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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1352633
審判番号 不服2018-6271  
総通号数 236 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-08 
確定日 2019-06-10 
事件の表示 特願2016-209522「検査装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 2日出願公開、特開2017- 26638〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年2月21日、米国)を国際出願日とする出願である特願2014-556975号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成28年10月26日に新たな特許出願としたものであって、平成29年9月22日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成30年1月4日付けで拒絶査定がなされた。
本件は、これに対して、平成30年5月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。


第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1である、
「【請求項1】
放射ビームをターゲット構造上のスポットに合焦させる照明光学系を備える光学装置であって、
前記照明光学系は、瞳面又はその近くに提供されたフィルタを有し、
前記フィルタは、前記ビーム上に前記ビームの光軸から径方向距離が増すにつれて増加する透過損失を課す、光学装置。」
から、次のように補正されたものと認める。
「【請求項1】
放射ビームをターゲット構造上のスポットに合焦させる照明光学系を備える光学装置であって、
前記照明光学系は、瞳面又はその近くに提供されたフィルタを有し、
前記フィルタは、前記ビーム上に前記ビームの光軸から径方向距離が増すにつれて増加する透過損失を課し、
前記フィルタは、前記ビームの異なる波長における前記フィルタの前記透過損失の変動を低減するように設計されている、光学装置。」
(下線は、補正箇所である。)

2 補正の目的
本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の「フィルタ」が、「前記ビームの異なる波長における前記フィルタの前記透過損失の変動を低減するように設計されている」ことを限定するものであるから、本件補正の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。

3 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項(上記「1」で、本件補正後の請求項1として記載した事項)により特定されるものと認められる。

4 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である、特表2002-501612号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(公報中で付されている下線以外の下線は、当審で付したものである。)

