本願発明2と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「入力端子対T_(51a)、T_(51b)」及び「出力端子対T_(54a)、T_(54b)」は、本願発明2の「入力端子」及び「出力端子」に相当する。
引用発明1の「1段はしご型回路」は、下記相違点6、7を除き本願発明2の「ラダー型回路」に相当し、両者は「前記入力端子と前記出力端子との間に接続された」点で共通する。また、引用発明1の「4個」は、本願発明2の「複数段」に含まれる。
本願発明2の「比帯域幅が4.3%以上であ」る点は、引用発明1に特定されていない(相違点5)。
次に、各段のラダー型回路が有する構成について検討する。
引用発明1の1段目ないし4段目の1段はしご型回路が備える「入力側の端子対」及び「出力側の端子対」は、それぞれ本願発明2の「第1の端部」及び「第2の端部」に相当する。
引用発明1の1段目ないし4段目の1段はしご型回路が備える「前記入力側の端子対の一方の端子と前記出力側の端子対の一方の端子とを結ぶ直列アーム」は、本願発明2の「前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ直列腕」に相当し、引用発明1の前記直列アームに配置された「直列アーム共振子」は、本願発明2の前記直列腕に設けられた「直列腕共振子」に相当する。
引用発明1の1段目ないし4段目の1段はしご型回路が備える「前記直列アームと、前記入力側の端子対の他方の端子と前記出力側の他方の端子とを接続する信号線とを結ぶ並列アーム」と本願発明2の「前記直列腕とグラウンド電位とを結ぶ並列腕」とは、引用発明1の「前記入力側の端子対の他方の端子と前記出力側の他方の端子とを接続する信号線」は所定の電位であるといえるから、両者は「前記直列腕と所定の電位とを結ぶ並列腕」といえる点で共通し、引用発明1の「並列アーム共振子」と本願発明2の「並列腕共振子」とは「並列腕に設けられた並列腕共振子」である点で共通する。
引用発明1の1段目の1段はしご型回路には、本願発明2の1段目のラダー型回路が備える「前記第1の端部とグラウンド電位(所定の電位)との間に接続されている第1のインダクタ」がなく、同4段目、すなわち最終段のはしご型回路には、本願発明2の最終段のラダー型回路が備える「前記第2の端部とグラウンド電位(所定の電位)との間に接続されている第2のインダクタ」がない(相違点7)。
引用発明1の「不整合損失抑制素子61、62及び63」は、いずれも「インダクタ」であり、本願発明2の共通化された「1つのインダクタ」に相当する。
引用発明1の「帯域通過型の共振型SAWフィルタ」は、本願発明2の「フィルタ装置」に含まれる。

以上より、本願発明2と引用発明1とは、以下の点で一致し、また相違する。

(一致点)
「入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に接続された複数段のラダー型回路とを備え、
前記複数段のラダー型回路の各段のラダー型回路が、第1の端部と、第2の端部と、前記第1の端部と前記第2の端部とを結ぶ直列腕に設けられた直列腕共振子と、前記直列腕と所定の電位とを結ぶ並列腕に設けられた並列腕共振子と、前記第1の端部と所定の電位との間に接続されている第1のインダクタと、前記第2の端部と所定の電位との間に接続されている第2のインダクタとを有し、
さらに、
前記複数段のラダー型回路の内、隣り合う前記ラダー型回路において、一方の前記ラダー型回路の前記第2のインダクタと、他方の前記ラダー型回路の前記第1のインダクタとが1つの共通インダクタに共通化されている、フィルタ装置。」

(相違点5)
本願発明2では「比帯域幅が4.3%以上」であるのに対し、引用発明1ではこの点が特定されていない点。

(相違点6)
一致点である「所定の電位」について、本願発明2では「グラウンド電位」であるのに対し、引用発明1では「接続線」の電位が「グラウンド電位」と特定されていない点。

(相違点7)
本願発明2では、複数段のラダー型回路のうち、1段目のラダー型回路は「第1のインダクタ」を有し、最終段のラダー型回路は「第2のインダクタ」を有するのに対し、引用発明1では、これらのインダクタを有しない点。

3 判断
相違点5について検討する。
本願明細書を参照すると、「比帯域幅とは、フィルタ装置1における通過帯域の周波数範囲を中心周波数で除算して得られた割合」(段落[0025])であり、「通過帯域は挿入損失が0dBから3.0dBまでの範囲」(同段落)のことといえる。
この定義に従うと、引用発明1は、不整合損失抑制素子であるインダクタが設けられることで、段間の両側のリアクタンス分が消去されて通過帯域における反射が改善され、共振型SAWフィルタの挿入損失特性のうちの通過帯域低域側で勾配が緩やかになり、かつ、通過帯域のリップルが抑制されるものであるから、挿入損失が3.0dBより小さい範囲、すなわち通過帯域が広がることで、不整合損失抑制素子が設けられていない従来のフィルタよりも比帯域幅は大きくなるといえる。
一方、本願明細書を参照しても、比帯域幅を4.3%以上とすることの臨界的な技術的意味については記載がなく、引用発明1において、比帯域幅をどの程度に設定するかは中心周波数の数値にも応じて当業者が適宜になし得るものである。

次に、相違点6について検討する。
引用発明1の帯域通過型の共振型SAWフィルタは、入力端子対の一方の入力端子T_(51a)から出力端子対の一方の出力端子T_(54a)に連なる直列アームに入力信号が伝送されるものであるから、入力端子対の他方の入力端子T_(51b)から出力端子対の他方の出力端子T_(54b)に連なる接続線の電位をグラウンド電位とすることは、当業者が適宜になし得たことである。

最後に、相違点7について検討する。
本願発明2の相違点6に係る「第1のインダクタ」及び「第2のインダクタ」は、本願明細書(段落[0005])に記載された従来技術も備えている「整合インダクタ」に対応するものであり、このように、入力側及び出力側に結合する他の回路とのインピーダンス整合のための素子を入力端子及び出力端子に設けることは、例示するまでもなく周知の事項であるから、引用発明2において、1段目のはしご型回路の入力側の端子対の一方の端子T_(51a)と他方の端子T_(51b)との間にインピーダンス整合用のインダクタンスを接続し、4段目のはしご型回路の出力側の端子対の一方の端子T_(54a)と他方の端子T_(54b)との間にインピーダンス整合用のインダクタを接続することは、当業者が適宜になし得たことである。

よって、本願発明2は、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献1に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明2は、引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2019-04-04 
結審通知日 2019-04-09 
審決日 2019-04-22 
出願番号 特願2015-551412(P2015-551412)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼須 甲斐  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 中野 浩昌
富澤 哲生
発明の名称 フィルタ装置  
代理人 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