(1)「好適な実施形態の詳細な説明
本発明は、アポディゼーションを画像,エリプソメータ,スペクトル光度計および他の光学測定システムに採用する方法を開示するものである。本発明はまた、アポディゼーションフィルタのデザインやアポディゼーションフィルタとして使用するのに適した空間的に変化する中性フィルタを製造するための効果的な方法を開示するものである。
図1Aは、分光エリプソメータ(SE)を含む薄膜測定システムの光学部品の略図を示す。キセノンアークランプ10からの高域近UV,可視および近IR光は光学器により溶融シリカファイバ1に焦点合わせされる。このファイバの出力(米国特許第5,329,357号に記載されているように、ファイバ内で複数箇所で反射した結果均一性が良好になり偏光されていない状態のものである)は、SEシステム用の供給源である。このファイバの全面にあるスリットまたはピンホール2は、垂直方向の有効供給源サイズを減少させる(ウェーハ等の試料上で左右方向として像映される)。光は一定の速度で回転する偏光子5を通過する。偏光子により偏向されていない光は、一定の速度で回転する偏光ベクトルで線形に偏光される。偏光子は偏向されたビームも発生する。偏向されたビームは、偏向されていないビームに対して垂直に偏光される。偏光子の開口5Aは、偏向されたビームが妨げられる位置で偏向されていない光と偏向された光とが重複しないようなサイズのものである。偏向されていない放射ビームは焦点ミラー4により試料3へ焦点合わせされる。米国特許第5,608,526号に詳細に記載されているように、測定可能な試料上の最小領域は、このミラーにより放射をどの程度焦点合わせできるか、そして収集ミラー6により収集された光の反射角により決定される。上述した2つの好適な実施形態において、偏光子の開口はシステムの開口止めとしても機能し、この開口からの回折は試料上に焦点合わせされた像に影響する。代替実施形態において、別の開口止めをブロッキング開口11付近または焦点ミラー4付近に配置し、偏光子開口5Aは単独で偏向された放射ビームと偏向されていない放射ビームを分けるように機能する。第1の好適な実施形態において、開口5Aを偏光子の後に配置する。代替実施形態においては、図1Aに破線5A’で示すように、偏光子の前に配置する。
試料から反射された光の一部は収集ミラー6により収集されて、分光器の入口スリット69にこの光を焦点合わせする。分光器までの行路で光はフォールドミラー(fold mirror)7から反射され(フォールドミラーはシステム設計に必須のものではないが、光学系を従来の大きさに合わせるために必要になる場合がある)、コンピュータ制御の分析器8を通過して、1つの偏光の光を選択する。収集ミラーにより焦点合わせされた試料の領域は、焦点ミラーにより照明されたものよりも大きく、システムの配列を容易にする。偏光子開口5Aの大きさと光学系のレイアウトは、偏光子5からの偏向されたビームが到達しないかまたは分光器の入口スリット69で妨げられて、測定した信号に寄与しないようなものである。分光器160の検出器173は、試料からの異なる放射要素を測定し、位相や振幅情報をプロセッサ101に供給する。プロセッサ101は、そのようなデータを分析して、試料上の膜の厚みや屈折率を含む試料特性を決定する。
試料上に入射するビーム9の入射高角により(照明ビームが試料表面への法線となる角度として規定されたもの)、焦点ミラー4により形成されたファイバスリットの像は完全に焦点状態にはならず、回折および他の収差はさらに像を拡大する。入射角は、63.5?80.5度の領域のものが好ましい。回折効果を最小にするために、システムは、偏光子開口5Aのところに、高透過率から低透過率へと急減に移行するものではなく次第に移行する部分を有するアポダイザを含む。移行部の形状は、高透過率の中心部分から実質的に不透明な縁部へとかなり滑らかに変化する限り、あまり重要なものではない。他の適切なフィルタを以下に記載する。
McGraw-Hill Dictionary of Scientific and Technical Terms,第2改訂版,1985年,McGraw-Hill,Inc.は、「アポディゼーション」を「光学システムの開口の振幅透過率を修正して、中心エアリーディスクに対して回折リングのエネルギーを減少または抑圧すること」と定義している。この定義は、円形開口に応用可能であるが、この技術は同様に他の開口形状にも応用できる。光学システムの焦点面での回折点拡散関数は、システムの制限開口が非円形のものであれば、エアリーパターンの形状をもたないが、一般的に開口での回折のせいで中心回折ピークの外側よりもさらに延びた尾の部分を表す。例えば、Principles of Optics,M.Born & B.Wolf,第6改訂版,(1980年)の第8章を参照されたい。回折尾の部分は、開口の2次元透過率プロファイルの高空間周波数要素に関連するものである。この高空間周波数要素は主に、開口縁部での急な透過率の不連続部分から生じ、そして回折尾の部分は開口の振幅透過率を修正することによりこれらの不連続部分を和らげて減少される。このような回折尾の部分を減少する方法を一般的にアポディゼーションと定義し、この減少を達成する開口透過率関数をここにおいて「アポディゼーションを行う関数」または「アポディゼーション関数」と呼ぶ。共通のアポディゼーション関数は、丸めたガウスプロファイルおよびコサインプロファイルである。Progress in Optics,Ed.B.Wolf,J.Wiley and Sons,第29頁,1964年を参照されたい。アポディゼーションは超音波装置に広く応用されてきたもので回折効果を減少させるが、光学システムでのアポディゼーションの応用,特に照明および光学測定システムでの応用は限られたものであった。
図2Bは、アポダイザに適したアポディゼーション関数を示している。振幅透過率は、コサイン関数の4つの四分円をたどって最小から最大に変動してそして最小に戻る。この形状は、好適な実施形態においてアポディゼーションフィルタの垂直寸法の振幅透過率プロファイル用に用いられ、ここでフィルタの垂直寸法は試料上の照明ビームの入射面(図1Aの紙の面)に対応する。
図2Aは、別の振幅アポディゼーション関数を示す。この場合、開口寸法の中心半分は一定の最大透過率を有し、そしてコサインプロファイルの2つの四分円は両側で最小および最大透過率間で滑らかに移行するように使用される。この透過率プロファイルは第1のものほど測定スポットサイズを減縮しないが、全入射放射の大部分を透過する。好適な実施形態において、このプロファイルは、試料上の入射面に垂直な方向に対応するので、アポディゼーションフィルタの水平プロファイル用に使用される。(1/cos(入射角)傾斜要素を含まないのでこの方向の測定スポットサイズは入射面方向のものよりも小さく、したがって、開口は水平方向でのものほどアポディゼーションを必要としない。)
アポディゼーションフィルタ50は、試料用の照明光学系の入口スリット2および分光系の入口スリット69との間の光行路に沿ったあらゆる位置に配置される。例えば、それが入口スリット2または試料3にあまり接近していない限り、スリット2および試料3の間に配置される。偏光子開口5A,ブロッキング開口11および焦点ミラー4,または試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔は、アポディゼーションフィルタが配置されうる場所である。アポディゼーションはまた、例えば開口6A等で試料から放射行路の下流,またはフォールドミラー7および分析器8の間にも配置される。アポディゼーションフィルタ50を配置する可能性がある位置をいくつか図1Aに破線で示す。
検出器173で実際検出された信号は、試料3の表面上にある測定スポットからのものであり、ここで測定スポットは照明システム(2,5,5A,11,14)(当審註:「14」は、「4」の誤記であると認められる。)により照明される試料部分として規定され、そして検出器の観察視野内のものでもある(収集光学系6A,8,69で規定される)。アポダイザを使用して、2つの技術のうちのいずれかを用いて測定スポットサイズを最小にすることができ、これら2つの技術とは、入口スリット(ピンホール)および試料間の光行路に配置して照明システムの焦点合わせの分解能を高める技術,または試料および検出器の間に配置して検出器の観測視野をより良く制限する技術である。(2つのアポダイザを用いて両方の技術を組み合わせて適用することも可能である。もしくは、外照明(epi-illumination)を有する垂直入射顕微鏡のように、照明および収集システムが共通の光行路を共有すれば、1つのアポダイザを用いて両方の技術を適用できる。)また、本発明は反射放射を検出するものとして説明されているが、透過放射を検出するシステムにも同様に応用可能である。
上述のパラグラフにおいて、「照明部分」と「検出器の観察視野」の定義は試料上にあるこれらの領域の周囲を囲む特定の境界線を確認するための何らかの手段が必要となる。これらの境界は取り囲んだエネルギーのしきい値基準を用いて規定される。例えば、照明測定スポットは、照明配分においてエネルギーのある規定されたパーセント(例えば、99.5%)を囲む境界で規定される。検出器の観察視野は、しきい値基準を試料表面にある検出器の放射感応要素の回折制限された原像(収集光学系を通して像映されたもの)に適用することにより、同様に規定することができる。使用するしきい値は検出器の感度制限に基づくものであるか、またはシステムの測定耐性要求に基づいた他の適切な基準を使用することもできる。一般的に、測定スポットサイズの規定は、測定される特定の試料のタイプや実行される測定のタイプに左右されるものである。規定基準は代替となるデザインの中から相対的な測定の特性を示すための手段が有益なものであれば、どのようなものでも使用可能である。
第1の好適な実施形態において、アポディゼーションフィルタは偏光子開口5Aの代わりに偏光子のすぐ後に設置し、図2Aに示したような水平寸法および図2Bに示したような垂直寸法で位置が変化する透過率を有する矩形の開口である。そのようなアポディゼーションフィルタを製造するために用いてきた技術のうちの1つは、空間的に変化する中性フィルタを製造することである。中性フィルタは従来、基板の片側を薄膜の金属コーティングで被覆することにより製造されるものである。基板の材料は対象となる波長領域に対して透過性が良好なものを選択する。薄膜金属コーティングの厚みは、透過する少量の入射放射を制御するように選択される。ほとんどの場合、金属コーティングは基板にスパッタリングする。空間的に変化する中性コーティングを行うために、マスクをスパッタリング用の材料の基と被覆される基板との間に設置する。基板が完全にマスクで保護される場合、金属が全く存在しないため高い透過率が得られる。マスクが基板を全く保護していない場合、金属層は最も厚く透過率も最も低くなる。マスクが基板を部分的に覆う場合、金属コーティングの厚みは中間のものとなり、したがって透過率も中間のものとなる。スパッタリング処理中に基板を移動することで、長く複雑な形状の中間透過率の値(もしくは透過率の値)の範囲が生じ、したがって、すべてスパッタリングを行うよりも広い基板領域を曝すことができる。
いくつかの応用では、適切なフィルタ,例えばカリフォルニア州,サンクレメントのレイナルド社(Reynard Corporation)のカタログナンバー1400等も利用可能である。」(公報第12頁第24行?第17頁第20行)

(2)「【図1A】

【図2】

【図2】



すると、上記引用文献1の記載事項によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「一定速度で回転する偏光子5により偏向されていない光は、一定速度で回転する偏向ベクトルで線形に偏光され、偏向されたビームは、偏向されていないビームに対して垂直に偏光され、
偏光子の開口5Aは、偏向されたビームが妨げられる位置で偏向されていない光と偏向された光とが重複しないようなサイズのものであり、
偏向されていない放射ビームは焦点ミラー4により試料3へ焦点合わせされ、
試料3の表面上にある測定スポットは照明システム(2,5,5A,11,4)により照明される試料部分として規定され、
偏光子の開口はシステムの開口止めとしても機能し、この開口からの回折は試料上に焦点合わせされた像に影響し、
アポディゼーションフィルタ50は、それが試料3にあまり接近していない限り、試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔に配置され、高透過率から低透過率へと急減に移行するものではなく次第に移行する部分を有するアポダイザであって、移行部の形状は、高透過率の中心部分から実質的に不透明な縁部へとかなり滑らかに変化し、
アポディゼーションフィルタは、中性フィルタであり、
アポダイザを使用して、測定スポットサイズを最小にすることができる、
分光エリプソメータ(SE)を含む薄膜測定システム。」

5 対比
(1)本願補正発明と引用発明との対比
ア 引用発明の「偏向されていない放射ビーム」及び「測定スポット」は、それぞれ、本願補正発明の「放射ビーム」及び「スポット」に相当する。
そして、引用発明の
「偏向されていない放射ビームは焦点ミラー4により試料3へ焦点合わせされ、
試料3の表面上にある測定スポットは照明システム(2,5,5A,11,4)により照明される試料部分として規定され」ることは、「偏向されていない放射ビーム」が「試料3の表面上にある測定スポット」に、「照明システム(2,5,5A,11,4)により」「焦点合わせされ」ることであり、また、「試料3の表面上」には、何らかの構造があることは明らかである。
すると、引用発明の「偏向されていない放射ビームは焦点ミラー4により試料3へ焦点合わせされ、試料3の表面上にある測定スポットは」「照明される試料部分として規定され」る「照明システム(2,5,5A,11,4)」は、本願補正発明の「放射ビームをターゲット構造上のスポットに合焦させる照明光学系」に相当する。

イ 引用発明の「アポディゼーションフィルタ50は、それが試料3にあまり接近していない限り、試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔に配置され」るフィルタであり、「高透過率から低透過率へと急減に移行するものではなく次第に移行する部分を有するアポダイザであって、移行部の形状は、高透過率の中心部分から実質的に不透明な縁部へとかなり滑らかに変化し、」「アポダイザを使用して、測定スポットサイズを最小にすることができる」のであるから、「照明システム(2,5,5A,11,4)」の一部を構成するものといえる。
すると、引用発明の「アポディゼーションフィルタ50は、それが試料3にあまり接近していない限り、試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔に配置され」ることと、本願補正発明の「照明光学系は、瞳面又はその近くに提供されたフィルタを有」することは、「照明光学系は、フィルタを有」することで共通する。

ウ 引用発明の「高透過率から低透過率へと急減に移行するものではなく次第に移行する部分を有するアポダイザであって、移行部の形状は、高透過率の中心部分から実質的に不透明な縁部へとかなり滑らかに変化する」「アポディゼーションフィルタ50」は、本願補正発明の「前記ビーム上の前記ビームの光軸から径方向距離が増すにつれて増加する透過損失を課」す「フィルタ」に相当する。

エ 引用発明の「分光エリプソメータ(SE)を含む薄膜測定システム」は、本願補正発明の「光学装置」に相当する。

(2)一致点
してみると、両者は、
「放射ビームをターゲット構造上のスポットに合焦させる照明光学系を備える光学装置であって、
前記照明光学系は、フィルタを有し、
前記フィルタは、前記ビーム上に前記ビームの光軸から径方向距離が増すにつれて増加する透過損失を課す、光学装置。」
で一致し、次の各点で相違する。

(3)相違点
ア 「フィルタ」が「照明光学系」中に配置される位置について、本願補正発明では、「瞳面又はその近くに提供され」るのに対して、引用発明では、「それが試料3にあまり接近していない限り、試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔に配置され」る点。

イ 本願補正発明は、「前記フィルタは、前記ビームの異なる波長における前記フィルタの前記透過損失の変動を低減するように設計されている」のに対して、引用発明は、「中性フィルタであ」る点。

6 判断
(1)相違点アについて
引用発明において、「システムの開口止めとしても機能し、この開口からの回折は試料上に焦点合わせされた像に影響」する「偏光子の開口」から、拡散する「放射ビーム」は、「焦点ミラー4により試料3へ焦点合わせされ」るのであるから、「照明システム(2,5,5A,11,4)」の瞳面は、「焦点ミラー4」の位置にあることは明らかである。
そして、引用発明では、「アポディゼーションフィルタ50は、それが試料3にあまり接近していない限り、試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔に配置され」るのであるから、「アポディゼーションフィルタ50」は、「試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔」の中の「焦点ミラー4」側に配置される、すなわち、瞳面が位置する「焦点ミラー4」の近くに配置されるものが含まれると認められる。
したがって、引用発明の「アポディゼーションフィルタ50は、それが試料3にあまり接近していない限り、試料ビーム9の行路にあるミラー4と試料3間の間隔に配置され」ることは、本願補正発明の「前記照明光学系は、瞳面又はその近くに提供されたフィルタを有」することに相当する。
よって、相違点アは、実質的な相違点ではない。

(2)相違点イについて
中性フィルタは、ND(Neutral Density)フィルタとも呼ばれ、光量を、その波長によらず、一律に減少させるフィルタであるから、異なる波長における透過損失の変動を低減するように設計されているといえる。
よって、相違点イは、実質的な相違点ではない。

(3)結論
以上のとおり、本願補正発明と引用発明には実質的な相違点はなく、本願補正発明は引用発明である。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し、特許を受けることができない。

7 小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2」「[理由]」「1」の本件補正前の請求項1の記載を参照。)

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうちの理由1は、この出願の請求項1?5に係る発明は、原出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特表2002-501612号公報

3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された引用文献1、その記載内容及び引用発明は、上記「第2」「[理由]」「4」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2」「[理由]」「5」及び「6」で検討した本願補正発明から、「前記フィルタは、前記ビームの異なる波長における前記フィルタの前記透過損失の変動を低減するように設計されている」という発明特定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2」「[理由]」「5」及び「6」に記載したとおり、引用発明であるから、同様に、本願発明も引用発明である。

5 結論
したがって、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し、特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-01-15 
結審通知日 2019-01-16 
審決日 2019-01-29 
出願番号 特願2016-209522(P2016-209522)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚本 丈二  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 昌哉
▲高▼見 重雄
発明の名称 検査装置及び方法  
代理人 江口 昭彦  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  

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